(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048432
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】表示システム
(51)【国際特許分類】
G09G 5/00 20060101AFI20240402BHJP
B60K 35/00 20240101ALI20240402BHJP
G09G 5/38 20060101ALI20240402BHJP
G09G 5/36 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
G09G5/00 510V
B60K35/00 Z
G09G5/38 A
G09G5/00 510A
G09G5/00 550C
G09G5/36 520F
G09G5/00 530T
G09G5/36 520G
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154327
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】秦 誠
(72)【発明者】
【氏名】佐原 祐介
(72)【発明者】
【氏名】舛屋 勇希
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 翠
(72)【発明者】
【氏名】本間 華子
【テーマコード(参考)】
3D344
5C182
【Fターム(参考)】
3D344AA20
3D344AB01
3D344AC25
3D344AD01
5C182AA02
5C182AA03
5C182AA04
5C182AA05
5C182AB08
5C182AB15
5C182AB25
5C182AB31
5C182AC02
5C182AC03
5C182AC35
5C182BA27
5C182BA29
5C182BA47
5C182BA56
5C182BB01
5C182BC22
5C182BC25
5C182BC26
5C182CA01
5C182CB13
5C182CB14
5C182CB42
5C182CB47
5C182CC21
(57)【要約】
【課題】 情報伝達性に優れた表示システムを提供する。
【解決手段】 自車両1の運転者4の視線4aに対して第一表示距離の位置で視認されるように第一表示領域8に画像を表示する第一表示器20と、前記運転者4の前記視線4aに対して前記第一表示距離よりも大きい第二表示距離で視認されるように前記第一表示領域8とは異なる第二表示領域9に画像を表示する第二表示器30と、第一条件を満たす場合、前記第二表示領域9に警告画像97を表示し、前記第一条件を満たした後に前記第一条件よりも警告度合の高い状況である第二条件を満たす場合、前記第一表示領域8に前記警告画像87を移動して表示し、その後、前記警告画像87を前記警告画像87と同一又は異なる画像である更新警告画像187に更新され、その後、前記更新警告画像187を前記第二表示領域9に移動する、認知度上昇処理を実行する表示制御部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の運転者の視線に対して第一表示距離の位置で視認されるように第一表示領域に画像を表示する第一表示器と、
前記運転者の前記視線に対して前記第一表示距離よりも大きい第二表示距離で視認されるように前記第一表示領域とは異なる第二表示領域に画像を表示する第二表示器と、
第一条件を満たす場合、前記第二表示領域に警告画像を表示し、前記第一条件を満たした後に前記第一条件よりも警告度合の高い状況である第二条件を満たす場合、前記第一表示領域に前記警告画像を移動して表示し、その後、前記警告画像を前記警告画像と同一又は異なる画像である更新警告画像に更新され、その後、前記更新警告画像を前記第二表示領域に移動する、認知度上昇処理を実行する表示制御部と、を備える表示システム。
【請求項2】
前記警告画像及び前記更新警告画像は、前記自車両の前方に位置する交通情報に関する情報を示す画像であり、
前記第二条件は、前記表示制御部が前記運転者に通知すべき前記交通情報を検出した場合であり、
前記第一条件は、前記交通情報と前記自車両との距離が前記交通情報を検出したときの前記交通情報と前記自車両との距離よりも小さい所定距離以下であることであり、
前記表示制御部は、前記第一条件を満たした後に前記第二条件を満たす場合、前記認知度上昇処理を実行する、請求項1記載の表示システム。
【請求項3】
前記第一条件を満たす場合、前記警告画像は拡大して表示される、請求項1記載の表示システム。
【請求項4】
前記第二条件を満たす場合、前記警告画像は前記第二表示領域の真上の位置の前記第一表示領域に同じ大きさで直線的に移動する、請求項1記載の表示システム。
【請求項5】
前記警告画像は、前記第一表示領域に移動後、車線を模した区画線画像の外側の位置に移動した後に前記更新される、請求項1記載の表示システム。
【請求項6】
前記更新は、前記更新警告画像が前記交通情報と前記自車両との距離が近付くにつれて前記警告画像に近付くように前記第一表示領域内で移動した後に実行される、請求項2記載の表示システム。
【請求項7】
前記更新後、前記第二表示領域はスペースを形成し、前記更新警告画像は前記第一表示領域から前記スペースに移動する、請求項1記載の表示システム。
【請求項8】
前記更新警告画像は、前記第一表示領域から前記第二表示領域に移動後に縮小して表示される、請求項1記載の表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数の表示器を有する車両用等の表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の表示器が、車両内の複数箇所に配置されることにより、複数の表示器間を連動させて情報を表示させることが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
今日、車両には、多様な表示態様で情報の表示が可能なヘッドアップディスプレイや、多くの情報の表示が可能な大型の表示パネルが搭載されるようになっている。これに伴い、運転者に伝達可能な情報量や、情報の種類が増えている。これに伴い、表示装置には、より一層、必要な情報を必要なタイミングで、視認性よく運転者に伝達することが求められている。
【0005】
本開示はこのような事情を考慮してなされたもので、情報伝達性に優れた表示システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の表示システムは、上述した課題を解決するために、自車両1の運転者4の視線4aに対して第一表示距離の位置で視認されるように第一表示領域8に画像を表示する第一表示器20と、前記運転者4の前記視線4aに対して前記第一表示距離よりも大きい第二表示距離で視認されるように前記第一表示領域8とは異なる第二表示領域9に画像を表示する第二表示器30と、第一条件を満たす場合、前記第二表示領域9に警告画像97を表示し、前記第一条件を満たした後に前記第一条件よりも警告度合の高い状況である第二条件を満たす場合、前記第一表示領域8に前記警告画像87を移動して表示し、その後、前記警告画像87を前記警告画像87と同一又は異なる画像である更新警告画像187に更新され、その後、前記更新警告画像187を前記第二表示領域9に移動する、認知度上昇処理を実行する表示制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示の表示システムにおいては、情報伝達性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態における表示システムのシステム構成例を示す図。
【
図3】主制御部により実行される認知度上昇処理を説明するフローチャート。
【
図4】具体例としての認知度処理の実行前の表示例を示す説明図。
【
図5】具体例としての認知度低下処理のステップS2における警告画像の表示例を示す説明図。
【
図6】具体例としての認知度低下処理のステップS4における警告画像の他の表示例を示す説明図。
【
図7】具体例としての認知度低下処理のステップS4における警告画像の表示例を示す説明図。
【
図8】具体例としての認知度上昇処理のステップS4における警告画像の表示例を示す説明図。
【
図9】具体例としての認知度上昇処理のステップS4における警告画像の表示例を示す説明図。
【
図10】具体例としての認知度上昇処理のステップS4及びS5における警告画像の表示例を示す説明図。
【
図11】具体例としての認知度上昇処理のステップS5における警告画像の表示例を示す説明図。
【
図12】具体例としての認知度上昇処理のステップS5における警告画像の表示例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の表示システムの実施形態を添付図面に基づいて説明する。本開示の表示システムは、例えば自動車や二輪車等の車両や、船舶、農業機械、建設機械に搭載される表示システムに適用することができる。本実施形態においては、本開示の表示システムが、車両に搭載され、車両から取得した各種情報等に基づいて所要の情報を表示する2つのヘッドアップディスプレイ(HUD、Head Up Display)を有する例を用いて説明する。
【0010】
図1は、本実施形態における表示システム10のシステム構成例を示す図である。
図2は、2つの表示器による表示の一例を示す図である。
【0011】
以下の説明において、「前」、「後」、「上」、「下」、「右」及び「左」は、
図1及び2における定義「Fr.」、「Re.」、「To.」、「Bo.」、「R」、及び「L」に従う。
【0012】
表示システム10は、車両1(自車両)のインストルメントパネル2内に搭載される。表示システム10は、上HUD20と、下HUD30と、主制御部40と、を有する。
【0013】
上HUD20(第一表示器)は、ステアリングホイール5に対して前方に配置され、ウインドシールド3に表示光L1を照射する。反射した表示光L1は、ウインドシールド3で運転者4側に反射することにより、運転者4に車両1の前方で虚像V1による画像を視認させる。上HUD20により表示される画像は、例えば
図2の仮想的な上HUD表示領域8(第一表示領域)内に表示され、路面等の前方風景と重畳表示されて視認される。
【0014】
下HUD30(第二表示器)は、上HUD20よりも更に前方(運転者4から離れる方向)に配置され、ウインドシールド3の周囲に形成される遮光部3aに表示光L2を照射する。遮光部3aは、黒セラミックス等からなる黒色等の遮光色からなる部分である。遮光部3aは、ウインドシールド3を車両1に固定する接着剤の太陽光による劣化の防止や、接着剤の隠蔽、意匠性の向上等を目的に形成される。反射した表示光L2は、遮光部3aで運転者4側に反射することにより、運転者4に車両1の前方で虚像V2による画像を視認させる。下HUD30により表示される画像は、例えば
図2の仮想的な、上HUD表示領域8とは異なる下HUD表示領域9(第二表示領域)内に表示され、遮光部3aよりも前方で視認される。
【0015】
上HUD20は、運転者4の通常時(運転時)に想定される視線4aに対して上下方向において距離d1(第一表示距離)の位置で虚像V1による画像が視認されるように、画像を表示する。また、下HUD30は、運転者4の視線4aに対して距離d1よりも大きい距離d2(第二表示距離)の位置で虚像V2による画像が視認されるように、画像を表示する。すなわち、運転者4は、表示光L1に係る画像に視線4aをずらすための移動距離よりも、表示光L2に係る画像に視線4aをずらすための移動距離の方が大きい。言い換えると、視線4aの方向と虚像V1による画像を視認するための視線方向とが形成する角度θ1よりも、視線4aの方向と虚像V2による画像を視認するための視線方向とが形成する角度θ2の方が、大きい。このため、運転者4は、下HUD30により表示される画像を、上HUD20により表示される画像よりも視線4aから遠い位置であり、上HUD20により表示される画像の下方で視認する。
【0016】
また、本実施形態においては、上HUD20は、下HUD30が形成する虚像V2よりも前方に、虚像V1を形成する。すなわち、虚像V1による画像は、運転者4から前後方向において遠い位置で視認され、虚像V2による画像は、運転者4に前後方向において近い位置で視認される。
【0017】
上HUD表示領域8及び下HUD表示領域9としての表示面は、上下左右の4辺を有する面であって、例えば下辺8a、9a及び上辺8b、9bは、左右方向に略平行な辺である。左辺8c、9c及び右辺8d、9dは、上下方向に対して任意の角度に設定された面である。例えば、表示面は、左辺8c、9c及び右辺8d、9dが、上下方向に沿う面(路面に垂直な面)、上下方向に対して所定角度傾斜した傾斜面(路面に対して傾斜した面)、又は前後方向に沿う面(路面に重畳される(略平行な)面)となるように形成される。また、表示面は、左辺8c、9c及び右辺8d、9dが、視認者に近い側が上下方向に沿い、遠くなるにつれて前後方向に沿うような曲線となるように形成される面であってもよい。路面に垂直な面以外で形成される表示面は、表示面上での表示位置に応じて運転者4と虚像V1、V2の表示距離が異なり、奥行き感が表現された画像を表示し得る。例えば、表示面が、左辺8c、9c及び右辺8d、9dが、上辺8b、9bが下辺8a、9aに対して前方に位置するように傾く面である場合、運転者4は、表示面に奥行きを認識し得る。
【0018】
尚、画像の表示距離等を算出するための運転者4の視線4a(視点)に関する情報は、予め設定され主制御部40等が保持していてもよいし、車両1又は表示システム10が運転者4の視点を検出するセンサを有する場合には、このセンサより検出してもよい。
【0019】
上HUD20は、表示器21と、凹面鏡22と、筐体24と、上HUD表示制御部25と、を有する。
【0020】
表示器21は、表示光L1を凹面鏡22に向けて出射する。表示器21は、例えばTFT(Thin Film Transistor)型の液晶表示器や有機EL(Electroluminescence)表示器である。尚、表示器21はプロジェクタ及び表示面を構成するスクリーンを有するものであってもよい。
【0021】
凹面鏡22は、表示器21が出射した表示光L1をウインドシールド3に向けて反射する。凹面鏡22は、拡大鏡としての機能を有し、表示器21に表示された画像を拡大してウインドシールド3側へ反射する。すなわち、運転者4は、表示器21に表示された画像が拡大された画像を視認する。
【0022】
筐体24は、筐体24の内部に、凹面鏡22や、表示器21及び上HUD表示制御部25が実装された制御基板を支持する。
【0023】
上HUD表示制御部25は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を有しており、ROMに書き込まれたプログラムに従って所定の演算処理を実行する。具体的には、上HUD表示制御部25は、主制御部40の指示に基づいて、表示器21を制御して所要の画像を表示する。
【0024】
下HUD30は、表示器31と、筐体34と、下HUD表示制御部35と、を有する。
【0025】
表示器31は、表示光L2を筐体34外の遮光部3aに直接出射する。表示器31は、例えば上HUD20と同様の構成を有する。これにより、運転者4は、表示器31に表示され遮光部3aで反射した画像を視認する。
【0026】
筐体34は、筐体34の内部に、表示器31及び下HUD表示制御部35が実装された制御基板を支持する。
【0027】
下HUD表示制御部35は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を有しており、ROMに書き込まれたプログラムに従って所定の演算処理を実行する。具体的には、下HUD表示制御部35は、主制御部40の指示に基づいて、表示器31を制御して所要の画像を表示する。
【0028】
主制御部40は、特に、後述する車両1の各部から取得する情報等に基づいて、上HUD20及び下HUD30を制御する。主制御部40は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を有しており、ROMに書き込まれたプログラムに従って後述する所定の演算処理や表示制御処理を実行する。
【0029】
車両1は、表示システム10の他に、周辺情報取得部51と、車外情報取得部52と、カーナビゲーションシステム53と、車両ECU(Electronic Control Unit)54と、を有する。各部と主制御部40とは、例えばCAN(Controller Area Network)バス50を介して接続されている。
【0030】
周辺情報取得部51は、車両1の周辺(外部)の情報を取得する。周辺情報取得部51は、車両1とワイヤレスネットワークとの通信、車両1と他車両との通信、車両1と歩行者との通信、車両1と道路側のインフラとの通信を行う。例えば、周辺情報取得部51は、WAN(Wide Area Network)に直接アクセスできる通信モジュール、WANにアクセス可能な外部装置(モバイルルータ等)や公衆無線LAN(Local Area Network)のアクセスポイント等と通信するための通信モジュール等を備え、インターネット通信を行う。また、周辺情報取得部51は、所定の無線通信規格に準拠した無線通信モジュールを備える。更に、周辺情報取得部51は、道路側のインフラと無線通信する通信装置を有し、例えば、安全運転支援システム(DSSS、Driving Safety Support Systems)の基地局から、インフラストラクチャーとして配置された路側無線装置を介して、物体情報や交通情報を取得する。
【0031】
車外情報取得部52は、車両1の上下前後左右の車両1の周囲である外部環境に存在する人や構造物、他の車両1等の対象物の内容やそれらの位置を検出する。車外情報取得部52は、例えば車両1の周囲の風景を撮像するステレオカメラ、車両1から対象物までの距離を測定するLIDAR(Laser Imaging Detection And Ranging)等の測距センサ、車両1の周囲に位置する対象物を検出するソナー、超音波センサ、ミリ波レーダ等である。
【0032】
カーナビゲーションシステム53は、人工衛星等から受信したGPS(Global Positioning System)信号に基づいて車両1の位置を算出するGPSコントローラを有する。カーナビゲーションシステム53は、地図データを記憶する記憶部を有し、GPSコントローラからの位置情報に基づいて、現在位置近傍の地図データを記憶部から読み出し、ユーザーにより設定された目的地までの案内経路を決定する。カーナビゲーションシステム53は、現在の車両1の位置や決定した案内経路に関する情報を主制御部40に出力する。
【0033】
また、カーナビゲーションシステム53は、地図データを参照することにより、車両1の前方の施設の名称・種類や、施設と車両1との距離等を示す情報を主制御部40に出力する。地図データでは、道路形状情報(車線、道路の幅員、車線数、交差点、カーブ、分岐路等)、制限速度等の道路標識や通行止めや片側交互通行、速度規制等の交通規制情報に関する交通情報、車線が複数存在する場合の各車線についての情報等の各種情報が位置データと対応付けられている。カーナビゲーションシステム53は、これらの各種情報を主制御部40に出力する。尚、カーナビゲーションシステム53は、車両1に搭載されたものに限られず、主制御部40との間で有線又は無線により通信を行う、カーナビゲーション機能を有する携帯端末(例えばスマートフォン、タブレットPC(Personal Computer))により実現されてもよい。
【0034】
車両ECU54は、車両1に設けられた各種センサから車速やエンジン回転数等の車両1の走行に必要な車両情報を取得し、車両1の動作を制御する。車両ECU54は、車速や車両1自体の警告情報(例えば燃料低下、エンジン油圧異常)等の所要の車両情報を、主制御部40に出力する。
【0035】
次に、表示システム10による画像の表示制御について詳細に説明する。表示システム10は、所定条件を満たす場合、認知度上昇処理を実行する。
【0036】
図3に示すように、主制御部40により実行される認知度上昇処理を説明するフローチャートである。認知度上昇処理は、第一条件を満たす場合(ステップS1のYES)、下HUD表示領域9に警告画像を表示し(ステップS2)、第一条件を満たした後に第一条件よりも警告度合の高い状況である第二条件を満たす場合(ステップS3のYES)、上HUD表示領域8に警告画像を移動して表示し(ステップS4)、その後、下HUD表示領域9に警告画像を移動して(戻して)表示する(ステップS5)処理である。
【0037】
すなわち、本実施形態における表示システム10は、運転者4の視線4aからの視線の移動量が小さい位置(近い位置)に画像を表示し運転者4に認知されやすい上HUD20と、上HUD20よりも視線4aからの視線の移動量が大きい位置(遠い位置)に画像を表示し運転者4に相対的に認知されにくい下HUD30を有する。表示システム10は、このような上HUD20及び下HUD30を連携させて、警告度合の高い状況においては、認知されやすい上HUD20に表示し、運転者4に適切に情報を伝達することができる。以下、
図3から
図12の認知度上昇処理を、具体例を用いて説明する。
【0038】
[具体例]
具体例は、上HUD20及び下HUD30が前方に位置する交通情報を示す警告画像(標識画像87、97)を表示する際に実行される認知度上昇処理である。以下、交通情報が、制限速度を示す道路標識である例を用いて説明する。
【0039】
図4に示すように、下HUD表示領域9には、車両1を示す自車両画像91、車両ECU54から取得した車速情報に係る車速画像92、車外情報取得部52等から取得した車両1の周辺車両に関する情報に係る画像、車両1が走行する走行レーンの区画線に関する情報を示す区画線画像94が表示される。周辺車両に関する情報に係る画像は、例えば車両1の後方を走行する後方車両に関する情報に係る後方車両画像95や、前方を走行する前方車両に関する情報に係る前方車両画像96を含む情報であり、自車両画像91と相対的な位置関係を示す。後方車両画像95及び前方車両画像96は、後方車両及び前方車両がある場合に表示される。
【0040】
また、下HUD表示領域9には、現在走行中の車両1に適用されている道路標識に関する情報に係る標識画像97が所要のタイミングで表示されている。尚、本具体例では、標識画像97は、100km/hの速度制限の制限速度標識である。道路標識の内容は、追い越し禁止等の禁止事項を示す規制標識や、他の道路標識に関する情報であってもよい。下HUD表示領域9には、複数の標識画像97が表示されていてもよく、この場合、重要度の高い速度制限に関する標識画像97が下HUD表示領域9の中央側であって、運転者4に認知されやすい領域に表示されるのが好ましい。このとき、上HUD表示領域8には、認知を促す情報がないため、画像は表示されていない状態である。
【0041】
主制御部40は、第一条件としての、周辺情報取得部51又は車外情報取得部52が車両1の前方に位置する道路標識や交通規制情報に関する交通情報を検出した場合や、カーナビゲーションシステム53が車両1の前方に位置する道路標識や交通規制情報に関する交通情報を取得した場合であることを満たすか否かを判定する(
図3のステップS1)。主制御部40は第一条件を満たしていないと判定した場合(ステップS1のNO)、第二条件を満たすまで待機する。
【0042】
主制御部40は、第一条件を満たすと判定した場合(ステップS1のYES)、下HUD表示制御部35を制御し、
図5に示すように、標識画像97を同一位置で拡大して表示する(ステップS2)。これと同時に、下HUD表示制御部35は、標識画像97以外の表示の明度(輝度)を落として表示する。このとき、下HUD表示制御部35は、道路標識が近付いていることを運転者4により一層認知させるため、標識画像97を点滅して表示してもよい。
【0043】
主制御部40は、第二条件としての、道路標識と車両1との距離が所定距離以下であることを満たすか否かを判定する(
図3のステップS3)。所定距離は、道路標識を検出したときの道路標識と車両1との距離よりも小さい距離である。すなわち、主制御部40は、下HUD表示領域9に表示されている標識画像97が更新されるタイミングを運転者4に認識させる第一条件を満たす場合よりも警告度合の高い状況であると同時に、道路標識の内容である速度制限が適用されるタイミングとなった(タイミングが近付いた)か否かを判定する。
【0044】
主制御部40は第二条件を満たしていないと判定した場合(ステップS3のNO)、下HUD表示領域9における標識画像97の表示を維持する。一方、主制御部40は、第二条件を満たすと判定した場合(ステップS3のYES)、
図6に示すように、下HUD表示制御部35を制御し、標識画像97を上HUD表示領域8の方向に移動させ、下HUD表示領域9の上辺9bから見切らせる。下HUD表示制御部35は、下HUD表示領域9から標識画像97が完全に消去されると同時に、標識画像97以外の表示の明度を元に戻して表示する。
【0045】
上HUD表示制御部25は、下HUD表示領域9から標識画像97が完全に消去されると同時に、上HUD表示領域8の下辺8aから標識画像87を徐々に出現させながら、上下方向に直線的に移動させて標識画像87を表示する。この時表示される標識画像87は、運転者4から見て拡大した標識画像97と同じ大きさに見えるように形成される。また、上HUD表示制御部25は、下HUD表示領域9の標識画像97が表示されていた位置の真上の位置(左右方向が同一位置)から出現させて表示する。このとき、上HUD表示制御部25は、道路標識が近付いていることを運転者4により一層認知させるため、標識画像87を点滅して表示してもよい。
【0046】
尚、標識画像87を運転者4から見て拡大した標識画像97と同じ大きさに見えるように形成するために、上HUD表示領域8に実際に表示される標識画像87のサイズは、下HUD表示領域9に実際に表示される標識画像97のサイズよりも小さく形成される。
【0047】
このように、標識画像87に向って標識画像97が移動したように見せることにより、上HUD20及び下HUD30の表示の連動感を向上することができる。
【0048】
図6に示すように、上HUD表示制御部25は、上HUD表示領域8の下辺8aに標識画像87が表示された所定時間後(1秒以内)、車両1の前方の路面の車線に重畳表示される車線を模した区画線画像84を表示する。
図7に示すように、上HUD表示制御部25は、上HUD表示領域8に区画線画像84が表示された所定時間後(1秒以内)、標識画像87を区画線画像84の外側の位置(区画線画像84の左辺8c側の位置)に直線的に移動する。
【0049】
図8に示すように、上HUD表示制御部25は、標識画像87が区画線画像84の外側の位置が移動した所定時間後(1秒以内)、区画線画像84の外側の位置且つ上側の位置(区画線画像84の上辺8b側の位置)に標識画像87とは異なる更新標識画像(更新警告画像)187及びそれに付随する走行車線上に停止線の様なライン188を表示する。尚、本具体例では、更新標識画像187は、80km/hの速度制限の制限速度標識である。
【0050】
図9に示すように、上HUD表示制御部25は、上HUD表示領域8に更新標識画像187が表示された所定時間後(1秒以内)、更新標識画像187を標識画像87に向かって区画線画像84に沿って直線的に移動する。
【0051】
このとき、上HUD表示制御部25は、車両1の走行に伴い車両1が道路標識に近付くにつれて、更新標識画像187を標識画像87に近づける。これにより、上HUD表示制御部25は、運転者4に対して、これから適用される道路標識が車両1に近付いていることを認識させる。その後、上HUD表示制御部25は、道路標識と車両1との距離が近い(約30m)時に更新標識画像187と標識画像87とを重ね、両者が完全になると標識画像87を消去し更新標識画像187に入れ替えて表示し、運転者4に道路標識の変更があったことを認識させる。上HUD表示制御部25は、標識画像87が消去されると共にライン188を消去する。
【0052】
ここで、上HUD表示制御部25は、更新標識画像187が移動していることを運転者4により一層認知させるため、更新標識画像187やライン188を点滅して表示してもよい。
【0053】
図10に示すように、上HUD表示制御部25は、更新標識画像187が標識画像87と重なった所定時間後(3から5秒)及び、車両1が道路標識を通過すると、更新標識画像187を区画線画像84に沿って下HUD表示領域9に向かって直線的に下辺8aまで移動する。
【0054】
これと同時に、下HUD表示制御部35は、一対の車速画像92をそれぞれ左辺9c及び右辺9dまで移動し、車速画像92の表示されていた箇所に表示スペースを形成する。
【0055】
更新標識画像187の下辺8aまでの移動と車速画像92の左辺9cまでの移動とが完了すると、上HUD表示制御部25は、更新標識画像187を下HUD表示領域9の方向に移動させ、更新標識画像187を上HUD表示領域8の下辺8aから見切らせる。上HUD表示制御部25は、上HUD表示領域8の区画線画像84の仮想的な延長線に沿った斜め下方向に更新標識画像187を移動させながら見切らせる。
【0056】
上HUD表示領域8から更新標識画像187が消えると、下HUD表示制御部35は、下HUD表示領域9の上辺9bから更新標識画像(更新警告画像)197を徐々に出現させながら表示する。更新標識画像197は、第一条件を満たす前に標識画像97が配置されていた位置と上下方向が同じ位置まで移動する。この時、更新標識画像197は、運転者4から見て更新標識画像187と同じ大きさに見えるように形成される。上HUD表示制御部25は、上HUD表示領域8から更新標識画像187が消えると、区画線画像84を消去する。
【0057】
尚、更新標識画像197を運転者4から見て更新標識画像187と同じ大きさに見えるように形成するために、下HUD表示領域9に実際に表示される更新標識画像197のサイズは、上HUD表示領域8に実際に表示される更新標識画像187のサイズよりも大きく形成される。
【0058】
このように、更新標識画像197に向って更新標識画像187が移動したように見せることにより、上HUD20及び下HUD30の表示の連動感を向上することができる。
【0059】
図11に示すように、下HUD表示制御部35は、下HUD表示領域9の上辺9bに更新標識画像197が表示された所定時間後(1秒以内)、更新標識画像197を第一条件を満たす前に標識画像97が配置されていた位置に直線的に移動する。
【0060】
図12に示すように、更新標識画像197が移動した所定時間後(1秒以内)、車速画像92を元の位置に戻すと共に、更新標識画像197を同一位置で第一条件を満たす前の標識画像97と同じ大きさに縮小して表示する。
【0061】
これにより、主制御部40は、下HUD表示領域9に表示されていた標識画像97が、上HUD表示領域8に移動し、更新されて下HUD表示領域9に戻ってきたかのように見せることができる。すなわち、主制御部40は、これから適用される道路標識の認知性を高めるために、標識画像97を上HUD表示領域8で運転者4に対して表示し警告する。これにより、表示システム10は、上HUD20及び下HUD30を有効に活用し、必要な情報を適切に運転者4に伝達することができる。
【0062】
尚、標識画像87、97として、速度制限に関する道路標識を例に説明したが、上HUD表示領域8及び下HUD表示領域9には、複数種類の道路標識が標識画像87、97として表示されてもよい。例えば、下HUD表示領域9に、速度制限に関する標識画像97と、追越し禁止に関する標識画像が表示されており、前方に現在の速度制限を変更する速度制限に関する道路標識と、追越し禁止に関する標識画像と同種の道路標識(例えば駐停車禁止に関する道路標識)がある場合、上HUD表示制御部25は、上HUD表示領域8に前方に位置する複数の標識画像を表示してもよい。上HUD表示制御部25は、各標識画像を移動する際には、対応する同種の下HUD表示領域9の各標識画像に向って斜め下方に移動して奥行き感を持たせることにより、視覚的効果を向上できる。
【0063】
また、他の例として主制御部40は、下HUD表示領域9に標識画像97を表示している際に、車両1が標識画像97の内容に従った場合には、運転者4が標識画像97を認知したとして、下HUD表示領域9内の標識画像97を消灯してもよい。具体的には、下HUD表示領域9に100km/hの速度制限に関する標識画像97が表示されている際に、車速が100km/h以下となった場合、下HUD表示制御部35は、標識画像97を消灯してもよい。
【0064】
下HUD表示制御部35は、標識画像97を消灯する際には、標識画像97と共に現在の車速を表示し、車速が標識画像97に係る制限速度内にあることを通知してもよい。また、これと共に、又はこれに代えて、下HUD表示制御部35は、標識画像97を消灯する際には、標識画像97を光らせる、太字にする、点滅する、回転する、跳ねる等の視覚的な演出を行うことで、より一層速度制限内にあることを通知できる。
【0065】
また、主制御部40は、車速が下HUD表示領域9に表示されている標識画像97に従っていないことを検出した場合には、更新標識画像187が標識画像87と同一標識であったとしても認知度上昇処理を実行してもよい。
【0066】
主制御部40は、現在車両1に適用されている標識画像97を、下HUD表示領域9に表示している(
図3のステップS1のYES、ステップS2)。主制御部40は、第二条件としての、車両1が標識画像97で表示されている現在の速度制限を逸脱していること、を満たすか否かを判定する(
図3のステップS3)。例えば、主制御部40は、速度制限を超過していることや、アダプティブ・クルーズ・コントロールの設定速度が速度制限を超過していること、を満たすか否かを判定する。
【0067】
主制御部40は第二条件を満たしていると判定した場合(ステップS3のYES)、上述した認知度上昇処理の通り、下HUD表示制御部35を制御し、標識画像97を上HUD表示領域8の方向に移動させる(
図3のステップS4)。その後、上HUD表示制御部25を制御し、上HUD表示領域8の下辺8a近傍に標識画像87を表示し、標識画像87を区画線画像84の外側の位置に移動し、標識画像87を同一の標識である更新標識画像187に入れ替え、更新標識画像187を下HUD表示領域9の方向へ移動させる(
図3のステップS5)。その後、下HUD表示制御部35を制御し、更新標識画像197を標識画像97が配置されていた位置に移動し、更新標識画像197を前の標識画像97と同じ大きさに縮小する。表示システム10は、標識画像97を上HUD表示領域8に標識画像87として表示することにより、警告の認知性を向上し、適切に運転者4に伝達することができる。
【0068】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0069】
例えば、第一表示器及び第二表示器が、共にHUDである例を説明したが、一方又は双方がTFT(Thin Film Transistor)型の液晶表示器や有機EL(Electroluminescence)表示器等の表示パネルに表示した実像を視認させるものであってもよい。
【0070】
また、上HUD20及び下HUD30の投影部材がウインドシールド3である例を説明したが、これに代えて、又はこれと共に投影部材がコンバイナであってもよい。
【0071】
具体例で用いた第一条件及び第二条件及び警告画像は一例であって、条件の内容及び警告画像は適宜設定されればよい。下HUD表示領域9(第二表示領域)に表示されている情報(画像)が上HUD表示領域8(第一表示領域)に移動して表示、又は上HUD表示領域8(第一表示領域)に表示されている情報が下HUD表示領域9(第二表示領域)に移動して表示される場合、情報の上HUD表示領域8又は下HUD表示領域9内での位置の移動は必須ではなく、移動することなくその場で消灯し、その後下HUD表示領域9又は上HUD表示領域8で出現されてもよい。その場合、情報の消灯及び出現は、例えばフェードアウト又はフェードインの演出があってもなくてもよい。
【0072】
具体例では、
図7に示すように、上HUD表示領域8において、標識画像87は、上HUD表示領域8の下辺8aから区画線画像84の外側の位置に移動後に更新標識画像187に入れ替えられたが、移動せずに下辺8aで更新標識画像187に入れ替えられてもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 車両(自車両)
2 インストルメントパネル
3 ウインドシールド
3a 遮光部
4 運転者
4a 視線
5 ステアリングホイール
8 上HUD表示領域(第一表示領域)
9 下HUD表示領域(第二表示領域)
8a、9a 下辺
8b、9b 上辺
8c、9c 左辺
8d、9d 右辺
10 表示システム
20 上HUD(第一表示器)
21、31 表示器
22 凹面鏡
24、34 筐体
25 上HUD表示制御部
30 下HUD(第二表示器)
35 下HUD表示制御部
40 主制御部
50 CANバス
51 周辺情報取得部
52 車外情報取得部
53 カーナビゲーションシステム
54 車両ECU
84、94 区画線画像
86、86a、86b、96 前方車両画像
87、97 標識画像(警告画像)
88、98 後方接近車両画像
89 警告画像
91 自車両画像
92 車速画像
95 後方車両画像
187、197 更新標識画像
188 ライン
L1、L2 表示光
V1、V2 虚像
d1、d2 距離
θ1、θ2 角度