(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048444
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】油圧緩衝器
(51)【国際特許分類】
F16F 9/58 20060101AFI20240402BHJP
【FI】
F16F9/58 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154347
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橘 弘晃
(72)【発明者】
【氏名】岡田 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】松村 定知
(72)【発明者】
【氏名】小俣 靖久
【テーマコード(参考)】
3J069
【Fターム(参考)】
3J069AA50
3J069CC05
3J069DD07
3J069DD39
(57)【要約】
【課題】弾性体の耐久性の低下を抑制することが可能となる油圧緩衝器を提供する。
【解決手段】シリンダ17と、シリンダ17内に摺動可能に嵌装されるピストンと、シリンダ17に挿入されてピストンに連結されるピストンロッド50と、ピストンロッド50が挿入された状態でピストンロッド50に設けられる支持部材80と、支持部材80のピストンとは反対側に配置されてシリンダ17に設けられる伸切規制部材と、ピストンロッド50が挿入された状態でピストンロッド50に設けられ、支持部材80と伸切規制部材との間に配置されてピストンロッド50の伸び切り時に伸切規制部材と当接して衝撃を緩和する弾性体81と、を有する油圧緩衝器であって、支持部材80には、弾性体81と当接する対向面93に複数の凹部97が円周方向に所定間隔をおいて設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、
前記シリンダ内に摺動可能に嵌装されるピストンと、
前記シリンダに挿入されて前記ピストンに連結されるピストンロッドと、
前記ピストンロッドが挿入された状態で該ピストンロッドに設けられる支持部材と、
前記支持部材の前記ピストンとは反対側に配置されて前記シリンダに設けられる伸切規制部材と、
前記ピストンロッドが挿入された状態で該ピストンロッドに設けられ、前記支持部材と前記伸切規制部材との間に配置されて前記ピストンロッドの伸び切り時に前記伸切規制部材と当接して衝撃を緩和する弾性体と、
を有する油圧緩衝器であって、
前記支持部材には、前記弾性体と当接する対向面に複数の凹部が円周方向に所定間隔をおいて設けられている油圧緩衝器。
【請求項2】
前記対向面には、前記複数の凹部が径方向に所定間隔をおいて設けられている請求項1に記載の油圧緩衝器。
【請求項3】
前記凹部は、前記対向面を前記支持部材の軸方向に見て円弧状である請求項1または2に記載の油圧緩衝器。
【請求項4】
前記凹部は、前記対向面を前記支持部材の軸方向に見て角形状である請求項1または2に記載の油圧緩衝器。
【請求項5】
前記凹部は、前記支持部材を軸方向に貫通する貫通孔である請求項1または2に記載の油圧緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
ピストンロッドに設けられるストッパ部材と、このストッパ部材に載置される、天然ゴムや合成ゴム等の弾性体、または合成樹脂からなるリバウンドクッションとを備えた油圧緩衝器において、リバウンドクッションのストッパ部材に当接する当接部に油膜切れ防止部としての凹部を設けたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、リバウンドスプリングユニットの上側リバウンドカラーとロッドガイドとの間に設けられる樹脂製のスラストワッシャに凹部を設けたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-200558号公報
【特許文献2】特許第6169769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
油圧緩衝器において、ピストンロッドの伸び切り時の衝撃を緩和するために弾性体を用いる場合に、この弾性体の耐久性の低下を抑制する要望がある。
【0006】
したがって、本発明は、弾性体の耐久性の低下を抑制することが可能となる油圧緩衝器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様は、シリンダと、前記シリンダ内に摺動可能に嵌装されるピストンと、前記シリンダに挿入されて前記ピストンに連結されるピストンロッドと、前記ピストンロッドが挿入された状態で該ピストンロッドに設けられる支持部材と、前記支持部材の前記ピストンとは反対側に配置されて前記シリンダに設けられる伸切規制部材と、前記ピストンロッドが挿入された状態で該ピストンロッドに設けられ、前記支持部材と前記伸切規制部材との間に配置されて前記ピストンロッドの伸び切り時に前記伸切規制部材と当接して衝撃を緩和する弾性体と、を有する油圧緩衝器であって、前記支持部材には、前記弾性体と当接する対向面に複数の凹部が円周方向に所定間隔をおいて設けられている、構成とした。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、弾性体の耐久性の低下を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る第1実施形態の油圧緩衝器を示す断面図である。
【
図2】本発明に係る第1実施形態の油圧緩衝器を示す要部の断面図である。
【
図3】本発明に係る第1実施形態の油圧緩衝器の支持部材を示す平面図である。
【
図4】本発明に係る第1実施形態の油圧緩衝器の支持部材を示す断面図である。
【
図5】本発明に係る第2実施形態の油圧緩衝器の支持部材を示す平面図である。
【
図6】本発明に係る第2実施形態の油圧緩衝器の支持部材を示す断面図である。
【
図7】本発明に係る第3実施形態の油圧緩衝器の支持部材を示す平面図である。
【
図8】本発明に係る第3実施形態の油圧緩衝器の支持部材を示す断面図である。
【
図9】本発明に係る第1~第3実施形態の他の第1適用例の油圧緩衝器を示す要部の断面図である。
【
図10】本発明に係る第1~第3実施形態の他の第2適用例の油圧緩衝器を示す要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1実施形態]
第1実施形態を
図1~
図4に基づいて説明する。
図1は、第1実施形態の油圧緩衝器11を示すものである。この油圧緩衝器11は、自動車や鉄道車両等の車両のサスペンション装置に用いられるものである。油圧緩衝器11は、具体的には自動車のサスペンション装置に用いられるものである。油圧緩衝器11は、内筒15と外筒16とを有するシリンダ17を備えた複筒式の油圧緩衝器である。内筒15は円筒状である。外筒16は内筒15よりも大径の有底筒状である。外筒16は内筒15の径方向外側に、内筒15と同軸状に設けられている。外筒16と内筒15との間はリザーバ室18となっている。
【0011】
外筒16は、胴部20と底部21とを有している。胴部20は円筒状である。底部21は、胴部20の軸方向の一方の端部を閉塞している。胴部20の底部21とは反対側は開口部22となっている。外筒16の開口部22は、シリンダ17においても軸方向の一端に設けられる。外筒16の底部21は、シリンダ17においても軸方向の他端に設けられる。言い換えれば、シリンダ17は、軸方向の一端が開口部22となって開口しており、軸方向の他端が閉塞されている。外筒16の胴部20には外側にブラケット23が固定されている。
【0012】
油圧緩衝器11は、バルブボディ25とロッドガイド26(伸切規制部材)とを備えている。
【0013】
バルブボディ25は、円環状であり、内筒15および外筒16の軸方向の一端部に設けられている。バルブボディ25は、ベースバルブ30を構成するものであり、外周部が段差状をなしている。バルブボディ25は底部21に載置されている。その際に、バルブボディ25は、外周部の大径部分において外筒16に対し径方向に位置決めされる。
【0014】
ロッドガイド26は、円環状であり、内筒15および外筒16の軸方向の他端部に設けられている。ロッドガイド26は、シリンダ17の開口部22側に設けられている。ロッドガイド26は、ロッドガイド本体32とカラー33とを有している。
【0015】
ロッドガイド本体32は、金属製であって円環状である。ロッドガイド本体32は、外周部に大径部35と小径部36とを有している。大径部35の外径は小径部36の外径よりも大径である。よって、ロッドガイド本体32は、外周部が段差状をなしている。
【0016】
カラー33は円筒状である。カラー33は、金属製の円筒体の内周面を摺動性の高い材料で被覆してなるものである。カラー33は、ロッドガイド本体32の内周部に嵌合されて固定されている。
【0017】
ロッドガイド26は、ロッドガイド本体32の大径部35において、外筒16の胴部20の開口部22側の内周部に嵌合する。ロッドガイド26は、その軸方向の大径部35とは反対側の端部にある端面37がロッドガイド26の中心軸線に直交して広がる平面状をなす。端面37はロッドガイド本体32およびカラー33に形成されている。
【0018】
内筒15は、軸方向の一端部が、バルブボディ25の外周部の小径部分に、バルブボディ25の大径部分に軸方向に当接するまで嵌合されている。内筒15は、軸方向の一端部が、このバルブボディ25を介して外筒16の底部21に載置されている。また、内筒15は、軸方向の他端部が、ロッドガイド本体32の小径部36に、軸方向において大径部35に当接するまで嵌合されている。内筒15は、この他端部が、ロッドガイド26を介して外筒16の胴部20に嵌合している。この状態で、内筒15は、外筒16に対して軸方向および径方向に位置決めされる。ここで、バルブボディ25と底部21との間は、バルブボディ25に形成された通路溝40を介して内筒15と外筒16との間に連通している。バルブボディ25と底部21との間は、内筒15と外筒16との間と同様、リザーバ室18を構成している。
【0019】
油圧緩衝器11は、円環状のロッドシール41を備えている。ロッドシール41は、シリンダ17の軸方向におけるロッドガイド26の底部21とは反対側に設けられている。このロッドシール41も、ロッドガイド26と同様に胴部20の内周部に嵌合されている。外筒16には、胴部20の底部21とは反対の端部に係止部43が形成されている。係止部43は、胴部20をカール加工等の加締め加工によって径方向内方に塑性変形させて形成されている。ロッドシール41は、この係止部43とロッドガイド26とに挟持されている。ロッドシール41は、その際に、ロッドガイド26によって胴部20の内周面に押し付けられる。これにより、ロッドシール41は、外筒16の開口部22を閉塞する。ロッドシール41は、具体的にはオイルシールである。
【0020】
油圧緩衝器11は、ピストン45を備えている。ピストン45は、シリンダ17の内筒15内に摺動可能に嵌装されている。ピストン45は、内筒15内を第1室48と第2室49との二室に区画している。第1室48は、内筒15内のピストン45とロッドガイド26との間に設けられている。第2室49は、内筒15内のピストン45とバルブボディ25との間に設けられている。第2室49は、バルブボディ25によって、リザーバ室18と区画されている。シリンダ17内には、第1室48および第2室49に作動流体としての油液Lが封入されている。シリンダ17内には、リザーバ室18に作動流体としてのガスGと油液Lとが封入されている。
【0021】
油圧緩衝器11は、ピストンロッド50を備えている。ピストンロッド50は、軸方向の一端部分がシリンダ17の内部に挿入されている。ピストンロッド50は、この一端側の部分がピストン45に連結されている。ピストンロッド50は、軸方向の中間部分がロッドガイド26およびロッドシール41に挿通されている。ピストンロッド50は、軸方向の他端側の部分がシリンダ17の外部に延出している。ピストンロッド50は、金属製であって、第1室48内を貫通している。ピストンロッド50は第2室49を貫通していない。よって、第1室48はピストンロッド50が貫通するロッド側室である。第2室49はシリンダ17の底部21側のボトム側室である。油圧緩衝器11は、外筒16の胴部20に取り付けられたブラケット23が車両の車輪側に連結され、ピストンロッド50のシリンダ17から外部に延出する部分が車両の車体側に連結される。
【0022】
ピストンロッド50は、主軸部51と取付軸部52とを有している。
取付軸部52は、その外径が主軸部51の外径よりも小径である。ピストンロッド50は、取付軸部52側がシリンダ17内に挿入されている。
【0023】
主軸部51は、その外周面51aが円筒面状である。ピストンロッド50は、主軸部51がロッドガイド26およびロッドシール41を通っている。ピストンロッド50の主軸部51には、係合溝53が形成されている。係合溝53は主軸部51の外周面51aから径方向内方に凹んでいる。係合溝53は主軸部51の外周面51aと同軸の円環状である。係合溝53は、主軸部51の内筒15内に配置される部位であってピストン45とロッドガイド26との間に配置される部位に形成されている。
【0024】
ロッドガイド26およびロッドシール41は、シリンダ17のピストンロッド50が延出する側の部分に設けられている。ロッドガイド26は、ピストンロッド50を摺動可能に支持する。ピストンロッド50は、主軸部51の外周面51aにおいてロッドガイド26に案内される。ロッドガイド26の端面37は、ピストンロッド50の中心軸線に直交して広がる。ピストンロッド50は、シリンダ17に対して、ピストン45と一体に軸方向に移動する。ピストンロッド50がシリンダ17からの突出量を増やす油圧緩衝器11の伸び行程において、ピストン45は第1室48側へ移動する。ピストンロッド50がシリンダ17からの突出量を減らす油圧緩衝器11の縮み行程において、ピストン45は第2室49側へ移動する。
【0025】
ロッドシール41は、シリンダ17のピストンロッド50が延出する側、すなわち外筒16の開口部22側に設けられている。ロッドシール41は、ロッドガイド26とによって、外筒16の胴部20とピストンロッド50の主軸部51との間をシールして、内筒15内の油液Lと、リザーバ室18内のガスGおよび油液Lとが外部に漏出するのを規制する。
【0026】
ピストン45には、通路55および通路56が形成されている。通路55および通路56は、いずれもピストン45を軸方向に貫通している。通路55,56は、第1室48と第2室49とを連通可能である。油圧緩衝器11は、ディスクバルブ57とディスクバルブ58とを備えている。ディスクバルブ57は、ピストン45の軸方向における底部21とは反対側に設けられている。ディスクバルブ57は、円環状であり、ピストン45に当接することで通路55を閉塞する。ディスクバルブ58は、ピストン45の軸方向における底部21側に設けられている。ディスクバルブ58は、円環状であり、ピストン45に当接することで通路56を閉塞する。ディスクバルブ57,58は、ピストン45とともにピストンロッド50に取り付けられている。
【0027】
ピストンロッド50が内筒15および外筒16内への進入量を増やす縮み側に移動しピストン45が第2室49を狭める方向に移動すると、第2室49の圧力が第1室48の圧力よりも高くなる。すると、ディスクバルブ57が通路55を開いて第2室49の油液Lを第1室48に流すことになる。その際にディスクバルブ57は減衰力を発生させる。
【0028】
ピストンロッド50が内筒15および外筒16からの突出量を増やす伸び側に移動しピストン45が第1室48を狭める方向に移動すると、第1室48の圧力が第2室49の圧力よりも高くなる。すると、ディスクバルブ58が通路56を開いて第1室48の油液Lを第2室49に流すことになる。その際にディスクバルブ58は減衰力を発生させる。
【0029】
ピストン45およびディスクバルブ57のうちの少なくとも一方には図示略の固定オリフィスが形成されている。この固定オリフィスは、ディスクバルブ57が通路55を最も閉塞した状態でも通路55を介して第1室48と第2室49とを連通させる。
【0030】
ピストン45およびディスクバルブ58のうちの少なくとも一方には図示略の固定オリフィスが形成されている。この固定オリフィスは、ディスクバルブ58が通路56を最も閉塞した状態でも通路56を介して第1室48と第2室49とを連通させる。
【0031】
バルブボディ25には、液通路61および液通路62が形成されている。液通路61および液通路62は、いずれもバルブボディ25を軸方向に貫通している。液通路61,62は、いずれも第2室49とリザーバ室18とを連通可能である。
【0032】
ベースバルブ30は、ディスクバルブ65およびディスクバルブ66を備えている。ディスクバルブ65は、バルブボディ25の軸方向における底部21側に設けられている。ディスクバルブ65は、バルブボディ25に当接することで液通路61を閉塞する。ディスクバルブ66は、バルブボディ25の軸方向における底部21とは反対側に設けられている。ディスクバルブ66は、バルブボディ25に当接することで液通路62を閉塞する。ベースバルブ30は、ピン68を有している。このピン68がディスクバルブ65,66をバルブボディ25に取り付けている。バルブボディ25、ディスクバルブ65,66およびピン68等がベースバルブ30を構成している。
【0033】
ピストンロッド50が縮み側に移動しピストン45が第2室49を狭める方向に移動すると第2室49の圧力がリザーバ室18の圧力よりも高くなる。すると、ベースバルブ30は、ディスクバルブ65が液通路61を開いて、第2室49の油液Lをリザーバ室18に流すことになる。その際にディスクバルブ65が減衰力を発生させる。ピストンロッド50が伸び側に移動しピストン45が第1室48側に移動すると第2室49の圧力がリザーバ室18の圧力より低下する。すると、ベースバルブ30は、ディスクバルブ66が液通路62を開いて、リザーバ室18の油液Lを第2室49に流すことになる。ディスクバルブ66は、その際にリザーバ室18から第2室49内に実質的に減衰力を発生させずに油液Lを流すサクションバルブである。
【0034】
油圧緩衝器11は、
図2にも示すように、支持部材80とリバウンドクッション81(弾性体)とを備えている。
【0035】
支持部材80は、金属製であり、円環状である。支持部材80は、継ぎ目なく一体に形成されている。支持部材80は、支持部91と固定部92とを有している。
【0036】
図3および
図4に示すように、支持部91は、円板状である。支持部91は、その軸方向の一側にある対向面93が、円環状である。
図2に示すように、支持部91は、その外径が、内筒15の内径よりも小径である。
【0037】
図4に示すように、固定部92は、支持部91の内周縁部から支持部91の軸方向において対向面93とは反対側に突出している。固定部92は筒状である。固定部92は、その外径が支持部91の外径よりも小径である。
【0038】
対向面93は、支持部91の中心軸線に対し直交して広がる平面状の基面部95と、基面部95から支持部材80の軸方向における固定部92側に凹む有底溝からなる
図3に示す内側円弧状凹部96(凹部)と、
図4に示すように、基面部95から支持部材80の軸方向における固定部92側に凹む有底溝からなる外側円弧状凹部97(凹部)とを有している。
【0039】
図3に示すように、内側円弧状凹部96は、対向面93を支持部材80の軸方向に見て円弧状をなしている。内側円弧状凹部96は、外側壁面101と、内側壁面102と、一対の側壁面103と、底面104とを有している。
【0040】
外側壁面101は、内側円弧状凹部96の支持部材80の径方向における外側に設けられており、支持部材80の径方向における内側に向いている。外側壁面101は、支持部材80の中心軸線を中心とする円筒面の一部の形状をなしている。
【0041】
内側壁面102は、内側円弧状凹部96の支持部材80の径方向における内側に設けられており、支持部材80の径方向における外側に向いている。内側壁面102は、支持部材80の径方向において外側壁面101よりも内側に設けられている。内側壁面102は、支持部材80の中心軸線を中心とする円筒面の一部の形状をなしている。内側壁面102は、支持部材80の周方向における位置を外側壁面101と合わせている。
【0042】
一対の側壁面103は、いずれも支持部材80の径方向および軸方向に沿う平面状であり、互いに対向している。一方の側壁面103は、外側壁面101および内側壁面102の支持部材80の周方向における一端側の縁部同士を繋いでおり、他方の側壁面103は、外側壁面101および内側壁面102の支持部材80の周方向における他端側の縁部同士を繋いでいる。
【0043】
底面104は、外側壁面101、内側壁面102および一対の側壁面103の、支持部材80の軸方向における固定部92側の端縁部を結んでいる。底面104は、基面部95と平行に広がる平面状である。
【0044】
対向面93には、同形状の内側円弧状凹部96が、支持部材80の中心軸線から等距離の位置に複数、具体的には4箇所形成されている。言い換えれば、全ての内側円弧状凹部96の全ての外側壁面101が支持部材80の中心軸線を中心とする同一円筒面上に配置されている。また、全ての内側円弧状凹部96の全ての内側壁面102が支持部材80の中心軸線を中心とする同一円筒面上に配置されている。
【0045】
複数の内側円弧状凹部96は、支持部材80の円周方向に所定の間隔で配置されている。言い換えれば、支持部材80には、対向面93に複数の内側円弧状凹部96が、支持部材80の円周方向に所定間隔をおいて設けられている。具体的に、複数の内側円弧状凹部96は、支持部材80の円周方向に等間隔で配置されている。内側円弧状凹部96は、機械加工あるいは塑性加工によって対向面93に形成される。
【0046】
外側円弧状凹部97は、対向面93を支持部材80の軸方向に見て円弧状をなしている。外側円弧状凹部97は、外側壁面111と、内側壁面112と、一対の側壁面113と、底面114とを有している。
【0047】
外側壁面111は、外側円弧状凹部97の支持部材80の径方向における外側に設けられており、支持部材80の径方向における内側に向いている。外側壁面111は、支持部材80の中心軸線を中心とする円筒面の一部の形状をなしている。
【0048】
内側壁面112は、外側円弧状凹部97の支持部材80の径方向における内側に設けられており、支持部材80の径方向における外側に向いている。内側壁面112は、支持部材80の径方向において外側壁面111よりも内側に設けられている。内側壁面112は、支持部材80の中心軸線を中心とする円筒面の一部の形状をなしている。内側壁面112は、支持部材80の周方向における位置を外側壁面111と合わせている。
【0049】
一対の側壁面113は、いずれも支持部材80の径方向および軸方向に沿う平面状であり、互いに対向している。一方の側壁面113は、外側壁面111および内側壁面112の支持部材80の周方向における一端側の縁部同士を繋いでおり、他方の側壁面113は、外側壁面111および内側壁面112の支持部材80の周方向における他端側の縁部同士を繋いでいる。
【0050】
底面114は、外側壁面111、内側壁面112および一対の側壁面113の、支持部材80の軸方向における固定部92側の端縁部を結んでいる。底面114は、基面部95と平行に広がる平面状である。
【0051】
対向面93には、同形状の外側円弧状凹部97が、支持部材80の中心軸線から等距離の位置に複数、具体的には4箇所形成されている。言い換えれば、全ての外側円弧状凹部97の全ての外側壁面111が支持部材80の中心軸線を中心とする同一円筒面上に配置されている。また、全ての外側円弧状凹部97の全ての内側壁面112が支持部材80の中心軸線を中心とする同一円筒面上に配置されている。
【0052】
複数の外側円弧状凹部97は、支持部材80の円周方向に所定の間隔で配置されている。言い換えれば、支持部材80には、対向面93に複数の外側円弧状凹部97が、支持部材80の円周方向に所定間隔をおいて設けられている。具体的に、複数の外側円弧状凹部97は、支持部材80の円周方向に等間隔で配置されている。外側円弧状凹部97は、機械加工あるいは塑性加工によって対向面93に形成される。
【0053】
外側円弧状凹部97の内側壁面112は、内側円弧状凹部96の外側壁面101よりも支持部材80の径方向における外側に設けられている。よって、複数の外側円弧状凹部97は、複数の内側円弧状凹部96よりも支持部材80の径方向における外側に設けられている。支持部材80には、対向面93に、複数の内側円弧状凹部96と、複数の外側円弧状凹部97とが、支持部材80の径方向に所定間隔をおいて設けられている。複数の内側円弧状凹部96と、複数の外側円弧状凹部97とは、支持部材80の径方向に完全に離れて設けられている。
【0054】
支持部材80の円周方向において、外側円弧状凹部97と内側円弧状凹部96とが交互に等ピッチで配置されている。複数の外側円弧状凹部97は、いずれの外側円弧状凹部97も、全体が、複数の内側円弧状凹部96の全部に対して支持部材80の円周方向における位置をずらしている。言い換えれば、複数の内側円弧状凹部96は、いずれの内側円弧状凹部96も、全体が、複数の外側円弧状凹部97の全部に対して支持部材80の円周方向における位置をずらしている。よって、複数の外側円弧状凹部97と複数の内側円弧状凹部96とは、支持部材80の円周方向において位置が重なり合っていない。複数の内側円弧状凹部96と複数の外側円弧状凹部97とは同芯だが、円周方向に位相を完全にずらして配置されている。なお、内側円弧状凹部96と外側円弧状凹部97とは、支持部材80の円周方向における位置を一部重ね合わせていても良い。
【0055】
対向面93の全ての外側円弧状凹部97および全ての内側円弧状凹部96は、それぞれ全体が基面部95の範囲内に形成されている。言い換えれば、全ての外側円弧状凹部97および全ての内側円弧状凹部96は、基面部95の径方向外側の端縁部および基面部95の径方向内側の端縁部のいずれにも抜けていない。
【0056】
支持部材80は、ピストンロッド50への取り付け前の状態では、
図4に示すように固定部92が円筒状をなしている。この状態で、支持部材80が、
図1に示すように、支持部91から固定部92がピストン45側に突出する向きでピストンロッド50の主軸部51に嵌合される。そして、固定部92が、ピストンロッド50の係合溝53と位置を合わせた状態で径方向内方に加締められる。これにより、固定部92が塑性変形して係合溝53内に入り込み、支持部材80がピストンロッド50に固定される。この状態で、
図2に示すように、支持部91の基面部95がピストンロッド50の中心軸線に対して垂直に広がる。
【0057】
支持部材80は、このようにピストンロッド50の主軸部51が内側に挿入された状態でピストンロッド50に設けられる。
図1に示すように、ロッドガイド26は、この支持部材80のピストン45とは反対側に配置されている。
【0058】
支持部材80は、具体的には、プレス加工用の熱間圧延鋼板(SPHC材)からなっている。なお、これに限らず、支持部材80を、冷間圧延鋼板(SPCC材)や表面処理鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板などで形成することができる。その際に、支持部材80は、板金、鍛造または転造等の塑性加工や、切削加工を用いて形成される。
【0059】
図2に示すように、リバウンドクッション81は、弾性材料からなる弾性体である。リバウンドクッション81は、継ぎ目なく一体成形されている。リバウンドクッション81は、円環状であり、その外径が、内筒15の内径よりも小径である。リバウンドクッション81は、内周面121と、外周面122と、端面123と、端面124とを有している。
【0060】
内周面121は、円筒面状である。
【0061】
外周面122は、リバウンドクッション81の中心軸線を含む平面での断面形状が円弧状である。外周面122は、リバウンドクッション81の径方向における外方に凸状をなすように湾曲している。
【0062】
端面123は、全体がリバウンドクッション81の中心軸線を中心としたテーパ面である。端面123は、リバウンドクッション81の軸方向においてリバウンドクッション81の外側に凸の形状をなしている。端面123には、溝や穴等の凹部は一切設けられていない。
【0063】
端面124は、全体がリバウンドクッション81の中心軸線を中心としたテーパ面である。端面124は、リバウンドクッション81の軸方向においてリバウンドクッション81の外側に凸の形状をなしている。言い換えれば、端面123および端面124は、互いに反対向きに突出する形状をなしている。端面124には、溝や穴等の凹部は一切設けられていない。リバウンドクッション81は、鏡面対称状である。
【0064】
リバウンドクッション81は、ピストンロッド50の主軸部51が内側に挿入された状態でピストンロッド50に設けられている。リバウンドクッション81は、
図1に示すように支持部材80とロッドガイド26との間に配置されている。その際に、リバウンドクッション81は、
図2に示すように、端面123が支持部材80の対向面93と対向し、端面124が
図1に示すロッドガイド26の端面37と対向する。よって、支持部材80は、対向面93においてリバウンドクッション81の端面123に対向し、リバウンドクッション81との相対位置によって対向面93が端面123に当接する。また、
図1に示すロッドガイド26は、端面37において
図2に示すリバウンドクッション81の端面124と対向し、リバウンドクッション81との相対位置によって
図1に示す端面37が
図2に示す端面124に当接する。支持部材80は、ピストンロッド50に固定されて、リバウンドクッション81のピストンロッド50に対する軸方向の移動範囲を規定するストッパである。
【0065】
リバウンドクッション81は、具体的には、NBR(ニトリルゴム)からなっている。なお、これに限らず、リバウンドクッション81を、NR(天然ゴム)、IR(合成天然ゴム)、SBR(スチレンブタジエンゴム)、BR(ブタジエンゴム)、CR(クロロプレンゴム)、IIR(ブチルゴム)、EPDM(エチレンプロピレンゴム)、ACM(アクリルゴム)、U(ウレタンゴム)、H-NBR(水素化ニトリルゴム)、VMQ(シリコーンゴム)、FKM(フッ素ゴム)、上記ゴムの混合材のほか、TPE(熱可塑性エラストマー)、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PS(ポリスチレン)、PA(ポリアミド)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)や、それらにカーボン系補強材、ガラス繊維などの補強効果のある充填材を含んだもので形成しても良い。
【0066】
以上の構成の油圧緩衝器11において、リバウンドクッション81は、基本的に端面123が支持部材80の対向面93に当接した状態で、ピストンロッド50と共に移動する。そして、ピストンロッド50がシリンダ17から延出する方向に移動して伸び切り側の所定位置に位置すると、リバウンドクッション81は、端面124がロッドガイド26の端面37に当接する。ピストンロッド50がさらに伸び切り側に移動すると、リバウンドクッション81は、支持部材80によってロッドガイド26に押し付けられ軸方向に圧縮変形することになり、これにより、支持部材80を介してピストンロッド50に抵抗力を付与し、ピストンロッド50を伸び切り位置で停止させる。リバウンドクッション81は、ピストンロッド50の伸び切り時にロッドガイド26と当接して、ピストンロッド50をシリンダ17に対し停止させる際の衝撃を緩和する。
【0067】
ここで、リバウンドクッション81は、伸び切り時に弾性変形し、弾性変形の進行に伴って内筒15に向かって径方向外方に広がるように変形する。リバウンドクッション81は、弾性変形時の初期に、支持部材80の対向面93の径方向内側にある複数の内側円弧状凹部96の周囲部分に当接して、複数の内側円弧状凹部96を閉塞させる。また、リバウンドクッション81は、弾性変形の終期に、対向面93の径方向外側にある複数の外側円弧状凹部97の周囲部分に初めて当接して、複数の外側円弧状凹部97を閉塞させる。
【0068】
上記した特許文献1には、ピストンロッドに設けられる支持部材と、この支持部材に載置される、天然ゴムや合成ゴム等の弾性体、または合成樹脂からなるリバウンドクッションとを備えた油圧緩衝器において、リバウンドクッションの支持部材に当接する当接部に油膜切れ防止部としての凹部を設けたものが開示されている。また、上記した特許文献2には、リバウンドスプリングユニットの上側リバウンドカラーとロッドガイドとの間に設けられる樹脂製のスラストワッシャに凹部を設けたものが開示されている。
【0069】
油圧緩衝器では、ピストンロッドの伸び切り時の転舵状態において、リバウンドクッションが支持部材に対し押し付けられた状態で相対回転することがあるが、このときにリバウンドクッションと支持部材との間の油膜切れに起因して異音が発生したり、回転(ねじり)方向の入力に対しての耐久性が低下したりすることがある。異音や回転方向の入力に対しての耐久性低下を抑制するために、例えば特許文献1では、リバウンドクッションに油切れ防止のための凹部を設けて、凹部に積極的に作動液を導くことで油膜切れを抑制し摩擦抵抗を低減するようになっている。
【0070】
ここで、リバウンドクッションは、弾性体であり、弾性変形することによって伸び切り時の衝撃を緩和するものである。このことから、リバウンドクッションに凹部を設ける場合、弾性変形後も油膜すなわち隙間を保持できるようにするためには比較的大きな凹部を設ける必要がある。リバウンドクッションは、凹部が大きくなればなるほど周辺部が薄肉化される。リバウンドクッションは、弾性体であることから、凹部が形成されることによって軸方向の入力に対する耐久性が低下してしまう可能性がある。すなわち、伸び切り時の衝撃が大きい場合に、リバウンドクッションの凹部の周辺部のひずみが局部的に大きくなり、凹部を起点にリバウンドクッションが破損に至る可能性がある。このように、リバウンドクッションに凹部を設けた場合、凹部を設けない形状と比較して、回転(ねじり)方向の入力に対しての耐久性が向上する反面、軸方向の入力に対する耐久性が低下する可能性がある。
【0071】
第1実施形態の油圧緩衝器11は、支持部材80の、リバウンドクッション81と当接する対向面93に、複数の内側円弧状凹部96が円周方向に所定間隔をおいて設けられている。また、支持部材80の対向面93に、複数の外側円弧状凹部97が支持部材80の円周方向に所定間隔をおいて設けられている。これにより、弾性体であるリバウンドクッション81に凹部を設けなくても済むことから、圧縮変形時にリバウンドクッション81に生じる局部的なひずみを抑制することが可能となる。よって、リバウンドクッション81の軸方向の入力に対する耐久性の低下を抑制することができる。また、支持部材80の内側円弧状凹部96および外側円弧状凹部97に油液Lを溜めておくことができるため、リバウンドクッション81が支持部材80に対し押し付けられた状態で相対回転する際にリバウンドクッション81と支持部材80との間の油膜切れを抑制して、回転し易くすることができる。よって、リバウンドクッション側に溝を設ける場合よりも、リバウンドクッション81の回転方向の耐久性の低下を抑制することができ、異音の発生を抑制することができる。しかも、リバウンドクッション81と支持部材80とが相対回転すると、リバウンドクッション81は、支持部材80の複数の内側円弧状凹部96および複数の外側円弧状凹部97との当接面が変化し、常に一定ではなくなる。このため、リバウンドクッション81の支持部材80への当接部分に発生する負荷が分散される。よって、リバウンドクッション側に溝を設けた場合よりも確実に、リバウンドクッション81の回転方向の耐久性の低下を抑制することができる。したがって、油圧緩衝器11は、弾性体であるリバウンドクッション81の耐久性の低下を抑制することが可能となる。
【0072】
また、油圧緩衝器11は、対向面93に、複数の内側円弧状凹部96と、複数の外側円弧状凹部97とが、支持部材80の径方向に所定間隔をおいて設けられている。これにより、リバウンドクッション81と支持部材80との間の油膜切れを一層抑制して、リバウンドクッション81の回転方向の耐久性の低下を一層抑制することができ、異音の発生を一層抑制することができる。
【0073】
また、油圧緩衝器11は、内側円弧状凹部96および外側円弧状凹部97が、対向面93を支持部材80の軸方向に見て円弧状であるため、内側円弧状凹部96および外側円弧状凹部97の開口面積を大きくすることができる。したがって、リバウンドクッション81と支持部材80との間の油膜切れを一層抑制して、リバウンドクッション81の回転方向の耐久性の低下を一層抑制することができ、異音の発生を一層抑制することができる。
【0074】
また、油圧緩衝器11は、外側円弧状凹部97および内側円弧状凹部96が、基面部95の径方向外側の端縁部および径方向内側の端縁部のいずれにも抜けておらず、基面部95の範囲内に設けられている。よって、ピストンロッドの伸び切り時に、外側円弧状凹部97の開口部および内側円弧状凹部96の開口部が、リバウンドクッション81の端面123で閉塞されることになって、伸び切り前に外側円弧状凹部97に溜まっていた油液Lおよび内側円弧状凹部96に溜まっていた油液Lが、伸び切り時にも外側円弧状凹部97および内側円弧状凹部96に残ることになる。したがって、リバウンドクッション81と支持部材80との間の油膜切れを一層抑制して、リバウンドクッション81の回転方向の耐久性の低下を一層抑制することができ、異音の発生を一層抑制することができる。
【0075】
また、油圧緩衝器11は、支持部材80が、弾性体(ゴム等)であるリバウンドクッション81よりも耐久性が高い金属等からなるため、支持部材80に永久ひずみ(塑性変形)が生じて油溝である外側円弧状凹部97および内側円弧状凹部96がなくなることがない。
【0076】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態を主に
図5および
図6に基づいて第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
【0077】
第2実施形態においては、支持部材80とは一部異なる、
図5および
図6に示す支持部材80Aが、支持部材80にかえて用いられる。支持部材80Aは、支持部91とは一部異なる支持部91Aを有している。支持部91Aは、対向面93とは一部異なる対向面93Aを対向面93にかえて有している。
【0078】
対向面93Aは、円板状の支持部91Aの中心軸線に対し直交して広がる平面状である基面部95Aと、基面部95Aから支持部材80Aの軸方向における固定部92側に凹む有底溝からなる第1直線状凹部96A(凹部)と、基面部95Aから支持部材80Aの軸方向における固定部92側に凹む有底溝からなる第2直線状凹部97A(凹部)とを有している。
【0079】
第1直線状凹部96Aは、支持部91Aの径方向に沿う第1の方向に延びる直線状をなしている。第1直線状凹部96Aは、支持部91Aの内周面および外周面の少なくとも一方に抜けている。対向面93Aには、第1直線状凹部96Aが、互いに平行をなし、等間隔に並んで複数形成されている。
【0080】
第2直線状凹部97Aは、支持部91Aの径方向に沿う第2の方向に延びる直線状をなしている。第2の方向は第1の方向に対して直交する方向である。よって、第2直線状凹部97Aは、第1直線状凹部96Aに対して直交する方向に延びている。第2直線状凹部97Aは、支持部91Aの内周面および外周面の少なくとも一方に抜けている。対向面93Aには、第2直線状凹部97Aが、互いに平行をなし、等間隔に並んで複数形成されている。隣り合う第2直線状凹部97Aの間隔は、隣り合う第1直線状凹部96Aの間隔と同等になっている。
【0081】
第1直線状凹部96Aと第2直線状凹部97Aとは交差するように配置されている。よって、対向面93Aには、複数の第1直線状凹部96Aと複数の第2直線状凹部97Aとが格子状に配置されている。隣り合う第1直線状凹部96Aと第1直線状凹部96Aと、いずれもこれらに交差する、隣り合う第2直線状凹部97Aと第2直線状凹部97Aとが、対向面93Aを支持部材80Aの軸方向に見て角形状、具体的には四角形状をなす。対向面93Aには、このように隣り合う二本の第1直線状凹部96Aと隣り合う二本の第2直線状凹部97Aとによって、対向面93Aを支持部材80Aの軸方向に見て角形状に形成される角形凹部131Aが多数、第1の方向に隣り合うもの同士が第2直線状凹部97Aを共通させ、第2の方向に隣り合うもの同士が第1直線状凹部96Aを共通させるようにして、第1の方向および第2の方向に均等に並べられている。
【0082】
よって、支持部材80Aには、対向面93Aに複数の角形凹部131Aが、支持部材80Aの円周方向に所定間隔をおいて設けられている。また、支持部材80Aには、対向面93Aに複数の角形凹部131Aが、支持部材80Aの径方向に所定間隔をおいて設けられている。
【0083】
全ての第1直線状凹部96Aと全ての第2直線状凹部97Aとは、機械加工、塑性加工あるいはレーザ加工等の表面テクスチャリングによって支持部材80Aに形成される。よって、全ての角形凹部131Aも、表面テクスチャリングによって支持部材80Aに形成される。
【0084】
支持部材80Aが、支持部材80と同様にして固定部92においてピストンロッド50(
図2参照)に固定される。この状態で、支持部91Aの基面部95Aがピストンロッド50(
図2参照)の中心軸線に対して垂直に広がる。すると、支持部材80Aは、ピストンロッド50(
図2参照)が内側に挿入された状態でピストンロッド50(
図2参照)に設けられる。また、ロッドガイド26(
図1参照)は、この支持部材80Aのピストン45(
図1参照)とは反対側に配置される。
【0085】
リバウンドクッション81(
図1参照)は、第1実施形態と同様にして、支持部材80Aとロッドガイド26(
図1参照)との間に配置される。その際に、リバウンドクッション81(
図2参照)は、端面123(
図2参照)が支持部材80Aの対向面93Aと対向し、端面124がロッドガイド26(
図1参照)の端面37(
図1参照)と対向する。よって、支持部材80Aは、対向面93Aにおいてリバウンドクッション81(
図2参照)の端面123(
図2参照)に対向し、リバウンドクッション81(
図2参照)との相対位置によって対向面93Aが端面123(
図2参照)に当接する。
【0086】
第2実施形態において、リバウンドクッション81(
図2参照)は、基本的に端面123(
図2参照)で支持部材80Aの対向面93Aに当接した状態で、ピストンロッド50(
図2参照)と共に移動する。そして、ピストンロッド50(
図1参照)がシリンダ17(
図1参照)から延出する方向に移動して伸び切り側の所定位置に位置すると、リバウンドクッション81(
図2参照)は、端面124(
図2参照)でロッドガイド26(
図1参照)の端面37(
図1参照)に当接する。ピストンロッド50(
図1参照)がさらに伸び切り側に移動すると、リバウンドクッション81(
図1参照)は、支持部材80Aによってロッドガイド26(
図1参照)に押し付けられ軸方向に圧縮変形して、支持部材80Aを介してピストンロッド50(
図1参照)に抵抗力を付与し、ピストンロッド50(
図1参照)を伸び切り位置で停止させる。これにより、リバウンドクッション81(
図1参照)は、ピストンロッド50(
図1参照)の伸び切り時にロッドガイド26(
図1参照)と当接して、ピストンロッド50(
図1参照)をシリンダ17(
図1参照)に対し停止させる際の衝撃を緩和する。
【0087】
第2実施形態では、支持部材80Aの、リバウンドクッション81(
図2参照)と当接する対向面93Aに複数の角形凹部131Aが支持部材80Aの円周方向に所定間隔をおいて設けられている。これにより、弾性体であるリバウンドクッション81(
図2参照)に凹部を設けなくても済む。また、支持部材80Aの複数の角形凹部131Aに油液Lを溜めておくことができる。しかも、リバウンドクッション81(
図2参照)と支持部材80Aとが相対回転すると、リバウンドクッション81(
図2参照)は、支持部材80Aの複数の角形凹部131Aとの当接面が変化し、常に一定ではなくなる。したがって、弾性体であるリバウンドクッション81(
図2参照)の耐久性の低下を抑制することが可能となる。
【0088】
また、第2実施形態の支持部材80Aは、対向面93Aに複数の角形凹部131Aが、支持部材80Aの径方向に所定間隔をおいて設けられている。これにより、リバウンドクッション81(
図2参照)と支持部材80Aとの間の油膜切れを一層抑制して、リバウンドクッション81(
図2参照)の回転方向の耐久性の低下を一層抑制することができ、異音の発生を一層抑制することができる。
【0089】
また、第2実施形態の支持部材80Aは、角形凹部131Aが、対向面93Aを支持部材80Aの軸方向に見て角形状であるため、表面テクスチャリングによって角形凹部131Aを容易に形成することができる。
【0090】
なお、隣り合う二本の第1直線状凹部96Aと、これらに交差する、隣り合う二本の第2直線状凹部97Aとで四角形状の角形凹部131Aを構成する以外にも、三角形状等の他の角形状の角形凹部を構成するように複数の直線状凹部を形成することが可能である。例えば、平行に隣り合う二本の直線状凹部と、平行に隣り合う二本の直線状凹部と、平行に隣り合う二本の直線状凹部とで、六角形状すなわちハニカム状の角形凹部を形成しても良い。あるいは、ブラスト加工によって多数の凹部を形成しても良い。
【0091】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態を主に
図7および
図8に基づいて第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
【0092】
第3実施形態においては、支持部材80とは一部異なる、
図7および
図8に示す支持部材80Bが、支持部材80にかえて用いられる。支持部材80Bは、支持部91とは一部異なる支持部91Bを有している。支持部91Bは、対向面93とは一部異なる対向面93Bを対向面93にかえて有している。
【0093】
対向面93Bは、円板状の支持部91Bの中心軸線に対し直交して広がる平面状である。対向面93Bには、対向面93Bから支持部材80Bの軸方向における固定部92側に凹んで支持部91Bを軸方向に貫通する貫通孔141B(凹部)が設けられている。支持部材80Bには、貫通孔141Bが、支持部材80Bの円周方向に等間隔に並んで複数、具体的には4箇所形成されている。これらの貫通孔141Bは、支持部材80Bの中心軸線から等距離の位置に配置されている。これらの貫通孔141Bは、機械加工によって支持部材80Bに形成される。
【0094】
支持部材80Bが、支持部材80と同様にして固定部92においてピストンロッド50(
図2参照)に固定される。この状態で、支持部91Bの対向面93Bがピストンロッド50(
図2参照)の中心軸線に対して垂直に広がる。すると、支持部材80Bは、ピストンロッド50(
図2参照)が内側に挿入された状態でピストンロッド50(
図2参照)に設けられる。また、ロッドガイド26(
図1参照)は、この支持部材80Bのピストン45(
図1参照)とは反対側に配置される。
【0095】
リバウンドクッション81(
図1参照)は、第1実施形態と同様にして、支持部材80Bとロッドガイド26(
図1参照)との間に配置される。その際に、リバウンドクッション81(
図2参照)は、端面123(
図2参照)が支持部材80Bの対向面93Bと対向し、端面124(
図2参照)がロッドガイド26(
図1参照)の端面37(
図1参照)と対向する。よって、支持部材80Bは、対向面93Bにおいてリバウンドクッション81(
図2参照)の端面123(
図2参照)に対向し、リバウンドクッション81(
図2参照)との相対位置によって対向面93Bが端面123(
図2参照)に当接する。
【0096】
第3実施形態において、リバウンドクッション81(
図2参照)は、基本的に端面123(
図2参照)で支持部材80Bの対向面93Bに当接した状態で、ピストンロッド50(
図2参照)と共に移動する。そして、ピストンロッド50(
図1参照)がシリンダ17(
図1参照)から延出する方向に移動して伸び切り側の所定位置に位置すると、リバウンドクッション81(
図2参照)は、端面124(
図2参照)でロッドガイド26(
図1参照)の端面37(
図1参照)に当接する。ピストンロッド50(
図1参照)がさらに伸び切り側に移動すると、リバウンドクッション81(
図2参照)は、支持部材80Bによってロッドガイド26(
図1参照)に押し付けられ軸方向に圧縮変形して、支持部材80Bを介してピストンロッド50(
図1参照)に抵抗力を付与し、ピストンロッド50(
図1参照)を伸び切り位置で停止させる。これにより、リバウンドクッション81(
図1参照)は、ピストンロッド50(
図1参照)の伸び切り時にロッドガイド26(
図1参照)と当接して、ピストンロッド50(
図1参照)をシリンダ17(
図1参照)に対し停止させる際の衝撃を緩和する。
【0097】
第3実施形態では、支持部材80Bの、リバウンドクッション81(
図2参照)と当接する対向面93Bに複数の貫通孔141Bが支持部材80Bの円周方向に所定間隔をおいて設けられている。これにより、弾性体であるリバウンドクッション81(
図2参照)に凹部を設けなくても済む。また、支持部材80Bの複数の貫通孔141Bから油液Lをリバウンドクッション81(
図2参照)に供給して常時接触させることができる。しかも、リバウンドクッション81(
図2参照)と支持部材80Bとが相対回転すると、リバウンドクッション81(
図2参照)は、支持部材80Bの複数の貫通孔141Bとの当接面が変化し、常に一定ではなくなる。したがって、弾性体であるリバウンドクッション81(
図2参照)の耐久性の低下を抑制することが可能となる。
【0098】
また、第3実施形態の支持部材80Bは、貫通孔141Bが、支持部材80Bの支持部91Bを支持部材80Bの軸方向に貫通するため、油液Lを積極的に供給してリバウンドクッション81(
図2参照)に接触させ続けることができる。したがって、弾性体であるリバウンドクッション81(
図2参照)の耐久性の低下を一層抑制することが可能となる。また、貫通孔141Bは、加工による形成が容易となる。
【0099】
なお、貫通孔141Bに油液Lが流れるとき、過度な流体抵抗が発生すると、ねらいの減衰特性から乖離が発生し、乗り心地や操縦安定性の悪化等に繋がる恐れがある。このことから、例えば、リバウンドクッション81(
図2参照)の端面123(
図2参照)を平面状として、端面123(
図2参照)を対向面93Bに面接触させることによって、貫通孔141Bをリバウンドクッション81(
図2参照)で常に閉塞させるなど、可能な限り差圧が発生しないようにすることが望ましい。
【0100】
{第1~第3実施形態の他の第1適用例}
他の第1適用例は、
図9に示すように、内筒15Cに挿入されて図示略のピストンに連結されるピストンロッド50Cの図示略のピストンとロッドガイド26Cとの間に、ストッパ151Cと、支持部材152Cと、リバウンドスプリング153Cと、支持部材80Cと、弾性体であるリバウンドクッション81Cとが設けられている。
【0101】
ストッパ151Cは、図示略のピストンよりもロッドガイド26C側に配置され、ピストンロッド50Cが内側に挿入された状態でピストンロッド50Cに固定されている。
【0102】
支持部材152Cは、ストッパ151Cとロッドガイド26Cとの間に配置され、ピストンロッド50Cが内側に挿入された状態でピストンロッド50Cに設けられている。
【0103】
リバウンドスプリング153Cは、コイルスプリングであり、支持部材152とロッドガイド26Cとの間に配置され、ピストンロッド50Cが内側に挿入された状態でピストンロッド50Cに設けられている。
【0104】
支持部材80Cは、リバウンドスプリング153Cとロッドガイド26Cとの間に配置され、ピストンロッド50Cが内側に挿入された状態でピストンロッド50Cに設けられている。ロッドガイド26Cは、支持部材80Cの図示略のピストンとは反対側に配置されて内筒15Cに設けられている。支持部材80Cは、支持部材80と同様の材質となっている。なお、支持部材80Cは樹脂材料、支持部材80は金属材で構成してもよい。樹脂材料としては、TPE(熱可塑性エラストマー)、PA(ポリアミド)、PPA(芳香族ポリアミド)、PC(ポリカーボネート)、POM(ポリアセタール)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)や、それらにカーボン系補強材、ガラス繊維などの補強効果のある充填材を含んだ材質でも良い。
【0105】
リバウンドクッション81Cは、支持部材80Cとロッドガイド26Cとの間に配置され、ピストンロッド50Cが内側に挿入された状態でピストンロッド50Cに設けられている。リバウンドクッション81Cは、リバウンドクッション81と同様の材質となっている。リバウンドクッション81Cは、ピストンロッド50Cの伸び切り時にロッドガイド26Cと当接して衝撃を緩和する。その後、支持部材80Cがロッドガイド26Cに当接しリバウンドスプリング153Cを圧縮変形させて衝撃を緩和する。
【0106】
このような他の第1適用例において、支持部材80Cのリバウンドクッション81Cと当接する対向面93Cを、第1実施形態の基面部95、内側円弧状凹部96および外側円弧状凹部97を含む対向面93の構成としたり、第2実施形態の基面部95A、第1直線状凹部96Aおよび第2直線状凹部97Aを含む対向面93Aの構成としたり、第3実施形態の貫通孔141Bが設けられた対向面93Bの構成としたりすることができる。
【0107】
{第1~第3実施形態の他の第2適用例}
他の第2適用例は、
図10に示すように、内筒15Dに挿入されて図示略のピストンに連結されるピストンロッド50Dのピストンと図示略のロッドガイドとの間に、ストッパ151Dと、支持部材152Dと、リバウンドスプリング153Dと、支持部材80Dと、スラストワッシャ161Dとが設けられている。
【0108】
ストッパ151Dは、図示略のピストンよりも図示略のロッドガイド側に配置され、ピストンロッド50Dが内側に挿入された状態でピストンロッド50Dに固定されている。
【0109】
支持部材152Dは、ストッパ151Dと図示略のロッドガイドとの間に配置され、ピストンロッド50Dが内側に挿入された状態でピストンロッド50Dに設けられている。
【0110】
リバウンドスプリング153Dは、コイルスプリングであり、支持部材152Dと図示略のロッドガイドとの間に配置され、ピストンロッド50Dが内側に挿入された状態でピストンロッド50Dに設けられている。
【0111】
支持部材80Dは、リバウンドスプリング153Dと図示略のロッドガイドとの間に配置され、ピストンロッド50Dが内側に挿入された状態でピストンロッド50Dに設けられている。図示略のロッドガイドは、支持部材80Dの図示略のピストンとは反対側に配置されて内筒15Dに設けられている。支持部材80Dは、支持部材80と同様の材質となっている。なお、支持部材80Dは樹脂材料、支持部材80は金属材で構成してもよい。樹脂材料としては、TPE(熱可塑性エラストマー)、PA(ポリアミド)、PPA(芳香族ポリアミド)、PC(ポリカーボネート)、POM(ポリアセタール)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)や、それらにカーボン系補強材、ガラス繊維などの補強効果のある充填材を含んだ材質でも良い。
【0112】
スラストワッシャ161Dは、支持部材80Dと図示略のロッドガイドとの間に配置され、ピストンロッド50Dが内側に挿入された状態でピストンロッド50Dに設けられている。スラストワッシャ161Dは、自己潤滑性を有する樹脂材料からなっている。スラストワッシャ161Dは、ピストンロッド50Dの伸び切り時に図示略のロッドガイドと当接する。その後、リバウンドスプリング153Dが圧縮変形して衝撃を緩和する。
【0113】
このような他の第2適用例において、支持部材80Dのスラストワッシャ161Dと当接する対向面93Dを、第1実施形態の基面部95、内側円弧状凹部96および外側円弧状凹部97を含む対向面93の構成としたり、第2実施形態の基面部95A、第1直線状凹部96Aおよび第2直線状凹部97Aを含む対向面93Aの構成としたり、第3実施形態の貫通孔141Bが設けられた対向面93Bの構成としたりすることができる。
【符号の説明】
【0114】
11…油圧緩衝器、17…シリンダ、26,26C…ロッドガイド(伸切規制部材)、45…ピストン、50,50C…ピストンロッド、80,80A,80B,80C…支持部材、81,81C…リバウンドクッション(弾性体)、93,93A,93B,93C…対向面、96…内側円弧状凹部(凹部)、97…外側円弧状凹部(凹部)、131B…角形凹部(凹部)、141B…貫通孔(凹部)。