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特開2024-48552半導体装置、半導体モジュールおよび半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048552
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】半導体装置、半導体モジュールおよび半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20240402BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20240402BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20240402BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20240402BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
H01L21/60 301N
H01L29/78 655F
H01L29/78 653A
H01L29/78 657D
H01L29/78 655B
H01L29/78 655D
H01L29/78 652P
H01L29/06 301V
H01L29/06 301G
H01L29/78 658J
H01L29/78 652Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154518
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江袋 佑太
(72)【発明者】
【氏名】山野 彰生
【テーマコード(参考)】
5F044
【Fターム(参考)】
5F044AA14
5F044EE21
(57)【要約】
【課題】上面電極におけるワイヤの接続位置を精度よく規定する。
【解決手段】上面視において異なる位置に設けられたトランジスタ部およびダイオード部を備える半導体装置であって、前記トランジスタ部および前記ダイオード部が設けられた半導体基板と、前記半導体基板の上方に配置された上面電極と、前記上面電極よりも上方に配置され、上面視において前記トランジスタ部および前記ダイオード部の両方と重なって配置された第1マーク部とを備え、前記第1マーク部は、前記上面視または前記半導体基板の深さ方向において、凹形状または凸形状を有する半導体装置を提供する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面視において異なる位置に設けられたトランジスタ部およびダイオード部を備える半導体装置であって、
前記トランジスタ部および前記ダイオード部が設けられた半導体基板と、
前記半導体基板の上方に配置された上面電極と、
前記上面電極よりも上方に配置され、上面視において前記トランジスタ部および前記ダイオード部の両方と重なって配置された第1マーク部と
を備え、
前記第1マーク部は、前記上面視または前記半導体基板の深さ方向において、凹形状または凸形状を有する半導体装置。
【請求項2】
前記トランジスタ部および前記ダイオード部は、前記上面視において第1方向に沿って交互に並んで配置され、
前記第1マーク部の前記第1方向における長さは、1つの前記トランジスタ部および1つの前記ダイオード部の前記第1方向における長さの和よりも小さい
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記上面電極よりも上方に配置された保護膜を更に備え、
前記第1マーク部は、前記保護膜に設けられている
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記トランジスタ部および前記ダイオード部は、前記上面視において第1方向に沿って交互に並んで配置され、
前記保護膜は、前記第1方向に沿って延伸する第1延伸部を有し、
前記第1マーク部は、前記第1延伸部から、上面視において前記第1方向とは異なる第2方向に向かって突出する
請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1マーク部の上端位置は、前記第1延伸部の上端位置よりも低い
請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記トランジスタ部および前記ダイオード部は、前記上面視において第1方向に沿って交互に並んで配置され、
前記保護膜は、前記第1方向に沿って延伸する第1延伸部を有し、
前記第1マーク部は、前記第1延伸部から上方に向かって突出する
請求項3に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記トランジスタ部および前記ダイオード部は、前記上面視において第1方向に沿って交互に並んで配置され、
前記保護膜は、
前記第1方向に沿って延伸し、前記第1マーク部が設けられた第1延伸部と、
上面視において前記第1方向とは異なる第2方向に沿って延伸する第2延伸部と
を有し、
前記第2延伸部に設けられ、前記上面視または前記半導体基板の深さ方向において、凹形状または凸形状を有する第2マーク部を更に備える
請求項3に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第1マーク部の前記第1方向における長さは、前記第2マーク部の前記第2方向における長さよりも大きい
請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記上面電極よりも上方に配置され、前記上面視において前記トランジスタ部および前記ダイオード部の両方と重なって配置された第3マーク部を更に備え、
前記第3マーク部は、前記上面視または前記半導体基板の深さ方向において、凹形状または凸形状を有し、
前記トランジスタ部および前記ダイオード部は、前記上面視において第2方向に沿って長手を有し、
前記第1マーク部および前記第3マーク部は、前記第2方向において向かい合って配置されている
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項10】
上面視において異なる位置に設けられたトランジスタ部およびダイオード部を備える半導体装置と、電気回路と、前記半導体装置および前記電気回路を接続するワイヤとを備える半導体モジュールであって、
前記半導体装置は、
前記トランジスタ部および前記ダイオード部が設けられた半導体基板と、
前記半導体基板の上方に配置され、前記ワイヤが接続された上面電極と、
前記上面電極よりも上方に配置され、前記上面視において前記トランジスタ部および前記ダイオード部の両方と重なって配置された第1マーク部と
を備え、
前記第1マーク部は、前記上面視または前記半導体基板の深さ方向において、凹形状または凸形状を有する
半導体モジュール。
【請求項11】
前記半導体装置は、前記上面電極よりも上方に配置され、前記上面視において前記トランジスタ部および前記ダイオード部の両方と重なって配置された第2マーク部を更に備え、
前記第2マーク部は、前記上面視または前記半導体基板の深さ方向において、凹形状または凸形状を有し、
前記トランジスタ部および前記ダイオード部は、前記上面視において第1方向に沿って交互に並んで配置され、
前記トランジスタ部および前記ダイオード部は、前記上面視において第2方向に沿って長手を有し、
前記ワイヤにおいて前記上面電極に接続される接続部は、前記第2方向において前記第1マーク部と向かい合って配置され、且つ、前記第1方向において前記第2マーク部と向かい合って配置されている
請求項10に記載の半導体モジュール。
【請求項12】
前記半導体装置は、前記上面電極よりも上方に配置され、前記上面視において前記トランジスタ部および前記ダイオード部の両方と重なって配置された第3マーク部を更に備え、
前記第3マーク部は、前記上面視または前記半導体基板の深さ方向において、凹形状または凸形状を有し、
前記ワイヤにおいて前記上面電極に接続される接続部は、前記第1マーク部と前記第3マーク部に挟まれている
請求項10に記載の半導体モジュール。
【請求項13】
上面視において異なる位置に設けられたトランジスタ部およびダイオード部を備える半導体装置の製造方法であって、
半導体基板に前記トランジスタ部および前記ダイオード部を形成し、
前記半導体基板の上方に上面電極を形成し、
前記上面電極よりも上方に配置され、上面視において前記トランジスタ部および前記ダイオード部の両方と重なって配置され、前記上面視または前記半導体基板の深さ方向において、凹形状または凸形状を有する第1マーク部を形成する
半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、半導体モジュールおよび半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のトランジスタ部と、FWD(Free Wheeling Diode)等のダイオード部とを備える半導体装置が知られている(例えば特許文献1-4参照)。
特許文献1 特開2020-202250号公報
特許文献2 再表2020/059285号公報
特許文献3 特開2019-201160号公報
特許文献4 特開2021-166247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
半導体装置の上面電極には、ワイヤ等が接続される。ワイヤ等は、上面電極における所定の位置に精度よく接続されていることが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の一つの態様においては、上面視において異なる位置に設けられたトランジスタ部およびダイオード部を備える半導体装置を提供する。半導体装置は、前記トランジスタ部および前記ダイオード部が設けられた半導体基板を備えてよい。上記何れかの半導体装置は、前記半導体基板の上方に配置された上面電極を備えてよい。上記何れかの半導体装置は、前記上面電極よりも上方に配置され、上面視において前記トランジスタ部および前記ダイオード部の両方と重なって配置された第1マーク部を備えてよい。上記何れかの半導体装置において、前記第1マーク部は、前記上面視または前記半導体基板の深さ方向において、凹形状または凸形状を有してよい。
【0005】
上記何れかの半導体装置において、前記トランジスタ部および前記ダイオード部は、前記上面視において第1方向に沿って交互に並んで配置されてよい。上記何れかの半導体装置において、前記第1マーク部の前記第1方向における長さは、1つの前記トランジスタ部および1つの前記ダイオード部の前記第1方向における長さの和よりも小さくてよい。
【0006】
上記何れかの半導体装置は、前記上面電極よりも上方に配置された保護膜を備えてよい。上記何れかの半導体装置において、前記第1マーク部は、前記保護膜に設けられていてよい。
【0007】
上記何れかの半導体装置において、前記トランジスタ部および前記ダイオード部は、前記上面視において第1方向に沿って交互に並んで配置されてよい。上記何れかの半導体装置において、前記保護膜は、前記第1方向に沿って延伸する第1延伸部を有してよい。上記何れかの半導体装置において、前記第1マーク部は、前記第1延伸部から、上面視において前記第1方向とは異なる第2方向に向かって突出してよい。
【0008】
上記何れかの半導体装置において、前記第1マーク部の上端位置は、前記第1延伸部の上端位置よりも低くてよい。
【0009】
上記何れかの半導体装置において、前記トランジスタ部および前記ダイオード部は、前記上面視において第1方向に沿って交互に並んで配置されてよい。上記何れかの半導体装置において、前記保護膜は、前記第1方向に沿って延伸する第1延伸部を有してよい。上記何れかの半導体装置において、前記第1マーク部は、前記第1延伸部から上方に向かって突出してよい。
【0010】
上記何れかの半導体装置において、前記トランジスタ部および前記ダイオード部は、前記上面視において第1方向に沿って交互に並んで配置されてよい。上記何れかの半導体装置において、前記保護膜は、前記第1方向に沿って延伸し、前記第1マーク部が設けられた第1延伸部を有してよい。上記何れかの半導体装置において、前記保護膜は、上面視において前記第1方向とは異なる第2方向に沿って延伸する第2延伸部を有してよい。上記何れかの半導体装置は、前記第2延伸部に設けられ、前記上面視または前記半導体基板の深さ方向において、凹形状または凸形状を有する第2マーク部を備えてよい。
【0011】
上記何れかの半導体装置において、前記第1マーク部の前記第1方向における長さは、前記第2マーク部の前記第2方向における長さよりも大きくてよい。
【0012】
上記何れかの半導体装置は、前記上面電極よりも上方に配置され、前記上面視において前記トランジスタ部および前記ダイオード部の両方と重なって配置された第3マーク部を備えてよい。上記何れかの半導体装置において、前記第3マーク部は、前記上面視または前記半導体基板の深さ方向において、凹形状または凸形状を有してよい。上記何れかの半導体装置において、前記トランジスタ部および前記ダイオード部は、前記上面視において第2方向に沿って長手を有してよい。上記何れかの半導体装置において、前記第1マーク部および前記第3マーク部は、前記第2方向において向かい合って配置されていてよい。
【0013】
本発明の第2の態様においては、第1の態様に係る半導体装置と、電気回路と、前記半導体装置および前記電気回路を接続するワイヤとを備える半導体モジュールを提供する。
【0014】
上記半導体モジュールにおいて、前記半導体装置は、前記上面電極よりも上方に配置され、前記上面視において前記トランジスタ部および前記ダイオード部の両方と重なって配置された第2マーク部を備えてよい。上記何れかの半導体モジュールにおいて、前記第2マーク部は、前記上面視または前記半導体基板の深さ方向において、凹形状または凸形状を有してよい。上記何れかの半導体モジュールにおいて、前記トランジスタ部および前記ダイオード部は、前記上面視において第1方向に沿って交互に並んで配置されてよい。上記何れかの半導体モジュールにおいて、前記トランジスタ部および前記ダイオード部は、前記上面視において第2方向に沿って長手を有してよい。上記何れかの半導体モジュールにおいて、前記ワイヤにおいて前記上面電極に接続される接続部は、前記第2方向において前記第1マーク部と向かい合って配置され、且つ、前記第1方向において前記第2マーク部と向かい合って配置されていてよい。
【0015】
上記何れかの半導体モジュールにおいて、前記半導体装置は、前記上面電極よりも上方に配置され、前記上面視において前記トランジスタ部および前記ダイオード部の両方と重なって配置された第3マーク部を備えてよい。上記何れかの半導体モジュールにおいて、前記第3マーク部は、前記上面視または前記半導体基板の深さ方向において、凹形状または凸形状を有してよい。上記何れかの半導体モジュールにおいて、前記ワイヤにおいて前記上面電極に接続される接続部は、前記第1マーク部と前記第3マーク部に挟まれていてよい。
【0016】
本発明の第3の態様においては、上面視において異なる位置に設けられたトランジスタ部およびダイオード部を備える半導体装置の製造方法を提供する。製造方法では、前記半導体基板に前記トランジスタ部および前記ダイオード部を形成してよい。上記何れかの製造方法では、前記半導体基板の上方に上面電極を形成してよい。上記いずれかの製造方法では、前記上面電極よりも上方に配置され、上面視において前記トランジスタ部および前記ダイオード部の両方と重なって配置され、前記上面視または前記半導体基板の深さ方向において、凹形状または凸形状を有する第1マーク部を形成してよい。
【0017】
上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】半導体ウエハ200の一例を示す上面図である。
図2】本発明の一つの実施形態に係る半導体モジュール300の一例を示す断面図である。
図3】参考例に係る半導体装置100-rの上面構造の一例を示す図である。
図4】本発明の一つの実施形態に係る半導体装置100の上面構造の一例を示す図である。
図5】各マーク部と、接続部172の配置例を示す図である。
図6図4におけるA-A断面の一例を示す図である。
図7図4におけるB-B断面の一例を示す図である。
図8図4におけるC-C断面の一例を示す図である。
図9】C-C断面の他の例を示す図である。
図10】半導体装置100の上面構造の他の例を示す図である。
図11】半導体装置100の上面構造の他の例を示す図である。
図12図11におけるD-D断面の一例を示す図である。
図13図11におけるD-D断面の他の例を示す図である。
図14】半導体モジュール300の製造方法の一例を示す図である。
図15】接続部172の位置と、接続部172の温度との関係を示す図である。
図16】接続部172の温度と、パワーサイクル耐量との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0020】
本明細書の単位系は、特に断りがなければSI単位系である。長さの単位をcmで表示することがあるが、諸計算はメートル(m)に換算してから行ってよい。本明細書においては半導体基板の深さ方向と平行な方向における一方の側を「上」、他方の側を「下」と称する。基板、層またはその他の部材の2つの主面のうち、一方の面を上面、他方の面を下面と称する。「上」、「下」の方向は、重力方向または半導体装置の実装時における方向に限定されない。
【0021】
本明細書では、X軸、Y軸およびZ軸の直交座標軸を用いて技術的事項を説明する場合がある。直交座標軸は、構成要素の相対位置を特定するに過ぎず、特定の方向を限定するものではない。例えば、Z軸は地面に対する高さ方向を限定して示すものではない。なお、+Z軸方向と-Z軸方向とは互いに逆向きの方向である。正負を記載せず、Z軸方向と記載した場合、+Z軸および-Z軸に平行な方向を意味する。
【0022】
本明細書では、半導体基板の上面および下面に平行な直交軸をX軸およびY軸とする。また、半導体基板の上面および下面と垂直な軸をZ軸とする。本明細書では、Z軸の方向を深さ方向と称する場合がある。また、本明細書では、X軸およびY軸を含めて、半導体基板の上面および下面に平行な方向を、水平方向と称する場合がある。本明細書において半導体基板の上面側と称した場合、半導体基板の深さ方向における中央から上面までの領域を指す。半導体基板の下面側と称した場合、半導体基板の深さ方向における中央から下面までの領域を指す。
【0023】
本明細書において「同一」または「等しい」のように称した場合、製造ばらつき等に起因する誤差を有する場合も含んでよい。当該誤差は、例えば10%以内である。本明細書において、「垂直」、「平行」または「沿って」のように方向を説明した場合、製造ばらつき等に起因する誤差を有する場合も含んでよい。当該誤差は、例えば5度以内である。
【0024】
図1は、半導体ウエハ200の一例を示す上面図である。半導体ウエハ200は、シリコンまたは化合物半導体等の半導体材料で形成された板状の基板である。半導体ウエハ200は、例えば円盤状である。半導体ウエハ200には、複数の半導体装置100が形成されている。半導体ウエハ200におけるダイシングライン202に沿って半導体ウエハ200を切断することで、それぞれの半導体装置100を切り出すことができる。半導体ウエハ200には、半導体ウエハ200における基準位置を示す基準部204が設けられてもよい。基準部204は、例えば半導体ウエハ200の端部を切り欠いた切欠きである。
【0025】
図2は、本発明の一つの実施形態に係る半導体モジュール300の一例を示す断面図である。半導体モジュール300は、ケース部310、1つ以上の半導体装置100、外部配線320、内部配線330およびワイヤ170を備える。ケース部310は、樹脂またはセラミック等の絶縁材料で形成され、1つ以上の半導体装置100、内部配線330およびワイヤ170を格納する。ケース部310の内部には、半導体装置100、内部配線330およびワイヤ170を覆う封止部312が設けられてよい。封止部312は、例えばシリコンゲル等の絶縁材料で形成されている。ケース部310は、ケース部310内の熱を外部に放熱するための放熱部を有してもよい。放熱部は、例えばケース部310から露出する金属板である。
【0026】
内部配線330および外部配線320は、電気回路の一部である。内部配線330および外部配線320は、互いに電気的に接続されてよい。半導体モジュール300に設けられる電気回路は、他の電気素子を含んでいてもよい。内部配線330は、ケース部310の内部に設けられる。外部配線320は、ケース部310の内部と外部とを電気的に接続する。
【0027】
半導体装置100は、半導体モジュール300の内部に設けられた電気回路に電気的に接続される。本例の半導体装置100は、内部配線330および外部配線320の少なくとも一方と電気的に接続される。図2の例では、半導体装置100の上面に設けられた電極と外部配線320とが、ワイヤ170により電気的に接続されている。
【0028】
図3は、参考例に係る半導体装置100-rの上面構造の一例を示す図である。本明細書では、半導体装置100-rを、単に半導体装置100と称する場合がある。本例の半導体装置100は、半導体ウエハ200から切り出され、半導体モジュール300に実装された状態である。
【0029】
半導体装置100は、半導体基板10を備える。半導体基板10は、シリコンまたは化合物半導体等の半導体材料で形成された基板である。一例として半導体基板10はシリコン基板である。図3においては、半導体装置100の各部材を半導体基板10の上面に投影した位置を示している。図3においては、半導体装置100の一部の部材だけを示しており、一部の部材は省略している。本明細書で単に上面視と称した場合、半導体基板10の上面側から見ることを意味している。上面視においては、上述したように、各部材の位置を半導体基板10の上面に投影してよい。
【0030】
半導体基板10は、上面視において端辺102を有する。本例の半導体基板10は、上面視において互いに向かい合う2組の端辺102(端辺102-1と端辺102-3の組、および、端辺102-2と端辺102-4の組)を有する。図3においては、X軸およびY軸は、いずれかの端辺102と平行である。またZ軸は、半導体基板10の上面と垂直である。
【0031】
半導体基板10には活性部160が設けられている。活性部160は、半導体装置100が動作した場合に主電流が流れる領域である。半導体装置100は、半導体基板10の上面と下面との間で深さ方向に主電流が流れる縦型デバイスであってよく、半導体基板10の上面と略平行な水平方向に主電流が流れる横型デバイスであってもよい。本例の半導体装置100は、縦型デバイスである。本例の活性部160の上方には、エミッタ電極等の上面電極が設けられているが図3では省略している。
【0032】
活性部160には、IGBT等のトランジスタ素子を含むトランジスタ部70、および、FWD等のダイオード素子を含むダイオード部80が設けられている。トランジスタ部70およびダイオード部80は、上面視において異なる位置に設けられている。図3の例では、半導体基板10の上面における所定の第1方向(本例ではX軸方向)に沿って、トランジスタ部70およびダイオード部80が交互に配置されている。本例の半導体装置100は逆導通型IGBT(RC-IGBT)である。
【0033】
図3においては、トランジスタ部70が配置される領域には記号「I」を付し、ダイオード部80が配置される領域には記号「F」を付している。本例のトランジスタ部70およびダイオード部80は、それぞれY軸方向に長手を有してよい。つまり、トランジスタ部70のY軸方向における長さは、X軸方向における幅よりも大きい。同様に、ダイオード部80のY軸方向における長さは、X軸方向における幅よりも大きい。
【0034】
ダイオード部80は、半導体基板10の下面と接する領域に、N+型のカソード領域を有する。本明細書では、カソード領域が設けられた領域を、ダイオード部80と称する。つまりダイオード部80は、上面視においてカソード領域と重なる領域である。半導体基板10の下面においてカソード領域以外の領域には、P+型のコレクタ領域が設けられてよい。
【0035】
トランジスタ部70は、半導体基板10の下面と接する領域に、P+型のコレクタ領域を有する。また、トランジスタ部70は、半導体基板10の上面側に、N型のエミッタ領域、P型のベース領域、ゲート導電部およびゲート絶縁膜を有するゲート構造が周期的に配置されている。
【0036】
半導体装置100は、半導体基板10の上方に1つ以上のパッドを有してよい。本例の半導体装置100は、ゲートパッド120を有している。各パッドは、端辺102の近傍に配置されている。端辺102の近傍とは、上面視における端辺102と、エミッタ電極との間の領域を指す。半導体装置100の実装時において、各パッドは、ワイヤ等の配線を介して半導体装置100とは異なる電気回路に接続される。
【0037】
ゲートパッド120には、ゲート電位が印加される。ゲートパッド120は、後述するゲートトレンチ部の導電部に電気的に接続される。半導体装置100は、ゲートパッド120とゲートトレンチ部とを接続するゲート配線を備える。ゲート配線は、活性部160を囲むように設けられる。ゲート配線は、活性部160を横切るように配置されてもよい。
【0038】
本例の半導体装置100は、上面視において、活性部160と端辺102との間に、耐圧構造部90を備える。耐圧構造部90は、半導体基板10の上面側の電界集中を緩和する。耐圧構造部90は、活性部160を囲んで環状に設けられたガードリング、フィールドプレートおよびリサーフのうちの少なくとも一つを備えていてよい。
【0039】
半導体基板10の上方には、半導体基板10の一部を覆う保護膜110が設けられる。図3において保護膜110には斜線のハッチングを付している。保護膜110は、ポリイミド等の絶縁材料で形成される。保護膜110は、耐圧構造部90を覆うように配置されてよい。保護膜110は、上述したゲート配線を更に覆うように配置されてもよい。図3に示す保護膜110は、活性部160と端辺102との間に配置された耐圧構造部90およびゲート配線を覆う部分を有する。本例の保護膜110は、第1延伸部111、第2延伸部112、第3延伸部113、第4延伸部114を有する。保護膜110は、活性部160を横切って配置されたゲート配線を覆う部分を更に有してよい。
【0040】
第1延伸部111は、第1方向(X軸方向)に延伸している。つまり第1延伸部111は、第1方向に長手を有する。第1延伸部111は、X軸方向と平行な端辺102-1と、活性部160との間に配置されている。第1延伸部111は、活性部160の上方にも配置されていてよい。
【0041】
第2延伸部112は、第1方向とは異なる第2方向(本例ではY軸方向)に延伸している。つまり第2延伸部112は、第2方向に長手を有する。第2延伸部112は、Y軸方向と平行な端辺102-2と、活性部160との間に配置されている。第2延伸部112は、活性部160の上方にも配置されていてよい。
【0042】
第3延伸部113は、第1方向(X軸方向)に延伸している。つまり第3延伸部113は、第1方向に長手を有する。第3延伸部113は、第1延伸部111とY軸方向において向かい合うように配置されている。第3延伸部113は、端辺102-1とは逆側の端辺102-3と、活性部160との間に配置されている。第3延伸部113は、活性部160の上方にも配置されていてよい。
【0043】
第4延伸部114は、第2方向(Y軸方向)に延伸している。つまり第4延伸部114は、第2方向に長手を有する。第4延伸部114は、第2延伸部112とX軸方向において向かい合うように配置されている。第4延伸部114は、端辺102-2とは逆側の端辺102-4と、活性部160との間に配置されている。第4延伸部114は、活性部160の上方にも配置されていてよい。
【0044】
半導体装置100のエミッタ電極(図4等参照)の上面には、ワイヤ170が接続される。ワイヤ170がエミッタ電極の上面と接する領域を、接続部172と称する。ワイヤ170は、エミッタ電極に圧着されてよく、はんだ等の固定部材により固定されていてもよい。ワイヤ170が固定部材で固定される場合、当該固定部材およびワイヤ170がエミッタ電極に接する領域を、接続部172とする。接続部172は、エミッタ電極との接続信頼性が低下しない位置に配置されることが好ましい。
【0045】
半導体装置100がインバータ等の回路に実装されると、トランジスタ部70およびダイオード部80が交互に動作する(つまり交互に主電流が流れる)。トランジスタ部70が動作している場合はトランジスタ部70が主に発熱し、ダイオード部80が動作している場合はダイオード部80が主に発熱する。
【0046】
回路の動作条件によっては、トランジスタ部70およびダイオード部80の一方の動作時間が長くなり、当該一方の部分における発熱が大きくなる場合がある。このような場合に、接続部172が当該一方の部分の上方だけに配置していると、トランジスタ部70およびダイオード部80のオン動作およびオフ動作が繰り返された場合に、ワイヤ170とエミッタ電極との接続信頼性が低下する場合がある。つまり、パワーサイクル耐量が低下する可能性がある。
【0047】
上述した接続信頼性の低下を抑制するために、図3に示すように、接続部172を、トランジスタ部70およびダイオード部80の両方に跨るように配置することが考えられる。このように接続部172を配置することで、接続部172の近傍における発熱を、半導体装置100の動作状態によらず均一化できる。ただし、トランジスタ部70およびダイオード部80は、アルミニウム等の金属で形成されたエミッタ電極に覆われており、エミッタ電極の上からは、トランジスタ部70およびダイオード部80の位置を検出することが困難である。このため、ワイヤ170を半導体装置100に接続した後に、接続部172が、トランジスタ部70およびダイオード部80に対してどのような位置に配置されているかを検査することは困難である。
【0048】
図4は、本発明の一つの実施形態に係る半導体装置100の上面構造の一例を示す図である。本例の半導体装置100は、図3において説明した半導体装置100-rの構造に加えて、第1マーク部141を備える。本例の半導体装置100は、第2マーク部142、第3マーク部143および第4マーク部144のうちの少なくとも1つを更に備えてもよい。他の構造は、半導体装置100-rと同様である。第1マーク部141、第2マーク部142、第3マーク部143および第4マーク部144の各マーク部は、1つずつ設けられてよく、複数個ずつ設けられてもよい。それぞれのマーク部は、接続部172が配置されるべき位置を規定する。それぞれのマーク部は、上面視または半導体基板10の深さ方向において、凹形状または凸形状を有する。
【0049】
第1マーク部141は、エミッタ電極等の上面電極よりも上方に配置され、上面視においてトランジスタ部70およびダイオード部80の両方と重なって配置されている。本例の第1マーク部141は、上面視において凸形状を有している。つまり本例の第1マーク部141は、上面電極よりも上方に配置された部材に接しており、且つ、上面視のいずれかの方向において、当該部材から突出している。
【0050】
本例の第1マーク部141は、保護膜110に設けられる。第1マーク部141は、保護膜110と同一の材料で形成されてよい。本例の第1マーク部141は、第1方向に延伸する第1延伸部111から、第2方向の反対方向(本例では、Y軸の負方向)に向かって突出する。本例において第1方向はX軸方向であり、第2方向はY軸方向である。つまり第1マーク部141は、第1延伸部111から、第1延伸部111の延伸方向と直交する方向に突出している。第1マーク部141は、第1延伸部111から、活性部160の内部に向かって突出していてよい。
【0051】
第1マーク部141は、X軸方向において接続部172が設けられるべき位置を規定する。第1マーク部141と接続部172とは、Y軸方向において向かい合って配置されてよい。本例の第1マーク部141は、第1延伸部111から接続部172に向かって突出している。第1マーク部141と接続部172とは、上面視において離れて配置されている。X軸方向の複数の位置に接続部172が配置される場合、第1マーク部141は、それぞれの接続部172に対して設けられてよい。図4の例では、X軸方向の2つの位置に接続部172が配置されている。第1マーク部141は、それぞれの接続部172に対して設けられている。
【0052】
第1マーク部141のX軸方向における長さL1は、1つのトランジスタ部70および1つのダイオード部80のX軸方向における長さの和L2よりも小さい。当該長さL2は、第1マーク部141と重なるトランジスタ部70およびダイオード部80の長さの和である。第1マーク部141は、2つのトランジスタ部70とは重なっておらず、また、2つのダイオード部80とは重なっていない。つまり第1マーク部141は、トランジスタ部70およびダイオード部80のX軸方向における境界線を1つだけ跨いでいる。長さL1は、第1マーク部141と重なるトランジスタ部70のX軸方向の長さより大きくてよく、小さくてもよい。長さL1は、第1マーク部141と重なるダイオード部80のX軸方向の長さより大きくてよく、小さくてもよい。第1マーク部141を設けることで、X軸方向において接続部172が設けられるべき位置を規定できる。
【0053】
第2マーク部142は、エミッタ電極等の上面電極よりも上方に配置され、上面視においてトランジスタ部70およびダイオード部80の一方と重なって配置されている。本例の第2マーク部142は、上面視において凸形状を有している。つまり本例の第2マーク部142は、上面電極よりも上方に配置された部材に接しており、且つ、上面視のいずれかの方向において、当該部材から突出している。
【0054】
本例の第2マーク部142は、保護膜110に設けられる。第2マーク部142は、保護膜110と同一の材料で形成されてよい。本例の第2マーク部142は、第2方向に延伸する第2延伸部112から、第1方向に向かって突出する。第2マーク部142は、第2延伸部112から、第2延伸部112の延伸方向と直交する方向に突出している。第2マーク部142は、第2延伸部112から、活性部160の内部に向かって突出していてよい。
【0055】
第2マーク部142は、Y軸方向において接続部172が設けられるべき位置を規定する。第2マーク部142と接続部172とは、X軸方向において向かい合って配置されてよい。本例の第2マーク部142は、第2延伸部112から接続部172に向かって突出している。第2マーク部142と接続部172とは、上面視において離れて配置されている。Y軸方向の複数の位置に接続部172が配置される場合、第2マーク部142は、それぞれの接続部172に対して設けられてよい。図4の例では、Y軸方向の4つの位置に接続部172が配置されている。第2マーク部142は、それぞれの接続部172に対して設けられている。
【0056】
本例の第2マーク部142は、トランジスタ部70と重なるように配置されている。活性部160のX軸方向の端にダイオード部80が配置されている場合、第2マーク部142は当該ダイオード部80と重なるように配置される。第2マーク部142のX軸方向における長さは、第2マーク部142と重なるトランジスタ部70のX軸方向における長さより短いか、または、第2マーク部142と重なるダイオード部80のX軸方向における長さよりも短くてよい。つまり第2マーク部142は、トランジスタ部70とダイオード部80のX軸方向における境界とは重なっていなくてよい。第2マーク部142を設けることで、Y軸方向において接続部172が設けられるべき位置を規定できる。
【0057】
第3マーク部143は、第3延伸部113に設けられている点を除き、第1マーク部141と同一の配置および構造を有する。第1マーク部141および第3マーク部143は、Y軸方向において向かい合って配置されてよい。Y軸方向において互いに向かい合う第1マーク部141および第3マーク部143に挟まれる位置に、接続部172が配置されてよい。第3マーク部143を更に設けることで、X軸方向において接続部172が設けられるべき位置を更に精度よく規定できる。
【0058】
第4マーク部144は、第4延伸部114に設けられている点を除き、第2マーク部142と同一の配置および構造を有する。第2マーク部142および第4マーク部144は、X軸方向において向かい合って配置されてよい。X軸方向において互いに向かい合う第2マーク部142および第4マーク部144に挟まれる位置に、接続部172が配置されてよい。第4マーク部144を更に設けることで、Y軸方向において接続部172が設けられるべき位置を更に精度よく規定できる。
【0059】
図5は、各マーク部と、接続部172の配置例を示す図である。図5においては、図4に示した一部の部材を省略している。保護膜110、各マーク部、および、接続部172の配置は図4の例と同様である。
【0060】
上述したように、少なくとも1つの接続部172は、第1マーク部141および第3マーク部143に挟まれており、且つ、第2マーク部142および第4マーク部144に挟まれている。全ての接続部172が、第1マーク部141および第3マーク部143に挟まれており、且つ、第2マーク部142および第4マーク部144に挟まれていてよい。
【0061】
第1マーク部141および第3マーク部143に挟まれた領域を領域145とし、第2マーク部142および第4マーク部144に挟まれた領域を領域146とする。領域145および領域146が重なる領域に、接続部172が配置されてよい。当該領域に、接続部172の少なくとも一部分が配置されてよく、接続部172の少なくとも中心(または重心)が配置されてよく、接続部172の面積の半分以上が配置されてよく、接続部172の全体が配置されてもよい。
【0062】
第1マーク部141および第3マーク部143のX軸方向の長さL1と、第2マーク部142および第4マーク部144のY軸方向の長さL3は、接続部172の形状に応じて定められてよい。本例の接続部172は、X軸方向に直軸を有し、Y軸方向に短軸を有している。長さL1は、長さL3より大きくてよい。長さL1は、接続部172のX軸方向の長さと同一であってもよい。長さL3は、接続部172のY軸方向の長さと同一であってもよい。
【0063】
図4および図5において説明したように、半導体装置100に各マーク部を設けることで、接続部172を配置すべき位置を精度よく規定できる。各マーク部は、図1に示したような半導体ウエハ200の状態で形成されてよい。半導体ウエハ200には、半導体ウエハ200の面内の位置を規定するためのマーカーが形成されている。例えばダイシングライン202には、エミッタ電極等の上面電極に覆われていないマーカーが設けられている。当該マーカーの位置に基づいて各マーク部を形成することで、半導体基板10の所定の位置に各マーク部を精度よく設けることができる。このため、半導体ウエハ200から切り出された半導体装置100にワイヤ170を接続した場合に、接続部172が所定の位置に配置されているかを、各マーク部を用いて精度よく確認できる。また、各マーク部の位置を用いて、ワイヤ170を半導体装置100に接続する位置を制御することで、接続部172の位置を精度よく制御できる。
【0064】
図6は、図4におけるA-A断面の一例を示す図である。A-A断面は、トランジスタ部70の一部と、ダイオード部80の一部とを通過するXZ面である。本例の半導体装置100は、当該断面において、半導体基板10、層間絶縁膜38、エミッタ電極52およびコレクタ電極24を有する。エミッタ電極52は上面電極の一例である。エミッタ電極52およびコレクタ電極24は、アルミニウム等の金属材料で形成されている。
【0065】
層間絶縁膜38は、半導体基板10の上面21に設けられている。層間絶縁膜38は、ホウ素またはリン等の不純物が添加されたシリケートガラス等の絶縁膜、熱酸化膜、および、その他の絶縁膜の少なくとも一層を含む膜である。層間絶縁膜38にはコンタクトホール54が設けられている。
【0066】
エミッタ電極52は、層間絶縁膜38の上方に設けられる。エミッタ電極52は、層間絶縁膜38のコンタクトホール54を通って、半導体基板10の上面21と接触している。コレクタ電極24は、半導体基板10の下面23に設けられる。本明細書において、エミッタ電極52とコレクタ電極24とを結ぶ方向(Z軸方向)を深さ方向と称する。
【0067】
半導体基板10は、N-型のドリフト領域18を有する。ドリフト領域18は、トランジスタ部70およびダイオード部80のそれぞれに設けられている。半導体基板10の上面21には、複数のトレンチ部が設けられている。複数のトレンチ部は、ゲート配線に接続されるゲートトレンチ部40と、エミッタ電極52に接続されるダミートレンチ部30とを含む。複数のトレンチ部は、X軸方向に並んで配置されている。それぞれのトレンチ部は、Y軸方向に延伸して設けられている。一例としてトランジスタ部70には、ゲートトレンチ部40とダミートレンチ部30とが配置される。一例としてダイオード部80にはダミートレンチ部30が配置され、ゲートトレンチ部40は配置されていない。
【0068】
ゲートトレンチ部40は、半導体基板10の上面21に設けられたゲートトレンチ、ゲート絶縁膜42およびゲート導電部44を有する。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチの内壁を覆って設けられる。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチの内壁の半導体を酸化または窒化して形成してよい。ゲート導電部44は、ゲートトレンチの内部においてゲート絶縁膜42よりも内側に設けられる。つまりゲート絶縁膜42は、ゲート導電部44と半導体基板10とを絶縁する。ゲート導電部44は、ポリシリコン等の導電材料で形成される。
【0069】
ゲート導電部44は、深さ方向において、ベース領域14よりも長く設けられてよい。当該断面におけるゲートトレンチ部40は、半導体基板10の上面21において層間絶縁膜38により覆われる。ゲート導電部44は、ゲート配線に電気的に接続されている。ゲート導電部44に所定のゲート電圧が印加されると、ベース領域14のうちゲートトレンチ部40に接する界面の表層に電子の反転層によるチャネルが形成される。
【0070】
ダミートレンチ部30は、当該断面において、ゲートトレンチ部40と同一の構造を有してよい。ダミートレンチ部30は、半導体基板10の上面21に設けられたダミートレンチ、ダミー絶縁膜32およびダミー導電部34を有する。ダミー導電部34は、エミッタ電極52に電気的に接続されている。ダミー絶縁膜32は、ダミートレンチの内壁を覆って設けられる。ダミー導電部34は、ダミートレンチの内部に設けられ、且つ、ダミー絶縁膜32よりも内側に設けられる。ダミー絶縁膜32は、ダミー導電部34と半導体基板10とを絶縁する。ダミー導電部34は、ゲート導電部44と同一の材料で形成されてよい。例えばダミー導電部34は、ポリシリコン等の導電材料で形成される。ダミー導電部34は、深さ方向においてゲート導電部44と同一の長さを有してよい。
【0071】
本例のゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30は、半導体基板10の上面21において層間絶縁膜38により覆われている。ただし、ゲートトレンチ部40のゲート導電部44は、層間絶縁膜38に設けられたコンタクトホールを介してゲート配線と接続される。また、ダミートレンチ部30のダミー導電部34は、層間絶縁膜38に設けられたコンタクトホールを介してエミッタ電極52と接続される。
【0072】
X軸方向に並んで配置された2つのトレンチ部に挟まれた部分をメサ部と称する。トランジスタ部70にはメサ部60が設けられ、ダイオード部80にはメサ部61が設けられている。
【0073】
トランジスタ部70のメサ部60には、N+型のエミッタ領域12およびP-型のベース領域14が、半導体基板10の上面21側から順番に設けられている。ベース領域14の下方にはドリフト領域18が設けられている。メサ部60には、N+型の蓄積領域が設けられてもよい。蓄積領域は、ベース領域14とドリフト領域18との間に配置される。蓄積領域を設けることで、キャリア注入促進効果(IE効果)を高めて、オン電圧を低減できる。蓄積領域は、各メサ部60におけるベース領域14の下面全体を覆うように設けられてよい。
【0074】
エミッタ領域12は半導体基板10の上面21に露出しており、且つ、ゲートトレンチ部40と接して設けられている。エミッタ領域12は、メサ部60の両側のトレンチ部と接していてよい。エミッタ領域12は、ドリフト領域18よりもドーピング濃度が高い。
【0075】
ベース領域14は、エミッタ領域12の下方に設けられている。本例のベース領域14は、エミッタ領域12と接して設けられている。ベース領域14は、メサ部60の両側のトレンチ部と接していてよい。
【0076】
ダイオード部80のメサ部61には、半導体基板10の上面21に接して、P-型のベース領域14が設けられている。ベース領域14の下方には、ドリフト領域18が設けられている。メサ部61において、ベース領域14の下方に蓄積領域が設けられていてもよい。
【0077】
トランジスタ部70およびダイオード部80のそれぞれにおいて、ドリフト領域18の下にはN+型のバッファ領域20が設けられてよい。バッファ領域20のドーピング濃度は、ドリフト領域18のドーピング濃度よりも高い。バッファ領域20は、ベース領域14の下端から広がる空乏層が、P+型のコレクタ領域22およびN+型のカソード領域82に到達することを防ぐフィールドストップ層として機能してよい。
【0078】
トランジスタ部70において、バッファ領域20の下には、P+型のコレクタ領域22が設けられる。コレクタ領域22のアクセプタ濃度は、ベース領域14のアクセプタ濃度より高い。
【0079】
ダイオード部80において、バッファ領域20の下には、N+型のカソード領域82が設けられる。カソード領域82のドナー濃度は、ドリフト領域18のドナー濃度より高い。コレクタ領域22およびカソード領域82は、半導体基板10の下面23に露出しており、コレクタ電極24と接続している。コレクタ電極24は、半導体基板10の下面23全体と接触してよい。
【0080】
X軸方向におけるコレクタ領域22とカソード領域82との境界位置を、トランジスタ部70およびダイオード部80の境界位置とする。図4において説明したように、第1マーク部141および第3マーク部143は、コレクタ領域22とカソード領域82の境界位置と重なって配置されている。
【0081】
図7は、図4におけるB-B断面の一例を示す図である。B-B断面は、保護膜110および耐圧構造部90を通過するXZ面である。図7では、保護膜110の第2延伸部112を通過する断面を示しているが、保護膜110の他の延伸部を通過する断面においても、半導体装置100は同様の構造を有する。図7においては、耐圧構造部90の近傍におけるトランジスタ部70の一部を合わせて示している。
【0082】
本例では、半導体基板10の端辺102からゲート配線130までを含む領域を、耐圧構造部90とする。ゲート配線130は、ゲートパッド120に接続された配線である。ゲート配線130は、半導体基板10の上面21の上方に配置されている。ゲート配線130は、上面視において活性部160を囲むように設けられる。
【0083】
本例では、ゲート配線130-1およびゲート配線130-2とがZ軸方向に積層されて配置されている。ゲート配線130-1はアルミニウム等の金属材料で形成されており、ゲート配線130-2は不純物が添加されたポリシリコンで形成されている。
【0084】
ゲート配線130-2と半導体基板10とは、熱酸化膜等の絶縁膜により絶縁されている。ゲート配線130-2は、図7に示す断面とは異なるいずれかの位置において、ゲート導電部44と接続する。
【0085】
ゲート配線130-1は、ゲート配線130-2の上方に配置されている。ゲート配線130-1とゲート配線130-2との間には、層間絶縁膜38が配置されている。層間絶縁膜38には、ゲート配線130-1とゲート配線130-2とを接続するためのコンタクトホールが設けられる。
【0086】
ゲート配線130の下方の半導体基板10には、ウェル領域11が設けられる。ウェル領域11は、上面視において活性部160を囲むように設けられてよい。ウェル領域11は、半導体基板10の上面21から、ベース領域14よりも深くまで設けられている。ウェル領域11は、上面21に露出している。ウェル領域11は、エミッタ電極52と電気的に接続してよい。半導体基板10の端辺102からウェル領域11までを含む領域を、耐圧構造部90としてもよい。
【0087】
耐圧構造部90は、1つ以上のガードリング92を有する。耐圧構造部90は、それぞれのガードリング92の上方に配置されたフィールドプレートを更に有してもよい。本例の耐圧構造部90は、チャネルストッパ98を更に有する。
【0088】
ガードリング92は、半導体基板10の上面21に接して設けられたP+型の領域である。ガードリング92は、ウェル領域11と半導体基板10の端辺102との間に1つ以上設けられ、半導体基板10の上面21に露出する。それぞれのガードリング92は、活性部160を囲んでいる。
【0089】
チャネルストッパ98は、半導体基板10の端辺102および上面21に接触して設けられる。チャネルストッパ98は、ベース領域14と同じかそれよりも高濃度のP型、または、ドリフト領域18よりも高濃度のN型である。チャネルストッパ98にはコレクタ電位が印加されてよい。チャネルストッパ98の電位をコレクタ電極24の電位とすることで、活性部160から延びる空乏層が半導体基板10の側面に達することを防ぐ。これにより半導体装置100の耐圧を向上させる。
【0090】
保護膜110は、耐圧構造部90の全体を覆っていてよい。保護膜110は、端辺102から、活性部160の端部まで設けられてよい。保護膜110は、ゲート配線130を覆ってよい。保護膜110は、ウェル領域11を覆ってよい。保護膜110は、エミッタ電極52の一部を覆っていてもよい。
【0091】
図8は、図4におけるC-C断面の一例を示す図である。C-C断面は、第1延伸部111および第1マーク部141を通過するYZ面である。他の延伸部および他のマーク部も、図8において説明する構造を有してよい。
【0092】
本例の第1延伸部111は、エミッタ電極52の端部を覆っている。第1マーク部141は、エミッタ電極52の上方において、第1延伸部111からY軸方向の反対方向(つまりY軸の負方向)に突出して設けられる。エミッタ電極52の上方において、第1延伸部111の上端位置と、第1マーク部141の上端位置とは同一であってよい。上端位置は、Z軸方向において最も上に配置された部分の位置である。
【0093】
第1マーク部141のZ軸方向の厚みをT1とし、第1延伸部111のZ軸方向の厚みをT2とする。厚みT1は、エミッタ電極52の上端から、第1マーク部141の上端までのZ軸方向の距離である。厚みT2は、エミッタ電極52と重ならない位置における、第1延伸部111の厚みである。厚みT2は、層間絶縁膜38の上端から、第1延伸部111の上端までのZ軸方向の距離であってよい。
【0094】
厚みT1は、厚みT2より小さくてよい。第1延伸部111を厚くすることで、耐圧構造部90およびゲート配線130等を保護しやすくなる。第1マーク部141は保護機能を有さなくてもよいので、第1マーク部141は比較的に薄く形成してよい。第1マーク部141を薄くすることで、第1マーク部141に生じる応力を小さくできる。第1延伸部111および第1マーク部141を含む保護膜110は、樹脂またはポリイミド等の絶縁材料で形成される。保護膜110とエミッタ電極52との接着強度は、保護膜110と層間絶縁膜38(または半導体基板10)との接着強度よりも低い。このため、第1マーク部141を薄く形成することで、第1マーク部141における応力を小さくし、エミッタ電極52からの第1マーク部141の剥がれを抑制できる。
【0095】
図9は、C-C断面の他の例を示す図である。C-C断面は、第1延伸部111および第1マーク部141を通過するYZ面であるが、他の延伸部および他のマーク部も、図9において説明する構造を有してよい。
【0096】
本例では、第1マーク部141の上端位置が、第1延伸部111の上端位置よりも低い。他の構造は、図8の例と同様である。本例では、エミッタ電極52の上方における第1延伸部111の厚みT3よりも、第1マーク部141の厚みT1が小さい。このような構成により、第1マーク部141における応力を更に小さくし、エミッタ電極52からの第1マーク部141の剥がれを抑制できる。厚みT1は、厚みT3の90%以下であってよく、80%以下であってよく、70%以下であってもよく、50%以下であってもよい。厚みT1は、厚みT3の10%以上であってよい。
【0097】
図10は、半導体装置100の上面構造の他の例を示す図である。本例の半導体装置100は、各マーク部の構造が、図4から図9において説明した半導体装置100と相違する。他の部分の構造は、図4から図9において説明したいずれかの態様と同様であってよい。
【0098】
本例の各マーク部は、上面視において凹形状を有している。つまり本例の各マーク部は、上面電極よりも上方に配置された部材において、当該部材の端辺から当該部材の内部に向かって凹んだ部分である。各マーク部は、保護膜110の各延伸部に設けられた凹部であってよい。それぞれのマーク部は、保護膜110の各延伸部において、活性部160に最も近い端辺から、活性部160とは逆側に向かって形成された凹部である。各マーク部の位置および大きさは、図4から図9において説明した例と同様であってよい。本例の各マーク部は、ゲート配線130またはガードリング92とは重ならない範囲に配置されてよい。これにより、ゲート配線130およびガードリング92を保護膜110で覆って保護できる。各マーク部は、エミッタ電極52の上方に配置されてよい。各マーク部は、エミッタ電極52からはみ出さない範囲に配置されてよい。
【0099】
図11は、半導体装置100の上面構造の他の例を示す図である。本例の半導体装置100は、各マーク部の構造が、図4から図10において説明した半導体装置100と相違する。他の部分の構造は、図4から図10において説明したいずれかの態様と同様であってよい。
【0100】
本例の各マーク部は、Z軸方向において凹形状または凸形状を有している。つまり本例の各マーク部は、上面電極よりも上方に配置された部材において、当該部材の上面に設けられた凹部または凸部である。各マーク部は、保護膜110の各延伸部の上面に設けられてよい。各マーク部の位置および大きさは、図4から図11において説明した例と同様であってよい。
【0101】
図12は、図11におけるD-D断面の一例を示す図である。D-D断面は、第1延伸部111および第1マーク部141を通過するYZ面であるが、他の延伸部および他のマーク部も、図12において説明する構造を有してよい。
【0102】
本例の第1マーク部141は、第1延伸部111の上面101から下方に窪む凹部である。ただし第1マーク部141においても第1延伸部111は残存している。つまり、第1マーク部141の厚みT4(つまり凹部の深さ)は、第1延伸部111の厚みT3よりも小さい。厚みT4は、厚みT3の10%以上であってよく、20%以上であってよく、30%以上であってよく、50%以上であってもよい。厚みT4は、厚みT3の90%以下であってよい。第1マーク部141は、ゲート配線130またはガードリング92とは重ならない範囲に配置されてよい。これにより、ゲート配線130およびガードリング92を保護膜110で覆って保護できる。第1マーク部141は、エミッタ電極52の上方に配置されてよい。第1マーク部141は、エミッタ電極52からはみ出さない範囲に配置されてよい。
【0103】
図13は、図11におけるD-D断面の他の例を示す図である。D-D断面は、第1延伸部111および第1マーク部141を通過するYZ面であるが、他の延伸部および他のマーク部も、図12において説明する構造を有してよい。
【0104】
本例の第1マーク部141は、第1延伸部111の上面101から上方に突出する凸部である。第1マーク部141の厚みT4は、厚みT3の10%以下であってよく、20%以下であってよく、30%以下であってよく、50%以下であってもよい。厚みT4は、厚みT3の90%以上であってよい。第1マーク部141は、ゲート配線130またはガードリング92と重なっていてよく、重なっていなくてもよい。
【0105】
図14は、半導体モジュール300の製造方法の一例を示す図である。半導体モジュール300の製造方法は、半導体装置100の製造工程S500、実装工程S514および検査工程S516を有する。
【0106】
半導体装置100の製造工程S500では、半導体ウエハ200のそれぞれの半導体装置100に耐圧構造部90を形成する(S502)。また、半導体ウエハ200の上面側に、トランジスタ部70およびダイオード部80等の半導体素子を形成する(S504)。S504では、各トレンチ部、エミッタ領域12およびベース領域14を形成してよい。
【0107】
次に、半導体ウエハ200の上方にエミッタ電極52、ゲートパッド120、および、ゲート配線130-1等の金属の上面電極を形成する(S506)。S506では、上面電極を形成する前に、ゲート配線130-2、層間絶縁膜38およびコンタクトホールを形成してよい。S502からS506の工程において、ダイシングライン202に所定のマーカーを形成してよい。当該マーカーは、層間絶縁膜38等で形成されてよい。
【0108】
次に、上面電極よりも上方に配置された保護膜110および各マーク部(第1マーク部141、第2マーク部142、第3マーク部143、第4マーク部144)を形成する(S508)。図8等に示すように保護膜110は、上面電極よりも下方に配置された部分を含んでよい。各マーク部の位置は、半導体ウエハ200に設けられたマーカー等の位置に基づいて制御されてよい。これにより、各マーク部の位置を精度よく制御できる。
【0109】
次に、半導体ウエハ200の下面側の構造を形成する(S510)。S510では、図5等において説明したバッファ領域20、コレクタ領域22、カソード領域82およびコレクタ電極24を形成してよい。
【0110】
次に、ダイシングライン202に沿って半導体ウエハ200を切断して、それぞれの半導体装置100を切り出す(S512)。これにより半導体装置100を製造できる。
【0111】
次に、半導体装置100を、半導体モジュール300に実装する(S514)。S514においては、半導体装置100の上面電極にワイヤ170を接続する。
【0112】
次に、ワイヤ170の接続部172が、所定の位置に設けられているかを検査する(S516)。S516では、接続部172が、各マーク部で規定される位置に設けられているかを、光学検査装置により自動で検査してよい。本例によれば、エミッタ電極52よりも上方に各マーク部が設けられているので、接続部172の位置を簡単に且つ精度よく検査できる。
【0113】
図15は、接続部172の位置と、接続部172の温度との関係を示す図である。図15の横軸は、接続部172が、トランジスタ部70の上方に配置されているか、トランジスタ部70とダイオード部80との境界の上方に配置されているか、ダイオード部80の上方に配置されているかを示している。図15の縦軸は、接続部172の温度を示している。図15の縦軸は線形軸である。図15における丸印のプロットは、トランジスタ部70に主電流が流れている状態での温度測定結果を示し、四角印のプロットは、ダイオード部80に主電流が流れている状態での温度測定結果を示している。
【0114】
図15に示すように、トランジスタ部70またはダイオード部80の上方に接続部172が配置されていると、半導体装置100の動作状態に応じて、接続部172の温度が変化する。これに対して、トランジスタ部70とダイオード部80との境界の上方に接続部172が配置されていると、半導体装置100の動作状態が変化しても、接続部172の温度はほとんど変化しない。このため、トランジスタ部70とダイオード部80との境界の上方に接続部172を配置することで、半導体装置100の動作状態が繰り返し変化しても、接続部172における温度変化を抑制して、接続部172における熱応力の発生を抑制できる。このため、接続部172の接続信頼性を高めることができる。
【0115】
図16は、接続部172の温度と、パワーサイクル耐量との関係を示す図である。図16の例では、接続部172の温度を、横軸に示される温度と、所定の温度との間で繰り返し変化させる。図16の縦軸のパワーサイクル耐量は、接続部172が上面電極から剥離するまでの、接続部172の温度変化の繰り返し回数を示している。図16の縦軸は対数軸であり、横軸は線形軸である。図16に示すように、接続部172の温度と、パワーサイクル耐量とは相関関係を有する。このため、接続部172の温度のばらつきが小さいほど、接続部172のパワーサイクル耐量のばらつきも小さくなる。各マーク部を用いて接続部172の位置を精度よく規定することで、接続部172の温度のばらつきを小さくして、接続部172のパワーサイクル耐量のばらつきを小さくできる。
【0116】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0117】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0118】
10・・・半導体基板、11・・・ウェル領域、12・・・エミッタ領域、14・・・ベース領域、18・・・ドリフト領域、20・・・バッファ領域、21・・・上面、22・・・コレクタ領域、23・・・下面、24・・・コレクタ電極、30・・・ダミートレンチ部、32・・・ダミー絶縁膜、34・・・ダミー導電部、38・・・層間絶縁膜、40・・・ゲートトレンチ部、42・・・ゲート絶縁膜、44・・・ゲート導電部、52・・・エミッタ電極、54・・・コンタクトホール、60、61・・・メサ部、70・・・トランジスタ部、80・・・ダイオード部、82・・・カソード領域、90・・・耐圧構造部、92・・・ガードリング、98・・・チャネルストッパ、100・・・半導体装置、101・・・上面、102・・・端辺、110・・・保護膜、111・・・第1延伸部、112・・・第2延伸部、113・・・第3延伸部、114・・・第4延伸部、120・・・ゲートパッド、130・・・ゲート配線、141・・・第1マーク部、142・・・第2マーク部、143・・・第3マーク部、144・・・第4マーク部、145・・・領域、146・・・領域、160・・・活性部、170・・・ワイヤ、172・・・接続部、200・・・半導体ウエハ、202・・・ダイシングライン、204・・・基準部、300・・・半導体モジュール、310・・・ケース部、312・・・封止部、320・・・配線、330・・・配線
図1
図2
図3
図4
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図6
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図10
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図16