(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004846
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】冷風扇
(51)【国際特許分類】
F24F 1/0007 20190101AFI20240110BHJP
【FI】
F24F1/0007 331
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104714
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000197344
【氏名又は名称】静岡製機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(74)【代理人】
【識別番号】100132403
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 儀雄
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 辰巳
【テーマコード(参考)】
3L050
【Fターム(参考)】
3L050BB03
3L050BB04
(57)【要約】
【課題】装置の転倒や大型化を有効に抑制しつつ、消防法に規定される要件に適合した使用が可能な冷風扇を提供する。
【解決手段】正面に開口した送風口12を有する冷風扇本体10と、吸水部材15と、吸水部材15に液体を供給するための液体供給部20と、吸水部材15を通過した気体を外部に送る送風部16と、液体が貯留されるメインタンク17と、を備え、
冷風扇本体10の内外に設けられた電気部品が、当該冷風扇本体10の底部から鉛直方向に60cm以上の高さ又はメインタンク17よりも上方に設置されるとともに、液体供給部20は、揚水ポンプ21と、揚水ポンプ21の吸込み側に密封された自吸タンク31と、を有し、自吸タンク31内の液体を揚水ポンプ21により吸引することにより、メインタンク17内の液体が自吸タンク31内に吸い上げられるように構成されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正面に開口した送風口を有する冷風扇本体と、
通気性及び液体を吸収する性質を有する吸水部材と、
前記吸水部材に前記液体を供給するための液体供給部と、
前記吸水部材を通過した気体を外部に送る送風部と、
前記吸水部材の下方に設けられ前記液体が貯留されるメインタンクと、を備えた冷風扇であって、
前記冷風扇は、前記冷風扇本体の内外に設けられた電気部品が、当該冷風扇本体の底部から鉛直方向に60cm以上の高さ又は前記メインタンクよりも上方に設置されるとともに、
前記液体供給部は、前記冷風扇本体の底部から鉛直方向に60cm以上の高さ又は前記メインタンクよりも上方に設置された揚水ポンプと、当該揚水ポンプの吸込み側に密封された自吸タンクと、を有し、前記自吸タンク内の液体を前記揚水ポンプにより吸引することにより、前記メインタンク内の液体が前記自吸タンク内に吸い上げられるように構成されている冷風扇。
【請求項2】
前記揚水ポンプが、遠心ポンプである、請求項1に記載の冷風扇。
【請求項3】
前記冷風扇本体の上部側に、前記自吸タンク内に前記揚水ポンプ用の呼び水を導入するための液体注入口を有する、請求項1又は2に記載の冷風扇。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷風扇に関する。
【背景技術】
【0002】
冷房装置の一種として冷風扇が知られている。冷風扇は、紙などの液体を吸収する性質を持つ材料で形成される部材(以下「吸水部材」という)に水などの液体を吸わせ、水の気化熱を利用して冷風を得る装置である。即ち、冷風扇は、上述した吸水部材に空気などの気体を通過させることにより気体を冷却し、冷却した気体を装置外部に送り出すように構成されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
上述したような水の気化熱を利用して冷風を得る冷風扇は、吸水部材の下方に、気体を冷却するための液体を貯留するタンクが設けられている。また、吸水部材に液体を供給する供給部として、タンクの中の水を吸水部材の上部に汲み上げるためのポンプも備えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-138932号公報
【特許文献2】特開2019-82291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
冷風扇は、作業現場などの産業用として用いられていることがあり、例えば、石油取扱所などでの使用においては、消防法に規定される要件に適合した使用が必要となる。例えば、消防法により、石油取扱所などで電気機器を使用する場合には、電気部品を地上から60cm以上離す必要がある。このため、従来、冷風扇を石油取扱所などで使用する場合には、冷風扇を60cm以上の高さにかさ上げして使用している。
【0006】
しかしながら、冷風扇を60cm以上の高さにかさ上げして使用した場合、冷風扇の重心が高くなり転倒の危険性などが高まるという問題があった。また、冷風扇をかさ上げして使用する場合、液体を貯留するタンクの容量に制限が付き、冷風扇の連続稼働時間が短くなったり、装置が大型化してしまったりする等の問題もあった。
【0007】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものである。本発明は、装置の転倒や大型化を有効に抑制しつつ、消防法に規定される要件に適合した使用が可能な冷風扇を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、以下に示す冷風扇が提供される。
【0009】
[1] 正面に開口した送風口を有する冷風扇本体と、
通気性及び液体を吸収する性質を有する吸水部材と、
前記吸水部材に前記液体を供給するための液体供給部と、
前記吸水部材を通過した気体を外部に送る送風部と、
前記吸水部材の下方に設けられ前記液体が貯留されるメインタンクと、を備えた冷風扇であって、
前記冷風扇は、前記冷風扇本体の内外に設けられた電気部品が、当該冷風扇本体の底部から鉛直方向に60cm以上の高さ又は前記メインタンクよりも上方に設置されるとともに、
前記液体供給部は、前記冷風扇本体の底部から鉛直方向に60cm以上の高さ又は前記メインタンクよりも上方に設置された揚水ポンプと、当該揚水ポンプの吸込み側に密封された自吸タンクと、を有し、前記自吸タンク内の液体を前記揚水ポンプにより吸引することにより、前記メインタンク内の液体が前記自吸タンク内に吸い上げられるように構成されている冷風扇。
【0010】
[2] 前記揚水ポンプが、遠心ポンプである、前記[1]に記載の冷風扇。
【0011】
[3] 前記冷風扇本体の上部側に、前記自吸タンク内に前記揚水ポンプ用の呼び水を導入するための液体注入口を有する、前記[1]又は[2]に記載の冷風扇。
【発明の効果】
【0012】
本発明の冷風扇は、装置の転倒や大型化を有効に抑制しつつ、消防法に規定される要件に適合した使用が可能である、という効果を奏するものである。特に、本発明の冷風扇は、液体供給部が、揚水ポンプと自吸タンクを有しているため、揚水ポンプをメインタンクよりも上方に設置した状態であっても、メインタンク内の液体を冷風扇本体の上部まで良好に吸い上げることができる。また、メインタンクは、吸水部材の下方に設けられており、例えば、冷風扇本体の下部側に設置することができる。このため、冷風扇の重心を低く維持することができ、転倒などのリスクを大幅に低減することができる。更に、揚水ポンプについては、自吸タンクを併用することにより、自吸性を有していないポンプの使用が可能となる。例えば、自吸性を有するポンプは、比較的に高価であったり、運転音が大きかったりするため、自吸性を有していないポンプの使用により、冷風扇の低コスト化や静音化も実現可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の冷風扇の一の実施形態を模式的に示す斜視図である。
【
図5】本発明の冷風扇における液体の流れを示す概略フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。即ち、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に属することが理解されるべきである。以下の説明において、冷風扇は、吸水部材に吸わせる液体として水を用い、吸水部材からの気化熱を利用して冷却する気体として空気を用いる。
【0015】
本発明の冷風扇の一の実施形態は、
図1~
図4に示すように、冷風扇本体10と、吸水部材15と、液体供給部20と、送風部16と、メインタンク17と、を備えた冷風扇1である。ここで、
図1は、本発明の冷風扇の一の実施形態を模式的に示す斜視図である。
図2は、
図1に示す冷風扇の背面図であり、
図3は、
図1に示す冷風扇の側面図であり、
図4は、
図1に示す冷風扇の断面図である。また、
図5は、本発明の冷風扇における液体の流れを示す概略フロー図である。
【0016】
冷風扇本体10は、例えば、正面パネル111、上面パネル112、側面パネル113、及び側面パネル114により構成され、略直方体の装置本体の外形形状を形成する。このように構成された冷風扇本体10は、本実施形態の冷風扇1における筐体であり、その内部に、上述した吸水部材15、液体供給部20、送風部16、メインタンク17等の構成要素を収容する。以下の説明において、冷風扇1は、正面パネル111が設けられる面を正面とする。
【0017】
冷風扇本体10は、正面パネル111によって構成される正面に開口した送風口12を有する。送風口12は、冷却した空気を装置外部に送るためにメッシュやパンチングメタルなどのような通風性の部材により構成される。また、冷風扇1は、側面パネル113に、操作盤13を備える。操作盤13は、冷風扇1の操作を行うためのスイッチ類が配置される。
【0018】
冷風扇1は、
図2~
図4に示すように、筐体としての冷風扇本体10内に設けられる構成要素として、ベース部14と、吸水部材15と、送風部16と、メインタンク17と、液体供給部20とを備える。なお、メインタンク17には、メインタンク17の開口に取り付けられる蓋18、及び吸水部材15から漏出する水を受け止める受水トレイ19が設けられていてもよい。
図3では、冷風扇1の構成を説明するために、側面パネル113を取り外している。また、
図4は、冷風扇1の部分断面図であり、
図4では、冷風扇1の吸水部材15、メインタンク17、蓋18、及びそれらの周辺の断面を示している。
【0019】
ベース部14は、吸水部材15、送風部16、メインタンク17などの冷風扇1の構成要素を搭載する基台となる部材である。ベース部14は、冷風扇1を設置する際の脚部として機能するキャスタ141を備える。キャスタ141は、ベース部14の底部の四隅付近に取り付けられる。キャスタ141には、車輪が設けられるため、冷風扇1をユーザが手押しして容易に移動させることができる。冷風扇1における脚部は、車輪付きのキャスタ141ではなく車輪なしでもよい。
【0020】
冷風扇1は、冷風扇本体10の内外に設けられた電気部品が、当該冷風扇本体10の底部(別言すれば、冷風扇1の設置面210)から鉛直方向に60cm以上の高さ、又はメインタンク17よりも上方に設置されている。即ち、
図1~
図4に示す冷風扇1においては、冷風扇本体10の底部は、ベース部14のキャスタ141の最下点に相当し、冷風扇1における電気部品が、キャスタ141の最下点から鉛直方向に60cm以上の高さ、又はメインタンク17よりも上方に設置されている。このように構成することによって、冷風扇1における電気部品を、冷風扇1の設置面(例えば、床面)から一定距離離間させることができ、安全性に優れたものとなる。特に、電気部品を冷風扇本体10の底部から鉛直方向に60cm以上の高さに設置することで、冷風扇1自体を所定の高さにかさ上げして使用せずとも、消防法に規定される要件に適合した使用が可能となる。
【0021】
本実施形態の冷風扇1における電気部品とは、電力により稼働する部品や装置等のことをいう。例えば、電気部品は、送風部16、操作盤13、及び液体供給部20の揚水ポンプ21等を挙げることができる。
【0022】
吸水部材15は、通気性及び液体を吸収する性質を有する材料で形成される。具体的には、吸水部材15は、液体の一例である水を吸収する性質、つまり吸水性を有する。以下、冷風扇1に使用される液体を、単に「水」ということがある。吸水部材15は、例えば、ボール紙や厚紙などの紙部材を用いて構成される。このような吸水部材15は、軽量で交換作業時などに容易に取り扱うことができる。吸水部材15は、例えば、複数の紙部材を積層させてハニカム状に形成される。冷風扇1は、背面側から導入される外部からの空気が水分を含んだ吸水部材15を通過する。冷風扇1では、吸水部材15からの気化熱を利用して冷却効果を得る。即ち、吸水部材15は、冷風扇1における冷却エレメントとして機能する。
【0023】
吸水部材15の背面側には、吸水部材15を通過する前の空気に含まれる塵などをろ過するフィルタ151が設けられる。
【0024】
送風部16は、吸水部材15を通過した空気を送風口12から冷風扇1の装置の外部に送り出す。送風部16は、例えば、回転羽根を持つ電動式のファンである。送風部16は、モータ161と、プロペラ162と、シュラウド163と、ルーバ部164とを備える。送風部16は、モータ161によりプロペラ162を回転させて、吸水部材15を通過した空気を冷風扇1の外部に送り出す。
【0025】
ルーバ部164は、プロペラ162と送風口12との間に設けられる。ルーバ部164は、冷風扇1の上下方向及び左右方向に揺動する複数のフィンを備える。ルーバ部164は、このフィンにより、上下方向及び左右方向の送風方向を変化させることができる。ルーバ部164は、フィンを駆動するためのモータを備える。ルーバ部164は、このモータにより、自動で送風方向を変化させることができる。なお、ルーバ部164は、モータを備えず手動で送風方向を変更可能であってもよい。
【0026】
メインタンク17は、吸水部材15の下方に設けられる。メインタンク17は、上面側が開放されるバスタブ状の容器である。メインタンク17には、吸水部材15に供給するための水が貯留される。メインタンク17は、例えば、冷風扇本体10の下部側に設置することができる。このように構成することによって、冷風扇1の重心を低く維持することができ、冷風扇1の転倒などのリスクを大幅に低減することができる。メインタンク17の下部には、このメインタンク17と後述する自吸タンク31とを連絡する第一給水管35が設けられている。
【0027】
また、本実施形態の冷風扇1は、上述したように電気部品が冷風扇本体10の底部から鉛直方向に60cm以上の高さに設置されているため、電気部品が設けられていない60cm未満の部位をメインタンク17の設置スペースとして有効に利用することができる。このため、冷風扇1の装置サイズをコンパクトなものとすることができる。
【0028】
蓋18は、トレイのような形状である。蓋18は、メインタンク17の開口に取り付けられて嵌め合うことが可能な形状を有する。蓋18は、メインタンク17の開口に取り付けられるとき、メインタンク17の内部を閉塞する。蓋18は、天面に開口を有し、メインタンク17の外部と内部とを連通させている。蓋18の開口には、水フィルタ23が設けられる。水フィルタ23は、水に含まれる塵などを除去するために、袋状に形成されたメッシュを用いて形成される。なお、蓋18は、冷風扇1における必須構成要素ではなく任意の構成要素である。メインタンク17及び蓋18の開口の位置などについては図示された構成に限定されることはなく、適宜変更可能である。
【0029】
受水トレイ19は、鉛直方向における吸水部材15とメインタンク17との間に設けられる。受水トレイ19は、トレイのような形状の部材である。受水トレイ19は、天面に端部(外周側)から天面の中央付近にある頂点に向かって緩やかな傾斜が付けられている。また、受水トレイ19は、傾斜面の頂点の位置に天面と裏面とを連通させる開口部を備える。このような受水トレイ19を設けることにより、吸水部材15から漏出する水を受け止めることができ、且つ、受水トレイ19の天面にて受け止めた水を、受水トレイ19の開口に案内することができる。なお、受水トレイ19についても、蓋18と同様に冷風扇1の必須構成要素ではなく、必要に応じて適宜設けられる任意の構成要素である。
【0030】
受水トレイ19は、吸水部材15から漏出する水を受ける。受水トレイ19は、天面の外周側から開口に向かって傾斜している傾斜面により、天面に水があるときに、水を受水トレイ19の開口に案内する。受水トレイ19の開口は、吸水部材15から漏出した水を蓋18に流す。つまり、受水トレイ19は、吸水部材15から漏出する水を蓋18に流す漏斗のように機能する。
【0031】
吸水部材15に液体を供給するための液体供給部20は、揚水ポンプ21と、揚水ポンプ21の吸込み側に密封された自吸タンク31と、液体を吸水部材15に供給する供給ノズル22と、を有する。揚水ポンプ21は、冷風扇1において電気部品に相当する構成要素であり、これまでに説明したように冷風扇本体10の底部から鉛直方向に60cm以上の高さ又はメインタンク17よりも上方に設置されている。
【0032】
自吸タンク31は、当該自吸タンク31内の液体の液面が、揚水ポンプ21の設置位置と同じ高さ又は当該設置位置よりも高くなるような位置に設置される。自吸タンク31とメインタンク17とは、第一給水管35によって接続されている。自吸タンク31は、揚水ポンプ21の吸込み側に密封されており、揚水ポンプ21の吸込み側に接続された自吸タンク31から、第一給水管35を経由したメインタンク17までの区間において、液体供給系の気密性が保たれている。自吸タンク31と第一給水管35との接続位置については特に制限はなく、自吸タンク31の上方側に対して第一給水管35が接続されていてもよいし、自吸タンク31の下方側(例えば、自吸タンク31の底面側)に対して第一給水管35が接続されていてもよい。例えば、自吸タンク31の上方側に対して第一給水管35を接続することにより、自吸タンク31からの液体の逆流を有効に防止することができる。自吸タンク31の容量については特に制限はないが、例えば、揚水ポンプ21と供給ノズル22とを接続する第二給水管36の容量などに応じて、適宜、その容量を設定することができる。
【0033】
自吸タンク31とメインタンク17とを接続する第一給水管35には、その途中に液体の流れを制御するためのバルブ41を設けてもよい。例えば、冷風扇本体10からメインタンク17を取り外し、メインタンク17内の液体の補充や交換を行う際などに、第一給水管35に設けたバルブ41を閉じることで、メインタンク17からの液体の流出を防止することができる。また、第一給水管35には、その途中にフロースイッチ47を設けてもよい。このようなフロースイッチ47を第一給水管35の途中に設けることにより、第一給水管35中の液体の流れを監視し、例えば、メインタンク17の渇水を検知することができる。
【0034】
本実施形態の冷風扇1における揚水ポンプ21は、冷風扇本体10の底部から一定以上の高さに設置されるため、往々にしてメインタンク17内に貯留された液体の液面(以下、単に「メインタンク17の液面」ともいう)よりも上方に設置されることとなる。ここで、揚水ポンプ21をメインタンク17の液面よりも上方に設置すると、揚水ポンプ21が自吸性を有していない場合は、メインタンク17からの揚水が困難となる。本実施形態の冷風扇1は、揚水ポンプ21の吸込み側に密封された自吸タンク31を更に設けることで、揚水ポンプ21の自吸性の有無を問わず、メインタンク17の液面よりも上方に設置された揚水ポンプ21による揚水が可能となる。即ち、揚水ポンプ21により自吸タンク31内の液体を吸引することにより、自吸タンク31内が負圧になり、メインタンク17内の液体が第一給水管35を介して自吸タンク31内へと吸い上げられる。このようにして自吸タンク31内に随時吸い上げられる液体を揚水ポンプ21によって吸引し、供給ノズル22に液体を供給する。
【0035】
揚水ポンプ21は、上述したように自吸性の有無を問わないため、使用するポンプの種類や形式については特に制限はない。例えば、揚水ポンプ21として遠心ポンプを用いることができる。遠心ポンプは、比較的に安価なものであり、冷風扇1の低コスト化を実現することができる。また、遠心ポンプは、運転音が比較的に小さく、冷風扇1の静音化も実現可能である。
【0036】
自吸タンク31は、揚水ポンプ21の吸込み側に密封された補助タンクであり、自吸タンク31内の液体が揚水ポンプ21の呼び水となる。自吸タンク31内に予め液体が貯留されている場合は、揚水ポンプ21を駆動することにより、自吸タンク31内の液体が吸引され、その際に発生する負圧によりメインタンク17内の液体が自吸タンク31へと吸い上げられる。
【0037】
揚水ポンプ21と自吸タンク31は、冷風扇本体10の上部側に設置されていることが好ましい。また、冷風扇本体10の上部側に、自吸タンク31内に液体(即ち、揚水ポンプ21用の呼び水)を導入するための液体注入口32を有していてもよい。このように構成することによって、冷風扇1の初期始動時や、長期間の装置休止により自吸タンク31内の液体が喪失してしまった場合などに、自吸タンク31内に簡便に液体を補充することができる。液体注入口32には、自吸タンク31の気密性を確保するための蓋が設けられていることが好ましい。
【0038】
供給ノズル22は、吸水部材15の上部に設けられる。供給ノズル22は、液体を吸水部材15に供給する。供給ノズル22は、吸水部材15の幅方向に複数の放水用のノズルが配置されている。供給ノズル22は、この複数のノズルにより、吸水部材15の全体に均一に水を流すことができる。以上のように、揚水ポンプ21、自吸タンク31及び供給ノズル22は、液体供給部20としての機能を有する。
【0039】
揚水ポンプ21と供給ノズル22とは第二給水管36によって接続されており、揚水ポンプ21から排出された液体は、第二給水管36を経由して供給ノズル22に供給される。また、第二給水管36には、揚水ポンプ21によって自吸タンク31内に吸い上げられた液体の逆流を防止するためのトラップが設けられていてもよい。例えば、
図4に示すように、第二給水管36の一部が上下方向に折れ曲がるU字状、いわゆるUトラップ37とされている。このように構成することによって、揚水ポンプ21の停止時において、液体の逆流(特に、自吸タンク31からメインタンク17への逆流)を有効に抑制することができ、冷風扇1の断続的な運転においても、速やかな始動を実現することができる。
【0040】
ここで、冷風扇1を使用する際の液体のフローを、
図5に示す概略フロー図を参照して更に詳細に説明する。冷風扇1を使用する際には、まず最初に、揚水ポンプ21が起動される。揚水ポンプ21の起動により、自吸タンク31内の液体が揚水ポンプ21にて吸引される。なお、揚水ポンプ21の起動には自吸タンク31内の液体が呼び水となる。また、揚水ポンプ21の起動時において、自吸タンク31内の液体量が十分でない場合には、適宜、自吸タンク31内に液体(呼び水)を補充することが好ましい。揚水ポンプ21にて自吸タンク31内の液体を吸引することにより、自吸タンク31内が負圧になり、メインタンク17内の液体が自吸タンク31内へと吸い上げられる。一方で、揚水ポンプ21から吸い出された液体は、供給ノズル22へと送られる。供給ノズル22には複数の放水用のノズル等が配置されており、揚水ポンプ21から送られた液体を吸水部材15へと供給する。吸水部材15は冷却エレメントとして機能を有し、背面側から導入される外部からの空気(図示せず)が通過することで、水分を含んだ吸水部材15から液体の一部が気化し、気化冷却により吸水部材15を通過する空気が冷却される。供給ノズル22から吸水部材15に連続的に供給される液体は、吸水部材15の下方に設けられたメインタンク17に回収され、これまでに説明した液体のフローが循環的に反復される。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の冷風扇は、液体の気化熱を利用して冷却した空気を送り出す冷房装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1:冷風扇
10:冷風扇本体
12:送風口
13:操作盤
14:ベース部
15:吸水部材
16:送風部
17:メインタンク
18:蓋
19:受水トレイ
20:液体供給部
21:揚水ポンプ
22:供給ノズル
23:水フィルタ
31:自吸タンク
32:液体注入口
35:第一給水管
36:第二給水管
37:Uトラップ
41:バルブ
47:フロースイッチ
111:正面パネル
112:上面パネル
113:側面パネル
114:側面パネル
141:キャスタ
151:フィルタ
161:モータ
162:プロペラ
163:シュラウド
164:ルーバ部
210:設置面(冷風扇の設置面)