IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユニケム株式会社の特許一覧

特開2024-48442含ハロゲンポリエーテル化合物および離型剤
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048442
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】含ハロゲンポリエーテル化合物および離型剤
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20240402BHJP
   B29C 33/60 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
C09K3/00 R
B29C33/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154341
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】519437777
【氏名又は名称】ユニケム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104802
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 尚人
(74)【代理人】
【識別番号】100186772
【弁理士】
【氏名又は名称】入佐 大心
(72)【発明者】
【氏名】田中 藤丸
(72)【発明者】
【氏名】上南 亮太
【テーマコード(参考)】
4F202
【Fターム(参考)】
4F202AA32
4F202CA30
4F202CB01
4F202CM41
4F202CM42
(57)【要約】
【課題】本発明は、有機溶媒による環境汚染の問題がなく、水への溶解性に優れた新たな含ハロゲンポリエーテル化合物およびそれを有効成分として含む離型剤を提供すること。
【解決手段】本発明として、例えば、含ハロゲンポリエーテル基に2価の有機基を介してアルキレンオキサイド鎖が結合し、かつかかるアルキレンオキサイド鎖に、直接または2価の有機基を介して、リン酸エステル基、ホスホン酸基、またはカルボキシ基が結合している含ハロゲンポリエーテル化合物、具体的には、次の一般式(1)で表される含ハロゲンポリエーテル化合物を挙げることができる。
【化1】
(式中、Raは含ハロゲンポリエーテル基を表し、Xは2価の有機基を表し、Rbは炭素数2または3の飽和炭化水素基を表す。mは2~4の整数であり、nは1~3の整数である。Zはリン酸エステル基またはその塩を表す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
含ハロゲンポリエーテル基およびアルキレンオキサイド鎖を分子骨格内に有することを特徴とする、リン酸エステル化合物、ホスホン酸化合物、およびカルボン酸化合物からなる群から選択される含ハロゲンポリエーテル化合物。
【請求項2】
含ハロゲンポリエーテル基に2価の有機基を介してアルキレンオキサイド鎖が結合し、かつかかるアルキレンオキサイド鎖に、直接または2価の有機基を介して、リン酸エステル基、ホスホン酸基、またはカルボキシ基が結合している、請求項1に記載の含ハロゲンポリエーテル化合物。
【請求項3】
次の一般式(1)で表される、請求項2に記載の含ハロゲンポリエーテル化合物。
【化1】
(式中、Raは含ハロゲンポリエーテル基を表し、Xは2価の有機基を表し、Rbは炭素数2または3の飽和炭化水素基を表す。mは2~4の整数であり、nは1~3の整数である。Zはリン酸エステル基またはその塩を表す。)
【請求項4】
次の一般式(2)で表される、請求項2に記載の含ハロゲンポリエーテル化合物。
【化2】
(式中、Raは含ハロゲンポリエーテル基を表し、XおよびYは、同一または異なって、2価の有機基を表し、Rbは炭素数2または3の飽和炭化水素基を表す。mは2~4の整数である。Zはホスホン酸基もしくはその塩、またはカルボキシ基もしくはその塩を表す。)
【請求項5】
含ハロゲンポリエーテルがポリフルオロポリエーテルである、請求項3または4に記載の含ハロゲンポリエーテル化合物。
【請求項6】
含ハロゲンポリエーテルがパーフルオロポリエーテルである、請求項3または4に記載の含ハロゲンポリエーテル化合物。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか一項に記載の含ハロゲンポリエーテル化合物を1種以上含む、離型剤。
【請求項8】
請求項3または4に記載の含ハロゲンポリエーテル化合物を1種以上含む、離型剤。
【請求項9】
請求項7に記載の離型剤を使用する工程を含むことを特徴とする、樹脂成形物またはゴム成形物の製造方法。
【請求項10】
請求項8に記載の離型剤を使用する工程を含むことを特徴とする、樹脂成形物またはゴム成形物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含ハロゲンポリエーテル化合物の技術分野に属する。本発明は、かかる含ハロゲンポリエーテル化合物を有効成分として含む水系離型剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
含ハロゲンポリエーテルを有効成分として含む離型剤は、従来から知られている(特許文献1、2)。しかしながら、含ハロゲンポリエーテル化合物は、一般的に有機溶剤、更にはハロゲン系有機溶剤への溶解性が高く、水への溶解性が低い。よって含ハロゲンポリエーテル化合物を有効成分とする離型剤は、有機溶剤またはハロゲン系有機溶剤を用いられる場合が多く、使用の際に環境汚染が問題として存在する。
【0003】
また、特許文献1には、分子構造内に1つ以下のアルキレンオキサイドを含む含ハロゲンポリエーテル基を含むリン酸エステル化合物が開示されている。このような1つ以下のアルキレンオキサイドを含む含ハロゲンポリエーテル基を含むリン酸エステル化合物は水への溶解性を示さない。
【0004】
近年、水系もしくは有機溶剤と水の混合系で使用可能な離型剤が開発されており、例えば特許文献3には、含フッ素化合物を含む水系離型剤が開示されている。しかしながら、この特許文献3に記載されている含ハロゲンポリエーテル化合物はやはり水溶性が十分ではない。
【0005】
特許文献4には、含ハロゲンポリエーテルの両末端にアルキレンオキサイド鎖を介してリン酸エステル基が結合した分子構造のものが開示されている。このような分子鎖の両末端にリン酸エステル基が結合しているものと比べて含ハロゲンポリエーテルの片末端にアルキレンオキサイド鎖とリン酸エステル基が結合した分子構造のものの方が離型性の面で好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭58-180598号公報
【特許文献2】国際公開第2019/239927号
【特許文献3】特開平5-301228号公報
【特許文献4】欧州特許出願公開第1138826号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような含ハロゲンポリエーテルを有効成分として含む離型剤の技術分野の状況において、有機溶媒による環境汚染の問題がなく、水への溶解性に優れた新たな含ハロゲンポリエーテル化合物およびそれを有効成分として含む離型剤を提供することを主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、含ハロゲンポリエーテル化合物に一定の鎖長のオリゴアルキレンオキサイド鎖を導入することで、水への溶解性が高まることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0009】
本発明としては、例えば、下記の態様を挙げることができる。
[1]含ハロゲンポリエーテル基およびアルキレンオキサイド鎖を分子骨格内に有することを特徴とする、リン酸エステル化合物、ホスホン酸化合物、およびカルボン酸化合物からなる群から選択される含ハロゲンポリエーテル化合物。
[2]含ハロゲンポリエーテル基に2価の有機基を介してアルキレンオキサイド鎖が結合し、かつかかるアルキレンオキサイド鎖に、直接または2価の有機基を介して、リン酸エステル基、ホスホン酸基、またはカルボキシ基が結合している、上記[1]に記載の含ハロゲンポリエーテル化合物。
[3]次の一般式(1)で表される、上記[2]に記載の含ハロゲンポリエーテル化合物。
【0010】
【化1】
【0011】
(式中、Raは含ハロゲンポリエーテル基を表し、Xは2価の有機基を表し、Rbは炭素数2または3の飽和炭化水素基を表す。mは2~4の整数であり、nは1~3の整数である。Zはリン酸エステル基またはその塩を表す。)
[4]次の一般式(2)で表される、上記[2]に記載の含ハロゲンポリエーテル化合物。
【0012】
【化2】
【0013】
(式中、Raは含ハロゲンポリエーテル基を表し、XおよびYは、同一または異なって、2価の有機基を表し、Rbは炭素数2または3の飽和炭化水素基を表す。mは2~4の整数である。Zはホスホン酸基もしくはその塩、またはカルボキシ基もしくはその塩を表す。)
[5]含ハロゲンポリエーテルがポリフルオロポリエーテルである、上記[3]または[4]に記載の含ハロゲンポリエーテル化合物。
[6]含ハロゲンポリエーテルがパーフルオロポリエーテルである、上記[3]または[4]に記載の含ハロゲンポリエーテル化合物。
【0014】
[7]上記[1]~[4]のいずれか一項に記載の含ハロゲンポリエーテル化合物を1種以上含む、離型剤。
[8]上記[3]または[4]に記載の含ハロゲンポリエーテル化合物を1種以上含む、離型剤。
[9]上記[7]に記載の離型剤を使用する工程を含むことを特徴とする、樹脂成形物またはゴム成形物の製造方法。
[10]上記[8]に記載の離型剤を使用する工程を含むことを特徴とする、樹脂成形物またはゴム成形物の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る含ハロゲンポリエーテル化合物は、水溶性が高く、水系で利用可能であることから、環境負荷が少ない。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1 本発明に係る含ハロゲンポリエーテル化合物
本発明に係る含ハロゲンポリエーテル化合物(以下、「本発明化合物」とする。)は、含ハロゲンポリエーテル基およびアルキレンオキサイド鎖を分子骨格内に有することを特徴とする、リン酸エステル化合物、ホスホン酸化合物、およびカルボン酸化合物からなる群から選択されるものである。好ましくは、例えば、含ハロゲンポリエーテル基に2価の有機基を介してアルキレンオキサイド鎖が結合し、かつかかるアルキレンオキサイド鎖に、直接または2価の有機基を介して、リン酸エステル基、ホスホン酸基、またはカルボキシ基が結合している本発明化合物を挙げることができる。
【0017】
本発明化合物として、より具体的には、例えば、次の(a)および(b)を挙げることができる。
(a)次の一般式(1)で表される化合物。
【0018】
【化3】
【0019】
(式中、Raは含ハロゲンポリエーテル基を表し、Xは2価の有機基を表し、Rbは炭素数2または3の飽和炭化水素基を表す。mは2~4の整数であり、nは1~3の整数である。Zはリン酸エステル基またはその塩を表す。)
【0020】
(b)次の一般式(2)で表される化合物。
【0021】
【化4】
【0022】
(式中、Raは含ハロゲンポリエーテル基を表し、XおよびYは、同一または異なって、2価の有機基を表し、Rbは炭素数2または3の飽和炭化水素基を表す。mは2~4の整数である。Zはホスホン酸基もしくはその塩、またはカルボキシ基もしくはその塩を表す。)
【0023】
ここで、本発明に係る「含ハロゲンポリエーテル基」(Ra等)とは、エーテル中のアルキル基の水素原子の1以上がハロゲンに置換されたポリエーテルをいう。かかるハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素を挙げることができるが、フッ素が好ましい。また、ハロゲンへの置換数は、複数が好ましく、全てが置換されていることがより好ましい。好ましい「含ハロゲンポリエーテル基」としては、例えば、当該水素原子が2以上のハロゲンに置換したポリハロゲンポリエーテルや当該水素原子が全てハロゲンに置換したパーハロゲンポリエーテルを挙げることができる。より好ましくは、ポリフルオロポリエーテル、パーフルオロポリエーテルを挙げることができる。特に好ましくは、パーフルオロポリエーテルである。
【0024】
また、本発明化合物に係る含ハロゲンポリエーテル基は、数平均分子量が200~5000g/molの範囲内のものが適当であり、好ましくは500~3000g/molの範囲内のものである。より好ましくは、800~2000g/molの範囲内のものである。当該数平均分子量が小さすぎるものは、離型性が不十分に得られないおそれがあり、一方、数平均分子量が大きすぎるものは、水溶性が十分に確保できないおそれがある。
【0025】
当該含ハロゲンポリエーテル基の単位構造(ユニット)として、具体的には、例えば、下記のようなものを挙げることができる。
【0026】
【化5】
【0027】
これらの単位構造は2種以上を組み合わせたものでもよく、その結合順序は特には制限されない。
【0028】
本発明に係る「アルキレンオキサイド鎖」(RbO等)としては、例えば、炭素数1~4の直鎖状または分枝鎖状のもので、メチレンオキサイド鎖、エチレンオキサイド鎖、プロピレンオキサイド鎖、ブチレンオキサイド鎖を挙げることができる。この中、エチレンオキサイド鎖(-CHCHO-)やもしくはプロピレンオキサイド鎖(-CHCHCHO-または―CH(CH)CHO-)といった炭素数2もしくは3のものが好ましい。
【0029】
当該アルキレンオキサイド鎖の繰り返し数としては2~4が適当である。繰り返し数が1のアルキレンオキサイド鎖は水に対して難溶な化合物となるおそれがある。一方で、繰り返し数が5以上のアルキレンオキサイド鎖は1分子中に含まれるハロゲン(フッ素等)の割合が低下するため、十分な離型性が得られないおそれがある。
【0030】
含ハロゲンポリエーテル基とアルキレンオキサイド鎖とを結合する「2価の有機基」およびXに係る「2価の有機基」としては、含ハロゲンポリエーテル基とアルキレンオキサイド鎖とを連結することができる2価の有機基であれば、あるいはRaとRbとを連結することができる2価の有機基であれば特に制限されないが、例えば、炭素数1~4のアルキレン基、アルキレンオキシ基、アミド基、エステル基を挙げることができる。この中、アルキレンオキシ基、アミド基が好ましい。また、アルキレンオキサイド鎖に、リン酸エステル基、ホスホン酸基、またはカルボキシ基が結合する「2価の有機基」および「Y」に係る「2価の有機基」としては、アルキレンオキサイド鎖と、リン酸エステル基、ホスホン酸基、またはカルボキシ基とが連結できる2価の有機基であれば、あるいはRbOの酸素原子とZとを連結することができる2価の有機基であれば特に制限されないが、例えば、炭素数1~4のアルキレン基、ウレタン基を挙げることができる。この中、アルキレン基が好ましい。
【0031】
本発明化合物として、更に具体的には、次のような化合物を挙げることができる。なお、式中nは、前記と同義である。
【0032】
【化6】
【0033】
本発明化合物は、常法により製造することができる。具体的には、例えば、本発明化合物がリン酸エステル化合物である場合には、含ハロゲンポリエーテル基とアルキレンオキサイド鎖とを含むアルコールを、オキシ塩化リン、五酸化リンやポリリン酸等のリン酸化剤と反応し、次に加水分解を行うことにより、本発明に係るリン酸エステル化合物を得ることができる。本発明化合物がカルボン酸化合物である場合には、含ハロゲンポリエーテル基とアルキレンオキサイド鎖とを含むアルコールを、過マンガン酸カリウムやクロム酸等の酸化剤により酸化することにより、本発明に係るカルボン酸化合物を得ることができる。また、本発明化合物がホスホン酸化合物である場合には、含ハロゲンポリエーテル基とアルキレンオキサイド鎖とを含むアルコールの水酸基をアッペル反応等によりヨウ素、臭素、塩素等のハロゲンに置換し、さらに亜リン酸トリメチルのような亜リン酸トリエステルとのミカエリス・アルブゾフ反応によりホスホン酸エステル化合物にしたのち、加水分解を行うことにより、本発明に係るホスホン酸化合物を得ることができる。
【0034】
2 本発明に係る離型剤
本発明に係る離型剤(以下、「本発明離型剤」という。)は、本発明化合物を1種以上、有効成分として含む。本発明離型剤は、その有効成分である本発明化合物が水溶性であり、水に溶解して用いることができるから、水系離型剤ということができる。
したがって、本発明離型剤には、添加溶媒として水を用いることができる。その他に本発明化合物が可溶な有機溶媒であれば使用することができる。また、水と有機溶媒とを併用する場合、かかる有機溶媒としては、例えば、アルコール類、ケトン類、エーテル類、ハロゲン類、アミン類、エステル類、アミド類、ニトリル類などの水溶性有機溶媒を用いることができる。好ましくは、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、n-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトニトリルなどが挙げられる。
【0035】
本発明離型剤における本発明化合物の含有量は、含ハロゲンポリエーテルの種類、他の成分、適用対象物等により異なるが、0.01~90重量%の濃度範囲が適当であり、好ましくは0.1~50重量%の濃度範囲である。0.01重量%より少ないと、離型効果を十分に得られないおそれがあり、90重量%より多いと、水等の媒体に十分に溶解しないおそれがある。
【0036】
本発明離型剤は、必要に応じて、他の成分、例えば、添加剤、シリコーン化合物、ワックス等を含むことができる。当該添加剤としては、例えば、乾燥速度調整剤、架橋剤、造膜助剤、相溶化剤、凍結防止剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、pH調整剤、消泡剤、風合い調整剤、すべり性調整剤、帯電防止剤、抗菌剤、防腐剤、防虫剤、芳香剤、難燃剤等を挙げることができる。シリコーン化合物としては、例えば、シリコーンオイル、シリコーンレジン、またそれらの混合物が挙げられる。ワックス系の化合物としては、例えば、パラフィン系ワックスを挙げることができる。
【0037】
本発明として、また、本発明離型剤を使用する工程を含む、樹脂成形物またはゴム成形物の製造方法を挙げることができる。
本発明離型剤は、内部離型剤として用いることもできるが、外部離型剤として用いることが好ましい。本発明離型剤を成形金型へ塗布する際は、刷毛塗り、浸透塗布、スプレー塗布などあらゆる方法を用いることができる。必要に応じて加熱乾燥することができ、加熱温度は室温から150℃程度が適切である。
【0038】
本発明離型剤が用いられ得る金型としては、例えば、アルミニウム、ステンレス(SUS)、鉄などの金属製の型、およびニッケル電鋳またはクロムメッキされた型などを挙げることができる。
【0039】
本発明離型剤を利用して成形される材料として、例えば、樹脂やゴムを挙げることができる。即ち、本発明離型剤を用いて、常法により、例えば、樹脂成形物やゴム成形物を製造することができる。
【0040】
本発明離型剤を利用しうる樹脂としては、例えば、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリイミド、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、CFRP、GFRP、ABS、PBT等が挙げられる。ゴムとしては、例えば、ウレタンゴム、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、シリコーンゴム、EPDM、スチレンブタジエンゴム、天然ゴム、クロロプレンゴム、フッ素ゴム等が挙げられる。
【実施例0041】
以下に実施例等を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0042】
[実施例1]F[CF(CF3)CF2O]nCF(CF3)CONH(CH2CH2O)2P(O)(OH)2の合成
500mLの四つ口フラスコにF[CF(CF)CFO]CF(CF)COOMeを20.0g(数平均分子量1000)およびジグリコールアミンを1.05g加え、60℃で12時間撹拌した。得られた液体をロータリーエバポレーターにて濃縮することで、F[CF(CF)CFO]CF(CF)CONH(CHCHO)Hを20.0g(収率95%)得た。
【0043】
500mLの四つ口フラスコに、得られたF[CF(CF)CFO]CF(CF)CONH(CHCHO)Hを20.0gおよびポリリン酸を1.05g加え、70℃で12時間撹拌したのち、純水を0.4g加え、70℃で12時間撹拌した。Novec7200/純水で生成物を洗浄することで、標記本発明化合物1を19.5g(収率91%)得た。
【0044】
[実施例2]F[CF(CF3)CF2O]nCF(CF3)CONH(CH2CH2O)3P(O)(OH)2の合成
実施例1のジグリコールアミンをトリグリコールアミンに変更し、実施例1と同様の方法にて本標記発明化合物2(含ハロゲンポリエーテル部の数平均分子量1000)を調製した。
【0045】
[実施例3]F[CF(CF3)CF2O]nCF(CF3)CONH(CH2CH2O)2P(O)(OH)2の合成
実施例1のF[CF(CF)CFO]CF(CF)COOMe(数平均分子量1000)をF[CF(CF)CFO]CF(CF)COOMe(数平均分子量2000)に変更し、実施例1と同様の方法にて標記本発明化合物3を調製した。
【0046】
[比較例1]F[CF(CF3)CF2O]nCF(CF3)CONHCH2CH2OP(O)(OH)2の合成
実施例1のジグリコールアミンを2-アミノエタノールに変更し、実施例1と同様の方法にて標記比較化合物1を調製した。
【0047】
[比較例2]F[CF(CF3)CF2O]nCF(CF3)CONH(CH2CH2O)2P(O)(OH)2の合成
実施例1のF[CF(CF)CFO]CF(CF)COOMe(数平均分子量1000)をF[CF(CF)CFO]CF(CF)COOMe(数平均分子量400)に変更し、実施例1と同様の方法にて標記比較化合物2を調製した。
【0048】
[比較例3](HO)2(O)P(OCH2CH2)2HNOCCF2(CF2CF2O)m(CF2O)nCF2CONH(CH2CH2O)2P(O)(OH)2の合成
MeOOCCF(CFCFO)(CFO)CFCOOMe(数平均分子量1000)およびジグリコールアミンを出発原料として、実施例1と同様の方法にて標記比較化合物3を調製した。
【0049】
[試験例1]
(1)水溶性評価
合成した上記含ハロゲンポリエーテル化合物50mgをバイアル管に採取し、水を5mL加え1分間振盪させたときに均一な透明溶液を調製できるか目視で確認し、下記の基準で判断した。その結果を表1に示す。
【0050】
〇:均一な透明溶液が調製できた。
×:濁りまたは沈殿が発生し均一な溶液を調製できなかった。
【0051】
(2)離型性評価
1)合成した上記の含ハロゲンポリエーテル化合物1.0gを水1000mLで希釈し、0.1重量%水溶液を調製した。
2)該水溶液を3cm角のアルミニウム製金型にスプレー塗布した。
3)80℃に加熱したサンプル塗布金型に、ポリウレタンプレポリマー(コロネート(登録商標)C-4090:東ソー社製)100gと加熱溶融されたメチレンビス-o-クロロアニリン硬化剤(イハラキュアミン(登録商標)MT:クミアイ化学社製)12.8gとを、気泡を巻込まないようにしながら攪拌混合して注入した。
4)注入部中央に硬化成形品取出し用のフックを設置した。
5)注入物を120℃で1時間加熱硬化させたのち、オートグラフAG-50kNXplus(島津製作所社製)を用いて、フックを引っ張って成形品を金型から抜き出す際の離型荷重を測定した。
6)上記3)~5)の操作を繰り返し、離型荷重が50N以上になるまで実施した。
当該結果も表1に示す。離型重量が50N未満で離型できる回数が10回以上のものを優良とし、5回以上10回未満のものを良、1回以上5回未満のものを可とした。
【0052】
【表1】
【0053】
表1から明らかな通り、本発明化合物を有効成分として含む離型剤(本発明離型剤)は、優れた離型性を有する。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明化合物ないし本発明離型剤は、良好な水溶性を示し、また高い離型性を有することから、従来のフッ素系離型剤よりも環境に優しく、多種の分野における離型剤として有用である。