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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048515
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】発電装置および発電方法
(51)【国際特許分類】
   F03B 7/00 20060101AFI20240402BHJP
   H02K 1/2783 20220101ALI20240402BHJP
【FI】
F03B7/00
H02K1/2783
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154467
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】519262342
【氏名又は名称】zenmotor株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤田 昭彦
【テーマコード(参考)】
3H072
5H622
【Fターム(参考)】
3H072AA02
3H072AA22
3H072AA26
3H072BB31
3H072CC28
3H072CC44
3H072CC72
5H622AA02
(57)【要約】
【課題】配管などを流れる液体のエネルギーを効率的に電力へ変換する水力発電装置を提供する。
【解決手段】落下する液体により回転する第1の水車402aおよび第2の水車402bと、前記第1の水車および前記第2の水車に対して前記第1の水車の第1の回転軸4021aと前記第2の水車の第2の回転軸4021bとの間に前記液体を誘導し落下させるガイド機構401と、前記第1の水車および前記第2の水車の回転により発電する発電機404と、を具備する発電装置。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
落下する液体により回転する第1の水車および第2の水車と、
前記第1の水車および前記第2の水車に対して前記第1の水車の第1の回転軸と前記第2の水車の第2の回転軸との間に前記液体を誘導し落下させるガイド機構と、
前記第1の水車および前記第2の水車の回転により発電する発電機と、
を具備する発電装置。
【請求項2】
前記第1の回転軸と前記第2の回転軸とは、平行であり、
前記第1の回転軸と前記第2の回転軸とは、前記液体の落下方向に対して垂直であり、
前記第1の回転軸と前記第2の回転軸との高低差は、前記第1の水車に備えられる複数の羽根の前記第1の水車の外周部における間隔よりも短く、
前記第1の回転軸と前記第2の回転軸との前記高低差は、前記第2の水車に備えられる複数の羽根の前記第2の水車の外周部における間隔よりも短い、
ことを特徴とする請求項1に記載の発電装置。
【請求項3】
前記第1の回転軸と前記第2の回転軸とは平行であり、
前記第1の回転軸と前記第2の回転軸とは、前記液体の落下方向に対して垂直で、かつ、同じ高さに配置される、
ことを特徴とする請求項1に記載の発電装置。
【請求項4】
前記第1の水車は前記液体を受けるための第1の羽根を備え、
前記第2の水車は前記液体を受けるための第2の羽根を備え、
前記第1の羽根の前記液体を受ける第1の面は、前記第1の水車の半径方向に対して回転方向に傾斜しており、
前記第2の羽根の前記液体を受ける第2の面は、前記第2の水車の半径方向に対して回転方向に傾斜している、
ことを特徴とする請求項1に記載の発電装置。
【請求項5】
前記第1の水車の外周部と前記第2の水車の外周部との間隔は、前記ガイド機構の水車側開口部の幅に対して1%以上の幅を有する、ことを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか1項に記載の発電装置。
【請求項6】
前記発電機に使用するモータは、コアレス構造のモータであり、
前記モータのローターに配置される永久磁石は、ハルバッハ配列である、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか1項に記載の発電装置。
【請求項7】
請求項1から請求項4のうちのいずれか1項に記載の発電装置を垂直に配管されたパイプに設置し、
前記パイプの上から下に前記液体を流し、
前記発電装置により発電を行う、発電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電装置および発電方法に関し、特に、配管内を流れる液体を利用して発電を行う発電装置および発電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化炭素の排出量を低減することが課題となっており、自然エネルギーを利用した再生可能エネルギーの利用が注目されている。特に、雨の多い日本では、比較的安定した電力を供給可能な水力発電は脱炭素化社会の実現には必要不可欠と考えられている。
【0003】
水力発電は、ダムなどに大量の水を貯水し、大量の水と落差を利用して発電を行うものが一般的である。また、近年は河川や水路を流れる水を利用した、10,000KW以下の小水力発電が注目を浴びている。小水力発電の割合を拡大するためには、エネルギーの地産地消による効率的なインフラが整備されることが望まれる。
【0004】
このような小水力発電システムの設置場所として、河川や水路の流水以外に、下水や工業廃水などを利用することが考えられる。このような排水は大量の水が扱われるが、これまでは再生エネルギーの発電に利用されることが無かった。
【0005】
小水力発電を効率的に行うための水力発電装置の一例として特許文献1が開示されている。特許文献1では、上下略一列に配置した交互に回転方向が異なる複数の水車と、各水車の上位から下位に至る円弧状の外周を受圧領域として連結してなる蛇行水路と、複数の水車の回転軸から回転力を取り出し出力する動力伝達手段を備えることで水車を小規模化しつつも発電効率を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-170512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述の水力発電装置においては、河川における使用を想定しており、ある程度の水量を必要とするものである。また、下段の水車になるほど効率が低下していく傾向があり、落差を十分に活かした構成にはなっていない。また、配管などに設置して利用することは考慮されていない。
【0008】
本発明は上記課題に着眼しなされたものであり、ビル循環水や工業用水などが還流する配管などに設置し、落差を有効に利用して発電効率を高めた発電装置および発電方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する為に本発明の水力発電装置は、落下する液体により回転する第1の水車および第2の水車と、前記第1の水車および前記第2の水車に対して前記第1の水車の第1の回転軸と前記第2の水車の第2の回転軸との間に前記液体を誘導し落下させるガイド機構と、前記第1の水車および前記第2の水車の回転により発電する発電機と、を具備することを特徴とする。
【0010】
さらに前記態様に加えて、前記第1の回転軸と第2の回転軸とは、平行であり、前記第1の回転軸と前記第2の回転軸とは、前記液体の落下方向に対して垂直であり、前記第1の回転軸と前記第2の回転軸との高低差は、前記第1の水車に備えられる複数の羽根の前記第1の水車の外周部における間隔よりも短く、前記第1の回転軸と前記第2の回転軸との前記高低差は、前記第2の水車に備えられる複数の羽根の前記第2の水車の外周部における間隔よりも短いことを特徴とする。
【0011】
さらに前記態様に加えて、前記第1の回転軸と前記第2の回転軸とは平行であり、前記第1の回転軸と前記第2の回転軸とは、前記液体の落下方向に対して垂直で、かつ、同じ高さに配置されることを特徴とする。
【0012】
さらに前記態様に加えて、前記第1の水車は前記液体を受けるための第1の羽根を備え、前記第2の水車は前記液体を受けるための第2の羽根を備え、前記第1の羽根の前記液体を受ける第1の面は、前記第1の水車の半径方向に対して回転方向に傾斜しており、前記第2の羽根の前記液体を受ける第2の面は、前記第2の水車の半径方向に対して回転方向に傾斜していることを特徴とする。
【0013】
さらに前態様に加えて、前記第1の水車の外周部と前記第2の水車の外周部との間隔は、前記ガイド機構の水車側開口部の幅に対して1%以上の幅を有することを特徴とする。
【0014】
さらに前記態様に加えて、前記発電機に使用するモータは、コアレス構造のモータであり、前記モータのローターに配置される永久磁石は、ハルバッハ配列である、ことを特徴とする。
【0015】
さらに前記発電装置を垂直に配管されたパイプに設置し、前記パイプの上から下に前記液体を流し、前記発電装置により発電を行う発電方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、配管を流れる液体を用いて効率的に発電することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の発電装置の設置状態の一例を示した図。
図2】第1実施形態の発電装置の外形図(側面視)の一例。
図3】第1実施形態の発電装置の外形図(上面視)の一例。
図4】第1実施形態の発電装置の機能の構成を示すブロック図。
図5】本発明の発電装置の水車の外形の一例を示す図。
図6】本発明の発電装置の水車の羽根の取り付けの一例を示す図。
図7】水車の羽根に落下する液体が当たった場合に生じる力を説明するための図。
図8】水車の羽根を押す力が回転力になることを説明するための図。
図9】水車取り付け位置の間隔を説明するための図。
図10】水車に高低差を付けた場合の効果を示す図。
図11】第2実施形態の機能の構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<各実施形態共通:概要>
本発明の発電装置は、縦方向に設置された配管(垂直でなくてもよい)に設置し、配管内を流れる水などの液体の落下エネルギーを効率的に再生し発電を行う。
【0019】
発電装置は、配管内を落下する液体を2つの水車(第1の水車および第2の水車)で受け、その回転を利用して発電機に備えられているモータで発電を行う。液体は互いに向かい合う2つの水車の間を通過する。2つの水車は互いに異なる方向へ回転する。
【0020】
本発明において、液体は、例えば、水、薬液、又は、排水などでもよい。本発明においては、液体が上から下へ落下する場合のエネルギーを電力に変換する場合を例として説明するが、液体の移動方向は上から下への落下に限定されず、水車を回転させることが可能であればよい。
【0021】
<各実施形態共通:設置状態>
図1は、本発明の発電装置が配管に設置されている状態の一例を示している。
【0022】
本発明の発電装置101は、主パイプ102の上側と下側との間に設置されている。発電装置101の横には、副経路として副パイプ104が設けられており、バルブ103を経由して発電装置101を迂回するように接続されている。
【0023】
通常使用時は、バルブ103は発電装置101側に設定され、発電装置101に液体を流すようにして発電を行うが、メンテナンス時は、バルブ103を切り替えて副経路に液体が流れるようにして行うようにしてもよい。
【0024】
図1のような副経路は必ずしも設ける必要はなく、メンテナンス時に水流を止められるようになっていればよいが、副経路を設けた方が、発電装置101を設置したシステムの稼働を停止することなくメンテナンスが行える利点がある。
【0025】
発電装置101は例えば垂直に配管されたパイプに設置され、パイプの上から下に液体が流されることで、発電を行う。
【0026】
なお、発電装置101は、主パイプ102直下に設置されることが望ましく、副パイプ104など迂回した経路に設置しない方が望ましい。これは、本発明の発電装置101が液体の落下エネルギーを利用するため、落下エネルギーに損失がないように設置されることが望ましいためである。
【0027】
<第1実施形態共通:外形(側面視)>
図2は、第1実施形態の発電装置101を側面から見た図であり、各部を確認できるように、外装を透過で記載している。ガイド機構201は、主パイプ102内を落下してくる液体を水車202a、202bの羽根に誘導するための機構である。水車202aおよび202bは、ガイド機構201を介して落下してくる液体の落下エネルギーにより回転する。
【0028】
<第1実施形態共通:外形(上面視)>
図3は、第1実施形態の発電装置101を真上から見た図であり、内部を主パイプ102及び外装を透過で記載している。ガイド機構301が設置され、その開口部から水車302aと302bの羽根が見えている。モータ303aおよび303bは、水車302a、302bの回転により回転し、電力を発生する。破線304で示す円は、主パイプ102の径を示しており、この範囲から液体が落下してくることを意味している。
【0029】
<第1実施形態:構成>
図4は、第1実施形態の発電装置101の機能の構成を示すブロック図である。
【0030】
第1実施形態の発電装置101は、ガイド機構401と、水車402aおよび402bと、増速器403aおよび403bと、発電機404aおよび404bと、変換器405を有している。水車402aは、回転軸4021aに、水車402bは、回転軸4021bに回転可能に設置されている。増幅器403aおよび発電機404aは水車402aに対応する。増幅器403bおよび発電機404bは水車402bに対応する。発電機404aは、上記図3のモータ303aを備える。発電機404bは、上記図3のモータ303bを備える。
【0031】
<第1実施形態:構成:ガイド機構>
ガイド機構401は、主パイプ102内を落下してくる液体を、水車402aおよび402bが効率的に回転する位置に誘導するための機構である。
【0032】
ガイド機構401の傾斜は、落下方向に対してなるべく緩い傾斜であることが望ましい。これは、落下する液体がガイド機構401の傾斜面に当たると落下エネルギーが失われて効率が低下するためである。この時傾斜が緩ければ失われるエネルギーも少なくなり、損失を抑えることができる。
【0033】
ここで、一般的な水力発電で得られるエネルギーについて説明する。
【0034】
水力発電の出力P(kW)は以下の式で求められる。
【0035】
【数1】
【0036】
一般的な水力発電機では、ηは水車効率で0.75~0.9、ηは発電機効率で0.82~0.92程度である。
【0037】
Qは使用水量(m3/S)、Hは有効落差(m)である。
【0038】
上式からも解るように、水力発電機の出力は、有効落差が大きく影響する。有効落差は、実際の液体が落下する総落差に対して流路での損失が減算される。このため、流路での損失をなるべく少なくし、水車に対して直接落下するように構成することが望ましい。
【0039】
従って、本発明の発電装置101では落下するエネルギーを効率的に再生することを目的としており、なるべく流路での損失が抑えられるよう、ガイド機構401の傾斜角は落下方向に対して緩やかになるように構成することが望ましい。
【0040】
<第1実施形態:構成 水車>
水車402aおよび402bは、複数の羽根を持ち、落下してくる液体を羽根で受けて、落下エネルギーを回転力に変換する。
【0041】
図5は、水車402a、402bの外形図であり、円筒形状である。水車402a、402bは、回転軸501と、側板503、複数の羽根502と、で構成される。回転軸に対して、側板が固定され、両側の側板に羽根が固定された構造となっている。羽根502は、回転軸方向に対して傾きを持って設置されており、傾きは固定であっても可変であっても構わない。可変とする場合は、回転速度に応じて最も効率的な傾きになるように制御すればよい。
【0042】
<第1実施形態:構成 水車 羽根の取り付け角度>
図6は水車402a、402bの一部を拡大した図であり、側板503に対する羽根602の設置を示す図である。水車402a、402bには、水車402a、402bの外周部において図示Bの幅で等間隔に複数の羽根602が取り付けられている。
【0043】
水車402a、402bに備えられる羽根602における液体を受ける面は、回転軸601から外周へ向かう半径方向を示す破線603に対してθ°の傾きをもって回転方向に傾斜するように、設置されている。矢印605で示す落下する液体(水流)が羽根602に当たり、この衝突エネルギーにより矢印604で示す方向に水車402a、402bが回転する。
【0044】
羽根602は、液体の落下エネルギーを効率よく回転に変換するために、水平に近い角度で液体を受けるように傾けられている。さらに液体は、羽根602に当たった後、水車402a、402bの外周方向に排出されるように傾きを調整されることが望ましい。これは、液体が水車402a、402bの内周側に落ちた場合、水車402a、402bの回転に対する損失になる可能性があるためである。
【0045】
なお、羽根602は図示破線で示すように、湾曲を持った構造としてもよい。これは、回転により羽根602の位置が変わったとしても、液体をなるべく垂直近い角度で受けられるようにするためである。
【0046】
<第1実施形態:水車の回転力に関する説明>
ここで、本発明の発電装置101の水車402a、402bの回転力の考え方について説明しておく。
【0047】
本発明の発電装置101では落下してくる液体を直接水車402a、402bの羽根602に当て、その衝撃力が主な回転力となる。従って、液体が当たる際の羽根602の角度が重要になる。
【0048】
液体が落下して水車402a、402bの羽根602に与える衝撃力は、以下の式で求めることができる。
【0049】
【数2】
【0050】
この時、vは液体の落下速度が水車402a、402bの羽根602に当たることで減速した速度であり、Δtはその減速に要した時間である。mは液体の比重と流量から求まり、比重が大きいほどエネルギーが大きくなる。従って、液体が水の場合よりも、海水の場合のほうが大きなエネルギーが得られる。
【0051】
落下速度vは、水車402a、402bの羽根602に当たる際の速度であり、有効落差Heから求められる。
【0052】
水車402a、402bが回転している場合はその速度を差し引いた落下速度vとする必要がある。
【0053】
図7は、羽根602に液体(水流)が当たった場合の羽根602に生じる力を示している。
【0054】
羽根602が水平に対して傾いている場合、落下エネルギーFは、羽根602を押す力Feと、羽根602の面方向に働く力Flとに分けられ、Flは損失となる。羽根602の水平に対する傾きをθaとした場合、羽根602を押す力Feは、以下の式で求められる。
【0055】
【数3】
【0056】
このことから、羽根602が水平の状態で水が当たる場合に水車402a、402bの羽根602が受ける力は最大となり、傾きが大きくなるほど損失が大きくなることがわかる。
【0057】
図8は、羽根602を押す力が回転力に変換される状態を示している。
【0058】
羽根602を押す力Feは、回転軸方向との傾きから、回転軸方向に働く力Fcと、その直交方向に働く力、すなわち回転力Ftとに分力される。
【0059】
回転軸方向に働く力Fcは損失となるが、Ftは以下の式で求められる。
【0060】
【数4】
【0061】
よって、液体が羽根602に当たる位置と回転軸の距離をFとすると水車に生じるトルクTは以下の式で表される。
【0062】
【数5】
【0063】
以上述べてきたように、水車402a、402bの羽根602はなるべく水平に近い角度で落下する液体が当たることが望ましく、また、羽根602の外側端部に当たるほど効率が良くなることがわかる。
【0064】
<第1実施形態:構成 水車 水車の取り付け位置>
図9は水車902a、902bの取り付け位置に関する説明の図である。
【0065】
図9は、2つの水車902a、902bの外径の間隔について示した図である。水車902a、902bの外径の間隔は、隙間を作らないように配置するよりも、間隔をあけて配置したほうが効率は良くなる。これは水車902a、902bの羽根902に当たり弾かれた液体は、水車902a、902bの外周に排出されるが、水車902a、902b間に隙間が無いと、一方の水車の羽根に当たった液体が他方の水車の回転に影響を及ぼす可能性がある。一度一方の水車の羽根903に当たった液体は、すでに落下エネルギーの大半を失っているため、高速で回転している他方の水車に対してはブレーキとして作用する場合がある。このため、水車902a、902b間に隙間を開けておき、排出された液体が隙間から落下するようにしておく。このようにすることで、お互いの水車902a、902bから排出された液体の干渉による効率の低下を防止できる。
【0066】
図9に示すように隙間Sの幅は、羽根の傾きや数、流量によっても違いがあり適宜調整する必要があるが、ガイド機構901の開口部の幅Wに対して規定してもよい。隙間Sの幅は、ガイド機構901の開口部の幅Wに対して、少なくとも1%以上は確保しておくことが望ましい。
【0067】
また、この隙間Sは広すぎると、水車の回転に寄与しない液体の量が増える。したがって隙間Sの幅は、ガイド機構901の開口部の幅Wに対して、50%を超えないことが望ましい。
【0068】
図10は、水車1002a、1002bの回転軸1004a、1004bの高さに関する説明の図である。例えば、一方の水車の回転軸と他方の水車の回転軸とは平行でもよい。例えば、一方の水車の回転軸と他方の水車の回転軸とは液体の落下方向に対して垂直でもよい。水車1002a、1002bの回転軸1004a、1004bは同じ高さに設定してもよいが、図10の高低差Dに示すように差を設けてもよい。水車1002a、1002bの高低差Dは、図示水車1002a、1002bに設けられている複数の羽根1003の外周部における取り付け間隔Bよりも狭い範囲で設置することが望ましい。このようにすることで、水車1002a、1002bから排出される液体の位置が分散され、図10に示すように、隙間部分に落下してくる液体の流路を蛇行させる効果がある。
【0069】
ところで、隙間部分を落下してくる液体は、落下エネルギーを有しているが、一方の水車から排出される液体により流路を曲げられることになる。この液体が、他方の水車の羽根に当たることで、直接落下してきた液体とほぼ同等の効果で他方の水車の回転に寄与する。これにより、効率的に水車1002a、1002bを回転させることができる。
【0070】
<第1実施形態:構成 増速機>
増速機403aおよび403bは、水車402a、402bの回転数を増やすための構成である。例えば、ギアが考えられる。ギアとは歯車を組み合わせた伝動装置である。組み合わせた歯車の歯の数の比率で増速される。例えば、水車402a、402b側の歯車の歯の数を100とし、発電機404a、404b側の歯車の歯の数を20とした場合、回転数を5倍に増加することができる。
【0071】
増速機403a、403bは上述のギアに限定されるものではない。例えば、伝動ベルトなどを用いてもよい。この場合、プーリの外径の比率で増速が可能である。一般的に発電機404a、404bは高回転のほうが発電効率は良いため増速機403a、403bを用いるが、増速機403a、403bは必須の構成ではなく無くてもよい。
【0072】
<第1実施形態:構成 発電機>
発電機404aおよび404bは、水車402a、402bにより生じた回転力を電力に変換するための構成である。発電機404a,404bはモータ303a,303bを用いて発電する。モータ303a,303bは一般的な電磁モータで構わないが、本発明の発電装置101には、特にコアレスモータとよばれるステータのコイルが突極固定子に巻線されない構成のモータ(コアレス構造のモータ)が好適である。コアレス構造のモータはコギングがなく慣性質量も低く抑えることが出来るため、回転に対する抵抗が少なく少量の液体でも簡単に回転させることが出来る。
【0073】
また、ローターに設置される永久磁石がハルバッハ配列の場合、さらに好適である。ハルバッハ配列は、永久磁石の配列により、片側に磁束密度を偏らせる方法である。内径側に磁束密度を偏らせることで、ステータに設置されたコイルにかかる磁束密度を通常よりも高めることができ、これにより発電効率が高まる。
【0074】
<第1実施形態:構成 変換器>
変換器405はモータ303a、303bから出力される電力を、利用可能な電力に変換するための構成である。
【0075】
発電機404a、404b内のモータ303a、303bからは、回転数に応じた周波数の交流電力が出力されるが、利用用途に応じて電力の種類(交流か直流か)、電圧、交流の場合は周波数を合わせる必要がある。
【0076】
本発明の発電装置101で発電された電力は様々な利用方法が考えられる。例えば、蓄電池に蓄電し、必要に応じて使用する場合が考えられる。また、家庭用の交流電力に変換して使用する場合も考えられる。また、商用電力網を経由して売電する場合も考えられる。
【0077】
蓄電する場合は、直流電源に変換して蓄電池に供給する。家庭用の交流電力として使用する場合は、電圧や周波数を家庭用交流電源に合わせて変換する。
売電する場合は、家庭用交流電源に変換し、パワーコンディショナーに供給するようにすればよい。
【0078】
<第1実施形態:効果>
以上述べてきたように、第1実施形態の発電装置101によれば、例えば、工業廃水、ビル還流水、下水などの液体の配管に設置し、これまで活用されていなかった排水を用いて再生可能エネルギーである電力を生成し、様々な用途に利用できる。また、第1実施形態の発電装置101によれば、流量が安定しない場合でも効率的に電力を生成できるので様々な配管に設置が可能である。
【0079】
<第2実施形態>
<第2実施形態:概要>
第2実施形態の発電装置は、発電機が一つの構成であることが、第1実施形態の発電装置101と異なる点である。
【0080】
<第2実施形態:構成>
図11は、第2実施形態の発電装置の機能の構成を示すブロック図である。
【0081】
第2実施形態の発電装置は、ガイド機構1101と、水車1102aおよび1102bと、増速機1103と、発電機1104と、変換器1105と、で構成される。
【0082】
以降、構成の詳細について説明するが、第1実施形態と同じ内容については説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0083】
<第2実施形態:構成 増速機>
第2実施形態の増速機1103は、水車1102aおよび1102bの2つの水車の回転を一つのモータに伝動する。水車1102aと1102bは同じ回転数になるとは限らない。これは配管内を流れる液体の流れに偏りが出来た場合、液体が多く流れた方の水車の回転が速くなることが考えられる。このため、ギアで増速機1103を構成した場合、水車1102a、1102b側の歯車にはラチェット機構を設けることが好ましい。
【0084】
これにより、水車1102a、1102bの回転数が異なる場合は、速く回転した方の回転力が伝動されるのでスムーズに回転する。また、速く回転した方の水車には負荷がかかるため、回転速度が低下し、逆に遅く回っている方の水車は減速しないので、同じ回転速度になり、結果として両方の水車1102a、1102bの回転力が伝動されるようになる。
【0085】
<第2実施形態:効果>
以上説明したように、第2実施形態の発電装置は、発電機や変換器の回路構成を削減できるので、低コストに発電装置を提供できる。
【0086】
発電機にはモータが用いられるため、本発明の発電装置の中では発電機が最も高価な構成要件といえる。従って、第2実施形態では、発電機の台数を削減することができ、大きなコスト削減が可能になり、本発明の発電装置の導入コストが低減され、設備投資の回収までの期間が大きく低減できるので、導入しやすいといった効果がある。
【符号の説明】
【0087】
101 発電装置
102 主パイプ
103 バルブ
104 副パイプ
201、301、401 ガイド機構
202a、202b、302a、302b、402a、402b 水車
4021a、4021b、501、601 回転軸
303a、303b モータ
403a、403b 増速機
404a、404b 発電機
405 変換器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図9
図10
図11