(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048481
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】ロータ製造方法及びロータ製造装置
(51)【国際特許分類】
H02K 15/03 20060101AFI20240402BHJP
H02K 1/276 20220101ALI20240402BHJP
【FI】
H02K15/03 Z
H02K1/276
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154413
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142022
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196623
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 計介
(72)【発明者】
【氏名】清水 哲弘
【テーマコード(参考)】
5H622
【Fターム(参考)】
5H622CA02
5H622CA07
5H622CA10
5H622CA12
5H622PP03
5H622PP19
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ロータ製造時のタクトタイムを短縮しつつ磁石を磁石挿入孔内において精度よく位置決め可能なロータ製造方法及びロータ製造装置を提供する。
【解決手段】ロータ製造方法は、厚み方向に積層された複数の円盤状のコア板72を含むロータコア70を積層方向に貫通する磁石挿入孔73内に、磁石80が固定されたロータを製造する。ロータ製造方法は、磁石挿入孔73内に、磁石80及び磁石80を磁石挿入孔73内に固定する固定部材90が挿入されたロータコア70を、ワーク100として搬送する搬送工程と、搬送工程中に、ワーク100を積層方向に加圧する加圧工程と、加圧工程中に、固定部材90が磁石80を磁石挿入孔73内に固定する状態に固定部材90を変化させる磁石固定工程と、を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み方向に積層された複数の円盤状のコア板を含むロータコアを積層方向に貫通する磁石挿入孔内に、磁石が固定されたロータを製造するロータ製造方法であって、
前記磁石挿入孔内に、前記磁石及び前記磁石を前記磁石挿入孔内に固定する固定部材が挿入されたロータコアを、ワークとして搬送する搬送工程と、
前記搬送工程中に、前記ワークを前記積層方向に加圧する加圧工程と、
前記加圧工程中に、前記固定部材が前記磁石を前記磁石挿入孔内に固定する状態に前記固定部材を変化させる磁石固定工程と、
を有する、
ロータ製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のロータ製造方法において、
前記固定部材は、加熱によって発泡する発泡剤を含み、
前記磁石固定工程では、前記加圧工程中に前記ワークを加熱することにより前記発泡剤を発泡させて前記磁石を前記ロータコアに対して固定する、
ロータ製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のロータ製造方法において、
前記搬送工程では、平板状の搬送用治具に前記ワークを載せて搬送する、
ロータ製造方法。
【請求項4】
厚み方向に積層された複数の円盤状のコア板を含むロータコアを積層方向に貫通する磁石挿入孔内に、磁石が固定されたロータを製造するロータ製造装置であって、
前記磁石挿入孔内に前記磁石と加熱によって発泡する発泡剤を含む固定部材とが挿入されたロータコアをワークとして搬送する搬送路において、前記ワークを加圧位置で前記積層方向に加圧する加圧機構と、
前記搬送路及び前記ワークの少なくとも一方を加熱する加熱機構と、
を有する、
ロータ製造装置。
【請求項5】
請求項4に記載のロータ製造装置において、
前記加圧機構は、
前記ワークを搬送する搬送方向及び前記搬送路の上下方向に対して直交する方向に延びる回転軸を有するとともに前記搬送方向に並ぶ複数の回転体を含むローラ部を有し、
前記ローラ部は、
前記搬送路の上方向に位置する上部ローラ部と、
前記搬送路の下方向に位置する下部ローラ部と、
を有し、
前記加圧機構は、前記加圧位置において、前記上部ローラ部と前記下部ローラ部とによって前記ワークに対して加圧を行う、
ロータ製造装置。
【請求項6】
請求項5に記載のロータ製造装置において、
前記加圧位置における前記上部ローラ部と前記下部ローラ部との間隔が、前記搬送路において前記加圧位置よりも搬送方向上流の位置における前記上部ローラ部と前記下部ローラ部との間隔よりも狭い、
ロータ製造装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載のロータ製造装置において、
前記加熱機構は、
前記搬送路に対して加熱した気体を供給する、
ロータ製造装置。
【請求項8】
請求項7に記載のロータ製造装置において、
前記上部ローラ部及び下部ローラ部の少なくとも一方は、金属製の部材によって構成されている、
ロータ製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータ製造方法及びロータ製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロータコアの軸線方向に貫通する磁石挿入孔内に磁石を挿入し、前記磁石挿入孔内で前記磁石を固定することにより、ロータを製造するロータ製造方法及びロータ製造装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、接着剤を永久磁石の外周面またはロータコアの内周面の接着剤配置位置に塗布する工程と、前記接着剤を乾燥させる工程と、前記接着剤に含まれる膨張剤を膨張させると共に前記接着剤を硬化させることにより、前記永久磁石と前記ロータコアとを固定する工程とを備える、ロータの製造方法が開示されている。
【0004】
すなわち、特許文献1に記載のロータの製造方法では、複数の電磁鋼板が軸方向に積層されたロータコアに対し、乾燥した前記接着剤が配置された前記永久磁石が、前記ロータコアの磁石用孔部内に挿入される。そして、前記磁石用孔部内に前記永久磁石が挿入された前記ロータコアが、加圧装置により前記軸方向両側から押圧された状態で、前記接着剤の膨張温度及び硬化温度以上の温度に加熱される。
【0005】
これにより、前記接着剤に含まれる膨張剤が発泡して膨張するため、前記永久磁石が前記磁石用孔部内で径方向外側に押圧されて、前記磁石用孔部の内面と前記永久磁石とが接触する。さらに、前記永久磁石は、前記磁石用孔部に対して、硬化された前記接着剤によって固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、ロータコアは、例えば、複数のコア板を積層することにより製造される。また、コア板は、例えば、ロール状の鋼板を展開し、展開した前記鋼板を所定の形状に打ち抜いて得られる。前記ロール状の鋼板は、ロール時又は展開時に歪みを含み得る。また、展開した前記鋼板を所定の形状に打ち抜く際に印加される応力によってコア板に歪みが生じ得る。このため、複数のコア板を積層して製造されたロータコアは、前記コア板が積層される積層方向に反りを有する場合がある。
【0008】
前記反りは、前記ロータコアの底面と、前記磁石挿入孔内に前記磁石を前記ロータコアに挿入する際に、前記ロータコアを載置する載置面との間に、上下方向の隙間を発生させる。また、前記磁石挿入孔内に前記磁石を挿入して固定する工程では、前記磁石が前記載置面に接触した状態で固定される可能性がある。したがって、前記ロータコアが前記反りを有する場合、前記隙間の大きさに応じて、前記磁石の一部が前記ロータコアから突出した状態で固定される可能性がある。
【0009】
しかしながら、前記特許文献1では、ロータコアに生じる前記反りについては何ら言及されていない。前記特許文献1のロータの製造方法では、加圧装置によって軸方向両側からロータコアを押圧した状態で、発泡を行っている。しかしながら、前記特許文献1のロータの製造方法は、単に、接着剤を接着剤配置位置に固定する際に、接着剤配置位置以外に接着剤を付着させないことを目的としている。このため、前記特許文献1には、ロータコアに生じた前記反りにより生じる隙間に対して対処するという意識がない。
【0010】
また、前記特許文献1の製造方法では、前記加圧装置が、前記ロータコアに対して1つずつ押圧及び熱風加熱の一連の工程を行う。前記特許文献1の製造方法では、複数のロータコアに対して、押圧及び熱風加熱の一連の工程を行う場合、前記特許文献1の製造方法では、押圧及び熱風加熱の一連の工程の前後で、前記ロータコアを個別に前記加圧装置に搬送しなければならない。別の観点からいえば、押圧及び熱風加熱の一連の工程の間、前記ロータコアは、搬送方向に移動しない。加えて、個別のロータコアごとに前記加圧装置に搬送して加圧を行うため、個別のロータコアを加圧するたびに加圧装置の型締めおよび型開きの工程が必要になる。このため、前記特許文献1の製造方法には、1つのロータコアを製造するためのタクトタイムに改善の余地がある。
【0011】
本発明の目的は、ロータ製造時のタクトタイムを短縮しつつ磁石を磁石挿入孔内において精度よく位置決め可能なロータ製造方法及びロータ製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の例示的な一実施形態に係るロータ製造方法は、厚み方向に積層された複数の円盤状のコア板を含むロータコアを積層方向に貫通する磁石挿入孔内に、磁石が固定されたロータを製造する方法である。前記磁石挿入孔内に、前記磁石及び前記磁石を前記磁石挿入孔内に固定する固定部材が挿入されたロータコアを、ワークとして搬送する搬送工程と、前記搬送工程中に、前記ワークを前記積層方向に加圧する加圧工程と、前記加圧工程中に、前記固定部材が前記磁石を前記磁石挿入孔内に固定する状態に前記固定部材を変化させる磁石固定工程と、を有する。
【0013】
本発明の例示的な一実施形態に係るロータ製造装置は、厚み方向に積層された複数の円盤状のコア板を含むロータコアを積層方向に貫通する磁石挿入孔内に、磁石が固定されたロータを製造する装置である。前記磁石挿入孔内に前記磁石と加熱によって発泡する発泡剤を含む固定部材とが挿入されたロータコアをワークとして搬送する搬送路において、前記ワークを加圧位置で前記積層方向に加圧する加圧機構と、前記搬送路及び前記ワークの少なくとも一方を加熱する加熱機構と、を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の例示的な一実施形態によれば、ロータ製造時のタクトタイムを短縮しつつ磁石を磁石挿入孔内において精度よく位置決め可能なロータ製造方法及びロータ製造装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1A】
図1は、本発明の例示的な一実施形態に係るロータの概略構成を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、ロータの製造過程におけるワークの概略構成を模式的に斜視図で示すとともに、前記ワークの一部を断面で示す図である。
【
図3】
図3は、ロータの製造過程におけるワークの概略構成の一例を模式的に示す断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の例示的な一実施形態に係るロータ製造装置の概略構成を模式的に示す断面図である。
【
図5】
図5は、
図4に示すロータ製造装置の投入位置と加圧位置の一部とを拡大して模式的に示す断面図である。
【
図6A】
図6Aは、
図4に示すロータ製造方法のうち加圧工程から磁石固定工程に至るまでの区間における、固定部材の状態を模式的に示す断面図である。
【
図6B】
図6Bは、
図4に示すロータ製造方法のうち磁石固定工程における、固定部材の状態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照し、本発明の例示的な実施の形態を詳しく説明する。図中の同一または相当部分については同一の符号を付してその説明は繰り返さない。また、各図中の構成部材の寸法は、実際の構成部材の寸法及び各構成部材の寸法比率等を忠実に表したものではない。
【0017】
なお、以下では、ロータ300及びロータコア70の説明において、ロータ300及びロータコア70の軸線Pと平行な方向を軸線方向、軸線Pに直交する方向を径方向、軸線Pを中心とする円弧に沿う方向を周方向、とそれぞれ称する。ただし、この方向の定義により、ロータ300及びロータコア70の使用時の向きを限定する意図はない。
【0018】
また、以下の説明において、「同じ」とは、厳密に同じ場合だけでなく、実質的に同じとみなせる範囲を含む。また、「一致する」とは、厳密に一致する場合だけでなく、実質的に一致しているとみなせる状態を含む。
【0019】
以下の説明において、ロータ製造装置1の上下方向を、単に、上下方向という。また、ロータ製造装置1において、後述する搬送路25によってワーク100が搬送される方向を搬送方向という。
【0020】
また、以下の説明において、“固定”、“接続”及び“取り付ける”等(以下、固定等)の表現は、部材同士が直接、固定等されている場合だけでなく、他の部材を介して固定等されている場合も含む。すなわち、以下の説明において、固定等の表現には、部材同士の直接的及び間接的な固定等の意味が含まれる。
【0021】
(ロータ)
図1Aは、本発明の例示的な一実施形態に係るロータ300の概略構成を模式的に示す斜視図である。
図1Bは、
図1AのIB-IB線断面図である。
【0022】
ロータ300は、軸線Pに沿って延びる円柱状の部材である。ロータ300は、図示しないモータにおいて、図示しない円筒状のステータに対して径方向内方に位置し、軸線Pを中心として回転する。
【0023】
ロータ300は、ロータコア70と、磁石80と、磁石固定部95とを有する。
【0024】
(ロータコア)
ロータコア70は、円柱状の部材である。ロータコア70は、例えば、厚み方向に積層された複数の円盤状のコア板72を含む。以下、前記厚み方向と同じ方向を積層方向とも言う。複数のコア板72は、電磁鋼板からなる。ロータコア70は、シャフト挿入孔74及び磁石挿入孔73を有する。
【0025】
シャフト挿入孔74は、ロータコア70を前記積層方向に見て、ロータコア70の径方向の中心に位置する。シャフト挿入孔74は、ロータコア70を前記積層方向に貫通している。シャフト挿入孔74には、図示しないロータシャフトが貫通する。前記ロータシャフトは、シャフト挿入孔74を貫通した状態で、前記積層方向の所定位置でシャフト挿入孔74に固定される。
【0026】
磁石挿入孔73は、ロータコア70を前記積層方向に見て、シャフト挿入孔74とロータコア70の最外周部との間に位置する。磁石挿入孔73は、ロータコア70を前記積層方向に貫通している。磁石挿入孔73内には、磁石80が収納されている。
【0027】
(磁石)
磁石80は、磁石挿入孔73内に収納されている。磁石80は、磁石固定部95によって、磁石挿入孔73の内部で固定されている。
【0028】
(磁石固定部)
磁石固定部95は、磁石80を、磁石挿入孔73内に固定する。
図1Bに示すように、磁石固定部95は、発泡層95aと、接着層95bと、を有する。発泡層95aは、発泡剤が含まれた発泡シートを加熱して発泡させることにより形成される。加熱後の発泡層95aは、発泡した状態で磁石挿入孔73の内面73aに接触している。接着層95bは、接着剤を含んでいる。接着層95bは、前記接着剤によって磁石80の側面80aに接着されている。
【0029】
すなわち、磁石固定部95は、磁石80が磁石挿入孔73内に挿入された状態で、接着層95bによって、磁石80に取り付けられている。磁石固定部95は、発泡した状態の発泡層95aによって、磁石挿入孔73の内面73aと磁石80の間に位置している。磁石80は、発泡層95aの発泡によって、磁石挿入孔73の内面73bに対して押し付けられている。これにより、磁石80は、磁石固定部95によって、磁石挿入孔73の内面に対して固定される。
【0030】
(ワーク)
図2は、ロータ300の製造過程におけるワーク100の全体及び一部断面の概略構成を模式的に示す斜視図である。
図3は、ロータ300の製造過程におけるワーク100の概略構成を模式的に示す断面図である。
【0031】
ワーク100は、ロータ300が製造される過程において、ロータコア70と磁石80とを含む。ワーク100は、具体的には、磁石挿入孔73内に磁石80と加熱によって発泡する発泡剤91を含む固定部材90とが挿入されたロータコア70を含む。
【0032】
ロータコア70は、例えば、次のような製造方法により製造される。まず、ロール状に巻かれた状態のロール鋼板を展開し、展開状態の鋼板を打ち抜いて複数の円盤状のコア板72を得る。その後、複数の円盤状のコア板72が積層された積層体を積層方向に打ち抜いて、シャフト挿入孔74及び磁石挿入孔73を形成する。シャフト挿入孔74及び磁石挿入孔73が形成された前記積層体を積層方向に加圧した状態で、前記積層体の外周側を溶接することにより、ロータコア70を得る。なお、ロータコア70は、その他の公知の方法によって製造してもよい。
【0033】
上述のようにコア板72を加工して得られるロータコア70は、ロータコア70の一部または全体において、
図2及び
図3に示すように、前記積層方向に反る反り部Rを有する。すなわち、ロータコア70は反り部Rによって前記積層方向に対して垂直な方向にまっすぐに伸びない。反り部Rの発生原因としては、例えば、以下が想定される。反り部Rは、例えば、ロール鋼板がロール状であるため、展開状態の鋼板が湾曲していることに起因する。また、反り部Rは、例えば、切り出し、打ち抜き、積層又は加圧溶接等の各種の加工の際、コア板72に生じる変形又はコア板72に印加される応力によって形成され得る。
【0034】
磁石挿入孔73には、磁石80と発泡剤91を含む固定部材90とが挿入される。磁石80は、例えば、積層方向に延びる柱状である。磁石80は、磁石挿入孔73に挿入可能な形状であれば、どのような形状であってもよい。
【0035】
固定部材90は、
図3に示すようにシート状である。固定部材90は、固定部材90の厚み方向の一方に、接着部92を有する。接着部92は、接着面を有する。前記接着面を、磁石80の側面80aに接着させることによって、固定部材90を、磁石80に固定できる。
【0036】
ワーク100は、平板状の搬送用治具110に載置された状態で、後述するロータ製造装置1に投入される。搬送用治具110は、例えば、円形の金属板または樹脂製のパレット等である。ワーク100を構成するロータコア70は、上述の通り、反り部Rを有する。よって、ワーク100を搬送用治具110の載置面110a上に載置した状態で、載置面110aとロータコア70の下面70aとの間には、上下方向の隙間Gが生じる。
【0037】
このため、ワーク100を構成する磁石80は、重力の影響を受けて、載置面110a上に載置されたワーク100の磁石挿入孔73の下部から下方に突出して載置面110aに接触する。すなわち、上述のようにロータコア70が反り部Rを有する場合、磁石80は、隙間Gによって磁石挿入孔73内から一部が突出する位置に位置決めされる。
【0038】
以下において、ワーク100及び搬送用治具110をまとめて搬送物と称することがある。ワーク100は、以下で説明するロータ製造装置1によって、磁石80が磁石挿入孔73内に固定されることにより、ロータ300となる。
【0039】
(ロータ製造装置)
図4は、本発明の例示的な一実施形態に係るロータ製造装置1の概略構成を模式的に示す断面図である。
図5は、
図4に示すロータ製造装置の投入位置15と加圧位置35の一部とを拡大して模式的に示す断面図である。
【0040】
ロータ製造装置1は、厚み方向に積層された複数の円盤状のコア板72を含むロータコア70を積層方向に貫通する磁石挿入孔73内に磁石80が固定されたロータ300を製造する製造装置である。
【0041】
ロータ製造装置1は、
図4及び
図5に示すように、加圧機構30と、加熱機構40とを有する。
【0042】
(加圧機構)
加圧機構30は、後述の投入位置15において搬送路25に投入されたワーク100を後述の加圧位置35で前記積層方向に加圧する。
【0043】
加圧機構30は、ワーク100を搬送する搬送方向及び搬送路25の上下方向に対して直交する方向に延びる回転軸を有するとともに前記搬送方向に並ぶ複数の回転体を含むローラ部20を有する。
【0044】
ローラ部20は、下部ローラ部21と、上部ローラ部22と、を有する。下部ローラ部21は、搬送路25の下方向に位置する。上部ローラ部22は、搬送路25の上方向に位置する。
【0045】
加圧機構30は、加圧位置35において、上部ローラ部22と下部ローラ部21とによってワーク100に対して加圧を行う。
【0046】
また、下部ローラ部21に含まれる回転体は、
図4に矢印R11にて示すように、回転軸P11を中心として下部ローラ部21の回転体の上に位置するワーク100及び搬送用治具110を前記搬送方向に搬送する方向に回転駆動する。
【0047】
上部ローラ部22は、後述の加圧位置35において、下部ローラ部21によって搬送されるワーク100に接触する。また、上部ローラ部22の回転体は、
図4の矢印R12にて示すように、回転軸P12を中心としてワーク100及び搬送用治具110を前記搬送方向に搬送する方向に回転する。
【0048】
上部ローラ部22及び下部ローラ部21の少なくとも一方は、金属製の部材によって構成されている。
【0049】
上述の構成では、後述の加熱機構40によって上部ローラ部22及び下部ローラ部21の少なくとも一方に効率よく熱を伝達できる。これにより、加圧機構30によって加圧されているワーク100を効率良く加熱できる。よって、ワーク100の固定部材90に含まれる発泡剤91をより迅速に発泡させることができる。したがって、ロータ製造時のタクトタイムをより短縮し、ロータの製造効率を向上できる。
【0050】
下部ローラ部21と、上部ローラ部22とは、搬送路25を構成する。下部ローラ部21の回転体と、上部ローラ部22の回転体とは、搬送物を搬送する搬送機構として機能する。搬送路25における投入位置15及び加圧位置35について詳しく説明する。
【0051】
投入位置15は、搬送用治具110に載置されたワーク100がロータ製造装置1内に投入される位置である。
図5に示すように、投入位置15は、搬送方向において加圧位置35よりも上流に位置する。投入位置15では、下部ローラ部21及び上部ローラ部22の上下方向の間隔は、反り部Rを有するワーク100の厚みt1と搬送用治具の厚みt2との合計である総厚みToよりも大きい。投入位置15では、ワーク100の厚みt1は、反り部Rによって生じる隙間Gを含むために、複数のコア板72の厚みを合計して得られる本来のロータコア70の厚みよりも大きい。
【0052】
加圧位置35は、投入位置15よりも搬送方向下流に位置する。
図5に示すように、加圧位置35では、下部ローラ部21及び上部ローラ部22の上下方向の間隔Tsは、反り部Rを有するワーク100の厚みt1と搬送用治具の厚みt2との合計である総厚みToよりも小さい。
【0053】
これにより、加圧位置35では、
図4に示すように、下部ローラ部21によってワーク100を搬送しながら、下部ローラ部21と上部ローラ部22との間にワーク100を通過させることによって、ワーク100を搬送しながら前記積層方向にワーク100を加圧することができる。
【0054】
上述の通り、加圧位置35では、加圧位置35における上部ローラ部22と下部ローラ部21との間隔Tsは、搬送路25において加圧位置35の搬送方向上流の位置、例えば投入位置15における上部ローラ部22と下部ローラ部21との間隔よりも狭い。
【0055】
言い換えれば、加圧位置35よりも搬送方向上流の位置における上部ローラ部22と下部ローラ部21との間隔は、加圧位置35における上部ローラ部22と下部ローラ部21との間隔Tsよりも広い。より具体的には、上部ローラ部22と下部ローラ部21との間隔は、搬送方向において、上流の投入位置15から下流の加圧位置35にかけて徐々に狭くなる。
【0056】
これにより、ワーク100の厚みにばらつきがある場合でも、ワーク100の搬送中に加圧位置35でワーク100が上部ローラ部22及び下部ローラ部21に引っ掛かるのを防止する。よって、ワーク100及び搬送用治具110の厚みのうち少なくとも一方の厚みのばらつきに影響されることなく、ワーク100を加圧位置35にスムーズに取り込むことができる。さらには、投入位置15から搬送物を搬送路25上に投入しやすい。また、上部ローラ部22と下部ローラ部21との間隔は、搬送方向において、上流から下流にかけて徐々に狭くなるため、よりスムーズにワーク100を搬送方向に搬送することができる。なお、上部ローラ部22と下部ローラ部21との間隔は、段階的に変化してもよい。
【0057】
また、加熱機構40は、回転体を含む上部ローラ部22及び下部ローラ部21を有する。このため、回転体の間から、加熱機構40が供給する加熱気体が搬送路25内を循環しやすい。なお、上部ローラ部22の回転体同士のピッチ及び下部ローラ部21の回転体同士のピッチは、搬送物が搬送できる間隔であれば特に制限はない。
【0058】
(加熱機構)
加熱機構40は、搬送路25及びワーク100の少なくとも一方を加熱する。加熱機構40は、搬送路25によって搬送され、且つ加圧機構30によって前記積層方向に加圧された状態のワーク100を加熱する機構である。
【0059】
加熱機構40は、搬送路25に対して加熱した気体を供給する。加熱機構40は、例えば、電熱線、バーナー、スチーム、または、オイルヒータ等によって加熱した気体を、搬送路25に対して供給することによって、搬送路25の加熱位置45を通過するワーク100を加熱する機構である。
【0060】
上述の構成では、加熱された空気が、搬送路25によって搬送されるワーク100を加熱する。これにより、ワーク100の固定部材90に含まれる発泡剤91をより迅速に発泡させることができる。よって、ロータ製造時のタクトタイムをより短縮し、製造効率を向上できる。
【0061】
上述の構成では、複数の円盤状のコア板72が厚み方向に積層されたロータコア70における磁石挿入孔73内に磁石80と加熱によって発泡する発泡剤91を含む固定部材90とが挿入されたロータコア70を、搬送路25によってワーク100として搬送しながら、加圧機構30によってワーク100を前記積層方向に加圧し、加熱機構40によってワーク100を加熱する。
【0062】
これにより、ワーク100を搬送しながら、ロータコア70の反りを加圧によって抑制できるとともに、加熱によって発泡剤91を発泡させて磁石80を磁石挿入孔73内でより迅速かつ確実に固定できる。すなわち、磁石80の一部が磁石挿入孔73内から突出することを防ぐことができる。
【0063】
また、加圧位置35において、加圧機構30の上部ローラ部22と下部ローラ部21とがワーク100を加圧する。よって、ワーク100を搬送路25によって搬送しながらワーク100を加圧することにより、ロータ300を連続して製造することができる。そのため、単位時間あたりにより多くのロータ300を製造することができる。
【0064】
よって、ロータ製造時のタクトタイムを短縮しつつ磁石80を磁石挿入孔73内において精度よく位置決め可能なロータ製造装置1を提供することができる。
【0065】
(ロータ製造方法)
次に、
図4及び
図5に加えて、
図6A及び
図6Bを参照して、ロータ300の製造方法について説明する。
図6Aは、
図4に示すロータ製造方法のうち加圧工程から磁石固定工程までの固定部材の状態を模式的に示す断面図である。
図6Bは、
図4に示すロータ製造方法のうち磁石固定工程における、固定部材の状態を模式的に示す断面図である。なお、
図6A及び
図6Bでは、説明の簡潔化のため、接着層の図示は省略している。
【0066】
ロータ製造方法Sは、特に
図4に示すように、搬送工程S1と、加圧工程S2と、磁石固定工程S3とを有する。
【0067】
搬送工程S1において、磁石挿入孔73内に、磁石80及び磁石80を磁石挿入孔内73に固定する固定部材90が挿入されたロータコア70が、ワーク100として投入位置15から搬送路25に投入される。搬送工程S1では、平板状の搬送用治具110にワーク100を載せて搬送路25に沿って搬送方向下流に向かって搬送する。
【0068】
上述したように、投入位置15では、特に
図5に示すように、ワーク100における磁石80の一部は、磁石挿入孔73に対して突出している。
【0069】
次に、搬送工程S1中に、加圧工程S2が開始される。加圧工程S2では、ロータ製造装置1の加圧機構30によって、ワーク100を前記積層方向に加圧する。
【0070】
上述のように、平らな載置面を有する平板状の搬送用治具110に載せてワーク100を搬送するため、加圧工程S2では、ワーク100を載置面に対してより均一に押し付けることができる。よって、ロータコア70の反りをより効果的に抑制できる。
【0071】
次に、加圧工程S2中に、磁石固定工程S3が開始される。磁石固定工程S3では、固定部材90を、磁石挿入孔73内で磁石80を固定する状態に変化させる。
【0072】
より具体的には、磁石固定工程S3では、搬送工程S1及び加圧工程S2中に、ワーク100を含む搬送路25を加熱する。上述の通り、固定部材90は、加熱によって発泡する発泡剤91を含む。このため、磁石固定工程S3では、前記加熱により発泡剤91を発泡させて磁石80をロータコア70に対して固定する。
図6Aに示すように、発泡剤91が発泡していない状態では、固定部材90と磁石挿入孔73の内面73aとは径方向に離れている。前記加熱によって、発泡剤91を発泡させることにより、
図6Bに示すように、磁石80と磁石挿入孔73の内面73aとの間で磁石固定部95として機能する。すなわち、発泡剤91の発泡により、固定部材90は、磁石80を磁石挿入孔73内に固定する状態に変化する。これにより、磁石挿入孔73内で磁石80が径方向外方に押される。このため、磁石80は、磁石挿入孔73の内面に対して固定される。
【0073】
上述のように、ロータ製造方法Sは、厚み方向に積層された複数の円盤状のコア板72を含むロータコア70を積層方向に貫通する磁石挿入孔73内に、磁石80が固定されたロータ300を製造する製造方法である。ロータ製造方法Sは、磁石挿入孔73内に、磁石80及び磁石80を磁石挿入孔73内に固定する固定部材90が挿入されたロータコア70を、ワーク100として搬送する搬送工程S1と、ワーク100を前記積層方向に加圧する加圧工程S2と、固定部材90が磁石80を磁石挿入孔73内に固定する状態に固定部材90を変化させる磁石固定工程S3と、を有する。
【0074】
上述の構成では、搬送工程S1、加圧工程S2及び磁石固定工程S3を一連の工程として行うことができる。
【0075】
これにより、ワーク100を搬送しながら、前記積層方向への加圧によってロータコア70の反りを抑制し、隙間Gを小さくすることができる。このため、磁石80の一部が磁石挿入孔73に対して突出することを防ぐことができる。さらに、磁石80を磁石挿入孔73内部で固定部材90によって固定できる。
【0076】
よって、ロータ製造時のタクトタイムを短縮しつつ磁石80を磁石挿入孔73内において精度よく位置決め可能なロータ製造方法を提供することができる。また、前記加圧によって、ロータコア70の反りが抑制されるため、ワーク100を載置する搬送用治具110には、磁石80の磁石挿入孔73からの突出に応じた段差を設けなくても済む。このため、搬送用治具110の形状を簡素化できる。
【0077】
また、磁石固定工程S3では、ワーク100を加熱することにより、固定部材90に含まれる発泡剤91が発泡して磁石80を磁石挿入孔73内の内面73aに押し付ける。これにより、磁石80を磁石挿入孔73内でより迅速且つ確実に固定できる。よって、ロータ製造時のタクトタイムをさらに短縮することができる。
【0078】
(その他の実施形態)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0079】
前記実施形態では、下部ローラ部21の回転体と、上部ローラ部22の回転体とは、搬送物を搬送する搬送機構として機能する。しかしながら、搬送路において、搬送物を搬送する機構として、公知の搬送機構を使用してもよい。前記搬送機構は、例えば、履板及び前記履板を駆動する駆動輪を有する無限軌道を含んでいてもよい。また、前記搬送機構は、環状のベルト及び前記ベルトを駆動する回転体を有するベルトコンベヤを含んでいてもよい。
【0080】
前記実施形態では、ロータコア70は、厚み方向に積層された複数の円盤状のコア板72を含む。しかしながら、ロータコアは、円柱状の単一部材であってもよい。また、ロータコアは、複数のブロックを有する円柱状の部材であってもよい。また、ロータコアは複数個のロータコアを積層方向に積み重ねることで最終的なロータ300を得るための円柱状の部材であってもよい。
【0081】
前記実施形態では、特に説明しなかったが、磁石挿入孔は、ロータコアを軸線方向から見て、一方向に長い形状を有していてもよい。また、磁石挿入孔は、ロータコアを軸線方向から見て、径方向に長い形状であってもよいし、周方向に長い形状であってもよい。また、磁石も磁石挿入孔に挿入できれば任意の形状を採用することができる。
【0082】
前記実施形態では、ロータ製造装置1は、加圧機構30と、加熱機構40とを有する。しかしながら、ロータ製造装置1は、加圧機構30及び加熱機構40以外の製造設備を含んでいてもよい。例えば、ロータ製造装置は、前記搬送工程、前記加圧工程及び前記磁石固定工程を一連の工程を行う前、すなわち加工前のワークの製造設備を備えていてもよい。上述の通り、加工前のワークは、磁石挿入孔内に挿入された磁石と発泡前の発泡剤を含む固定部材とが挿入されたロータコアを含む。例えば、ロータ製造装置は、前記加工前のワークを製造するために、コア板の切り出し及び打ち抜き等の工程を行う設備、ロータコアを製造する設備、及び磁石に固定部材を貼付する設備等を含んでいてもよい。また、ロータ製造装置において、ワークの製造設備と搬送路が共有されていてもよい。この場合、ロータ製造装置は、ワークの製造設備に対して搬送方向下流に位置していてもよい。
【0083】
前記実施形態では、ワーク100は、平板状の搬送用治具110に載置した状態で後述するロータ製造装置1に投入される。しかしながら、ワーク100は、搬送用治具110に載置せずに、直接、ロータ製造装置1に投入されてもよい。これにより、ワーク100を、搬送用治具110に載置する工程を行わなくても済む。また、加圧機構による圧力が直接的にワーク100に伝達されるため、圧力伝達の効率が向上する。
【0084】
前記実施形態では、上部ローラ部22及び下部ローラ部21の少なくとも一方は、金属製の部材によって構成されている。しかしながら、上部ローラ部22及び下部ローラ部21の少なくとも一方は、金属以外の部材、例えば、樹脂製の部材によって構成されていてもよい。上部ローラ部及び下部ローラ部の両方が金属でもよく、上部ローラ部及び下部ローラ部の両方が樹脂製の部材であってもよい。上部ローラ部及び下部ローラ部が両方とも金属製の部材によって構成されていれば、より効率よく熱を伝達できる。
【0085】
前記実施形態では、加圧位置35よりも搬送方向上流の位置における上部ローラ部22と下部ローラ部21との間隔は、加圧位置35における上部ローラ部22と下部ローラ部21との間隔Tsよりも広い。しかしながら、加圧位置よりも搬送方向上流の位置における上部ローラ部と下部ローラ部との間隔は、加圧位置における上部ローラ部と下部ローラ部との間隔と同じであってもよい。
【0086】
前記実施形態では、加熱機構40は、搬送路25に対して加熱した気体を供給する。また、搬送路25に対して供給された熱風によりワーク100が加熱される。しかしながら、加熱機構40は、加圧機構30の下部ローラ部21及び上部ローラ部22の回転体を加熱してもよい。また、加熱機構は、ロータコアを直接加熱してもよい。例えば、加熱機構は、熱風を案内するノズル等によりロータコアに直接熱風を吹き付けてもよい。また、加熱機構は、搬送用治具を加熱してもよい。
【0087】
前記実施形態では、特に説明しなかったが、ロータコア70は、ロータコア70の外周に反り部Rを有している。また、ロータコア70の反り部Rは、搬送用治具110の載置面110aに接触する。しかしながら、ロータコアを上下方向において逆にした状態で搬送用治具の載置面に載置してもよい。すなわち、ロータコアの径方向の中央部が搬送用治具の載置面に接触するとともにロータコアの反り部が搬送用治具の載置面から離れる状態で、ロータコアを搬送用治具に載置してもよい。
【0088】
前記実施形態では、搬送用治具110は、平板状である。しかしながら、搬送用治具は、例えば、ワークを位置決めする突起を載置面に有していてもよい。
【0089】
前記実施形態では、搬送路25において、搬送物が搬送される。しかしながら、搬送路において、例えば、検査のために、ワークの流れが一時的に停止してもよい。また、搬送路は、直線であっても、非直線であってもよい。搬送路は、1つ又は複数の屈曲部を有していてもよいし、直線及び曲線の組み合わせ構造を有していてもよい。
【0090】
前記実施形態では、磁石固定工程S3において、固定部材90が磁石80を磁石挿入孔73内に固定する状態に固定部材90を変化させる。具体的には、磁石固定工程S3では、加熱による発泡剤91の発泡により、固定部材90が磁石80を磁石挿入孔73内に固定する状態に固定部材90を変化させる。しかしながら、前記固定部材の変化には、やわらかい状態の固定部材を硬化させることが含まれる。例えば、前記固定部材の変化には、硬化部材としての熱硬化樹脂を加熱により硬化させることが含まれる。また、前記固定部材の変化には、加熱以外の方法によって、変化を促進させることが含まれる。例えば、前記固定部材の変化には、紫外線硬化樹脂に対して、紫外線を照射して、前記固定部材を硬化又は発泡させることが含まれる。また、前記固定部材の変化には、変化を促進させることだけでなく、時間経過による固定部材の変化が含まれる。
【0091】
前記実施形態では、固定部材90は、固定部材90の厚み方向の一方に接着部92を有する2層構造の部材である。しかしながら、固定部材は2層構造を有していなくてもよい。例えば、固定部材は、接着層に発泡成分が練り込まれている発泡接着層を有していてもよい。すなわち、固定部材は、発泡層と接着層とが同一層にある構成でもよい。また、固定部材は1層の発泡層と1層の接着層と以外の層をさらに含む多層構造を有していてもよい。例えば、固定部材は2以上の発泡層や2以上の接着層を含んでいてもよく、発泡層や接着層以外の層として最表面に摩耗防止の層を含んでいてもよい。また、固定部材は層構造のシート状の部材でなくてもよく、発泡剤を含む接着剤を磁石に塗布する構成でも構わない。
【0092】
前記実施形態では、接着部92は、接着面を有し、前記接着面を磁石80の側面80aに接着させることによって、固定部材90を、磁石80に固定する。しかしながら、接着部は前記接着面を磁石の軸方向、周方向及び径方向のうち少なくとも1つの面に接着させることによって、固定部材を、磁石に固定してもよい。
【0093】
(構成例)
なお、本技術は以下のような構成をとることも可能である。
(1)厚み方向に積層された複数の円盤状のコア板を含むロータコアを積層方向に貫通する磁石挿入孔内に、磁石が固定されたロータを製造するロータ製造方法。前記ロータ製造方法は、前記磁石挿入孔内に、前記磁石及び前記磁石を前記磁石挿入孔内に固定する固定部材が挿入されたロータコアを、ワークとして搬送する搬送工程と、前記搬送工程中に、前記ワークを前記積層方向に加圧する加圧工程と、前記加圧工程中に、前記固定部材が前記磁石を前記磁石挿入孔内に固定する状態に前記固定部材を変化させる磁石固定工程と、
を有する。
(2)(1)に記載のロータ製造方法において、前記固定部材は、加熱によって発泡する発泡剤を含み、前記磁石固定工程では、前記加圧工程中に前記ワークを加熱することにより前記発泡剤を発泡させて前記磁石を前記ロータコアに対して固定する。
(3)(1)または(2)に記載のロータ製造方法において、前記搬送工程では、平板状の搬送用治具に前記ワークを載せて搬送する。
(4)厚み方向に積層された複数の円盤状のコア板を含むロータコアを積層方向に貫通する磁石挿入孔内に、磁石が固定されたロータを製造するロータ製造装置。前記ロータ製造装置は、前記磁石挿入孔内に前記磁石と加熱によって発泡する発泡剤を含む固定部材とが挿入されたロータコアをワークとして搬送する搬送路において、前記ワークを加圧位置で前記積層方向に加圧する加圧機構と、前記搬送路及び前記ワークの少なくとも一方を加熱する加熱機構と、を有する。
(5)(4)に記載のロータ製造装置において、前記加圧機構は、前記ワークを搬送する搬送方向及び前記搬送路の上下方向に対して直交する方向に延びる回転軸を有するとともに前記搬送方向に並ぶ複数の回転体を含むローラ部を有する。前記ローラ部は、前記搬送路の上方向に位置する上部ローラ部と、前記搬送路の下方向に位置する下部ローラ部と、
を有する。前記加圧機構は、前記加圧位置において、前記上部ローラ部と前記下部ローラ部とによって前記ワークに対して加圧を行う。
(6)(5)に記載のロータ製造装置において、前記加圧位置における前記上部ローラ部と前記下部ローラ部との間隔が、前記搬送路において前記加圧位置よりも搬送方向上流の位置における前記上部ローラ部と前記下部ローラ部との間隔よりも狭い。
(7)(4)から(6)のいずれかに記載のロータ製造装置において、前記加熱機構は、前記搬送路に対して加熱した気体を供給する。
(8)(5)から(7)のいずれかに記載のロータ製造装置において、前記上部ローラ部及び下部ローラ部の少なくとも一方は、金属製の部材によって構成されている。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、厚み方向に積層された複数の円盤状のコア板を含むロータコアを積層方向に貫通する磁石挿入孔内に、磁石が固定されたロータを製造するロータ製造方法及びロータ製造装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0095】
1 ロータ製造装置
15 投入位置
20 ローラ部
21 下部ローラ部
22 上部ローラ部
25 搬送路
30 加圧機構
35 加圧位置
40 加熱機構
45 加熱位置
70 ロータコア
70a 下面
72 コア板
73 磁石挿入孔
73a、73b 内面
74 シャフト挿入孔
80 磁石
80a 側面
90 固定部材
91 発泡剤
92 接着部
95 磁石固定部
95a 発泡層
95b 接着層
100 ワーク
110 搬送用治具
110a 載置面
R 反り部