(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048459
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】搭載モード判定システム
(51)【国際特許分類】
H05K 13/04 20060101AFI20240402BHJP
【FI】
H05K13/04 Z
H05K13/04 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154377
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木部 裕造
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 恒太
【テーマコード(参考)】
5E353
【Fターム(参考)】
5E353CC18
5E353EE02
5E353EE43
5E353EE62
5E353MM04
5E353MM08
5E353QQ05
5E353QQ15
(57)【要約】
【課題】部品実装前の基板の現在の状態に応じて、搭載点毎に通常モードで搭載するか、高精度モードで搭載するか、を自動で判定できるようにする。
【解決手段】本開示の搭載モード判定システム10は、部品Pを基板Bに搭載する搭載モードとして、通常の搭載が行われる通常モードと、通常モードよりも搭載精度が高い高精度モードと、を切り替え可能な実装機14を含む生産ラインにおける搭載モード判定システム10であって、現物の基板Bの状態に基づいて、部品Pが搭載される搭載箇所の周辺の状態データを作成するデータ作成部53と、少なくとも状態データに基づいて搭載点毎に通常モードで搭載するか、または高精度モードで搭載するか、を判定するモード判定部54と、を備える搭載モード判定システム10である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品を基板に搭載する搭載モードとして、通常の搭載が行われる通常モードと、前記通常モードよりも搭載精度が高い高精度モードと、を切り替え可能な実装機を含む生産ラインにおける搭載モード判定システムであって、
現物の前記基板の状態に基づいて、前記部品が搭載される搭載箇所の周辺の状態データを作成するデータ作成部と、
少なくとも前記状態データに基づいて搭載点毎に前記通常モードで搭載するか、または前記高精度モードで搭載するか、を判定するモード判定部と、を備える搭載モード判定システム。
【請求項2】
前記状態データは、部品搭載前の前記基板における隣り合う一対のランド間の最狭小部の距離を含み、
前記モード判定部は、前記最狭小部の距離が所定の距離未満である場合、前記高精度モードで搭載すると判定する、請求項1に記載の搭載モード判定システム。
【請求項3】
前記モード判定部は、前記部品がリード部品であり、前記リード部品のリードピッチが所定ピッチ未満である場合、前記高精度モードで搭載すると判定する、請求項1に記載の搭載モード判定システム。
【請求項4】
前記状態データは、前記基板のランドに塗布されているハンダの幅寸法であるハンダ幅を含み、
前記モード判定部は、前記ハンダ幅が所定幅未満である場合、前記高精度モードで搭載すると判定する、請求項1に記載の搭載モード判定システム。
【請求項5】
前記生産ラインは、印刷機と、前記印刷機によって前記基板に塗布されたハンダの状態を検査して前記ハンダの塗布状態データを作成する検査機と、前記実装機と、を含み、
前記モード判定部は、前記検査機から前記実装機に送信された前記塗布状態データに基づいて前記搭載モードを設定する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の搭載モード判定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、搭載モード判定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
部品を基板に実装する部品実装機には、通常モードと、通常モードよりもタクトを犠牲にして搭載精度を重視した高精度モードと、が用意されている。高精度モードを使用するか否かは、オペレータの判断に任されているのが実情である。そこで、基板に実装される部品の周辺状況データに基づいて高精度モードを使用するか否かを自動的に設定するようにした装置として、特開2020-129695号公報(下記特許文献1)に記載の装置が知られている。
【0003】
この装置は管理コンピュータを有し、管理コンピュータのCPUは、シーケンスの装着順ごとに要求精度を設定し、設定された要求精度を実現可能な仕様精度を有する装着機へシーケンスを割り付ける。次に、管理コンピュータのCPUによって実行される要求精度設定ルーチンについて説明する。管理コンピュータのCPUは、要求精度設定ルーチンを開始すると、まず、今回のシーケンスに応じた全体像データを作成する。全体像データは、シーケンスにしたがって部品を装着していったとすると、どの部品が基板上のどこに配置されるかを示すデータである。例えば、全体像データにおいて、対象部品が装着される前に既に周辺部品が存在している場合、CPUは、その周辺部品の装着領域と対象部品の装着領域との間隔すなわち部品間距離を周辺状況データとして算出し、その部品間距離に基づいて対象部品の要求精度を設定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の装置は、部品が実装される前の実際の基板のランドの位置やハンダの幅などに基づいて周辺状況データを作成したものではなく、シーケンスに応じた全体像データに基づいて周辺状況データを作成しているため、実際に部品が搭載される基板の実情に合わない要求精度が設定される場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の搭載モード判定システムは、部品を基板に搭載する搭載モードとして、通常の搭載が行われる通常モードと、前記通常モードよりも搭載精度が高い高精度モードと、を切り替え可能な実装機を含む生産ラインにおける搭載モード判定システムであって、現物の前記基板の状態に基づいて、前記部品が搭載される搭載箇所の周辺の状態データを作成するデータ作成部と、少なくとも前記状態データに基づいて搭載点毎に前記通常モードで搭載するか、または前記高精度モードで搭載するか、を判定するモード判定部と、を備える搭載モード判定システムである。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、現物の基板の状態に基づいて、搭載点毎に通常モードで搭載するか、高精度モードで搭載するか、を自動で判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、搭載モード判定システムの構成図である。
【
図3】
図3は、吸着ノズルによって吸着された部品を搬送する様子を示した概略図である。
【
図4】
図4は、搭載モード判定システムの電気的構成を示したブロック図である。
【
図5】
図5は、一対のランド間の距離によって搭載モードを切り替える様子を示した概略図である。
【
図6】
図6は、リード部品のリードピッチによって搭載モードを切り替える様子を示した概略図である。
【
図7】
図7は、基板に塗布されたハンダのハンダ幅によって搭載モードを切り替える様子を示した概略図である。
【
図8】
図8は、搭載点毎に搭載モードを切り替える実装プログラムを示した概略図である。
【
図9】
図9は、検査機で作成された塗布状態データに基づいて搭載モードを切り替える手順を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
(1)本開示の搭載モード判定システムは、部品を基板に搭載する搭載モードとして、通常の搭載が行われる通常モードと、前記通常モードよりも搭載精度が高い高精度モードと、を切り替え可能な実装機を含む生産ラインにおける搭載モード判定システムであって、現物の前記基板の状態に基づいて、前記部品が搭載される搭載箇所の周辺の状態データを作成するデータ作成部と、少なくとも前記状態データに基づいて搭載点毎に前記通常モードで搭載するか、または前記高精度モードで搭載するか、を判定するモード判定部と、を備える搭載モード判定システムである。
【0010】
一般に実装機には、通常モードと、通常モードよりも搭載精度が高い高精度モードと、が用意されているが、従来、どのような場合に高精度モードを使用するかの判断はオペレータに委ねられていた。上記(1)の搭載モード判定システムによると、データ作成部が搭載箇所の周辺の状態データを作成し、モード判定部が状態データに基づいて搭載点毎に通常モードで搭載するか、高精度モードで搭載するか、を判定するようにしたから、オペレータに判断を委ねることなく搭載モードを自動で判定できる。また、現物の基板の状態に基づいて状態データを作成するから、基板の状態に合わせて搭載モードに切り替えるか否かを個別に判定できる。
【0011】
(2)前記状態データは、部品搭載前の前記基板における隣り合う一対のランド間の最狭小部の距離を含み、前記モード判定部は、前記最狭小部の距離が所定の距離未満である場合、前記高精度モードで搭載すると判定する、(1)に記載の搭載モード判定システムであることが好ましい。
【0012】
隣り合う一対のランド間の最狭小部の距離が小さくなると、これらのランドに搭載される一対の部品間の距離も小さくなるため、部品同士が干渉するおそれがある。上記の(2)の搭載モード判定システムによると、一対のランド間の最狭小部の距離が所定の距離未満である場合、高精度モードで搭載するから、部品同士が干渉することを回避できる。
【0013】
(3)前記モード判定部は、前記部品がリード部品であり、前記リード部品のリードピッチが所定ピッチ未満である場合、前記高精度モードで搭載すると判定する、(1)または(2)に記載の搭載モード判定システムであることが好ましい。
【0014】
リード部品のリードピッチが小さくなると、リードがランドからはみ出した状態で搭載される搭載不良が発生しやすくなる。上記(3)の搭載モード判定システムによると、リードピッチが所定ピッチ未満である場合、高精度モードで搭載するから、リードピッチに起因した搭載不良をなくすことができる。
【0015】
(4)前記状態データは、前記基板のランドに塗布されているハンダの幅寸法であるハンダ幅を含み、前記モード判定部は、前記ハンダ幅が所定幅未満である場合、前記高精度モードで搭載すると判定する、(1)から(3)のいずれか1つに記載の搭載モード判定システムであることが好ましい。
【0016】
ハンダ幅が小さくなると、部品がハンダからはみ出した状態で搭載される搭載不良が発生しやすくなる。上記(4)の搭載モード判定システムによると、ハンダ幅が所定幅未満である場合、高精度モードで搭載するから、ハンダ幅に起因した搭載不良をなくすことができる。
【0017】
(5)前記生産ラインは、印刷機と、前記印刷機によって前記基板に塗布されたハンダの状態を検査して前記ハンダの塗布状態データを作成する検査機と、前記実装機と、を含み、前記モード判定部は、前記検査機から前記実装機に送信された前記塗布状態データに基づいて前記搭載モードを設定する、(1)から(4)のいずれか1つに記載の搭載モード判定システムであることが好ましい。
【0018】
上記(5)の搭載モード判定システムによると、例えば検査機で作成された塗布状態データから正確なハンダ幅を知ることができる。
【0019】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の搭載モード判定システム10の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0020】
[部品実装ライン]
図1は、部品実装ライン11を示した図である。部品実装ライン11は部品Pが実装された部品実装基板を生産する生産ラインであって、印刷機12と、検査機13と、実装機14と、リフロー炉15と、を含む。印刷機12、検査機13、実装機14、およびリフロー炉15は、上流側からこの順に並んで配置されており、以下においてはマシンという場合もあり、各マシン12,13,14,15という場合もある。
【0021】
各マシン12,13,14,15は、搬送コンベア16(
図2参照)を介して、直列に接続されている。搬送コンベア16は、部品実装ライン11に沿って作業対象の基板Bを搬送する。
【0022】
印刷機12は、基板Bに対して印刷工程を行う作業装置である。印刷工程は、基板Bにハンダペーストを印刷する工程である。検査機13は、ハンダが塗布された基板Bの検査を行う作業装置である。実装機14は、検査後の基板Bに対して部品Pの搭載工程を行う作業装置である。リフロー炉15は、ハンダペーストを加熱することで部品Pを基板Bにハンダ付けし、部品実装基板を完成させる作業装置である。
【0023】
印刷機12、検査機13、実装機14、およびリフロー炉15は、LAN17を介して、サーバー18と接続されている。サーバー18は、部品実装ライン11を管理する装置である。サーバー18には生産計画の情報等が記憶されている。生産計画の情報は、基板Bの品種や生産に使用する部品Pの品種等を含む。
【0024】
[実装機]
図2は、実装機14の平面図である。実装機14は、基台30上に配置されて基板Bを搬送する一対の搬送コンベア16と、両搬送コンベア16の前後両側に配置された部品供給部31と、基台30の上方に設けられた部品搭載用のヘッドユニット32と、を備えている。
【0025】
部品供給部31は、両搬送コンベア16の前側と後側のそれぞれ上流部と下流部の合計4箇所に設けられている。この部品供給部31には、複数の部品Pが保持されたテープフィーダー33が複数並列に配置されている。
【0026】
ヘッドユニット32は、
図3に示すように、部品供給部31の部品供給位置から部品Pをピックアップして基板B上に搭載し得るように、部品供給部31と基板Bとの間を移動可能である。具体的には、ヘッドユニット32は、
図2に示すように、X軸方向(
図2でXの示す方向)にのびるヘッドユニット支持部材34によってX軸方向に移動可能に支持され、このヘッドユニット支持部材34は、その両端部においてY軸方向(
図2でYの示す方向)にのびる一対のガイドレール35によってY軸方向に移動可能に支持されている。ヘッドユニット32は、X軸モーター36によってX軸方向の駆動が行われ、Y軸モーター37によってY軸方向の駆動が行われる。
【0027】
ヘッドユニット32には、複数のヘッド38がX軸方向に並んで搭載されている。各ヘッド38は、Z軸モーター39を駆動源とする昇降機構によりZ軸方向(X軸方向およびY軸方向の双方に対して直交する方向であり、
図2でZの示す方向)に駆動されるとともに、R軸モーター40を駆動源とする回転駆動機構により回転方向に駆動されるようになっている。
【0028】
各ヘッド38の先端には、部品Pを吸着して基板B上面の所定の位置に搭載するための吸着ノズル41が設けられている。ヘッド38の内部には空気圧供給手段(図示しない)によって、部品Pの吸着、部品Pの運搬中およびヘッド38の下降中に負圧が、部品Pを搭載する瞬間には正圧が、それぞれ供給されるようになっている。空気圧供給手段によって供給される空気の圧力は圧力センサ56(
図4参照)によって計測される。
【0029】
基台30において両搬送コンベア16の前側と後側には、
図2に示すように、部品認識カメラ42がそれぞれ設置されている。部品認識カメラ42は、吸着ノズル41で吸着された部品Pの吸着姿勢をZ軸方向下方から撮像して、部品Pの下面側の撮像画像を得ることができる。部品認識カメラ42の近傍には、
図3に示すように、吸着ノズル41に吸着された部品Pを照明する照明装置43が設けられている。
【0030】
ヘッドユニット支持部材34の下面側には、サイドビューカメラ44が設置されている。サイドビューカメラ44は、ヘッドユニット支持部材34の下面部中央から下方にのびて形成されており、その下端部において吸着ノズル41で吸着された部品Pの吸着姿勢をY軸方向奥側から撮像して、部品Pの側面側の撮像画像を得ることができる。その他の構成は部品認識カメラ42と同様であって、得られた画像をアナログ画像信号に変換し、このアナログ画像信号が画像処理部45へ出力される。
【0031】
ヘッドユニット32の外面には、一対の基板認識カメラ57がヘッドユニット32の両側と一体に取り付けられている。この基板認識カメラ57は基板Bのフィデューシャルマークを撮像して基板Bの位置を認識するためのものである。その他の構成は部品認識カメラ42と同様であって、得られた画像をアナログ画像信号に変換し、このアナログ画像信号が画像処理部45へ出力される。
【0032】
[搭載モード判定システムの電気的構成]
次に、搭載モード判定システム10のコントローラ46を中心とした電気的構成について
図4を参照して説明する。コントローラ46は、演算処理部47と、実装プログラム記憶手段48と、搬送系データ記憶手段49と、モーター制御部50と、外部入出力部51と、画像処理部45と、検査手段52と、データ作成部53と、モード判定部54と、を備えている。演算処理部47には表示ユニット55が接続され、外部入出力部51には圧力センサ56が接続されている。
【0033】
本実施形態では、実装プログラム記憶手段48、搬送系データ記憶手段49、モーター制御部50、外部入出力部51、および画像処理部45は、実装機14に設けられている。モーター制御部50には、X軸モーター36、Y軸モーター37、Z軸モーター39、およびR軸モーター40が接続されている。モーター制御部50は、実装プログラム記憶手段48に記憶された実装プログラムに基づいて各モーター36、37、39、40を駆動させるのに必要な電圧および電流を各モーターに供給する。これにより、部品PはX軸、Y軸、Z軸、およびR軸方向に自在に搬送される。
【0034】
実装プログラムは、
図8に示すように、部品Pの種類、部品Pの搭載位置、使用するヘッド38の種類などの情報を含む。部品Pの種類は、例えばチップ部品、リード部品などを含む。また、リード部品のリードピッチなどの情報は、サーバー18を参照することで入手できるようになっている。
【0035】
画像処理部45には、部品認識カメラ42、サイドビューカメラ44、および基板認識カメラ57が接続されている。画像処理部45は、部品認識カメラ42により撮像された撮像画像に基づいて部品Pの認識を行い、この認識された画像に基づいて部品Pの吸着状態についての検査が行われる。部品Pの有無は、部品認識カメラ42の代わりにサイドビューカメラ44を用いて検査を行ってもよく、部品認識カメラ42とサイドビューカメラ44の双方を用いて検査を行ってもよい。
【0036】
本実施形態では、検査手段52およびデータ作成部53は、検査機13に設けられ、モード判定部54は、実装機14に設けられている。データ作成部53は、必ずしも検査機13に設けられている必要はなく、印刷機12に設けられていてもよく、サーバー18に設けられていてもよい。モード判定部54は、必ずしも実装機14に設けられている必要はなく、印刷機12に設けられていてもよく、サーバー18に設けられていてもよい。
【0037】
検査機13の検査手段52は、現物の基板Bに塗布されたハンダの塗布状態や、一対のランド間の距離などを検査する。検査手段52による検査結果はデータ作成部53に送信され、データ作成部53によってハンダの塗布状態データが作成される。ハンダの塗布状態データは、検査機13のデータ作成部53から実装機14に送信され、実装機14のモード判定部54は、ハンダの塗布状態データや部品Pの種類などに基づいて高精度モードで部品Pを搭載するか否かを判定する。
【0038】
[実施例1:隣り合う一対のランド間の最狭小部の距離による判定]
図5は、隣り合う一対のランド間の距離によって部品を通常モードで搭載するか、高精度モードで搭載するかを判定する様子を示している。
図5では、チップ部品23が搭載される2つの第1ランド20と、リード部品24の各リード25が搭載される9つの第2ランド21と、が図示されている。隣り合うように配置された第1ランド20と第2ランド21の間には、最も距離が狭い最狭小部22が形成されている。最狭小部22の距離が所定距離未満の場合、通常モードで搭載すると、チップ部品23とリード部品24が衝突し、搭載不良となるおそれがある。
【0039】
そこで、実施例1では、検査機13での検査結果に基づいて最狭小部22の距離を含む最狭小部22の周辺の状態データがデータ作成部53によって作成される。状態データにおいて最狭小部22の距離が所定距離未満の場合、モード判定部54によって高精度モードで搭載すると判定され、実装プログラム記憶手段48に記憶された実装プログラムのうち、対象となるチップ部品23の搭載モードとリード部品24の搭載モードとがそれぞれ通常モードから高精度モードに切り替えられる。高精度モードに移行すると、チップ部品23の搭載とリード部品24の搭載とは、いずれも高精度モードで行われる。
【0040】
高精度モードとは、例えば搭載精度15μmを達成するため、通常モードよりもタクトを犠牲にして搭載精度を重視した部品搭載モードである。高精度モードで搭載した場合、通常モードと比べて、より正確なXY座標位置に搭載が可能になる。高精度モードで部品Pを搭載する具体的手法として、搭載直前に加速度を減らす、マーク認識前に制振制御を行う、搭載前に片振りを行う、などがある。このようにすれば、チップ部品23とリード部品24を正規の搭載位置に搭載でき、チップ部品23とリード部品24が衝突することを回避できる。
【0041】
[実施例2:リード部品のリードピッチによる判定]
図6は、リード部品24のリードピッチによってリード部品24を通常モードで搭載するか、高精度モードで搭載するかを判定する様子を示している。リードピッチとは、隣り合う一対のリード25の中心間の距離である。
図6では、リード部品24の各リード25が搭載される9つの第2ランド21が図示されている。リード部品24のリードピッチが所定ピッチ未満の場合、通常モードで搭載すると、リード部品24のリード25が第2ランド21からはみ出して搭載不良となるおそれがある。
【0042】
そこで、実施例2では、サーバー18に記憶された部品情報を参照してリード部品24のリードピッチの情報を入手し、このリードピッチが所定ピッチ未満の場合、モード判定部54によって高精度モードで搭載すると判定され、実装プログラム記憶手段48に記憶された実装プログラムのうち、対象となるリード部品24の搭載モードが通常モードから高精度モードに切り替えられる。高精度モードに移行すると、リード部品24の搭載は、高精度モードで行われる。このようにすれば、リード部品24を正規の搭載位置に搭載でき、リード部品24のリード25が第2ランド21からはみ出す搭載不良を回避できる。
【0043】
[実施例3:ハンダ26のハンダ幅による判定]
図7は、第2ランド21に塗布されたハンダ26のハンダ幅によってリード部品24を通常モードで搭載するか、高精度モードで搭載するかを判定する様子を示している。ハンダ幅とは、ハンダ26が長くのびる方向と直交する方向におけるハンダ26の寸法である。
図7では、第2ランド21にハンダ26が塗布されており、ハンダ26のハンダ幅は第2ランド21のランド幅よりも小さい。ハンダ26のハンダ幅が所定幅未満の場合、通常モードで搭載すると、リード部品24のリード25がハンダ26からはみ出して搭載不良となるおそれがある。
【0044】
そこで、実施例3では、検査機13での検査結果に基づいてハンダ26のハンダ幅を計測し、ハンダ幅を含むハンダ26の塗布状態データがデータ作成部53によって作成される。塗布状態データにおいてハンダ26のハンダ幅が所定幅未満の場合、モード判定部54によって高精度モードで搭載すると判定され、実装プログラム記憶手段48に記憶された実装プログラムのうち、対象となるリード部品24の搭載モードが通常モードから高精度モードに切り替えられる。高精度モードに移行すると、リード部品24の搭載は、高精度モードで行われる。このようにすれば、リード部品24を正規の搭載位置に搭載でき、リード部品24のリード25がハンダ26からはみ出す搭載不良を回避できる。
【0045】
[搭載点毎に搭載モードを切り替える実装プログラムの一例]
図8は、実装プログラムの一例であり、「No.」は搭載順、「部品」は部品の種類、「X」は搭載点のX座標、「Y」は搭載点のY座標、「R」は搭載点のR座標、「ヘッド」は使用するヘッド38の種類、「高精度モード」は搭載モードを表している。「高精度モード」が「無効」の場合、通常モードで搭載し、「有効」の場合、高精度モードで搭載することを意味する。
【0046】
例えば、部品Cがリード部品であったとして、リードピッチが所定ピッチ未満であった場合、モード判定部54によって高精度モードで搭載すると判定され、演算処理部47によって高精度モードが無効から有効に自動で変更され、変更後の実装プログラムが実装プログラム記憶手段48に記憶される。
図8においては、表として示されているが、実際には、モニターに表示されることはなく、オペレータがモニターを見ながら高精度モードの設定をすることはない。
【0047】
[ハンダ幅による搭載モードの判定処理]
次に、ハンダ26のハンダ幅による搭載モードの判定処理を
図9のフローチャートを参照しながら説明する。印刷機12で基板Bにハンダ26が塗布されると、基板Bが検査機13に搬送されてハンダ26の塗布状態が検査される。データ作成部53は、検査機13による検査結果に基づいてハンド26の塗布状態データを作成する(ステップS10)。
【0048】
データ作成部53によって作成された塗布状態データは、検査機13からマウンタ(実装機14)に送信される(ステップS11)。マウンタで搭載を実施しつつ(ステップS12)、塗布状態データから対象となるハンダ情報を検索する(ステップS13)、ハンダ情報が見つかった場合(ステップS14でYES)、ハンダ幅が所定幅未満か否かが判断され、所定幅未満であると判断された場合(ステップS15でYES)、高精度モードで搭載が行われる(ステップS16)。
【0049】
一方、ステップS14においてハンダ情報が見つからなかった場合(ステップS14でNO)、または、ステップS15においてハンダ幅が所定幅未満でない(所定幅以上である)と判断された場合(ステップS15でNO)、通常モードで搭載が行われる(ステップS17)。ステップS14からステップS17までの処理は、搭載点毎に行われる。
【0050】
[実施形態の作用効果]
本開示の搭載モード判定システム10は、部品Pを基板Bに搭載する搭載モードとして、通常の搭載が行われる通常モードと、前記通常モードよりも搭載精度が高い高精度モードと、を切り替え可能な実装機14を含む部品実装ライン11における搭載モード判定システム10であって、現物の基板Bの状態に基づいて、部品Pが搭載される搭載箇所の周辺の状態データを作成するデータ作成部53と、少なくとも状態データに基づいて搭載点毎に通常モードで搭載するか、または高精度モードで搭載するか、を判定するモード判定部54と、を備える搭載モード判定システム10である。
【0051】
一般に実装機には、通常モードと、通常モードよりも搭載精度が高い高精度モードと、が用意されているが、従来、どのような場合に高精度モードを使用するかの判断はオペレータに委ねられていた。上記の搭載モード判定システム10によると、データ作成部53が搭載箇所の周辺の状態データを作成し、モード判定部54が状態データに基づいて搭載点毎に通常モードで搭載するか、高精度モードで搭載するか、を判定するようにしたから、オペレータに判断を委ねることなく搭載モードを自動で判定できる。また、現物の基板Bの状態に基づいて状態データを作成するから、基板Bの状態に合わせて搭載モードに切り替えるか否かを個別に判定できる。
【0052】
状態データは、部品搭載前の基板Bにおける隣り合う一対のランド間の最狭小部22の距離を含み、モード判定部54は、最狭小部22の距離が所定の距離未満である場合、高精度モードで搭載すると判定することが好ましい。
【0053】
隣り合う一対のランド間の最狭小部22の距離が小さくなると、これらのランドに搭載される一対の部品P間の距離も小さくなるため、部品P同士が干渉するおそれがある。上記の構成によると、一対のランド間の最狭小部22の距離が所定の距離未満である場合、高精度モードで搭載するから、部品P同士が干渉することを回避できる。
【0054】
モード判定部54は、部品Pがリード部品24であり、リード部品24のリードピッチが所定ピッチ未満である場合、高精度モードで搭載すると判定することが好ましい。
【0055】
リード部品24のリードピッチが小さくなると、リード25がランドからはみ出した状態で搭載される搭載不良が発生しやすくなる。上記の構成によると、リードピッチが所定ピッチ未満である場合、高精度モードで搭載するから、リードピッチに起因した搭載不良をなくすことができる。
【0056】
状態データは、基板Bのランドに塗布されているハンダ26の幅寸法であるハンダ幅を含み、モード判定部54は、ハンダ幅が所定幅未満である場合、高精度モードで搭載すると判定することが好ましい。
【0057】
ハンダ幅が小さくなると、部品Pがハンダ26からはみ出した状態で搭載される搭載不良が発生しやすくなる。上記の構成によると、ハンダ幅が所定幅未満である場合、高精度モードで搭載するから、ハンダ幅に起因した搭載不良をなくすことができる。
【0058】
部品実装ライン11は、印刷機12と、印刷機12によって基板Bに塗布されたハンダ26の状態を検査してハンダ26の塗布状態データを作成する検査機13と、実装機14と、を含み、モード判定部54は、検査機13から実装機14に送信された塗布状態データに基づいて搭載モードを設定することが好ましい。
【0059】
上記の構成によると、例えば検査機13で作成された塗布状態データから正確なハンダ幅を知ることができる。
【0060】
[他の実施形態]
(1)上記実施形態では実施例1から3のいずれか1つを実施する場合を例示したが、これらの実施例1から3を組み合わせて実施してもよい。例えば、隣り合う一対のランド間の最狭小部22の距離が所定距離以上であったとしても、使用するリード部品24のリードピッチが所定ピッチ未満の場合には、モード判定部54によって高精度モードで搭載すると判定してもよい。
【0061】
(2)上記実施形態では実施例2としてリード部品24のリードピッチが所定ピッチ未満の場合に、モード判定部54によって高精度モードで搭載すると判定しているが、使用する部品Pがリード部品24の場合に、リードピッチの大きさにかかわらずモード判定部54によって高精度モードで搭載すると判定してもよい。
【0062】
(3)上記実施形態では印刷後の検査機13によってハンダ幅を測定し、そのハンダ幅が所定幅未満の場合に、モード判定部54によって高精度モードで搭載すると判定しているが、リフロー後の検査機で部品ずれなどの搭載不良が多発している箇所があった場合に、データ作成部53によって不良発生分布を示す状態データを作成し、その状態データに基づいて不良率が所定のしきい値より大きい箇所をモード判定部54によって高精度モードで搭載すると判定してもよい。
【符号の説明】
【0063】
10:搭載モード判定システム 11:部品実装ライン(生産ライン) 12:印刷機 13:検査機 14:実装機 15:リフロー炉 16:搬送コンベア 17:LAN 18:サーバー
20:第1ランド 21:第2ランド 22:最狭小部 23:チップ部品 24:リード部品 25:リード 26:ハンダ
30:基台 31:部品供給部 32:ヘッドユニット 33:テープフィーダー 34:ヘッドユニット支持部材 35:ガイドレール 36:X軸モーター 37:Y軸モーター 38:ヘッド 39:Z軸モーター 40:R軸モーター 41:吸着ノズル 42:部品認識カメラ 43:照明装置 44:サイドビューカメラ 45:画像処理部 46:コントローラ 47:演算処理部 48:実装プログラム記憶手段 49:搬送系データ記憶手段 50:モーター制御部 51:外部入出力部 52:検査手段 53:データ作成部 54:モード判定部 55:表示ユニット 56:圧力センサ 57:基板認識カメラ