(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048462
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置、および微細構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20240402BHJP
【FI】
H01L21/302 101C
H01L21/302 105B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154382
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(72)【発明者】
【氏名】中澤 和輝
(72)【発明者】
【氏名】吉森 大晃
(72)【発明者】
【氏名】宮本 高志
【テーマコード(参考)】
5F004
【Fターム(参考)】
5F004AA11
5F004BA20
5F004BB13
5F004CA06
5F004DA22
5F004DA23
5F004DA24
5F004DA25
5F004DA26
5F004DB08
5F004EB07
5F004EB08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】金属膜の表面の平坦度を向上させることができるプラズマ処理装置および微細構造体の製造方法を提供する。
【解決手段】プラズマ処理装置は、大気圧よりも減圧された雰囲気を維持可能なチャンバと、前記チャンバの内部の雰囲気を減圧可能な減圧部と、前記チャンバの内部にプラズマを発生可能なプラズマ電源と、前記チャンバの内部の、前記プラズマが発生する空間にガスを供給可能なガス供給部と、電極を有し、処理物を載置可能な載置部と、前記電極に電力を印加可能なバイアス電源と、を備えている。前記処理物の表面には、金属膜が露出している。前記プラズマによって前記ガスから生成されたイオンが前記金属膜に入射する。前記バイアス電源が、前記電極に印加する電力密度をS(W/cm
2)とした場合に、以下の式を満足する。
0.04(W/cm
2)≦S(W/cm
2)≦0.08(W/cm
2)
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気圧よりも減圧された雰囲気を維持可能なチャンバと、
前記チャンバの内部の雰囲気を減圧可能な減圧部と、
前記チャンバの内部にプラズマを発生可能なプラズマ電源と、
前記チャンバの内部の、前記プラズマが発生する空間にガスを供給可能なガス供給部と、
電極を有し、前記チャンバの内部の、前記プラズマが発生する空間に面する位置に設けられ、処理物を載置可能な載置部と、
前記電極に電力を印加可能なバイアス電源と、
を備え、
前記処理物の表面には、金属膜が露出し、
前記プラズマによって前記ガスから生成されたイオンが前記金属膜に入射し、
前記バイアス電源が、前記電極に印加する電力密度をS(W/cm2)とした場合に、以下の式を満足するプラズマ処理装置。
0.04(W/cm2)≦S(W/cm2)≦0.08(W/cm2)
【請求項2】
前記ガスは、希ガスである請求項1記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記バイアス電源が、前記電極に電力を印加することで、前記プラズマから前記電極に向かう電気力線が生じ、
前記イオンが、前記電気力線に沿って加速して、前記金属膜に入射することで、前記金属膜の表面の粗さがRz2.5nm以下となる請求項1または2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
大気圧よりも減圧された雰囲気にガスを供給するとともにプラズマを発生させ、発生させた前記プラズマによって前記ガスからイオンを生成する工程と、
生成された前記イオンを、処理物の表面に露出している金属膜に入射させる工程と;
を備え、
前記イオンを、前記処理物の表面に露出している前記金属膜に入射させる工程において、
前記処理物を載置する載置部に設けられた電極に、印加する電力密度をS(W/cm2)とした場合に、以下の式を満足する微細構造体の製造方法。
0.04(W/cm2)≦S(W/cm2)≦0.08(W/cm2)
【請求項5】
前記ガスは、希ガスである請求項4記載の微細構造体の製造方法。
【請求項6】
前記イオンを、前記処理物の表面に露出している前記金属膜に入射させる工程において、
前記電極に電力を印加することで、前記プラズマから前記電極に向かう電気力線を生じさせ、
前記イオンが、前記電気力線に沿って加速して、前記金属膜に入射することで、前記金属膜の表面の粗さがRz2.5nm以下となる請求項4または5に記載の微細構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、プラズマ処理装置、および微細構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置やフォトマスクなどの微細構造体の製造過程において、微細構造体に設けられる金属膜の表面を平坦化する場合がある。例えば、金属膜の上に他の膜を成膜したり、金属膜の表面に酸化層や窒化層などの層を形成したりする際には、他の膜や層を形成する前に金属膜の表面を平坦化している。金属膜の表面が平坦化されていれば、金属膜の上に形成される膜や層の厚み精度や平坦度などが高くなる。そのため、微細構造体の機能の向上を図ることができる。
【0003】
一般的に、金属膜の表面を平坦化する技術としては、CMP(Chemical Mechanical Polishing)や、反応性ガスを用いたドライエッチングなどが知られている。CMPや、反応性ガスを用いたドライエッチングなどを行えば、金属膜の表面の凹凸を除去することができる。
【0004】
ところが、近年においては、微細構造体の微細化が進み、金属膜の表面の平坦度をさらに高めることが要求されている。例えば、CMPや、反応性ガスを用いたドライエッチングなどを行っても、金属膜の表面にあるナノレベルの凹凸を除去することができない。例えば、ALD(Atomic Layer Deposition)などにより、金属膜の表面に膜を成膜する際に、金属膜の表面にナノレベルの凹凸があると、所望の成膜精度が得られなくなる場合がある。
そこで、金属膜の表面の平坦度を向上させることができる技術の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、金属膜の表面の平坦度を向上させることができるプラズマ処理装置、および微細構造体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係るプラズマ処理装置は、大気圧よりも減圧された雰囲気を維持可能なチャンバと、前記チャンバの内部の雰囲気を減圧可能な減圧部と、前記チャンバの内部にプラズマを発生可能なプラズマ電源と、前記チャンバの内部の、前記プラズマが発生する空間にガスを供給可能なガス供給部と、電極を有し、前記チャンバの内部の、前記プラズマが発生する空間に面する位置に設けられ、処理物を載置可能な載置部と、前記電極に電力を印加可能なバイアス電源と、を備えている。前記処理物の表面には、金属膜が露出している。前記プラズマによって前記ガスから生成されたイオンが前記金属膜に入射する。前記バイアス電源が、前記電極に印加する電力密度をS(W/cm2)とした場合に、以下の式を満足する。
0.04(W/cm2)≦S(W/cm2)≦0.08(W/cm2)
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態によれば、金属膜の表面の平坦度を向上させることができるプラズマ処理装置、および微細構造体の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】プラズマ処理装置を例示するための模式断面図である。
【
図2】電極に印加する電力と、金属膜の表面の平坦度との関係を例示するための模式図である。
【
図3】電極に印加する電力と、金属膜の表面の平坦度との関係を例示するための模式図である。
【
図4】電極に印加する電力と、金属膜の表面の平坦度との関係を例示するための模式図である。
【
図5】電極に印加する電力密度と、金属膜の表面の粗さとの関係を例示するためのグラフである。
【
図6】微細構造体の製造方法を例示するための模式工程断面図である。
【
図7】微細構造体の製造方法を例示するための模式工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0011】
(プラズマ処理装置)
まず、本発明の実施形態に係るプラズマ処理装置1について説明する。
プラズマ処理装置1を用いて平坦化処理される処理物100は、例えば、半導体装置、フォトマスク、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)などの製造過程における構造体とすることができる。以下においては、一例として、処理物100がフォトマスクの製造過程において用いられる構造体(マスクブランク)である場合を説明する。ただし、処理物100は、これに限定されるわけではない。処理物100は、表面に金属膜が露出している構造体であればよい。
【0012】
図1は、プラズマ処理装置1を例示するための模式断面図である。
図1に例示をしたプラズマ処理装置1は、上部に誘導結合型電極を有し、下部に容量結合型電極を有する二周波プラズマ処理装置である。ただし、プラズマ処理装置は、高周波やマイクロ波などを用いてチャンバの内部にプラズマを発生させ、処理物100とプラズマとの間に自己バイアス電位を生じさせることができるものであれば良い。例えば、プラズマ処理装置は、誘導結合型プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)を用いたプラズマ処理装置や、容量結合プラズマ(CCP:Capacitively Coupled Plasma)を用いたプラズマ処理装置、マイクロ波によりプラズマを生成するプラズマ処理装置などであってもよい。
【0013】
図1に示すように、プラズマ処理装置1は、例えば、チャンバ10、載置部20、プラズマ電源30、バイアス電源40、減圧部50、ガス供給部60、およびコントローラ70を備えている。
【0014】
チャンバ10は、大気圧よりも減圧された雰囲気を維持可能な気密構造を有している。 チャンバ10は、略円筒形状を呈している。チャンバ10は、例えば、アルミニウム合金などの金属から形成される。また、チャンバ10は、接地されている。チャンバ10の内部には、プラズマPが発生する空間10aが設けられている。チャンバ10には、処理物100を搬入搬出するための搬入搬出口10bが設けられている。搬入搬出口10bは、ゲートバルブ12により気密に閉鎖できるようになっている。
【0015】
窓11は、板状を呈し、チャンバ10の天板に設けられている。窓11は、電磁場を透過させることができ、且つ、プラズマ処理を行った際に損傷し難い材料から形成される。窓11は、例えば、石英などの誘電体材料から形成することができる。
【0016】
載置部20は、チャンバ10の内部に設けられ、処理物100を載置する。載置部20は、プラズマPが発生する空間10aに面する位置に設けられている。例えば、載置部20は、チャンバ10の底面に設けられている。
【0017】
載置部20は、例えば、電極21、台座22、および絶縁リング23を有する。
電極21は、プラズマPが発生する空間10aの下方に設けられている。電極21の上面は処理物100を載置するための載置面となっている。電極21は、金属などの導電性材料から形成することができる。
【0018】
台座22は、電極21と、チャンバ10の底面との間に設けられている。台座22は、電極21と、チャンバ10との間を絶縁する。台座22は、例えば、石英などの誘電体材料から形成することができる。
【0019】
絶縁リング23は、リング状を呈し、電極21の側面、および台座22の側面を覆っている。絶縁リング23は、例えば、石英などの誘電体材料から形成することができる。
【0020】
プラズマ電源30は、空間10aにおいて高周波放電を生じさせてプラズマPを発生させる。
プラズマ電源30は、電極31、電源32、および整合器33を有する。
電極31、電源32、および整合器33は、配線により電気的に接続されている。
【0021】
電極31は、チャンバ10の外部であって、窓11の上に設けられている。電極31は、例えば、電磁場を発生させる複数の導体部と、複数の容量部(コンデンサ)とを有している。
【0022】
電源32は、100KHz~100MHz程度の周波数を有する高周波電力を電極31に印加する。この場合、電源32は、プラズマPの発生に適した比較的高い周波数(例えば、13.56MHzの周波数)を有する高周波電力を電極31に印加する。また、電源32は、出力する高周波電力の周波数を変化させるものとすることもできる。
【0023】
整合器33は、電極31と電源32の間に設けられている。整合器33は、電源32側のインピーダンスと、プラズマP側のインピーダンスとの間で整合をとるための整合回路を備えている。
【0024】
バイアス電源40は、載置部20の電極21に電力を印加する。バイアス電源40は、いわゆるバイアス制御用の高周波電源である。すなわち、バイアス電源40は、載置部20上の、処理物100に引き込むイオンのエネルギーを制御する。
バイアス電源40は、電源41、および整合器42を有する。
電源41は、整合器42を介して電極21と電気的に接続されている。電源41は、イオンを引き込むために適した比較的低い周波数(例えば、13.56MHz以下の周波数)を有する高周波電力を電極21に印加する。
【0025】
整合器42は、電極21と電源41との間に設けられている。整合器42は、電源41側のインピーダンスと、プラズマP側のインピーダンスとの間で整合をとるための整合回路を備えている。
【0026】
減圧部50は、チャンバ10の内部の雰囲気が所定の圧力となるように減圧する。
減圧部50は、ポンプ51、および圧力制御部52を有する。
ポンプ51は、例えば、ターボ分子ポンプ(TMP:Turbo Molecular Pump)などとすることができる。ポンプ51と圧力制御部52は、配管を介して接続されている。
【0027】
圧力制御部52は、チャンバ10の内圧を検出する図示しない真空計などの出力に基づいて、チャンバ10の内部の雰囲気が所定の圧力となるように制御する。圧力制御部52は、例えば、APC(Auto Pressure Controller)などとすることができる。圧力制御部52は、配管を介して、チャンバ10に設けられた排気口10cに接続されている。
【0028】
ガス供給部60は、チャンバ10の内部の、プラズマPが発生する空間10aにガスGを供給する。
ガス供給部60は、ガス収納部61、ガス制御部62、および開閉弁63を有する。ガス収納部61とガス制御部62は、配管を介して接続されている。
【0029】
ガス収納部61は、ガスGを収納し、収納したガスGをチャンバ10の内部に供給する。ガス収納部61は、例えば、ガスGを収納した高圧ボンベなどとすることができる。
【0030】
ガスGは、プラズマPにより励起、活性化された際に、イオンが生成されるガスであればよい。例えば、ガスGは、酸素ガス、窒素ガス、水素ガス、希ガスなどとすることができる。ここで、ガスGが、プラズマPにより励起、活性化された際に、イオンとともにラジカルが生成される。そのため、生成されたラジカルの反応性が高いと、処理物100の表面に露出している金属膜が変質するおそれがある。そのため、ガスGは、アルコンやヘリウムなどの希ガスとすることが好ましい。ガスGが希ガスであれば、生成されたラジカルの反応性が低いので、処理物100の表面に露出している金属膜が変質するのを抑制することができる。例えば、ガスGとして希ガスを用いれば、処理物100の表面に露出している金属膜が、酸化、窒化、還元などされるのを抑制することができる。この場合、ガスGは、希ガスの単ガスであってもよいし、複数種類の希ガスの混合ガスであってもよい。
【0031】
ガス制御部62は、ガス収納部61からチャンバ10の内部にガスGを供給する際に流量や圧力などを制御する。ガス制御部62は、例えば、MFC(Mass Flow Controller)などとすることができる。ガス制御部62と開閉弁63は、配管を介して接続されている。
【0032】
開閉弁63は、配管を介して、チャンバ10に設けられたガス供給口10dに接続されている。開閉弁63は、ガスGの供給と、ガスGの供給の停止とを切り替える。開閉弁63は、例えば、2ポート電磁弁などとすることができる。なお、開閉弁63の機能をガス制御部62に持たせることもできる。
【0033】
コントローラ70は、CPU(Central Processing Unit)などの演算部と、メモリなどの記憶部とを備えている。コントローラ70は、例えば、コンピュータである。コントローラ70は、記憶部に格納されている制御プログラムに基づいて、プラズマ処理装置1に設けられた各要素の動作を制御する。
【0034】
次に、プラズマ処理装置1の作用について例示をする。
まず、図示しない搬送装置により、処理物100が搬入搬出口10bを介してチャンバ10の内部に搬入される。コントローラ70は、載置部20に設けられた図示しないリフトピンなどを制御して、搬入された処理物100を搬送装置から載置部20に受け渡す。処理物100の受け渡しが終了した搬送装置は、チャンバ10の外部に移動する。
【0035】
次に、コントローラ70は、ゲートバルブ12を制御して、搬入搬出口10bを気密となるように閉鎖する。
次に、コントローラ70は、減圧部50を制御して、チャンバ10の内部の雰囲気が所定の圧力となるように減圧する。例えば、コントローラ70は、減圧部50を制御して、チャンバ10の内部の雰囲気が5×10-3Pa~5×10-2Pa程度となるようにする。
【0036】
次に、コントローラ70は、ガス供給部60を制御して、チャンバ10の内部の空間10aに所定の流量のガスGを供給する。ガスGの流量は、例えば、50sccm~500sccm程度とすることができる。チャンバ10の内部の空間10aにガスGを供給することで、チャンバ10の内部の雰囲気が0.3Pa~10Pa程度となる。
【0037】
また、コントローラ70は、プラズマ電源30の電源32を制御して、チャンバ10の内部の空間10aに高周波放電を生じさせる。電源32により電極31に印加する電力は、例えば、400W~2000W程度である。電源32により電極31に印加する電力の周波数は、例えば、13.56MHz程度である。チャンバ10の内部の空間10aに高周波放電が生じることで、プラズマPが発生する。
【0038】
発生したプラズマPにより、ガスGが励起、活性化されてイオンとラジカルが生成される。
生成されたラジカルは、重力により、空間10aの内部を処理物100の表面に向けて下降する。前述した様に、ガスGが希ガスであれば、生成されたラジカルの反応性を低くすることができる。そのため、生成されたラジカルが、処理物100の表面に露出している金属膜に接触したとしても、金属膜が変質するのを抑制することができる。
【0039】
また、コントローラ70は、バイアス電源40の電源41を制御して、処理物100の表面に露出している金属膜に引き込むイオンのエネルギーを制御する。すなわち、コントローラ70は、電源41により電極21に印加する電力を制御して、イオンが金属膜に衝突する際のエネルギーを制御する。この場合、電源41により電極21に印加する電力の周波数は、例えば、13.56MHz程度である。
【0040】
電極21に印加する電力を制御することで、イオンが金属膜に衝突する際のエネルギー(衝突エネルギー)を制御することができる。後述するように、衝突エネルギーが大き過ぎても、金属膜の表面の平坦度を向上させることはできない。衝突エネルギーは、金属膜の表面をナノレベルの平坦度とすることができるエネルギーの範囲とすることができれば、金属膜の表面の平坦度を向上させることができる。
なお、電極21に印加する電力と、金属膜の表面の平坦度との関係に関する詳細は後述する。
【0041】
次に、コントローラ70は、ガス供給部60を制御して、ガスGの供給を停止する。また、コントローラ70は、プラズマ電源30およびバイアス電源40を制御して、プラズマPの発生、およびイオンの引き込みを停止する。また、コントローラ70は、減圧部50を制御して、チャンバ10の内部の雰囲気を大気圧に戻す。
【0042】
次に、コントローラ70は、ゲートバルブ12を制御して、搬入搬出口10bを開放する。
次に、コントローラ70は、載置部20に設けられた図示しないリフトピンなどを制御して、搬入搬出口10bを介して侵入した図示しない搬送装置に、処理済みの処理物100を受け渡す。図示しない搬送装置は、受け渡された処理済みの処理物100をチャンバ10の外部に搬出する。
以上の様にすることで、処理物100の表面に露出する金属膜の表面を平坦化することができる。
【0043】
なお、金属膜の表面を平坦化した後に、チャンバ10の内部において、他の処理を続けて行うこともできる。
例えば、CH2Cl2,O2などのエッチングガスを供給するガス供給部を、プラズマ処理装置1にさらに設けることができる。そして、金属膜の表面を平坦化した後に、チャンバ10の内部において、エッチングガスを用いたプラズマエッチング処理を続けて行うことができる。
【0044】
次に、電極21に印加する電力の制御についてさらに説明する。
図2(a)~
図4(b)は、電極21に印加する電力と、金属膜101の表面の平坦度との関係を例示するための模式図である。
図2(a)、
図3(a)、および
図4(a)は、イオン200が、金属膜101の表面に入射する様子を表している。
図2(b)、
図3(b)、および
図4(b)は、イオン200の入射後の金属膜101の表面の状態を表している。
【0045】
なお、
図2(a)~
図4(b)において例示をする処理物100は、フォトマスクの製造過程において用いられるマスクブランクである。例えば、処理物100は、基体103と、基体103の上に設けられた膜102と、膜102の上に設けられた金属膜101とを有している。例えば、基体103は、石英を含む板状体である。例えば、膜102は、モリブデンシリコンを含んでいる。例えば、金属膜101は、クロムを含んでいる。
【0046】
図2(a)、(b)は、電極21に電力を印加しない場合である。
図2(a)に示すように、電極21に電力を印加しない場合には、イオン200は、金属膜101の表面にランダムな方向から入射する。そのため、イオン200が金属膜101表面の凸部または凹部に衝突する確率は、同程度となる。したがって、イオン200が金属膜101表面の凸部を集中してエッチングすることができない。また、イオン200が金属膜101に衝突する際のエネルギーが小さくなる。
そのため、
図2(b)に示すように、金属膜101の表面の平坦度を向上させることは困難である。
【0047】
図3(a)、(b)は、電極21に電力を印加する場合である。電極21に電力を印加すると、電極21に負の直流電圧(自己バイアス電圧)が発生する。その結果、プラズマPから処理物100(電極21)に向かう電気力線が生ずる。プラズマPによってガスGから生成されたイオン200は、電気力線に沿って加速する。
そのため、
図3(a)に示すように、イオン200は、金属膜101の表面に所定の方向から入射する。金属膜101の表面において、金属膜101の表面に形成された凸部の先端は、最もプラズマとの距離が近い。また、導体の表面に尖った部分があると、電場は、尖った部分で大きくなる。そのため、イオン200は、金属膜101の表面に形成された凸部に集中して衝突すると考えられる。
【0048】
この際、電極21に印加する電力を大きくしすぎると、イオン200が金属膜101に衝突する際のエネルギーが大きくなり過ぎる。イオン200の衝突エネルギーが大きくなり過ぎると、金属膜101の表面にイオン200が衝突した際に、金属膜101の表面に転位などの欠陥が形成される。転位などの欠陥が形成された部分は、原子配列の乱れが生じる。そのため、金属膜101の表面の他の部分と比べてエッチングされ易い。つまり、欠陥が形成された部分は、金属膜101を構成し、金属膜101の表面からはじき出される原子の数が金属膜101の表面の他の部分よりも多くなる。そのため、
図3(b)に示すように、金属膜101の表面に微細な凹凸101aが形成される場合がある。なお、凹凸101aは、
図2(b)に示された凹凸よりも小さい。
【0049】
近年においては、微細構造体の微細化が進み、金属膜101の表面の平坦度をさらに高めることが要求されている。例えば、ALDなどにより、金属膜101の表面に膜を成膜する際に、金属膜101の表面にナノレベルの凹凸101aがあると、所望の成膜精度が得られなくなる場合がある。
【0050】
図4(a)、(b)も、電極21に電力を印加する場合である。ただし、電極21に印加する電力は、
図3(a)の場合よりも小さくしている。
電極21に電力を印加すれば、前述した
図3(a)の場合と同様に、イオン200は、加速する。そのため、
図4(a)に示すように、イオン200は、金属膜101の表面に所定の方向から入射する。そして、イオン200は、金属膜101の表面に形成された凸部に集中して衝突すると考えられる。
【0051】
図4(a)の場合には、電極21に印加する電力が、
図3(a)の場合よりも小さいので、イオン200の衝突エネルギーが大きくなり過ぎるのを抑制することができる。前述の通り、衝突エネルギーが大きくなり過ぎると、金属膜101の表面にイオン200が衝突した際に、金属膜101の表面に転位などの欠陥が形成される。しかし、衝突エネルギーが適正な範囲であれば、金属膜101の表面に転位などの欠陥は形成されない。そのため、イオン200が金属膜101の表面に衝突した際に、金属膜101を構成し、金属膜101の表面からはじき出される原子の数を1原子程度に抑制することができる。また、イオン200は、金属膜101の表面に形成された凸部の先端に集中して衝突すると考えられる。そのため、金属膜101の凸部におけるエッチングが発生しやすくなると考えられる。
したがって、
図4(b)に示すように、金属膜101の表面に微細な凹凸101aが形成されるのを抑制することができる。すなわち、金属膜101の表面の平坦度を向上させることができる。
【0052】
ただし、電極21に印加する電力を小さくし過ぎると、金属膜101の表面にある凹凸を除去できなかったり、金属膜101の表面にある凹凸を除去するのに要する時間が長くなり過ぎたりする場合がある。
【0053】
図5は、電極21に印加する電力密度と、金属膜101の表面の粗さとの関係を例示するためのグラフである。
図5から分かるように、電極21に印加する電力密度S(W/cm
2)を、「0.04(W/cm
2)≦S(W/cm
2)≦0.08(W/cm
2)」とすれば、金属膜101の表面の粗さをRz2.5nm以下とすることができる。また、金属膜101の表面にある凹凸を除去するのに要する時間が過度に長くなるのを抑制することができる。
【0054】
(微細構造体の製造方法)
次に、本発明の実施形態に係る微細構造体の製造方法について説明する。
以下においては、一例として、微細構造体が位相シフトマスクである場合の製造方法について説明する。
【0055】
図6(a)~
図7(d)は、微細構造体の製造方法を例示するための模式工程断面図である。
まず、
図6(a)に示すように、基体103の一方の面に、モリブデンシリコンを含む膜102、クロムを含む金属膜101を順次成膜する。続いて、クロムを含む金属膜101の上にレジストを塗布し、フォトリソグラフィ法を用いてエッチングマスク104を形成する。
【0056】
次に、
図6(b)に示すように、エッチングマスク104から露出したクロムを含む金属膜101、モリブデンシリコンを含む膜102を順次エッチングする。続いて、エッチングマスク104を除去する。
【0057】
なお、
図6(a)において、金属膜101を成膜した後、あるいは、
図6(b)において、エッチングマスク104を除去した後に、前述した金属膜101の表面の平坦化処理を行うことができる。
【0058】
次に、
図7(a)に示すように、レジスト105を塗布する。
次に、
図7(b)に示すように、フォトリソグラフィ法などを用いてエッチングマスク105aを形成する。
次に、
図7(c)に示すように、エッチングマスク105aから露出したクロムを含む金属膜101をエッチングして、複数の凸部106を露出させる。
【0059】
なお、膜102から形成された複数の凸部106は、モリブデンシリコンを含んでいる。また、複数の凸部106は、位相シフトマスクにおけるパターン部となる。
また、膜102から形成された凸部107aと、金属膜101から形成された層107bを有する遮光部107が形成される。遮光部107は、枠状を呈し、パターン部(複数の凸部106)を囲んでいる。
【0060】
次に、
図7(d)に示すように、エッチングマスク105aを除去する。
以上の様にして、基体103、パターン部(複数の凸部106)、および遮光部107を有する位相シフトマスクを製造することができる。
【0061】
前述した金属膜101の表面の平坦化処理を行うことで、遮光部107の頂面が、ナノレベルで平坦となっていれば、位相シフトマスクの機能を向上させることができる。
【0062】
なお、前述したエッチングに関するプロセス条件には既知の技術を適用することができるので詳細な説明は省略する。
【0063】
以上に説明した様に、本発明の実施形態に係る微細構造体の製造方法は、以下の工程を備えることができる。
大気圧よりも減圧された雰囲気にガスGを供給するとともにプラズマPを発生させ、発生させたプラズマPによってガスGからイオン200を生成する工程。
生成されたイオン200を、処理物100の表面に露出している金属膜101に入射させる工程。
そして、イオン200を、処理物100の表面に露出している金属膜101に入射させる工程において、処理物100を載置する載置部20に設けられた電極21に、印加する電力密度をS(W/cm2)とした場合に、「0.04(W/cm2)≦S(W/cm2)≦0.08(W/cm2)」となるようにすることができる。
【0064】
また、ガスGは、希ガスとすることができる。
また、イオン200を、処理物100の表面に露出している金属膜101に入射させる工程において、電極21に電力を印加することで、プラズマPから電極21に向かう電気力線を生じさせることができる。そして、イオン200が、電気力線に沿って加速して、金属膜101に入射することで、金属膜101の表面の粗さが2.5nm以下となるようにすることができる。
【0065】
以上、実施の形態について例示をした。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。
前述の実施の形態に関して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもの、または、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
【0066】
例えば、プラズマ処理装置1が備える各要素の形状、寸法、材質、配置、数などは、例示をしたものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0067】
1 プラズマ処理装置、10 チャンバ、20 載置部、21 電極、30 プラズマ電源、31 電極、32 電源、40 バイアス電源、41 電源、50 減圧部、60 ガス供給部、70 コントローラ、100 処理物、101 金属膜、102 膜
、103 基体、200 イオン、P プラズマ、G ガス