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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048597
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 12/77 20110101AFI20240402BHJP
   A41D 27/00 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
H01R12/77
A41D27/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154602
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000231073
【氏名又は名称】日本航空電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(72)【発明者】
【氏名】松尾 誠也
【テーマコード(参考)】
3B035
5E223
【Fターム(参考)】
3B035AB06
5E223AA30
5E223AB59
5E223AC21
5E223AC50
5E223BA01
5E223BA08
5E223BB12
5E223CB22
5E223CB26
5E223CB31
5E223CB38
5E223CB39
5E223CB46
5E223CB47
5E223CD02
5E223CD06
5E223CD13
5E223DB08
5E223DB11
5E223EA03
5E223EA33
(57)【要約】
【課題】導体が接続対象物の表面および裏面のいずれに露出していても、コンタクトを接続対象物の導体に電気的に接続することができるコネクタを提供する。
【解決手段】インナーコンタクト18は、プラグコンタクト13の凹部13C内に保持されてプラグコンタクト13に電気的に接続される保持部18Aと、プラグコンタクト13のフランジ13Bの裏面に対向する平板部18Bと、平板部の表面から突出する複数の表面側突起18Dと、複数の表面側突起とは異なる位置における平板部の裏面から突出する複数の裏面側突起18Eとを有し、シート状導電部材15の一部が、嵌合軸に沿った方向においてフランジ13Bの裏面とインナーコンタクト18の複数の表面側突起18Dとの間に挟まれ、フランジ13Bの裏面がシート状導電部材15の表面に接触し、複数の表面側突起18Dがシート状導電部材15の裏面に接触する。
【選択図】図17
【特許請求の範囲】
【請求項1】
嵌合軸に沿って延び且つ内側に凹部が形成された筒状部と、前記筒状部の端部から前記嵌合軸に直交する方向に延びるフランジとを有する導電性のプラグコンタクトと、
前記直交する方向に延びる支持面を有するボトムインシュレータと、
前記支持面上に配置され且つ一部が前記凹部内に挿入される導電性のインナーコンタクトと
を備え、
前記インナーコンタクトは、前記凹部内に保持され且つ前記凹部の内面に接触して前記プラグコンタクトに電気的に接続される保持部と、前記保持部に連結され且つ前記直交する方向に延びて前記フランジの裏面に対向する弾性変形可能な平板部と、それぞれ前記平板部の表面から前記フランジの裏面に向かって突出する複数の表面側突起と、前記複数の表面側突起とは異なる位置における前記平板部の裏面から前記支持面に向かって突出する複数の裏面側突起とを有し、
少なくとも一方の面に導体が露出しているシート状の接続対象物の一部が、前記嵌合軸に沿った方向において前記プラグコンタクトの前記フランジの裏面と前記インナーコンタクトの前記複数の表面側突起との間に挟まれ、前記フランジの裏面が前記接続対象物の表面に接触し、前記複数の表面側突起が前記接続対象物の裏面に接触することにより、前記導体が前記接続対象物の表面に露出する場合は、前記プラグコンタクトが直接前記導体に電気的に接続され、前記導体が前記接続対象物の裏面に露出する場合は、前記プラグコンタクトが前記インナーコンタクトを介して前記導体に電気的に接続されるコネクタ。
【請求項2】
前記複数の表面側突起が前記接続対象物の裏面に接触し且つ前記複数の裏面側突起が前記支持面に接触することにより、前記平板部は、前記複数の表面側突起の先端と前記複数の裏面側突起の先端との間の前記嵌合軸に沿った間隔が狭まるように弾性変形し、前記複数の表面側突起が前記接続対象物の裏面に弾性的に接触する請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記平板部は、前記嵌合軸の回りを湾曲しながら延び、
前記複数の表面側突起と前記複数の裏面側突起は、前記平板部が延びる方向に沿って交互に配置されている請求項1または2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記保持部は、前記直交する方向に互いに離間してそれぞれ前記凹部の内面に接触する一対の接点部を有する請求項1または2に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記保持部は、前記嵌合軸を含む平面に沿って延びる平板形状を有する請求項4に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記ボトムインシュレータは、前記インナーコンタクトを仮保持するための突起を有する請求項5に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記保持部は、前記支持面に向かって延びる切り欠きを有し、
前記突起は、前記保持部に沿って延びる背もたれ面と、前記背もたれ面から突出し且つ前記切り欠きに嵌め込まれる凸部とを有する請求項6に記載のコネクタ。
【請求項8】
前記プラグコンタクトの前記筒状部が貫通し且つ前記フランジよりも小さいコンタクト用貫通孔が形成されたトップインシュレータを備え、
前記コンタクト用貫通孔に前記プラグコンタクトの前記筒状部を貫通させると共に前記プラグコンタクトの前記フランジと前記接続対象物と前記インナーコンタクトの前記平板部を前記トップインシュレータと前記ボトムインシュレータとの間に挟むように前記トップインシュレータが前記ボトムインシュレータに固定される請求項1または2に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コネクタに係り、特に、少なくとも一方の面に導体が露出しているシート状の接続対象物に接続されるコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、着用するだけで心拍数、体温等のユーザの生体情報を取得することができる、いわゆるスマート衣料が注目を浴びている。このスマート衣料は、計測箇所に配置された電極を備え、電極に計測機器としてのウエアラブルデバイスを電気的に接続することで、生体情報をウエアラブルデバイスに伝送することが可能となる。
電極とウエアラブルデバイスとの接続は、例えば、電極から引き出された導体に接続されるコネクタを用いることにより行うことができる。
【0003】
この種のコネクタとして、例えば、特許文献1に、図21に示されるようなコネクタが開示されている。コネクタは、フレキシブル基板1を間に挟んでフレキシブル基板1の両側に配置されたハウジング2およびベース部材3を有し、コンタクト4の筒状部4Aがハウジング2のコンタクト用貫通孔2Aに通され、コンタクト4のフランジ4Bがハウジング2とフレキシブル基板1の表面に露出する導体1Aとの間に挟まれる。
【0004】
この状態で、ベース部材3をハウジング2に向けて押し込むことで、図22に示されるように、ベース部材3の突起3Aが、フレキシブル基板1を間に挟んでコンタクト4の突起収容部4Cに挿入され、突起収容部4Cの内面が導体1Aに所定の接触力で接触し、これによりコンタクト4が導体1Aに電気的に接続される。
また、図21に示されるように、ベース部材3に突出形成されたハウジング固定用ポスト3Bをハウジング2のポスト収容部2Bに圧入することで、ハウジング2とベース部材3が、互いに固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-129244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されたコネクタにウエアラブルデバイスを嵌合することにより、導体からなる電極にウエアラブルデバイスを接続することができる。
しかしながら、導体1Aがフレキシブル基板1の裏面上に露出している場合には、特許文献1のコネクタでは、導体1Aをコンタクト4に電気的に接続することができないという問題がある。
【0007】
この発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、導体が接続対象物の表面および裏面のいずれに露出していても、コンタクトを接続対象物の導体に電気的に接続することができるコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係るコネクタは、
嵌合軸に沿って延び且つ内側に凹部が形成された筒状部と、筒状部の端部から嵌合軸に直交する方向に延びるフランジとを有する導電性のプラグコンタクトと、
直交する方向に延びる支持面を有するボトムインシュレータと、
支持面上に配置され且つ一部が凹部内に挿入される導電性のインナーコンタクトと
を備え、
インナーコンタクトは、凹部内に保持され且つ凹部の内面に接触してプラグコンタクトに電気的に接続される保持部と、保持部に連結され且つ直交する方向に延びてフランジの裏面に対向する弾性変形可能な平板部と、それぞれ平板部の表面からフランジの裏面に向かって突出する複数の表面側突起と、複数の表面側突起とは異なる位置における平板部の裏面から支持面に向かって突出する複数の裏面側突起とを有し、
少なくとも一方の面に導体が露出しているシート状の接続対象物の一部が、嵌合軸に沿った方向においてプラグコンタクトのフランジの裏面とインナーコンタクトの複数の表面側突起との間に挟まれ、フランジの裏面が接続対象物の表面に接触し、複数の表面側突起が接続対象物の裏面に接触することにより、導体が接続対象物の表面に露出する場合は、プラグコンタクトが直接導体に電気的に接続され、導体が接続対象物の裏面に露出する場合は、プラグコンタクトがインナーコンタクトを介して導体に電気的に接続されるものである。
【0009】
複数の表面側突起が接続対象物の裏面に接触し且つ複数の裏面側突起が支持面に接触することにより、平板部は、複数の表面側突起の先端と複数の裏面側突起の先端との間の嵌合軸に沿った間隔が狭まるように弾性変形し、複数の表面側突起が接続対象物の裏面に弾性的に接触することが好ましい。
【0010】
平板部は、嵌合軸の回りを湾曲しながら延び、
複数の表面側突起と複数の裏面側突起は、平板部が延びる方向に沿って交互に配置されていることが好ましい。
【0011】
保持部は、直交する方向に互いに離間してそれぞれ凹部の内面に接触する一対の接点部を有することが好ましい。
保持部は、嵌合軸を含む平面に沿って延びる平板形状を有することができる。
ボトムインシュレータは、インナーコンタクトを仮保持するための突起を有することが好ましい。
この場合、保持部は、支持面に向かって延びる切り欠きを有し、
突起は、保持部に沿って延びる背もたれ面と、背もたれ面から突出し且つ切り欠きに嵌め込まれる凸部とを有することが好ましい。
【0012】
プラグコンタクトの筒状部が貫通し且つフランジよりも小さいコンタクト用貫通孔が形成されたトップインシュレータを備え、
コンタクト用貫通孔にプラグコンタクトの筒状部を貫通させると共にプラグコンタクトのフランジと接続対象物とインナーコンタクトの平板部をトップインシュレータとボトムインシュレータとの間に挟むようにトップインシュレータがボトムインシュレータに固定されることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、インナーコンタクトは、プラグコンタクトの凹部内に保持され且つ凹部の内面に接触してプラグコンタクトに電気的に接続される保持部と、嵌合軸に直交する方向に延びてフランジの裏面に対向する弾性変形可能な平板部と、それぞれ平板部の表面からフランジの裏面に向かって突出する複数の表面側突起と、複数の表面側突起とは異なる位置における平板部の裏面から支持面に向かって突出する複数の裏面側突起とを有し、接続対象物の一部が、嵌合軸に沿った方向においてプラグコンタクトのフランジの裏面とインナーコンタクトの複数の表面側突起との間に挟まれ、フランジの裏面が接続対象物の表面に接触し、複数の表面側突起が接続対象物の裏面に接触することにより、導体が接続対象物の表面に露出する場合は、プラグコンタクトが直接導体に電気的に接続され、導体が接続対象物の裏面に露出する場合は、プラグコンタクトがインナーコンタクトを介して導体に電気的に接続されるので、導体が接続対象物の表面および裏面のいずれに露出していても、コンタクトを接続対象物の導体に電気的に接続することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施の形態に係るコネクタを斜め上方から見た斜視図である。
図2】実施の形態に係るコネクタの分解斜視図である。
図3】実施の形態のコネクタに用いられるトップインシュレータを示す斜視図である。
図4】実施の形態のコネクタに用いられるプラグコンタクトを示す斜視図である。
図5】実施の形態のコネクタに用いられるプラグコンタクトを示す断面図である。
図6】実施の形態のコネクタに用いられるボトムインシュレータを示す斜視図である。
図7】実施の形態のコネクタに用いられるボトムインシュレータの突起を示す斜視図である。
図8】実施の形態のコネクタに用いられるインナーコンタクトを示す斜視図である。
図9】実施の形態のコネクタに用いられるインナーコンタクトを示す平面図である。
図10】実施の形態のコネクタに用いられるインナーコンタクトを示す正面図である。
図11】実施の形態のコネクタに用いられるインナーコンタクトを示す側面図である。
図12】実施の形態のコネクタに接続される接続対象物を斜め上方から見た斜視図である。
図13】実施の形態のコネクタに接続される接続対象物を斜め下方から見た斜視図である。
図14】実施の形態のコネクタに用いられる補強シートを示す斜視図である。
図15】ボトムインシュレータの突起に仮保持されたインナーコンタクトを示す斜視図である。
図16】実施の形態のコネクタを斜め下方から見た斜視図である。
図17】接続対象物に接続された実施の形態のコネクタにおけるインナーコンタクトが挿入されたプラグコンタクト内の状態を示す部分正面断面図である。
図18】接続対象物に接続された実施の形態のコネクタにおけるインナーコンタクトが挿入されたプラグコンタクト内の状態を示す部分側面断面図である。
図19】平板部が弾性変形した状態のインナーコンタクトを示す正面図である。
図20】平板部が弾性変形した状態のインナーコンタクトを示す側面図である。
図21】従来のコネクタの分解斜視図である。
図22】従来のコネクタを示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1に、実施の形態に係るコネクタ11を示す。コネクタ11は、例えば、ウエアラブルデバイスを嵌合するための衣服側コネクタとして使用されるもので、絶縁性材料からなるハウジング12を有している。ハウジング12には、4つのプラグコンタクト13が保持され、さらに、ハウジング12により、補強シート14とシート状導電部材15が互いに重ねられた状態で保持されている。シート状導電部材15は、コネクタ11が接続される接続対象物を構成している。
4つのプラグコンタクト13は、互いに平行な2列に配列された状態で、シート状導電部材15に対して垂直に突出するように配置されている。
【0016】
ここで、便宜上、補強シート14およびシート状導電部材15がXY面に沿って延び、4つのプラグコンタクト13の配列方向をY方向、4つのプラグコンタクト13がそれぞれ突出する方向を+Z方向と呼ぶことにする。Z方向は、コネクタ11が相手側コネクタと嵌合する嵌合方向となる。
【0017】
図2に、コネクタ11の分解斜視図を示す。コネクタ11は、トップインシュレータ16およびボトムインシュレータ17を有しており、これらトップインシュレータ16およびボトムインシュレータ17によりハウジング12が構成されている。
【0018】
トップインシュレータ16に4つのプラグコンタクト13が保持され、また、トップインシュレータ16の-Z方向側の裏面上に補強シート14が配置され、補強シート14の-Z方向側にシート状導電部材15が配置されている。さらに、シート状導電部材15の-Z方向側に4つのインナーコンタクト18が配置され、インナーコンタクト18の-Z方向側にボトムインシュレータ17が配置されている。4つのインナーコンタクト18は、4つのプラグコンタクト13にそれぞれ対応している。
【0019】
図3に示されるように、トップインシュレータ16は、+Z方向に向かって開いている凹部16Aと、凹部16A内に形成された4つのコンタクト用貫通孔16Bを有している。凹部16Aは、図示しない相手側コネクタの一部が収容される相手側コネクタ収容部を構成するものであり、4つのコンタクト用貫通孔16Bは、4つのプラグコンタクト13に対応している。また、トップインシュレータ16の-Z方向を向いた面に、それぞれ-Z方向に突出する複数のボス16Cが形成されている。
【0020】
4つのプラグコンタクト13は、それぞれ、金属等の導電性材料から形成され、トップインシュレータ16の凹部16Aに図示しない相手側コネクタの一部が収容された場合に、相手側コネクタの対応するコンタクトに接続されるものである。
図4に示されるように、プラグコンタクト13は、嵌合軸Cに沿ってZ方向に延びる円筒形状の筒状部13Aと、筒状部13Aの-Z方向端部からXY面に沿って延びるフランジ13Bを有している。
図5に示されるように、筒状部13Aの内部には、-Z方向に向かって開放された凹部13Cが形成されている。
【0021】
なお、嵌合軸Cは、筒状部13Aの中心を通り且つコネクタ11と相手側コネクタとの嵌合方向に延びる軸である。
また、筒状部13Aは、円筒形状を有しているが、内部に凹部13Cを有するものであれば、断面形状は円形に限らず、楕円、多角形等の各種の断面形状を有することもできる。
なお、4つのプラグコンタクト13は、いずれも、電気信号を伝送するための端子として使用することができる。
【0022】
図6に示されるように、ボトムインシュレータ17は、平板部17Aを有し、平板部17Aに、それぞれ+Z方向に向かって開いている4つの凹部17Bが形成されている。4つの凹部17Bは、4つのプラグコンタクト13に対応している。4つの凹部17Bには、それぞれ、凹部17Bの中央部から+Z方向に突出する4つの突起17Cが形成されている。
また、平板部17Aには、トップインシュレータ16の複数のボス16Cに対応する複数の貫通孔17Dが形成されている。
【0023】
図7に示されるように、ボトムインシュレータ17の凹部17Bの底面は、XY面に沿って延び且つ+Z方向を向いた支持面17Eを形成している。
また、突起17Cは、インナーコンタクト18を仮保持するためのもので、YZ面に沿って延び且つ+X方向を向いた背もたれ面17Fと、背もたれ面17FのY方向の中央部で且つ背もたれ面17Fの-Z方向側部分から+X方向に向かって突出する凸部17Gを有している。
【0024】
図8図11に示されるように、インナーコンタクト18は、屈曲された1枚の導電性を有する金属板からなり、保持部18Aと、保持部18Aの-Z方向端部に連結された平板部18Bを有している。コネクタ11が組み立てられた場合に、保持部18Aは、対応するプラグコンタクト13の凹部13C内に挿入され、平板部18Bは、ボトムインシュレータ17の対応する凹部17Bの支持面17E上に配置される。
【0025】
保持部18Aは、嵌合軸Cが含まれるYZ面に沿って延びる平板形状を有しており、保持部18Aの+Y方向端部および-Y方向端部に、互いにY方向に離間する一対の接点部P1が形成されている。
また、保持部18Aには、保持部18Aの+Z方向端部付近から-Z方向に延び且つ-Z方向に向かって開放された切り欠き18Cが形成されている。コネクタ11が組み立てられた場合に、保持部18Aの切り欠き18Cにボトムインシュレータ17の突起17Cの凸部17Gが嵌め込まれる。
【0026】
なお、一対の接点部P1のY方向の間隔は、保持部18Aがプラグコンタクト13の凹部13C内に挿入された場合に一対の接点部P1が接触する部分の凹部13Cの内径よりもわずかに大きく設定されている。
このため、インナーコンタクト18の保持部18Aをプラグコンタクト13の凹部13C内に挿入すると、一対の接点部P1は、それぞれ、嵌合軸Cに向かう方向に弾性変位しつつ、所定の接触圧で凹部13Cの内面に接触する。
【0027】
平板部18Bは、嵌合軸Cの回りを湾曲しながらXY面に沿って延びる帯板状の部材であり、平板部18Bの+Z方向を向いた表面には、それぞれ+Z方向に突出する複数の表面側突起18Dが形成され、一方、平板部18Bの-Z方向を向いた裏面には、それぞれ-Z方向に突出する複数の裏面側突起18Eが形成されている。
【0028】
図9に示されるように、平板部18Bは、保持部18Aを内側に含むように湾曲して延びるU字形または馬蹄形の形状を有し、複数の表面側突起18Dと複数の裏面側突起18Eは、平板部18Bが延びる方向に沿って交互に配置されている。
インナーコンタクト18に外力が作用しない場合には、図10に示されるように、表面側突起18Dの+Z方向端部と裏面側突起18Eの-Z方向端部は、Z方向に間隔D1を隔てているものとする。
【0029】
シート状導電部材15は、それぞれ導体から形成された複数の配線層と、複数の絶縁層とが積層された多層構造を有している。
図12に示されるように、シート状導電部材15の+Z方向を向いた表面上に4つのプラグコンタクト13を配置するための4つのコンタクト配置領域15Aが区画されている。それぞれのコンタクト配置領域15Aの中央部に、シート状導電部材15をZ方向に貫通する円形の開口部15Bが形成されており、開口部15Bの周辺には、開口部15Bを囲むように配線層15Cが+Z方向に向けて露出している。4つのコンタクト配置領域15A以外の領域には、絶縁層15Dが露出している。
【0030】
開口部15Bは、シート状導電部材15をZ方向に貫通しているので、図13に示されるように、シート状導電部材15の-Z方向を向いた裏面にも、4つのコンタクト配置領域15Aに対応する位置に、それそれ、開口部15Bが見えている。
【0031】
シート状導電部材15の-Z方向を向いた裏面においては、4つのコンタクト配置領域15Aに対応する位置に形成された開口部15Bの周辺に、開口部15Bを囲むように配線層15Eが-Z方向に向けて露出しており、それ以外の領域には、絶縁層15Fが露出している。
また、図12および図13に示されるように、シート状導電部材15の周縁部には、トップインシュレータ16の複数のボス16Cに対応する複数の貫通孔15Gが形成されている。
【0032】
図14に示されるように、補強シート14は、コネクタ11が実装される図示しない衣服等の実装対象物を補強するためのもので、絶縁性材料からなり、中央に形成された開口部14Aを有している。さらに、補強シート14の開口部14Aの周縁に沿って,トップインシュレータ16の複数のボス16Cに対応する複数の切り欠き14Bが形成されている。
【0033】
トップインシュレータ16の4つのコンタクト用貫通孔16Bと、4つのプラグコンタクト13と、シート状導電部材15の4つのコンタクト配置領域15Aと、4つのインナーコンタクト18と、ボトムインシュレータ17の4つの凹部17Bは、互いにZ方向に整列する位置に配置されている。
また、トップインシュレータ16の複数のボス16Cと、補強シート14の複数の切り欠き14Bと、シート状導電部材15の複数の貫通孔15Gと、ボトムインシュレータ17の複数の貫通孔17Dは、互いにZ方向に整列する位置に配置されている。
【0034】
コネクタ11を組み立てる際には、まず、図15に示されるように、インナーコンタクト18が、ボトムインシュレータ17の対応する凹部17Bの突起17Cに仮保持される。このとき、インナーコンタクト18の平板部18Bがボトムインシュレータ17の凹部17Bに挿入され、保持部18Aの切り欠き18Cにボトムインシュレータ17の突起17Cの凸部17Gが嵌め込まれ、保持部18Aの-X方向側の面が突起17Cの背もたれ面17Fに接触する状態となる。
なお、インナーコンタクト18の平板部18Bの-Z方向を向いた裏面に形成されている複数の裏面側突起18Eは、ボトムインシュレータ17の凹部17Bの支持面17Eの上に配置される。
【0035】
次に、トップインシュレータ16の複数のボス16Cが補強シート14の複数の切り欠き14Bに挿入される。このとき、トップインシュレータ16の4つのコンタクト用貫通孔16Bは、補強シート14の開口部14A内に位置している。
さらに、トップインシュレータ16の4つのコンタクト用貫通孔16Bにそれぞれ対応するプラグコンタクト13の筒状部13Aが-Z方向から挿入され、シート状導電部材15を間に挟んで、ボトムインシュレータ17がトップインシュレータ16に向けて+Z方向に押し付けられる。
【0036】
このとき、ボトムインシュレータ17の突起17Cに仮保持されているインナーコンタクト18の保持部18Aは、シート状導電部材15の開口部15Bを通して対応するプラグコンタクト13の凹部13C内に挿入され、プラグコンタクト13のフランジ13Bが、シート状導電部材15の対応するコンタクト配置領域15Aの上に位置し、インナーコンタクト18の平板部18Bの+Z方向を向いた表面に形成されている複数の表面側突起18Dとプラグコンタクト13のフランジ13Bの-Z方向側の裏面の間にシート状導電部材15が挟まれる。
【0037】
また、ボトムインシュレータ17をトップインシュレータ16に押し付けることにより、トップインシュレータ16の複数のボス16Cが、補強シート14の複数の切り欠き14B、シート状導電部材15の複数の貫通孔15Gおよびボトムインシュレータ17の複数の貫通孔17Dを順次貫通する。そして、図16に示されるように、ボトムインシュレータ17の-Z方向側に突出する複数のボス16Cの先端を熱変形させることにより、トップインシュレータ16とボトムインシュレータ17が互いに固定され、コネクタ11の組み立てが完了する。
【0038】
図17および図18に示されるように、インナーコンタクト18の保持部18Aが、プラグコンタクト13の凹部13C内に挿入されることで、保持部18Aの+Y方向端部および-Y方向端部に形成されている一対の接点部P1が、それぞれ、プラグコンタクト13の凹部13Cの内面に押し付けられ、インナーコンタクト18がプラグコンタクト13に電気的に接続される。
【0039】
また、ボトムインシュレータ17をトップインシュレータ16に押し付けることにより、インナーコンタクト18の平板部18Bの+Z方向を向いた表面に形成されている複数の表面側突起18Dに、プラグコンタクト13のフランジ13Bおよびシート状導電部材15を介してトップインシュレータ16から-Z方向の押し付け力が作用する。このとき、インナーコンタクト18の平板部18Bの-Z方向を向いた裏面に形成されている複数の裏面側突起18Eは、ボトムインシュレータ17の凹部17Bの支持面17Eの上に配置されているため、複数の表面側突起18Dに作用する-Z方向の押し付け力により、インナーコンタクト18の平板部18Bは、表面側突起18Dの+Z方向端部と裏面側突起18Eの-Z方向端部の間のZ方向に沿った間隔が狭まるように弾性変形することとなる。
【0040】
インナーコンタクト18の平板部18Bにおける複数の表面側突起18Dと複数の裏面側突起18Eは、平板部18Bが延びる方向に沿って交互に配置されているため、図19および図20に示されるように、平板部18Bが、XY面に対して波打つように弾性変形することで、表面側突起18Dの+Z方向端部と裏面側突起18Eの-Z方向端部の間のZ方向に沿った間隔D2は、図10に示される間隔D1よりも狭まったものとなる。
その結果、複数の表面側突起18Dは、シート状導電部材15の裏面に向けて+Z方向に押し付けられ、さらに、シート状導電部材15の表面は、プラグコンタクト13のフランジ13Bの裏面に向けて+Z方向に押し付けられる。
【0041】
ここで、図12および図13に示されるように、シート状導電部材15の表面のコンタクト配置領域15Aには、開口部15Bの周辺に配線層15Cが露出し、シート状導電部材15の裏面には、コンタクト配置領域15Aに対応する位置の開口部15Bの周辺に配線層15Eが露出している。
従って、シート状導電部材15の表面の配線層15Cがプラグコンタクト13のフランジ13Bの裏面に所定の接触圧で接触し、また、シート状導電部材15の裏面の配線層15Eがインナーコンタクト18の複数の表面側突起18Dに所定の接触圧で接触する。
【0042】
従って、シート状導電部材15の表面に露出している配線層15Cは、直接プラグコンタクト13に電気的に接続され、シート状導電部材15の裏面に露出している配線層15Eは、インナーコンタクト18を介してプラグコンタクト13に電気的に接続される。すなわち、配線層15Cおよび15Eの双方が、プラグコンタクト13に接続されることとなる。
【0043】
このように、コネクタ11によれば、インナーコンタクト18を用いることにより、シート状導電部材15の表面側に配置された導体からなる配線層15Cと裏面側に配置された導体からなる配線層15Eの双方を、1つのプラグコンタクト13に電気的に接続することが可能となる。
従って、表面側にのみ導体が露出しているシート状導電部材にコネクタ11を接続すれば、プラグコンタクト13をシート状導電部材の表面側の導体に電気的に接続することができ、また、裏面側にのみ導体が露出しているシート状導電部材にコネクタ11を接続すれば、プラグコンタクト13をシート状導電部材の裏面側の導体に電気的に接続することができる。
【0044】
さらに、この実施の形態におけるシート状導電部材15のように、表面側および裏面側にそれぞれ導体が露出しているシート状導電部材にコネクタ11を接続すれば、プラグコンタクト13をシート状導電部材の表面側の導体と裏面側の導体の双方に電気的に接続することができる。例えば、表面側および裏面側にそれぞれシールド層を構成する導体が露出し、これらのシールド層の間に信号配線層を構成する導体が双方のシールド層から絶縁された状態で積層された多層構造のシート状導電部材を接続対象物とすれば、表面側および裏面側のシールド層に接続されたプラグコンタクト13をグランド電位に接続することで、信号配線層に対するシールド効果が発揮され、電磁波等による外乱の影響を抑制した高精度の信号伝送を行うことが可能となる。
【0045】
なお、インナーコンタクト18の平板部18Bは、図9に示されるように、U字形または馬蹄形の形状を有しているが、これに限るものではなく、プラグコンタクト13のフランジ13Bと同様に、XY面に沿って延びる円環形状とすることもできる。
【0046】
上記の実施の形態では、シート状導電部材15のコンタクト配置領域15Aに配置されたプラグコンタクト13が、シート状導電部材15の表面側に露出している配線層15Cとシート状導電部材15の裏面側に露出している配線層15Eの双方に接続されているが、例えば、シート状導電部材15の裏面側に露出している配線層15Eのみをコンタクト配置領域15Aに配置されたプラグコンタクト13に接続することもできる。
【0047】
上記の実施の形態において用いられるシート状導電部材15は、多層構造を有しているが、これに限るものではなく、少なくとも一方の面に露出する導体を有するものであればよい。
また、上記の実施の形態では、シート状導電部材15の配線層15Cおよび配線層15Eからなる2層の導体が、1つのプラグコンタクト13に接続されるが、これに限るものではなく、3層以上の導体を1つのプラグコンタクト13に接続することもできる。
【0048】
また、上記の実施の形態に係るコネクタ11は、4つのプラグコンタクト13を有しているが、プラグコンタクト13の個数に限定されるものではなく、少なくとも、シート状導電部材15の少なくとも一方の面に露出する導体に電気的に接続される1つのプラグコンタクト13を有していればよい。
上記の実施の形態では、ボトムインシュレータ17とトップインシュレータ16との間に補強シート14が配置されているが、コネクタ11が取り付けられる衣服等の実装対象物を補強する必要がない場合には、補強シート14を省略することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 フレキシブル基板、1A 導体、2 ハウジング、2A コンタクト用貫通孔、2B ポスト収容部、3 ベース部材、3A 突起、3B ハウジング固定用ポスト、4 コンタクト、4A 筒状部、4B フランジ、4C 突起収容部、11 コネクタ、12 ハウジング、13 プラグコンタクト、13A 筒状部、13B フランジ、13C 凹部、14 補強シート、14A 開口部、14B 切り欠き、15 シート状導電部材、15A コンタクト配置領域、15B 開口部、15C,15E 配線層、15D,15F 絶縁層、15G 貫通孔、16 トップインシュレータ、16A 凹部、16B コンタクト用貫通孔、16C ボス、17 ボトムインシュレータ、17A 平板部、17B 凹部、17C 突起,17D 貫通孔、17E 支持面、18 インナーコンタクト、18A 保持部、18B 平板部、18C 切り欠き、18D 表面側突起、18E 裏面側突起、P1 接点部、D1,D2 間隔、C 嵌合軸。
図1
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