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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048561
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】焼結鉱の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 1/16 20060101AFI20240402BHJP
【FI】
C22B1/16 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154534
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻 典宏
(72)【発明者】
【氏名】相本 道宏
(72)【発明者】
【氏名】野田 恵吾
(72)【発明者】
【氏名】夏井 琢哉
(72)【発明者】
【氏名】林川 翔平
(72)【発明者】
【氏名】山口 泰英
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA10
4K001BA02
4K001CA33
4K001CA40
4K001GA10
(57)【要約】
【課題】成品焼結鉱の品質を速やかに向上させる。
【解決手段】複数種の鉄鉱石、副原料、及び凝結材を含む配合原料を焼結機に装入し、装入した配合原料を焼結して焼結ケーキを製造し、焼結ケーキを成品焼結鉱と返鉱とに分級装置で篩分けし、篩分けした成品焼結鉱を高炉設備に搬送する焼結鉱の製造方法において、高炉設備に搬送中の成品焼結鉱の少なくとも一つの成分の濃度を連続的に測定し、測定により得られた成分濃度データに基づいて、複数種の鉄鉱石、副原料、及び凝結材のうちの少なくとも一つの配合量、又は、複数種の鉄鉱石の配合比の調整を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種の鉄鉱石、副原料、及び凝結材を含む配合原料を焼結機に装入し、
装入した前記配合原料を焼結して焼結ケーキを製造し、
前記焼結ケーキを成品焼結鉱と返鉱とに分級装置で篩分けし、
篩分けした前記成品焼結鉱を高炉設備に搬送する焼結鉱の製造方法において、
前記高炉設備に搬送中の前記成品焼結鉱の少なくとも一つの成分の濃度を連続的に測定し、
測定により得られた成分濃度データに基づいて、前記複数種の鉄鉱石、前記副原料、及び前記凝結材のうちの少なくとも一つの配合量、又は、前記複数種の鉄鉱石の配合比の調整を行う、焼結鉱の製造方法。
【請求項2】
前記成分濃度データに基づいて、さらに、前記焼結ケーキを前記成品焼結鉱と前記返鉱とに篩分けする前記分級装置の分級強度の調整を行う、請求項1に記載の焼結鉱の製造方法。
【請求項3】
所定時間分の前記成分濃度データと所定の目標値とに基づいて、前記複数種の鉄鉱石、前記副原料、及び前記凝結材のうちの少なくとも一つの配合量、又は、前記複数種の鉄鉱石の配合比を調整する、請求項1に記載の焼結鉱の製造方法。
【請求項4】
測定対象となる前記成分は、CaO、SiO、Al、MgO、FeO、及びCのうちの少なくとも一つである、請求項1に記載の焼結鉱の製造方法。
【請求項5】
前記分級強度の調整は、前記成分濃度データに代えて、前記分級装置による篩分け後にサンプリングした焼結鉱の粒度分析結果に基づいて行う、請求項2に記載の焼結鉱の製造方法。
【請求項6】
測定対象となる前記成分は、CaO、Al3、及びMgOの少なくともいずれか一つの成分を含み、測定した前記CaO、Al、及びMgOの少なくともいずれか一つの成分の成分濃度データに基づいて、前記分級強度の調整を行う、請求項2に記載の焼結鉱の製造方法。
【請求項7】
前記測定において、
前記高炉設備に搬送中の前記成品焼結鉱にレーザ光を照射することで、成品焼結鉱粒子の表面付着物及び/又は水分を除去する前処理を行い、
前記前処理において前記レーザ光が照射された部位の少なくとも一部に対し、分析用のレーザ光を照射し、レーザ誘起ブレークダウン分光法による成分分析を行うことにより、前記成分濃度データを得る、請求項1乃至請求項6のいずれか1つに記載の焼結鉱の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉用の焼結鉱を製造する焼結鉱の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、高炉製銑の主原料は、焼結鉱である。高炉原料となる焼結鉱(成品焼結鉱)は、一般的に、鉄鉱石を含む焼結鉱製造用の原料(焼結原料)を下方吸引式のドワイトロイド(DL)式焼結機内で焼結した後に、粉砕、篩分け等により所定の粒度に整粒して製造される。成品焼結鉱は、4~7時間ごとにサンプリングされて、蛍光X線分析や化学分析により元素組成が測定される。そして、この測定データに基づいて、焼結鉱の製造工程や高炉操業が管理される。
【0003】
近年、均質かつ質の良い鉄鉱石は枯渇傾向にあり、焼結原料として使用される鉄鉱石の劣質化により脈石などの成分が多く含まれるようになった。その結果、同じロット内でも焼結鉱の成分に変動が生じるようになった。高炉操業の生産効率向上のためには、焼結鉱の成分変動に応じて、焼結鉱の製造工程における焼結原料の配合比率、高炉操業における高炉原料の配合比率や操業条件(炉内温度や圧力など)を、きめ細やかに管理する必要がある。しかしながら、従来の焼結鉱の製造工程や高炉操業の管理は、上述したように、所定の時間間隔で搬送中の成品焼結鉱の中から試料を採取し、その成分分析結果に基づいて実施されていた。成分分析結果がわかるまでに時間を要するため、焼結鉱の成分変動に成分分析追いつかず、適切な管理を実施することが難しくなっていた。
【0004】
これに対し、特許文献1には、ベルトコンベア(コンベア)上を搬送される焼結鉱などの成分をリアルタイム分析装置で連続測定する技術が開示されている。具体的には、特許文献1には、成品焼結鉱、塊鉄鉱石および副原料を含む高炉原料を高炉に装入する高炉操業方法であって、焼結原料を焼結して焼結ケーキとする焼結工程と、焼結ケーキを破砕して焼結鉱とする破砕工程と、焼結鉱を冷却する冷却工程と、冷却された焼結鉱を、成品焼結鉱と返鉱とに篩分けする篩分け工程と、冷却された焼結鉱、成品焼結鉱および返鉱の少なくとも1つの成分濃度を測定する測定工程と、高炉原料に含まれる成品焼結鉱、塊鉄鉱石および副原料の配合量を調整する調整工程と、を有し、調整工程では、測定工程で測定された成分濃度を用いて高炉原料の配合量を調整し、測定工程ではコンベア上を搬送される、冷却された焼結鉱、成品焼結鉱および返鉱の少なくとも1つの成分濃度を連続測定する技術が開示されている。
【0005】
また、特許文献1には、赤外線分析計により、成品ラインのコンベア上を搬送される成品焼結鉱の成分濃度をオンラインで連続測定し、その測定値を用いて高炉原料の配合量を調整することにより、安定した高炉操業が実施できることが記載されている。また、オンラインでの連続測定は、反射光を分光する方式のものに限らず、透過光を分光する方式のものを用いてもよく、レーザ分析計、中性子分析計、マイクロ波分析計を用いてもよいことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2018-110521号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されているのは、高炉原料の配合量を調整する高炉操業方法であり、焼結鉱の製造工程を管理するものではなかった。本発明は、高炉原料としてより適した成品焼結鉱を高炉に搬送することができる焼結鉱の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)複数種の鉄鉱石、副原料、及び凝結材を含む配合原料を焼結機に装入し、
装入した前記配合原料を焼結して焼結ケーキを製造し、
前記焼結ケーキを成品焼結鉱と返鉱とに分級装置で篩分けし、
篩分けした前記成品焼結鉱を高炉設備に搬送する焼結鉱の製造方法において、
前記高炉設備に搬送中の前記成品焼結鉱の少なくとも一つの成分の濃度を連続的に測定し、
測定により得られた成分濃度データに基づいて、前記複数種の鉄鉱石、前記副原料、及び前記凝結材のうちの少なくとも一つの配合量、又は、前記複数種の鉄鉱石の配合比の調整を行う、焼結鉱の製造方法。
(2)前記成分濃度データに基づいて、さらに、前記焼結ケーキを前記成品焼結鉱と前記返鉱とに篩分けする前記分級装置の分級強度の調整を行う、(1)に記載の焼結鉱の製造方法。
(3)所定時間分の前記成分濃度データと所定の目標値とに基づいて、前記複数種の鉄鉱石、前記副原料、及び前記凝結材のうちの少なくとも一つの配合量、又は、前記複数種の鉄鉱石の配合比を調整する、(1)に記載の焼結鉱の製造方法。
(4)測定対象となる前記成分は、CaO、SiO、Al、MgO、FeO、及びCのうちの少なくとも一つである、(1)に記載の焼結鉱の製造方法。
(5)前記分級強度の調整は、前記成分濃度データに代えて、前記分級装置による篩分け後にサンプリングした焼結鉱の粒度分析結果に基づいて行う、(2)に記載の焼結鉱の製造方法。
(6)測定対象となる前記成分は、CaO、Al3、及びMgOの少なくともいずれか一つの成分を含み、測定した前記CaO、Al、及びMgOの少なくともいずれか一つの成分の成分濃度データに基づいて、前記分級強度の調整を行う、(2)に記載の焼結鉱の製造方法。
(7)前記測定において、
前記高炉設備に搬送中の前記成品焼結鉱にレーザ光を照射することで、成品焼結鉱粒子の表面付着物及び/又は水分を除去する前処理を行い、
前記前処理において前記レーザ光が照射された部位の少なくとも一部に対し、分析用のレーザ光を照射し、レーザ誘起ブレークダウン分光法による成分分析を行うことにより、前記成分濃度データを得る、(1)乃至(6)のいずれか1つに記載の焼結鉱の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
搬送中の成品焼結鉱の成分濃度を連続的に測定して、この測定データに基づいて、焼結原料の配合を調整することにより高炉原料としてより適した成品焼結鉱を高炉に搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の焼結鉱製造工程を示す図である。
図2】発明例2-1における成品焼結鉱の-5mm質量比率の時間変移を示すグラフである。
図3】発明例2-2における回転数指標と成品焼結鉱の-5mm質量比率の時間変移を示す2軸グラフである。
図4】比較例2-1における成品焼結鉱の-5mm質量比率の時間変移を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、複数種の鉄鉱石、副原料、及び凝結材を含む配合原料を焼結機に装入し、装入した配合原料を焼結して焼結ケーキを製造し、焼結ケーキを成品焼結鉱と返鉱とに分級装置で篩分けし、篩分けした成品焼結鉱を高炉設備に搬送する焼結鉱の製造方法において、高炉設備に搬送中の成品焼結鉱の少なくとも一つの成分の濃度を連続的に測定し、測定により得られた成分濃度データに基づいて、複数種の鉄鉱石、副原料、及び凝結材のうちの少なくとも一つの配合量、又は、複数種の鉄鉱石の配合比の調整を行う。以下、図面を用いて、本発明について説明する。図1は、本発明の焼結鉱製造工程の一例を示す図である。
【0012】
図1に示すように、焼結鉱製造工程は、原料配合工程S1、造粒工程S2、焼結工程S3、冷却・粉砕工程S4、及び分級工程S5を有する。各工程を経た原料や半製品などは、ベルトコンベアなどの搬送装置により次工程に運ばれる。
【0013】
原料配合工程S1は、焼結鉱の原料(焼結原料)の配合を行う工程である。
焼結原料は、複数銘柄の鉄鉱石(粉)等の鉄原料、スケール・製鉄ダスト等の含鉄雑原料、硅石等のSiO含有副原料、橄欖岩等のMgO含有副原料、石灰石等のCaO含有副原料、返鉱、及び焼結(凝結)の燃料となる凝結材(炭材)などである。各焼結原料は原料槽群に設けられた各原料槽内に貯留されており、焼結原料毎に所定量がベルトコンベア上に切り出されて、所定の割合(配合割合)で配合され、造粒工程S2に送られる。
【0014】
造粒工程S2は、配合され焼結原料(配合原料)を造粒する工程である。
ベルトコンベアにより搬送された配合原料は、造粒機に投入される。造粒機内で、所定時間の混合処理後に水分が添加(調湿)され、さらに所定時間の混合による造粒処理が行われる。造粒された配合原料の造粒物(配合原料造粒物)は、焼結工程S3に送られる。
【0015】
焼結工程S3は、配合原料造粒物を焼成して、焼結ケーキ(シンターケーキ)を製造する工程である。
配合原料造粒物はベルトコンベア上から配合原料サージホッパに貯留され、配合原料サージホッパからドワイトロイド(DL)式焼結機のパレット上に装入されて、原料充填層を形成する。原料充填層は点火炉により点火されて、原料充填層中の凝結材の燃焼熱により焼成される。焼結により得られた焼結ケーキは焼結機の排鉱端で排出されて、破砕機(1次破砕)により200mm未満の粒径の焼結鉱に粗破砕され、冷却・粉砕工程S4に送られる。
【0016】
冷却・粉砕工程S4は、粗破砕された塊状の焼結鉱を冷却し、粉砕する工程である。
塊状の焼結鉱は冷却装置によりベルトコンベアでの搬送可能な温度まで冷却される。その後、塊状の焼結鉱は、粉砕機(2次破砕)により粉砕されて、粒度がさらに細かくなった状態で、分級工程S5に送られる。
【0017】
分級工程S5は、粉砕された焼結鉱を高炉用に整粒する工程である。
粉砕された焼結鉱は、複数段階の分級装置による篩分け等により整粒処理される。整粒処理により高炉装入可能な粒度の焼結鉱(成品焼結鉱)が選別される。高炉装入に適した粒度は、例えば、粒径が5mm以上50mm未満の焼結鉱である。ここで、粒径が5mm以上50mm未満とは、篩目5mmで篩った際の篩上、かつ、篩目50mmで篩った際の篩下となる粒度を示す。なお、粒径が50mm以上の焼結鉱は粒径が50mm未満となるように粉砕処理が行われた後に、再度整粒処理が行われる。
【0018】
各分級装置は、例えば、傾斜型のスクリーン(篩目)を有する揺動式分級器であり、偏心駆動機構によって揺動運動が付加される。この駆動機構を回転させるモータの回転数を変化させることによって、分級強度を調整することができる。分級工程S5により選別された成品焼結鉱は高炉搬送ラインL1に、それ以外の焼結鉱は返鉱搬送ラインL2に載せられる。
【0019】
高炉搬送ラインL1は、成品焼結鉱を高炉設備に搬送するラインである。
高炉搬送ラインL1はコンベアなどの搬送装置を備える。粒径が5mm以上50mm未満の粒度の成品焼結鉱を高炉設備に搬送して、高炉製銑の原料とする。なお、成品焼結鉱は、別工程で製造された還元材であるコークス、石灰石、蛇紋岩等とともに、複数のベルトコンベアにより高炉に装入される。
【0020】
返鉱搬送ラインL2は、高炉原料に適さない微粉焼結鉱を原料配合工程S1に戻すラインである。
返鉱搬送ラインL2はコンベアなどの搬送装置を備え、成品焼結鉱よりも粒度の小さい粒径が5mm未満の焼結鉱(以下、粒径が5mm未満の焼結鉱を-5mm焼結鉱ともいう)を、上述した返鉱用の原料槽内に搬送する。粒径が5mm未満とは、篩目5mmで篩った際の篩下となる粒度を示す。搬送された-5mm焼結鉱は、返鉱として焼結原料に配合される。
【0021】
本発明の高炉搬送ラインL1には、オンライン分析処理が可能な成分分析装置1が備えられている。この成分分析装置1により、成品焼結鉱の成分濃度測定をオンラインで連続的に行う。成品焼結鉱の成分は、成品焼結鉱の品質や性状、及び高炉スラグの発生量や性状(粘度や溶融温度など)に影響を及ぼす因子であり、高炉安定操業の観点から所定の範囲内に収める必要がある。本発明においては、高炉搬送ラインL1における成品焼結鉱の成分測定により得られた成分濃度データに基づいて、原料配合工程S1での原料配合を調整する。
【0022】
原料配合の調整は、以下のように行う。成分分析装置1により測定された所定時間分の成分濃度データに基づいて、下記式(1)に示すΔ(X)の値が所定範囲(例えば、平均値±2σや平均値±3σなど)を超えた場合に、複数種の鉄鉱石、副原料、及び凝結材のうちの少なくとも一つの配合量、又は、複数種の鉄鉱石の配合比の調整を行う。
Δ(X)=目標濃度-測定濃度 ・・・式(1)
X:CaO、SiO、Al、MgO、FeO、又はC
目標濃度(質量%):目標とする濃度の値
測定濃度(質量%):成分分析装置により測定された濃度の値
【0023】
このような原料配合の調整により、劣質化した鉄鉱石が原料であっても、成分濃度のばらつきや目標濃度に基づく許容濃度範囲からの逸脱を抑制することができる。また、詳細は後述の実施例(実施形態1)で説明するが、成分濃度のばらつきを抑制できる(振れ幅を小さくすることができる)ので、成分濃度の振れ幅を考慮して目標濃度を好適な値に設定して、成品焼結鉱の成分濃度範囲をより好適な濃度範囲に近づけることが可能となる。安定した品質、性状の成品焼結鉱を製造して高炉原料とすることにより、安定した高炉操業が可能となる。また、このような焼結原料の配合調整を行うことにより、焼結原料自体の成分の安定化を図ることができ、焼結鉱の歩留まりも向上させることができる。次に、成品焼結鉱の成分濃度測定について説明する。
【0024】
(成品焼結鉱の成分濃度測定)
高炉搬送ラインL1での成分濃度測定は、高炉設備に搬送中の成品焼結鉱を分析対象として実施される。成分分析装置1は、例えば、レーザ分析装置、赤外線分析装置、中性子分析装置、マイクロ波分析装置などである。搬送中であるコンベア上(オンベルト)の成品焼結鉱の成分を連続的に測定し、オンライン分析を実施することで、逐次、成品焼結鉱の成分濃度データを得ることが可能となる。
【0025】
例えば、LIBS(Laser Induced Breakdown Spectroscopy:レーザ誘起ブレークダウン分光法)分析装置を用いて、成品焼結鉱の成分濃度の測定及び分析を行うのであれば、高炉設備に搬送中の成品焼結鉱にレーザ光を照射することで、成品焼結鉱の表面付着物及び/又は水分を除去する前処理を行い、前処理においてレーザ光が照射された部位の少なくとも一部に対し、分析用のレーザ光を照射し、レーザ誘起ブレークダウン分光法分析による成分分析を行うことにより、成品焼結鉱の成分濃度データを得ることが好ましい。この前処理は、いわゆるレーザアブレーション(Laser Ablation)により成品焼結鉱粒子の表面付着物や水分を除去する処理である。
【0026】
LIBS分析装置は、搬送方向に向かって順に配置された前処理用レーザ光源、及び分析用レーザ光源と、分析用レーザ光に起因する発光がどのような波長の光をどの程度の強さで含んでいるのかを検出する分光器(例えば、Avantes社製AvanSpec-ULS2048CL-EVO等)、演算処理装置、制御装置など測定や分析に必要な構成を備えており、演算処理装置は、分光器から出力された、成品焼結鉱から発生した発光に関する測定データ(各波長の発光強度に関するデータ)を取得し、かかる測定データに基づき、成品焼結鉱の成分組成を、LIBSにより分析する。
【0027】
ここで、分級工程S5を経た成品焼結鉱の表面には、ミクロンオーダーの大きさの、細かな焼結鉱粒子が付着している。この表面付着物である焼結鉱粒子は、塊部である成品焼結鉱粒子とは成分濃度が異なっている。前処理を行わずに成品焼結鉱を分析した場合、分析用のレーザ光の照射対象が表面付着物である焼結鉱粒子に偏ること、また、表面付着物である焼結鉱粒子は塊部である成品焼結鉱粒子に比較して質量割合が極めて少ないことにより、その分析データは塊部である成品焼結鉱粒子の成分濃度を表していない可能性が高い。
【0028】
また、焼結鉱は、貯蔵時や搬送時における粉塵対策の散水や、降雨によって、水分を含むことがある。水分を含有する試料にレーザを照射した場合、照射されるレーザ光から供給される、プラズマ生成に必要なエネルギーの少なくとも一部が、水分蒸発等に使われてしまう。そのため、試料からの発光が大幅に減衰する懸念がある。多変量解析等の手法を更に適用することで、水分の影響を一部補正できる可能性もあるが、発光強度が低下することに伴って分析精度も低下しているため、分析結果の信頼性も低下することが懸念される。
【0029】
そこで、分析用のレーザ光の照射前に上述の前処理を行い、前処理においてレーザ光が照射された部位の少なくとも一部に対し、分析用のレーザ光を照射して分析を行う。このような構成とすることにより、分析用のレーザ光が塊部である成品焼結鉱粒子に照射され、また、水分を含んでいた場合でも発光の信号強度の低下を抑制でき、成品焼結鉱の成分濃度を精度よく測定することが可能となる。
【0030】
なお、前処理後、分析用のレーザ光の照射前に、分析用のレーザ光を照射する分析部分の位置(例えば、ベルトコンベア等の搬送設備の搬送面からの高さ)を位置測定用のレーザ光を照射することにより測定し、測定した位置情報に基づいて分析部分に分析用のレーザ光を照射することも好ましい。分析対象となる成品焼結鉱の分析位置を特定することが可能となり、分析用のレーザ光を分析対象となる成品焼結鉱粒子の分析部分(表面)に、より確実に集光することが可能となる。その結果、成品焼結鉱の成分濃度を、より一層精度よく測定することが可能となる。
【0031】
(測定対象の成分)
本発明において、成分分析装置1の測定対象となる成分は、CaO、SiO、Al、MgO、FeO、及びCのうちの少なくとも一つである。SiO、Al、MgOは、脈石に含まれる成分であり、脈石比((CaO+SiO+Al+MgO)/Fe)や塩基度(CaO/SiO)が高いと、軟化・融着温度の上昇、スラグの流動性の低下により、高炉での高温通気抵抗が大きくなるという問題がある。また、燃料として配合される炭素(C)の残留濃度が高いと、焼結反応が十分進行しておらず、焼結鉱の粉化により高炉の通気性を阻害する虞がある。一方、CaO、SiO、Al、MgO、FeO、及びCのうち、予め濃度変動が少ないことがわかっている成分については測定が不要となる。本発明では、CaO、SiO、Al、MgO、FeO、及びCのうちの少なくとも一つの成分を測定し、測定により得られた成分濃度データに基づいて、焼結原料の配合調整を行う。以下に、焼結原料の配合調整について説明する。
【0032】
(焼結原料の配合調整)
本発明の焼結原料の配合調整は、成分濃度データに基づく、複数種の鉄鉱石、副原料、及び凝結材のうちの少なくとも一つの配合量、又は、複数種の鉄鉱石の配合比の調整である。配合調整は、上述の原料配合工程S1において、各原料槽内に貯留されている各焼結原料の切り出し量を調整することにより実施される。配合量や配合比を調整することにより、焼結鉱の成分や品質(冷間強度、還元粉化性)を安定化させることができる。
【0033】
焼結原料の配合調整は、所定時間分の成分濃度データと所定の目標値(目標濃度)とに基づいて行うことも好ましい。所定時間分の成分濃度データに基づいて調整を行うことにより、データのばらつきによる悪影響を抑制することができる。また、所定の目標値に基づいて調整を行うことにより、目標値を目安として調整することが可能となる。目標値は、操業経験に基づいて設定される値であり、目標値の設定により成分濃度のばらつき範囲の値を制御することが可能となる。
【0034】
原料配合工程S1における焼結原料の配合調整に加えて、上述の分級工程S5において、分級強度の調整を行うことも好ましい。次に、分級強度の調整について説明する。
【0035】
(分級強度の調整)
焼結原料の配合調整は、高炉搬送ラインL1での測定により得られた成分濃度データに基づいて実施されるが、測定実施箇所と配合調整実施箇所とは離れており、配合調整実施箇所の方が上流側にある。そのため、測定実施箇所での測定結果が判明した直後に配合調整実施箇所において配合調整を行っても、配合調整箇所と測定箇所の間の区間にある原料又は半製品については配合調整ができない。配合調整をせずに製造された一定量の成品焼結鉱が、高炉原料に適さないにもかかわらず高炉設備に搬送されることになる。高炉原料に適さない微粉の成品焼結鉱が高炉に搬送されてしまうと、高炉操業に悪影響を及ぼす。そこで、焼結原料の配合調整に加えて、より即効性の高いアクションである分級強度の調整を行う。
【0036】
分級強度は、成分濃度データに基づいて、上述の分級装置のモータの回転数を変化させて調整する。また、この分級強度の調整は、成分濃度データに基づいて所定時間における平均成分濃度データを算出し、算出した平均成分濃度データに基づいて行ってもよい。さらに、平均成分濃度データと所定の目標値(例えば、後述する回転数指標)とに基づいて行ってもよい。ここで、測定対象となる成分は、CaO、Al3、及びMgOの少なくともいずれか一つの成分を含み、測定したCaO、Al、及びMgOの少なくともいずれか一つの成分の成分濃度データに基づいて、分級強度の調整を行うことが好ましい。また、分級強度の調整は、成分濃度データに代えて、分級装置による篩分け後に(高炉搬送ラインL1上で)サンプリングした成品焼結鉱の粒度分析結果に基づいて行うこともできる。
【0037】
分級工程S5において、所定の粒度(粒径が5mm以上50mm未満)の焼結鉱が成品焼結鉱として選別されるが、成品焼結鉱の冷間強度が不足していると、高炉搬送ラインL1において微粉焼結鉱(-5mm焼結鉱)が多く含まれた状態となる場合がある。このような成品焼結鉱を高炉に装入すると、装入した際にさらに粉化して通気性を悪化させる可能性がある。分級装置の分級強度の調整は、高炉搬送ラインL1上の成品焼結鉱の粒度分布データ、又は成分濃度データに基づいて、搬送中の成品焼結鉱の強度(粉化の度合)を実測、又は推測して実施する。成品焼結鉱の強度不足であると判断された場合に、分級器の振動回転数を上げて分級強度を強める調整を行うことにより、微粉を振るい落とす程度を強める、または、予め高炉搬送中に粉化する可能性がある部分を分級工程S5において篩い落とし、微粉焼結鉱(-5mm焼結鉱)が高炉に搬送される量を低減することができる。一方、微粉の割合が十分に低いと判断されれば、分級強度を弱めてもよい。このようにすることにより、5mmより幾分大きな焼結鉱が余分に篩下に落ちて、高炉に搬送すべき適正な粒度を有す焼結鉱の歩留まりを不必要に下げることを避けることができる。
【0038】
高炉搬送ラインL1上の成品焼結鉱の粒度分布データに基づく判断は、例えば、以下のように行う。
高炉搬送ラインL1上の成品焼結鉱を2時間毎にサンプリングし、オフラインでサンプリングした成品焼結鉱中の微粉焼結鉱(-5mm焼結鉱)の質量比率を篩にかけて調べる。微粉焼結鉱の質量比率が制御値(例えば、6質量%)を超えた場合に分級器の振動回転数を上げ、制御値以下となった場合に分級器の振動回転数を戻してもよい。
【0039】
ここで、成品焼結鉱中の微粉焼結鉱(-5mm焼結鉱)の質量比率はオフラインでの粒度分布測定であるため、結果判明までに所定の時間を要する。そこで、成品焼結鉱の粒度分布測定に代えて、上述した焼結原料の配合調整のために測定される成分濃度データに基づいて分級器の振動回転数を調整することが好ましい。成分濃度データは、オンベルト上の成品焼結鉱のオンライン分析により得られるため、分級強度調整の要否判定をほぼリアルタイムで行うことができる。
【0040】
成品焼結鉱中の微粉焼結鉱(-5mm焼結鉱)の質量比率は、CaO、Al、及びMgOの成分濃度(含有率)と相関がある。例えば、CaO成分濃度が高いと、-5mm焼結鉱の質量比率が低くなるので、分級強度を下げる調整を行う。また、Al成分濃度が高いと、-5mm焼結鉱の質量比率が高くなるので、分級強度を上げる調整を行う。MgO成分濃度が高いと、-5mm焼結鉱の質量比率が高くなるので、分級強度を上げる調整を行う。なお、この3成分を測定することが好ましいが、3成分のうち、予め濃度変動が少ないことがわかっている成分があれば、その成分についての測定が不要となる。
【0041】
また、成品焼結鉱中のCaO、Al、及びMgOの3成分の濃度と、微粉焼結鉱(-5mm焼結鉱)の質量比率との相関関係式を予め調べておき、この相関関係式(経験式)から導き出される指標(回転数指標)に基づいて、分級強度調整の要否判定を行うことも好ましい。本実施形態では、モータの回転数を制御する分級器の篩上の焼結鉱を成品焼結鉱として高炉に搬送する。指標が所定の閾値A(例えば、後述する発明例2-2の上閾値20)を超える場合は、分級器のモータの回転数を上げ、閾値B(例えば、後述する発明例2-2の下閾値-20)より小さい場合は、モータの回転数を下げる。回転数指標が上閾値を超える場合、高炉操業に悪影響を及ぼすことになるので、分級器のモータの回転数を上げる。一方、回転数指標が下閾値を下回る場合は、微粉の篩い落としを強める必要はない。むしろ、5mmより幾分大きな焼結鉱が余分に篩下に落ちて、高炉に搬送すべき適正な粒度を有す焼結鉱の歩留まりを不必要に下げることになる。そのため、回転数指標が下閾値を下回る場合は、モータの回転数を下げるアクションをとる。
【0042】
分級強度の調整を、分級装置による篩分け後にサンプリングした成品焼結鉱の粒度分析結果に基づいて行う場合では、閾値Aを、-5mmの微粉焼結鉱の質量比率が「所定の制御値+δ」(例えば、後述する発明例2-1の上判定値)として定義してもよい。また、閾値Bを、-5mmの微粉焼結鉱の質量比率が「所定の制御値-δ」(例えば、後述する発明例2-1の下判定値)として定義してもよい。ここで、制御値は例えば6質量%であり、δは例えば、0.5質量%としてもよい。
【実施例0043】
(実施形態1:焼結原料の配合調整)
焼結原料の配合調整に関して、発明例1-1と比較例1-1の2つの実験を行った。測定対象成分は、CaO、SiO,MgO、及びAlの4成分としている。以下に、実験内容について順に説明する。
【0044】
(発明例1-1)
発明例1-1では、高炉搬送ラインL1のオンベルト上の成品焼結鉱を、LIBS分析装置によりオンラインで連続的に測定して10分間毎のデータを分析し、その分析結果に基づいて直ちに、原料槽から原料を切り出すタイミングでの焼結原料の配合調整(以下、オンベルト分析に基づく配合調整ともいう)を行った。具体的には、本発明例においては、上述した式(1)及び表1の上段に示す目標濃度αに基づき、目標値±1σ(σ:標準偏差)の範囲を超えた(外れた)場合に、配合調整を行った。Alの濃度が目標値+1σを超えたことが判明したら、Al濃度が多い鉄鉱石の配合比を減少させ、Al濃度が少ない鉄鉱石の配合比を増加させた。Alの濃度が目標値-1σを下回ったことが判明したら、上記と逆の方向に各鉄鉱石の配合比を増減することでAlの濃度を目標値に近くなるように制御した。尚、鉄鉱石の配合比の変更により、SiOの濃度が変化して目標値±1σの範囲を超えた場合は、硅石等のSiO含有副原料の配合量を調整した。CaO濃度、MgO濃度については、それぞれ、石灰石、ドロマイト、橄欖岩等の副原料の配合量の調整によって制御した。後述する表1の下段に、オンベルト分析に基づく配合調整を行った焼結原料から製造された成品焼結鉱の、LIBS分析装置による成分濃度分析結果を示す。
尚、LIBS分析においては、パルスエネルギー:40mJ、波長:1064nm、繰返周波数:100Hz、パルス幅:7nsのレーザ光源を用いた。
【0045】
(比較例1-1)
比較例1-1では、高炉搬送ラインL1から2時間毎にサンプリングした成品焼結鉱をオフラインで化学分析を行い、その分析結果に基づいて2時間毎に焼結原料の配合調整(以下、オフライン分析に基づく配合調整ともいう)を行った。具体的には、表1の上段に示す目標濃度βに基づき目標値±1σの範囲を超えた(外れた)場合に配合調整を行った。後述する表1の下段に、オフライン分析に基づく配合調整を行った焼結原料から製造された成品焼結鉱の、LIBS分析装置による成分濃度分析結果を示す。
【0046】
【表1】
【0047】
表1に示すように、4成分すべてについて、成分濃度のばらつきの幅(最小値と最大値との差、以下、振れ幅という)が、オフライン分析に基づく配合調整を行った比較例1-1よりもオンベルト分析に基づく配合調整を行った発明例1-1の方が小さく、成分濃度が安定している。また、発明例1-1の目標濃度αの値は、比較例1-1の目標濃度βの値と異なり、より理想的な値を目標値とすることができており、その結果、成分濃度の範囲(最小値~最大値)もより理想的な濃度範囲となった。
【0048】
例えば、CaOの場合、全体の成分濃度をなるべく下げるのが理想的ではあるが、その一方で、成分濃度が9.5質量%未満である成品焼結鉱が多くなると高炉操業に問題が出る。成分濃度の振れ幅が大きい比較例1-1では、目標濃度βをオンベルト分析に基づく配合調整の目標濃度αと同じ値の9.7質量%とすると、成分濃度が9.5質量%未満である成品焼結鉱が多くなってしまうため、目標濃度βを9.8質量%と上げておく必要がある。これに対し、成分濃度の振れ幅が小さい発明例1-1では、目標濃度αを9.7質量%としても成分濃度が9.5質量%未満である成品焼結鉱が多くなることはない。また、発明例1-1において、目標濃度αを9.8質量%ではなく9.7質量%に下げることにより、成分濃度の範囲が全体的に下がり、より理想的な濃度範囲となっている。
【0049】
SiOの場合も成分濃度をなるべく下げるのが理想的ではあるが、成分濃度の許容範囲の下限は5.1質量%である。また、MgO、及びAlの場合は、成分濃度をなるべく上げるのが理想的ではあるが、成分濃度の許容範囲の上限は、それぞれ、1.15質量%、1.69質量%である。これら3成分についても、成分濃度の振れ幅が小さい発明例1-1の方が目標濃度αをより理想的な値に設定することができ、成分濃度の範囲が比較例1-1に比べてより理想的な濃度範囲となっている。
【0050】
(実施形態2:分級器の分級強度調整)
分級強度の調整に関して、オフラインでの粒度分布測定に基づいて分級強度の調整を行った発明例2-1、オンライン分析(LIBS分析)の結果に基づいて分級強度の調整を行った発明例2-2、及び分級強度の調整を行わない比較例2-1の3つの実験を行った。以下に、実験内容について順に説明する。なお、本実施形態においては、焼結原料の配合調整に加えて、より即効性の高いアクションである分級強度の調整を行うが、本発明例(発明例2-1,2-2、比較例2-1)においては、分級強度調整のみの効果を検証する目的で、便宜上、焼結原料の配合調整が行われていない状況下において、分級強度調整を実施している。
【0051】
(発明例2-1)
本発明例では、高炉搬送ラインL1のLIBS分析装置設置箇所よりも下流側において、成品焼結鉱50kgを10分ごとにサンプリングして、オフラインで粒度分布測定を行い、その測定結果に基づいて分級強度の調整を行った。なお、実際の操業においては、このような高頻度の粒度分布測定はコストが嵩むため実施しないが、本発明例においては、成品焼結鉱試料全体に対する-5mmの粒度の成品焼結鉱の質量比率(以下、-5mm質量比率という)の時間変化を調べるために行った。オフラインの粒度分布の測定結果はサンプリングの2時間後に判明する。そこで、2時間毎の-5mm質量比率の値を参照して、分級工程S5における分級器の分級強度を調整し、成品焼結鉱の粒度制御を行った。ここで、本発明例においては、-5mm質量比率の値の範囲が6.0±0.5質量%が許容範囲であったので、制御値6質量%に対して±0.5質量%の値である6.5質量%、5.5質量%をそれぞれ上判定値(閾値A)、下判定値(閾値B)と設定して、粒度制御を実施した。
【0052】
具体的には、サンプリングから2時間経過後に判明する-5mm質量比率の値が上判定値(6.5質量%)以上となった場合に、直ちに分級器の振動回転数を20rpm上げる調整を行った。成品焼結鉱の量がなるべく多くなるように粒径が小さいものも高炉へ投入出来た方が生産率は上がるが、粒径が小さいものを入れすぎてしまうと、高炉操業において目詰まりが起き通気性が悪化してしまうためである。また、-5mm質量比率の値が下判定値(5.5質量%)以下となった場合には、直ちに分級器の振動回転数を20rpm下げる調整を行った。この調整は成品焼結鉱の量を確保するためである。もちろん、-5mm質量比率の制御値や許容範囲(上判定値および下判定値)は、高炉操業への影響、成品焼結鉱の歩留まり目標等に応じて適宜設定可能であり、本発明例の数値に限られるものではない。
【0053】
図2は、成品焼結鉱の-5mm質量比率の時間変移を示すグラフであり、縦軸が-5mm質量比率(質量%)、横軸が測定開始からの経過時間(分)を示す。図2に示すように、測定開始時(0分)の-5mm質量比率は5.2質量%であり、6.5質量%(上判定値)未満であった。そのため、測定開始時(0分)の結果判明のタイミングで実施する分級器の調整時T1において、分級器の振動回転数の調整は行わなかった。測定開始から2時間後(120分)の-5mm質量比率は6.6質量%であり、6.5質量%(上判定値)以上であった。そのため、測定開始から2時間後(120分)の結果判明のタイミングで実施する分級器の調整時T2において、分級器の振動回転数を20rpm上げた。調整時T2に取ったアクション(分級強度の調整)により-5mm質量比率は減少し、その後約2時間にわたって6質量%(制御値)未満に制御された。
【0054】
(発明例2-2)
本発明例では、高炉搬送ラインL1に設けたLIBS分析装置により、オンベルトの成品焼結鉱のLIBS分析をオンラインで行い、その分析結果に基づいて分級強度の調整を行った。LIBS分析におけるレーザの条件は、(発明例1-1)と同様とした。また、発明例2-1と同様に成品焼結鉱を10分ごとにサンプリングして、オフラインでの粒度分布測定も行った。
【0055】
分析精度向上のためレーザパルス照射によって得られた5分間分の測定データから、Ca、Al、及びMgの各濃度の平均値を求め、CaO、Al、及びMgOの実測質量比率を算出した。これらの実測質量比率と下記式(2)を用いて回転数指標を求めた。回転数指標が上閾値20を超えた場合、回転数指標が20以下となるまで分級器の振動回転数を20rpm上げるアクションをとった。回転数指標が下閾値-20よりも小さくなった場合、回転数指標が-20以上となるまで分級器の振動回転数を20rpm下げるアクションをとった。なお、式(2)は、実操業において取得した成品焼結鉱の成分組成(CaO、Al、及びMgOの質量比率)のデータと-5mm質量比率のデータとを用いて、重回帰分析により求めた相関関係式である。また、目標質量比率値とは、高炉原料として適した、各成分の目標となる質量比率の値(経験値)である。
回転数指標=(1.6x-8.3y-0.5z)/0.004 ・・・式(2)
x:CaOの目標質量比率値-CaOの実測質量比率値(質量%)
y:Alの目標質量比率値-Alの実測質量比率値(質量%)
z:MgOの目標質量比率値-MgOの実測質量比率値(質量%)
【0056】
図3は、成品焼結鉱の-5mm質量比率と回転数指標の時間変移を示す2軸グラフであり、左側縦軸が-5mm質量比率(質量%)、右側縦軸が回転数指標、横軸が測定開始からの経過時間(分)を示す。図3に示すように、測定開始から40分後の回転数指標が上閾値20を超えたため、直ちに分級器の振動回転数を20rpm上げるアクションをとった。アクションから160分経過した時点(測定開始から200分後)で回転数指標が20以下となったため、分級器の振動回転数を元に戻した。
【0057】
なお、本発明例においては、回転数指標が下閾値-20を下回ることはなかったが、下回った例においては、分級器の振動回転数を20rpm下げることにより、5mm以上の焼結鉱粒子が篩下に落下することが抑制され、結果として成品焼結鉱の歩留まりが改善した。
【0058】
このように、発明例2-2においては、オンベルトの成品焼結鉱の成分濃度をオンライン分析するため、分析結果から算出される回転数指標をほぼリアルタイムで得ることができる。回転数指標に基づいて、分級器の振動回転数を調整するアクションの要否もほぼリアルタイムで判断でき、直ちにアクションを取ることが可能である。オンライン分析を実施する高炉搬送ラインL1は分級工程S5の下流側に繋がっているので、アクションが焼結原料の配合調整よりも即効的に工程上の成品焼結鉱に反映される。よって、回転数指標の基づいた分級強度の調整により、-5mm質量比率を概ね制御値±0.5質量%以内の粒度に制御することが可能であり、高炉原料に適した粒度の成品焼結鉱を高炉に搬送することができる。
【0059】
(比較例)
比較例では、発明例2-1と同様に成品焼結鉱を10分ごとにサンプリングして、オフラインでの粒度分布測定を行ったが、分級強度の調整を行わなかった。図4は、成品焼結鉱の-5mm質量比率の時間変移を示すグラフであり、縦軸が-5mm質量比率(質量%)、横軸が測定開始からの経過時間(分)を示す。図4に示すように、分級器の振動回転数の調整を行わない場合は、-5mm質量比率が制御値6質量%を超えることが多くなるため、高炉操業の通気性に悪影響を及ぼす虞がある。
【0060】
以上、図面を参照しながら本発明について詳細に説明したが、上述の構成に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できることは勿論である。なお、本発明においては、分級器の分級強度調整は、成品焼結鉱の成分濃度データに基づく焼結原料の配合調整を行ったうえで実施する構成としているが、分級器の分級強度調整のみを実施する構成であっても、高炉原料としてより適した成品焼結鉱を高炉に搬送する効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0061】
S1:原料配合工程、S2:造粒工程、S3:焼結工程、S4:冷却・粉砕工程、S5:分級工程、L1:高炉搬送ライン、L2:返鉱搬送ライン、1:成分分析装置
図1
図2
図3
図4