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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048568
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】構造体
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/58 20060101AFI20240402BHJP
   E04B 1/30 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
E04B1/58 508Z
E04B1/30 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154545
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】笠原 貴喜
(72)【発明者】
【氏名】シング ラヴィ
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 康人
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 仁
(72)【発明者】
【氏名】西塔 純人
(72)【発明者】
【氏名】中川 学
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA04
2E125AA14
2E125AA57
2E125AB11
2E125AC01
2E125AC23
2E125AG03
2E125AG31
2E125AG41
2E125AG60
2E125CA82
2E125CA83
(57)【要約】
【課題】木梁が受ける支圧応力が低減されたハイブリッド梁を備える構造体を提供すること。
【解決手段】構造体は、柱に接続される木梁と、木梁の端部を囲む複数の横補強筋と、木梁の端部および複数の横補強筋を埋設するコンクリートと、木梁の端部と複数の横補強筋との間においてコンクリートに埋設される、第1の板状部材および第2の板状部材と、を含み、第1の板状部材の第1の面は、木梁の端部と接し、第1の板状部材の第1の面と反対の第2の面は、第2の板状部材の第1の面と接し、第2の板状部材の第1の面と反対の第2の面は、コンクリートと接し、第1の板状部材の第2の面の面積は、第2の板状部材の第1の面の面積よりも大きく、第1の板状部材の第2の面と前記コンクリートとの間に間隙を含む。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱に接続される木梁と、
前記木梁の端部を囲む複数の横補強筋と、
前記木梁の前記端部および前記複数の横補強筋を埋設するコンクリートと、
前記木梁の前記端部と前記複数の横補強筋との間において前記コンクリートに埋設される、第1の板状部材および第2の板状部材と、を含み、
前記第1の板状部材の第1の面は、前記木梁の前記端部と接し、
前記第1の板状部材の前記第1の面と反対の第2の面は、前記第2の板状部材の第1の面と接し、
前記第2の板状部材の前記第1の面と反対の第2の面は、前記コンクリートと接し、
前記第1の板状部材の前記第2の面の面積は、前記第2の板状部材の前記第1の面の面積よりも大きく、
前記第1の板状部材の前記第2の面と前記コンクリートとの間に間隙を含む、構造体。
【請求項2】
前記第1の板状部材および前記第2の板状部材の各々は、鋼製部材である、請求項1に記載の構造体。
【請求項3】
前記複数の横補強筋は、集中補強筋を形成し、
前記第1の板状部材および前記第2の板状部材は、前記集中補強筋と重畳する位置に配置される、請求項1に記載の構造体。
【請求項4】
前記間隙には、前記第2の板状部材よりもヤング率の小さい緩衝部材が配置される、請求項1に記載の構造体。
【請求項5】
前記緩衝部材は、スチレン樹脂およびスチロール樹脂の少なくとも1つを含む、請求項4に記載の構造体。
【請求項6】
前記第2の板状部材の前記第1の面の全面が、前記第1の板状部材の第2の面と重畳している、請求項1に記載の構造体。
【請求項7】
前記木梁の延在方向において、前記第1の板状部材の一端と前記第2の板状部材の一端とが略一致している、請求項1に記載の構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、建築物に適用される構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、事務所ビル、病院、または商業施設などの広い室内空間が要求される建築物などに適用される構造体において、一対の柱の間に架設される梁として鉄骨を用い、鉄骨の両端部を鉄筋コンクリートで覆う梁(ハイブリッド梁)が採用されている。ハイブリッド梁を用いることで、梁の全てを鉄筋コンクリートで施工する場合と比較し、柱の数を大幅に減らすことができ、その結果、大きな空間を有する構造体を設計し、建造することができる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-170386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
支圧応力に抵抗する強度を比較すると、木材のめり込み強度は、コンクリートの支圧強度よりも大幅に小さい。そのため、木梁のせん断面が地震力に対して抵抗する前に、木梁がめり込み破壊(支圧破壊)を起こすおそれがあった。
【0005】
本発明の一実施形態は、上記問題に鑑み、木梁が受ける支圧応力が低減されたハイブリッド梁を含む構造体を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る構造体は、柱に接続される木梁と、木梁の端部を囲む複数の横補強筋と、木梁の端部および複数の横補強筋を埋設するコンクリートと、木梁の端部と複数の横補強筋との間においてコンクリートに埋設される、第1の板状部材および第2の板状部材と、を含み、第1の板状部材の第1の面は、木梁の端部と接し、第1の板状部材の第1の面と反対の第2の面は、第2の板状部材の第1の面と接し、第2の板状部材の第1の面と反対の第2の面は、コンクリートと接し、第1の板状部材の第2の面の面積は、第2の板状部材の第1の面の面積よりも大きく、第1の板状部材の第2の面と前記コンクリートとの間に間隙を含む。
【0007】
第1の板状部材および第2の板状部材の各々は、鋼製部材であってもよい。
【0008】
複数の横補強筋は、集中補強筋を含み、第1の板状部材および第2の板状部材は、集中補強筋と重畳する位置に配置されてもよい。
【0009】
間隙には、第2の板状部材よりもヤング率の小さい緩衝部材が配置されてもよい。緩衝部材は、スチレン樹脂およびスチロール樹脂の少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0010】
第2の板状部材の第1の面の全面が、第1の板状部材の第2の面と重畳していてもよい。
【0011】
木梁の延在方向において、第1の板状部材の一端と第2の板状部材の一端とが略一致していてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一実施形態に係る構造体によれば、コンクリートと木梁との間に補強ユニットを設けることにより、コンクリートから木梁に伝達される支圧応力を低減することができる。そのため、ハイブリッド梁における木梁の支圧破壊を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る構造体の構成を示す模式的な斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る構造体のハイブリッド梁の構成を示す模式的な側面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る構造体のハイブリッド梁の端部の構成を示す模式的な側面図および上面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る構造体のハイブリッド梁の端部の構成を示す模式的な断面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る構造体の補強ユニットの構成を示す模式的な上面図である。
図6】本発明の一実施形態に係る構造体の補強ユニットの構成を示す模式的な断面図である。
図7】本発明の一実施形態に係る構造体における木梁の支圧応力を説明する模式的な断面図である。
図8】本発明の一実施形態に係る構造体の変形例として、ハイブリッド梁の端部の補強ユニットの構成を示す模式的な上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の各実施形態について、図面等を参照しつつ説明する。ただし、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0015】
図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状などについて模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。本明細書と各図において、既出の図に関して説明したものと同様の機能を備えた要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略することがある。符号が付された要素の一部を表記する際には、符号に小文字のアルファベットが添えられる。同一または類似の構造を有する複数の要素をそれぞれ区別して表記する際には、符号の後にハイフンと自然数を付す。同一または類似の構造を有する複数の要素を纏めて表記する際には、符号のみを用いる。
【0016】
本明細書において、各構成に付記される「第1」、「第2」、または「第3」の文字は、各構成を区別するために用いられる便宜的な標識であり、特段の説明がない限り、それ以上の意味を有さない。
【0017】
「ある構造体が他の構造体から露出する」という表現は、ある構造体の一部が他の構造体によって覆われていない態様を意味し、この他の構造体によって覆われていない部分は、さらに別の構造体によって覆われる態様も含む。
【0018】
コンクリートとは、原料の一つであるセメントが水と反応して生成する水和物が硬化して流動性を示さないものを指し、セメントと水を含む混合物が完全に硬化せずに流動性を有する状態(レディーミクストコンクリート、生コンクリート)と区別される。
【0019】
以下、本発明の一実施形態に係る構造体100の構成について説明する。なお、以下では、便宜上、地面に平行な面をxy面とし、xy面に垂直な鉛直方向がz方向であるとして説明する。
【0020】
[1.構造体100の全体の構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る構造体100の構成を示す模式的な斜視図である。図1に示すように、構造体100は、基本的な構成として、鉛直方向(z方向)に延在する複数の柱110、水平方向(x方向またはy方向)に延在する複数の梁120、および梁120の上に設けられる床スラブ150を含む。複数の梁120の各々は、隣接する一対の柱110に架設されるように接続されている。
【0021】
柱110の数は4以上であれば特に制約はなく、構造体100の大きさや形状に応じ、その数および配置を適宜決定すればよい。柱110は、図示されない杭および基礎梁と接続される。柱110の形状(xy面における端面形状)も任意であり、四角形、円形、または楕円形などから適宜選択される。柱110の長さも、構造体100の大きさまたは各階の高さに応じて適宜設計される。
【0022】
構造体100に設けられる複数の梁120の少なくとも1つは、ハイブリッド梁である。構造体100において、複数の梁120の全てがハイブリッド梁であってもよく、または複数の梁120の一部がハイブリッド梁であり、他の梁120は鉄筋コンクリート製の梁(鉄筋コンクリート梁、以下、「RC梁」という。)もしくは木梁で形成された梁であってもよい。
【0023】
例えば、図1に示す構造体100では、第1の梁120-1および第3の梁120-3がハイブリッド梁であり、第2の梁120-2および第4の梁120-4はRC梁である。ここでは、長い間隔(スパン)で設けられる一対の柱110(例えば、第1の柱110-1と第2の柱110-2との対、第3の柱110-3と第4の柱110-4との対、および第5の柱110-5と第6の柱110-6との対)に接続される梁120としてハイブリッド梁が用いられ、短い間隔で設けられる一対の柱110(例えば、第1の柱110-1と第3の柱110-3との対、第2の柱110-2と第4の柱110-4との対、第3の柱110-3と第5の柱110-5との対、および第4の柱110-4と第6の柱110-6との対)に接続される梁120としてRC梁が用いられている。ハイブリッド梁およびRC梁の配置は任意に決定することができるが、図1に示した例のように、長い間隔で設けられる一対の柱110の間にハイブリッド梁を用いることが好ましい。これは、RC梁と比較するとハイブリッド梁は軽量であるため、スパンの大きい梁(第1の梁120-1および第3の梁120-3など)にハイブリッド梁を用いることで広い室内空間を確保しつつ、構造体100に十分な強度を付与することができるためである。
【0024】
[2.ハイブリッド梁の構成]
図2(A)および図2(B)は、それぞれ、本発明の一実施形態に係る構造体100のハイブリッド梁の構成を示す模式的な側面図である。図2(B)では、ハイブリッド梁の内部構造を示すため、柱110および梁120のコンクリート116および130が点線で示されている。また、図2(A)および図2(B)では、床スラブ150の図示が省略されている。床スラブ150は、梁120上に設けられる鉄筋コンクリートであり、公知の構造を採用することができるため、床スラブ150の説明を省略する。
【0025】
まず、ハイブリッド梁の構成を説明する前に、柱110の構成について説明する。
【0026】
複数の柱110の各々には、鉄筋ユニットが設けられている。鉄筋ユニットは、鉛直方向に延在する少なくとも1つの柱主筋112、および柱主筋112と交差し、柱主筋112を取り囲むように設けられる複数の帯筋114を含む。柱110では、鉄筋ユニットを取り囲むようにコンクリート116が打設されている。柱主筋112の数および帯筋114の配置密度は特に限定されない。柱主筋112の数および帯筋114の配置密度は、柱110の長さもしくは太さ、または要求される強度によって適宜決定されればよい。
【0027】
続いて、ハイブリッド梁の構成について説明する。
【0028】
ハイブリッド梁である梁120は、木梁122を含む。以下では、単に梁120と記載するとき、梁120は木梁122を含むハイブリッド梁を指す。梁120の端部124(第1の端部124-1および第2の端部124-2)では、木梁122の一端がコンクリート130によって覆われている。第1の端部124-1と第2の端部124-2との間では、木梁122が露出されている。すなわち、梁120は、木梁122がコンクリート130によって覆われた2つの端部124と、2つの端部124の間に木梁122が露出された中間部125とを含む。別の言い方をすれば、梁120は、2つの端部124の各々において、木梁122がコンクリート130に埋設されている。梁120は、端部124を介して柱110に接続される。
【0029】
木梁122は木材を含み、その端面形状(木梁122の延在方向に垂直な端面)は任意に決定することができる。端面形状は、例えば、円、楕円、または四角形などの多角形であるが、これらに限られない。また、端面形状の輪郭は、複数の曲線と複数の直線とで形成されていてもよい。また、端面形状は、木梁122の延在方向において一定でもよく、木材の元の形状に起因して変化していてもよい。木材の種類は特に限定されない。例えば、木梁122は、檜、松、または杉などの針葉樹に由来する木材でもよく、オーク、ブナ、ケヤキ、ウォールナット、チーク、またはマホガニーなどの広葉樹に由来する木材でもよい。また、木梁122は、複数の板状木材が貼り合わされた合板であってもよい。
【0030】
ここで、図2(A)および図2(B)とともに、図3(A)、図3(B)および図4も参照して、梁120の端部124の構成について説明する。
【0031】
図3(A)および図3(B)は、それぞれ、本発明の一実施形態に係る構造体100のハイブリッド梁の端部の構成を示す模式的な側面図および模式的な上面図である。図4は、本発明の一実施形態に係る構造体100のハイブリッド梁の端部の構成を示す模式的な断面図である。具体的には、図4は、図3(A)および図3(B)に示すA-A’線に沿って切断された断面図である。
【0032】
梁120の端部124には、複数の梁主筋126および複数の横補強筋128などの鉄筋が配置される。
【0033】
梁主筋126は、木梁122の延在方向に平行な方向に延在し、木梁122から離隔するように配置されている。梁主筋126の一端は、コンクリート130に配設され、梁主筋126の他端は、コンクリート116に埋設されている。すなわち、梁主筋126の一部が柱110に埋設され、これにより、梁主筋126が固定される。なお、梁主筋126の一端には、梁主筋126よりも端面積の大きい定着プレート126aが形成されていてもよい(図2(B)参照)。
【0034】
横補強筋128は、木梁122および梁主筋126と交差するように配置されている。図4に示すように、横補強筋128は、木梁122および梁主筋126を取り囲んでいる。横補強筋128は、全ての梁主筋126を取り囲むように配置されてもよい。横補強筋128の配置密度(ピッチ)は、端部124内で一定であってもよく、一定でなくてもよい。但し、端部124において支圧応力の加わる位置、例えば、端部124の中央よりも柱110側の位置および中間部125側の位置には、複数の横補強筋128が高密度で配置された集中補強筋128aが形成されていることが好ましい(図3(A)および図3(B)参照)。
【0035】
なお、図示しないが、端部124には、梁主筋126および横補強筋128と接する複数の差し筋が配置されていてもよい。
【0036】
木梁122は、柱110と接していてもよい。より具体的には、木梁122の両端は、それぞれ、一対の柱110の帯筋114と接していてもよい。また、木梁122の両端は、それぞれ、柱110を形成するコンクリート116と接していてもよく、またはコンクリート116に埋設されていてもよい。端部124において、木梁122は、複数の梁主筋126に挟まれ、横補強筋128に囲まれている。
【0037】
コンクリート130は、端部124において、木梁122の一端、梁主筋126、および横補強筋128を埋設するように設けられている。
【0038】
また、図3(A)、図3(B)、および図4から理解されるように、梁120の端部124には、第1の板状部材141、第2の板状部材142、および緩衝部材143が設けられている。すなわち、端部124は、梁主筋126、横補強筋128、およびコンクリート130だけでなく、第1の板状部材141、第2の板状部材142、および緩衝部材143を含む補強ユニット140も備える。
【0039】
端部124において、補強ユニット140は、梁120の支圧応力の加わる位置に設けられている。例えば、補強ユニット140は、集中補強筋128aと重畳するように配置されていてもよい。また、端部124において、複数の補強ユニット140が設けられていてもよい。この場合、複数の補強ユニット140は、木梁122の上側および下側に配置することができる。
【0040】
ここで、図5および図6を参照して、補強ユニット140の構成の詳細について説明する。
【0041】
図5は、本発明の一実施形態に係る構造体100の補強ユニット140の構成を示す模式的な上面図である。また、図6(A)および図6(B)は、本発明の一実施形態に係る構造体100の補強ユニット140の構成を示す模式的な断面図である。具体的には、図6(A)は、図5に示すB-B’線に沿って切断された断面図であり、図6(B)は、図5に示すC-C’に沿って切断された断面図である。なお、図5においては、説明の便宜上、コンクリート130の図示が省略されている。
【0042】
補強ユニット140は、木梁122と梁主筋126(または横補強筋128)との間において、コンクリート130に埋設されるように設けられている。第1の板状部材141は、第1の板状部材141の第1の面が木梁122と接するように配置されている。第1の板状部材141のy方向における幅は、木梁122の幅と略一致している。第2の板状部材142は、第2の板状部材142の第1の面が第1の板状部材141の第2の面(第1の板状部材141の第1の面と反対の面)と接するように配置されている。すなわち、第2の板状部材142は、第1の板状部材141と重畳するように配置されている。また、第2の板状部材142の第2の面(第2の板状部材142の第1の面と反対の面)は、コンクリート130と接している。
【0043】
第1の板状部材141と第2の板状部材142とは、お互いの位置が固定されるように接合されていることが好ましい。但し、第1の板状部材141と第2の板状部材142との位置の固定はこれに限られない。第1の板状部材141と第2の板状部材142とは、接着されていてもよく、またはネジ止めされていてもよい。
【0044】
xy面において、第1の板状部材141の面積は、第2の板状部材142の面積よりも大きい。より具体的には、第1の板状部材141の第1の面および第2の面の面積は、第2の板状部材142の第1の面および第2の面の面積よりも大きい。また、第1の板状部材141の第2の面は、コンクリート130と接していない。そのため、第1の板状部材141の第2の面とコンクリートとの間には間隙が生じるが、補強ユニット140では、その間隙に緩衝部材143が配置されている。
【0045】
緩衝部材143は、間隙において、第1の板状部材141の第2の面およびコンクリート130と接している。図5に示すように、上面視において、緩衝部材143は、第2の板状部材142を囲むように配置されている。また、図6(A)および図6(B)に示すように、緩衝部材143は、緩衝部材143の外形が第1の板状部材141の外形と略一致するように配置されている。
【0046】
第1の板状部材141および第2の板状部材142として、剛性の高い鋼製部材が用いられる。例えば、第1の板状部材141および第2の板状部材142は、鋼板である。第1の板状部材141と第2の板状部材142とは、同じ鋼製部材であってもよく、異なる鋼製部材であってもよい。第1の板状部材141および第2の板状部材142の各々の板厚は、特に限定されない。第1の板状部材141の板厚と第2の板状部材142の板厚とは、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0047】
緩衝部材143として、第1の板状部材141および第2の板状部材142よりも剛性の低い材料が用いられる。具体的には、緩衝部材143のヤング率は、第1の板状部材141および第2の板状部材142の各々のヤング率よりも小さい。緩衝部材143はヤング率が小さいため、外力が加わると変形しやすく、外力を伝達しにくい。例えば、緩衝部材143として、スチレン樹脂、スチロール樹脂、ウレタン樹脂、およびゴムなどが用いられる。
【0048】
ここで、図7を参照して、構造体100の木梁122が受ける支圧応力について説明する。
【0049】
図7は、本発明の一実施形態に係る構造体100において、木梁122が受ける支圧応力を説明する模式的な断面図である。
【0050】
上述したように、緩衝部材143のヤング率は、第2の板状部材142のヤング率よりも小さい。そのため、コンクリート130で生じた支圧応力のほとんどは、第2の板状部材142の第2の面に加わる。すなわち、コンクリート130からの支圧応力は、緩衝部材143には伝達されず、第2の板状部材142に伝達される。第2の板状部材142に伝達された支圧応力は、第1の板状部材141を介して木梁122に伝達される。ここで、木梁122と第1の板状部材141とが接する面積(第1の板状部材141の第2の面の面積に相当)は、第2の板状部材142と第1の板状部材141との接する面積(第2の板状部材142の第1の面の面積に相当)よりも大きい。そのため、木梁122に加わる支圧応力は、第1の板状部材141に加わる支圧応力よりも小さくなる。すなわち、木梁122に伝達される支圧応力は、コンクリート130で生じた支圧応力よりも小さい。したがって、補強ユニット140を含む端部124では、補強ユニット140が、木梁122が受ける支圧応力を低減することができる。
【0051】
第1の板状部材141のy方向における幅は、木梁122の幅と略一致していることが好ましい。xy面において、木梁122が露出していると、コンクリート130から木梁122に支圧応力が直接伝達されるため、補強ユニット140の効果が減少してしまう。第1の板状部材141のx方向における長さは、特に限定されない。また、緩衝部材143の外形は、第1の板状部材141の外形と略一致していることが好ましい。xy面において、第1の板状部材141の第2の面が露出していると、コンクリート130から第1の板状部材141に支圧応力が直接伝達されるため、補強ユニット140の効果が減少してしまう。このように、構造体100では、xy面において、第1の板状部材141の第2の面が露出することなく、第2の板状部材142または緩衝部材143によって覆われている。
【0052】
第1の板状部材141の面積に対する第2の板状部材142の面積の比を変えることにより、木梁122に加わる支圧応力を調整することができる。より具体的には、第2の板状部材142のy方向の幅を変えることにより、コンクリート130の支圧耐力を調整することができる。また、第1の板状部材141のx方向の長さを変えることにより、木梁122の支圧耐力を調整することができる。
【0053】
以上説明したように、構造体100は、木梁122と接する補強ユニット140を含む。補強ユニット140は、コンクリート130から木梁122に伝達される支圧応力を低減するため、梁120における木梁122の支圧破壊を防止することができる。
【0054】
構造体100は、さまざまな変形が可能である。特に、第1の板状部材141、第2の板状部材142、および緩衝部材143のそれぞれの位置、大きさ、および配置を変えることにより、補強ユニット140の構成が変化する。そこで、以下では、図8を参照して、構造体100の補強ユニット140のいくつかの変形例について説明する。
【0055】
図8(A)~図8(C)は、本発明の一実施形態に係る構造体100の変形例として、ハイブリッド梁の端部124の補強ユニット140の構成を示す模式的な上面図である。図8では、説明の便宜上、コンクリート130などの一部の構成が省略されている。また、変形例の構成が上述した構造体100の構成と同様であるとき、変形例の構成の説明を省略する場合がある。なお、構造体100の変形例は、図8(A)~図8(C)に示す構成に限定されない。
【0056】
<変形例1>
図8(A)に示す変形例では、y方向において、第2の板状部材142の両端が、第1の板状部材141の両端と略一致している。そのため、第1の板状部材141の第2の面の上には、分離された第1の緩衝部材143-1および第2の緩衝部材143-2が配置されている。このように、構造体100の変形例は、第2の板状部材の少なくとも一辺が、対応する第1の板状部材141の一辺と略一致している構成であってもよい。
【0057】
<変形例2>
図8(B)に示す変形例では、第1の板状部材141とコンクリート130との間の間隙に、緩衝部材143が設けられていない。すなわち、第1の板状部材141とコンクリート130との間の間隙が空隙となっている。そのため、第1の板状部材141の第2の面は、第2の板状部材142の第1面と接するが、空隙によりコンクリート130とは接していない。上面視において、第1の板状部材141の第2面は、第2の板状部材142から露出されている。このように、構造体100の変形例は、緩衝部材143が設けられず、空隙を有する構成であってもよい。
【0058】
<変形例3>
図8(C)に示す変形例では、第1の板状部材141の上に、複数の第2の板状部材142(第2-1の板状部材142-1、第2-2の板状部材142-2、第2-3の板状部材142-3、および第2-4の板状部材142-4)が離間して設けられている。図8(C)では4つの第2の板状部材142が設けられているが、第2の板状部材142の数はこれに限られない。離間された複数の第2の板状部材142の間には緩衝部材143が設けれ、第1の板状部材141の第2の面を覆っている。複数の第2の板状部材142の総面積は、第1の板状部材141の面積よりも小さい。このように、構造体100の変形例は、離間された複数の第2の板状部材142が設けられる構成であってもよい。
【0059】
図8(A)~図8(C)に示す変形例においても、補強ユニット140が、コンクリート130から木梁122に伝達される支圧応力を低減するため、梁120における木梁122の支圧破壊を防止することができる。
【0060】
本発明の実施形態として上述した各実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。また、各実施形態を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除、もしくは設計変更を行ったもの、または工程の追加、省略、もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0061】
上述した各実施形態によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、または当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0062】
100:構造体、 110:柱、 112:柱主筋、 114:帯筋、 116:コンクリート、 120:梁、 122:木梁、 124:端部、 125:中間部、 126:梁主筋、 126a:定着プレート、 128:横補強筋、 128a:集中補強筋、 130:コンクリート、 140:補強ユニット、 141:第1の板状部材、 142:第2の板状部材、 143:緩衝部材、 150:床スラブ
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8