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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048544
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】石膏ボード及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/14 20060101AFI20240402BHJP
   C04B 11/02 20060101ALI20240402BHJP
   C04B 11/26 20060101ALI20240402BHJP
   B28B 1/30 20060101ALI20240402BHJP
   B28C 7/04 20060101ALI20240402BHJP
   C04B 18/16 20230101ALI20240402BHJP
【FI】
C04B28/14
C04B11/02
C04B11/26
B28B1/30
B28C7/04
C04B18/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154508
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】517408689
【氏名又は名称】株式会社HAMY
(74)【代理人】
【識別番号】100095577
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 富雅
(74)【代理人】
【識別番号】100100424
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 知公
(72)【発明者】
【氏名】平田 耕一
【テーマコード(参考)】
4G052
4G056
4G112
【Fターム(参考)】
4G052DA01
4G052DB14
4G052DC06
4G056AA02
4G056CA02
4G056CB35
4G112PA30
(57)【要約】      (修正有)
【課題】石膏ボードの製造工程において、スラリーへ添加する水の量を低減する新たな方法を提案する。
【解決手段】この発明の石膏ボードの製造方法は、汎用的に用いられる微細な半水石膏からなる第1石膏粒子と、平均粒径が0.5mm~5.0mmである第2粒子とを含むスラリーを準備する工程と、該スラリーを石膏ボード用原紙へ供給する工程と、を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
石膏ボードの製造方法であって、
汎用的に用いられる微細な半水石膏からなる第1石膏粒子と、平均粒径が0.5mm~5.0mmである第2粒子とを含むスラリーを準備する工程と、
該スラリーを石膏ボード用原紙へ供給する工程と、
を含む石膏ボードの製造方法。
【請求項2】
前記第2粒子は半水石膏、二水石膏若しくはその両者を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
廃石膏ボードを破砕して微細な粒子を得る工程と
前記微細な粒子を造粒して前記第2粒子を得る工程と、を含む請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
廃石膏ボードを破砕する工程と、
破砕された廃石膏ボードをふるい分けして、前記第2粒子を得る工程と、を含む請求項2に記載の製造方法。
【請求項5】
汎用的に用いられる微細な半水石膏からなる第1石膏粒子と、平均粒径が0.5mm~5.0mmである第2粒子を含む石膏ボード用のスラリー。
【請求項6】
前記第2粒子は半水石膏、二水石膏若しくはその両者を含む、請求項5に記載のスラリー。
【請求項7】
前記第2粒子の配合量は第1石膏粒子に対する質量比で25%~100%である、請求項6に記載のスラリー。
【請求項8】
石膏ボードであって、
微細な石膏粒子からなるマトリックス領域と、
0.5mm~5.0mmの平均粒径の島領域と、を備える石膏ボード。
【請求項9】
前記島領域は半水石膏、二水石膏若しくはその両者を含む、請求項8に記載の石膏ボード。
【請求項10】
前記島領域は、前記マトリックス領域に対して、質量比で25%~100%である、請求項9に記載の石膏ボード。
【請求項11】
前記島領域は、廃石膏ボード由来の石膏粒子の造粒物である、請求項10に記載の石膏ボード。
【請求項12】
前記島領域は、廃石膏ボード由来の石膏の破砕物である、請求項10に記載の石膏ボード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は石膏ボードの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、石膏ボードは次のようにして製造される。
原料となる石膏(二水石膏)を焼成して半水石膏とし、これを粉砕する。粉砕された半水石膏に各種の添加材を加え、更に水を加えて混錬してスラリーとする。
このスラリーを原紙へ供給して板状とし硬化させる。その後、乾燥工程、賦形工程を経て、製品である石膏ボードとなる。
【0003】
ここで、原紙へスラリーを供給するにはスラリーに高い流動性が必要となり、そのために半水石膏粒子へ十分な水を添加しなければならない。添加された水(水和に必要な水は除く)は乾燥工程において加熱除去されるので、乾燥工程に要求される熱量は添加された水の量に比例する。
廃石膏ボードを再利用する際には、スラリー作成時により多くの水が必要になるので、当該水の量を低減することが大きな課題となっている。
そこで、従来から、省エネルギーの要求として、スラリー作成時に要求される水の量を低減する方法が提案されている(特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6529205号公報
【特許文献2】特許第5380494号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
減水剤及び発泡剤を利用する特許文献1に記載の製造方法によれば、確かにスラリー作成時の水の量を低減することができたが、昨今の更なる省エネルギーの要求に答えるためには限界があった。
特許文献2に開示の方法では、半水石膏の粒子を得るため、焼成工程、加水処理工程及び再焼成工程を経る。そのため、製造工程が複雑となり、スループットの低下、ひいては石膏ボードの製造コストの増加を引き起こしかねない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記背景技術を参照しつつも、スラリー作成時に要求される水の量を低減すべく、鋭意検討を重ねてきた。その結果、スラリーを構成する石膏の粒子を制御することに気がついた。
即ち、この発明の第1局面は次のように規定される。
石膏ボードの製造方法であって、
汎用的に用いられる微細な半水石膏からなる第1石膏粒子と、平均粒径が0.5mm~5.0mmである第2粒子を含むスラリーを準備する工程と、
該スラリーを石膏ボード用原紙へ供給する工程と、
を含む石膏ボードの製造方法。
【0007】
従来の石膏ボードの製造方法では、そのスラリーには、石膏成分として、半水石膏粒子のみが含まれる。かかる第1石膏粒子の平均粒径は20μm~100μであった。
本発明者の検討によれば、第1石膏粒子として、廃石膏ボード由来のものを15質量%含ませた半水石膏粒子を採用したとき、スラリーに好適な流動性を付与するには第1石膏粒子に対して75質量%の水が必要であった。
これに対し、第1石膏粒子へこれより平均粒径が大きな第2粒子を混在させることにより、好適な流動性を備えたスラリーを得るのに必要な水の量を低減させることができた。
【0008】
第2粒子の平均粒径は0.5mm~5.0mmとすることが好ましい。平均粒径を5.0mm以下にすることで石膏ボードの基部の表面に平滑性が維持される。また、平均粒径を0.5mm以上とすることで、減水効果を確実に得られる。
更に好ましい第2粒子の平均粒径は1.0mm~3.0mmである。
なお、第1石膏粒子及び第2粒子の平均粒径の特定方法は特に限定されるものではないが、この発明では第1石膏粒子の平均粒径はレーザ回折式の粒度分布測定装置で測定した。第2粒子の平均粒径はフルイにより特定した。
【0009】
上記において、第1石膏粒子を構成する半水石膏は、バージン(非廃石膏ボード由来)粒子のみであっても、バージン粒子と廃石膏ボード由来の混合物であってもよい。両者の配合割合やその平均粒径も任意に選択可能である。
第2粒子を構成する材料は、石膏ボードに要求される防火性等の特性を維持できるものであれば、特に限定されない。石膏の他、砂等の細骨材等の無機材料を用いることができる。
第2粒子の配合量は特に限定されないが、第1石膏粒子に対する質量比で25%~100%とすることが好ましい。
両者の比を100質量%以下とすることで石膏ボードの基部の表面の平坦性を維持できる。両者の比を25質量%以上とすることで、減水効果を確実に得られる。
第1石膏粒子に対する更に好ましい第2粒子の質量比は25%~50%である。
【0010】
第2粒子の材料として石膏成分を用いることが好ましい。この石膏成分はバージンのものであっても、廃石膏ボード由来のものであっても、また両者の混合体であってもよい。
SDGs等の環境を考慮したときは、第2粒子として廃石膏ボード由来のものを採用することが好ましい。
第2粒子に要求される平均粒径を満足すれば、第2粒子は廃石膏ボード由来の微細粒子を造粒して得たものでもよいし、また、廃石膏ボードの破砕物をふるい分けして得たものでもよい。
【0011】
スラリーには、汎用的に用いられる添加剤を添加できる。
かかる添加剤として、減水剤、発泡剤、接着増強剤、硬化促進剤等を配合できる。
減水剤としてナフタレンスルホン酸系等を挙げることができる。減水剤の配合量はスラリーに対して0.1~0.5質量%である。
発泡剤として界面活性剤等を挙げることができる。発泡剤の配合量はスラリーに対して0.01~0.1質量%である。
接着増強剤として酸化デンプン等を挙げることができる。接着増強剤の配合量はスラリーに対して0.2~0.5質量%である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この発明の実施形態について、実施例及び比較例に基づいて説明をする。
(実施例1)
第1石膏粒子として、平均粒径25μm~50μmの半水石膏の粒子を準備した。この第1石膏粒子には15質量%の廃石膏ボード由来の材料が含まれている。
第2粒子として、第1石膏粒子を造粒したもの(平均粒径3.0mm)、準備した。第1石膏粒子は押出成形により造粒した。
この第1石膏粒子75質量部と第2粒子25質量部に対して、0.2質量部の促進剤(微細二水石膏)と0.3質量部の接着増強剤(酸化デンプン)とを添加し、更に60質量部の水を加えて、石膏ボード用ミキサーにて、混錬した。
得られたスラリーは、石膏ボードの製造工程において原紙に供給するものとして十分な流動性を備えていた。スラリーの流動性はカップを使った目視により評価した。
上記において、第1石膏粒子の平均粒径はレーザ回折式粒度分布測定装置(堀場製作所製、型番LA-920の粒径測定装置)を用いて特定し、第2粒子はJIS 8801-1試験用フルイを用いて特定した。
【0013】
(比較例1)
上記実施例1において第2粒子を用いず、第1石膏粒子のみを100質量部採用し、他の添加物や撹拌の条件を同じとしたとき、十分な流動性を備えるスラリーを得るには75質量部の水が必要であった。実施例1の1.25倍の水の量である。
【0014】
実施例1及び比較例1のスラリーを石膏ボードの製造プロセスに投入したとき、その乾燥工程で消費される熱量は、実施例のスラリーでは比較例のスラリーの80%となる。
実施例1のスラリーから得られる石膏ボードの基部(石膏ボードから表裏原紙を除いた、石膏からなる板状の部分、この明細書において同じ)には、第1石膏粒子に由来するマトリックス領域に第2粒子に由来する島領域が均一に分散した状態である。この基部は、石膏ボードに要求される遮音性、防・耐火性、機械的強度等の施工性を備えている。
島領域の平均粒径は、第2粒子と同様に、3.0mmである。
【0015】
(第2実施例)
第1実施例において、第2粒子として、廃石膏ボード由来の石膏のみからなる微粒子を造粒したものを採用する。その平均粒径3.0mmである。
他の添加剤や撹拌の条件を同じとしたとき、十分な流動性を備えるスラリーを得るには60質量部の水が必要である。実施例1の水の量と同じである。
実施例2のスラリーから得られる石膏ボードの基部には、第1石膏粒子に由来するマトリックス領域に第2粒子に由来する島領域が均一に分散した状態である。この基部は、石膏ボードに要求される遮音性、防・耐火性、機械的強度等の施工性を備えている。
島領域の平均粒径は、第2粒子と同様に、3.0mmである。
【0016】
(第3実施例)
第1実施例において、第2粒子として、廃石膏ボードを破砕しかつふるい分けしたもの採用する。その平均粒径は3.0mmである。
他の添加剤や撹拌の条件を同じとしたとき、十分な流動性を備えるスラリーを得るには60質量部の水が必要である。実施例1の水の量と同じである。
実施例3のスラリーから得られる石膏ボードの基部には、第1石膏粒子に由来するマトリックス領域に第2粒子に由来する島領域が均一に分散した状態である。この基部は、石膏ボードに要求される遮音性、防・耐火性、機械的強度等の施工性を備えている。
島領域の平均粒径は、第2粒子と同様に、3.0mmである。
【0017】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
この明細書において、石膏ボードには、石膏板、石膏系建築資材なども含まれる。