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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048463
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】コイル部品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/04 20060101AFI20240402BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20240402BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20240402BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
H01F17/04 F
H01F17/00 D
H01F17/04 A
H01F41/04 C
H01F41/04 B
H01F27/28 K
H01F27/28 104
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154386
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】吉川 和弘
(72)【発明者】
【氏名】東田 啓吾
(72)【発明者】
【氏名】角田 晃一
【テーマコード(参考)】
5E043
5E062
5E070
【Fターム(参考)】
5E043AA08
5E043BA01
5E043BA03
5E062DD04
5E062FF01
5E070AA01
5E070AB01
5E070AB02
5E070AB03
5E070BA12
5E070BB03
5E070CB02
5E070CB13
5E070CB17
5E070EB04
(57)【要約】
【課題】磁性素体に複数のコイル部が埋め込まれた構造を有するコイル部品のチップサイズを小型化する。
【解決手段】コイル部品100は、磁性支持層103と、磁性支持層103の主面141側に埋め込まれたコイル部C1と、磁性支持層103の主面142側に埋め込まれたコイル部C2と、コイル部C1を覆うよう主面141上に設けられた磁性樹脂層101と、コイル部C1を覆うよう主面142上に設けられた磁性樹脂層102とを備える。磁性支持層103は、コイル部C1に囲まれた内径領域161、コイル部C2に囲まれた内径領域162及びコイル部C1,C2間に位置するコイル間領域165を有する。このように、コイル部C1,C2が磁性支持層103の表裏に埋め込まれていることからチップサイズを小型化することが可能となる。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面及び前記第1主面の反対側に位置する第2主面を有する磁性支持層と、
前記磁性支持層の前記第1主面側に埋め込まれた第1コイル部と、
前記磁性支持層の前記第2主面側に埋め込まれた第2コイル部と、
前記第1コイル部を覆うよう、前記磁性支持層の前記第1主面上に設けられた第1磁性樹脂層と、
前記第2コイル部を覆うよう、前記磁性支持層の前記第2主面上に設けられた第2磁性樹脂層と、を備え、
前記磁性支持層は、前記第1コイル部に囲まれた第1内径領域、前記第2コイル部に囲まれた第2内径領域、及び前記第1コイル部と前記第2コイル部の間に位置するコイル間領域を有する、コイル部品。
【請求項2】
前記磁性支持層は、前記第1コイル部の径方向における外側に位置する第1外側領域、及び前記第2コイル部の径方向における外側に位置する第2外側領域をさらに有する、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記磁性支持層は、前記第1及び第2磁性樹脂層よりも透磁率が高い、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記第1コイル部は、第1層間絶縁膜を介して積層された第1導体層と第2導体層を含み、
前記第2コイル部は、第2層間絶縁膜を介して積層された第3導体層と第4導体層を含み、
前記磁性支持層内において、前記第1導体層、前記第2導体層、前記第3導体層及び前記第4導体層がこの順に積層され、
前記第1導体層と前記第2導体層は、前記第1層間絶縁膜を貫通して設けられた第1ビア導体を介して互いに接続され、
前記第3導体層と前記第4導体層は、前記第2層間絶縁膜を貫通して設けられた第2ビア導体を介して互いに接続され、
前記第1ビア導体は、前記第2導体層から前記第1導体層に向かって径が縮小する形状を有し、
前記第2ビア導体は、前記第3導体層から前記第4導体層に向かって径が縮小する形状を有する、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記第1コイル部の一端及び他端にそれぞれ接続された第1及び第2端子電極と、
前記第2コイル部の一端及び他端にそれぞれ接続された第3及び第4端子電極と、をさらに備え、
前記磁性支持層は、前記第1及び第2主面と直交し、互いに反対側に位置する第1及び第2側面をさらに有し、
前記第1及び第3端子電極は、前記第1側面に設けられ、
前記第2及び第4端子電極は、前記第2側面に設けられ、
前記第1コイル部の一端及び他端は、それぞれ前記第1及び第2側面から露出することよって前記第1及び第2端子電極に接続され、
前記第2コイル部の一端及び他端は、それぞれ前記第1及び第2側面から露出することよって前記第3及び第4端子電極に接続される、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項6】
第1及び第2コイル部を形成する第1工程と、
第1主面及び前記第1主面の反対側に位置する第2主面を有する磁性支持層を用意し、前記第1コイル部を前記第1主面側に埋め込み、前記第2コイル部を前記第2主面側に埋め込む第2工程と、
前記第1コイル部を覆うように前記第1主面上に第1磁性樹脂層を設けるとともに、前記第2コイル部を覆うように前記第2主面上に第2磁性樹脂層を設ける第3工程と、を備えるコイル部品の製造方法。
【請求項7】
前記第1工程は、支持基板の一方及び他方の表面に前記第1及び第2コイル部を形成する工程と、前記第1及び第2コイル部を前記支持基板から剥離する工程とを含み、
前記第2工程は、前記第1コイル部の、前記支持基板の前記一方の表面と接していた表面とは反対側の表面を前記第1主面に押し当てるとともに、前記第2コイル部の、前記支持基板の前記他方の表面と接していた表面とは反対側の表面を前記第2主面に押し当てる工程を含み、
前記第3工程は、前記第1コイル部の、前記支持基板の前記一方の表面と接していた表面を覆うように前記第1磁性樹脂層を設けるとともに、前記第2コイル部の、前記支持基板の前記他方の表面と接していた表面を覆うように前記第2磁性樹脂層を設ける工程を含む、請求項6に記載のコイル部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はコイル部品及びその製造方法に関し、特に、磁性素体に複数のコイル部が埋め込まれた構造を有するコイル部品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数のインダクタを内蔵したコイル部品が開示されている。このようないわゆるアレイ品を用いれば、部品点数を削減することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-032425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたコイル部品は、インダクタを構成する複数のコイル部が一方向に配列されているだけであることから、チップサイズが大きくなるという問題があった。
【0005】
本開示においては、磁性素体に複数のコイル部が埋め込まれた構造を有するコイル部品及びその製造方法において、チップサイズを小型化する技術が説明される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示によるコイル部品は、第1主面及び第1主面の反対側に位置する第2主面を有する磁性支持層と、磁性支持層の第1主面側に埋め込まれた第1コイル部と、磁性支持層の第2主面側に埋め込まれた第2コイル部と、第1コイル部を覆うよう、磁性支持層の第1主面上に設けられた第1磁性樹脂層と、第2コイル部を覆うよう、磁性支持層の第2主面上に設けられた第2磁性樹脂層とを備え、磁性支持層は、第1コイル部に囲まれた第1内径領域、第2コイル部に囲まれた第2内径領域、及び第1コイル部と第2コイル部の間に位置するコイル間領域を有する。
【0007】
本開示によれば、第1コイル部と第2コイル部が磁性支持層の表裏に埋め込まれていることから、チップサイズを小型化することが可能となる。しかも、磁性支持層がコイル間領域にのみ存在する場合と比べ、磁性支持層のボリュームが増大する。
【0008】
本開示において、磁性支持層は、第1コイル部の径方向における外側に位置する第1外側領域、及び第2コイル部の径方向における外側に位置する第2外側領域をさらに有していても構わない。これによれば、磁性支持層のボリュームがより増大する。
【0009】
本開示において、磁性支持層は、第1及び第2磁性樹脂層よりも透磁率が高くても構わない。これによれば、第1コイル部と第2コイル部の磁気結合が抑えられる。これにより、第1コイル部と第2コイル部がそれぞれ独立したインダクタとして機能することから、第1コイル部を流れる信号と第2コイル部を流れる信号との間のクロストークを抑えることが可能となる。
【0010】
本開示において、第1コイル部は、第1層間絶縁膜を介して積層された第1導体層と第2導体層を含み、第2コイル部は、第2層間絶縁膜を介して積層された第3導体層と第4導体層を含み、磁性支持層内において、第1導体層、第2導体層、第3導体層及び第4導体層がこの順に積層され、第1導体層と第2導体層は、第1層間絶縁膜を貫通して設けられた第1ビア導体を介して互いに接続され、第3導体層と第4導体層は、第2層間絶縁膜を貫通して設けられた第2ビア導体を介して互いに接続され、第1ビア導体は、第2導体層から第1導体層に向かって径が縮小する形状を有し、第2ビア導体は、第3導体層から第4導体層に向かって径が縮小する形状を有していても構わない。これによれば、コイル部品に外力が加わった場合であっても、第1及び第2ビア導体を介した応力によるダメージを低減することができる。
【0011】
本開示によるコイル部品は、第1コイル部の一端及び他端にそれぞれ接続された第1及び第2端子電極と、第2コイル部の一端及び他端にそれぞれ接続された第3及び第4端子電極とをさらに備え、磁性支持層は、第1及び第2主面と直交し、互いに反対側に位置する第1及び第2側面をさらに有し、第1及び第3端子電極は第1側面に設けられ、第2及び第4端子電極は第2側面に設けられ、第1コイル部の一端及び他端は、それぞれ第1及び第2側面から露出することよって第1及び第2端子電極に接続され、第2コイル部の一端及び他端は、それぞれ第1及び第2側面から露出することよって第3及び第4端子電極に接続されても構わない。これによれば、例えば第1側面を入力側、第2側面を出力側として用いることが可能となり、アレイ品に適した接続が可能となる。
【0012】
本開示によるコイル部品の製造方法は、第1及び第2コイル部を形成する第1工程と、第1主面及び第1主面の反対側に位置する第2主面を有する磁性支持層を用意し、第1コイル部を第1主面側に埋め込み、第2コイル部を第2主面側に埋め込む第2工程と、第1コイル部を覆うように第1主面上に第1磁性樹脂層を設けるとともに、第2コイル部を覆うように第2主面上に第2磁性樹脂層を設ける第3工程とを備える。
【0013】
本開示によれば、磁性支持層のボリュームを増大することができるとともに、第1及び第2磁性樹脂層の材料として、埋め込み特性に優れた材料を用いる必要がなくなる。
【0014】
本開示において、第1工程は、支持基板の一方及び他方の表面に第1及び第2コイル部を形成する工程と、第1及び第2コイル部を支持基板から剥離する工程とを含み、第2工程は、第1コイル部の、支持基板の一方の表面と接していた表面とは反対側の表面を第1主面に押し当てるとともに、第2コイル部の、支持基板の他方の表面と接していた表面とは反対側の表面を第2主面に押し当てる工程を含み、第3工程は、第1コイル部の、支持基板の一方の表面と接していた表面を覆うように第1磁性樹脂層を設けるとともに、第2コイル部の、支持基板の他方の表面と接していた表面を覆うように第2磁性樹脂層を設ける工程を含んでいても構わない。これによれば、製造効率が高められるとともに、磁性支持層が、第1コイル部と第2コイル部の間に位置するコイル間領域だけでなく、第1コイル部に囲まれた第1内径領域及び第2コイル部に囲まれた第2内径領域を有する構造とすることが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
このように、本開示によれば、磁性素体に複数のコイル部が埋め込まれた構造を有するコイル部品及びその製造方法において、チップサイズを小型化する技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本開示の第1の実施形態によるコイル部品100の外観を示す略透視斜視図である。
図2図2は、コイル部品100をZ方向から見た略透視平面図である。
図3図3はコイル部C1の構成を説明するための平面図であり、(a)は導体層L1に位置するコイルパターン121のパターン形状を示し、(b)は導体層L2に位置するコイルパターン122のパターン形状を示している。
図4図4はコイル部C2の構成を説明するための平面図であり、(a)は導体層L3に位置するコイルパターン123のパターン形状を示し、(b)は導体層L4に位置するコイルパターン124のパターン形状を示している。
図5図5は、図3及び図4に示すA-A線に沿った略断面図である。
図6図6は、図3及び図4に示すB-B線に沿った略断面図である。
図7図7は、図3及び図4に示すC-C線に沿った略断面図である。
図8図8は、コイル部品100の製造方法を説明するための工程図である。
図9図9は、コイル部品100の製造方法を説明するための工程図である。
図10図10は、コイル部品100の製造方法を説明するための工程図である。
図11図11は、コイル部品100の製造方法を説明するための工程図である。
図12図12は、コイル部品100の製造方法を説明するための工程図である。
図13図13は、コイル部品100の製造方法を説明するための工程図である。
図14図14は、本開示の第2の実施形態によるコイル部品200の外観を示す略透視斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら、本開示の実施形態について詳細に説明する。
【0018】
図1は、本開示の第1の実施形態によるコイル部品100の外観を示す略透視斜視図である。また、図2は、コイル部品100をZ方向から見た略透視平面図である。
【0019】
図1に示すように、第1の実施形態によるコイル部品100は、磁性樹脂層101,102及び磁性支持層103からなる磁性素体と、磁性支持層103に埋め込まれたコイル部C1,C2と、磁性素体の表面に設けられた端子電極111~114とを備えている。磁性樹脂層101,102及び磁性支持層103は、フェライトやパーマロイなどの高透磁率材料からなる磁性粒子を樹脂バインダーによって固めた複合磁性材料からなるものであっても構わない。磁性支持層103に埋め込まれたコイル部C1,C2のコイル軸はZ方向である。磁性素体のXY面は実装面であり、XZ面を構成し互いに反対側に位置する側面に端子電極111~114が形成されている。端子電極111~114の一部は実装面に回り込んでおり、これにより端子電極111~114はC型形状を有する。
【0020】
図2に示すように、コイル部C1はコイルパターン121,122を含み、コイル部C2はコイルパターン123,124を含んでいる。コイルパターン121,122,123,124はこの順にZ方向に積層されており、それぞれ端子電極111~114に接続される。
【0021】
図3はコイル部C1の構成を説明するための平面図であり、(a)は導体層L1に位置するコイルパターン121のパターン形状を示し、(b)は導体層L2に位置するコイルパターン122のパターン形状を示している。
【0022】
図3(a)に示すように、コイルパターン121は、一端が磁性支持層103の側面143に露出することによって端子電極111に接続されるとともに、他端がビア導体131に接続される。また、図3(b)に示すように、コイルパターン122は、一端が磁性支持層103の側面144に露出することによって端子電極112に接続されるとともに、他端がビア導体131に接続される。これにより、端子電極111,112間には、2つのコイルパターン121,122からなる約1ターンのコイルが接続されることになる。コイルパターン121,122の端部は、それぞれ端子電極111,112に近づくにつれてパターン幅が広くなる平面形状を有している。これにより、コイルパターン121,122と端子電極111,112の接触面積が増大することから、両者間における接続抵抗が低減される。コイルパターン121,122と磁性支持層103の間には層間絶縁膜151が設けられており、これによりコイルパターン121,122と磁性支持層103の接触が防止されている。導体層L1と導体層L2の間にも層間絶縁膜151が設けられており、ビア導体131は層間絶縁膜151を貫通して設けられている。
【0023】
図4はコイル部C2の構成を説明するための平面図であり、(a)は導体層L3に位置するコイルパターン123のパターン形状を示し、(b)は導体層L4に位置するコイルパターン124のパターン形状を示している。
【0024】
図4(a)に示すように、コイルパターン123は、一端が磁性支持層103の側面143に露出することによって端子電極113に接続されるとともに、他端がビア導体132に接続される。また、図4(b)に示すように、コイルパターン124は、一端が磁性支持層103の側面144に露出することによって端子電極114に接続されるとともに、他端がビア導体132に接続される。これにより、端子電極113,114間には、2つのコイルパターン123,124からなる約1ターンのコイルが接続されることになる。コイルパターン123,124の端部は、それぞれ端子電極113,114に近づくにつれてパターン幅が広くなる平面形状を有している。これにより、コイルパターン123,124と端子電極113,114の接触面積が増大することから、両者間における接続抵抗が低減される。コイルパターン123,124と磁性支持層103の間には層間絶縁膜152が設けられており、これによりコイルパターン123,124と磁性支持層103の接触が防止されている。導体層L3と導体層L4の間にも層間絶縁膜152が設けられており、ビア導体132は層間絶縁膜152を貫通して設けられている。
【0025】
図5は、図3及び図4に示すA-A線に沿った略断面図である。図6は、図3及び図4に示すB-B線に沿った略断面図である。図7は、図3及び図4に示すC-C線に沿った略断面図である。
【0026】
図5図7に示すように、磁性支持層103は、XY面を構成し互いに反対側に位置する主面141,142と、XZ面を構成し互いに反対側に位置する側面143,144を有している。そして、コイルパターン121,122からなるコイル部C1は、磁性支持層103の主面141側に埋め込まれ、コイルパターン123,124からなるコイル部C2は、磁性支持層103の主面142側に埋め込まれている。磁性樹脂層101は、コイル部C1を覆うよう、磁性支持層103の主面141上に設けられている。磁性樹脂層102は、コイル部C2を覆うよう、磁性支持層103の主面142上に設けられている。
【0027】
このため、磁性樹脂層101,102についてはZ方向における厚みがほぼ一定な板状体であるのに対し、磁性支持層103は、コイル軸方向から見てコイル部C1に囲まれた内径領域161、コイル軸方向から見てコイル部C2に囲まれた内径領域162、コイル軸方向から見てコイル部C1の径方向における外側に位置する外側領域163、コイル軸方向から見てコイル部C2の径方向における外側に位置する外側領域164、並びに、コイル部C1とコイル部C2の間に位置するコイル間領域165を有している。
【0028】
このように、磁性支持層103は、コイル部C1とコイル部C2の間に位置するコイル間領域165だけでなく、コイル部C1,C2の内径領域161,162や外側領域163,164にも充填されていることから、磁性支持層103がコイル間領域165にのみ存在する場合と比べ、磁性支持層103のボリュームが増大する。これに対し、磁性樹脂層101,102については厚みがほぼ一定であることから、埋め込み特性に優れた材料を用いる必要がない。
【0029】
磁性支持層103を構成する磁性材料としては、磁性樹脂層101,102を構成する磁性材料よりも透磁率の高い材料が用いても構わない。これによれば、コイル部C1,C2に流れる電流によって生じる磁界は、磁性支持層103を介して効率よく周回するため、両者間における磁気結合が非常に小さくなる。その結果、コイル部C1とコイル部C2がそれぞれ独立したインダクタとして機能することから、コイル部C1を流れる信号とコイル部C2を流れる信号との間のクロストークを抑えることが可能となる。
【0030】
また、図5に示すように、ビア導体131は、導体層L2から導体層L1に向かって径が縮小する形状を有している。同様に、図6に示すように、ビア導体132は、導体層L3から導体層L4に向かって径が縮小する形状を有している。これにより、コイル部品100にZ方向の外力が加わった場合であっても、ビア導体131,132を介した応力によるダメージを低減することができる。これは、応力が伝わる方向に沿ってビア導体131,132の径が拡大することから、応力が分散されるからである。もし、ビア導体131の形状が導体層L1から導体層L2に向かって径が縮小する形状であれば、ビア導体131の底部に応力が集中し、導体層L2とビア導体131の接続部分に強いダメージが加わるおそれがある。これに対し、ビア導体131,132が図5及び図6に示す形状であれば、ビア導体131,132を介した導体層L2,L3へのダメージを低減することが可能となる。
【0031】
次に、本実施形態によるコイル部品100の製造方法について説明する。
【0032】
図8図13は、本実施形態によるコイル部品100の製造方法を説明するための工程図である。
【0033】
まず、図8に示すように、両面にCuなどからなる金属箔171,172が設けられた支持基板170を用意し、その一方の表面に絶縁膜173を介してコイル部C1を形成し、その他方の表面に絶縁膜174を介してコイル部C2を形成する。コイル部C1,C2は、同時に形成することができる。コイル部C1の形成においては、支持基板170から見て導体層L1が下層、導体層L2が上層に位置する。このため、導体層L1,L2を接続するビア導体131は導体層L2と同時に形成され、導体層L2から導体層L1に向かって径が縮小する形状となる。一方、コイル部C2の形成においては、支持基板170から見て導体層L4が下層、導体層L3が上層に位置する。このため、図8に示す断面には現れていないが、導体層L3,L4を接続するビア導体132は導体層L3と同時に形成され、導体層L3から導体層L4に向かって径が縮小する形状となる。
【0034】
次に、図9に示すように、コイル部C1,C2を支持基板170から剥離する。この時、金属箔171及び絶縁膜173はコイル部C1側に残存し、金属箔172及び絶縁膜174はコイル部C2側に残存する。次に、図10に示すように、コイル部C1,C2をそれぞれ上下反転し、未硬化状態の磁性支持層103に埋め込む。ここで、コイル部C1については磁性支持層103の主面141側に埋め込み、コイル部C2については磁性支持層103の主面142側に埋め込む。コイル部C1,C2は、いずれも上下反転した状態で磁性支持層103に埋め込まれることから、コイル部C1については、支持基板170の一方の表面と接していた表面とは反対側の表面を磁性支持層103の主面141に押し当てることによって埋め込まれ、コイル部C2については、支持基板170の他方の表面と接していた表面とは反対側の表面を磁性支持層103の主面142に押し当てることによって埋め込まれることになる。これにより、図11に示すように、コイル部C1,C2が磁性支持層103に埋め込まれる。その結果、図7を用いて説明したように、磁性支持層103には、内径領域161,162、外側領域163,164及びコイル間領域165が形成される。
【0035】
次に、図12に示すように、金属箔171,172をエッチング等によって除去するとともに、絶縁膜173,174をデスミア処理等によって除去する。この時、導体層L1,L4の露出部分については、絶縁膜173,174を残存させても構わない。そして、図13に示すように、コイル部C1を覆うように磁性支持層103の主面141上に磁性樹脂層101を設けるとともに、コイル部C2を覆うように磁性支持層103の主面142上に磁性樹脂層102を設ける。上述の通り、コイル部C1,C2は、いずれも上下反転した状態で磁性支持層103に埋め込まれていることから、コイル部C1については、支持基板170の一方の表面と接していた表面を覆うように磁性樹脂層101が設けられ、コイル部C2については、支持基板170の他方の表面と接していた表面を覆うように磁性樹脂層102が設けられる。
【0036】
その後、磁性樹脂層101,102及び磁性支持層103の硬化処理を行えば、本実施形態によるコイル部品100が完成する。このように、本実施形態においては、支持基板170の両面を用いてコイル部C1,C2を同時に形成した後、コイル部C1,C2を上下反転させた状態で磁性支持層103に埋め込んでいることから、磁性支持層103のボリュームが増大するとともに、磁性樹脂層101,102については半硬化状態であるシート状の磁性材料を用いることが可能となる。
【0037】
図14は、本開示の第2の実施形態によるコイル部品200の外観を示す略透視斜視図である。
【0038】
図14に示すように、第2の実施形態によるコイル部品200は、第1の実施形態によるコイル部品100がX方向に3個配列された構造を有している。本実施形態によるコイル部品200によれば、6個のコイルのアレイ品を提供することが可能となる。
【0039】
以上、本開示に係る技術の実施形態について説明したが、本開示に係る技術は、上記の実施形態に限定されることなく、その主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本開示に係る技術の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0040】
100,200 コイル部品
101,102 磁性樹脂層
103 磁性支持層
111~114 端子電極
121~124 コイルパターン
131,132 ビア導体
141,142 主面
143,144 側面
151,152 層間絶縁膜
161,162 内径領域
163,164 外側領域
165 コイル間領域
170 支持基板
171,172 金属箔
173,174 絶縁膜
C1,C2 コイル部
L1~L4 導体層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14