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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048497
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】消火栓装置
(51)【国際特許分類】
   A62C 35/20 20060101AFI20240402BHJP
   A62C 3/00 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
A62C35/20
A62C3/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154440
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(74)【代理人】
【識別番号】100228669
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 愛規
(72)【発明者】
【氏名】松熊 秀成
(72)【発明者】
【氏名】梅原 寛
【テーマコード(参考)】
2E189
【Fターム(参考)】
2E189EB02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】消火栓装置が設置される架台の高さを利用することで、消火栓扉の開放により監視員通路の通行を妨げることなく、扉開口の拡大を可能として消火栓の取り扱いを容易とする。
【解決手段】消火栓装置は、トンネル壁面に沿って設けられた監視員通路35の路面上方の所定の高さとなり、当該トンネル壁面に近接又は当接するように架台30上に設置され、消火栓装置の前面の扉開口15に配置された消火栓扉12と、消火栓扉12の扉面が消火栓装置の扉開口15の下端より下側の前面及び架台30の前面に相対し監視員通路35の路面に対して垂直な位置となる開放位置まで消火栓扉12を開放させる回転式扉開閉機構80と、を備える。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル壁面に沿って設けられた監視員通路の路面上方の所定の高さとなり、当該トンネル壁面に近接又は当接するように架台上に設置された消火栓装置であって、
前記消火栓装置の前面の扉開口に配置された消火栓扉と、
前記消火栓扉の扉面が前記消火栓装置の前記扉開口の下端より下側の前面及び前記架台の前面に相対し前記監視員通路の路面に対して垂直な位置となる開放位置まで前記消火栓扉を開放させる扉開閉機構と、
を備えたことを特徴とする消火栓装置。
【請求項2】
請求項1記載の消火栓装置において、
前記扉開閉機構は、前記扉開口に配置された前記消火栓扉を前記消火栓扉の下端側を軸に前記監視員通路の路面に対して垂直回りに回転させて前記開放位置まで開放させることを特徴とする消火栓装置。
【請求項3】
請求項1記載の消火栓装置において、
前記扉開閉機構は、前記扉開口に配置された前記消火栓扉を前記消火栓装置の前面に沿って下方に移動させて前記開放位置まで開放させることを特徴とする消火栓装置。
【請求項4】
トンネル壁面に沿って設けられた監視員通路の路面上方の所定の高さとなり、当該トンネル壁面に近接又は当接するように架台上に設置された消火栓装置であって、
前記消火栓装置の前面の扉開口に配置され、前記監視員通路の路面に対して垂直方向に分割された上扉と下扉とを備えた消火栓扉と、
前記上扉の扉面が前記消火栓装置の前記扉開口の下端より下側の前面及び前記架台の前面に相対し前記監視員通路の路面に対して垂直な位置となり、前記下扉の扉面が前記監視員通路の路面上に載置され前記監視員通路の路面に対して水平な位置となる開放位置まで前記消火栓扉を開放させる扉開閉機構と、
を備えたことを特徴とする消火栓装置。
【請求項5】
請求項4記載の消火栓装置において、
前記上扉と前記下扉は折曲自在に連結され、
前記扉開閉機構は、前記扉開口に配置された前記消火栓扉を前記消火栓装置の前面に沿って下方に移動させて前記開放位置まで開放させることを特徴とする消火栓装置。
【請求項6】
請求項5記載の消火栓装置において、
前記下扉に、前記消火栓扉を開放した際に前記監視員通路の路面上に着地する車輪を設けたことを特徴とする消火栓装置。
【請求項7】
請求項2記載の消火栓装置において、
消火用ホースが連結されたノズル及び消火栓弁を開閉させる開閉操作部を、前記消火栓扉の裏側に配置したことを特徴とする消火栓装置。
【請求項8】
請求項2、3又は5記載の消火栓装置において、
消火用ホースが連結されたノズル及び消火栓弁を開閉させる開閉操作部を、前記扉開口に対応した内部に配置したことを特徴とする消火栓装置。
【請求項9】
請求項1又は4記載の消火栓装置において、
更に、前記消火栓扉を前記開放位置まで移動させる移動速度を抑制する緩衝装置を備えたことを特徴とする消火栓装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル壁面に沿って設けられた監視員通路に露出して設置される消火栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高速道路や自動車専用道路等のトンネル内には、トンネル非常用設備として消火栓装置が設置されている。例えば消火栓装置は、前傾式の消火栓扉(前傾扉)を備えた筐体内部の消火栓収納部に、先端にノズルを装着した消火用ホースや消火栓弁を含むバルブ類等が収納され、また消火器扉を備えた筐体内部の消火器収納部に、2本の消火器が収納されている。また、消火栓装置は、一般的にトンネル長手方向、例えば50メートル間隔で監視員通路が沿って設けられたトンネル壁面を箱抜きして埋込み設置されている。
【0003】
しかし、シールド工法等により造られたトンネルにあっては、トンネル躯体の構造上、トンネル壁面を箱抜きして消火栓装置を埋込み設置することがコストや労力の関係から困難であるから、監視員通路に消火栓装置が露出した状態で設置することが必要になる。
【0004】
このため、消火栓装置をトンネル壁面に箱抜きすることなく、監視員通路に消火栓装置が露出した状態で設置する構造として、トンネル壁面に架台を設置し、設置された架台に消火栓装置を取付固定する壁掛け構造が提案されており、当該壁掛け構造の架台は壁面に固定される主支持部と消火栓装置の姿勢を保持する姿勢保持部材等から構成されている(特許文献1)。
【0005】
しかし、壁掛け構造による消火栓装置の設置は、トンネル壁面への消火栓装置の取り付けに工数と時間が掛かる等の課題があることから、設置が容易である監視員通路の路面上に架台を設置し、設置された架台に消火栓装置を取付固定する、いわゆる据置き構造を採用することが考えられている。
【0006】
ところで、従来の消火栓装置は消火栓扉を開閉させるために約90°回動させる開閉機構を備えているが、トンネル壁面を箱抜きして消火栓装置を埋込み設置する場合であっても監視員通路の通路幅が狭いと、消火栓扉の開放に際し監視員通路に消火栓扉が突出し監視員通路の通行を妨げる問題がある。また、監視員通路に消火栓装置が露出した状態で設置する壁掛け構造や据置構造で消火栓装置を設置する場合には、設置した段階で消火栓装置が監視員通路に露出しているので、消火栓扉の開放による監視員通路の通行を妨げる問題はより顕著となってくる。
【0007】
このため、特許文献2の消火栓装置にあっては、消火栓扉を開放させた際に、消火栓扉の上端部を消火栓扉の下端部より下方に位置するまで90°を超えて回動可能にしている。これにより、消火栓扉を開放した際の突出量を抑えて監視員通路の通行を妨げる度合を低減可能としている。
【0008】
また、監視員通路の通行を妨げる度合をさらに低減するため、特許文献3の消火栓装置にあっては、消火栓扉全体を180°回動させる開閉機構を備えるようにしている。これにより消火栓扉を開放した際の突出量をほぼないものとすることができ、消火栓扉の開放により監視員通路の通行を妨げることがないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2020-078429号公報
【特許文献2】特開2016-146906号公報
【特許文献3】特開2014-068743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献2の消火栓装置の消火栓扉にあっては、消火栓扉を開放した際の突出量は低減できているものの、消火栓扉が開放されると消火栓扉の下端部は突出していることから、監視員通路の通路幅によっては監視員通路の通行を妨げる可能性もあり、また特許文献3の消火栓装置の消火栓扉にあっては、消火栓扉の開放により監視員通路の通行を妨げることはないものの、筐体前面の消火栓扉が設けられる扉開口の下部に、少なくとも扉開口と同じ大きさの領域を確保する必要があることから、扉開口のサイズが制限されることとなり、筐体内部に収納された消火用ホースの取り出しや消火栓弁の開放操作等の消火栓装置の取り扱いに支障を来たす可能性がある。
【0011】
本発明は消火栓装置が設置される架台の高さを利用することで、消火栓扉の開放により監視員通路の通行を妨げることなく、扉開口の拡大を可能として消火栓の取り扱いを容易とする消火栓装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(消火栓装置)
本発明は、トンネル壁面に沿って設けられた監視員通路の路面上方の所定の高さとなり、当該トンネル壁面に近接又は当接するように架台上に設置された消火栓装置であって、
消火栓装置の前面の扉開口に配置された消火栓扉と、
消火栓扉の扉面が消火栓装置の扉開口の下端より下側の前面及び架台の前面に相対し監視員通路の路面に対して垂直な位置となる開放位置まで消火栓扉を開放させる扉開閉機構と、
を備えたことを特徴とする。
【0013】
(回転式扉開閉機構)
扉開閉機構は、扉開口に配置された消火栓扉を消火栓扉の下端側を軸に監視員通路の路面に対して垂直回りに回転させて開放位置まで開放させる。
【0014】
(スライド式扉開閉機構)
扉開閉機構は、扉開口に配置された消火栓扉を消火栓装置の前面に沿って下方に移動させて開放位置まで開放させる。
【0015】
(上下に分割された消火栓扉を備える消火栓装置)
本発明は、トンネル壁面に沿って設けられた監視員通路の路面上方の所定の高さとなり、当該トンネル壁面に近接又は当接するように架台上に設置された消火栓装置であって、
消火栓装置の前面の扉開口に配置され、監視員通路の路面に対して垂直方向に分割された上扉と下扉とを備えた消火栓扉と、
上扉の扉面が消火栓装置の扉開口の下端より下側の前面及び架台の前面に相対し監視員通路の路面に対して垂直な位置となり、下扉の扉面が監視員通路の路面上に載置され監視員通路の路面に対して水平な位置となる開放位置まで消火栓扉を開放させる扉開閉機構と、
を備えたことを特徴とする。
【0016】
(上下に分割された消火栓扉のスライド式扉開閉機構)
上扉と下扉は折曲自在に連結され、
扉開閉機構は、扉開口に配置された消火栓扉を消火栓装置の前面に沿って下方に移動させて開放位置まで開放させる。
【0017】
(下扉の車輪)
下扉に、消火栓扉を開放した際に監視員通路の路面上に着地する車輪を設ける。
【0018】
(ノズル及び消火栓弁開閉レバーの配置1)
消火用ホースが連結されたノズル及び消火栓弁を開閉させる開閉操作部を、消火栓扉の裏側に配置する。
【0019】
(ノズル及び消火栓弁開閉レバーの配置2)
消火用ホースが連結されたノズル及び消火栓弁を開閉させる開閉操作部を、扉開口に対応した内部に配置したことを特徴とする。
【0020】
(緩衝装置)
更に、消火栓扉を開放位置まで移動させる移動速度を抑制する緩衝装置を備える。
【発明の効果】
【0021】
(消火栓装置の効果)
本発明は、トンネル壁面に沿って設けられた監視員通路の路面上方の所定の高さとなり、当該トンネル壁面に近接又は当接するように架台上に設置された消火栓装置であって、消火栓装置の前面の扉開口に配置された消火栓扉と、消火栓扉の扉面が消火栓装置の扉開口の下端より下側の前面及び架台の前面に相対し監視員通路の路面に対して垂直な位置となる開放位置まで消火栓扉を開放させる扉開閉機構と、を備えたため、消火栓扉を開放した際に消火栓扉の扉面が架台の前面に相対し監視員通路の路面に対して垂直な位置まで消火栓扉が開き、開放した消火栓扉により監視員通路の通行を妨げることなく、また扉開口を大きくすることができ、消火用ホースの引き出し、消火用ホースに連結したノズルの取り出し、消火栓弁を開閉させる開閉操作部の操作等の消火栓装置の取扱いを容易とする。
【0022】
(回転式扉開閉機構の効果)
また、扉開閉機構は、扉開口に配置された消火栓扉を消火栓扉の下端側を軸に監視員通路の路面に対して垂直回りに回転させて開放位置まで開放させるようにしたため、扉開閉機構を所謂180°回転させて消火栓扉を開放する回転式扉開閉機構とした場合にも、扉開口の拡大と監視員通路の通行妨害の抑止との両立可能とする。
【0023】
(スライド式扉開閉機構の効果)
また、扉開閉機構は、扉開口に配置された消火栓扉を消火栓装置の前面に沿って下方に移動させて開放位置まで開放させるようにしたため、扉開閉機構を所謂スライド式扉開閉機構とした場合にも、扉開口の拡大と監視員通路の通行妨害の抑止との両立可能とする。また、消火栓扉は下方にスライド移動して開放されることから、開閉の途中にあっても消火栓扉が監視員通路に突出することがなく、道路利用者が消火栓扉を開放する際に高い操作性と安全性を確保することを可能とする。
【0024】
(上下に分割された消火栓扉を備える消火栓装置の効果)
また、トンネル壁面に沿って設けられた監視員通路の路面上方の所定の高さとなり、当該トンネル壁面に近接又は当接するように架台上に設置された消火栓装置であって、消火栓装置の前面の扉開口に配置され、監視員通路の路面に対して垂直方向に分割された上扉と下扉とを備えた消火栓扉と、上扉の扉面が消火栓装置の扉開口の下端より下側の前面及び架台の前面に相対し監視員通路の路面に対して垂直な位置となり、下扉の扉面が監視員通路の路面上に載置され監視員通路の路面に対して水平な位置となる開放位置まで消火栓扉を開放させる扉開閉機構と、を備え、上扉と下扉は折曲自在に連結され、扉開閉機構は、扉開口に配置された消火栓扉を消火栓装置の前面に沿って下方に移動させて開放位置まで開放させようにしたため、下扉が消火栓扉の開放時に屈曲して監視員通路の路面上に移動する分、扉開口をさらに拡大することができる。また、下扉は開放位置で監視員通路の路面上に載置され監視員通路の路面に対して水平な位置となるため、下扉に乗って監視員通路の通行が可能であり、消火栓扉の開放時に監視員通路の路面上に載置された下扉により監視員通路の通行が妨げられることはない。
【0025】
(下扉の車輪の効果)
また、下扉に、消火栓扉を開放した際に監視員通路の路面上に着地する車輪を設けたため、消火栓扉を開放した際に滑らかに下扉を移動させることを可能とする。
【0026】
(ノズル及び消火栓弁開閉レバーの配置1の効果)
また、回転式扉開閉機構を備えた消火栓装置について、消火用ホースが連結されたノズル及び消火栓弁を開閉させる開閉操作部を、消火栓扉の裏側に配置するようにしたため、開放した消火栓扉は監視員通路の路面に近い低い位置にあることから、開放した消火栓扉の裏面に配置しているノズルや消火栓弁の開閉操作部の操作を監視員通路の路面より路面の位置が低い道路側から簡単且つ容易に行えることを可能とする。
【0027】
(ノズル及び消火栓弁開閉レバーの配置2の効果)
また、回転式扉開閉機構又はスライド式扉開閉機構を備えた消火栓装置について、消火用ホースを連結したノズル及び消火栓弁の開閉操作部を、扉開口に対応した内部に配置するようにしたため、消火栓扉にノズルや消火栓弁の開閉操作部を設ける必要がなく、消火栓扉の扉構造が簡単となると共に消火栓扉を軽量化することが可能となる。また、扉開口を大きくすることができることから、消火栓装置の内部にノズルや消火栓弁の開閉操作部を配置していても、消火用ホースの引き出し、消火用ホースに連結したノズルの取り出し、消火栓弁を開閉させる開閉操作部の操作等の消火栓装置の取扱いを簡単且つ容易に行えることを可能とする。
【0028】
(緩衝装置の効果)
また、更に、消火栓扉を開放位置まで移動させる移動速度を抑制する緩衝装置を備えたため、消火栓扉が開放位置で停止する際の衝撃を抑えると共に開放位置に消火栓扉を滑らかに移動させることを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】第1実施形態の消火栓装置を正面から示した説明図である。
図2】第1実施形態の消火栓装置を左側面から示した説明図である。
図3図1の消火栓装置の内部構造を、保守扉を開き、消火栓扉を外して正面から示した説明図である。
図4図1の消火栓装置の消火栓扉を180°開いて正面から示した説明図である。
図5図1の消火栓装置の消火栓扉を180°開いて内部構造を右側面から示した説明図である。
図6】消火栓扉を閉鎖した状態の回転式扉開閉機構を示した説明図である。
図7】消火栓扉を90°開放した状態の回転式扉開閉機構を示した説明図である。
図8】消火栓扉を180°開放した状態の回転式扉開閉機構を示した説明図である。
図9】回転式扉開閉機構の他の実施形態を示した説明図である。
図10】筐体内にノズルと消火栓弁開閉レバーを配置した第1実施形態の変形例を示した説明図である。
図11】第2実施形態の消火栓装置を正面から示した説明図である。
図12】消火栓扉をスライド開放した図11の消火栓装置を正面から示した説明図である。
図13】スライド式扉開閉機構を取り出して示した説明図である。
図14図11の消火栓装置の内部構造を右側面から示した説明図である。
図15】第3実施形態の消火栓装置を正面から示した説明図である。
図16】消火栓扉をスライド開放した図15の消火栓装置を正面から示した説明図である。
図17図15の消火栓装置の内部構造を右側面から示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、本発明に係る消火栓装置の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の実施形態により、本発明が限定されるものではない。
【0031】
[実施形態の基本的な概念]
まず、実施形態の基本的概念について説明する。実施形態は、概略的に、トンネル壁面に沿って設けられた監視員通路に露出して設置される消火栓装置に関するものである。
【0032】
ここで、「消火栓装置」とは、消火対象領域となる高速道路や自動車専用道路のトンネル内等に設置される非常用設備の一種であり、消火用ホース等の消火栓機器、赤色表示灯や発信機等の電装機器、端子箱及び消火器等が配置又は収納されたものであり、消火栓装置が設置された消火栓設備を含む概念である。
【0033】
また、実施形態の消火栓装置は、トンネル壁面に沿って設けられた監視員通路の路面上方の所定の高さとなり、当該トンネル壁面に近接又は当接するように架台上に設置されたものであり、監視員通路に消火栓装置が露出した状態で設置する「壁掛け構造」や「据置き構造」により設置された消火栓装置を含むものである。ここで、背景技術でも説明した通り、「壁掛け構造」とは、トンネル壁面に架台を設置し、設置された架台に消火栓装置を取付固定する等により消火栓装置をトンネル壁面に対して壁掛けするように設置可能とする構造であり、「据置き構造」とは監視員通路の路面上に架台を設置し、設置された架台に消火栓装置を取付固定する等により消火栓装置を監視員通路の路面上に設置可能とする構造である。
【0034】
また、「架台」とは、柱と梁などによって物を支える構造を指すものであり、支持台、土台、基台、台座、ベースなどの概念を含むものである。また、「トンネル壁面に近接又は当接させて設置」とは、トンネル壁面に近接して設置、一部をトンネル壁面に当接して設置、又は一部をトンネル壁面に固定して設置することを含むものである。
【0035】
そして、実施形態の消火栓装置は、消火栓装置の前面の扉開口に配置された消火栓扉と、消火栓扉の扉面が消火栓装置の扉開口の下端より下側の前面及び架台の前面に相対し監視員通路の路面に対して垂直な位置となる開放位置まで消火栓扉を開放させる扉開閉機構と、を備えたことを特徴とする。
【0036】
ここで、「消火栓扉」とは、道路利用者が消火栓装置の内部にアクセスする際に開放される扉であり、消火栓扉が配置される「扉開口」には消火栓扉以外の扉が配置されていても良く、例えば消火栓装置の点検時等に開放される保守扉が消火栓扉と共に扉開口に配置されていても良い。
【0037】
また、「消火栓扉の扉面」とは、扉開口のサイズに対応したサイズを持つ一面のことであり、扉開口に配置された際にその扉開口を閉鎖する消火栓扉の前面又はその前面に相対する裏面が該当する。また、消火栓扉を開放したときの消火栓扉の位置を「開放位置」としており、それに対応して扉開口を閉鎖したときの消火栓扉の位置ついては「閉鎖位置」とする。
【0038】
また、「消火栓装置の扉開口の下端より下側の前面及び架台の前面に相対した位置」とは、消火栓装置の扉開口の下端より下側の前面及び架台の前面となる全ての領域に対して相対している必要はなく、消火栓装置より下方に位置する架台の前面の所定の位置にまで開放した消火栓扉の扉面が相対していればよく、例えば消火栓装置の製造ばらつきや寸法ばらつきを考慮して、開放した消火栓扉の下端と架台の下端との間に隙間が空くように設計された場合には、架台の下端側の一部の領域には消火栓扉の扉面が相対しないことになる。また、「監視員通路の路面に対して垂直」とは、厳密に監視員通路の路面に対して垂直であることを限定するものではなく、監視員通路の通行を妨げることない程度に略垂直であるものを含む概念である。
【0039】
また、「扉開閉機構」の構成や種類は任意であるが、例えば、扉開口に配置された消火栓扉を消火栓扉の下端側を軸に監視員通路の路面に対して垂直回りに回転させて開放位置まで開放させる「回転式扉開閉機構」や扉開口に配置された消火栓扉を消火栓装置の前面に沿って下方に移動させて開放位置まで開放させる「スライド式扉開閉機構」等を含むものである。
【0040】
また、消火栓装置の別の実施形態として、消火栓装置の前面の扉開口に配置され、監監視員通路の路面に対して垂直方向に分割された上扉と下扉とを備えた消火栓扉と、上扉の扉面が消火栓装置の扉開口の下端より下側の前面及び架台の前面に相対し監視員通路の路面に対して垂直な位置となり、下扉の扉面が監視員通路の路面上に載置され監視員通路の路面に対して水平な位置となる開放位置まで消火栓扉を開放させる扉開閉機構と、を備えたことを特徴とする。
【0041】
より具体的には、消火栓扉の上扉と下扉は折曲自在に連結され、扉開閉機構を、扉開口に配置された消火栓扉を消火栓装置の前面に沿って下方に移動させて開放位置まで開放させる「スライド式扉開閉機構」としたものを含む。
【0042】
ここで、消火栓扉は、消火栓扉を監視員通路の路面に対して垂直方向に2分割して上方に位置する扉が「上扉」であり、下方に位置する扉が「下扉」である。また、「監視員通路の路面に対して水平」とは、監視員通路の路面に対して垂直の場合と同様に、厳密に監視員通路の路面に対して水平であることを限定するものではなく、監視員通路の通行を妨げることない程度に略水平であるものを含む概念である。
【0043】
また、下扉に、消火栓扉を開放した際に監視員通路の路面上に着地する車輪を設けるようにしても良い。この車輪を設ける位置や数等は任意であり、下扉が監視員通路の路面上に着地した後に下扉を滑らかに開放位置まで移動できるように車輪を設ければよい。
【0044】
また、本実施形態では、扉開口を大きくすることができることから、消火用ホースが連結されたノズル及び消火栓弁を開閉させる開閉操作部を扉開口に対応した内部に配置しても良く、扉開閉機構を「回転式扉開閉機構」とした場合には、消火用ホースが連結されたノズル及び消火栓弁を開閉させる開閉操作部を消火栓扉の裏側に配置しても良い。
【0045】
また、消火栓装置は、更に消火栓扉を開放位置まで移動させる移動速度を抑制する緩衝装置を備えても良い。ここで、「緩衝装置」とは、消火栓扉が開放位置へ移動する移動速度を低減させるものであり、ピストンシリンダ機構を利用したダンパーやダンピングとして知られた装置・機器・構造等が用いられるものである。
【0046】
以下、具体的な実施形態を説明する。以下に示す具体的な実施形態では、扉開閉機構を回転式扉開閉機構とした第1実施形態の消火栓装置、扉開閉機構をスライド式扉開閉機構とした第2実施形態の消火栓装置、及び扉開閉機構をスライド式扉開閉機構として上下に分割された消火栓扉を備えた第3実施形態の消火栓装置に分け、「消火栓装置」は、「監視員通路の路面上に設置された据置き構造により設置された消火栓装置」であり、「緩衝装置」として「ダンパー」を備えた場合にて説明する。
【0047】
[実施形態の具体的内容]
消火栓装置の実施形態について説明する。その内容については以下のように分けて説明する。
a.回転式扉開閉機構を備えた第1実施形態の消火栓装置
a1.消火栓装置の概要
a2.消火栓装置の設置
a3.消火栓装置の設置高さと薄型化
a4.消火栓装置の内部構造
b.消火栓扉の回転式扉開閉機構
b1.回転式扉開閉機構の概要
b2.回転式扉開閉機構の構造
b3.回転式扉開閉機構の他の実施形態
b4.ノズルと消火栓弁開閉レバーの消火栓扉裏面への配置
b5.ノズルと消火栓弁開閉レバーの筐体内配置
c.スライド式扉開閉機構を備えた第2実施形態の消火栓装置
c1.消火栓装置及び扉開閉機構の概要
c2.スライド式扉開閉機構の構造
d.上下に分割された消火栓扉とスライド式扉開閉機構を備えた第3実施形態の消火栓装置
e.本発明の変形例
【0048】
[a.回転式扉開閉機構を備えた第1実施形態の消火栓装置]
第1実施形態となる回転式扉開閉機構を備えた消火栓装置について説明する。
【0049】
(a1.消火栓装置の概要)
まず、消火栓装置の概要について説明する。当該説明にあっては、監視員通路の路面上に設置した第1実施形態の消火栓装置を正面(前面)から示した図1を参照する。ここで、図1の説明では、X-Y-Z方向が互いに直交する方向であり、具体的には、消火栓装置10の前面を正面に見て、X方向を左右方向とし、Y方向を上下方向とし、Z方向を前後方向とする。また、X方向における+X側を右側、-X側を左側とし、Y方向における+Y側を上側、-Y側を下側とし、Z方向における+Z側を前側、-Z側を後側とする。この点は本発明の実施形態となる図2図17においても同様となる。
【0050】
図1に示すように、消火栓装置10は、監視員通路35の路面上に設置された架台30上に設置され、消火栓装置10の筐体は、第1筐体11a、第2筐体11b及び第3筐体11cに分割されている。
【0051】
第1筐体11aの前面には化粧枠13aが装着されている。化粧枠13aの扉開口15は上下に分割され、扉開口15の下側には後述する回転式扉開閉機構により開閉される消火栓扉12が配置され、扉開口15の上側にヒンジ14aにより上向きに開く保守扉14が配置され、第1筐体11aの内部となる消火栓収納部に消火用ホース及び消火栓弁等のバルブ類を含む所定の消火栓機器が収納されている。
【0052】
第2筐体11bの前面には化粧枠13bが装着されている。化粧枠13bの扉開口の右側にはヒンジ18aにより右向きに横開きする電装扉18が配置され、左側にはヒンジ20aにより左向きに横開きして、内部の端子箱26a,26bへのアクセスを可能とする補助扉20が配置されている。電装扉18には、電装機器として、例えば赤色表示灯22、発信機24及び応答ランプ25が設けられ、内側には電話ジャックが設けられている。
【0053】
赤色表示灯22は常時点灯し、消火栓装置10の設置場所が遠方から確認できるようになっている。また、発信機24は、例えば火災等が発生して押されて押し釦スイッチがオンすると発信信号を送信し、これを受信した電気室等に設置された防災受信盤から火災警報が出力され、防災受信盤からの応答信号を受信した消火栓装置10は、赤色表示灯22を点滅させると共に、応答ランプ25を点灯させる。
【0054】
補助扉20に相対した第2筐体11b内の後面には、高圧用の端子箱26aと低圧用の端子箱26bが上下方向に並べて配置されている。高圧用の端子箱26aは、内蔵した端子台を使用して、消火栓装置10の外部から引き込まれた強電用ケーブルと赤色表示灯22を接続する。低圧用の端子箱26bは、内蔵した端子台を使用して、消火栓装置10の外部から引き込まれた弱電用ケーブルと発信機24、応答ランプ25及び電話ジャック等を接続する。
【0055】
第3筐体11cの前面には化粧枠13cが装着されている。化粧枠13cの扉開口にはヒンジ16aにより左向きに横開きする消火器扉16が配置され、第3筐体11cの内部となる消火器収納部に2本の消火器が収納されている。また、消火器扉16には覗き窓17が設けられ、外部から消火器の有無を確認可能としている。
【0056】
(a2.消火栓装置の設置)
次に、監視員通路に対する消火栓装置の設置について説明する。当該説明にあっては、監視員通路の路面上に設置された消火栓装置を左側面から示した図2を参照する。
【0057】
図2に示すように、シールド工法により構築された円筒状(円形断面)のトンネル躯体の下部には道路36がトンネル長手方向(左右方向)に構築され、道路36に沿ったトンネル壁面27の下側に、道路36に対し所定高さの監視員通路35が構築されている。監視員通路35の内部はダクトとなっており、給水本管やケーブルが敷設され、消火栓装置10には給水配管51が給水本管から分岐されて引き込まれている。
【0058】
シールド工法によるトンネル壁面27は、消火栓装置10を設置するための箱抜きが困難であることから、監視員通路35の路面上にトンネル壁面27に近接させて架台30を設置し、連結された第1筐体11a、第2筐体11b及び第3筐体11cを架台30上に取付固定することで、消火栓装置10を設置している。ここで、監視員通路35の路面から消火栓装置10に配置された発信機24までの高さが、法的に定められた800mm~1500mmの間に入るように、架台30の高さH1が設定される。
【0059】
また、本実施形態の架台30は、図2に示すように、側面形状を底辺に対し上辺が長い逆台形とし、トンネル壁面27の湾曲形状に沿って後側が斜め下向きの傾斜面となっている。
【0060】
(a3.消火栓装置の設置高さと薄型化)
次に、消火栓装置の設置高さと薄型化について説明する。図2に示すように、架台30により監視員通路35の路面上に設置された消火栓装置10の、トンネル壁面27からの突出(出っ張り)による監視員通路35の通路幅の制約を低減するため、消火栓装置10の設置高さを最適化し、併せて消火栓装置10を可能な限り薄型化している。
【0061】
消火栓装置10の設置高さは、架台30により定まるものであるから、架台30の高さH1を最適化することで、消火栓装置10の設置高さは最適化されることとなる。そのため、消火栓装置10が設置されるトンネル壁面27は円形断面となっており、トンネル中心(円形断面の中心)からの水平方向のトンネル中心線SL1に対し、監視員通路35の路面上に設置された消火栓装置10は、その高さ方向の中心を通る横方向の筐体中心線SL2が可能な限り近付くように、架台30の高さH1が設定されている。この場合、筐体中心線SL2をトンネル中心線SL1に近づけるほど、消火栓装置10がトンネル壁面27から突出する度合いを低減することができる。
【0062】
次に、消火栓装置10の薄型化は、消火栓装置10に収納される機器に合わせて最適化されることとなる。本実施形態にあっては、消火栓装置10に収納される機器の中で前後方向のサイズが最大となるのは、第3筐体11cに収納される消火器であり、消火栓装置の厚さ(前後方向の幅)が第3筐体11cに消火器が収納できるサイズまで消火栓装置10の薄型化が可能であるから、消火栓装置10の幅は第3筐体11cに収納される消火器の外径に対応した所定の幅に設定される。
【0063】
消火器の外径は150~160mm程度であり、収納された消火器が第3筐体11cに接触しないように隙間を確保すると、消火栓装置10の最小幅は、例えば180~200mm程度の範囲内となり、消火栓装置10の幅は当該範囲内の所定の幅に設定される。これに対し、トンネル躯体の壁面を箱抜きして埋込設置する従来の消火栓装置10の幅は300mm程度であることから、本実施形態の消火栓装置10は、幅を従来の2/3以下にすることができ、消火栓装置10を薄型化することができる。
【0064】
また、消火栓装置10の第1筐体11aは、従来の消火栓装置と同じ所定長の消火用ホース、例えば30mの保形ホースを内巻き状態で収納するために、第1筐体11aの横幅(左右方向の幅)を従来の消火栓装置よりも拡大することで、従来と同じ所定長の保形ホースが内巻き状態で収納可能としている。
【0065】
また、従来の消火栓装置では消火器が収納される消火器収納部の後側の筐体後面に端子箱26a,26bを配置していたが、消火栓装置10の薄型化に伴いに端子箱26a,26bを消火器収納部の後側の筐体後面には配置できなくなるため、電装機器が設けられる第2筐体11bの横幅(左右方向の幅)を、電装機器と端子箱を配置可能とする横幅に拡大している。
【0066】
(a4.消火栓装置の内部構造)
次に、消火栓装置の内部構造について説明する。当該説明にあっては、消火栓装置の内部構造を、保守扉を開き、消火栓扉を外して正面から示した図3を参照する。
【0067】
消火栓収納部となる第1筐体11aの内部は、バルブ類収納部50aとホース収納部50bに分けられている。
【0068】
バルブ類収納部50aには、架台30を通して下方から給水配管51が引き込まれて給水栓52に接続されると共に、給水配管51が下向きに分岐されて消火栓弁54及び自動調圧弁56を介して保形ホースを用いた消火用ホース60に接続されている。
【0069】
ホース収納部50bには、ホース収納フレーム62が設けられ、下側から引き込まれた消火用ホース60が右回り又は左回りの内巻き状態で収納されている。ここで、ホース収納フレーム62は、消火栓装置10の薄型化に伴う第1筐体11aの横幅の拡大に対応して従来よりも横幅を拡大しており、従来の消火栓装置に比べて少ない巻き数で従来と同じ所定長の消火用ホース60が収納可能となっている。
【0070】
消火栓弁54は、後述する消火栓扉の裏面や筐体内部に設けられた消火栓弁開閉レバーにより開閉されるものであり、消火栓弁54には消火栓弁開閉レバーが設けられた操作ボックスに対応して連動ボックス55が設けられ、連動ボックス55と操作ボックスとの間に設けられた公知のワイヤーリンク機構により消火栓弁54が消火栓弁開閉レバーの開閉操作に連動して開閉される。また、給水栓52の右上には消防隊が使用し、オンすることでポンプ起動信号を送信するポンプ起動スイッチ76が設けられている。
【0071】
また、第2筐体11bの電装扉18の裏面側には電話ジャック28が設けられ、第3筐体11cの内部の消火器収納部には2本の消火器72が収納されている。
【0072】
[b.消火栓扉の回転式扉開閉機構]
続いて、第1実施形態の消火栓装置に設けられた消火栓扉の回転式扉開閉機構について説明する。
【0073】
(b1.回転式扉開閉機構の概要)
まず、回転式扉開閉機構の概要について説明する。当該説明にあっては、消火栓装置の消火栓扉を180°開いて正面から示した図4及び消火栓装置の消火栓扉を180°開いた状態で内部構造を右側面から示した図5を参照する。
【0074】
本実施形態の消火栓扉12は、図1に示すように、第1筐体11aの扉開口15の下側を閉鎖する位置(閉鎖位置)と、図4及び図5に示すように、第1筐体11aの扉開口15を開放した位置(開放位置)との間で、扉下端部を軸に垂直回り(上下回り)に180°回動して回転式扉開閉機構80により開閉される。また、第1筐体11aの扉開口15の下側を開放した場合に、消火栓扉12は、図4及び図5に示すように、第1筐体11aの前面となる扉開口15の下端より下側に位置する化粧枠13aの前面及び架台30の前面に消火栓扉12の前面(扉面)を相対させ、監視員通路35の路面に対して垂直な位置となる。尚、「消火栓扉12の180°回動しての開閉」とは、厳密に180°回動するものに限らず、監視員通路35の通行を妨げることない程度に略180°で回動するものを含む。
【0075】
また、消火栓扉12を180°回転させて開放することを可能とするように、架台30の高さ、化粧枠13bの下端から扉開口15の下端までの高さ及び消火栓扉12の高さ(縦幅、上下方向の幅)が設定される。ここで、図1に示すように、架台30の高さをH1、化粧枠13bの下端(消火栓装置10の下端)から扉開口15の下端までの高さをH2、消火栓扉12の縦幅(上下方向の幅、消火栓扉12が配置される領域の扉開口15の上下方向の開口幅)をH3とすると、
(H1+H2)≧H3
の関係となるようにH1~H3が設定される。
【0076】
ここで、開放した消火栓扉12の下端が監視員通路35の路面に接する場合(消火栓扉12の縦幅H3が架台30の高さH1と化粧枠13bの下端から扉開口15の下端までの高さH2の合計と同じ場合)にも、消火栓扉12を180°回転させて開放することができるが、実際には、消火栓装置の製造ばらつきや寸法ばらつきを考慮して、開放した消火栓扉12の下端が監視員通路35の路面に接触しないように各高さH1~H3を設定するのが好ましく、このため、消火栓扉12の縦幅H3を、架台30の高さH1と化粧枠13bの下端から扉開口15の下端までの高さH2の合計よりも、例えば1~2cm程度短く設定している。
【0077】
(b2.回転式扉開閉機構の構造)
次に、回転式扉開閉機構の構造について説明する。当該説明にあっては、消火栓扉を閉鎖した状態(閉鎖位置)の回転式扉開閉機構を示した図6、消火栓扉を90°開放した状態の回転式扉開閉機構を示した図7、及び消火栓扉を180°開放した状態(開放位置)の回転式扉開閉機構を示した図8を参照する。
【0078】
図6図8に示すように、回転式扉開閉機構80は、消火栓扉12に設けられ、消火栓扉12を垂直回り(上下回り)に180°回動させて開閉させるものであれば任意であるが、例えばスライド穴90が形成された基台82、第1リンク84、第2リンク86及びスライド軸部92が一端に設けられたガイドリンク88で構成される。また、緩衝装置として、回転式扉開閉機構80に対してダンパー94が設けられている。
【0079】
基台82は化粧枠13aに形成された扉開口15の下部内側に位置するように化粧枠13aに固定され、上部に第1リンク84の一端を軸部83で軸支している。第1リンク84の他端には第2リンク86の一端が軸部85で軸支され、第2リンク86の他端は軸部87により消火栓扉12の下部内側に軸支されている。ここで、第1リンク84と第2リンク86は回転式扉開閉機構の主要部となる2節リンクを構成している。尚、第1リンク84は軸部83に設けられた巻きばね等により、図6図8のように右側面から見て右回りに付勢されている。
【0080】
基台82の側面には前方に向けて斜め上向きにスライド穴90が形成され、スライド穴90にはガイドリンク88の一端に設けたスライド軸部92が摺動自在に配置され、ガイドリンク88の他端は軸部89により消火栓扉12の下端部内側(軸部87よりも下側)に軸支されている。ガイドリンク88は、第1リンク84と第2リンク86で構成される2節リンクの動きを規制してスライド穴90の大きさで定まる所定範囲で消火栓扉12を回動させる動きを回動の中心となって作り出すものである。
【0081】
ダンパー94は、シリンダ側となる一端が固定部95によりホース収納フレーム等に固定され、ロッド側となる他端が軸部93により第1リンク84の中間に軸支され、消火栓扉12の開放に伴う移動速度を抑えて消火栓扉12を滑らかに開放位置まで移動させて消火栓扉12が開放位置で停止する際の衝撃を抑える。
【0082】
消火栓扉12を開放するためにハンドルを手前に引いてロックを外すと、図7に示すように、回転式扉開閉機構80の第1リンク84と第2リンク86により消火栓扉12は前方に付勢されるが、このとき消火栓扉12の下端部はガイドリンク88により前方への移動が規制されるため、消火栓扉12は下端部を中心に下向きに回転する。
【0083】
そして、下向きに回転する消火栓扉12は、扉開口15の下側の化粧枠13bの前面に当接する位置に向けて180°回転して化粧枠13bの前面に当接する位置(開放位置)で停止することで、消火栓扉12により閉鎖されていた扉開口15の下側を全開とし、開放位置にある消火栓扉12は、図8に示すように、扉開口15の下端より下側の筐体前面及び架台30の前面に相対し監視員通路35の路面に対して垂直な位置となる。
【0084】
このため、消火栓扉12の開放位置で監視員通路35の路面上(消火栓装置から前方)への突出量は消火栓扉12の厚み(前後方向の幅)に過ぎず、実質的に突出量はないから、開放した消火栓扉12により監視員通路35の通行が妨げられることはない。
【0085】
(b3.回転式扉開閉機構の他の実施形態)
次に、消火栓扉の回転式扉開閉機構の他の実施形態について説明する。当該説明にあっては、消火栓扉の回転式扉開閉機構の他の実施形態を示した図9を参照する。尚、図9(A)は消火栓扉を閉鎖した状態(閉鎖位置)を示し、図9(B)は消火栓扉を180°開放した状態(開放位置)を示す。
【0086】
図9に示すように、本実施形態では、消火栓扉12の閉鎖位置と開放位置に対応した筐体前面に、消火器扉12の縦幅、横幅及び厚みに対応した窪みとなる扉収納凹部1510が形成されている。
【0087】
本実施形態の回転式扉開閉機構80の扉回転軸96は、扉開口15の下端部(閉鎖位置にある消火栓扉12の下端部)に対応した扉収納凹部1510の内側面に設けられ、閉鎖位置にある消火栓扉12の下端部を回動自在に軸支するものである。また、ダンパー94は、シリンダ側となる一端が固定部95によりホース収納フレーム等に固定され、ロッド側となる他端が軸部93により消火栓扉12の下端部内側に設けられたダンパー取付部98に軸支されている。また、ダンパー取付部98は、消火栓扉12を滑らかに180°回転させて開放させるために、後側(筐体内部側)が前側よりも上方に位置するように所定の角度で傾けて設けられ、消火栓扉12の開放に際しダンパー94により下向きの力が働くようにしている。
【0088】
消火栓扉12を開放するためにハンドルを手前に引いてロックを外すと、図9(B)に示すように、消火栓扉12は扉回転軸96を中心に下向きに180°回転して扉収納凹部1510の開放位置に対応した下側に収納され、扉開口15の下端より下側の筐体前面及び架台30の前面に相対し監視員通路35の路面に対して垂直又は略垂直な位置となる。
【0089】
本実施形態の回転式扉開閉機構80は、図6乃至図8のリンク構造に対して極めて簡単な構造であり、消火栓扉12の閉鎖位置と開放位置に対応して筐体前面に扉収納凹部1510を形成する必要はあるが、消火栓装置全体として見れば構造が簡単でありコストも低減可能である。
【0090】
(b4.ノズルと消火栓弁開閉レバーの消火栓扉裏面への配置)
次に、ノズルと消火栓弁開閉レバーの消火栓扉裏面への配置について説明する。当該説明にあっては、再び図4及び図5を参照する。
【0091】
図4及び図5に示すように、消火栓扉12の裏面にはホースガイド66とノズルホルダー65が配置され、筐体内に配置したホース収納フレーム62のホース取出口63から引き出した消火用ホース60をホースガイド66に通して引き出し、ホースガイド66から引き出した消火用ホース60の先端に連結したノズル64をノズルホルダー65に着脱自在に保持している。
【0092】
また、消火栓弁54の開閉操作部として機能する消火栓弁開閉レバー68を、消火栓扉12の裏面に配置した操作ボックス70に設けている。消火栓弁開閉レバー68は操作ボックス70に設けられた公知のワイヤーリンク機構により消火栓弁54に設けられた連動ボックス55に連結される。消火栓弁開閉レバー68は、通常時には図示の閉位置にあり、下向きに押し下げる操作により開位置となり、これに連動して消火栓弁54が開放される。尚、操作ボックス70にはポンプ起動連動スイッチ74が設けられ、消火栓弁開閉レバー68を開位置に操作した場合にオンしてポンプ起動信号を防災受信盤へ送信する。また、操作ボックス70の左側には、引き出された消火用ホース60が操作ボックス70に当たりながら擦れることによる損耗を防止するため、ホースガード71が起立されている。
【0093】
ノズル64と消火栓弁開閉レバー68を消火栓扉12の裏面に配置した場合には、消火栓扉12を開放すると、図5に示すように、消火栓扉12は扉開口15の下端より下側の筐体前面及び架台30の前面に監視員通路35の路面に対して垂直に位置し、ノズル64と消火栓弁開閉レバー68は監視員通路35の路面に近い低い位置となることから、監視員通路35の路面に対して低い位置に路面がある道路側からのノズル64の取出しと消火栓弁開閉レバー68の操作がより行い易くなる。
【0094】
(b5.ノズルと消火栓弁開閉レバーの筐体内配置)
次に、ノズルと消火栓弁開閉レバーの筐体内配置について説明する。当該説明にあっては、筐体内にノズルと消火栓弁開閉レバーを配置した第1実施形態の変形例を示した図10を参照する。
【0095】
図10に示すように、消火栓扉12の開放により扉開口15の開放される領域に対応した第1筐体11aの内部にノズルホルダー65を配置し、ホース収納フレーム62のホース取出口63から取り出した消火用ホース60の先端に連結したノズル64をノズルホルダー65に着脱自在に保持している。
【0096】
また、消火栓弁54の開閉操作部として機能する消火栓弁開閉レバー68を、消火栓弁54の操作軸に直結して前面側に配置した操作パネルから取り出している。消火栓弁開閉レバー68は、通常時には操作パネルの閉止位置にあり、操作パネルの放水位置まで下向きに押し下げると消火栓弁54が開放される。
【0097】
本実施形態にあっては、ノズル64と消火栓弁開閉レバー68を消火栓扉12の裏面に配置した場合のように、道路側からの操作は容易とはならないが、ノズル64と消火栓弁開閉レバー68は監視員通路35に露出することがないから、通路幅が狭い監視員通路であってもノズル64と消火栓弁開閉レバー68が監視員通路の通行を妨げることなく、ノズル64と消火栓弁開閉レバー68を操作することができる。
【0098】
[c.スライド式扉開閉機構を備えた第2実施形態の消火栓装置]
続いて、第2実施形態となるスライド式扉開閉機構を備えた消火栓装置について説明する。当該説明にあっては、監視員通路の路面上に設置した第2実施形態の消火栓装置を正面(前面)から示した図11、消火栓扉をスライド開放した消火栓装置を正面(前面)から示した図12を参照する。
【0099】
(c1.消火栓装置及び扉開閉機構の概要)
本実施形態の消火栓扉12は、図11及び図12に示すように、第1筐体11aの扉開口の下側を閉鎖する位置(閉鎖位置)と、第1筐体11aの扉開口の下側を開放した位置(開放位置)との間で、筐体11aの前面に沿って上下に移動してスライド式扉開閉機構100により開閉される。また、第1筐体11aの扉開口の下側を開放した場合に、消火栓扉12は、図12に示すように、扉開口の下端より下側の筐体前面及び架台30の前面に相対し監視員通路35の路面に対して垂直な位置となる。
【0100】
また、本実施形態の消火栓装置10は、消火栓扉12を筐体11aの前面に沿って下方に移動させて開放することを可能とするために、回転式扉開閉機構の他の実施形態と示した図9と同様に、消火栓扉12の閉鎖位置と開放位置に対応した筐体前面に、消火栓扉12の縦幅、横幅及び厚みに対応した窪みとなる扉収納凹部1510を形成し、扉収納凹部1510の範囲に対応して消火栓扉12を上下に移動させるようにしている。
【0101】
また、第1実施形態となる回転式扉開閉機構を備えた消火栓装置と同様に、架台30の高さをH1、化粧枠13bの下端から扉開口15の下端までの高さをH2、消火栓扉12の縦幅(上下方向の幅)をH3とすると、
(H1+H2)≧H3
の関係となるようにH1~H3が設定される。
【0102】
また、本実施形態の消火栓装置10にあっては、ノズルと消火栓弁開閉レバーの配置は、図10に示した筐体内配置と同様であり、消火栓扉12の開放により扉開口15の開放される領域に対応した第1筐体11aの内部に配置したノズルホルダー65に、ホース収納フレーム62のホース取出口63から取り出した消火用ホース60の先端に連結したノズル64を着脱自在に保持し、消火栓弁54の開閉操作部として機能する消火栓弁開閉レバー68を、消火栓弁54の操作軸に直結して前面側に配置した操作パネルから取り出している。
【0103】
本実施形態によれば、消火栓扉12がスライド式扉開閉機構100によって扉開口の下端より下側の筐体前面及び架台30の前面に相対する位置まで下降して開放するため、消火栓扉12の開放により扉開口15の開放される領域が大きくすることができ、道路利用者による扉開口15を介したノズル64の取出し及び消火栓弁開閉レバー68の操作を簡単且つ容易に行えることを可能とする。
【0104】
尚、消火栓装置10における他の部分については、第1実施形態の消火栓装置10と基本的に同様であるから、その説明は省略する。
【0105】
(c2.スライド式扉開閉機構の構造)
次に、消火栓扉のスライド式扉開閉機構の構造について説明する。当該説明にあっては、スライド式開閉構造を取り出して示した図13及び消火栓装置の内部構造を右側面から示した図14を参照する。尚、図13(A)はスライド式扉開閉機構の平面(上面)断面を示し、図13(B)は正面(前面)から見た部分断面を示し、図13(C)は右側面から見た断面を示す。また、図14(A)は保守扉及び消火栓扉を閉鎖した状態(閉鎖位置)を示し、図14(B)は保守扉及び消火栓扉を開放した状態(開放位置)を示す。
【0106】
図13に示すように、スライド式扉開閉機構100は、ローラ104、ローラガイド102で構成され、ローラ104は、消火栓扉12の側端上部に軸支される。ローラガイド102は、消火器扉12の閉鎖位置と開放位置におけるローラ104の位置に対応して筐体側面の内部に配置され、上面から見て消火栓扉12に相対する内側面側を開放したコ字形の断面を持ち、消火栓扉12の側端上部に軸支されたローラ104を案内移動させるものである。
【0107】
また、ローラ104の直径をDとして、ローラガイド102のローラ104を案内移動させる内部通路の縦幅(上下方向の幅)を、消火栓扉12の縦幅H3にローラ104の直径Dを加えたH3+Dとすることで、消火栓扉12の開放位置と閉鎖位置との間の移動量となる消火栓扉12の縦幅H3で消火栓扉12を移動させることができる。
【0108】
また、図14に示すように、ダンパー94は、シリンダ側となる一端が固定部95により筐体11aの内部後方の上部等に固定され、ロッド側となる他端が軸部93により消火栓扉12の上端部内側に設けられたダンパー取付部98に軸支されている。また、ダンパー94は、消火栓扉12の下降する移動速度を抑えて、消火栓扉12が開放位置で停止する際の衝撃を抑える。
【0109】
消火栓扉12を開放するためにハンドルを手前に引いてロックを外すと、消火栓扉12の自重によりローラ104がローラガイド102の内部通路を下方に向けて移動することで、消火栓扉12が扉収納凹部1510の下方に移動し、図14(B)に示すように、扉開口15の下端より下側の筐体前面及び架台30の前面に相対し監視員通路35の路面に対して垂直な位置に停止する。
【0110】
[d.上下に分割された消火栓扉とスライド式扉開閉機構を備えた第3実施形態の消火栓装置]
続いて、第3実施形態となる上下に分割された消火栓扉とスライド式扉開閉機構を備えた消火栓装置について説明する。当該説明にあっては、監視員通路の路面上に設置した第3実施形態の消火栓装置を正面(前面)から示した図15、消火栓扉をスライド開放した消火栓装置を正面(前面)から示した図16、及び消火栓装置の内部構造を右側面から示した図17を参照する。尚、図17(A)は保守扉及び消火栓扉を閉鎖した状態(閉鎖位置)を示し、図17(B)は保守扉及び消火栓扉を開放した状態(開放位置)を示す。
【0111】
本実施形態の消火栓扉12は、図15に示すように、垂直方向(上下方向)で上扉1210と下扉1220に分割され、上扉1210と下扉1220とは蝶番112により屈曲可能に連結されている。また、上扉1210と下扉1220に分割された消火栓扉12は、スライド式扉開閉機構100により開閉され、スライド式扉開閉機構100は、基本的に図13に示した第2実施形態と同様であるが、ローラは上扉1210の側端上部に軸支される。
【0112】
ここで、図17(A)に示すように、扉開口15を閉鎖する位置に配置された消火栓扉12の上扉1210に対してはダンパー94が配置されている。本実施形態では、消火栓扉12を開く場合の移動量がダンパー94のロッドの伸展長さより大きいことから、ダンパー94はスライドアーム106を介して筐体11aの内部後端の上部に固定されている。スライドアーム106は上端を固定軸部110により筐体11a側に回動可能に軸支し、スライドアーム106のスライド穴(長穴)にダンパー94の上端をスライド軸部108により摺動自在に配置している。図17(B)に示すように消火栓扉12を開放した場合、ダンパー94のスライド軸部108はスライドアーム106のスライド穴に沿って下降した後に停止し、続いて、ダンパー94のシリンダからロッドが下方に伸展する動作が行われる。
【0113】
尚、消火栓装置10における他の部分については、第2実施形態となる消火栓装置10と基本的に同様であるから、その説明は省略する。
【0114】
図15及び図17(A)に示すように、閉鎖位置にある消火栓扉12を開放するために上扉1210のハンドルを手前に引いてロックを外すと、上扉1210及び下扉1220の自重によりローラがローラガイドの内部通路を下方に向けて移動することで、上扉1210及び下扉1220が扉収納凹部1510の下方に移動する。下扉1220の下端が監視員通路35の路面に当接する位置まで上扉1210及び下扉1220が移動すると、下扉1220は蝶番112を中心に上扉に対して屈曲し監視員通路35の路面に沿って前方へ移動し、図16及び図17(B)に示すように、上扉1210が下端より下側の筐体前面及び架台30の前面に相対し監視員通路35の路面に対して垂直な位置であり、下扉1220が監視員通路35の路面上に水平な位置に載置された位置まで移動して停止する。
【0115】
ここで、下扉1220の下端部及び上端部の裏面側には車輪114,116が配置され、下扉1210より下側の化粧枠13aの前面両端部及び中央部の3箇所に傾斜ガイド118が設けられている。傾斜ガイド118は、下扉1220が監視員通路の路面に当接した際に消火栓扉12の開放が停止してしまう事態を避け、下扉1220の下端が監視員通路35の路面に当接する際に、下端部に配置された車輪114により監視員通路35の路面に着地することをサポートするものである。そして、下扉1220は、車輪114の着地後には、車輪114,116により監視員通路35の路面を滑らかに前方へ移動できる。また、下扉1220の上端部の裏面側に配置された車輪116の位置は、下扉1220が監視員通路35の路面に対して水平となった際に車輪116が監視員通路に着地する位置とする。尚、車輪114,116に限定されず、そり等の摺動部材を配置してもよい。
【0116】
また、車輪114、116があるものの、スライド式扉開閉機構100のローラはローラガイドの内部通路の範囲でしか移動できないため、下扉1220は開放位置から更に前方に移動することはなく、また後方へ移動するには上扉1210を持ち上げて上方に移動させる必要があるため、下扉1220の上に人が乗ったとしても下扉1220が移動することがなく、監視員通路35を通過する避難者等が安全に下扉1220の上に乗りながら通ることを可能とし、下扉1220によって監視員通路35の通行が妨げられない。
【0117】
また、図15に示すように、上扉1210と下扉1220に分割された消火栓扉112の縦幅H3は、上扉1210の縦幅H31と下扉1220の縦幅H32の合計であり、架台30の高さをH1、化粧枠13bの下端から扉開口15の下端までの高さをH2とすると、
(H1+H2)≧H31
の関係となれば、本実施形態では消火栓扉12を開放した際に扉開口15の消火栓扉12が配置された領域を開放することができ、他の実施形態のように消火栓扉12の縦幅H3を架台30の高さH1と化粧枠13bの下端から扉開口15の下端までの高さH2の合計以下に収める必要がないから、扉開口15の縦幅(消火栓扉の縦幅H3)を更に拡大することができる。
【0118】
また、扉開口15の縦幅(消火栓扉の縦幅H3)を拡大するにあたり、下扉1220の縦幅H32も拡大することになるが、下扉1220の縦幅H32は監視員通路35の通路幅(前後方向の幅)を超えると、消火栓扉12を開放した際に、下扉1220の一部が道路側に突出することになるため、下扉1220の縦幅H32は監視員通路35の通路幅を超えない幅とするのが望ましい。
【0119】
そして、図16に示すように、消火栓扉12を開放した際に、消火栓扉12の開放により扉開口15の開放される領域が拡大されると、道路利用者による扉開口15を介したノズル64の取出し及び消火栓弁開閉レバー68の操作が行い易くなるだけでなく、消火栓装置12の使用後の復旧時に、ホース収納フレーム62から引き出した消火用ホース60を巻き戻す作業等の復旧作業も容易となる。
【0120】
[e.本発明の変形例]
本発明による消火栓装置の変形例について説明する。本発明の消火栓装置は、上記の実施形態以外に、以下の変形を含むものである。
【0121】
(壁掛け構造により設置された消火栓装置)
上記の実施形態は、監視員通路の路面上に架台を設置し、設置された架台に消火栓装置を取付固定する据置き構造により設置された消火栓装置を例にとるものであったが、これに限定されず、トンネル壁面に架台を設置し、設置された架台に消火栓装置を取付固定する壁掛け構造により設置された消火栓装置についても、回転式扉開閉機構80を備えた第1実施形態及びスライド式扉開閉機構100を備えた第2実施形態が適用できる。また、壁掛け構造により設置された消火栓装置にした場合には、監視員通路の路面から架台の下端までの高さ分だけ消火栓扉12の縦幅H3を更に大きく設定する猶予がある。
【0122】
また、消火栓扉12の縦幅H3が、架台30の高さ(H1)と化粧枠13bの下端から扉開口15の下端までの高さ(H2)と監視員通路の路面から架台の下端までの高さの合計を超える場合には、壁掛け構造により設置された消火栓装置に、上下に分割された消火栓扉とスライド式扉開閉機構を備えた第3実施形態を適用させても良い。
【0123】
(消火栓装置の筐体)
上記の実施形態は、第2筐体に電装機器を配置し、第3筐体に消火器を収納しているが、第2筐体と第3筐体を一つの筐体としても良い。
【0124】
(トンネル壁面が円形断面以外の場合)
上記の実施形態におけるトンネル断面形状は円形となっているが、トンネル断面が円形以外、例えば、三心円等の場合には、トンネル断面形状の水平方向の幅が最も広い位置の水平線を、上記の説明におけるトンネル中心線SL1とすることで、本発明を適用することができる。
【0125】
(薄型化に対応した消火栓装置の構造)
上記の実施形態における消火栓装置では、消火栓装置の薄型化に対応して第1筐体及び第2筐体の横幅(左右方向)を広くして薄型化により減少した分の内部容積を確保しているが、第1筐体及び第2筐体の縦幅(上下方向)を広くして薄型化により減少した分の内部容積を確保するようにしても良い。
【0126】
(その他)
また、本発明は、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、さらに上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0127】
10:消火栓装置
11a:第1筐体
11b:第2筐体
11c:第3筐体
12:消火栓扉
1210:上扉
1220:下扉
13a,13b,13c:化粧枠
14:保守扉
15:扉開口
1510:扉収納凹部
16:消火器扉
17:覗き窓
18:電装扉
20:補助扉
22:赤色表示灯
24:発信機
25:応答ランプ
26a,26b:端子箱
27:トンネル壁面
28:電話ジャック
30:架台
35:監視員通路
36:道路
50a:バルブ類収納部
50b:ホース収納部
51:給水配管
52:給水栓
54:消火栓弁
55:連動ボックス
56:自動調圧弁
60:消火用ホース
62:ホース収納フレーム
63:ホース取出口
64:ノズル
65:ノズルホルダー
66:ホースガイド
68:消火栓弁開閉レバー
70:操作ボックス
71:ホースガード
72:消火器
74:ポンプ起動連動スイッチ
76:ポンプ起動スイッチ
80:回転式扉開閉機構
82:基台
83,85,87,89,93:軸部
84:第1リンク
86:第2リンク
88:ガイドリンク
90:スライド穴
92:スライド軸部
94:ダンパー
95:固定部
96:扉回転軸
98:ダンパー取付部
100:スライド式扉開閉機構
102:ローラガイド
104:ローラ
112:蝶番
114,116:車輪
118:傾斜ガイド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
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図12
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図17