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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048445
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】印刷材容器
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20240402BHJP
【FI】
B41J2/175 167
B41J2/175 169
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154348
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】林 雅洋
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 真也
(72)【発明者】
【氏名】田邉 裕磨
(72)【発明者】
【氏名】大木 聡
(72)【発明者】
【氏名】福田 祐士
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056KC02
2C056KC06
2C056KC30
(57)【要約】
【課題】貯留室を構成する部材が貯留していた印刷材が容易に判別できる手段を提供する。
【解決手段】インクカートリッジ30は、インクを貯留する貯留室46、およびインクを流出する流出口47を有する容器本体31を備える。容器本体31は、上壁44から突出しており、インクの種別に応じて配置が異なる識別部位51を有している。識別部位51の内部空間56は、貯留室46と連続する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷材を貯留する貯留室、および印刷材を流出する流出口を有する容器本体を備えており、
上記容器本体は、外面から突出または凹陥しており、印刷材の種別に応じて外形または配置が異なる識別部位を有しており
上記識別部位の壁の内面は、上記容器本体内において空間を区画しており、
上記空間は、上記貯留室と連続する印刷材容器。
【請求項2】
上記印刷材容器は、画像記録装置のケースに装着されてヘッドへ印刷材を供給するものであり、
上記空間は、上記印刷材容器が上記ケースに装着された装着姿勢において、上記貯留室の底面よりも上方に位置する請求項1に記載の印刷材容器。
【請求項3】
上記印刷材容器は、画像記録装置のケースに装着されてヘッドへ印刷材を供給するものであり、
上記空間は、上記印刷材容器が上記ケースに装着された装着姿勢において、上記流出口よりも上方に位置する請求項1に記載の印刷材容器。
【請求項4】
上記印刷材容器は、画像記録装置のケースに装着されてヘッドへ液体である印刷材を供給するものであり、
上記空間は、上記印刷材容器が上記ケースに装着された装着姿勢において、上記貯留室に初期に充填された印刷材の液面よりも上方に位置する請求項1に記載の印刷材容器。
【請求項5】
上記印刷材容器は、画像記録装置のケースに装着されてヘッドへ液体である印刷材を供給するものであり、
上記識別部位は、上記外面から突出しており、
上記空間は、上記印刷材容器が上記ケースに装着された装着姿勢において、上記印刷材容器の上面よりも上方に位置する請求項1に記載の印刷材容器。
【請求項6】
上記流出口は、上記印刷材容器の装着向きの前面に位置する請求項5に記載の印刷材容器。
【請求項7】
上記前面の少なくとも一部を覆うカバー部材を更に備えた請求項6に記載の印刷材容器。
【請求項8】
上記容器本体は、合成樹脂製の一体成型品である請求項1に記載の印刷材容器。
【請求項9】
上記印刷材容器は、画像記録装置のケースに装着されてヘッドへ液体である印刷材を供給するものであり、
上記識別部位は、上記ケースの被嵌合部と嵌合する請求項1に記載の印刷材容器。
【請求項10】
上記識別部位は、装着向きと反対向きを向く面が上記被嵌合部と当接する請求項9に記載の印刷材容器。
【請求項11】
上記容器本体の上面を覆う上カバーをさらに備えており、
上記識別部位は、上記上面に位置しており、上記上カバーの貫通孔を通じて外部へ露出されている請求項1に記載の印刷材容器。
【請求項12】
上記容器本体を囲むカバーをさらに備えており、
上記識別部位は、上記カバーの貫通孔を通じて外部へ露出されている請求項1に記載の印刷材容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷材を貯留する印刷材容器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、単一色のインクが封入された単色インクカートリッジと、マゼンタ・シアン・イエロー・黒の複数色のインクが封入されたカラーカートリッジと、が開示される。特許文献1に開示される技術では、オペレータは、単色インクカートリッジとカラーカートリッジのいずれがカートリッジケースに装着されたかを、透過窓を通して視覚によって確認できる。これにより、オペレータが、カートリッジを誤った位置に装着した状態で装置を動作させることが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-86408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インクが消費された使用後のカートリッジは、再利用することが想定される。カートリッジの再利用において、カートリッジは構成部品に分解されて、インクを貯留していた部品は洗浄される。しかしながら、洗浄された部品にインクの成分が残っていると、再利用において充填されたインクの成分と反応するおそれがる。したがって、洗浄された部品がどのような種類のインクを貯留していたものか目視判定できることが望ましい。
【0005】
本発明は、前述された事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、貯留室を構成する部材が貯留していた印刷材が容易に判別できる手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明に係る印刷材容器は、印刷材を貯留する貯留室、および印刷材を流出する流出口を有する容器本体を備える。上記容器本体は、外面から突出または凹陥しており、印刷材の種別に応じて外形または配置が異なる識別部位を有している。上記識別部位の壁の内面は、上記容器本体内において空間を区画している。上記空間は、上記貯留室と連続する。
【0007】
識別部位により、貯留室に貯留されていた印刷材の種別が判定できる。
【0008】
(2) 上記印刷材容器は、画像記録装置のケースに装着されてヘッドへ印刷材を供給するものであり、上記空間は、上記印刷材容器が上記ケースに装着された装着姿勢において、上記貯留室の底面よりも上方に位置してもよい。
【0009】
装着姿勢において、識別部位の内面が区画する空間に印刷材が滞留し難い。
【0010】
(3) 上記印刷材容器は、画像記録装置のケースに装着されてヘッドへ印刷材を供給するものであり、上記空間は、上記印刷材容器が上記ケースに装着された装着姿勢において、上記流出口よりも上方に位置してもよい。
【0011】
装着姿勢において、識別部位の内面が区画する空間に進入した印刷材が流出口から流出し易い。
【0012】
(4) 上記印刷材容器は、画像記録装置のケースに装着されてヘッドへ液体である印刷材を供給するものであり、上記空間は、上記印刷材容器が上記ケースに装着された装着姿勢において、上記貯留室に初期に充填された印刷材の液面よりも上方に位置してもよい。
【0013】
装着姿勢において、識別部位の内面が区画する空間に印刷材が滞留し難い。
【0014】
(5) 上記印刷材容器は、画像記録装置のケースに装着されてヘッドへ液体である印刷材を供給するものであり、上記識別部位は、上記外面から突出しており、上記空間は、上記印刷材容器が上記ケースに装着された装着姿勢において、上記印刷材容器の上面よりも上方に位置してもよい。
【0015】
装着姿勢において、識別部位の内面が区画する空間に印刷材が滞留し難い。
【0016】
(6) 上記流出口は、上記印刷材容器の装着向きの前面に位置してもよい。
【0017】
(7) 上記印刷材容器は、上記前面の少なくとも一部を覆うカバー部材を更に備えてもよい。
【0018】
カバー部材により流出口が保護される。
【0019】
(8) 上記容器本体は、合成樹脂製の一体成型品であってもよい。
【0020】
上記容器本体をブロー成形により成型できる。
【0021】
(9) 上記印刷材容器は、画像記録装置のケースに装着されてヘッドへ液体である印刷材を供給するものであり、上記識別部位は、上記ケースの被嵌合部と嵌合してもよい。
【0022】
識別部位が被嵌合部に対してずれた位置に位置すると、オペレータが印刷材容器をケースに装着するときに、識別部位が被嵌合部と嵌合できない。一方、識別部位が被嵌合部と嵌合したことにより、オペレータは、ケースの適切な位置に印刷材容器が装着されたことを直ちに認識できる。
【0023】
(10) 上記識別部位は、装着向きと反対向きを向く面が上記被嵌合部と当接してもよい。
【0024】
識別部位が被嵌合部と嵌合した状態では、識別部位の反対向きを向く面が被嵌合部と当接するので、印刷材容器がケースから抜けることが防止される。識別部位は、被嵌合部と嵌合する物理キーとしての機能を有するだけでなく、印刷材容器がケースから抜けることを防止するロック機能も有する。
【0025】
(11) 上記印刷材容器は、上記容器本体の上面を覆う上カバーをさらに備えており、上記識別部位は、上記上面に位置しており、上記上カバーの貫通孔を通じて外部へ露出されていてもよい。
【0026】
(12) 上記印刷材容器は、上記容器本体を囲むカバーをさらに備えており、上記識別部位は、上記カバーの貫通孔を通じて外部へ露出されていてもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、貯留室を構成する部材が貯留していた印刷材が容易に判別できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、プリンタ10の内部構造を模式的に示す縦断面図である。
図2図2は、インクカートリッジ30の斜視図である。
図3図3は、インクカートリッジ30の縦断面図である。
図4図4(A)から図4(C)は、インクカートリッジ30とロック部材104とを示す平面図である。
図5図5は、変形例に係るインクカートリッジ30の縦断面図である。
図6図6は、変形例に係るインクカートリッジ30の縦断面図である。
図7図7は、変形例に係るインクカートリッジ30の縦断面図である。
図8図8は、変形例に係るインクカートリッジ30の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明が具体化された一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。
【0030】
以下では、インクカートリッジ30は、カートリッジケース110に対して水平方向(重力方向に対し直交する方向)に挿入及び脱抜される。したがって、前後方向8及び左右方向9は水平方向である前提として説明がなされるが、必ずしも前後方向8は水平方向でなくてもよい。また、前後方向8に直交する鉛直方向が上下方向7と定義される。上下方向7及び前後方向8と直交する方向が左右方向9と定義される。なお、インクカートリッジ30がカートリッジケース110に装着されて使用される状態とは、インクカートリッジ30がカートリッジケース110の装着位置まで挿入された状態である。装着位置は、カートリッジケース110に設けられたインクニードル102がインクカートリッジ30に設けられた流出口47に挿入されて互いに連結される位置である。また、以下では、インクカートリッジ30がカートリッジケース110に装着されて使用される状態の、当該インクカートリッジ30の姿勢を使用姿勢と称する。
【0031】
また、以下の説明では、前方は、前後方向8においてインクカートリッジ30がカートリッジケース110に対して挿入される向き(装着向きの一例)をいい、後方は、前後方向8においてインクカートリッジ30がカートリッジケース110に対して脱抜される向きをいう。「前方を向く」とは、前方の成分を含む方向を向くことを含み、「後方を向く」とは、後方の成分を含む方向を向くことを含む。また、「下方を向く」とは、下方の成分を含む方向を向くことを含み、「上方を向く」とは、上方の成分を含む方向を向くことを含む。例えば、「前面が前方を向く」とは、前面が前方を向いていてもよいし、前面が前方に対して傾斜した方向を向いていてもよい。
【0032】
[プリンタ10の概要]
図1に示されるように、プリンタ10は、インクジェット記録方式に基づいて、用紙に対してインク滴を吐出することにより画像を記録する画像形成装置であり、例えばインクジェットプリンタである。プリンタ10は、カートリッジケース110(ケースの一例)を備える。カートリッジケース110には、インクカートリッジ30(印刷材容器の一例)が装着される。カートリッジケース110には、その一面に開口112が形成されている。インクカートリッジ30は、開口112を通じてカートリッジケース110に前方へ挿入され、或いは開口112を通じてカートリッジケース110から後方へ抜き出される。なお、図1においては、カートリッジケース110へのインクカートリッジ30の装着が完了した状態が示されている。つまり、図1において、インクカートリッジ30は装着状態である。この状態にあるインクカートリッジ30の姿勢が、使用姿勢である。
【0033】
インクカートリッジ30は、液体を貯留しており、例えばプリンタ10で使用可能なインク(印刷材の一例)を貯留する。カートリッジケース110へのインクカートリッジ30の装着が完了した状態において、インクカートリッジ30と記録ヘッド21とは、インクチューブ20を介して接続されている。記録ヘッド21は、インクカートリッジ30から供給されたインクを複数のノズル29から吐出する。具体的には、記録ヘッド21が備えるヘッド制御基板が、複数のノズル29に対応して設けられた複数のピエゾ素子29Aに選択的に駆動電圧を印加する。これにより、ノズル29から選択的にインクが吐出される。つまり、記録ヘッド21は、カートリッジケース110に装着されたインクカートリッジ30に貯留されたインクを消費する。
【0034】
プリンタ10は、給紙トレイ15と、給紙ローラ23と、搬送ローラ対25と、プラテン26と、排出ローラ対27と、排紙トレイ16と、を備えている。給紙ローラ23は、給紙トレイ15上の用紙を搬送路24へ向けて給送する。搬送路24へ給送された用紙は、やがて搬送ローラ対25に到達する。搬送ローラ対25は、搬送ローラ対25に到達した用紙をプラテン26上へ搬送する。記録ヘッド21は、プラテン26上を通過する用紙に対してインクを選択的に吐出する。これにより、用紙に画像が記録される。プラテン26を通過した用紙は、排出ローラ対27に到達する。排出ローラ対27は、排出ローラ対27に到達した用紙を、搬送路24の最下流側に位置する排紙トレイ16に排出する。
【0035】
[カートリッジケース110]
図1に示されるように、カートリッジケース110は、カートリッジケース101と、インクニードル102と、ロック部材104(被嵌合部の一例)と、を備えている。カートリッジケース110には、インクカートリッジ30が収容可能である。
【0036】
図1に示されるように、カートリッジケース101は、カートリッジケース110の筐体を形成する箱形状である。開口112は、ユーザがプリンタ10を使用するときに対面する面であるプリンタ10のユーザインタフェース面に露出し得る。
【0037】
インクニードル102は、中空の管状となっており、カートリッジケース101の終面103の下部に位置している。インクニードル102は、カートリッジケース101の終面103において、カートリッジケース110に装着されたインクカートリッジ30の流出口47に対応する位置にある。インクニードル102は、カートリッジケース101の終面103から前後方向8に沿って突出しており、その先端が後方へ向けて開口している。なお、インクニードル102の先端は、平坦であってもよく、尖っていてもよい。
【0038】
ロック部材104は、カートリッジケースの天面105の開口112付近において、下向きに突出している。ロック部材104は、カートリッジケース110に挿入されたインクカートリッジ30の識別部位51に対応する位置にある。ロック部材104が、識別部位51に対して後方から当接することにより、インクカートリッジ30が後向きへ移動せずに、カートリッジケース110に装着された状態に保持される。
【0039】
[インクカートリッジ30]
インクカートリッジ30は液体であるインクが貯留される容器である。図2に示されるように、インクカートリッジ30は、容器本体31と、カバー32と、を有する。
【0040】
図2に示されるように、容器本体31は、左右方向9の寸法が、上下方向7の寸法および前後方向8の寸法よりも小さい薄平な立方体形状である。
【0041】
容器本体31は、前壁40と、前後方向8において前壁40と対をなす後壁41と、前壁40と後壁41とを繋ぐ左壁42(第1側壁の一例)と、左右方向9において左壁42と対をなす右壁43(第2側壁の一例)と、前壁40と後壁41とを繋ぐ上壁44と、上下方向7において上壁44と対をなす下壁45と、を有する。前壁40の外面は前方を向いている。後壁41の外面は後方を向いている。左壁42の外面は左方を向いている。右壁43の外面は右方を向いている。上壁44の外面は上方を向いている。下壁45の外面は下方を向いている。
【0042】
前壁40、後壁41、左壁42、右壁43、上壁44及び下壁45は、容器本体31の内部空間の貯留室46を区画する。貯留室46は、前壁40と後壁41との間に位置する。前壁40、後壁41、左壁42、右壁43、上壁44及び下壁45は、貯留室46に貯留されたインクの液面を外部から視認できる程度の透光性を有する。容器本体31は、例えば合成樹脂製の一体成型品である。
【0043】
前壁40の下方には、インクを流出するための流出口47が開口している。本実施形態は、流出口47は外部に開口しているが、流出口47は、バルブなどによって開閉されてもよい。流出口47は前方を向いている。
【0044】
図3に示されるように、容器本体31の内部において、流出口47から前後方向8に沿ってインク流路48(液体供給路)が延びている。インク流路48は、流出口47と貯留室46の下端付近とを繋いでいる。インク流路48の前端が流出口47である。貯留室46に貯留されたインクが、インク流路48を通じて流出口47から外部へ流出する。
【0045】
上壁44には、貯留室46の上端付近と外部とを繋ぐ大気開放路49が形成されている。大気開放路49を通じて外部と貯留室46との間で空気が流通可能である。大気開放路49によって、貯留室46の気体層が外部の大気圧となる。大気開放路49の上壁44の外面における開口は上方を向いている。なお、大気開放路49は、バルブや半透膜などによって塞がれていてもよい。
【0046】
図2に示されるように、右壁43の前端付近には、右壁43の外面から右方へ突出する突片50が位置する。図には現れていないが、左壁42の前端付近にも同様に、左壁42の外面から左方へ突出する突片50が位置する。
【0047】
図2および図3に示されるように、上壁44の外面には、識別部位51が位置する。識別部位51は、大気開放路49の後方に位置する。識別部位51は、上壁44の外面から上方へ突出している。識別部位51は、前方および上方を向く傾斜面52と、後方を向きロック面53と、右方を向く右側面54と、左方を向く左側面55とを有する。傾斜面52およびロック面53は、それぞれ四角形である。右側面54および左側面55は、それぞれ三角形である。
【0048】
識別部位51は、容器本体31と一体に成型されている。識別部位51の内面は、容器本体31内において内部空間56を区画している。内部空間56は、下向きに開口する空間であり、開口を通じて貯留室46と連続する。内部空間56は、装着姿勢において、上壁44よりも上方に位置する。
【0049】
識別部位51は、例えば貯留室46に貯留されるインクの種別に応じて上壁44の左右方向9における位置が異なる。インクの種別とは、インクの色や、インクの組成などである。図2に示されるインクカートリッジ30は、識別部位51が上壁44において左右方向9の中央C(図4参照)より右側に位置する。図4(A)に示されるように、カートリッジケース101のロック部材104は、識別部位51に対応する位置にある。したがって、カートリッジケース101にインクカートリッジ30が挿入されると、識別部位51の傾斜面52がロック部材104に摺動して、インクカートリッジ30の後ろ側が下方へ移動しつつ前方へ移動し、傾斜面52がロック部材104より前方へ移動すると、インクカートリッジ30の後ろ側が上方へ移動する。識別部位51のロック面53とロック部材104とが前後方向8に対向すると、ロック面53がロック部材104に当接する。これにより、識別部位51とロック部材104とが嵌合して、インクカートリッジ30が装着状態に保持される。
【0050】
例えば、インクカートリッジ30とインクの種別が異なるインクカートリッジ30Aにおいては、図4(B)に示されるように、識別部位51が上壁44において左右方向9の中央Cよりも左側に位置する。インクカートリッジ30Aが装着されるカートリッジケース101Aにおいては、ロック部材104は、左側の識別部位51に対応する位置にある。したがって、カートリッジケース101にインクカートリッジ30Aが挿入されると、識別部位51のロック面53とロック部材104とが前後方向8に対向して、ロック面53がロック部材104に当接する。これにより、識別部位51とロック部材104とが嵌合して、インクカートリッジ30Aが装着状態に保持される。
【0051】
仮に、図4(B)に示されるカートリッジケース101に、識別部位51が右側にあるインクカートリッジ30が挿入されると、図4(C)に示されるように、識別部位51とロック部材104とが前後方向8に対向しない。したがって、図4(B)に示されるカートリッジケース101にインクカートリッジ30が挿入されると、識別部位51とロック部材104とが嵌合しないので、インクカートリッジ30が装着状態に保持されない。
【0052】
カバー32(カバー部材の一例)は、容器本体31より小さな立方体形状であり、後方へ向く開口71を有する箱形状である。カバー32は、容器本体31の前壁40において、流出口47よりも上側の部分を覆うように容器本体31に取り付けられている。
【0053】
カバー32は、後方へ向く開口71を有する箱形状のカバー本体72と、カバー本体72において開口71を区画する左壁75の後端および右壁76の後端から、それぞれ後方へ延びる延出片73L,73Rと、を有する。
【0054】
カバー本体72は、前壁74と、前壁74の左端から後方へ延びる左壁75と、左右方向9において左壁75と対をなす右壁76と、前壁74の上端から後方へ延びる上壁77と、上下方向7において上壁77と対をなす下壁78と、を有する。前壁74の外面は前方を向いている。左壁75の外面は左方を向いている。右壁76の外面は右方を向いている。上壁77の外面は上方を向いている。下壁78の外面は下方を向いている。前壁74、左壁75、右壁76、上壁77、および下壁78は、カバー本体72の内部空間を区画する。
【0055】
カバー本体72の上下方向7に沿った寸法は、容器本体31の上下方向7に沿った寸法よりも小さい。カバー本体72の前後方向8に沿った寸法は、容器本体31の前後方向8に沿った寸法よりも小さい。カバー本体72の左右方向9に沿った寸法は、容器本体31の左右方向9に沿った寸法よりも若干大きい。
【0056】
右壁76の後端から延出片73Rが後方へ延びている。延出片73Rは、平板形状である。延出片73Rの上下方向7の中央付近には、延出片73Rを左右方向9に貫通する貫通孔79が位置する。貫通孔79には、突片50が挿入されている。貫通孔79は、突片50の外形よりも大きな長方形である。貫通孔79は、上下方向7に沿った寸法が前後方向8に沿った寸法よりも大きい。貫通孔79の上下方向7に沿った寸法は、突片50の上下方向7に沿った寸法よりも十分に大きい。したがって、突片50は、貫通孔79に挿入された状態において、上下方向7へ移動可能である。なお、図には現れていないが、左壁75にも同様に貫通孔79が位置する。
【0057】
左壁75と右壁76とは、左右方向9において対をなしている。左壁75と右壁76との間には、容器本体31が挿入されている。容器本体31の左壁75に位置する突片50が延出片73Lの貫通孔79に挿入され、右壁76に位置する突片50が延出片73Rの貫通孔79に挿入されることにより、カバー32が容器本体31に取り付けられている。カバー32は、容器本体31に取り付けられた状態において、突片50が貫通孔79を上下方向7に移動可能な範囲だけ、容器本体31に対して上下方向7に移動可能である。
【0058】
カバー32は、容器本体31に取り付けられた状態において、容器本体31の前壁40の一部分である上側部分を覆っている。カバー32の前壁74の外面(前面の一例)は、流出口47よりも前方に位置する。流出口47は、カバー32の開口71の下端よりも下方に位置する。
【0059】
[本実施形態の作用効果]
前述されたインクカートリッジ30によれば、上壁44における識別部位51の左右方向9の位置が目視されることにより、容器本体31の貯留室46に貯留されているインクの種別が判定できる。また、貯留室46に貯留されているインクが消費されてインクが残存していない状態において、容器本体31の貯留室46に貯留されていたインクの種別が判定できる。
【0060】
また、識別部位51の内部空間56は、インクカートリッジ30の装着姿勢において、容器本体31の上壁44よりも上方に位置するので、内部空間56にインクが滞留し難い。
【0061】
また、容器本体31の前壁40の一部がカバー32により覆われているので、前壁40に位置する流出口47が外部の部材などと衝突しないよう保護される。
【0062】
また、容器本体31は、合成樹脂製の一体成型品であるので、容器本体31をブロー成形により成型できる。
【0063】
また、識別部位51は、カートリッジケース110のロック部材104と嵌合するので、図4(C)に示されるように、識別部位51とロック部材104とが左右方向9においてずれた位置に位置すると、オペレータがインクカートリッジ30をカートリッジケース110に装着するときに、識別部位51がロック部材104と嵌合できない。一方、図4(A)に示されるように、識別部位51がロック部材104被嵌合部と嵌合したことにより、オペレータは、カートリッジケース110の適切な位置にインクカートリッジ30が装着されたことを直ちに認識できる。また、識別部位51がロック部材104と嵌合した状態では、識別部位51のロック面53がロック部材104と当接するので、インクカートリッジ30がカートリッジケース110から抜けることが防止される。つまり、識別部位51は、ロック部材104と嵌合する物理キーとしての機能を有するだけでなく、インクカートリッジ30がカートリッジケース110から抜けることを防止するロック機能も有する。
【0064】
[変形例]
前述された実施形態では、識別部位51の内部空間56は、インクカートリッジ30の装着姿勢において、容器本体31の上壁44よりも上方に位置する。しかし、内部空間56は、図5に示されるように、後壁41であって、貯留室46に初期に充填されたインクの液面よりも上方に位置してもよい。識別部位51が後壁41に位置する態様において、識別部位51は、物理キーとしての機能やロック機能を奏しなくてもよい。また、後壁41に代えて、識別部位51は、左壁42や右壁43に位置してもよい。また、識別部位51の内部空間56は、流出口47よりも上方に位置してもよいし、貯留室46の底面よりも上方に位置してもよい。
【0065】
また、前述された実施形態では、識別部位51は、上壁44から上方へ突出するものであるが、これに代えて、図6に示されるように、上壁44から下方へ凹陥する識別部位57が設けられてもよい。また、識別部57は、後壁41や左壁42、右壁43に位置してもよい。
【0066】
また、前述された実施形態では、容器本体31は、合成樹脂製の一体成型品であるが、容器本体31は複数の部材から構成されてもよい。例えば、図7に示されるように、容器本体31が上壁44を有しておらず上方に開口しており、当該開口に内蓋33が嵌め込まれて、フィルム34により液密に塞がれていてもよい。この態様においてはカバー32は設けられていない。また、容器本体31に上カバー35が嵌合されて、内蓋33の上方が上カバー35により覆われていてもよい。この態様において、識別部位51は、内蓋33に形成されており、上カバー35の貫通孔36を通じて識別部位51が外部へ露出されてもよい。また、大気開放路49は、内蓋33に位置してもよい。
【0067】
また、図8に示されるように、インクカートリッジ30が、カバー32に代えて、容器本体31の全体を囲むカバー37を有していてもよい。この態様において、識別部位51は、カバー37の貫通孔38を通じて外部へ露出されてもよい。
【0068】
また、インクカートリッジ30は、カバー32を有しなくてもよい。また、識別部位51は、左右方向9における位置が異なるほか、上下方向7や前後方向8の位置が異なるものであってもよいし、識別部位51の外形がインクの種別によって異なってもよい。
【0069】
また、前述された実施形態では、上壁44に大気開放路49が形成されているが、大気開放路49は前壁40に形成されていてもよい。この場合、大気開放路49の前壁40の外面における開口は前方を向いている。また、大気開放路49の開口は、カバー32により覆われていてもよい。
【0070】
また、流出口47は、容器本体31の前壁40に位置するが、前壁40から前方へ突出する供給部が設けられ、供給部の内部にインク流路48が形成されて、供給部の先端に流出口47が位置してもよい。
【0071】
また、容器本体31の外形やカバー32の外形は、立方体形状や箱形状に限定されない。例えば、容器本体31にユーザにより操作される凸部などが形成されてもよいし、貯留室46のインクを検出するための検出部が設けられてもよい。カバー32においても、同様に凸部などが設けられてもよい。
【0072】
前述された実施形態では、カバー32の貫通孔79に容器本体の突片50が挿入されることにより、カバー32が容器本体31に取り付けられたが、カバー32が容器本体31に取り付けられる構造は、他の構造が採用されてもよい。
【0073】
前述された実施形態では、容器本体31にインクが貯留されるが、容器本体31はインク以外の他の記録材、例えば、印刷時にインクに先立って用紙などに吐出される前処理液やトナーなどが記録材として貯留されてもよい。
【0074】
前述された実施形態では、インクカートリッジ30が印刷材容器の一例として示されているが、印刷材容器は、プリンタ10に装着されるカートリッジではなく、プリンタのタンクなどにインクを補充するためのボトルであってもよい。
【符号の説明】
【0075】
10・・・プリンタ(画像記録装置)
21・・・記録ヘッド(ヘッド)
30・・・インクカートリッジ(印刷材容器)
31・・・容器本体
32・・・カバー(カバー部材)
35・・・上カバー
36・・・貫通孔
37・・・カバー
38・・・貫通孔
40・・・前壁(前面)
44・・・上壁(上面)
46・・・貯留室
47・・・流出口
51・・・識別部位
53・・・ロック面(反対を向く面)
56・・・内部空間(空間)
104・・・ロック部材(被嵌合部)
110・・・カートリッジケース(ケース)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8