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  • 特開-バイオガス発電システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048461
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】バイオガス発電システム
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/65 20220101AFI20240402BHJP
   F24H 1/00 20220101ALI20240402BHJP
   C10L 3/08 20060101ALI20240402BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20240402BHJP
   B09B 101/70 20220101ALN20240402BHJP
【FI】
B09B3/65 ZAB
F24H1/00 631Z
C10L3/08
C12M1/00 H
B09B101:70
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154380
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤本 卓也
(72)【発明者】
【氏名】久保田 謙三
(72)【発明者】
【氏名】小林 雅之
(72)【発明者】
【氏名】西野 優希
【テーマコード(参考)】
3L122
4B029
4D004
【Fターム(参考)】
3L122AA26
4B029AA04
4B029AA12
4B029BB02
4D004AA03
4D004AC05
4D004BA03
4D004CA18
4D004CB04
4D004DA01
4D004DA02
4D004DA06
4D004DA12
(57)【要約】
【課題】バイオガス発電装置の排熱を利用した、ガス生成効率のよいバイオガス発電システムを提供する。
【解決手段】バイオガス発電システム(1)は、有機物を貯留するクッションタンク(2)と、クッションタンクから供給される有機物を発酵させてバイオガスを生成するバイオガス発生槽(4)と、バイオガスを利用して発電するバイオガス発電装置(5)と、クッションタンクおよびバイオガス発生槽を経由して、温水を循環させる温水回路(7)と、温水とバイオガス発電装置で発生した排熱とを熱交換する熱交換器(6)と、バイオガス発生槽内の温度を測定する第1温度センサと、温水回路を流れる温水またはバイオガス発電装置で発電時に発生する排熱のいずれかの温度を測定する第2温度センサと、温水回路内に設けられ、、第2温度センサの値に基づいて順方向および逆方向に温水を送り出すポンプとを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物を貯留するクッションタンクと、
前記クッションタンクから供給される有機物を発酵させてバイオガスを生成するバイオガス発生槽と、
前記バイオガスを利用して発電するバイオガス発電装置と、
前記クッションタンクおよび前記バイオガス発生槽を経由して、温水を循環させる温水回路と、
前記温水と前記バイオガス発電装置で発生した排熱とを熱交換する熱交換器と、
前記バイオガス発生槽内の温度を測定する第1温度センサと、
前記温水回路を流れる温水または前記バイオガス発電装置で発電時に発生する排熱のいずれかの温度を測定する第2温度センサと、
前記温水回路内に設けられ、順方向および逆方向に温水を送り出すポンプと、
前記第2温度センサの値に基づいて前記ポンプの送り出し方向を切り替える制御手段とを備える、バイオガス発電システム。
【請求項2】
前記温水回路のうち、前記クッションタンクと前記熱交換器とを直接連結する第1回路と並列に設けられた分岐回路と、
前記分岐回路上に設けられたラジエータとを備え、
前記制御手段は、前記第2温度センサの値に基づいて、前記第1回路および前記分岐回路のうちいずれか一方を選択する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記分岐回路と前記第1回路との接続部分には三方弁が設けられ、
前記制御手段は、前記第2温度センサの値に基づいて前記三方弁を切り替えることで、前記第1回路および前記分岐回路のうちいずれか一方を選択する、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記制御手段は、前記第1温度センサの値が所定閾値未満となることに応じて前記第2温度センサの値を判別し、
前記第2温度センサの値が第1閾値未満の場合、前記第1回路を選択し、前記ポンプを順方向となるよう制御し、
前記第2温度センサの値が第1閾値以上第2閾値未満の場合、前記第1回路を選択し、前記ポンプを逆方向となるよう制御し、
前記第2温度センサの値が第2閾値以上の場合、前記分岐回路を選択し、前記ポンプを逆方向となるよう制御する、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記クッションタンクはディスポーザから供給される排水を貯留する、請求項1に記載のシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオガス発電システムに関し、特にバイオガス発生槽の温度を適温に維持するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2020-49392号公報(特許文献1)には、バイオガス発電装置で発生した排熱をメタン発酵槽の加温に利用するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-49392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、発電で生じた排熱を、その温度に関わらずメタン発酵槽の加温に利用しており、温度調節されることが望まれていた。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的はバイオガス発電装置の排熱を利用した、ガス生成効率のよいバイオガス発電システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある局面に従うバイオガス発電システムは、有機物を貯留するクッションタンクと、クッションタンクから供給される有機物を発酵させてバイオガスを生成するバイオガス発生槽と、バイオガスを利用して発電するバイオガス発電装置と、クッションタンクおよびバイオガス発生槽を経由して、温水を循環させる温水回路と、温水とバイオガス発電装置で発生した排熱とを熱交換する熱交換器と、バイオガス発生槽内の温度を測定する第1温度センサと、温水回路を流れる温水またはバイオガス発電装置で発電時に発生する排熱のいずれかの温度を測定する第2温度センサと、温水回路内に設けられ、順方向および逆方向に温水を送り出すポンプと、第2温度センサの値に基づいてポンプの送り出し方向を切り替える制御手段とを備える。
【0007】
好ましくは、温水回路のうち、クッションタンクと熱交換器とを直接連結する第1回路と並列に設けられた分岐回路と、分岐回路上に設けられたラジエータとを備える。制御手段は、第2温度センサの値に基づいて、第1回路および分岐回路のうちいずれか一方を選択する。
【0008】
好ましくは、分岐回路と第1回路との接続部分には三方弁が設けられ、制御手段は、第2温度センサの値に基づいて三方弁を切り替えることで、第1回路および分岐回路のうちいずれか一方を選択する。
【0009】
好ましくは、制御手段は、第1温度センサの値が所定閾値未満となることに応じて第2温度センサの値を判別し、第2温度センサの値が第1閾値未満の場合、第1回路を選択し、ポンプを順方向となるよう制御し、第2温度センサの値が第1閾値以上第2閾値未満の場合、第1回路を選択し、ポンプを逆方向となるよう制御し、第2温度センサの値が第2閾値以上の場合、分岐回路を選択し、ポンプを逆方向となるよう制御する。
【0010】
好ましくは、クッションタンクはディスポーザから供給される排水を貯留する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、バイオガス発電装置の排熱を利用した、ガス生成効率のよいバイオガス発電システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施の形態に係るバイオガス発電システムの概要を示す図である。
図2】本実施の形態に係るバイオガス発電システムの温水流路を条件別に示す説明図であり、(a)は第1温度センサが所定閾値未満かつ第2温度センサが第1閾値未満の場合を、(b)は第1温度センサが所定閾値未満かつ第2温度センサが第1閾値以上第2閾値未満の場合を、(c)は第1温度センサが所定閾値未満かつ第2温度センサが第2閾値以上の場合を示す。
図3】本実施の形態に係るバイオガス発電システムの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0014】
図1を参照して、本実施の形態に係るバイオガス発電システム1(以下の説明において、単に「システム」ともいう)について説明する。
【0015】
本実施の形態に係るバイオガス発電システム1は、たとえば集合住宅に備えられる。システム1は、供給される有機物を貯留するクッションタンク2と、クッションタンク2から供給される有機物を発酵させてバイオガスを生成するバイオガス発生槽4と、バイオガスを利用して発電するバイオガス発電装置5と、クッションタンク2およびバイオガス発生槽4を経由して、温水を循環させる温水回路6と、温水とバイオガス発電装置5で発生した排熱とを熱交換する熱交換器7と、温水回路6内に設けられ、順方向および逆方向に温水を送り出すポンプPと、ポンプPの送り出し方向を切り替える制御手段とを備える。発電により得られた電気は、たとえば集合住宅の電力源の一部として用いられる。
【0016】
本実施の形態のクッションタンク2は、集合住宅の各戸に設けられたディスポーザから供給される野菜かすなどの食品系廃棄物を含むディスポーザ排水、すなわち有機物を貯留する。集合住宅は、時間帯によって有機物の発生にばらつきが生じ易い。そこで、クッションタンク2に一旦貯留することで、時間帯によらないでバイオガス発生槽4へ有機物を供給することができる。貯留された有機物は、有機物供給路21を介して後述する固液分離槽3へ供給される。
【0017】
ディスポーザ排水は、有機物を含む固形分に比して液分が非常に多い。すなわち液分は不要であり、本実施の形態のシステム1は、クッションタンク2に貯留されたディスポーザ排水をバイオガス発生槽4へ送り込む前に、固液分離槽3で固形分と液分とに分離する。分離された固形分は、固形分供給路31を介してバイオガス発生槽4に供給される。分離された液分は、液分排水路32を介して後述する排水処理槽9へ送り出される。これにより、バイオガス発生槽4で利用する有機物を効率よく集めて供給することができる。
【0018】
バイオガス発生槽4は、固形分供給路31を介して供給される有機物を発酵させてバイオガス発電装置5で利用するガスを生成するための槽である。バイオガス発生槽4は、典型的には1以上のメタン菌を含む発酵液が貯留されている「メタン発酵槽4」である。メタン菌は、嫌気発酵によりメタンガスを生成する。また、活性化しやすい温度帯によって低温性メタン菌(30℃未満)、中温性メタン菌(30~45℃)、高温性メタン菌(45℃を超える温度)に分別される。本実施の形態では、中温性メタン菌を使用し、特に40~45℃、好ましくは40~42℃の温度帯で活性化する中温性メタン菌を主に用いるものとして説明する。この温度帯のメタン菌は、それよりも低い温度帯のメタン菌よりもメタン発酵速度が速く、それよりも高い温度帯のメタン菌よりも発酵阻害が起こりにくいという利点がある。
【0019】
バイオガス発生槽4内のメタン菌が生成したメタンガスは、バイオガス発生槽4の上方領域に設けられたバイオガス導入路41を介してバイオガス発電装置5へ送り出される。
【0020】
本実施の形態のバイオガス発生槽4は、槽内温度を測定する第1温度センサSを含む。第1温度センサSの値Tに応じて、制御手段は温水回路6内に設けられたポンプPのオン/オフを制御する。これにより、バイオガス発生槽4内の加温が必要な場合にのみポンプPを駆動することができるため、省エネルギーで槽内温度を維持することができる。
【0021】
なお、バイオガス導入路41上には、バイオガス発生槽4で生成されたメタンガスを貯留することのできるガスホルダ(図示せず)を設けてもよい。
【0022】
固液分離槽3で発生した液分およびバイオガス発生槽4で発生した消化液(メタン発酵後の液分)は、それぞれ液分排水路32および消化液排水路42を介して排水処理槽9へ送り込まれる。排水処理槽9は、不要な液分を貯留して排水処理を行う。処理された水は、下水として外部へ排水される。
【0023】
バイオガス発電装置5は、バイオガス導入路41より供給されるメタンガスを燃焼することで発電する。発電時に発生した排ガスの熱(排熱)は、熱交換器7に供給される。
【0024】
温水回路6は、内部を温水などの熱媒が流れる回路であり、クッションタンク2およびバイオガス発生槽4を直接的または間接的に加温する。すなわち、クッションタンク2やバイオガス発生槽4の内部へ挿通して液分を直接的に加温したり、槽の外周を取り囲んで間接的に加温するように構成される。温水回路6は熱交換器7と接続しており、バイオガス発電装置5で発生した排熱を利用して、温水回路6内を流れる温水を加温する。これにより、槽内温度低下によるバイオガス発生槽4のガス生成効率の低下を防止することができる。
【0025】
本実施の形態の温水回路6は、クッションタンク2と熱交換器7とを直接連結する第1回路61と、第1回路61と並列に設けられた分岐回路62とを備える。分岐回路62は、第1回路61と並列関係にあればよく、熱交換器7およびクッションタンク2において第1回路61と接続していてもよい。また、分岐回路62と第1回路61との接続部分には、流路を切り替えることのできる三方弁Vが設けられている。
【0026】
温水回路6内の温水は、順方向および逆方向に送り出すことのできるポンプPによって流れ方向が定められている。温水回路6上には、熱交換器7を挟んで対になるように第2温度センサS,Sが設けられている。第2温度センサS,Sは、温水回路6を流れる温水の温度を測定する。ポンプPの送り出し方向および三方弁Vの切り替えは、第2温度センサS,Sのうち温度が高い方の値Tに基づいて、制御手段によって行われる。なお、制御手段の詳細については後述する。
【0027】
本実施の形態では、ポンプPの送り出し方向について、時計回りを順方向とし、反時計回りを逆方向としたが、逆向きでもよい。すなわち、熱交換器7とバイオガス発生槽4とが直接連結される方向が順方向であり、熱交換器7とクッションタンク2とが直接連結される方向が逆方向である。
【0028】
なお、温水回路6は、固液分離槽3をさらに加温するように構成されていてもよい。これにより、バイオガス発生槽4へ供給される有機物の温度が保たれるため、メタンガスの生成効率を促進することができる。
【0029】
なお、本実施の形態の第2温度センサS、Sは、温水回路6に設けられることとしたが、バイオガス発電装置5で発電時に発生する排熱の温度を測定する第2温度センサSとしてもよい。この場合、第2温度センサSの値Tに定められる閾値は、第2温度センサS,Sの閾値よりも高くなるよう設定される。
【0030】
熱交換器7は、バイオガス発電装置5で発生した排熱と、温水回路6を流れる温水とを熱交換する。熱交換器7が排熱を受け入れる際の形態については特に限定されず、たとえば排ガス(排熱)の通るガス管路が接続されていてもよいし、排熱で加温された熱媒が流れる熱媒管路が接続されていてもよい。また、ガス管路が接続される際は、排ガスを外部へ排気するための図示しない排気路が設けられていてもよい。
【0031】
本実施の形態では、分岐回路62上にラジエータ8が設けられている。ラジエータ8は、熱交換器の一種であり、温水回路6内を流れる温水の温度を下げるための「放熱手段」である。ラジエータ8は、冷却対象である温水を内部に流し、周囲の空気や水等に熱伝導を利用して放熱する。すなわちラジエータ8は、熱の一部を伝熱及び放射によって放熱する。なお、ラジエータ8の容量は、高温な温水を十分に冷却可能とするように設計される。
【0032】
ラジエータ8は、屋外・室内問わず任意の場所に設けることができる。たとえば、クッションタンク2、固液分離槽3、およびバイオガス発生槽4が同じ室内に配置されている場合、ラジエータ8はこの室内を加温するように配置できる。これにより、バイオガス発生槽4および供給される有機物の温度低下を間接的に防止でき、ガス化効率を向上させることができる。
【0033】
(制御手段について)
図2,3を参照して、本実施の形態に係るバイオガス発電システム1の制御手段が行う動作について説明する。図2は、本実施の形態に係るバイオガス発電システムの温水流路を条件別に示す説明図であり、(a)は第1温度センサが所定閾値未満かつ第2温度センサが第1閾値未満の場合を、(b)は第1温度センサが所定閾値未満かつ第2温度センサが第1閾値以上第2閾値未満の場合を、(c)は第1温度センサが所定閾値未満かつ第2温度センサが第2閾値以上の場合を示す。図3は、本実施の形態に係るバイオガス発電システムの動作を示すフローチャートである。
【0034】
初めに、制御手段は、第1温度センサSによって、バイオガス発生槽4内の温度Tを測定する(ステップS1)。本実施の形態で用いる主なメタン菌の活性化温度は40~45℃であるため、槽内温度Tが40℃未満となったことに応じて(ステップS2においてYES)、第2温度センサSまたはSによって、熱交換器7を出る温水の温度Tを測定する(ステップS3)。なお、槽内温度Tが40℃以上である場合は(ステップS2においてNO)、槽内温度Tはメタン菌にとって適温であると判断し、第1温度センサSでの測定を繰り返しながら待機する。
【0035】
温水の温度Tが50℃未満である場合、三方弁Vは第1回路61を選択し、ポンプPの送り出し方向は順方向を選択するように制御される(ステップS51)。したがって、図2(a)に示すように、熱交換器7を出た温水は、バイオガス発生槽4、クッションタンク2の順で加温し、第1回路61を経由して熱交換器7へ戻る。
【0036】
温水の温度Tが50℃以上70℃未満の場合、三方弁Vの向きは第1回路61を選択し、ポンプPの送り出し方向は逆方向を選択するように制御される(ステップS52)。したがって、図2(b)に示すように、熱交換器7を出た温水は、第1回路61を経由して、クッションタンク2、バイオガス発生槽4の順で加温して、熱交換器7へ戻る。温水の温度Tが50℃以上となると本実施の形態で主に用いるメタン菌にとっては少し高温である。そこで、温水の熱を、先ずクッションタンク2内に貯留される排水に伝熱した後に、バイオガス発生槽4を加温する。すなわち、本ステップS52における温水は、バイオガス発生槽4を加温する機能だけでなく、クッションタンク2を予熱する機能も担っている。
【0037】
温水の温度Tが70℃以上の場合、三方弁Vの向きは分岐回路62を選択し、ポンプPの送り出し方向は逆方向を選択するように制御される(ステップS53)。したがって、図2(c)に示すように、熱交換器7を出た温水は、分岐回路62およびその経路上に配置されたラジエータ8を経由して、クッションタンク2、バイオガス発生槽4の順で加温して、熱交換器7へ戻る。温水の温度Tが70℃以上となれば本実施の形態で主に用いるメタン菌にとっては温度が高すぎるため、温水回路6付近のメタン菌が死滅してしまう恐れがある。そこで、温水の熱を、まずラジエータ8で冷却・放熱し、さらにクッションタンク2内に貯留される排水に伝熱する。これにより、高温な温水の温度を、バイオガス発生槽4の加温に適した温度まで省エネルギーで低下させることができる。
【0038】
本実施の形態に係るシステム1によれば、温水回路6内の温水の温度Tに応じて温水の流路や流れ方向を切り替える。これにより、バイオガス発生槽4内の温度を維持できるだけでなく、クッションタンク2およびラジエータ8が設けられる室を予熱することができるため、ガス生成効率を向上することができる。
【0039】
なお、温水回路6は、クッションタンク2およびバイオガス発生槽4を経由することとしたが、固液分離槽3をさらに経由してもよい。これにより、固液分離槽3内の固形分(有機物)が加温されるため、ガス生成効率を向上することができる。また、温水回路6が経由するクッションタンク2や固液分離槽3は、温水の熱を低下させることに寄与するものであるため、温水回路6に対する「放熱手段」としての機能も担うことができる。
【0040】
また、本実施の形態に係るシステム1は、集合住宅に用いられることを例に挙げて説明したが、これに限定されない。したがって、システム1には有機物が供給されればよく、たとえば商業施設、宿泊施設であってもよい。この場合であっても、施設内で発生した有機物を利用した発電を行い、発電された電気を施設内の設備に利用することができ、エコフレンドリーな建物を提供することができる。
【0041】
以上、図面を参照してこの発明の実施の形態を説明したが、この発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 バイオガス発電システム、2 クッションタンク、3 固液分離槽、4 バイオガス発生槽、5 バイオガス発電装置、6 温水回路、7 熱交換器、8 ラジエータ、61 第1回路、62 分岐回路、P ポンプ、V 三方弁。
図1
図2
図3