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特開2024-48500リードフレームおよびリードフレームインサート成形品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048500
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】リードフレームおよびリードフレームインサート成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01H 13/02 20060101AFI20240402BHJP
【FI】
H01H13/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154443
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 裕之
(72)【発明者】
【氏名】篠原 賢二
(72)【発明者】
【氏名】米原 博人
【テーマコード(参考)】
5G206
【Fターム(参考)】
5G206AS01K
5G206AS01N
5G206AS01P
5G206AS05K
5G206AS05P
5G206AS52P
5G206ES04K
5G206ES04P
5G206GS21
5G206KS03
(57)【要約】
【課題】共用のリードフレームで、タイプの異なる電気回路を実現する。
【解決手段】第1および第2フレーム13,14と、固定接点片15とを備えるリードフレーム10である。固定接点片15は導電接続部16を介して第1フレーム13と一体形成されている。第1フレーム13および固定接点片15と第2フレーム14とは、抵抗素子を取り付け可能な取付け部13a,14a,14b,15bを有し、第1フレーム13と固定接点片15とは、抵抗素子を取り付け可能な取付け部13b,15aを有している。各取付け部への抵抗素子の取り付けの有無と、導電接続部16の切断の有無との組み合わせにより、異なるタイプの電気回路を構成する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部の回路に接続される第1および第2端子部とそれぞれ一体形成される第1および第2フレームと、固定接点片と、を備え、当該固定接点片と当該第2フレームとが、可動片を介して接触または非接触状態となることで、電気的な接続状態が切り替わる、スイッチ装置の電気回路を構成するリードフレームであって、
上記固定接点片は、導電接続部を介して上記第1フレームと一体形成されており、
上記第1フレームおよび上記固定接点片の少なくとも一方と、上記第2フレームとは、両者を電気的に接続する抵抗素子を取り付け可能な第1取付け部をそれぞれ有し、
上記第1フレームと上記固定接点片とは、両者を電気的に接続する上記抵抗素子を取り付け可能な第2取付け部をそれぞれ有し、
上記各取付け部への上記抵抗素子の取り付けの有無と、上記導電接続部の切断の有無との組み合わせにより、上記抵抗素子を含まない電気回路、上記抵抗素子を含む直列の電気回路、または、上記抵抗素子を含む並列の電気回路を構成することを特徴とするリードフレーム。
【請求項2】
上記請求項1に記載のリードフレームにおいて、
上記第1および第2フレーム並びに上記固定接点片は、有底筒状の樹脂ケースの底部から上記第1および第2端子部が筒軸方向に並んで突出するように、インサート成形によって当該樹脂ケースと一体化されるものであり、
上記固定接点片は、上記第1および第2端子部と同じ方向に延びる突起部を有しており、
上記突起部は、上記樹脂ケースと一体化された状態で上記底部から突出する先端部が、接続部を介して上記第1および第2端子部と一体形成されていることを特徴とするリードフレーム。
【請求項3】
上記請求項2に記載のリードフレームにおいて、
上記抵抗素子を含む電気回路を構成する場合には、上記抵抗素子は、インサート成形によって上記樹脂ケースと一体化されることを特徴とするリードフレーム。
【請求項4】
上記請求項1に記載のリードフレームにおいて、
上記第1および第2フレーム並びに上記固定接点片における、電気的な接点を構成する部位と、上記第1および第2取付け部との間には、表裏両面にセレーション溝が形成されていることを特徴とするリードフレーム。
【請求項5】
第1端子部と一体形成される第1フレームと、当該第1端子部と同じ方向に並んで延びる第2端子部と一体形成される第2フレームと、導電接続部を介して当該第1フレームと一体形成されるとともに、当該第1および第2端子部と同じ方向に延び且つ先端部が接続部を介して当該第1および第2端子部と一体形成される突起部を有する固定接点片と、を備えるリードフレームが、有底筒状の樹脂ケースの底部から当該第1および第2端子部が筒軸方向に並んで突出するように、インサート成形によって当該樹脂ケースと一体化されたリードフレームインサート成形品の製造方法であって、
導電板から上記リードフレームを形成するプレス工程と、
上記プレス工程にて形成された上記リードフレームにおける上記導電接続部を切断する第1切断工程と、
上記リードフレームに抵抗素子を装着する装着工程と、
上記第1および第2端子部側で上記リードフレームの位置決めを行いつつ、上記装着工程にて装着された上記抵抗素子を、上記第1および第2フレーム並びに上記固定接点片と共にインサート成形によって樹脂封止して、上記第1および第2端子部並びに上記突起部の先端部が上記底部から突出するように、上記樹脂ケースを成形する樹脂封止工程と、
上記接続部を切断して、上記突起部の先端部を上記第1および第2端子部から切り離す第2切断工程と、を含むことを特徴とするリードフレームインサート成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチ装置の電気回路を構成するリードフレーム、および、当該リードフレームをインサート成形によってスイッチ装置の樹脂ケースと一体化したリードフレームインサート成形品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、外部の回路に接続して用いられる、電気回路を構成するリードフレームを内蔵したスイッチ装置が知られている。かかるリードフレームは、COM端子やNO端子(またはNC端子)を構成する部位や、固定接点を構成する部位等を含む複数のフレームを備えているのが一般的である。
【0003】
例えば特許文献1には、抵抗素子を内蔵したスイッチの小型化を図るべく、第1端子と上下に並んで配置され電気的に接続される固定接点片と、上下に移動する操作子と、第2端子に電気的に接続され、操作子の移動に伴って固定接点片に接触する作動子と、作動子とベースとの間の領域に配置され、固定接点片および作動子からなる接点部と並列に電気的に接続される第1抵抗素子と、を備えたスイッチが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6906183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のようなスイッチ装置には、上記特許文献1のもののように、抵抗素子を含む並列の電気回路を有するタイプのものや、抵抗素子を含む直列の電気回路を有するタイプのものの他、抵抗素子を含まないタイプのものも存在する。
【0006】
もっとも、かかる異なるタイプのスイッチ装置(電気回路)を実現するには、各タイプに対応する異なるレイアウト(形状)のリードフレームが必要となる。そうして、リードフレームの形状が異なる場合には、スイッチ装置の性能への影響を評価するために、形状が異なるリードフレームそれぞれについて設計を行う必要がある上、異なる金型が必要となることから、コストの増大を招くという問題がある。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、共用のリードフレームで、タイプの異なる電気回路を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本開示の一例に係るリードフレームは、外部の回路に接続される第1および第2端子部とそれぞれ一体形成される第1および第2フレームと、固定接点片と、を備え、当該固定接点片と当該第2フレームとが、可動片を介して接触または非接触状態となることで、電気的な接続状態が切り替わる、スイッチ装置の電気回路を構成するリードフレームであって、上記固定接点片は、導電接続部を介して上記第1フレームと一体形成されており、上記第1フレームおよび上記固定接点片の少なくとも一方と、上記第2フレームとは、両者を電気的に接続する抵抗素子を取り付け可能な第1取付け部をそれぞれ有し、上記第1フレームと上記固定接点片とは、両者を電気的に接続する上記抵抗素子を取り付け可能な第2取付け部をそれぞれ有し、上記各取付け部への上記抵抗素子の取り付けの有無と、上記導電接続部の切断の有無との組み合わせにより、上記抵抗素子を含まない電気回路、上記抵抗素子を含む直列の電気回路、または、上記抵抗素子を含む並列の電気回路を構成することを特徴とするものである。
【0009】
この構成によれば、例えば(1)導電接続部を残し(切断無し)且つ抵抗素子を取り付けない(取り付け無し)場合には、[第1端子部、第1フレーム、導電接続部、固定接点片、可動片、第2フレームおよび第2端子部]を電流が流れる、抵抗素子を含まない電気回路が構成される。
【0010】
また、例えば(2)導電接続部を残し(切断無し)且つ第1取付け部に抵抗素子を取り付けた(取り付け有り)場合には、[第1端子部、第1フレーム、導電接続部、固定接点片、可動片、第2フレームおよび第2端子部]を電流が流れるとともに、これと並列に、[第1端子部、第1フレーム(または第1フレーム、導電接続部および固定接点片)、抵抗素子、第2フレームおよび第2端子部]を電流が流れる、1つの抵抗素子を含む並列の電気回路が構成される。
【0011】
さらに、例えば(3)導電接続部を切断し(切断有り)且つ第2取付け部に抵抗素子を取り付けた(取り付け有り)場合には、[第1端子部、第1フレーム、抵抗素子、固定接点片、可動片、第2フレームおよび第2端子部]を電流が流れる、抵抗素子を含む直列の電気回路が構成される。
【0012】
また、例えば(4)導電接続部を切断し(切断有り)且つ第1および第2取付け部に抵抗素子を取り付けた(取り付け有り)場合には、[第1端子部、第1フレーム、抵抗素子、固定接点片、可動片、第2フレームおよび第2端子部]を電流が流れるとともに、これと並列に、[第1端子部、第1フレーム、抵抗素子、第2フレームおよび第2端子部]を電流が流れる、2つの抵抗素子を含む並列の電気回路が構成される。
【0013】
このように、本開示の一例に係るリードフレームでは、各取付け部への抵抗素子の取り付けの有無と、導電接続部の切断の有無との組み合わせにより、上記(1)~(4)に例示するような異なるタイプの電気回路を構成することができる。
【0014】
しかも、異なるタイプの電気回路を構成する場合には、抵抗素子の取り付けと、導電接続部の切断とを行うだけなので、共用のリードフレームを用いて、タイプの異なる電気回路を実現することができ、これにより、設計の共通化および金型の共用が可能となることから、コストの増大を抑えることができる。
【0015】
また、上記リードフレームでは、上記第1および第2フレーム並びに上記固定接点片は、有底筒状の樹脂ケースの底部から上記第1および第2端子部が筒軸方向に並んで突出するように、インサート成形によって当該樹脂ケースと一体化されるものであり、上記固定接点片は、上記第1および第2端子部と同じ方向に延びる突起部を有しており、上記突起部は、上記樹脂ケースと一体化された状態で上記底部から突出する先端部が、接続部を介して上記第1および第2端子部と一体形成されていてもよい。
【0016】
リードフレームをインサート成形によって有底筒状の樹脂ケースと一体化する際には、インサート成形後に樹脂ケースの底部から筒軸方向に突出する第1および第2端子部側で位置決めを行うのが一般的であるが、このような位置決め手法では、導電接続部を切断した場合には、固定接点片と第1フレームとの縁が切れてしまうため、固定接点片の位置決めが困難になるケースが想定される。
【0017】
この点、上記構成によれば、固定接点片から延びる突起部の先端部が、接続部を介して第1および第2端子部と一体形成されていることから、導電接続部を切断した場合でも、第1および第2端子部側で位置決めを行うことによって、固定接点片の位置決めを容易に行うことができる。
【0018】
しかも、接続部を介して第1および第2端子部と一体形成されている突起部の先端部は、樹脂ケースと一体化された状態で底部から突出していることから、インサート成形後に接続部を切断することで、突起部を介して第1端子部と第2端子部との間に電流が流れるのを容易に防ぐことができる。
【0019】
さらに、上記リードフレームでは、上記抵抗素子を含む電気回路を構成する場合には、上記抵抗素子は、インサート成形によって上記樹脂ケースと一体化されてもよい。
【0020】
この構成によれば、インサート成形後に第1および/または第2取付け部に抵抗素子を取り付ける場合のように、抵抗素子の半田付けの熱による、樹脂ケースの溶融等のおそれがないので、スイッチ装置の組立性を向上させることができる。加えて、抵抗素子が露出しないので、抵抗素子における電極部等の腐食や劣化を抑制することができる。
【0021】
また、上記リードフレームでは、上記第1および第2フレーム並びに上記固定接点片における、電気的な接点を構成する部位と、上記第1および第2取付け部との間には、表裏両面にセレーション溝が形成されていてもよい。
【0022】
この構成によれば、第1および第2取付け部にクリーム半田を塗布する場合に、塗布した半田の表面張力により、半田がセレーション溝を越え難くなるので、電気的な接点を構成する部位へのクリーム半田の流出を抑えることができる。加えて、セレーション溝によって樹脂と金属との密着性を高めて、シール性の向上を期待することができる。
【0023】
さらに、本開示の一例に係るリードフレームインサート成形品の製造方法は、第1端子部と一体形成される第1フレームと、当該第1端子部と同じ方向に並んで延びる第2端子部と一体形成される第2フレームと、導電接続部を介して当該第1フレームと一体形成されるとともに、当該第1および第2端子部と同じ方向に延び且つ先端部が接続部を介して当該第1および第2端子部と一体形成される突起部を有する固定接点片と、を備えるリードフレームが、有底筒状の樹脂ケースの底部から当該第1および第2端子部が筒軸方向に並んで突出するように、インサート成形によって当該樹脂ケースと一体化されたリードフレームインサート成形品の製造方法であって、導電板から上記リードフレームを形成するプレス工程と、上記プレス工程にて形成された上記リードフレームにおける上記導電接続部を切断する第1切断工程と、上記リードフレームに抵抗素子を装着する装着工程と、上記第1および第2端子部側で上記リードフレームの位置決めを行いつつ、上記装着工程にて装着された上記抵抗素子を、上記第1および第2フレーム並びに上記固定接点片と共にインサート成形によって樹脂封止して、上記第1および第2端子部並びに上記突起部の先端部が上記底部から突出するように、上記樹脂ケースを成形する樹脂封止工程と、上記接続部を切断して、上記突起部の先端部を上記第1および第2端子部から切り離す第2切断工程と、を含むことを特徴とするものである。
【0024】
この構成によれば、導電接続部を切断した場合でも、固定接点片の位置決めを行いつつ、異なるタイプの電気回路を構成可能なリードフレームが樹脂ケースと一体化されたリードフレームインサート成形品を容易に製造することができる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、本発明によれば、共用のリードフレームで、タイプの異なる電気回路を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本開示の一実施形態に係るリードフレームを備えるスイッチ装置を模式的に示す斜視図である。
図2】スイッチ装置を模式的に示す分解斜視図である。
図3図1のIII-III線の矢視断面図である。
図4】リードフレームを模式的に示す斜視図であり、同図(a)は導電接続部を残した状態を示し、同図(b)は導電接続部を切断した状態を示している。
図5】可動片の接触構造を模式的に説明する斜視図である。
図6】抵抗素子を含まない電気回路の一例を模式的に示す図であり、同図(a)はリードフレームの斜視図であり、同図(b)は回路図である。
図7】1つの抵抗素子を含む並列の電気回路の一例を模式的に示す図であり、同図(a)はリードフレームの斜視図であり、同図(b)は回路図である。
図8】1つの抵抗素子を含む並列の電気回路の一例を模式的に示す図であり、同図(a)はリードフレームの斜視図であり、同図(b)は回路図である。
図9】1つの抵抗素子を含む直列の電気回路の一例を模式的に示す図であり、同図(a)はリードフレームの斜視図であり、同図(b)は回路図である。
図10】2つの抵抗素子を含む並列の電気回路の一例を模式的に示す図であり、同図(a)はリードフレームの斜視図であり、同図(b)は回路図である。
図11】2つの抵抗素子を含む並列の電気回路の一例を模式的に示す図であり、同図(a)はリードフレームの斜視図であり、同図(b)は回路図である。
図12】リードフレームインサート成形品の半製品の一例を模式的に示す斜視図であり、同図(a)は斜め上方から見た図であり、同図(b)は斜め下方から見た図である。
図13】本開示の一実施形態に係るリードフレームインサート成形品の製造方法を模式的に説明する図である。
図14】リードフレームインサート成形品の製造方法を模式的に説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本開示の一例を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0028】
-スイッチ装置-
図1は、本実施形態に係るリードフレーム10を備えるスイッチ装置1を模式的に示す斜視図であり、図2は、スイッチ装置1を模式的に示す分解斜視図であり、図3は、図1のIII-III線の矢視断面図である。このスイッチ装置1は、例えば車載用のマイクロスイッチとして用いられるものであり、車載のECU(Electronic Control Unit)等の外部の回路に、第1および第2端子部11,12が接続されて、ドアの開閉等を検知するようになっている。
【0029】
なお、以下では、説明の便宜上、図の矢印で示すように、上下方向、前後方向および左右方向を規定するが、これらは、使用時におけるスイッチ装置1の方向を限定するものではない。
【0030】
スイッチ装置1は、図2に示すように、カバー2と、キャップゴム3と、操作子4と、スプリング5と、可動片20と、樹脂ケース30と、リードフレーム10と、を備えている。なお、図2では、リードフレーム10に抵抗素子40,42を取り付けているが、抵抗素子40,42は必ずしも取り付けなくてもよく、また、抵抗素子40,42を取り付ける場合でも、その取付位置は、図2に示す位置に限られない。
【0031】
リードフレーム10は、後で詳述するが、第1端子部11と一体形成される第1フレーム13と、第2端子部12と一体形成される第2フレーム14と、固定接点片15と、を備えていて、第2フレーム14と固定接点片15とが、可動片20を介して接触または非接触状態となることで、スイッチ装置1における、電気的な接続状態が切り替わる電気回路を構成するようになっている。
【0032】
樹脂ケース30は、上下方向と直交する略矩形状のベース(底部)31と、ベース31の長辺から上方に延びる一対の第1竪壁部32と、ベース31の短辺から上方に延びる一対の第2竪壁部33と、を有していて、有底矩形筒状に形成されている。この樹脂ケース30は、図1および図3に示すように、ベース31から第1および第2端子部11,12が筒軸方向(下方)に並んで突出するように、ベース31が第1および第2フレーム13,14並びに固定接点片15とインサート成形によって一体化されている。なお、抵抗素子40,42を取り付ける場合には、抵抗素子40,42も、インサート成形によってベース31と一体化される。
【0033】
ベース31には、図3に示すように、その中央部から上方に延びる円柱状の位置決めボス34が形成されている。また、各第1竪壁部32の内側面には、左右一対のガイド部35が形成されている。さらに、前側の第1竪壁部32の外側面には、スイッチ装置1周辺の車両部材に嵌合可能な一対のピン36が設けられている。また、各第2竪壁部33の外側面には、略楔状の被係合部37が形成されている。
【0034】
スプリング5は、図3に示すように、その下端部の内側に位置決めボス34が挿通されるように、ベース31に取り付けられている。
【0035】
操作子4は、図2に示すように、ベース部4cと、ベース部4cの中央部から上方に延びる軸部4bと、軸部4bの上端に設けられた押しボタン4aと、ベース部4cの長辺から下方に延びて前後方向に対向する一対の被ガイド部4eと、を有している。ベース部4cおよび軸部4bには、図3に示すように、上方に窪む切頭円錐台状の凹部4dが形成されている。また、後側の被ガイド部4eの内側面には、摺動部(図示せず)が形成されている。
【0036】
このように構成された操作子4は、図3に示すように、凹部4dにスプリング5の上端部が収容されるとともに、一対の被ガイド部4eの外側面が、樹脂ケース30の一対の第1竪壁部32の内側面に接触し、且つ、各被ガイド部4eが、各第1竪壁部32の内側面に形成された左右一対のガイド部35によって左右から挟まれるように、樹脂ケース30に取り付けられている。これにより、操作子4は、スプリング5によって常時上方へ付勢されるとともに、各第1竪壁部32の内側面およびガイド部35に沿って、上下方向に真っ直ぐに摺動するようになっている。そうして、スプリング5の付勢力に抗して、押しボタン4aが下方に押し下げられると、操作子4が下方に摺動し、後側の被ガイド部4eの内側面に形成された摺動部が、可動片20の係合突部23(図5参照)を押すことで、可動片20が操作子4の摺動方向に対して略垂直(前側)に揺動し、これにより、固定接点片15に取り付けられている可動片20が第2フレーム14と接触するようになっている。
【0037】
キャップゴム3は、図3に示すように、フランジ部3aが、第1および第2竪壁部32,33の上端部と、カバー2の外周縁部との間に挟まれることで、樹脂ケース30に取り付けられている。このように、キャップゴム3が樹脂ケース30に取り付けられると、キャップゴム3の開口部3bから押しボタン4aが上方に突出するようになっている。キャップゴム3は、樹脂ケース30内への水、ほこり等の異物の侵入を防止するものであり、防水性、防塵性、可撓性等の特性に優れたゴム等の弾性体から形成されていて、操作子4の動きに伴って弾性変形するようになっている。
【0038】
カバー2は、その中央部に円形の開口部2aを有する略矩形枠状に形成されていて、左右方向の両端部から下方に延びる略コ字状の係合部2bを有している。カバー2は、押しボタン4aおよびキャップゴム3が下方から開口部2aに挿入され、且つ、キャップゴム3のフランジ部3aを挟むように、第1および第2竪壁部32,33の上端部に外周縁部が載置された状態で、第2竪壁部33の外側面に形成された被係合部37に係合部2bが係合することで、樹脂ケース30に取り付けられる。このように、有底矩形筒状の樹脂ケース30の解放された上部をカバー2で覆うことで、樹脂ケース30が密閉される。
【0039】
以上のように構成されたスイッチ装置1は、ノーマリーオープン型となっており、例えばドア等が開いた場合に、押しボタン4aが下方に押されるような態様で、一対のピン36を介して車両部材に取り付けられる。それ故、ドア等が開くと、押しボタン4aが下方に押されて、スプリング5が下方に押し縮められ、これに伴って、固定接点片15に固定されている可動片20が前側に揺動し、第2フレーム14と接触することで、第1端子部11と第2端子部12との間に電流が流れ(または電流値が変化し)、これにより、ドア等が開いたことがECU等で検知される。
【0040】
一方、ドア等が閉じると、スプリング5の付勢力により押しボタン4aが上方に押し上げられるとともに、可動片20が元の状態に戻ることで、固定接点片15と第2フレーム14とが非接触状態となり、第1端子部11と第2端子部12との間に電流が流れなくなり(または電流値が変化し)、これにより、ドア等が閉じたことがECU等で検知される。
【0041】
-リードフレーム-
図4は、リードフレーム10,10’を模式的に示す斜視図であり、同図(a)は導電接続部16を残した状態を示し、同図(b)は導電接続部16を切断した状態を示している。リードフレーム10は、金型(図示せず)を用いた打ち抜きプレス加工により、導電板から形成されるものであり、図4(a)に示すように、第1端子部11と、第2端子部12と、第1フレーム13と、第2フレーム14と、固定接点片15と、を備えている。
【0042】
第1端子部11は、第1フレーム13の下端部と一体形成されていて、第1フレーム13の下端部から下方に延びた後、二股に分かれた部位が前側に折り曲げられて、第1フレーム13よりも前方に延びている。第1フレーム13には、抵抗素子40を取り付けるための第1取付け部13aと、抵抗素子42を取り付けるための第2取付け部13bと、が設けられている。また、第1フレーム13には、第2取付け部13bと第1取付け部13a(電気的な接点を構成する部位)との間の部位の表裏両面にセレーション溝13cが形成されている。
【0043】
第2端子部12は、第2フレーム14の下端部と一体形成されていて、第2フレーム14の下端部から下方に延びた後、二股に分かれた部位が前側に折り曲げられて、第2フレーム14よりも前方に延びている。図4(a)に示すように、第2端子部12は第1端子部11と、また、第2フレーム14は第1フレーム13と、それぞれ同一平面で左右に並ぶように形成されている。第2フレーム14は、上端部を前側に折り曲げることで形成された第2固定接点部18を有している。第2フレーム14が前後方向と直交しているのに対し、第2固定接点部18は上下方向と直交するように形成されており、これにより、後述する可動片20の可動接点部24と確実に接触するようになっている。
【0044】
また、第2フレーム14には、抵抗素子40を取り付けるための第1取付け部14aと、抵抗素子41を取り付けるための第1’取付け部14bと、が設けられている。第1取付け部14aは、第1フレーム13の第1取付け部13aと対をなしており、第1取付け部14aと第1取付け部13aとに抵抗素子40を取り付ける(装着する)ことで、第1フレーム13と第2フレーム14とが電気的に接続されるようになっている。さらに、第2フレーム14には、第2固定接点部18(電気的な接点を構成する部位)と第1’取付け部14bとの間の部位、および、第1取付け部14a(電気的な接点を構成する部位)と第1’取付け部14bとの間の部位の表裏両面にセレーション溝14cが形成されている。
【0045】
固定接点片15は、図4(a)に示すように、導電接続部16を介して第1フレーム13と一体形成されている。固定接点片15は、その上端部から略L字状をなして上方に延びる第1固定接点部17を有している。さらに、固定接点片15は、その下端部から下方に延びる突起部19を有している。
【0046】
また、固定接点片15には、抵抗素子41を取り付けるための第1’取付け部15bと、抵抗素子42を取り付けるための第2取付け部15aと、が設けられている。第1’取付け部15bは、第2フレーム14の第1’取付け部14bと対をなしており、第1’取付け部15bと第1’取付け部14bとに抵抗素子41を取り付ける(装着する)ことで、固定接点片15と第2フレーム14とが電気的に接続されるようになっている。また、第2取付け部15aは、第1フレーム13の第2取付け部13bと対をなしており、第2取付け部15aと第2取付け部13bとに抵抗素子42を取り付ける(装着する)ことで、第1フレーム13と固定接点片15とが電気的に接続されるようになっている。さらに、固定接点片15には、第1固定接点部17(電気的な接点を構成する部位)と第2取付け部15aおよび第1’取付け部15bとの間の部位の表裏両面にセレーション溝15cが形成されている。
【0047】
ここで、可動片20について説明する。図5は、可動片20の接触構造を模式的に説明する斜視図である。可動片20は、図5に示すように、取付け部21と、アーム部22と、係合突部23と、可動接点部24と、を有している。取付け部21には、切欠き部21aが形成されており、固定接点片15の第1固定接点部17を切欠き部21aで挟むことで、取付け部21が第1固定接点部17に取り付けられている。アーム部22は、取付け部21の後端部から左側に延びている。係合突部23は、アーム部22の上端部から前方に延びていて、後側の被ガイド部4eの内側面に形成された摺動部と接触している。可動接点部24は、押しボタン4aが下方に押し下げられていない状態では、アーム部22の先端部(左側の端部)から、第2フレーム14の第2固定接点部18の手前まで前方に延びている。
【0048】
以上のように可動片20を構成することで、スプリング5の付勢力に抗して、押しボタン4aが下方に押し下げられると、操作子4が下方に摺動し、摺動部と接触している係合突部23が前方に押され、これにより、アーム部22が前側に揺動し、第2固定接点部18の手前で止まっていた可動接点部24が、図5に示すように、第2固定接点部18に摺動(接触)しながら第2固定接点部18の略真上に至る。このように、可動接点部24が第2固定接点部18と接触することで、固定接点片15(第1固定接点部17)と第2フレーム14(第2固定接点部18)とが、可動片20を介して電気的に接続されるようになっている。
【0049】
一方、スプリング5の付勢力により、操作子4が上方に摺動して元の状態に戻ると、摺動部が係合突部23を前方へ押す力が弱まり(摺動部が係合突部23に接触しているだけの状態に戻り)、これにより、可動片20が元の状態に戻ることで、固定接点片15(第1固定接点部17)と第2フレーム14(第2固定接点部18)とが非接触状態となる。
【0050】
図4(a)と図4(b)とを見比べれば明らかなように、リードフレーム10とリードフレーム10’との違いは、導電接続部16が残存している(リードフレーム10)か、導電接続部16が切断されている(リードフレーム10’)かだけであり、それ故、リードフレーム10とリードフレーム10’とは当然に、同じ金型を用いた打ち抜きプレス加工および折り曲げ加工にて形成することができる。
【0051】
以上のように構成されたリードフレーム10では、以下に説明するように、各取付け部13a,13b,14a,14b,15a,15bへの抵抗素子40,41,42の取り付けの有無と、導電接続部16の切断の有無との組み合わせにより、複数の異なるパターンの電気回路を構成することが可能となっている。
【0052】
-電気回路のパターン-
以下の説明では、第1端子部11および第2端子部12は、ECUなどの外部の回路に電気的に接続されていて、第1端子部11には、第1端子部11から第2端子部12へと電流が流れるように、一定の大きさの電流が供給されているとする。
【0053】
〈電気回路のパターン1〉
図6は、抵抗素子を含まない電気回路の一例を模式的に示す図であり、同図(a)はリードフレーム10の斜視図であり、同図(b)は回路図である。図6(a)に示すように、導電接続部16を残し(切断無し)且つ抵抗素子を取り付けない(取り付け無し)場合には、第1端子部11→第1フレーム13→導電接続部16→固定接点片15→(第1固定接点部17)→可動片20→(第2固定接点部18)→第2フレーム14→第2端子部12の順に電流が流れる、図6(b)に示すような抵抗素子を含まない電気回路が構成される。
【0054】
この場合には、第2端子部12に電流が流れていることをECUが認識することにより、ドア等が開いていることが検知される一方、第2端子部12に電流が流れていないことをECUが認識することにより、ドア等が閉じていることが検知される。
【0055】
〈電気回路のパターン2〉
図7は、1つの抵抗素子40を含む並列の電気回路の一例を模式的に示す図であり、同図(a)はリードフレーム10の斜視図であり、同図(b)は回路図である。図7(a)に示すように、導電接続部16を残し(切断無し)且つ第1取付け部13a,14aに抵抗素子40を取り付けた(取り付け有り)場合には、第1端子部11→第1フレーム13→導電接続部16→固定接点片15→(第1固定接点部17)→可動片20→(第2固定接点部18)→第2フレーム14→第2端子部12の順に電流が流れるとともに、これと並列に、第1端子部11→第1フレーム13→(第1取付け部13a)→抵抗素子40→(第1取付け部14a)→第2フレーム14→第2端子部12の順に電流が流れる、図7(b)に示すような1つの抵抗素子40を含む並列の電気回路が構成される。
【0056】
この場合には、スイッチ装置1がオフでも、抵抗素子40側には電流が流れていることから、第1端子部11と第2端子部12との間の端子間電圧は、抵抗素子40の抵抗値により定まる電圧値(例えばV1)となる。よって、端子間電圧の電圧値V1をECUが認識することにより、ドア等が閉じていることが検知される。
【0057】
一方、スイッチ装置1がオンになると、可動片20側にも電流が流れるため、端子間電圧は、可動片20等の接点抵抗の抵抗値により定まる電圧値(例えばV2(<V1))となる。よって、電圧値V1よりも低い電圧値V2をECUが認識することにより、ドア等が開いていることが検知される。
【0058】
これらに対し、第1端子部11および第2端子部12に接続されている電線が断線した場合には、第1端子部11と第2端子部12との間に電流が流れなくなる。よって、第2端子部12に電流が流れていないことをECUが認識することにより、断線が検知されることになる。
【0059】
〈電気回路のパターン3〉
図8は、1つの抵抗素子41を含む並列の電気回路の一例を模式的に示す図であり、同図(a)はリードフレーム10の斜視図であり、同図(b)は回路図である。図8(a)に示すように、導電接続部16を残し(切断無し)且つ第1’取付け部14b,15bに抵抗素子41を取り付けた(取り付け有り)場合には、第1端子部11→第1フレーム13→導電接続部16→固定接点片15→(第1固定接点部17)→可動片20→(第2固定接点部18)→第2フレーム14→第2端子部12の順に電流が流れるとともに、これと並列に、第1端子部11→第1フレーム13→導電接続部16→固定接点片15→(第1’取付け部15b)→抵抗素子41→(第1’取付け部14b)→第2フレーム14→第2端子部12の順に電流が流れる、図8(b)に示すような1つの抵抗素子41を含む並列の電気回路が構成される。
【0060】
この場合も、上記パターン2と同様に、第1端子部11と第2端子部12との間の端子間電圧の電圧値を監視することで、ドア等の開閉および断線が検知される。
【0061】
〈電気回路のパターン4〉
図9は、1つの抵抗素子42を含む直列の電気回路の一例を模式的に示す図であり、同図(a)はリードフレーム10’の斜視図であり、同図(b)は回路図である。図9(a)に示すように、導電接続部16を切断し(切断有り)且つ第2取付け部13b,15aに抵抗素子42を取り付けた(取り付け有り)場合には、第1端子部11→第1フレーム13→(第2取付け部13b)→抵抗素子42→(第2取付け部15a)→固定接点片15→(第1固定接点部17)→可動片20→(第2固定接点部18)→第2フレーム14→第2端子部12の順に電流が流れる、図9(b)に示すような抵抗素子42を含む直列の電気回路が構成される。
【0062】
この場合も、上記パターン1と同様に、第2端子部12に電流が流れていることをECUが認識することにより、ドア等が開いていることが検知される一方、第2端子部12に電流が流れていないことをECUが認識することにより、ドア等が閉じていることが検知されることになる。
【0063】
〈電気回路のパターン5〉
図10は、2つの抵抗素子41,42を含む並列の電気回路の一例を模式的に示す図であり、同図(a)はリードフレーム10’の斜視図であり、同図(b)は回路図である。図10(a)に示すように、導電接続部16を切断し(切断有り)且つ第1’取付け部14b,15bおよび第2取付け部13b,15aに抵抗素子41,42をそれぞれ取り付けた(取り付け有り)場合には、第1端子部11→第1フレーム13→(第2取付け部13b)→抵抗素子42→(第2取付け部15a)→固定接点片15→(第1固定接点部17)→可動片20→(第2固定接点部18)→第2フレーム14→第2端子部12の順に電流が流れるとともに、これと並列に、第1端子部11→第1フレーム13→(第2取付け部13b)→抵抗素子42→(第2取付け部15a)→固定接点片15→(第1’取付け部15b)→抵抗素子41→(第1’取付け部14b)→第2フレーム14→第2端子部12の順に電流が流れる、図10(b)に示すような2つの抵抗素子41,42を含む並列の電気回路が構成される。
【0064】
この場合には、スイッチ装置1がオフでも、抵抗素子41側には電流が流れていることから、第1端子部11と第2端子部12との間の端子間電圧は、抵抗素子41および抵抗素子42の抵抗値により定まる電圧値(例えばV1’)となる。よって、端子間電圧の電圧値V1’をECUが認識することにより、ドア等が閉じていることが検知される。
【0065】
一方、スイッチ装置1がオンになると、可動片20側にも電流が流れるため、端子間電圧は、抵抗素子42および可動片20等の接点抵抗の抵抗値により定まる電圧値(例えばV2’(<V1’))となる。よって、電圧値V1’よりも低い電圧値V2’をECUが認識することにより、ドア等が開いていることが検知される。
【0066】
これらに対し、第2端子部12に電流が流れていないことをECUが認識することにより、断線が検知されることになる。
【0067】
〈電気回路のパターン6〉
図11は、2つの抵抗素子40,42を含む並列の電気回路の一例を模式的に示す図であり、同図(a)はリードフレーム10’の斜視図であり、同図(b)は回路図である。図11(a)に示すように、導電接続部16を切断し(切断有り)且つ第1取付け部13a,14aおよび第2取付け部13b,15aに抵抗素子40,42をそれぞれ取り付けた(取り付け有り)場合には、第1端子部11→第1フレーム13→(第2取付け部13b)→抵抗素子42→(第2取付け部15a)→固定接点片15→(第1固定接点部17)→可動片20→(第2固定接点部18)→第2フレーム14→第2端子部12の順に電流が流れるとともに、これと並列に、第1端子部11→第1フレーム13→(第1取付け部13a)→抵抗素子40→(第1取付け部14a)→第2フレーム14→第2端子部12の順に電流が流れる、図11(b)に示すような2つの抵抗素子40,42を含む並列の電気回路が構成される。
【0068】
この場合には、スイッチ装置1がオフでも、抵抗素子40側には電流が流れていることから、第1端子部11と第2端子部12との間の端子間電圧は、抵抗素子40の抵抗値により定まる電圧値(例えばV1”)となる。よって、端子間電圧の電圧値V1”をECUが認識することにより、ドア等が閉じていることが検知される。
【0069】
一方、スイッチ装置1がオンになると、可動片20側にも電流が流れるため、端子間電圧は、抵抗素子42および可動片20等の接点抵抗の抵抗値により定まる電圧値(例えばV2”(>V1”))となる。よって、電圧値V1”よりも高い電圧値V2”をECUが認識することにより、ドア等が開いていることが検知される。
【0070】
これらに対し、第2端子部12に電流が流れていないことをECUが認識することにより、断線が検知されることになる。
【0071】
-リードフレームインサート成形品の製造方法-
上述の如く、本実施形態では、リードフレーム10,10’が、樹脂ケース30のベース31とインサート成形によって一体化されたリードフレームインサート成形品50(図14(c)参照)を用いてスイッチ装置1を組み立てる。より詳しくは、リードフレームインサート成形品50は、有底筒状の樹脂ケース30のベース31から第1および第2端子部11,12が左右に並んで下方(筒軸方向)に突出するように、リードフレーム10,10’が樹脂ケース30と一体化されている。以下、かかるリードフレームインサート成形品50の製造方法の一例について説明する。
【0072】
図12は、リードフレームインサート成形品50の半製品50’の一例を模式的に示す斜視図であり、同図(a)は斜め上方から見た図であり、同図(b)は斜め下方から見た図である。リードフレーム10,10’をインサート成形によって樹脂ケース30と一体化する際には、インサート成形後にベース31から筒軸方向に突出する第1および第2端子部11,12側で位置決めを行うのが一般的である。
【0073】
より詳しくは、図12(b)に示すように、第1および第2端子部11,12は、バスタブ状の形をした枠部60と繋がった状態で、導電板から打ち抜きプレス加工により形成される。枠部60には、図12(a)および(b)に示すように、4つのパイロット穴63が形成されており、かかるパイロット穴63を用いて、インサート成形中のリードフレーム10,10’の位置決めが行われる。また、枠部60には、図12(a)に示すように、第1および第2端子部11,12と左右に並んで延びる部位61’(図13(a)参照)を前側に折り曲げた接触防止部61が形成されており、かかる接触防止部61により、製品同士の接触が抑制されることで、曲げ部(接点部)の変形が防止されるようになっている。
【0074】
もっとも、このような手法では、導電接続部16を切断した場合には、第1フレーム13と固定接点片15との縁が切れてしまうため、換言すると、パイロット穴63を有する枠部60と固定接点片15との縁が切れてしまうため、固定接点片15の位置決めが困難になるケースが想定される。
【0075】
そこで、本実施形態では、図4に示すように、第1および第2端子部11,12と同じ方向に延びるとともに、図12(b)に示すように、樹脂ケース30と一体化された状態でベース31から突出する先端部19aが、接続部19bを介して第1および第2端子部11,12と一体形成される突起部19を固定接点片15に設けるようにしている。
【0076】
このような突起部19を固定接点片15に設けることにより、導電接続部16を切断した場合でも、固定接点片15は、突起部19を介して第1および第2端子部11,12と繋がっているので、第1および第2端子部11,12側(4つのパイロット穴63)で位置決めを行うことによって、固定接点片15の位置決めを容易に行うことができる。
【0077】
しかも、接続部19bを介して第1および第2端子部11,12と一体形成されている突起部19の先端部19aは、樹脂ケース30と一体化された状態でベース31から突出していることから、インサート成形後に接続部19bを切断することで、突起部19を介して第1端子部11と第2端子部12との間に電流が流れるのを容易に防ぐことができる。
【0078】
図13および図14は、リードフレームインサート成形品50の製造方法を模式的に説明する図である。本実施形態のリードフレームインサート成形品50の製造方法は、図13および図14の例に示すように、打ち抜きプレス工程と、折り曲げプレス工程と、第1切断工程と、装着工程と、樹脂封止工程と、第2切断工程と、第3切断工程と、を含んでいる。
【0079】
先ず、打ち抜きプレス工程では、図13(a)に示すように、第1端子部11と、第2端子部12と、第1フレーム13と、第2フレーム14と、突起部19を有する固定接点片15と、第1および第2端子部11,12と並んで延びる部位61’を有する枠部60と、を導電板から打ち抜く。
【0080】
次いで、折り曲げプレス工程では、図13(b)に示すように、第2フレーム14と同一平面上にある第2固定接点部18を上下方向と直交するように前側に折り曲げるとともに、部位61’を枠部60と直角をなすように前側に折り曲げて、一対の接触防止部61を形成する。
【0081】
なお、請求項との関係では、本実施形態の打ち抜きプレス工程および折り曲げプレス工程が、「導電板からリードフレームを形成するプレス工程」に相当する。
【0082】
次いで、第1切断工程では、図13(c)に示すように、第1フレーム13と固定接点片15とを接続する導電接続部16を切断する。このように、導電接続部16を切断しても、固定接点片15の突起部19の先端部19aが接続部19bを介して第1および第2端子部11,12と一体形成されていることから、第1フレーム13と固定接点片15とが、突起部19および第1端子部11を介して繋がった状態が維持される。
【0083】
次いで、装着工程では、図13(d)に示すように、リードフレーム10’に抵抗素子40,42を装着する。より詳しくは、図11の例と同様に、第1取付け部13a,14aに抵抗素子40を取り付けるとともに、第2取付け部13b,15aに抵抗素子42を取り付ける。この際、抵抗素子40,42は例えばリフロー方式、すなわち、第1取付け部13a,14aおよび第2取付け部13b,15aに塗布したクリーム半田を熱で溶かすことにより、第1取付け部13a,14aおよび第2取付け部13b,15aに取り付けられる。
【0084】
次いで、樹脂封止工程では、枠部60の4つのパイロット穴63を用いてリードフレーム10’の位置決めを行った後、装着工程にて装着された抵抗素子40,42を第1および第2フレーム13,14並びに固定接点片15と共に、インサート成形にて樹脂封止して、図14(a)に示すように、第1および第2端子部11,12並びに突起部19の先端部19aがベース31から突出するように、樹脂ケース30を成形する。これにより、半製品50’が完成する。このように、導電接続部16を切断した場合でも、固定接点片15は、突起部19を介して第1および第2端子部11,12と繋がっているので、固定接点片15の位置決めを容易に行うことができる。
【0085】
次いで、第2切断工程では、図14(b)に示すように、接続部19bを切断して、突起部19の先端部19aを第1および第2端子部11,12から切り離す。
【0086】
第3切断工程において、第1および第2端子部11,12から枠部60を切り離すことで、図14(c)に示すようなリードフレームインサート成形品50が完成する。
【0087】
-作用・効果-
本実施形態に係るリードフレーム10によれば、各取付け部13a,13b,14a,14b,15a,15bへの抵抗素子40,41,42の取り付けの有無と、導電接続部16の切断の有無との組み合わせにより、上記パターン1~6に例示するような異なるタイプの電気回路を構成することができる。
【0088】
しかも、異なるタイプの電気回路を構成する場合には、抵抗素子40,41,42の取り付けと、導電接続部16の切断とを行うだけなので、共用のリードフレーム10を用いて、タイプの異なる電気回路を実現することができ、これにより、設計の共通化および金型の共用が可能となることから、コストの増大を抑えることができる。
【0089】
また、抵抗素子40,41,42を含む電気回路を構成する場合には、インサート成形によって抵抗素子40,41,42を樹脂ケース30と一体化することから、インサート成形後に抵抗素子40,41,42を取り付ける場合のように、抵抗素子40,41,42の半田付けの熱による、樹脂ケース30の溶融等のおそれがないので、スイッチ装置1の組立性を向上させることができる。加えて、抵抗素子40,41,42が露出しないので、抵抗素子40,41,42における電極部等の腐食や劣化を抑制することができる。
【0090】
また、リードフレーム10の表裏両面にセレーション溝13c,14c,15cが形成されていることから、各取付け部13a,13b,14a,14b,15a,15bにクリーム半田を塗布する場合に、塗布した半田の表面張力により、半田がセレーション溝13c,14c,15cを越え難くなるので、クリーム半田の流出を抑えることができる。加えて、セレーション溝13c,14c,15cによって樹脂と金属との密着性を高めて、シール性の向上を期待することができる。
【0091】
さらに、本実施形態に係る製造方法によれば、導電接続部16を切断した場合でも、固定接点片15の位置決めを行いつつ、異なるタイプの電気回路を構成可能なリードフレーム10’が樹脂ケース30と一体化されたリードフレームインサート成形品50を容易に製造することができる。
【0092】
(その他の実施形態)
本発明は、実施形態に限定されず、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
【0093】
上記実施形態では、スイッチ装置1をノーマリーオープン型として構成したが、これに限らず、ノーマリークローズ型として構成してもよい。
【0094】
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明によると、共用のリードフレームで、タイプの異なる電気回路を実現することができるので、スイッチ装置の電気回路を構成するリードフレーム、および、リードフレームをインサート成形によって樹脂ケースと一体化したリードフレームインサート成形品の製造方法に適用して極めて有益である。
【符号の説明】
【0096】
1 スイッチ装置
10、10’ リードフレーム
11 第1端子部
12 第2端子部
13 第1フレーム
13a、14a 第1取付け部
13b、15a 第2取付け部
13c、14c、15c セレーション溝
14 第2フレーム
14b、15b 第1’取付け部
15 固定接点片
16 導電接続部
19 突起部
19a 先端部
19b 接続部
20 可動片
30 樹脂ケース
31 ベース(底部)
40、41、42 抵抗素子
50 リードフレームインサート成形品
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14