(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048522
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】磁気冷凍装置及び冷凍機
(51)【国際特許分類】
F25B 21/00 20060101AFI20240402BHJP
【FI】
F25B21/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154477
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅野 能成
(72)【発明者】
【氏名】荒木 辰太郎
(72)【発明者】
【氏名】日比野 寛
(57)【要約】
【課題】永久磁石の磁束を、磁気作業物質に対して効率良く作用させることができるようにする。
【解決手段】ヨーク(30)は、第1ヨーク部(41)と、第2ヨーク部(42)と、第3ヨーク部(43)と、を有する。第1ヨーク部(41)は、永久磁石(21)に対して磁気回路(20)の磁束の流れ方向の一方に配置される。第2ヨーク部(42)は、永久磁石(21)に対して磁気回路(20)の磁束の流れ方向の他方に配置される。第3ヨーク部(43)は、永久磁石(21)に対して磁気回路(20)の磁束の流れ方向に交差する方向に配置される。 磁気回路(20)の磁束の流れ方向から見て、第3ヨーク部(43)の断面積は、第1ヨーク部(41)の断面積よりも小さく、且つ第2ヨーク部(42)の断面積よりも小さい。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気作業物質(11)を有する磁気回路(20)を備えた磁気冷凍装置であって、
前記磁気回路(20)は、
前記磁気作業物質(11)が配置される空隙部(27)を有するヨーク(30)と、
前記ヨーク(30)に設けられ、前記ヨーク(30)に磁束を流す永久磁石(21)と、を有し、
前記ヨーク(30)は、
前記永久磁石(21)に対して前記磁気回路(20)の磁束の流れ方向の一方に配置された第1ヨーク部(41)と、
前記永久磁石(21)に対して前記磁気回路(20)の磁束の流れ方向の他方に配置された第2ヨーク部(42)と、
前記永久磁石(21)に対して前記磁気回路(20)の磁束の流れ方向に交差する方向に配置された第3ヨーク部(43)と、を有し、
前記磁気回路(20)の磁束の流れ方向から見て、前記第3ヨーク部(43)の断面積は、前記第1ヨーク部(41)の断面積よりも小さく、且つ前記第2ヨーク部(42)の断面積よりも小さい
磁気冷凍装置。
【請求項2】
請求項1に記載の磁気冷凍装置において、
前記磁気回路(20)の磁束の流れ方向から見て、前記第3ヨーク部(43)の断面積は、前記第1ヨーク部(41)の断面積の10分の1以下、且つ前記第2ヨーク部(42)の断面積の10分の1以下である
磁気冷凍装置。
【請求項3】
請求項2に記載の磁気冷凍装置において、
前記磁気回路(20)の磁束の流れ方向から見て、前記第3ヨーク部(43)の断面積は、前記第1ヨーク部(41)の断面積の50分の1以下、且つ前記第2ヨーク部(42)の断面積の50分の1以下である
磁気冷凍装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のうち何れか1つに記載の磁気冷凍装置において、
前記ヨーク(30)における前記空隙部(27)の近傍には、前記永久磁石(21)を挿入する磁石孔(36)が設けられ、
前記磁石孔(36)は、前記磁気回路(20)の磁束の流れに交差する方向に開口する
磁気冷凍装置。
【請求項5】
請求項1乃至3のうち何れか1つに記載の磁気冷凍装置において、
前記永久磁石(21)は、前記磁気回路(20)の磁束の流れ方向に対して傾斜した姿勢で前記ヨーク(30)に配置される
磁気冷凍装置。
【請求項6】
請求項1乃至3のうち何れか1つに記載の磁気冷凍装置において、
前記永久磁石(21)は、第1磁石(21a)と、第2磁石(21b)と、を含み、
前記第1磁石(21a)及び前記第2磁石(21b)は、所定の開き角度でV字状に並び且つV字状の開き面が前記磁気作業物質(11)を向いた姿勢で前記ヨーク(30)に配置される
磁気冷凍装置。
【請求項7】
請求項1乃至3のうち何れか1つに記載の磁気冷凍装置において、
前記永久磁石(21)は、湾曲状に形成され且つ湾曲して窪んだ凹面が前記磁気作業物質(11)を向いた姿勢で前記ヨーク(30)に配置される
磁気冷凍装置。
【請求項8】
請求項1乃至3のうち何れか1つに記載の磁気冷凍装置において、
前記磁気回路(20)は、前記磁気作業物質(11)に対する磁場の印加又は除去を行う
磁気冷凍装置。
【請求項9】
請求項1乃至3のうち何れか1つに記載の磁気冷凍装置(10)と、
前記磁気冷凍装置(10)と熱交換する熱媒体回路(2)と、を備える
冷凍機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、磁気冷凍装置及び冷凍機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、磁気熱量効果を発揮する磁気作業物質(MCE素子)と、磁気作業物質に外部磁場を与え、外部磁場を変調する磁場変調装置と、を備えた熱磁気サイクル装置が開示されている。磁場変調装置は、磁性体製のヨークと、磁性体製の回転軸と、一対の永久磁石と、を有する。一対の永久磁石は、同極同士が対向するように配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の発明では、一対の永久磁石の反発力に耐えうるように、永久磁石をヨークに強固に固定する必要があるが、永久磁石がヨークに対してどのように固定されているかについては記載されていない。
【0005】
ここで、永久磁石をヨークに強固に固定するために、例えば、永久磁石周辺のヨークの断面積を増やした場合について検討すると、永久磁石の磁束がヨーク側に多く流れてしまい、永久磁石の磁束を磁気作業物質に対して十分に作用させることができないおそれがある。
【0006】
本開示の目的は、永久磁石の磁束を、磁気作業物質に対して効率良く作用させることができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の態様は、磁気作業物質(11)を有する磁気回路(20)を備えた磁気冷凍装置であって、前記磁気回路(20)は、前記磁気作業物質(11)が配置される空隙部(27)を有するヨーク(30)と、前記ヨーク(30)に設けられ、前記ヨーク(30)に磁束を流す永久磁石(21)と、を有し、前記ヨーク(30)は、前記永久磁石(21)に対して前記磁気回路(20)の磁束の流れ方向の一方に配置された第1ヨーク部(41)と、前記永久磁石(21)に対して前記磁気回路(20)の磁束の流れ方向の他方に配置された第2ヨーク部(42)と、前記永久磁石(21)に対して前記磁気回路(20)の磁束の流れ方向に交差する方向に配置された第3ヨーク部(43)と、を有し、前記磁気回路(20)の磁束の流れ方向から見て、前記第3ヨーク部(43)の断面積は、前記第1ヨーク部(41)の断面積よりも小さく、且つ前記第2ヨーク部(42)の断面積よりも小さい。
【0008】
第1の態様では、磁束の流れ方向から見て、第3ヨーク部(43)の断面積を、第1ヨーク部(41)の断面積よりも小さく、且つ前記第2ヨーク部(42)の断面積よりも小さくすることで、第3ヨーク部(43)において磁気飽和させ、永久磁石(21)のほとんどの磁束を磁気作業物質(11)に作用させることができる。
【0009】
本開示の第2の態様は、第1の態様に記載の磁気冷凍装置において、前記磁気回路(20)の磁束の流れ方向から見て、前記第3ヨーク部(43)の断面積は、前記第1ヨーク部(41)の断面積の10分の1以下、且つ前記第2ヨーク部(42)の断面積の10分の1以下である。
【0010】
第2の態様では、永久磁石(21)のほとんどの磁束を磁気作業物質(11)に作用させることができる。
【0011】
本開示の第3の態様は、第2の態様に記載の磁気冷凍装置において、前記磁気回路(20)の磁束の流れ方向から見て、前記第3ヨーク部(43)の断面積は、前記第1ヨーク部(41)の断面積の50分の1以下、且つ前記第2ヨーク部(42)の断面積の50分の1以下である。
【0012】
第3の態様では、永久磁石(21)のほとんどの磁束を磁気作業物質(11)に作用させることができる。
【0013】
本開示の第4の態様は、第1乃至3の態様のうち何れか1つに記載の磁気冷凍装置において、前記ヨーク(30)における前記空隙部(27)の近傍には、前記永久磁石(21)を挿入する磁石孔(36)が設けられ、前記磁石孔(36)は、前記磁気回路(20)の磁束の流れに交差する方向に開口する。
【0014】
第4の態様では、磁石孔(36)を磁束の流れに交差する方向に開口させ、磁石孔(36)に永久磁石(21)を挿入することで、永久磁石(21)が磁束の流れ方向に移動しないように保持することができる。
【0015】
本開示の第5の態様は、第1乃至3の態様のうち何れか1つに記載の磁気冷凍装置において、前記永久磁石(21)は、前記磁気回路(20)の磁束の流れ方向に対して傾斜した姿勢で前記ヨーク(30)に配置される。
【0016】
第5の態様では、磁束の流れ方向から見たヨーク(30)の幅よりも大きな幅の永久磁石(21)をヨーク(30)に配置することができる。
【0017】
本開示の第6の態様は、第1乃至3の態様のうち何れか1つに記載の磁気冷凍装置において、前記永久磁石(21)は、第1磁石(21a)と、第2磁石(21b)と、を含み、前記第1磁石(21a)及び前記第2磁石(21b)は、所定の開き角度でV字状に並び且つV字状の開き面が前記磁気作業物質(11)を向いた姿勢で前記ヨーク(30)に配置される。
【0018】
第6の態様では、磁気作業物質(11)の中央部に磁束を集めて漏れ磁束を低減することができる。
【0019】
本開示の第7の態様は、第1乃至3の態様のうち何れか1つに記載の磁気冷凍装置において、前記永久磁石(21)は、湾曲状に形成され且つ湾曲して窪んだ凹面が前記磁気作業物質(11)を向いた姿勢で前記ヨーク(30)に配置される。
【0020】
第7の態様では、磁気作業物質(11)の中央部に磁束を集めて漏れ磁束を低減することができる。
【0021】
本開示の第8の態様は、第1乃至3の態様のうち何れか1つに記載の磁気冷凍装置において、前記磁気回路(20)は、前記磁気作業物質(11)に対する磁場の印加又は除去を行う。
【0022】
第8の態様では、磁気作業物質(11)に対する磁場の印加又は除去を行うことで、磁気作業物質(11)を発熱又は冷却することができる。
【0023】
本開示の第9の態様は、第1乃至3の態様のうち何れか1つに記載の磁気冷凍装置(10)と、前記磁気冷凍装置(10)と熱交換する熱媒体回路(2)と、を備える冷凍機である。
【0024】
第9の態様では、磁気冷凍装置(10)を備えた冷凍機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、実施形態1の冷凍機の配管系統図である。
【
図2】
図2は、磁気冷凍装置の構成を示す平面断面図である。
【
図3】
図3は、磁気冷凍装置の構成を示す側面断面図である。
【
図4】
図4は、第1ヨーク部、第2ヨーク部、第3ヨーク部の断面積を比較して説明するための図である。
【
図5】
図5は、磁石孔が周方向に開口した状態を示す平面断面図である。
【
図6】
図6は、磁石孔が径方向に開口した状態を示す平面断面図である。
【
図7】
図7は、実施形態2の磁気冷凍装置の構成を示す側面断面図である。
【
図8】
図8は、磁石孔の開口位置を示す斜視図である。
【
図9】
図9は、磁石孔の別の開口位置を示す斜視図である。
【
図10】
図10は、実施形態3の磁気冷凍装置の構成を示す側面断面図である。
【
図11】
図11は、実施形態4の磁気冷凍装置の構成を示す平面断面図である。
【
図12】
図12は、磁気冷凍装置の構成を示す側面断面図である。
【
図13】
図13は、第1ヨーク部、第2ヨーク部、第3ヨーク部の断面積を比較して説明するための図である。
【
図14】
図14は、磁石孔が周方向に開口した状態を示す平面断面図である。
【
図15】
図15は、磁石孔が軸方向に開口した状態を示す平面断面図である。
【
図16】
図16は、実施形態5の磁気冷凍装置の構成を示す側面断面図である。
【
図17】
図17は、磁石孔が角部の外側に開口した状態を示す側面断面図である。
【
図18】
図18は、実施形態6の磁気冷凍装置の構成を示す側面断面図である。
【
図19】
図19は、第1ヨーク部、第2ヨーク部、第3ヨーク部の断面積を比較して説明するための図である。
【
図20】
図20は、実施形態7の磁気冷凍装置の構成を示す側面断面図である。
【
図21】
図21は、実施形態8の磁気冷凍装置の構成を示す側面断面図である。
【
図22】
図22は、実施形態9の磁気冷凍装置の構成を示す側面断面図である。
【
図23】
図23は、実施形態10の磁気冷凍装置の構成を示す平面図である。
【
図24】
図24は、第1ヨーク構成体の構成を示す平面図である。
【
図25】
図25は、第2ヨーク構成体の構成を示す側面図である。
【
図26】
図26は、実施形態11の磁気冷凍装置の構成を示す側面断面図である。
【
図27】
図27は、実施形態12の磁気冷凍装置の構成を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
《実施形態1》
図1に示すように、冷凍機(1)は、熱媒体回路(2)を備える。冷凍機(1)は、例えば、空気調和装置に適用される。熱媒体回路(2)には、熱媒体が充填される。熱媒体は、例えば、冷媒、水、ブラインなどを含む。
【0027】
冷凍機(1)は、低温側熱交換器(3)と、高温側熱交換器(4)と、ポンプ(5)と、磁気冷凍装置(10)と、を備える。磁気冷凍装置(10)は、磁気熱量効果を利用して熱媒体の温度を調節する。
【0028】
熱媒体回路(2)は、閉ループ状に形成される。熱媒体回路(2)には、ポンプ(5)、低温側熱交換器(3)、磁気冷凍装置(10)、高温側熱交換器(4)が順に接続される。
【0029】
熱媒体回路(2)は、低温側流路(2a)と、高温側流路(2b)と、を含む。低温側流路(2a)は、磁気冷凍装置(10)の温調流路(10a)と、ポンプ(5)の第1ポート(6a)と、を接続する。高温側流路(2b)は、磁気冷凍装置(10)の温調流路(10a)と、ポンプ(5)の第2ポート(6b)と、を接続する。
【0030】
〈低温側熱交換器及び高温側熱交換器〉
低温側熱交換器(3)は、磁気冷凍装置(10)で冷却された熱媒体と、所定の冷却対象(例えば、二次冷媒や空気など)と、を熱交換させる。高温側熱交換器(4)は、磁気冷凍装置(10)で加熱された熱媒体と、所定の加熱対象(例えば、二次冷媒や空気など)と、を熱交換させる。
【0031】
〈ポンプ〉
ポンプ(5)は、第1動作と、第2動作と、を交互に繰り返し行う。第1動作では、熱媒体回路(2)の熱媒体を、
図1で時計回りに搬送する。第2動作では、熱媒体回路(2)の熱媒体を
図1で反時計回りに搬送する。ポンプ(5)は、熱媒体回路(2)の熱媒体を往復的に流動させる搬送機構を構成する。
【0032】
ポンプ(5)は、往復式のピストンポンプで構成される。ポンプ(5)は、ポンプケース(6)と、ピストン(7)と、を備える。
【0033】
ピストン(7)は、ポンプケース(6)の内部で進退可能に配置される。ピストン(7)は、ポンプケース(6)の内部を、第1室(S1)と、第2室(S2)と、に仕切る。ポンプケース(6)には、第1ポート(6a)と、第2ポート(6b)と、が設けられる。第1ポート(6a)は、第1室(S1)に連通する。第1ポート(6a)は、低温側流路(2a)に接続される。第2ポート(6b)は、第2室(S2)に連通する。第2ポート(6b)は、高温側流路(2b)に接続される。ピストン(7)は、駆動機構(図示省略)によって駆動される。
【0034】
第1動作では、ピストン(7)が第1ポート(6a)側に移動する。第1動作では、第1室(S1)の容積が小さくなり且つ第2室(S2)の容積が大きくなる。この結果、第1室(S1)の熱媒体は、第1ポート(6a)を通じて低温側流路(2a)に吐出される。同時に、高温側流路(2b)の熱媒体は、第2ポート(6b)を通じて第2室(S2)に吸い込まれる。
【0035】
第2動作では、ピストン(7)が第2ポート(6b)側に移動する。第2動作では、第2室(S2)の容積が小さくなり且つ第1室(S1)の容積が大きくなる。この結果、第2室(S2)の熱媒体は、第2ポート(6b)を通じて高温側流路(2b)に吐出される。同時に、低温側流路(2a)の熱媒体は、第1ポート(6a)を通じて第1室(S1)に吸い込まれる。
【0036】
〈制御部〉
冷凍機(1)は、制御部(8)を備える。制御部(8)は、所定の運転指令に応じて、ポンプ(5)及び磁気冷凍装置(10)の動作を制御する。制御部(8)は、マイクロコンピュータと、マイクロコンピュータを動作させるためのソフトウエアを格納するメモリデバイス(具体的には半導体メモリ)と、を用いて構成される。
【0037】
〈磁気冷凍装置〉
図2は、磁気冷凍装置の構成を示す平面断面図である。
図3は、磁気冷凍装置の構成を示す側面断面図である。ここでいう「平面」とは、磁気作業物質(11)を流れる磁束の流れ方向から見た面であり、「側面」とは、磁気作業物質(11)を流れる磁束の流れ方向に垂直な方向から見た面であり、以下同様である。
図2及び
図3に示すように、磁気冷凍装置(10)は、磁気作業物質(11)と、磁気回路としての磁場印加部(20)と、回転機構(15)と、を備える。
図2において、ヨーク(30)に隠れた部分にも、図に示される磁気作業物質(11)と同形状の磁気作業物質(11)が存在する。
【0038】
磁気作業物質(11)は、周囲を熱媒体が流通する隙間を有する。磁場が印加されることで発熱する。磁気作業物質(11)は、磁場が取り除かれることで吸熱する。なお、磁気作業物質(11)は、印加された磁場が強くなることでも発熱する。磁気作業物質(11)は、印加された磁場が弱くなることでも吸熱する。
【0039】
磁気作業物質(11)の材料としては、例えば、Gd5(Ge0.5Si0.5)4、La(Fe1-xSix)13、La(Fe1-xCoxSiy)13、La(Fe1-xSix)13Hy、Mn(As0.9Sb0.1)等を用いることができる。
【0040】
磁気作業物質(11)は、容器(12)内に収納される。容器(12)は、周方向に沿って円弧状に延びる。容器(12)は、例えば、非磁性材料で構成される。磁気作業物質(11)が収納された容器(12)は、周方向に所定の間隔をあけて複数配置される。容器(12)は、温調流路(10a)の一部であり、熱媒体が流入及び吐出するように構成される。容器(12)内の熱媒体は、磁気作業物質(11)の周囲を流通する。
【0041】
回転機構(15)は、回転軸(16)と、モータ(17)と、を有する。回転軸(16)は、モータ(17)に連結される。モータ(17)は、回転軸(16)を回転させる。回転軸(16)には、磁場印加部(20)が連結される。
【0042】
磁場印加部(20)は、磁気作業物質(11)に対して周方向に相対移動する。具体的に、磁場印加部(20)は、モータ(17)の回転に伴って、回転軸(16)とともに軸心周りに回転する。これにより、磁気作業物質(11)に対して、磁場印加部(20)が相対回転移動する。
【0043】
磁場印加部(20)は、複数の永久磁石(21)と、ヨーク(30)と、を有する。ヨーク(30)は、軟磁性材料で構成される。ヨーク(30)は、例えば、鉄を鋳造又は焼結することで構成される。ヨーク(30)は、支柱部(31)と、第1径方向突部(32)と、第2径方向突部(33)と、第1軸方向突部(34)と、第2軸方向突部(35)と、を有する。
【0044】
支柱部(31)は、筒状に形成される。支柱部(31)には、回転軸(16)が連結される。第1径方向突部(32)は、支柱部(31)の軸方向の一端(
図3で上端)から径方向外方に延びる。第1径方向突部(32)は、周方向に所定の間隔をあけて複数設けられる。
【0045】
第2径方向突部(33)は、支柱部(31)の軸方向の他端(
図3で下端)から径方向外方に延びる。第2径方向突部(33)は、周方向に所定の間隔をあけて複数設けられる。第2径方向突部(33)は、軸方向から見て第1径方向突部(32)と重なり合う位置に設けられる。
【0046】
第1軸方向突部(34)は、第1径方向突部(32)の先端部から第2径方向突部(33)に向かって下方に延びる。第2軸方向突部(35)は、第2径方向突部(33)の先端部から第1径方向突部(32)に向かって上方に延びる。
【0047】
永久磁石(21)は、ヨーク(30)に設けられる。具体的に、ヨーク(30)における第1軸方向突部(34)及び第2軸方向突部(35)には、磁石孔(36)が形成される。永久磁石(21)は、磁石孔(36)に挿入される。なお、磁石孔(36)の開口方向については後述する。
【0048】
永久磁石(21)は、第1軸方向突部(34)及び第2軸方向突部(35)の先端部の近傍において、第1軸方向突部(34)及び第2軸方向突部(35)の先端面と略平行な姿勢で配置される。
【0049】
永久磁石(21)は、例えば、円弧状に形成される。永久磁石(21)の材料としては、例えば、Nd-Fe-B系の磁石や、SmCo系の磁石を用いることができる。
【0050】
図3に示す例では、永久磁石(21)は、軸方向に着磁される。永久磁石(21)は、
図3で上側がN極、
図3で下側がS極となるように配置される。なお、永久磁石(21)におけるN極及びS極の位置関係は、逆向きでもよい。永久磁石(21)は、ヨーク(30)に磁束を流す。
【0051】
第1軸方向突部(34)と第2軸方向突部(35)とは、軸方向に対向する。第1軸方向突部(34)及び第2軸方向突部(35)は、磁場印加部(20)の磁極を構成する。第1軸方向突部(34)及び第2軸方向突部(35)の間には、磁気ギャップとしての空隙部(27)が設けられる。空隙部(27)には、磁気作業物質(11)が配置される。
【0052】
磁気作業物質(11)に対して第1軸方向突部(34)及び第2軸方向突部(35)を軸方向に対向させると、磁気作業物質(11)の軸方向に磁束が流れる。なお、磁束の流れを仮想線の矢印線で示す。
【0053】
磁気冷凍装置(10)では、第2軸方向突部(35)から第1軸方向突部(34)に向かって磁束が流れる。これにより、磁場が印加された磁気作業物質(11)が発熱する。
【0054】
その後、磁場印加部(20)を回転移動させ、隣接する磁気作業物質(11)に対して第1軸方向突部(34)及び第2軸方向突部(35)を軸方向に対向させる。これにより、最初に磁場を印加した磁気作業物質(11)は、磁場が取り除かれることで吸熱する。一方、隣接する磁気作業物質(11)は、磁場が印加されることで発熱する。
【0055】
〈第1ヨーク部、第2ヨーク部、第3ヨーク部〉
本実施形態では、ヨーク(30)の断面形状を工夫することで、永久磁石(21)の磁束を、磁気作業物質(11)に対して効率良く作用させることができるようにしている。
【0056】
図4に示すように、ヨーク(30)は、第1ヨーク部(41)と、第2ヨーク部(42)と、第3ヨーク部(43)と、を有する。
【0057】
第1ヨーク部(41)は、永久磁石(21)に対して磁場印加部(20)の磁束の流れ方向の一方に配置される。
図4に示す例では、第1ヨーク部(41)は、永久磁石(21)よりも空隙部(27)側に隣接して配置される。
【0058】
第2ヨーク部(42)は、永久磁石(21)に対して磁場印加部(20)の磁束の流れ方向の他方に配置される。
図4に示す例では、第2ヨーク部(42)は、永久磁石(21)に対して空隙部(27)とは反対側に隣接して配置される。
【0059】
第3ヨーク部(43)は、永久磁石(21)に対して磁場印加部(20)の磁束の流れ方向に交差する方向に配置される。
図4に示す例では、第3ヨーク部(43)は、永久磁石(21)の周辺を囲むように隣接して配置される。第3ヨーク部(43)は、第1ヨーク部(41)と第2ヨーク部(42)を連結する働きを有する。また、第3ヨーク部(43)は、永久磁石(21)の両磁極間を短絡する磁束(磁場印加部(20)の磁束の流れとは逆向きの磁束)が流れる。
【0060】
第3ヨーク部(43)の断面積は、磁場印加部(20)の磁束の流れ方向から見て、第1ヨーク部(41)の断面積よりも小さい。具体的に、第3ヨーク部(43)の断面積は、第1ヨーク部(41)の断面積の10分の1以下、好ましくは、50分の1以下である。
【0061】
第3ヨーク部(43)の断面積は、磁場印加部(20)の磁束の流れ方向から見て、第2ヨーク部(42)の断面積よりも小さい。具体的に、第3ヨーク部(43)の断面積は、第2ヨーク部(42)の断面積の10分の1以下、好ましくは、50分の1以下である。
【0062】
このようにすれば、第3ヨーク部(43)において磁気飽和させることで、永久磁石(21)の両磁極間を短絡する磁束を小さくし、永久磁石(21)のほとんどの磁束を磁気作業物質(11)に作用させることができる。
【0063】
〈ヨークに対する永久磁石の挿入方向〉
本実施形態では、永久磁石(21)が磁束の流れ方向に移動しないように、ヨーク(30)に対する永久磁石(21)の挿入方向を工夫するようにした。
【0064】
図3に示すように、第1軸方向突部(34)及び第2軸方向突部(35)には、磁石孔(36)が形成される。磁石孔(36)は、磁場印加部(20)の磁束の流れ方向に交差する方向に開口する。具体的に、
図5に示すように、磁石孔(36)は、周方向の一端が開口し、他端が閉塞している。永久磁石(21)は、磁石孔(36)の開口から挿入した後、接着剤などで固定する。なお、磁石孔(36)の開口を図示しない蓋部材で塞ぐようにしてもよい。蓋部材は、永久磁石(21)の両磁極間を短絡する磁束を増やさないため、非磁性体であることが望ましい。なお、蓋部材は、薄い磁性体でもよい。この場合、蓋部材の断面積は、磁場印加部(20)の磁束の流れ方向から見て、小さくすることが必要である。
【0065】
これにより、永久磁石(21)は、磁石孔(36)に挿入された状態でヨーク(30)に保持される。ここで、永久磁石(21)の空隙部(27)側には、第1ヨーク部(41)が配置されているので、第1ヨーク部(41)によって、永久磁石(21)が磁束の流れ方向に移動しないように保持することができる。
【0066】
なお、
図5とは異なる方向に、磁石孔(36)を開口させてもよい。具体的に、
図6に示すように、磁石孔(36)は、径方向の外側が開口し、径方向の内側が閉塞している。永久磁石(21)は、磁石孔(36)の開口から挿入した後、接着剤などで固定する。なお、磁石孔(36)の開口を図示しない蓋部材で塞ぐようにしてもよい。また、磁石孔(36)の開口は、片側でも両側でもよい。
【0067】
-冷凍装置の運転動作-
冷凍機(1)の基本的な運転動作について、
図1を用いて説明する。冷凍機(1)は、加熱動作と、冷却動作とを交互に繰り返し行う。加熱動作と冷却動作とを切り換える周期は、例えば、0.1秒から1秒程度に設定される。
【0068】
〈加熱動作〉
加熱動作では、ポンプ(5)が第1動作を行うとともに、磁場印加部(20)が第1磁場印加動作を行う。つまり、加熱動作では、ポンプ(5)の第1ポート(6a)から熱媒体が吐出される。同時に、磁気作業物質(11)に磁場が印加される。
【0069】
ポンプ(5)の第1室(S1)から低温側流路(2a)に熱媒体が吐出されると、低温側流路(2a)の熱媒体は、磁気冷凍装置(10)の温調流路(10a)に流入する。第1磁場印加動作中の冷凍機(1)では、磁気作業物質(11)からその周囲の熱媒体へ熱が放出される。このため、温調流路(10a)を流れる熱媒体は、磁気作業物質(11)によって加熱される。温調流路(10a)で加熱された熱媒体は、高温側流路(2b)に流出し、高温側熱交換器(4)を流れる。高温側熱交換器(4)では、高温の熱媒体によって所定の加熱対象(例えば、二次冷媒や空気など)が加熱される。高温側流路(2b)の熱媒体は、ポンプ(5)の第2ポート(6b)から第2室(S2)に吸い込まれる。
【0070】
〈冷却動作〉
冷却動作では、ポンプ(5)が第2動作を行うとともに、磁場印加部(20)が第2磁場印加動作を行う。つまり、加熱動作では、ポンプ(5)の第2ポート(6b)から熱媒体が吐出されると同時に、磁気作業物質(11)の磁場が取り除かれる。
【0071】
ポンプ(5)の第2室(S2)から高温側流路(2b)に熱媒体が吐出されると、高温側流路(2b)の熱媒体は、磁気冷凍装置(10)の温調流路(10a)に流入する。第2磁場印加動作中の冷凍機(1)では、磁気作業物質(11)がその周囲の熱を奪う。このため、温調流路(10a)を流れる熱媒体は、磁気作業物質(11)によって冷却される。温調流路(10a)で冷却された熱媒体は、低温側流路(2a)に流出し、低温側熱交換器(3)を流れる。低温側熱交換器(3)では、低温の熱媒体によって所定の冷却対象(例えば、二次冷媒や空気など)が冷却される。低温側流路(2a)の熱媒体は、ポンプ(5)の第1ポート(6a)から第1室(S1)に吸い込まれる。
【0072】
-実施形態1の効果-
本実施形態の特徴によれば、ヨーク(30)は、永久磁石(21)に対して磁気回路(20)の磁束の流れ方向の一方に配置された第1ヨーク部(41)と、永久磁石(21)に対して磁気回路(20)の磁束の流れ方向の他方に配置された第2ヨーク部(42)と、永久磁石(21)に対して磁気回路(20)の磁束の流れ方向に交差する方向に配置された第3ヨーク部(43)と、を有する。永久磁石(21)は、磁気回路(20)内で磁束の流れの方向に固定され、磁気作業物質(11)と第1ヨーク部(41)の間に固定のための機構(ねじ等)がないため、磁気作業物質(11)と第1ヨーク部(41)の間の磁気抵抗を小さくすることができる。
【0073】
そして、磁束の流れ方向から見て、第3ヨーク部(43)の断面積を、第1ヨーク部(41)の断面積よりも小さく、且つ前記第2ヨーク部(42)の断面積よりも小さくすることで、第3ヨーク部(43)において磁気飽和させ、永久磁石(21)のほとんどの磁束を磁気作業物質(11)に作用させることができる。
【0074】
本実施形態の特徴によれば、磁気回路(20)の磁束の流れ方向から見て、第3ヨーク部(43)の断面積を、第1ヨーク部(41)の断面積の10分の1以下、且つ第2ヨーク部(42)の断面積の10分の1以下とすることで、永久磁石(21)のほとんどの磁束を磁気作業物質(11)に作用させることができる。
【0075】
本実施形態の特徴によれば、磁気回路(20)の磁束の流れ方向から見て、第3ヨーク部(43)の断面積を、第1ヨーク部(41)の断面積の50分の1以下、且つ第2ヨーク部(42)の断面積の50分の1以下とすることで、永久磁石(21)のほとんどの磁束を磁気作業物質(11)に作用させることができる。
【0076】
本実施形態の特徴によれば、磁気作業物質(11)に対する磁場の印加又は除去を行うことで、磁気作業物質(11)を発熱又は冷却することができる。
【0077】
本実施形態の特徴によれば、磁気冷凍装置(10)と、磁気冷凍装置(10)と熱交換する熱媒体回路(2)と、を備えた冷凍機(1)を提供できる。
【0078】
《実施形態2》
以下、前記実施形態1と同じ部分については、同じ符号を付し、相違点についてのみ説明する。
【0079】
図7に示すように、磁気冷凍装置(10)は、磁気作業物質(11)と、磁場印加部(20)と、移動機構(18)と、を備える。
【0080】
移動機構(18)は、シリンダ(18a)と、シリンダロッド(18b)と、を有する。シリンダ(18a)は、シリンダロッド(18b)を進退させる。シリンダロッド(18b)は、磁場印加部(20)に連結される。
【0081】
磁場印加部(20)は、複数の永久磁石(21)と、ヨーク(30)と、を有する。ヨーク(30)は、支柱部(31)と、第1径方向突部(32)と、第2径方向突部(33)と、第1軸方向突部(34)と、第2軸方向突部(35)と、を有する。
【0082】
支柱部(31)には、シリンダロッド(18b)が連結される。第1径方向突部(32)は、支柱部(31)の軸方向の一端(
図7で上端)からシリンダロッド(18b)の軸(長手)方向のシリンダロッド(18b)の反対側に延びる。第2径方向突部(33)は、支柱部(31)の磁束の流れ(長手)方向の他端(
図7で下端)からシリンダロッド(18b)の軸(長手)径方向のシリンダロッド(18b)の反対側に延びる。
【0083】
第1軸方向突部(34)は、第1径方向突部(32)の先端部から第2径方向突部(33)に向かって紙面下方に延びる。第2軸方向突部(35)は、第2径方向突部(33)の先端部から第1径方向突部(32)に向かって紙面上方に延びる。
【0084】
永久磁石(21)は、ヨーク(30)に設けられる。具体的に、ヨーク(30)における第1軸方向突部(34)及び第2軸方向突部(35)には、磁石孔(36)が形成される。永久磁石(21)は、磁石孔(36)に挿入される。
【0085】
磁場印加部(20)は、磁気作業物質(11)に対して、
図7で左右方向に相対移動する。磁気作業物質(11)に対して第1軸方向突部(34)及び第2軸方向突部(35)を対向させると、磁気作業物質(11)は、磁場が印加されることで発熱する。一方、磁気作業物質(11)から離れた位置に、第1軸方向突部(34)及び第2軸方向突部(35)を移動させると、磁気作業物質(11)は、磁場が取り除かれることで吸熱する。
【0086】
〈ヨークに対する永久磁石の挿入方向〉
本実施形態では、永久磁石(21)が磁束の流れ方向に移動しないように、ヨーク(30)に対する永久磁石(21)の挿入方向を工夫するようにした。
【0087】
図8に示すように、第1軸方向突部(34)及び第2軸方向突部(35)には、磁石孔(36)が形成される。磁石孔(36)は、磁場印加部(20)の磁束の流れ方向に交差する方向に開口する。具体的に、磁石孔(36)は、支柱部(31)が延びる方向に沿った中心軸を中心に、第1軸方向突部(34)及び第2軸方向突部(35)の周方向の一端が開口し、他端が閉塞している。永久磁石(21)は、磁石孔(36)の開口から挿入した後、接着剤などで固定する。なお、磁石孔(36)の開口を図示しない蓋部材で塞ぐようにしてもよい。
【0088】
これにより、永久磁石(21)は、磁石孔(36)に挿入された状態でヨーク(30)に保持される。ここで、永久磁石(21)の空隙部(27)側には、第1ヨーク部(41)が配置されているので、第1ヨーク部(41)によって、永久磁石(21)が磁束の流れ方向に移動しないように保持することができる。特に、磁石孔(36)を磁場印加部(20)の磁束の流れ方向に交差する方向に開口することによって、永久磁石(21)は磁石孔(36)内部で安定する。
【0089】
なお、
図8とは異なる方向に、磁石孔(36)を開口させてもよい。具体的に、
図9に示すように、磁石孔(36)は、径方向の外側が開口し、径方向の内側が閉塞している。永久磁石(21)は、磁石孔(36)の開口から挿入した後、接着剤などで固定する。なお、磁石孔(36)の開口を図示しない蓋部材で塞ぐようにしてもよい。
【0090】
-実施形態2の効果-
本実施形態の特徴によれば、磁気作業物質(11)に対する磁場の印加又は除去を行うことで、磁気作業物質(11)を発熱又は冷却することができる。
【0091】
《実施形態3》
図10に示すように、磁気冷凍装置(10)は、磁気作業物質(11)と、磁場印加部(20)と、制御部(8)と、を備える。
【0092】
磁場印加部(20)は、永久磁石(21)と、ヨーク(30)と、コイル(50)と、電源(55)と、を有する。ヨーク(30)は、支柱部(31)と、第1径方向突部(32)と、第2径方向突部(33)と、第1軸方向突部(34)と、第2軸方向突部(35)と、を有する。
【0093】
第1径方向突部(32)は、支柱部(31)の軸方向の一端(
図10で上端)から径方向外方に延びる。第2径方向突部(33)は、支柱部(31)の軸方向の他端(
図10で下端)から径方向外方に延びる。
【0094】
第1軸方向突部(34)は、第1径方向突部(32)の先端部から第2径方向突部(33)に向かって下方に延びる。第2軸方向突部(35)は、第2径方向突部(33)の先端部から第1径方向突部(32)に向かって上方に延びる。
【0095】
第1軸方向突部(34)及び第2軸方向突部(35)の間には、磁気ギャップとしての空隙部(27)が設けられる。空隙部(27)には、磁気作業物質(11)が配置される。なお、第1軸方向突部(34)及び第2軸方向突部(35)は、磁気作業物質(11)の容器(12)に密着させた状態としてもよい。
【0096】
永久磁石(21)は、ヨーク(30)によって形成される磁路の途中に配置される。具体的に、永久磁石(21)は、ヨーク(30)における支柱部(31)に設けられる。永久磁石(21)は、着磁量を変更できる磁石である。永久磁石(21)には種々の磁石を採用できる。一例として、永久磁石(21)には、重希土類元素を含まない希土類磁石(ネオジム磁石)、アルニコ磁石、鉄ニッケル磁石、窒化鉄磁石、サマリウムコバルト磁石等を採用できる。
【0097】
コイル(50)は、ヨーク(30)に磁束を発生する。コイル(50)は、永久磁石(21)の近傍において、ヨーク(30)に導線が巻回されて形成される。コイル(50)に電流を流せば、ヨーク(30)を介して、永久磁石(21)に磁場を印加することができる。
【0098】
電源(55)は、コイル(50)に電流を供給する。電源(55)は、パルス電流を出力する。電源(55)は、出力する電流の向きを可変できる。電源(55)は、制御部(8)の制御に応じて、コイル(50)へのパルス電流の供給有無を切り替えることができる。
【0099】
永久磁石(21)に対して、磁場を印加したり、印加する磁場を除去したりすることによって、着磁量を変更できる。
【0100】
着磁工程において、永久磁石(21)に磁場が印加されると、永久磁石(21)の着磁量が増加して、磁気作業物質(11)に永久磁石(21)から磁場が印加される。磁気作業物質(11)に磁場が印加されると、磁気作業物質(11)が発熱する。
【0101】
一方、減磁工程において、永久磁石(21)に印加される磁場の向きを、着磁工程における磁場の向きとは逆にすると、永久磁石(21)の着磁量が減少する。永久磁石(21)の着磁量が低減すると、磁気作業物質(11)に印加される磁場が弱くなる。磁気作業物質(11)に印加される磁場が弱くなると、磁気作業物質(11)が吸熱する。
【0102】
-実施形態3の効果-
本実施形態の特徴によれば、コイル(50)に電流を供給して、永久磁石(21)に対して磁場を印加したり、印加する磁場を除去したりすることによって、着磁量を変更できる。これにより、磁気作業物質(11)に対する磁場の印加又は除去を行うことで、磁気作業物質(11)を発熱又は冷却することができる。
【0103】
《実施形態4》
図11及び
図12に示すように、磁場印加部(20)は、複数の永久磁石(21)と、ヨーク(30)と、を有する。ヨーク(30)は、支柱部(31)と、第1径方向突部(32)と、第2径方向突部(33)と、第1軸方向突部(34)と、第2軸方向突部(35)と、を有する。
【0104】
永久磁石(21)は、ヨーク(30)に設けられる。具体的に、ヨーク(30)における第1径方向突部(32)及び第2径方向突部(33)には、磁石孔(36)が形成される。永久磁石(21)は、磁石孔(36)に挿入される。なお、磁石孔(36)の開口方向については後述する。
図12に示す例では、永久磁石(21)は、径方向に着磁される。永久磁石(21)は、ヨーク(30)に磁束を流す。
【0105】
〈第1ヨーク部、第2ヨーク部、第3ヨーク部〉
図13に示すように、ヨーク(30)は、第1ヨーク部(41)と、第2ヨーク部(42)と、第3ヨーク部(43)と、を有する。
【0106】
第1ヨーク部(41)は、永久磁石(21)に対して磁場印加部(20)の磁束の流れ方向の一方に配置される。
図13に示す例では、第1ヨーク部(41)は、永久磁石(21)よりも空隙部(27)側(
図13で右側)に隣接して配置される。
【0107】
第2ヨーク部(42)は、永久磁石(21)に対して磁場印加部(20)の磁束の流れ方向の他方に配置される。
図13に示す例では、第2ヨーク部(42)は、永久磁石(21)に対して空隙部(27)とは反対側(
図13で左側)に隣接して配置される。
【0108】
第3ヨーク部(43)は、永久磁石(21)に対して磁場印加部(20)の磁束の流れ方向に交差する方向に配置される。
図13に示す例では、第3ヨーク部(43)は、永久磁石(21)の周辺を囲むように隣接して配置される。
【0109】
第3ヨーク部(43)の断面積は、磁場印加部(20)の磁束の流れ方向から見て、第1ヨーク部(41)の断面積よりも小さい。具体的に、第3ヨーク部(43)の断面積は、第1ヨーク部(41)の断面積の10分の1以下、好ましくは、50分の1以下である。
【0110】
第3ヨーク部(43)の断面積は、磁場印加部(20)の磁束の流れ方向から見て、第2ヨーク部(42)の断面積よりも小さい。具体的に、第3ヨーク部(43)の断面積は、第2ヨーク部(42)の断面積の10分の1以下、好ましくは、50分の1以下である。
【0111】
〈ヨークに対する永久磁石の挿入方向〉
本実施形態では、永久磁石(21)が磁束の流れ方向に移動しないように、ヨーク(30)に対する永久磁石(21)の挿入方向を工夫するようにした。
【0112】
図14に示すように、第1径方向突部(32)及び第2径方向突部(33)には、磁石孔(36)が形成される。磁石孔(36)は、磁場印加部(20)の磁束の流れ方向に交差する方向に開口する。具体的に、
図14に示すように、磁石孔(36)は、周方向の一端が開口し、他端が閉塞している。永久磁石(21)は、磁石孔(36)の開口から挿入した後、接着剤などで固定する。なお、磁石孔(36)の開口を図示しない蓋部材で塞ぐようにしてもよい。
【0113】
これにより、永久磁石(21)が磁石孔(36)に挿入された状態でヨーク(30)に保持される。ここで、永久磁石(21)の空隙部(27)側には、第1ヨーク部(41)が配置されているので、第1ヨーク部(41)によって、永久磁石(21)が磁束の流れ方向に移動しないように保持することができる。
【0114】
なお、
図14とは異なる方向に、磁石孔(36)を開口させてもよい。具体的に、
図15に示すように、磁石孔(36)は、軸方向の外側が開口し、軸方向の内側が閉塞している。永久磁石(21)は、磁石孔(36)の開口から挿入した後、接着剤などで固定する。なお、磁石孔(36)の開口を図示しない蓋部材で塞ぐようにしてもよい。
【0115】
-実施形態4の効果-
本実施形態の特徴によれば、第3ヨーク部(43)において磁気飽和させ、永久磁石(21)のほとんどの磁束を磁気作業物質(11)に作用させることができる。
【0116】
また、永久磁石(21)は、第1軸方向突部(34)及び第2軸方向突部(35)に配置される場合に比べて、回転軸(16)からの径方向の距離が近い位置に配置される。そのため、永久磁石(21)に加わる遠心力が小さくなり、永久磁石(21)を保持するヨーク(30)の強度を確保することができる。
【0117】
《実施形態5》
図16に示すように、磁場印加部(20)は、複数の永久磁石(21)と、ヨーク(30)と、を有する。ヨーク(30)は、支柱部(31)と、第1径方向突部(32)と、第2径方向突部(33)と、第1軸方向突部(34)と、第2軸方向突部(35)と、を有する。
【0118】
永久磁石(21)は、ヨーク(30)に設けられる。具体的に、ヨーク(30)における第1径方向突部(32)と第1軸方向突部(34)との間の角部には、磁石孔(36)が形成される。また、ヨーク(30)における第2径方向突部(33)と第2軸方向突部(35)との間の角部にも同様に、磁石孔(36)が形成される。
図16に示す例では、磁石孔(36)は、周方向の一端が開口し、他端が閉塞している。
【0119】
永久磁石(21)は、磁石孔(36)に挿入される。永久磁石(21)は、ヨーク(30)に磁束を流す。永久磁石(21)は、磁石孔(36)の開口から挿入した後、接着剤などで固定する。なお、磁石孔(36)の開口を図示しない蓋部材で塞ぐようにしてもよい。
【0120】
ここで、ヨーク(30)における第1径方向突部(32)と第1軸方向突部(34)との間の角部の外側及び内側には、面取り加工がされる。これにより、永久磁石(21)の厚み方向に沿って延びるヨーク(30)の幅が略一定となるように形成され、漏れ磁束を効果的に減らすことができる。
【0121】
なお、
図16とは異なる方向に、磁石孔(36)を開口させてもよい。具体的に、
図17に示すように、磁石孔(36)は、ヨーク(30)における第1径方向突部(32)と第1軸方向突部(34)との間の角部の外側が開口し、角部の内側が閉塞している。永久磁石(21)は、磁石孔(36)の開口から挿入した後、接着剤などで固定する。なお、磁石孔(36)の開口を図示しない蓋部材で塞ぐようにしてもよい。
【0122】
-実施形態5の効果-
本実施形態の特徴によれば、永久磁石(21)は、磁場印加部(20)の磁束の流れ方向に対して傾斜した姿勢でヨーク(30)に配置される。これにより、磁束の流れ方向から見たヨーク(30)の幅よりも大きな幅の永久磁石(21)をヨーク(30)に配置することができる。
【0123】
《実施形態6》
図18に示すように、磁場印加部(20)は、複数の永久磁石(21)と、ヨーク(30)と、を有する。ヨーク(30)は、支柱部(31)と、第1径方向突部(32)と、第2径方向突部(33)と、第1軸方向突部(34)と、第2軸方向突部(35)と、を有する。
【0124】
第1軸方向突部(34)には、磁石孔(36)が形成される。磁石孔(36)は、第1磁石孔(36a)と、第2磁石孔(36b)と、を含む。永久磁石(21)は、第1磁石(21a)と、第2磁石(21b)と、を含む。第1磁石孔(36a)には、第1磁石(21a)が配置される。第2磁石孔(36b)には、第2磁石(21b)が配置される。
【0125】
第2軸方向突部(35)には、第1磁石孔(36a)と、第2磁石孔(36b)と、が形成される。第1磁石孔(36a)には、第1磁石(21a)が配置される。第2磁石孔(36b)には、第2磁石(21b)が配置される。
【0126】
第1磁石(21a)及び第2磁石(21b)は、所定の開き角度でV字状に並び且つV字状の開き面が磁気作業物質(11)を向いた姿勢でヨーク(30)に配置される。
【0127】
図19に示すように、ヨーク(30)は、第1ヨーク部(41)と、第2ヨーク部(42)と、第3ヨーク部(43)と、を有する。なお、
図19に示す例では、断面積の大きさを比較しやすくするために、ヨーク(30)の断面形状が矩形状であるとして説明する。なお、
図4に示すように、ヨーク(30)の断面形状が円弧状であってもよい。
【0128】
第1ヨーク部(41)は、永久磁石(21)に対して磁場印加部(20)の磁束の流れ方向の一方に配置される。
図19に示す例では、第1ヨーク部(41)は、永久磁石(21)よりも空隙部(27)側に隣接して配置される。
【0129】
第2ヨーク部(42)は、永久磁石(21)に対して磁場印加部(20)の磁束の流れ方向の他方に配置される。
図19に示す例では、第2ヨーク部(42)は、永久磁石(21)に対して空隙部(27)とは反対側に隣接して配置される。
【0130】
第3ヨーク部(43)は、永久磁石(21)に対して磁場印加部(20)の磁束の流れ方向に交差する方向に配置される。
図19に示す例では、第3ヨーク部(43)は、
図19のC3矢印線で切断した面に永久磁石(21)を投影した場合に、永久磁石(21)の周辺を囲むように隣接して配置される。つまり、C3断面において、漏れ磁束経路のうち最も狭い部分を第3ヨーク部(43)とする。
【0131】
ここで、第1磁石(21a)及び第2磁石(21b)の間にコアが存在する場合、第1磁石(21a)及び第2磁石(21b)が最も近接する部分に存在するコアも第3ヨーク部(43)に含める。第3ヨーク部(43)は、永久磁石(21)の磁束の方向と逆方向に磁束が流れる経路の中で最も狭い部分と言い換えることができる。
【0132】
第3ヨーク部(43)は、第1ヨーク部(41)と第2ヨーク部(42)を連結する働きを有する。また、第3ヨーク部(43)は、永久磁石(21)の両磁極間を短絡する磁束(磁場印加部(20)の磁束の流れとは逆向きの磁束)が流れる(
図19の実線矢印)。
【0133】
第3ヨーク部(43)の断面積は、磁場印加部(20)の磁束の流れ方向から見て、第1ヨーク部(41)の断面積よりも小さい。具体的に、第3ヨーク部(43)の断面積は、第1ヨーク部(41)の断面積の10分の1以下、好ましくは、50分の1以下である。
【0134】
第3ヨーク部(43)の断面積は、磁場印加部(20)の磁束の流れ方向から見て、第2ヨーク部(42)の断面積よりも小さい。具体的に、第3ヨーク部(43)の断面積は、第2ヨーク部(42)の断面積の10分の1以下、好ましくは、50分の1以下である。
【0135】
このようにすれば、第3ヨーク部(43)において磁気飽和させることで、永久磁石(21)の両磁極間を短絡する磁束を小さくし、永久磁石(21)のほとんどの磁束を磁気作業物質(11)に作用させることができる。
【0136】
-実施形態6の効果-
本実施形態の特徴によれば、磁気作業物質(11)の中央部に磁束を集めて漏れ磁束を低減することができる。また、磁束の流れ方向から見たヨーク(30)の幅よりも表面積の大きな永久磁石(21)をヨーク(30)に配置することができる。
【0137】
《実施形態7》
図20に示すように、磁場印加部(20)は、複数の永久磁石(21)と、ヨーク(30)と、を有する。ヨーク(30)は、支柱部(31)と、第1径方向突部(32)と、第2径方向突部(33)と、第1軸方向突部(34)と、第2軸方向突部(35)と、を有する。
【0138】
第1軸方向突部(34)及び第2軸方向突部(35)には、湾曲状の磁石孔(36)が形成される。磁石孔(36)には、永久磁石(21)が配置される。永久磁石(21)は、湾曲状に形成される。永久磁石(21)は、湾曲して窪んだ凹面が磁気作業物質(11)を向いた姿勢でヨーク(30)に配置される。
【0139】
-実施形態7の効果-
本実施形態の特徴によれば、磁気作業物質(11)の中央部に磁束を集めて漏れ磁束を低減することができる。また、磁束の流れ方向から見たヨーク(30)の幅よりも表面積の大きな永久磁石(21)をヨーク(30)に配置することができる。
【0140】
《実施形態8》
図21に示すように、磁場印加部(20)は、複数の永久磁石(21)と、ヨーク(30)と、を有する。ヨーク(30)は、支柱部(31)と、第1径方向突部(32)と、第2径方向突部(33)と、第1軸方向突部(34)と、第2軸方向突部(35)と、を有する。
【0141】
第1径方向突部(32)には、磁石孔(36)が形成される。磁石孔(36)は、第1磁石孔(36a)と、第2磁石孔(36b)と、を含む。永久磁石(21)は、第1磁石(21a)と、第2磁石(21b)と、を含む。第1磁石孔(36a)には、第1磁石(21a)が配置される。第2磁石孔(36b)には、第2磁石(21b)が配置される。
【0142】
第2径方向突部(33)には、第1磁石孔(36a)と、第2磁石孔(36b)と、が形成される。第1磁石孔(36a)には、第1磁石(21a)が配置される。第2磁石孔(36b)には、第2磁石(21b)が配置される。
【0143】
第1磁石(21a)及び第2磁石(21b)は、所定の開き角度でV字状に並び且つV字状の開き面が磁気作業物質(11)を向いた姿勢でヨーク(30)に配置される。
【0144】
-実施形態8の効果-
本実施形態の特徴によれば、磁気作業物質(11)の中央部に磁束を集めて漏れ磁束を低減することができる。また、磁束の流れ方向から見たヨーク(30)の幅よりも表面積の大きな永久磁石(21)をヨーク(30)に配置することができる。ここで、第1磁石(21a)及び第2磁石(21b)の間にコアが存在する場合、このコアも第3ヨーク部(43)に含める。第3ヨーク部(43)は、永久磁石(21)の磁束の方向と逆方向に磁束が流れる部分と言い換えることができる。
【0145】
《実施形態9》
図22に示すように、磁場印加部(20)は、複数の永久磁石(21)と、ヨーク(30)と、を有する。ヨーク(30)は、支柱部(31)と、第1径方向突部(32)と、第2径方向突部(33)と、第1軸方向突部(34)と、第2軸方向突部(35)と、を有する。
【0146】
第1径方向突部(32)及び第2径方向突部(33)には、湾曲状の磁石孔(36)が形成される。磁石孔(36)には、永久磁石(21)が配置される。永久磁石(21)は、湾曲状に形成される。永久磁石(21)は、湾曲して窪んだ凹面が磁気作業物質(11)を向いた姿勢でヨーク(30)に配置される。
【0147】
-実施形態9の効果-
本実施形態の特徴によれば、磁気作業物質(11)の中央部に磁束を集めて漏れ磁束を低減することができる。また、磁束の流れ方向から見たヨーク(30)の幅よりも表面積の大きな永久磁石(21)をヨーク(30)に配置することができる。
【0148】
《実施形態10》
図23に示すように、磁場印加部(20)は、複数の永久磁石(21)と、ヨーク(30)と、を有する。ヨーク(30)は、例えば、軸心に対する周方向、又は周方向中心における接線方向に積層した電磁鋼板で構成される。
【0149】
具体的に、ヨーク(30)は、第1ヨーク構成体(45)と、第2ヨーク構成体(46)と、を有する。
図24に示すように、第1ヨーク構成体(45)は、リング状の電磁鋼板を軸方向に複数積層することで構成される。第1ヨーク構成体(45)の外周面には、周方向に間隔をあけて複数の凹部(45a)が形成される。凹部(45a)は、積層方向に沿って延びる。
【0150】
図25に示すように、第2ヨーク構成体(46)は、電磁鋼板を複数積層することで構成される。第2ヨーク構成体(46)は、支柱部(31)と、第1径方向突部(32)と、第1軸方向突部(34)と、第2径方向突部(33)と、第2軸方向突部(35)と、を有する。
【0151】
第1軸方向突部(34)及び第2軸方向突部(35)には、磁石孔(36)が形成される。磁石孔(36)は、第2ヨーク構成体(46)の積層方向の一端が開口し、他端が閉塞している。永久磁石(21)は、磁石孔(36)の開口から挿入した後、接着剤などで固定する。なお、磁石孔(36)の開口を図示しない蓋部材で塞ぐようにしてもよい。
【0152】
図23に示すように、第1ヨーク構成体(45)の凹部(45a)に、第2ヨーク構成体(46)の支柱部(31)を嵌合することで、ヨーク(30)を組み立てることができる。
【0153】
-実施形態10の効果-
本実施形態の特徴によれば、第1ヨーク構成体(45)と、第2ヨーク構成体(46)と、を電磁鋼板によって別々に構成しておき、第1ヨーク構成体(45)と第2ヨーク構成体(46)とを組み合わせることで、ヨーク(30)を製造することができる。
【0154】
《実施形態11》
図26に示すように、磁場印加部(20)は、複数の永久磁石(21)と、ヨーク(30)と、を有する。ヨーク(30)は、支柱部(31)と、第1径方向突部(32)と、第2径方向突部(33)と、第1軸方向突部(34)と、第2軸方向突部(35)と、を有する。
【0155】
第1径方向突部(32)には、磁石孔(36)が形成される。磁石孔(36)は、第1磁石孔(36a)と、第2磁石孔(36b)と、を含む。永久磁石(21)は、第1磁石(21a)と、第2磁石(21b)と、を含む。第1磁石孔(36a)には、第1磁石(21a)が配置される。第2磁石孔(36b)には、第2磁石(21b)が配置される。
【0156】
第2径方向突部(33)には、第1磁石孔(36a)と、第2磁石孔(36b)と、が形成される。第1磁石孔(36a)には、第1磁石(21a)が配置される。第2磁石孔(36b)には、第2磁石(21b)が配置される。
【0157】
第1磁石(21a)及び第2磁石(21b)は、所定の開き角度でV字状に並び且つV字状の開き面が磁気作業物質(11)を向いた姿勢でヨーク(30)に配置される。
【0158】
ヨーク(30)における第1磁石(21a)の近傍には、切欠部(48)が設けられる。切欠部(48)は、第1磁石(21a)の厚み方向に沿って延びるヨーク(30)の幅が略一定となるように形成される。
【0159】
ヨーク(30)における第2磁石(21b)の近傍には、切欠部(48)が設けられる。切欠部(48)は、第2磁石(21b)の厚み方向に沿って延びるヨーク(30)の幅が略一定となるように形成される。
【0160】
-実施形態11の効果-
本実施形態の特徴によれば、永久磁石(21)のほとんどの磁束を磁気作業物質(11)に作用させることができる。また、磁気作業物質(11)の中央部に磁束を集めて漏れ磁束を低減することができる。
【0161】
《実施形態12》
図27に示すように、磁気冷凍装置(10)は、磁気作業物質(11)と、磁場印加部(20)と、制御部(8)と、を備える。
【0162】
磁場印加部(20)は、永久磁石(21)と、ヨーク(30)と、第1コイル(51)と、第2コイル(52)と、第1電源(53)と、第2電源(54)と、を有する。
【0163】
ヨーク(30)は、第1ヨーク部材(60)と、第2ヨーク部材(70)と、を有する。第1ヨーク部材(60)及び第2ヨーク部材(70)は、それぞれ略E字状に形成される。第1ヨーク部材(60)及び第2ヨーク部材(70)は、それぞれ軟磁性材料で構成される。
【0164】
第1ヨーク部材(60)は、上側連結部(61)と、第1上側腕部(62)と、第2上側腕部(63)と、第3上側腕部(64)と、を有する。
【0165】
上側連結部(61)は、
図27で左右方向に延びる。第1上側腕部(62)は、上側連結部(61)の一端部(
図27における左端部)から下方に突出する。第2上側腕部(63)は、上側連結部(61)の中央部から下方に突出する。第3上側腕部(64)は、上側連結部(61)の他端部(
図27における右端部)から下方に突出する。
【0166】
第2ヨーク部材(70)は、下側連結部(71)と、第1下側腕部(72)と、第2下側腕部(73)と、第3下側腕部(74)と、を有する。
【0167】
下側連結部(71)は、
図27で左右方向に延びる。第1下側腕部(72)は、下側連結部(71)の一端部(
図27における左端部)から上方に突出する。第2下側腕部(73)は、下側連結部(71)の中央部から上方に突出する。第3下側腕部(74)は、下側連結部(71)の他端部(
図27における右端部)から上方に突出する。
【0168】
第1上側腕部(62)と第1下側腕部(72)との間には、磁気作業物質(11)が配置される。第2上側腕部(63)と第2下側腕部(73)との間には、磁石孔(36)が形成される。磁石孔(36)には、永久磁石(21)が配置される。第3上側腕部(64)と第3下側腕部(74)との間には、磁気作業物質(11)が配置される。
【0169】
ヨーク(30)は、第1上側腕部(62)、上側連結部(61)、第2上側腕部(63)、第2下側腕部(73)、下側連結部(71)、第1下側腕部(72)を介して、磁気作業物質(11)と永久磁石(21)とが磁気的に直列接続されて第1閉磁路(81)を形成する。
【0170】
ヨーク(30)は、第2上側腕部(63)、上側連結部(61)、第3上側腕部(64)、第3下側腕部(74)、下側連結部(71)、第2下側腕部(73)を介して、磁気作業物質(11)と永久磁石(21)とが磁気的に直列接続されて第2閉磁路(82)を形成する。
【0171】
第1コイル(51)は、第1閉磁路(81)に設けられる。第2コイル(52)は、第2閉磁路(82)に設けられる。第1電源(53)は、第1コイル(51)に接続される。第2電源(54)は、第2コイル(52)に接続される。
【0172】
第1コイル(51)に正の電流(すなわち、第1コイル(51)の内部に左向きの磁場を発生させるための電流)が流れることで、
図27で左側の磁気作業物質(11)に印加される磁場が強められるとともに、
図27で右側の磁気作業物質(11)に印加される磁場が弱められる。
【0173】
一方、第2コイル(52)に正の電流(すなわち、第2コイル(52)の内部に右向きの磁場を発生させるための電流)が流れることで、
図27で左側の磁気作業物質(11)に印加される磁場が弱められるとともに、
図27で右側の磁気作業物質(11)に印加される磁場が強められる。
【0174】
〈第1ヨーク部、第2ヨーク部、第3ヨーク部〉
図27に示すように、ヨーク(30)は、第1ヨーク部(41)と、第2ヨーク部(42)と、第3ヨーク部(43)と、を有する。
【0175】
第1ヨーク部(41)は、永久磁石(21)に対して磁場印加部(20)の磁束の流れ方向の一方に配置される。
図27に示す例では、第1ヨーク部(41)は、永久磁石(21)に対して
図27で上側に隣接して配置される。
【0176】
第2ヨーク部(42)は、永久磁石(21)に対して磁場印加部(20)の磁束の流れ方向の他方に配置される。
図27に示す例では、第2ヨーク部(42)は、永久磁石(21)に対して
図27で下側に隣接して配置される。
【0177】
第3ヨーク部(43)は、永久磁石(21)に対して磁場印加部(20)の磁束の流れ方向に交差する方向に配置される。
図27に示す例では、第3ヨーク部(43)は、永久磁石(21)の周辺を囲むように隣接して配置される。
【0178】
第3ヨーク部(43)の断面積は、磁場印加部(20)の磁束の流れ方向から見て、第1ヨーク部(41)の断面積よりも小さい。具体的に、第3ヨーク部(43)の断面積は、第1ヨーク部(41)の断面積の10分の1以下、好ましくは、50分の1以下である。
【0179】
第3ヨーク部(43)の断面積は、磁場印加部(20)の磁束の流れ方向から見て、第2ヨーク部(42)の断面積よりも小さい。具体的に、第3ヨーク部(43)の断面積は、第2ヨーク部(42)の断面積の10分の1以下、好ましくは、50分の1以下である。
【0180】
-実施形態12の効果-
本実施形態の特徴によれば、第1閉磁路(81)及び第2閉磁路(82)の両方に磁気作業物質(11)が設けられる。そして、第1コイル(51)又は第2コイル(52)に流れる電流を制御することにより、第1閉磁路(81)側の磁気作業物質(11)と、第2閉磁路(82)側の磁気作業物質(11)とに、発熱作用及び吸熱作用を交互に生じさせることができる。
【0181】
これにより、磁気冷凍装置(10)全体で見ると、その動作中に発熱作用及び吸熱作用が常に生じることになり、温熱及び冷熱を連続して取り出すことが可能となる。
【0182】
以上、実施形態及び変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態、変形例、その他の実施形態に係る要素を適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。また、明細書及び特許請求の範囲の「第1」、「第2」、「第3」…という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0183】
以上説明したように、本開示は、磁気冷凍装置及び冷凍機について有用である。
【符号の説明】
【0184】
1 冷凍機
2 熱媒体回路
10 磁気冷凍装置
11 磁気作業物質
20 磁場印加部(磁気回路)
21 永久磁石
21a 第1磁石
21b 第2磁石
27 空隙部
30 ヨーク
36 磁石孔
41 第1ヨーク部
42 第2ヨーク部
43 第3ヨーク部