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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048595
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】吸収性物品の個包装体
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/15 20060101AFI20240402BHJP
【FI】
A61F13/15 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154598
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】関 郁子
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200DF08
3B200DF09
(57)【要約】
【課題】2個の吸収性物品をかさばらずに携行でき、環境対応でありながら、開封から廃棄までの使い勝手に優れた吸収性物品の個包装体を提供する。
【解決手段】包装シート20が、第1領域21と、第2領域22と、を備え、第1領域21は、第1谷折り線A、第2谷折り線B及び第3谷折り線Cを有し、第2領域22は、吸収性物品の長手方向中央部に第1山折り線Eを有している。また、第2領域22は、両面それぞれに剥離層を有し、それぞれに吸収性物品10と剥離可能に接合されており、第2領域22は、第1領域21との境界で第1領域21側に谷折りして折り畳まれ、折り畳まれた第2領域22は、第1領域21と共に第3谷折り線Cで折り畳まれ、第1谷折り線Aで谷折りされた第1領域21の外表面側と、第3谷折り線Cで折り畳まれた第1領域21の外表面側を内側として折り畳まれている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収性物品と、前記吸収性物品を包む包装シートと、を備える吸収性物品の個包装体であって、
前記包装シートが、長手方向における第1方向の一端を含む第1領域と、前記第1方向の他端を含む第2領域と、を備え、
前記第1領域は、第1方向の一端から順に第1谷折り線、第2谷折り線及び第3谷折り線を有し、
前記第2領域は、両面それぞれに剥離層を有し、
両剥離層は、それぞれに前記吸収性物品の非肌当接面に設けられた粘着部と剥離可能に接合されており、
前記第2領域は、前記吸収性物品の長手方向中央部に第1山折り線を有し、
前記第2領域は、前記第1領域との境界で前記第1領域側に折り畳まれ、
折り畳まれた前記第2領域は、前記第1領域と共に前記第3谷折り線で折り畳まれ、
前記第1谷折り線で谷折りされた前記第1領域の外表面側と、前記第3谷折り線で折り畳まれた前記第1領域の外表面側を内側として折り畳まれていること、
を特徴とする吸収性物品の個包装体。
【請求項2】
さらに、前記第1谷折り線の外表面側に封止部を備えることを特徴とする請求項1に記載の吸収性物品の個包装体。
【請求項3】
さらに、前記第1方向の他端の端部に摘まみ部を備えることを特徴とする請求項1に記載の吸収性物品の個包装体。
【請求項4】
前記第2領域の幅方向の長さが前記第1領域の幅方向の長さよりも短くなるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の吸収性物品の個包装体。
【請求項5】
前記包装シートが、木材パルプ繊維を主成分とする紙基材からなることを特徴とする請求項1に記載の吸収性物品の個包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品の個包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、生理用ナプキン、パンティーライナー、紙オムツ等の吸収性物品は、1個ずつ包装シートで包まれ、包装シートと一体となって三つ折りされ、包装シートの縁部同士をヒートシール等によって封着することにより個包装化した状態で提供されている。
【0003】
消費者が外出中での使用のために吸収性物品を携行する場合、必要最小限の数、すなわち交換用も含めた2個以上の個包装体を持ち運ぶことが多い。例えば、特許文献1には、個々に包装された生理用三つ折りナプキンを連結したロールナプキンが開示されている。しかし、1個ずつ包装された個包装体を2個もしくはそれ以上携行すると、単純に包装シートのゴミの数が増えるだけではなく、かさばって携行性が低下する、という問題点があった。
【0004】
また、包装シートは、ポリオレフィン系の熱可塑性合成樹脂繊維から作られた不織布と、紙等の基材に剥離剤を塗布したものであって吸収性物品の粘着層を被覆する剥離紙と、で形成されることが多い。そのため、持続可能な開発目標(SDGs)への貢献が求められている近年において、複数の素材を用いている包装シートは、リサイクルし難く、また、合成樹脂繊維(不織布)の焼却に燃焼エネルギーが必要であるため、改善が強く望まれていた。
【0005】
これらの環境問題に対して、例えば、特許文献2には、剥離層、熱可塑性樹脂層、不織布層が順に積層された剥離部材(包装シート)を有する体液吸収用当て材が開示されている。この剥離部材は、不織布と剥離紙の機能が一体化したものではあるが、合成樹脂繊維を用いることは変わらなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3113756号
【特許文献2】特開2006-81927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、少なくとも2個の吸収性物品をかさばらずに携行でき、環境対応でありながら、開封から廃棄までの使い勝手に優れた吸収性物品の個包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究した結果、包装シートの表裏両面に剥離領域を設け、表裏それぞれの面に吸収性物品を配置し、かつ、これまでなかった包装シートの形状に形成することにより、複数包装形態であっても1個ずつの使用が可能であり、包装シートの使用量が少なく、かさばらない吸収性物品の個包装体を得られることを見出し、本発明に至った。
【0009】
すなわち、本発明は、下記の吸収性物品の個包装体を提供するものである。
【0010】
(1)本発明の第1の態様は、
吸収性物品と、前記吸収性物品を包む包装シートと、を備える吸収性物品の個包装体であって、
前記包装シートが、長手方向における第1方向の一端を含む第1領域と、前記第1方向の他端を含む第2領域と、を備え、
前記第1領域は、前記第1方向の一端から順に第1谷折り線、第2谷折り線及び第3谷折り線を有し、
前記第2領域は、両面それぞれに剥離層を有し、
両剥離層は、それぞれに前記吸収性物品の非肌当接面に設けられた粘着部と剥離可能に接合されており、
前記第2領域は、前記吸収性物品の長手方向中央部に第1山折り線を有し、
前記第2領域は、前記第1領域との境界で前記第1領域側に折り畳まれ、
折り畳まれた前記第2領域は、前記第1領域と共に前記第3谷折り線で折り畳まれ
前記第1谷折り線で谷折りされた前記第1領域の外表面側と、前記第3谷折り線で折り畳まれた前記第1領域の外表面側を内側として折り畳まれていること、を特徴とする、
吸収性物品の個包装体である。
(2)本発明の第2の態様は、
さらに、前記第1谷折り線の外表面側に封止部を備える(1)に記載の吸収性物品の個包装体である。
(3)本発明の第3の態様は、
さらに、前記第1方向の他端の端部に摘まみ部を備える(1)に記載の吸収性物品の個包装体である。
(4)本発明の第4の態様は、
前記第2領域の幅方向の長さが前記第1領域の幅方向の長さよりも短くなるように構成されている(1)に記載の吸収性物品の個包装体である。
(5)本発明の第5の態様は、
前記包装シートが、木材パルプ繊維を主成分とする紙基材からなる(1)に記載の吸収性物品の個包装体である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、少なくとも2個の吸収性物品をかさばらずに携行でき、環境対応でありながら、開封から廃棄までの使い勝手に優れた吸収性物品の個包装体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態による吸収性物品の個包装体の折り畳み前の構成を模式的に示す展開図である。
図2】本発明の一実施形態による吸収性物品の個包装体の平面図である。
図3図2に示すX-X線に沿った本実施形態に係る吸収性物品の個包装体の断面図である。
図4図2の吸収性物品の個包装体の開封途中を示す平面図である。
図5図2の吸収性物品の個包装体の開封途中を示す平面図である。
図6図2の吸収性物品の個包装体の吸収性物品を取り出す途中を示す平面図である。
図7図2の吸収性物品の個包装体の封緘途中を示す平面図である。
図8図2の吸収性物品の個包装体の封緘途中を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の吸収性物品の個包装体を実施するための形態(以下、実施形態)について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図面において、特に説明がない限り、同一の又は対応する構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。これらは例示の目的で掲げたもので、これらにより本発明を限定するものではない。また、長手方向とは、吸収性物品が着用されたときに着用者の前後にわたる方向であり、図中、符号Xで示す方向である。また、幅方向とは、当該長手方向に対して横又は直交する方向であり、図中、符号Yで示す方向である。さらに、肌当接面とは、吸収性物品の各部材の表裏両面のうち、着用時に着用者の肌側に配される面であり、非肌当接面とは、吸収性物品の各部材の表裏両面のうち、着用時に着用者の肌側とは反対側(下着側)に向けられる面である。
【0014】
<吸収性物品の個包装体>
本発明の吸収性物品の個包装体1の一実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る吸収性物品の個包装体の折り畳み前の構成を模式的に示す展開図である。また、図2は、本発明の一実施形態による吸収性物品の個包装体の平面図である。図3は、図2に示すX-X線に沿った本実施形態に係る吸収性物品の個包装体の断面図である。吸収性物品の個包装体1は、吸収性物品10(11)と、吸収性物品10(11)を包む包装シート20と、を備えている。また、包装シート20は、長手方向における第1方向の一端F1を含む第1領域21と、第1方向の他端F2を含む第2領域22と、を備えている。第1領域21には、第1方向の一端F1から順に第1谷折り線A、第2谷折り線B及び第3谷折り線Cを有しており、第2領域22には、吸収性物品10(11)の長手方向中央部に第1山折り線Eを有している。第2領域22は、両面それぞれに剥離層を有し、両剥離層は、それぞれに吸収性物品10(11)の非肌当接面に設けられた粘着部101(111)と剥離可能に接合されている。第1谷折り線Aの外表面側に封止部30を備えることや、第1方向の他端F2に摘まみ部40を備えることが好ましい。さらに、第1領域21と第2領域22との境界は、第4谷折り線Dとしても機能する。
【0015】
<吸収性物品>
吸収性物品10(11)としては、一般的に知られているものであれば特に制限はなく、例えば、吸水ナプキン、軽失禁パッド、尿取りパッド等の失禁製品、生理用ナプキン等の生理用品、パンティーライナー、使い捨て紙おむつ等が挙げられる。これらの吸収性物品10(11)は、一般に、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、トップシート及びバックシートの間に配置された吸収体と、で構成されている。
【0016】
吸収性物品10(11)の形状は、図1に示すような略砂時計型に限定されず、略矩形型や、略扇型等、着用者の着用部位にフィットする形状であれば形状は問わない。また、吸収性物品10(11)は、用途やタイプに応じて、立体ギャザー、レッグギャザー、ウエストギャザー、サイドフラップ等を適宜設けることができる。
【0017】
吸収性物品10(11)の長手方向の寸法及び幅方向の寸法はいずれも特に限定されないが、例えば、長手方向の範囲として100mm以上800mm以下及び幅方向の範囲50mm以上500mm以下のである。吸収性物品10の寸法を上記の範囲に調整することで、種々の用途のものが容易に得られる。吸収性物品10と吸収性物品11とは、異なるサイズ・用途のものであっても、同種であってもよい。
【0018】
(トップシート)
トップシートとしては液透過性の基材を使用できる。例えば、サーマルボンド不織布、サーマルボンド不織布とスパンボンド不織布との積層体等の不織布、開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム、これらの2種以上を積層した複層シート等が挙げられる。トップシートには、エンボス加工、穿孔加工等の方法、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等の、改質剤の添加等を実施することができる。
【0019】
(吸収体)
吸収体としては、一般に生理用ナプキン、紙オムツ、尿取りパッド等の吸収性物品に使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、吸収性繊維、高吸水性樹脂(Super Absorbent Polymer;以下「SAP」ともいう。)、親水性シートといった材料から形成される。
【0020】
吸収性繊維は、例えば、フラッフパルプ、コットン、レーヨン、アセテート、ティッシュ、吸収紙、親水性不織布等を挙げることができる。これらの中でも、吸収性の観点から、フラッフパルプを使用することが好ましい。フラッフパルプとしては、木材パルプ(例えば、サウザンパインやダグラスファー等の針葉樹晒クラフトパルプ(N-BKP))、合成繊維、樹脂繊維、非木材パルプ等を綿状に解繊したものを挙げることができる。吸収体12に、基材としての吸収性繊維にフラッフパルプを用いた場合、吸収性繊維の坪量は、特に限定されないが、50g/m以上500g/m以下であることが好ましく、100g/m以上300g/m以下であることがより好ましい。これにより、吸収体により多くの体液(尿、血液や軟便中の水分等の体内から体外に排出された液体)を吸収させることができる。
【0021】
吸収体が含むSAPとしては、体液を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に制限はない。例えば、ポリアクリル酸ナトリウム系、ポリアスパラギン酸塩系、(デンプン-アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸-ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン-無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等の材料から形成されたものを使用することができる。これらの中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸ナトリウム系が好ましい。また、SAPの坪量は、特に限定されないが、50g/m以上500g/m以下であることが好ましく、100g/m以上300g/m以下であることがより好ましい。
【0022】
吸収体において、吸収性繊維及びSAPの形態は、吸収性繊維中にSAP粒子を混合して形成したものでもよく、吸収性繊維間にSAP粒子を固着したシートでもよい。また、SAP粒子の漏洩防止や吸収体の形状の安定化の目的から、吸収体を包むような、キャリアシート(図示せず)を設けてもよい。キャリアシートの基材としては、親水性を有するものであればよく、例えば、ティッシュ、吸収紙、エアレイド不織布、スパンボンド不織布等の親水性不織布を挙げることができる。これらの中でも、スパンボンド不織布が好ましい。また、キャリアシートを複数備える場合は、複数のキャリアシートの基材は同一のものであっても異なるものであってもよい。
【0023】
(バックシート)
バックシートは、吸収性物品10(11)の外部に体液が漏れないように液不透過性を有し、遮水性を有する基材が用いられるが、ムレ防止のために透湿性を有してもよい。バックシートとしては、液不透過性の基材を使用できる。例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布積層体、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布積層体等の不織布、ポリエステルフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンとポリプロピレンとの複合フィルム等の樹脂フィルム等が挙げられる。バックシートには、液不透過性を向上させるための公知の方法を施すことができる。また、バックシートに透湿性を備えるために、例えば、基材の樹脂フィルムにフィラーを配合したり、バックシートにエンボス加工を施したりすればよい。なお、フィラーとしては、例えば、炭酸カルシウム等を挙げることができ、その配合方法は、公知の方法を制限なく行うことができる。
【0024】
バックシートの坪量は、強度及び加工性の点から、15g/m以上60g/m以下であることが好ましく、25g/m以上45g/m以下であることがより好ましい。
【0025】
図1に示すように、バックシート側の非肌当接面には、粘着部101(111)を有している。吸収性物品10(11)が未使用の状態においては、この粘着部101(111)を介して、バックシートに包装シート20が固定され、包装シート20が有する剥離層により、保護されている。また、吸収性物品10(11)の使用時には、粘着部101(111)を介して、吸収性物品10(11)が下着等に固定される。
【0026】
粘着部101(111)の形状については、特に限定はないが、バックシートの長手方向又は幅方向に延在することが好ましく、長手方向又は幅方向に延在するように、複数列形成することがより好ましく、バックシートの長手方向に等間隔に3列形成することが更に好ましい。
【0027】
粘着部101(111)を形成する粘着剤としては、特に限定はない。例えば、ポリアクリル酸エステル、酢酸ビニル-エチレン共重合体、酢酸ビニル-アクリル共重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、スチレン-アクリル系共重合体、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ブタジエン-スチレン共重合体等のホットメルト系粘着剤が挙げられる。これらを、1種のみを使用しても、複数をブレンドして使用してもよい。上記の粘着剤を、例えば、バックシートの非肌当接面に塗布することで、粘着部101(111)を形成することができる。
【0028】
<包装シート>
包装シート20は、バックシートに有する粘着部101(111)に対向する対向面に剥離層を有する。包装シート20に剥離紙を形成せず、包装シート20に剥離性能を持たせることにより、個包装にした際にゴミの減量ができる。剥離層は、バックシートに有する粘着部101(111)と接触しても、容易に剥がれる機能を有する。剥離層の形状については、特に限定はないが、粘着剤層と同形状とすることが好ましい。剥離層形成するための剥離処理は特に制限されず、例えば、熱硬化性あるいはUV(紫外線)硬化性のシリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、イソシアネート系樹脂等の剥離剤を、粘着部101(111)に対向する対向面に塗布することで、剥離層を形成することができる。また、剥離剤の塗工量も同様に適宜設定することができる。
【0029】
包装シート20は、木材パルプ繊維を主成分とする紙基材からなることが好ましい。木材パルプ繊維を主成分とする紙基材を利用することで、石油由来の素材ではなく、再生可能原料を利用することができ、環境にやさしい包装シート20となる。また、木材パルプ繊維を主成分とする紙基材は、合成樹脂繊維製のものと比較して、風合いに優れている。木材パルプ繊維としては、例えば、針葉樹クラフトパルプ、広葉樹クラフトパルプ、サルファイトパルプ等の化学パルプ、サーモメカニカルパルプ、ストーングラインドパルプ、リファイナーグラインドパルプ等の機械パルプ、及び、新聞紙、コート紙、上質紙等から得られる再生パルプ等の繊維が挙げられる。これらの木材パルプ繊維を1種または2種以上組み合わせて用いることができる。また、本発明の目的を損なわない範囲で、ケナフ、麻、竹等の非木材パルプ、ガラス繊維、ポリエチレン繊維等のセルロース繊維以外の繊維材料を1種または2種以上配合することができる。
【0030】
紙基材の具体例としては、例えば、剥離紙用原紙、上質紙、クラフト紙、クルパック紙、フォ-ム紙、半晒紙、グラシン紙及びクレ-プ紙等が挙げられる。これらの中でも、紙基材の風合いを維持しやすい点から、パルプ繊維を漂白精製処理した晒パルプ繊維である針葉樹晒クラフトパルプ繊維(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ繊維(LBKP)、及びこれらの混合物を原料としたクレープ紙が好ましく、針葉樹晒クラフトパルプ繊維及び広葉樹晒クラフトパルプ繊維(LBKP)を併用するクレープ紙がより好ましく、広葉樹クラフトパルプ及び針葉樹クラフトパルプの固形分重量比が90/10以上50/50以下であるクレープ紙がさらに好ましい。
【0031】
包装シート20の紙基材には、シートとして形成された際、外面側に印刷が施されていてもよい。また、紙基材は、防水性の確保のために、オーバーコートが施されたオーバーコート紙であってもよい。
【0032】
紙基紙の製造(抄紙)方法は特に限定されるものではなく、公知の長網フォーマー、オントップハイブリッドフォーマー、ギャップフォーマーマシン等を用いて、酸性抄紙、中性抄紙、アルカリ抄紙方式で抄紙して基紙を製造することができる。また、紙基材は1層であってもよく、2層以上の多層で構成されていてもよい。
【0033】
包装シート20の坪量は、包装シートに所望される各種品質や取り扱い性等により適宜選択可能であるが、強度及び加工性の点から、20g/m以上40g/m以下であり、21g/m以上30g/m以下であることが好ましい。また、包装シート20の厚さは、風合い、手肉感の点から、65μm以上90μm以下が好ましく、70μm以上80μm以下がより好ましい。
【0034】
包装シート20のティッシュソフトネス測定装置TSA(emtec社製;Tissue Softness Analyzer)上のソフトウェアにて自動的に取得した、6500Hzを含むスペクトルの極大ピークの強度(TS7)は、20dBVrms以上45dBVrms以下であり、25dBVrms以上40dBVrms以下であることが好ましく、32dBVrms以上38dBVrms以下であることがより好ましい。このTS7は、包装シート20の柔らかさの指標であり、TS7が上記の範囲内のものとなることにより、包装シート20の風合い、手触りの点で優れる。
【0035】
さらに、包装シート20について、TSA上のソフトウェアにて自動的に取得した、低周波数側からの最初のスペクトルの極大ピークの強度(TS750)は、15dBVrms以上40dBVrms以下であり、20dBVrms以上35dBVrms以下であることが好ましく、17dBVrms以上30dBVrms以下であることがより好ましい。このTS750は、包装シート20の滑らかさの指標であり、TS750が上記の範囲内のものとなることにより、包装シート20の風合い、滑らかさの点で優れる。
【0036】
加えて、包装シート20について、ティッシュソフトネス測定装置TSAにより、試料台に設置した包装シートのサンプルに対し、ブレード付きロータを回転させずに100mNと600mNの押し込み圧力でそれぞれ上から押し込んだとき、押し込み圧力100mNと600mNの間での上記サンプルの上下方向の変形変位量で表される、剛性Dの測定値が1.0mm/N以上2.5mm/N以下であり、1.5mm/N以上2.3mm/N以下であることが好ましく、1.7mm/N以上2.0mm/N以下であることがより好ましい。Dが上記の範囲内のものとなることにより、包装シート20の風合い、剛性の点で優れる。
【0037】
ティッシュソフトネス測定装置TSAを使用したTS7、TS750及びDの測定方法や、これに用いられる測定装置については、例えば、特開2013-236904号公報に詳細に記載されている。ティッシュソフトネス測定装置TSAを使用した各種測定方法については、上記の特許文献を参照されたい。なお、TS750、TS7、及び剛性Dの測定面は、包装シート20の外側(吸収性物品10(11)が接している側の反対面)とする。
【0038】
<吸収性物品の個包装体の包装構造>
図1から図8を参照して、本発明の第1の実施形態に係る吸収性物品の個包装体1の包装構造について説明する。図4は、図2の吸収性物品の個包装体の開封途中を示す平面図である。図6は、図2の吸収性物品の個包装体の開封途中を示す平面図である。図7及び図8は、図2の吸収性物品の個包装体において、吸収性物品を取り出す途中を示す平面図であり、図4図6から続く工程となる。
【0039】
図1に示すように、本実施形態に係る吸収性物品の個包装体1は、長手方向X及び幅方向Yを有している。包装シート20は、長手方向Xにおける第1方向の一端F1を含む第1領域21と、第1方向の他端F2を含む第2領域22を備える。また、第2領域22の両面には、吸収性物品10(11)を載置する構成となる。第1領域21は、第1方向の一端F1から順に第1谷折り線A、第2谷折り線B及び第3谷折り線Cを有する。また、第1領域21と第2領域22との境界は、第4谷折り線Dとなる。さらに、第2領域22には、吸収性物品の長手方向中央部に第1山折り線Eを有する。
【0040】
図2及び図3に示すように吸収性物品10及び包装シート20は、包装シート20の第2谷折り線B及び第3谷折り線C並びに第1山折り線Eを両端として、幅方向Yに沿って折り畳まれている。
【0041】
本実施形態に係る吸収性物品の個包装体1において、吸収性物品10(11)の折り回数が少なくとも長手方向Xに1回折り畳む、2つ折りにて吸収性物品10(11)を収納する。2つ折りとすることにより、吸収性物品10を装着する工程が、包装シートを開封する工程と吸収性物品10(11)を取り出す工程の2工程となり、装着するまでの手間が軽減できる。また、開封時に音が出る回数が最低限になる。
【0042】
なお、第1方向の端部F1から第1折り線Aまでの長手方向Xの長さL1は、第1谷折り線Aと第2谷折り線Bとによって区画されている領域の長手方向Xの長さL2とほぼ等しくなるように構成されていることが好ましい。また、第3谷折り線Cと第4谷折り線Dとによって区画されている長手方向Xの長さL4は、第4谷折り線Dと第1山折り線Eとによって区画されている領域の長手方向Xの長さとほぼ等しくなるように構成されていることが好ましい。さらに、第2谷折り線Bと第3谷折り線Cとによって区画されている長手方向Xの長さL3は、第3谷折り線Cと第4谷折り線Dとによって区画されている長手方向Xの長さL4よりも長く構成されていることが好ましい。
【0043】
図1から図3に示すように、本実施形態に係る吸収性物品の個包装体1では、第1谷折り線Aの外表面側に封止部30を備えることが好ましい。封止部30は、再接着が可能なものであり、例えば、吸収性物品10を取り出した後に、再度、包装シート20を封止することができる。封止部30の形状に特に限定はなく、半円状、長方形、台形等、適宜設定することができる。封止部30は、包装シート20とは別途の紙基材から形成することで、特別な切断型がなくても形成することができる。一方、包装シート20の原反を包装シート20の形状に切断する際に、封止部30も含めた形状で切断することで、形成することもできる。
【0044】
上述のとおり、第2領域22の両剥離層には、それぞれに吸収性物品10(11)の粘着部101(111)と剥離可能に接合されている。また、吸収性物品10(11)を接合した第2領域22は、第1領域21との境界で、第4谷折り線D並びに第1山折り線Eで第1領域側21に折り畳まれている。また、折り畳まれた第2領域は、第1領域21と共に第3谷折り線Cで折り畳まれている。さらに、第1谷折り線Aで谷折りされた第1領域21の外表面側と、第3谷折り線Cで折り畳まれた第1領域21の外表面側を内側として折り畳まれている。このような構成とすることにより、吸収性物品2個を1組とした個包装体になり、かさばらず、かつ、外出等の携行に際して不意な不足を感じることなく、消費者により安心感を与えられる。
【0045】
次に、本実施形態に係る吸収性物品の個包装体1を開封し、吸収性物品10を取り出してから、再度封止するまでを説明する。
【0046】
まず、図4に示すように、第1領域21の端部や封止部30等を引っ張って開封し、第1領域21の第1方向の一端F1から第2谷折り線Bの領域までを展開する(図4)。次に、第1方向の他端F2の端部を掴み、展開した第1方向の一端F1から第2谷折り線Bの領域の方向に第2領域22を展開する(図5)。第1領域21の内表面に第2領域22が展開され、第1領域21が第2領域22の下敷きになることで、第2領域22の裏側にある吸収性物品11は、清潔な状態で保護される(図6)。
【0047】
ここで、第2領域22を第1領域21側に展開しやすいように、さらに、第1方向の他端F2の端部に摘まみ部40を備えることが好ましい。摘まみ部40の形状は、特に限定はなく、半円状、長方形、台形等、適宜設定することができる。摘まみ部40は、包装シート20とは別途の紙基材から形成することで、特別な切断型がなくても形成することができる。一方、包装シート20の原反を包装シート20の形状に切断する際に、摘まみ部40も含めた形状で切断することで、形成することもできる。開封前の摘まみ部40は、例えば、図4に示すように、折り畳まれた状態で配置されることにより、大型に形成し易く、摘まみやすくなる。
【0048】
吸収性物品10を取り出した後、第4谷折り線Dで折り畳み、第3谷折り線Cで第2領域22を2つ折りし、第1谷折り線Aで折り畳み、第2谷折り線Bで折り畳む(図7及び図8)。そして、封止部30で封止し、展開した時とは逆の手順を取ることにより、吸収性物品11を収納した吸収性物品の個包装体1として、再度携行することができる。
【0049】
ゴミ等の侵入を防ぎ、吸収性物品10(11)を衛生的に保管するために、吸収性物品の個包装体1は、幅方向Yの両端縁部にシール部が形成されていることが好ましい。シール部により、吸収性物品の個包装体1の幅方向Yの両縁部が閉じられる。また、このシール部を形成するために、第2領域22の幅方向の長さW2が第1領域21の幅方向の長さW1よりも短くなるように構成されていることが好ましい。第1領域21の幅方向側縁部に形成するシール部は、ヒートシール加工による融着や、接着剤による接着で形成することもできるが、中でも、開封し易さの点から、エッジエンボスを付与することにより形成することが好ましい。エッジエンボスとは、連続シートより幅狭の金属製ロールとゴムロールとで構成される一対のエッジエンボスロールにより、包装シート20の第1領域21の幅方向側縁部に線状のエッジエンボスを付与して、積層された包装シート20同士を一体化させる技術である。エッジエンボスのエンボスパターンは、通常使用されているものであれば、適宜使用できる。
【0050】
吸収性物品の個包装体1は、例えば、吸収性物品10(11)と、吸収性物品10(11)よりも長手方向X及び幅方向Yの両方に大きい包装シート20とを、吸収性物品10(11)のバックシートの衣類側面と包装シートの表面とが接触するように積層する第1工程と、第1工程で得られた積層体において、トップシートの肌側面が内側になるように内2つ折りする第2工程と、好ましくは、シール部の形成により接合する第3工程と、を含む製造方法により作製することができる。
【0051】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態や実施例に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0052】
1 吸収性物品の個包装体
10、11 吸収性物品
101、111 粘着層
20 包装シート
21 第1領域
22 第2領域
30 封止部
40 摘まみ部
A 第1谷折り線
B 第2谷折り線
C 第3谷折り線
D 第4谷折り線
E 第1山折り線
F1 第1方向の一端
F2 第1方向の他端
W1 第1領域の幅方向
W2 第2領域の幅方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8