(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048559
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】穿刺手術手技訓練用の模擬血管モデル及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G09B 23/30 20060101AFI20240402BHJP
G09B 19/00 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
G09B23/30
G09B19/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154527
(22)【出願日】2022-09-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】508195545
【氏名又は名称】イービーエム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】朴 栄光
【テーマコード(参考)】
2C032
【Fターム(参考)】
2C032CA03
2C032CA06
(57)【要約】
【解決課題】 模擬血液漏れが抑制でき、形状に柔軟性を持たせることができる穿刺練習用の模擬血管モデルを提供する。
【解決手段】 粘着性材料で形成されたチューブ2と、前記チューブの周囲に、巻回する位置をこのチューブ1の長手方向に沿って所定のピッチでずらしながら数回巻回固定され、上記模擬生体組織の周囲を隙間なく覆うテーブ4とを有し、このテープ4はテープ4同士が重なる面同士が互いに摺動可能な素材からなるものであり、上記テープ4巻回後にチューブ2の軸方向の伸びや変形を許容できるように構成されたものである模擬血管モデル1が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着性材料で形成されたチューブと、
前記チューブの周囲に、巻回する位置をこのチューブの長手方向に沿って所定のピッチでずらしながら数回巻回固定され、上記模擬生体組織の周囲を隙間なく覆うテーブと
を有し、
このテープはテープ同士が重なる面同士が互いに摺動可能な素材からなるものであり、上記テープ巻回後にチューブの軸方向の伸びや変形を許容できるように構成されたものである
ことを特徴とする穿刺手技訓練用の模擬血管モデル。
【請求項2】
請求項1記載の模擬血管モデルにおいて、
前記チューブは、可撓性材料で形成され、伸縮及び屈曲可能に形成されたものである
ことを特徴とする模擬血管モデル。
【請求項3】
請求項1記載の模擬血管モデルにおいて、
前記チューブは、ポリオレフィン系エラストマー樹脂で形成されたものである
ことを特徴とする模擬血管モデル。
【請求項4】
請求項1記載の模擬血管モデルにおいて、
前記チューブの両端には、このチューブに模擬血液を供給するためのコネクタが接続されている
ことを特徴とする模擬血管モデル。
【請求項5】
請求項4記載の模擬血管モデルにおいて、
前記テープは、上記チューブとコネクタの接続部を含む部分も覆うものである
ことを特徴とする模擬血管モデル。
【請求項6】
請求項1記載の模擬血管モデルにおいて、
前記テープの巻回ピッチは、テープ幅の1/4~1/2である
ことを特徴とする模擬血管モデル。
【請求項7】
請求項1記載の模擬血管モデルにおいて、
前記テープはポリテトラフルオロエチレンで形成されている
ことを特徴とする模擬血管モデル。
【請求項8】
請求項1記載の模擬血管モデルにおいて、
上記テープは、上記チューブの軸線を直線状に延長させた状態でこのチューブに巻回されたものである
ことを特徴とする血管モデル。
【請求項9】
請求項8記載の模擬血管モデルにおいて、
この模擬血管モデルが、上記テープがチューブに巻回された後に蛇行血管を模擬するように湾曲されて設置される所定の模擬臓器を有するものである
ことを特徴とする血管モデル。
【請求項10】
請求項9記載の模擬血管モデルにおいて、
前記所定の模擬臓器には、上記模擬血管モデルを湾曲した状態で設置するための溝部が形成されているものである
ことを特徴とする血管モデル。
【請求項11】
請求項9記載の模擬血管モデルにおいて、
前記模擬血管モデルを覆う状態で上記所定の模擬臓器に固定された模擬皮膚モデルをさらに有するものである
ことを特徴とする血管モデル。
【請求項12】
粘着性材料で形成されたチューブを用意する工程と、
表面摺動性を有するテープを用意する工程と、
前記テープを、前記チューブの周囲に、巻回する位置をこのチューブの長手方向に沿って所定のピッチでずらしながら数回巻回固定し、上記模擬生体組織の周囲を隙間なく覆う工程と
を有し、
このテープはテープ同士が重なる面同士が互いに摺動可能な素材からなるものであり、上記テープ巻回後にチューブの軸方向の伸びや変形を許容できるように構成されたものである
ことを特徴とする穿刺手技訓練用の模擬血管モデルの製造方法。
【請求項13】
請求項12記載の模擬血管モデルの製造方法において、
前記テープを巻回する前に、チューブの両端に、このチューブに模擬血液を供給するためのコネクタが接続する工程をさらに有し、
前記テープの巻回工程は、上記テープを、上記チューブとコネクタの接続部を含む部分にも巻回するように、巻回するものである
ことを特徴とする模擬血管モデルの製造方法。
【請求項14】
請求項12記載の模擬血管モデルの製造方法において、
前記テープの巻回ピッチは、テープ幅の1/4~1/2である
ことを特徴とする模擬血管モデルの製造方法。
【請求項15】
請求項12記載の模擬血管モデルの製造方法において、
上記テープの巻回工程は、前記テープを、上記チューブの軸線を直線状に延長させた状態でこのチューブに巻回するものである
ことを特徴とする血管モデル。
【請求項16】
請求項15記載の模擬血管モデルの製造方法において、
この模擬血管モデルを、上記テープをチューブに巻回した後に蛇行血管を模擬するように湾曲されて所定の模擬臓器に設置する工程をさらに有するものである
ことを特徴とする血管モデルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穿刺手術手技訓練用の模擬血管モデル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、模擬血管を用いた穿刺手術手技訓練が行われている。
【0003】
この訓練は、模擬血管としてチューブ素材を用い、このチューブ素材を模擬人体に埋め込むなどして行われている。
【0004】
チューブ素材を用いた穿刺練習用模擬血管は、訓練のために何度も繰り返し用いることが想定されているが、使用しているうちに穿刺作業によってチューブが損傷し、注射器等の穿刺手術器具を引き抜いた後に損傷箇所から模擬血液が漏れ出してしまうという問題があった。この模擬血液の漏れが生じた場合、チューブ素材を含む部品の交換が必要となるためコスト高となる。
【0005】
従来、この模擬血液漏れの課題に対応した発明として、以下の特許文献1に開示されたものがある。
【0006】
特許文献1に記載された発明は、チューブ素材がイソプレンゴムからなり、当該チューブ素材の外表面の少なくとも一部がソーセージに用いるケーシング材料からなるチューブ被覆層で被覆されてなる穿刺練習用模型である。
【0007】
特許文献1に記載された発明によれば、チューブ素材として薄肉のイソプレンゴムを採用すると共に被覆材による被覆により肉厚とすることで模擬血液の漏れが防止できることが効果として挙げられている(特許文献1、段落0010)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記特許文献1の発明によれば、被覆材はシート状のケーシング材であり、このケーシング材は表面方向の柔軟性を有していないことが知られている。このため、このケーシング材でチューブ素材を被覆してなる模擬血管模型は、長手方向の伸縮性がないため、蛇行させるなど自然な血管走行の再現が難しいということがある。
【0010】
本発明は、模擬血液漏れが抑制でき、形状に柔軟性を持たせることができる穿刺練習用の模擬血管モデルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、以下の発明が提供される。
【0012】
(1) 粘着性材料で形成されたチューブと、
前記チューブの周囲に、巻回する位置をこのチューブの長手方向に沿って所定のピッチでずらしながら数回巻回固定され、上記模擬生体組織の周囲を隙間なく覆うテーブと
を有し、
このテープはテープ同士が重なる面同士が互いに摺動可能な素材からなるものであり、上記テープ巻回後にチューブの軸方向の伸びや変形を許容できるように構成されたものである
ことを特徴とする模擬血管モデル。
【0013】
(2) 上記(1)の模擬血管モデルにおいて、
前記チューブは、可撓性材料で形成され、伸縮及び屈曲可能に形成されたものである
ことを特徴とする模擬血管モデル。
【0014】
(3) 上記(1)の模擬血管モデルにおいて、
前記チューブは、ポリオレフィン系エラストマー樹脂で形成されたものである
ことを特徴とする模擬血管モデル。
【0015】
(4) 上記(1)の模擬血管モデルにおいて、
前記チューブの両端には、このチューブに模擬血液を供給するためのコネクタが接続されている
ことを特徴とする模擬血管モデル。
【0016】
(5) 上記(4)の模擬血管モデルにおいて、
前記テープは、上記チューブとコネクタの接続部を含む部分も覆うものである
ことを特徴とする模擬血管モデル。
【0017】
(6) 上記(1)の模擬血管モデルにおいて、
前記テープの巻回ピッチは、テープ幅の1/4~1/2である
ことを特徴とする模擬血管モデル。
【0018】
(7) 上記(1)の模擬血管モデルにおいて、
前記テープはポリテトラフルオロエチレンで形成されている
ことを特徴とする模擬血管モデル。
【0019】
(8) 上記(1)の模擬血管モデルにおいて、
上記テープは、上記チューブの軸線を直線状に延長させた状態でこのチューブに巻回されたものである
ことを特徴とする血管モデル。
【0020】
(9) 上記(8)の模擬血管モデルにおいて、
この模擬血管モデルが、上記テープがチューブに巻回された後に蛇行血管を模擬するように湾曲されて設置される所定の模擬臓器を有するものである
ことを特徴とする血管モデル。
【0021】
(10) 上記(9)の模擬血管モデルにおいて、
前記所定の模擬臓器には、上記模擬血管モデルを湾曲した状態で設置するための溝部が形成されているものである
ことを特徴とする血管モデル。
【0022】
(11) 上記(9)の模擬血管モデルにおいて、
前記模擬血管モデルを覆う状態で上記所定の模擬臓器に固定された模擬皮膚モデルをさらに有するものである
ことを特徴とする血管モデル。
【0023】
(12) 粘着性材料で形成されたチューブを用意する工程と、
表面摺動性を有するテープを用意する工程と、
前記テープを、前記チューブの周囲に、巻回する位置をこのチューブの長手方向に沿って所定のピッチでずらしながら数回巻回固定し、上記模擬生体組織の周囲を隙間なく覆う工程と
を有し、
このテープはテープ同士が重なる面同士が互いに摺動可能な素材からなるものであり、上記テープ巻回後にチューブの軸方向の伸びや変形を許容できるように構成されたものである
ことを特徴とする模擬血管モデルの製造方法。
【0024】
(13) 上記(12)の模擬血管モデルの製造方法において、
前記テープを巻回する前に、チューブの両端に、このチューブに模擬血液を供給するためのコネクタが接続する工程をさらに有し、
前記テープの巻回工程は、上記テープを、上記チューブとコネクタの接続部を含む部分にも巻回するように、巻回するものである
ことを特徴とする模擬血管モデルの製造方法。
【0025】
(14) 上記(12)の模擬血管モデルの製造方法において、
前記テープの巻回ピッチは、テープ幅の1/4~1/2である
ことを特徴とする模擬血管モデルの製造方法。
【0026】
(15) 上記(12)の模擬血管モデルの製造方法において、
上記テープの巻回工程は、前記テープを、上記チューブの軸線を直線状に延長させた状態でこのチューブに巻回するものである
ことを特徴とする血管モデル。
【0027】
(16) 上記(15)の模擬血管モデルの製造方法において、
この模擬血管モデルを、上記テープをチューブに巻回した後に蛇行血管を模擬するように湾曲されて所定の模擬臓器に設置する工程をさらに有するものである
ことを特徴とする血管モデルの製造方法。
【0028】
なお、上記した以外の本発明の特徴は、以下の実施形態及び図面に当業者に実施可能に説明されている。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る穿刺練習用の模擬血管モデルを示す模式図である。
【0030】
【
図2】
図2は、同じく、製造工程を示す模式図である。
【0031】
【
図3】
図3は、同じく、模擬血管モデルを蛇行させた状態を示す模式図である。
【0032】
【
図4】
図4は、同じく、模擬血管モデルを模擬臓器モデルに設置する工程を示す模式図である。
【0033】
【
図5】
図5は、同じく、模擬血管モデルを模擬臓器モデルに設置した状態を示す模式図である。
【0034】
【
図6】
図6は、同じく、模擬皮膚モデルを設置した状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明に係る一実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0036】
(基本的構成)
図1(a)、(b)は、この実施形態の穿刺手技訓練用の模擬血管モデル1を示すものである。
【0037】
この模擬血管モデル1は、血管を模擬するチューブ2と、このチューブ2の両端開口に接続されたコネクタ3と、前記チューブ2及びコネクタ2の周囲に螺旋状に巻回されて固定されたテーブ4とを有する。ここで、
図1(a)は、前記チューブ全体をテープで被覆した完成品、
図1(b)は、説明の便宜のため、前記チューブの左側部分に巻回されたテープの表示を一部省略してチューブ2とコネクタ3の結合部分を露出させて示したものである。
【0038】
前記チューブ2は、粘着性を有する共に蛇行変形可能な柔軟性素材で形成されたものである。また、このチューブ2は、機械的耐久性を有し、100回以上の内圧の繰り返し加圧・減圧に伴う拡張収縮変形に対する耐性を有していることが好ましい。さらに、熱可塑性樹脂であれば、押し出し成形による高精度な大量成形が可能であり、チューブのコストダウンが可能であるから、さらに好ましい。このようなチューブとして、この実施形態では、ポリオレフィン系エラストマー樹脂で形成されたものを採用している。
【0039】
前記コネクタ3は、前記チューブ2を加圧用流体供給システムに接続する等の機能を提供するためのものであり、この実施形態では一対のコネクタ3が、それぞれその基端部3aを上記チューブ2内に嵌入する形で、このチューブの両端に固定されている。これらのコネクタ3は前記チューブ2と比較して柔軟性の低い材料、例えばプリプロピレン等で形成されている。
【0040】
前記テープ4は、上記チューブ2に所定のピッチで所定量の重なりを形成しながら螺旋状に巻回することでこのチューブ2の全長を被覆するものであり、チューブ表面の粘着性によりチューブ2には固定されるが、テープ4同士が重なる面同士は互いに非接着かつ摺動可能とするものである。
【0041】
これにより、テープの柔軟性に加えて当該重なり部分同士が摺動するから、チューブの軸方向の伸びを許容でき、これによって揺動方向の自由な変形を可能にするように構成されている。このようなテープ4の素材として好適なのは、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)である。
【0042】
このような構成によれば、このテープは、チューブが長軸方向及び揺動方向へ変形することについて拘束を与えるものではなく、自由な血管走行を再現することができる。このことが重要なのは、実際の人間の動脈や静脈は「蛇行」しているからであり、直線や幾何学的単純形状しか再現できないものでは、使用者が血管モデルの走行を予見、予測することができてしまい、訓練効果が下がってしまうからである。
【0043】
(製造方法)
次に、
図2を参照して、この模擬血管モデルの製造方法について説明する。
【0044】
本実施形態では、外径8.5mm、内径5.5mmのポリオレフィン系エラストマー材料を押し出し成形なるチューブ2を用いる。
【0045】
このチューブの両端には、医療用エクステンションチューブ(図示せず)用のコネクタ3が、前記チューブ2の両端開口内に嵌入することで接続・固定されている。
【0046】
次に、
図2(a)に示すように、チューブ2を直線状に保った状態で、前記PTFEからなるテープ4を、この例では、左端に取り付けたコネクタから、
図2(b)、(c)に示すように、テーブ幅の1/3のピッチで螺旋状に巻き付ける。この例では、12mmのテープ4を、ピッチ4mm、ピッチ角度8.8度で螺旋状に巻き付ける。巻き初めと巻き終わりにおけるコネクタ3とテープ4の固定は、接着剤や粘着テープを用いて行うようにしても良い。
【0047】
一方、上記チューブ2とテープ4との間の固定は、複数回の巻回によるチューブ径方向の締め付けと前記チューブ2自体の粘着性を利用して行う。ここで、テープ4の幅方向3分の1は隣合うテープ4と重なりチューブ2とは接触しないので、残りの3分の2の部分がチューブに直接固定されることになる。また、上記テープ4同士の重なる部分は摺動性を有しているので、隣り合うテープ4同士は固定されず上記チューブ2の長軸方向に沿って相対的に変位可能である。
【0048】
(性能確認)
上記のようにして製造した模擬血管モデル1について、十分な変形性能を有するかを確認したところ、テープ4の接触面間では十分な摺動性が確認でき、
図3に示すようなチューブの蛇行変形を疎外しないことを確認できた。
【0049】
次に、上記チューブ2内に上記コネクタ3を介して水道水を内部に充填することで200mmHgの加圧を行い、22G,17Gの注射針で穿刺したところ、バックフローを確認することができた。針を抜いた後、穿刺口からの漏れは確認できなかった。穿刺口を確認したところ、ポリオレフィン系エラストマー樹脂が、その粘着性により穿刺口を自己修復的にふさいでいることが確認できた。これは、上記テープを複数回巻き付けることにより、上記チューブ2が径方向外側に膨らむことが防止され、上記チューブ2が上記穿刺口をふさぐ方向に付勢されるからである。また、上記テープ4によっても穿刺口が塞がれる。
【0050】
(使用方法)
この血管モデル1を穿刺手術手技訓練に使用する場合、前記コネクタ3にシリンジを接続しチューブ2内に液体を充填する。最終端まで液体が到達したら、出口側のコネクタ3のクレンメを締め、流路を閉鎖する。そして、そのまま任意の圧力まで加圧する。訓練時に好適な内圧は例えば100mmHgである。所望の圧力に達したならば入口側クレンメを閉じ、流路を閉鎖する。これにより、血管モデル1単体で、モデル内圧が維持され、この状態で穿刺訓練を行うことができる。
【0051】
この血管モデルの使用時には、
図4~
図6に示すように、所望の生体組織6(模擬臓器)に埋め込んで用いるようにしても良い。この例では、生体組織6から例えば動脈を除去し、その位置に生じた溝部を模擬血管の設置位置7として定義する(
図4)。そして、この設置位置7(溝部)に除去した動脈の形に合うように血管モデル1を変形させて設置するようにする(
図5)。
【0052】
ここで、生体組織6は、液状の硬化性材料の硬化物で形成し、生体組織を模擬したものでも良い。この場合、生体組織に近い材料として、例えば、軟質樹脂、エラストマーなどを用いることができる。より具体的には、例えば、シリコーン樹脂や、スチレン系、エステル系、アミド系、ウレタン系などの各種熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。
【0053】
また、このように模擬血管モデル1を埋め込んだ後、
図6に示すように、この血管モデル1を別の模擬皮膚モデル(皮膚シート等)8で覆い隠すように構成しても良い。
【0054】
なお、この発明は上記一実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲で種々変形可能である。
【0055】
例えば、上記一実施形態では、前記チューブはポリオレフィン系エラストマー樹脂であったが、これに限定されるものではなく、粘着性材料で形成されている可撓性のチューブであれば良い。また、チューブのサイズも上記一実施形態のものに限定されるものではなく、模擬する血管のサイズに応じて適宜設定可能である。
【0056】
また、上記チューブに巻回されるテープは、テープ同士が重なる面同士が互いに摺動可能な素材からなるものであり、上記テープ巻回後にチューブの軸方向の伸びや変形を許容できるように構成されていればよく、上記一実施形態に上げた材料のものに限定されない。
【0057】
さらに、テープの幅は、上記一実施形態では12mmであったが、血管をより複雑な形状に湾曲させる場合にはこの幅より小さい幅、例えば10mm、8mm、6mmのものを使用しても良い。また、ピッチ方向に重なり合うテープの幅は、上記一実施形態では1/3であったが、1/2や1/4であっても良い。要するに、この重なり合った部分でテープ同士が摺動し、チューブの湾曲や伸縮時に歪みが生じないように、チューブのスムーズな湾曲や伸縮を許容するように構成されていることが重要である。
【0058】
また、通常の血管モデルでは、上記テープは隙間なく巻回されていることが重要であるが、意図的にチューブの一部を被覆せず露出させこの部分に瘤を形成するようにしても良い。
【0059】
さらに、上記実施形態では、模擬血管モデルを生体臓器に設置していたが、これに限定されるものではなく、人工素材で形成された模擬臓器であっても良い。また、この模擬臓器は、例えば、かまぼこ状の柔らかい台座であっても良い。
【0060】
また、上記一実施形態では、模擬臓器上に形成された溝状の部分に沿って模擬血管を蛇行させて設置していたが、溝がなくても良く、模擬血管を蛇行させるものでなくても良い。
【0061】
また、上記かまぼこ状の柔らかい台座上に固定しないで配置し、皮膚カバーで被覆するだけで、模擬血管を台座に固定しないで自由に配置ようにしても良い。この場合、皮膚カバーは、素材による自己接着性で粘着させ、剥離と接着を繰り返すことができるように構成することが好ましい。これにより、訓練手技中に血管モデルの受動的移動を許容でき、人体と同様に「血管逃げる」という臨床状態を的確に再現することができる。なお、この場合、台座は剛体でも軟質素材でも良い。
【符号の説明】
【0062】
1…模擬血管モデル
2…チューブ
3…コネクタ
4…テープ
6…生体組織(模擬臓器)
7…設置位置
8…模擬皮膚モデル
【手続補正書】
【提出日】2023-03-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着性材料で形成されたチューブと、
前記チューブの周囲に、巻回する位置をこのチューブの長手方向に沿って所定のピッチでずらしながら数回巻回固定され、模擬生体組織の周囲を隙間なく覆うテープと
を有し、
このテープはテープ同士が重なる面同士が互いに摺動可能な素材からなるものであり、上記テープ巻回後にチューブの軸方向の伸びや変形を許容できるように構成されたものである
ことを特徴とする穿刺手技訓練用の模擬血管モデル。
【請求項2】
請求項1記載の模擬血管モデルにおいて、
前記チューブは、可撓性材料で形成され、伸縮及び屈曲可能に形成されたものである
ことを特徴とする模擬血管モデル。
【請求項3】
請求項1記載の模擬血管モデルにおいて、
前記チューブは、ポリオレフィン系エラストマー樹脂で形成されたものである
ことを特徴とする模擬血管モデル。
【請求項4】
請求項1記載の模擬血管モデルにおいて、
前記チューブの両端には、このチューブに模擬血液を供給するためのコネクタが接続されている
ことを特徴とする模擬血管モデル。
【請求項5】
請求項4記載の模擬血管モデルにおいて、
前記テープは、上記チューブとコネクタの接続部を含む部分も覆うものである
ことを特徴とする模擬血管モデル。
【請求項6】
請求項1記載の模擬血管モデルにおいて、
前記テープの巻回ピッチは、テープ幅の1/4~1/2である
ことを特徴とする模擬血管モデル。
【請求項7】
請求項1記載の模擬血管モデルにおいて、
前記テープはポリテトラフルオロエチレンで形成されている
ことを特徴とする模擬血管モデル。
【請求項8】
請求項1記載の模擬血管モデルにおいて、
上記テープは、上記チューブの軸線を直線状に延長させた状態でこのチューブに巻回されたものである
ことを特徴とする血管モデル。
【請求項9】
請求項8記載の模擬血管モデルにおいて、
この模擬血管モデルが、上記テープがチューブに巻回された後に蛇行血管を模擬するように湾曲されて設置される所定の模擬臓器を有するものである
ことを特徴とする血管モデル。
【請求項10】
請求項9記載の模擬血管モデルにおいて、
前記所定の模擬臓器には、上記模擬血管モデルを湾曲した状態で設置するための溝部が形成されているものである
ことを特徴とする血管モデル。
【請求項11】
請求項9記載の模擬血管モデルにおいて、
前記模擬血管モデルを覆う状態で上記所定の模擬臓器に固定された模擬皮膚モデルをさらに有するものである
ことを特徴とする血管モデル。
【請求項12】
粘着性材料で形成されたチューブを用意する工程と、
表面摺動性を有するテープを用意する工程と、
前記テープを、前記チューブの周囲に、巻回する位置をこのチューブの長手方向に沿って所定のピッチでずらしながら数回巻回固定し、模擬生体組織の周囲を隙間なく覆う工程と
を有し、
このテープはテープ同士が重なる面同士が互いに摺動可能な素材からなるものであり、上記テープ巻回後にチューブの軸方向の伸びや変形を許容できるように構成されたものである
ことを特徴とする穿刺手技訓練用の模擬血管モデルの製造方法。
【請求項13】
請求項12記載の模擬血管モデルの製造方法において、
前記テープを巻回する前に、チューブの両端に、このチューブに模擬血液を供給するためのコネクタが接続する工程をさらに有し、
前記テープの巻回工程は、上記テープを、上記チューブとコネクタの接続部を含む部分にも巻回するように、巻回するものである
ことを特徴とする模擬血管モデルの製造方法。
【請求項14】
請求項12記載の模擬血管モデルの製造方法において、
前記テープの巻回ピッチは、テープ幅の1/4~1/2である
ことを特徴とする模擬血管モデルの製造方法。
【請求項15】
請求項12記載の模擬血管モデルの製造方法において、
上記テープの巻回工程は、前記テープを、上記チューブの軸線を直線状に延長させた状態でこのチューブに巻回するものである
ことを特徴とする模擬血管モデルの製造方法。
【請求項16】
請求項15記載の模擬血管モデルの製造方法において、
この模擬血管モデルを、上記テープをチューブに巻回した後に蛇行血管を模擬するように湾曲されて所定の模擬臓器に設置する工程をさらに有するものである
ことを特徴とする模擬血管モデルの製造方法。