(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048614
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】光ファイバケーブル、それに接続されるコントローラ及びそれらを用いた光干渉測距センサ
(51)【国際特許分類】
G01C 3/06 20060101AFI20240402BHJP
G01B 9/02004 20220101ALI20240402BHJP
【FI】
G01C3/06 120Z
G01B9/02004
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154626
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(72)【発明者】
【氏名】長崎 裕介
(72)【発明者】
【氏名】早川 雅之
(72)【発明者】
【氏名】木村 和哉
【テーマコード(参考)】
2F064
2F112
【Fターム(参考)】
2F064AA01
2F064DD09
2F064EE05
2F064FF08
2F064GG02
2F064GG24
2F064HH01
2F064JJ04
2F064JJ15
2F112AD10
2F112BA12
2F112BA15
2F112CA12
2F112DA15
2F112DA22
2F112DA30
2F112FA03
2F112FA07
2F112FA21
2F112FA45
(57)【要約】
【課題】主干渉計に接続される第1光ファイバに対応して、適切な第2光ファイバを副干渉計に接続可能な光ファイバケーブル、それに接続されるコントローラ及びそれらを用いた光干渉測距センサを提供することである。
【解決手段】光ファイバケーブル130は、主干渉計112から入力された光をセンサヘッド120に導くとともに、当該センサヘッド120からの光を当該主干渉計112に出力する第1光ファイバ131と、副干渉計114から入力された光を伝搬させて当該副干渉計114に出力する第2光ファイバ132と、を備え、第1光ファイバ131の光路長及び第2光ファイバ132の光路長は、主干渉計112を経由する第1光路長と、副干渉計114を経由する第2光路長とが略同一となるように設定される。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長掃引光源を用いて計測対象物を計測するための第1干渉信号を生成する主干渉計と、前記第1干渉信号の非線形性を補正するための第2干渉信号を生成する副干渉計とを有する光干渉測距センサに用いられる光ファイバケーブルであって、
前記主干渉計に接続されることで当該主干渉計から入力された光をセンサヘッドに導くとともに、当該センサヘッドからの光を当該主干渉計に出力する第1光ファイバと、
前記副干渉計に接続されることで当該副干渉計から入力された光を伝搬させて当該副干渉計に出力する第2光ファイバと、を備え、
前記第1光ファイバの光路長及び前記第2光ファイバの光路長は、前記波長掃引光源から投光されてから前記主干渉計における受光部で受光されるまでの第1光路長と、前記波長掃引光源から投光されてから前記副干渉計における受光部で受光されるまでの第2光路長とが略同一となるように設定される、
光ファイバケーブル。
【請求項2】
前記第2光ファイバには、当該第2光ファイバを伝搬する光を反射させる反射部が構成されている、
請求項1に記載の光ファイバケーブル。
【請求項3】
前記反射部は、当該光ファイバケーブルの内部に配置される、
請求項2に記載の光ファイバケーブル。
【請求項4】
前記反射部は、当該光ファイバケーブルの外部に配置される、
請求項2に記載の光ファイバケーブル。
【請求項5】
計測対象物に光を照射するセンサヘッドに、光ファイバケーブルを介して接続されるコントローラであって、
波長を変化させながら光を投光する光源と、
前記光源から投光された光が供給され、前記センサヘッドにより前記計測対象物に照射して反射される測定光と、前記測定光とは少なくとも一部異なる光路を辿る参照光とに基づく第1干渉信号を生成する主干渉計と、
前記光源から投光された光が供給され、異なる光路長の光路を辿る2つの光に基づいて第2干渉信号を生成する副干渉計と、
前記第2干渉信号に基づいて前記第1干渉信号を補正しつつ、前記センサヘッドから前記計測対象物までの距離を算出する処理部と、を備え、
前記光ファイバケーブルは、
前記主干渉計に接続されることで当該主干渉計から入力された光を前記センサヘッドに導くとともに、当該センサヘッドからの光を当該主干渉計に出力する第1光ファイバと、
前記副干渉計に接続されることで当該副干渉計から入力された光を伝搬させて当該副干渉計に出力する第2光ファイバと、を備え、
前記第1光ファイバの光路長及び前記第2光ファイバの光路長は、前記光源から投光されてから前記主干渉計における受光部で受光されるまでの第1光路長と、前記光源から投光されてから前記副干渉計における受光部で受光されるまでの第2光路長とが略同一となるように設定される、
コントローラ。
【請求項6】
波長掃引光源を用いて計測対象物を計測するコントローラ、及び前記コントローラと前記計測対象物に光を照射するセンサヘッドとを接続する光ファイバケーブルを有する光干渉測距センサであって、
前記コントローラは、
波長を変化させながら光を投光する光源と、
前記光源から投光された光が供給され、前記センサヘッドにより前記計測対象物に照射して反射される測定光と、前記測定光とは少なくとも一部異なる光路を辿る参照光とに基づく第1干渉信号を生成する主干渉計と、
前記光源から投光された光が供給され、異なる光路長の光路を辿る2つの光に基づいて第2干渉信号を生成する副干渉計と、
前記第2干渉信号に基づいて前記第1干渉信号を補正しつつ、前記センサヘッドから前記計測対象物までの距離を算出する処理部と、を備え、
前記光ファイバケーブルは、
前記主干渉計に接続されることで当該主干渉計から入力された光をセンサヘッドに導くとともに、当該センサヘッドからの光を当該主干渉計に出力する第1光ファイバと、
前記副干渉計に接続されることで当該副干渉計から入力された光を伝搬させて当該副干渉計に出力する第2光ファイバと、を備え、
前記第1光ファイバの光路長及び前記第2光ファイバの光路長は、前記光源から投光されてから前記主干渉計における受光部で受光されるまでの第1光路長と、前記光源から投光されてから前記副干渉計における受光部で受光されるまでの第2光路長とが略同一となるように設定される、
光干渉測距センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバケーブル、それに接続されるコントローラ及びそれらを用いた光干渉測距センサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非接触で計測対象物までの距離を計測する光測距センサが普及している。例えば、光測距センサとして、波長掃引光源から投光される光から、参照光と測定光とに基づく干渉光を生成し、当該干渉光に基づいて計測対象物までの距離を計測する光干渉測距センサが知られている。
【0003】
このような光干渉測距センサでは、干渉計の出力信号に対して波長掃引の非線形を補正する線形化処理が行われる。例えば、特許文献1に記載されている光周波数領域反射測定装置では、遅延時間差を与えて干渉させ補助干渉信号を出力する補助干渉計、及び異なる遅延時間を持つ複数の線形化部を有し、補助干渉信号を用いて測定干渉信号に対して、波長掃引の非線形を補正している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、波長掃引光源を用いて計測対象物を計測する光干渉測距センサにおいて、センサヘッドに繋がる光ファイバには、様々な長さや種類のものがあり、使用状況に応じてユーザがその長さや種類を選択し、付け替えたりする場合がある。この場合、特許文献1に記載されている光周波数領域反射測定装置では、測定干渉信号を生成する主干渉計での光路長(ユーザによって付け替えられた光ファイバ)に応じて、補助干渉信号を生成する補助干渉計での光路長を調整しなければ、波長掃引の非線形を適切に補正できない。
【0006】
すなわち、例えば、ユーザによって主干渉計での光路長が変更された場合、それに応じて補助干渉計での光路長も調整しなければならず、特許文献1では、このような状況への対策に関して考慮されていない。
【0007】
そこで、本発明は、主干渉計に接続される第1光ファイバに対応して、適切な第2光ファイバを副干渉計に接続可能な光ファイバケーブル、それに接続されるコントローラ及びそれらを用いた光干渉測距センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る光ファイバケーブルは、波長掃引光源を用いて計測対象物を計測するための第1干渉信号を生成する主干渉計と、第1干渉信号の非線形性を補正するための第2干渉信号を生成する副干渉計とを有する光干渉測距センサに用いられる光ファイバケーブルであって、主干渉計に接続されることで当該主干渉計から入力された光をセンサヘッドに導くとともに、当該センサヘッドからの光を当該主干渉計に出力する第1光ファイバと、副干渉計に接続されることで当該副干渉計から入力された光を伝搬させて当該副干渉計に出力する第2光ファイバと、を備え、第1光ファイバの光路長及び第2光ファイバの光路長は、波長掃引光源から投光されてから主干渉計における受光部で受光されるまでの第1光路長と、波長掃引光源から投光されてから副干渉計における受光部で受光されるまでの第2光路長とが略同一となるように設定される。
【0009】
この態様によれば、主干渉計に接続される第1光ファイバと、副干渉計に接続される第2光ファイバとを備え、第1光ファイバの光路長及び第2光ファイバの光路長は、主干渉計を経由する第1光路長と副干渉計を経由する第2光路長とが略同一となるように設定されているため、主干渉計に接続される第1光ファイバに対応して、副干渉計に適切な第2光ファイバを接続することができる。その結果、波長掃引の非線形を適切に補正して、高精度に計測対象物を計測することができる。
【0010】
上記態様において、第2光ファイバには、当該第2光ファイバを伝搬する光を反射させる反射部が構成されてもよい。
【0011】
この態様によれば、反射部で反射する光の光路長を具体的に考慮して、第1光ファイバに対応する適切な第2光ファイバを設定することができる。
【0012】
上記態様において、反射部は、当該光ファイバケーブルの内部に配置されてもよい。
【0013】
この態様によれば、光ファイバケーブルの内部に反射部が形成されるため、当該反射部は破損し難く適切に保護される。
【0014】
上記態様において、反射部は、当該光ファイバケーブルの外部に配置されもよい。
【0015】
この態様によれば、光ファイバケーブルの外部に反射部が形成されるため、第2光ファイバの光路長を調整し易く、第1光ファイバに対応する適切な第2光ファイバを設定することができる。
【0016】
本発明の一態様に係るコントローラは、計測対象物に光を照射するセンサヘッドに、光ファイバケーブルを介して接続されるコントローラであって、波長を変化させながら光を投光する光源と、光源から投光された光が供給され、センサヘッドにより計測対象物に照射して反射される測定光と、測定光とは少なくとも一部異なる光路を辿る参照光とに基づく第1干渉信号を生成する主干渉計と、光源から投光された光が供給され、異なる光路長の光路を辿る2つの光に基づいて第2干渉信号を生成する副干渉計と、第2干渉信号に基づいて第1干渉信号を補正しつつ、センサヘッドから計測対象物までの距離を算出する処理部と、を備え、光ファイバケーブルは、主干渉計に接続されることで当該主干渉計から入力された光をセンサヘッドに導くとともに、当該センサヘッドからの光を当該主干渉計に出力する第1光ファイバと、副干渉計に接続されることで当該副干渉計から入力された光を伝搬させて当該副干渉計に出力する第2光ファイバと、を備え、第1光ファイバの光路長及び第2光ファイバの光路長は、光源から投光されてから主干渉計における受光部で受光されるまでの第1光路長と、光源から投光されてから副干渉計における受光部で受光されるまでの第2光路長とが略同一となるように設定される。
【0017】
この態様によれば、主干渉計に接続される第1光ファイバと、副干渉計に接続される第2光ファイバとを備え、第1光ファイバの第1光路長と、第2光ファイバの第2光路長とが略同一となるように設定されているため、主干渉計に接続される第1光ファイバに対応して、副干渉計に適切な第2光ファイバを接続することができる。その結果、コントローラは、第1光ファイバ及び第2光ファイバを備えた光ファイバケーブルに接続することができ、波長掃引の非線形を適切に補正して、高精度に計測対象物を計測することができる。
【0018】
本発明の一態様に係る光干渉測距センサは、波長掃引光源を用いて計測対象物を計測するコントローラ、及びコントローラと計測対象物に光を照射するセンサヘッドとを接続する光ファイバケーブルを有する光干渉測距センサであって、コントローラは、波長を変化させながら光を投光する光源と、光源から投光された光が供給され、センサヘッドにより計測対象物に照射して反射される測定光と、測定光とは少なくとも一部異なる光路を辿る参照光とに基づく第1干渉信号を生成する主干渉計と、光源から投光された光が供給され、異なる光路長の光路を辿る2つの光に基づいて第2干渉信号を生成する副干渉計と、第2干渉信号に基づいて第1干渉信号を補正しつつ、センサヘッドから計測対象物までの距離を算出する処理部と、を備え、光ファイバケーブルは、主干渉計に接続されることで当該主干渉計から入力された光をセンサヘッドに導くとともに、当該センサヘッドからの光を当該主干渉計に出力する第1光ファイバと、副干渉計に接続されることで当該副干渉計から入力された光を伝搬させて当該副干渉計に出力する第2光ファイバと、を備え、第1光ファイバの光路長及び第2光ファイバの光路長は、光源から投光されてから主干渉計における受光部で受光されるまでの第1光路長と、光源から投光されてから副干渉計における受光部で受光されるまでの第2光路長とが略同一となるように設定される。
【0019】
この態様によれば、主干渉計に接続される第1光ファイバと、副干渉計に接続される第2光ファイバとを備え、第1光ファイバの第1光路長と、第2光ファイバの第2光路長とが略同一となるように設定されているため、主干渉計に接続される第1光ファイバに対応して、副干渉計に適切な第2光ファイバを接続することができる。その結果、第1光ファイバ及び第2光ファイバを備えた光ファイバケーブルを用いて、波長掃引の非線形を適切に補正して、高精度に計測対象物を計測する光干渉測距センサを実現することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、主干渉計に接続される第1光ファイバに対応して、適切な第2光ファイバを副干渉計に接続可能な光ファイバケーブル、それに接続されるコントローラ及びそれらを用いた光干渉測距センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本開示に係る変位センサ10の概要を示す外観模式図である。
【
図2】本開示に係る変位センサ10によって計測対象物Tが計測される手順を示すフローチャートである。
【
図3】本開示に係る変位センサ10が用いられるセンサシステム1の概要を示す機能ブロック図である。
【
図4】本開示に係る変位センサ10が用いられるセンサシステム1によって計測対象物Tが計測される手順を示すフローチャートである。
【
図5A】本開示に係る変位センサ10によって計測対象物Tが計測される原理を説明するための図である。
【
図5B】本開示に係る変位センサ10によって計測対象物Tが計測される別の原理を説明するための図である。
【
図6A】センサヘッド20の概略構成を示す斜視図である。
【
図6B】センサヘッド20の内部構造を示す模式図である。
【
図7】コントローラ30における信号処理について説明するためのブロック図である。
【
図8】コントローラ30における処理部59によって実行される、計測対象物Tまでの距離を算出する方法を示すフローチャートである。
【
図9A】波形信号(電圧vs時間)がスペクトル(電圧vs周波数)に周波数変換される様子を示す図である。
【
図9B】スペクトル(電圧vs周波数)がスペクトル(電圧vs距離)に距離変換される様子を示す図である。
【
図9C】スペクトル(電圧vs距離)に基づいてピークを検出し、それに対応する距離値が算出される様子を示す図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る光干渉測距センサ100の構成概要を示す模式図である。
【
図11】光ファイバケーブル130がコントローラ110に着脱可能である様子を示す図である。
【
図12】主干渉計112及び副干渉計114の具体的な構成を模式的に示す光干渉測距センサ101の構成概要図である。
【
図13】主干渉計112及び副干渉計114の他の具体的な構成を模式的に示す光干渉測距センサ101の構成概要図である。
【
図14】光ファイバケーブル130における反射部133の具体的な構成を示す模式図である。
【
図15】第2光ファイバ132に折り返し部134が形成された光ファイバケーブル130を用いた場合における、主干渉計112及び副干渉計114の具体的な構成を模式的に示す光干渉測距センサ103の構成概要図である。
【
図16】副干渉計114と接続される第2光ファイバを複数備えた光ファイバケーブル130を用いた場合における、主干渉計112及び副干渉計114の具体的な構成を模式的に示す光干渉測距センサ104の構成概要図である。
【
図17】多段式の光路が設けられた主干渉計112を用いた場合における、主干渉計112及び副干渉計114の具体的な構成を模式的に示す光干渉測距センサ105の構成概要図である。
【
図18】測定光と参照光とを用いて干渉光を発生させる干渉計のバリエーションを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好適な各実施形態について、添付図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する各実施形態は、あくまで、本発明を実施するための具体的な一例を挙げるものであって、本発明を限定的に解釈させるものではない。また、説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する場合がある。
【0023】
[変位センサの概要]
先ず、本開示に係る変位センサの概要について説明する。
図1は、本開示に係る変位センサ10の概要を示す外観模式図である。
図1に示されるように、変位センサ10は、センサヘッド20とコントローラ30とを備え、計測対象物Tの変位(計測対象物Tまでの距離)を計測する。
【0024】
センサヘッド20とコントローラ30とは、光ファイバ40で接続されており、センサヘッド20には対物レンズ21が取り付けられている。また、コントローラ30は、表示部31と、設定部32と、外部インタフェース(I/F)部33と、光ファイバ接続部34と、外部記憶部35とを含み、さらに、内部には、計測処理部36を有する。
【0025】
センサヘッド20は、コントローラ30から出力される光を計測対象物Tに照射し、当該計測対象物Tからの反射光を受光する。センサヘッド20は、コントローラ30から出力されて光ファイバ40を介して受光した光を反射させ、上述した計測対象物Tからの反射光と干渉させるための参照面を、内部に有している。
【0026】
なお、センサヘッド20には対物レンズ21が取り付けられているが、当該対物レンズ21は着脱可能な構成となっている。対物レンズ21は、センサヘッド20と計測対象物Tとの距離に応じて、適切な焦点距離を有する対物レンズに交換可能であって、又は可変焦点の対物レンズを適用してもよい。
【0027】
さらに、センサヘッド20を設置する際には、ガイド光(可視光)を計測対象物Tに照射して、当該変位センサ10の計測領域内に計測対象物Tが適切に位置するようにセンサヘッド20及び/又は計測対象物Tを設置してもよい。
【0028】
光ファイバ40は、コントローラ30に配置される光ファイバ接続部34に接続されて延伸し、当該コントローラ30とセンサヘッド20とを接続する。これにより、光ファイバ40は、コントローラ30から投光される光をセンサヘッド20に導き、さらに、センサヘッド20からの戻り光をコントローラ30へ導くように構成されている。なお、光ファイバ40は、センサヘッド20及びコントローラ30に着脱可能であって、長さ、太さ及び特性等において種々の光ファイバを適用することができる。
【0029】
表示部31は、例えば、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイ等で構成される。表示部31には、変位センサ10の設定値、センサヘッド20からの戻り光の受光量、及び変位センサ10によって計測された計測対象物Tの変位(計測対象物Tまでの距離)等の計測結果が表示される。
【0030】
設定部32は、例えば、機械式ボタンやタッチパネル等をユーザが操作することによって、計測対象物Tを計測するために必要な設定が行われる。これらの必要な設定の全部又は一部は、予め設定されていてもよいし、外部I/F部33に接続された外部接続機器(図示せず)から設定されてもよい。また、外部接続機器は、ネットワークを介して有線又は無線で接続されていてもよい。
【0031】
ここで、外部I/F部33は、例えば、Ethernet(登録商標)、RS232C、及びアナログ出力等で構成される。外部I/F部33には、他の接続機器に接続されて当該外部接続機器から必要な設定が行われたり、変位センサ10によって計測された計測結果等を外部接続機器に出力したりしてもよい。
【0032】
また、コントローラ30が外部記憶部35に記憶されたデータを取り込むことにより、計測対象物Tを計測するために必要な設定が行われてもよい。外部記憶部35は、例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリ等の補助記憶装置であって、計測対象物Tを計測するために必要な設定等が予め記憶されている。
【0033】
コントローラ30における計測処理部36は、例えば、連続的に波長を変化させながら光を投光する波長掃引光源、センサヘッド20からの戻り光を受光して電気信号に変換する受光素子、及び電気信号を処理する信号処理回路等を含む。計測処理部36では、センサヘッド20からの戻り光に基づいて、最終的には、計測対象物Tの変位(計測対象物Tまでの距離)が算出されるように制御部及び記憶部等を用いて様々な処理がなされている。これらの処理についての詳細は後述する。
【0034】
図2は、本開示に係る変位センサ10によって計測対象物Tが計測される手順を示すフローチャートである。
図2に示されるように、当該手順は、ステップS11~S14を含む。
【0035】
ステップS11では、センサヘッド20を設置する。例えば、センサヘッド20から計測対象物Tにガイド光を照射して、それを参考にして、センサヘッド20を適切な位置に設置する。
【0036】
具体的には、コントローラ30における表示部31に、センサヘッド20からの戻り光の受光量を表示し、ユーザは、当該受光量を確認しながら、センサヘッド20の向き及び計測対象物Tとの距離(高さ位置)等を調整してもよい。基本的には、センサヘッド20からの光を計測対象物Tに対して垂直に(より垂直に近い角度で)照射できれば、当該計測対象物Tからの反射光の光量が大きく、センサヘッド20からの戻り光の受光量も大きくなる。
【0037】
また、センサヘッド20と計測対象物Tとの距離に応じて、適切な焦点距離を有する対物レンズ21に交換してもよい。
【0038】
さらに、計測対象物Tを計測するに際して適切な設定ができない場合(例えば、計測に必要な受光量を得られない、又は対物レンズ21の焦点距離が不適切である等)には、エラー又は設定未完了等を、表示部31に表示したり、外部接続機器に出力したりして、ユーザに通知するようにしてもよい。
【0039】
ステップS12では、計測対象物Tを計測するに際して種々の計測条件を設定する。例えば、センサヘッド20が有する固有の校正データ(線形性を補正する関数等)を、ユーザがコントローラ30における設定部32を操作することによって設定する。
【0040】
また、各種パラメータを設定してもよい。例えば、サンプリング時間、計測範囲、及び計測結果を正常とするか異常とするかの閾値等が設定される。さらに、計測対象物Tの反射率及び材質等の計測対象物Tの特性に応じて測定周期が設定され、及び計測対象物Tの材質に応じた測定モード等が設定されるようにしてもよい。
【0041】
なお、これらの計測条件及び各種パラメータの設定は、コントローラ30における設定部32を操作することによって設定されるが、外部接続機器から設定されてもよいし、外部記憶部35からデータを取り込むことによって設定されてもよい。
【0042】
ステップS13では、ステップS11で設置されたセンサヘッド20で、ステップS12で設定された計測条件及び各種パラメータに従って、計測対象物Tを計測する。
【0043】
具体的には、コントローラ30の計測処理部36において、波長掃引光源から光が投光され、センサヘッド20からの戻り光を受光素子で受光し、信号処理回路によって周波数解析、距離変換及びピーク検出等がなされて、計測対象物Tの変位(計測対象物Tまでの距離)が算出される。具体的な計測処理についての詳細は、後述する。
【0044】
ステップS14では、ステップS13で計測された計測結果を出力する。例えば、ステップS13で計測された計測対象物Tの変位(計測対象物Tまでの距離)等を、コントローラ30における表示部31に表示したり、外部接続機器に出力したりする。
【0045】
また、ステップS13で計測された計測対象物Tの変位(計測対象物Tまでの距離)が、ステップS12で設定された閾値に基づいて、正常の範囲内であるか異常かについても計測結果として表示又は出力されてもよい。さらに、ステップS12で設定された計測条件、各種パラメータ及び測定モード等も共に表示又は出力されてもよい。
【0046】
[変位センサを含むシステムの概要]
図3は、本開示に係る変位センサ10が用いられるセンサシステム1の概要を示す機能ブロック図である。
図3に示されるように、センサシステム1は、変位センサ10と、制御機器11と、制御信号入力用センサ12と、外部接続機器13とを備える。なお、変位センサ10は、制御機器11及び外部接続機器13とは、例えば、通信ケーブル又は外部接続コード(例えば、外部入力線、外部出力線及び電源線等を含む)で接続され、制御機器11と制御信号入力用センサ12とは信号線で接続される。
【0047】
変位センサ10は、
図1及び
図2を用いて説明したように、計測対象物Tの変位(計測対象物Tまでの距離)を計測する。そして、変位センサ10は、その計測結果等を制御機器11及び外部接続機器13に出力してもよい。
【0048】
制御機器11は、例えば、PLC(Programmable Logic Controller)であって、変位センサ10が計測対象物Tを計測するに際して、当該変位センサ10に対して各種の指示を与える。
【0049】
例えば、制御機器11は、制御機器11に接続された制御信号入力用センサ12からの入力信号に基づいて、測定タイミング信号を変位センサ10に出力してもよいし、ゼロリセット命令信号(現在の計測値を0に設定するための信号)等を変位センサ10に出力してもよい。
【0050】
制御信号入力用センサ12は、変位センサ10が計測対象物Tを計測するタイミングを指示するオン/オフ信号を、制御機器11に出力する。例えば、制御信号入力用センサ12は、計測対象物Tが移動する生産ラインの近傍に設置され、計測対象物Tが所定の位置に移動してきたことを検知して、制御機器11にオン/オフ信号を出力すればよい。
【0051】
外部接続機器13は、例えば、PC(Personal Computer)であって、ユーザが操作することによって、変位センサ10に対して様々な設定を行うことができる。
【0052】
具体例としては、測定モード、動作モード、測定周期、及び計測対象物Tの材質等が設定される。
【0053】
測定モードの設定として、制御機器11内部で周期的に計測開始する「内部同期計測モード」、又は制御機器11外部からの入力信号に応じて計測開始する「外部同期計測モード」等が選択される。
【0054】
動作モードの設定として、実際に計測対象物Tを計測する「運転モード」、又は計測対象物Tを計測するための計測条件を設定する「調整モード」等が選択される。
【0055】
測定周期は、計測対象物Tを測定する周期であり、計測対象物Tの反射率に応じて設定すればよいが、仮に、計測対象物Tの反射率が低い場合であっても、測定周期を長くして適切に測定周期を設定すれば、計測対象物Tを適切に測定することができる。
【0056】
計測対象物Tについて、反射光の成分として拡散反射が比較的多い場合に適した「粗面モード」、反射光の成分として鏡面反射が比較的多い場合に適した「鏡面モード」、又はこれらの中間的な「標準モード」等が選択される。
【0057】
このように、計測対象物Tの反射率及び材質に応じて、適切な設定を行うことによって、より高精度に計測対象物Tを計測することができる。
【0058】
図4は、本開示に係る変位センサ10が用いられるセンサシステム1によって計測対象物Tが計測される手順を示すフローチャートである。
図4に示されるように、当該手順は、上述した外部同期計測モードの場合の手順であって、ステップS21~S24を含む。
【0059】
ステップS21では、センサシステム1は、計測される対象である計測対象物Tを検知する。具体的には、制御信号入力用センサ12は、生産ライン上において、計測対象物Tが所定の位置に移動してきたことを検知する。
【0060】
ステップS22では、センサシステム1は、ステップS21で検知された計測対象物Tを変位センサ10によって計測するように計測指示する。具体的には、制御信号入力用センサ12は、制御機器11にオン/オフ信号を出力することにより、ステップS21で検知された計測対象物Tを測定するタイミングを指示し、制御機器11は、当該オン/オフ信号に基づいて、変位センサ10に測定タイミング信号を出力して、計測対象物Tを計測するように計測指示する。
【0061】
ステップS23では、変位センサ10によって計測対象物Tが計測される。具体的には、変位センサ10は、ステップS22で受け取った計測指示に基づいて、計測対象物Tを計測する。
【0062】
ステップS24では、センサシステム1は、ステップS23で計測された計測結果を出力する。具体的には、変位センサ10は、計測処理の結果を、表示部31に表示したり、外部I/F部33を経由して制御機器11又は外部接続機器13等に出力したりする。
【0063】
なお、ここでは、
図4を用いて、制御信号入力用センサ12によって計測対象物Tが検知されることにより計測対象物Tを計測する外部同期計測モードの場合についての手順を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、内部同期計測モードの場合は、ステップS21及びS22に代わって、予め設定された周期に基づいて測定タイミング信号が生成されることにより、計測対象物Tを計測するように変位センサ10に指示する。
【0064】
次に、本開示に係る変位センサ10によって計測対象物Tが計測される原理を説明する。
図5Aは、本開示に係る変位センサ10によって計測対象物Tが計測される原理を説明するための図である。
図5Aに示されるように、変位センサ10は、センサヘッド20及びコントローラ30を備える。センサヘッド20は、対物レンズ21と、複数のコリメートレンズ22a~22cとを含み、コントローラ30は、波長掃引光源51と、光増幅器52と、複数のアイソレータ53及び53a~53bと、複数の光カプラ54及び54a~54eと、減衰器55と、複数の受光素子(例えば、フォトディテクタ(PD))56a~56cと、複数の増幅回路57a~57cと、複数のアナログデジタル(AD)変換部(例えば、アナログデジタルコンバータ)58a~58cと、処理部(例えば、プロセッサ)59と、バランスディテクタ60と、補正信号生成部61とを含む。
【0065】
波長掃引光源51は、波長を掃引したレーザ光を投光する。波長掃引光源51としては、例えば、VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)を電流で変調する方式を適用すれば、共振器長が短いためにモードホップを起こしにくく、波長を変化させることが容易であり、低コストで実現することができる。
【0066】
光増幅器52は、波長掃引光源51から投光される光を増幅する。光増幅器52は、例えば、EDFA(erbium-doped fiber amplifier)を適用し、例えば、1550nm専用の光増幅器であってもよい。
【0067】
アイソレータ53は、入射した光を一方向に透過させる光学素子であって、戻り光によって発生するノイズの影響を防ぐために、波長掃引光源51の直後に配置されてもよい。
【0068】
このように、波長掃引光源51から投光された光は、光増幅器52によって増幅され、アイソレータ53を介して、光カプラ54によって主干渉計と副干渉計とに分岐される。例えば、光カプラ54では、主干渉計と副干渉計とに分岐する光の割合は、主干渉計側に90%以上分岐させるようにしてもよい。
【0069】
主干渉計に分岐された光は、さらに、1段目の光カプラ54aによって、センサヘッド20の方向と2段目の光カプラ54bの方向とに分岐される。
【0070】
1段目の光カプラ54aによってセンサヘッド20の方向に分岐された光は、センサヘッド20において、光ファイバの先端からコリメートレンズ22a及び対物レンズ21を通過して計測対象物Tに照射される。そして、当該光ファイバの先端(端面)が参照面となり、当該参照面で反射した光と、計測対象物Tで反射した光とが干渉し、干渉光が生成されて、1段目の光カプラ54aに戻り、その後、受光素子56aで受光されて電気信号に変換される。
【0071】
1段目の光カプラ54aによって2段目の光カプラ54bの方向に分岐された光は、アイソレータ53aを介して2段目の光カプラ54bに向かい、当該2段目の光カプラ54bによって、さらにセンサヘッド20の方向と3段目の光カプラ54cの方向とに分岐される。光カプラ54bからセンサヘッド20の方向に分岐された光は、1段目と同様に、センサヘッド20において、光ファイバの先端からコリメートレンズ22b及び対物レンズ21を通過して計測対象物Tに照射される。そして、当該光ファイバの先端(端面)が参照面となり、当該参照面で反射した光と、計測対象物Tで反射した光とが干渉し、干渉光が生成されて、2段目の光カプラ54bに戻り、当該光カプラ54bによってアイソレータ53a及び受光素子56bそれぞれの方向へ分岐される。光カプラ54bから受光素子56bの方向へ分岐された光は、受光素子56bで受光されて電気信号に変換される。一方、アイソレータ53aは、前段の光カプラ54aから後段の光カプラ54bへ光を透過し、後段の光カプラ54bから前段の光カプラ54aへの光を遮断するため、光カプラ54bからアイソレータ53aの方向へ分岐された光は、遮断される。
【0072】
2段目の光カプラ54bによって3段目の光カプラ54cの方向に分岐された光は、アイソレータ53bを介して3段目の光カプラ54cに向かい、当該3段目の光カプラ54cによって、さらにセンサヘッド20の方向と減衰器55の方向とに分岐される。光カプラ54cからセンサヘッド20の方向に分岐された光は、1段目及び2段目と同様に、センサヘッド20において、光ファイバの先端からコリメートレンズ22c及び対物レンズ21を通過して計測対象物Tに照射される。そして、当該光ファイバの先端(端面)が参照面となり、当該参照面で反射した光と、計測対象物Tで反射した光とが干渉し、干渉光が生成されて、3段目の光カプラ54cに戻り、当該光カプラ54cによってアイソレータ53b及び受光素子56cそれぞれの方向へ分岐される。光カプラ54cから受光素子56cの方向へ分岐された光は、受光素子56cで受光されて電気信号に変換される。一方、アイソレータ53bは、前段の光カプラ54bから後段の光カプラ54cへ光を透過し、後段の光カプラ54cから前段の光カプラ54bへの光を遮断するため、光カプラ54cからアイソレータ53bの方向へ分岐された光は、遮断される。
【0073】
なお、3段目の光カプラ54cによってセンサヘッド20でない方向に分岐された光は、計測対象物Tの計測に用いられないため、反射して戻ってこないように、例えば、ターミネータ等の減衰器55によって減衰されるとよい。
【0074】
このように、主干渉計では、3段の光路(3チャネル)を有し、それぞれセンサヘッド20の光ファイバの先端(端面)から計測対象物Tまでの距離の2倍(往復)を光路長差とした干渉計であり、それぞれ光路長差に応じた3つの干渉光を生成している。
【0075】
受光素子56a~56cは、上述したように主干渉計からの干渉光を受光し、当該受光した受光量に応じた電気信号を生成する。
【0076】
増幅回路57a~57cは、それぞれ受光素子56a~56cから出力される電気信号を増幅する。
【0077】
AD変換部58a~58cは、それぞれ増幅回路57a~57cによって増幅された電気信号を受信して、当該電気信号に関してアナログ信号からデジタル信号に変換する(AD変換)。ここで、AD変換部58a~58cは、副干渉計における補正信号生成部61からの補正信号に基づいて、AD変換する。
【0078】
副干渉計では、波長掃引光源51の掃引時における波長の非線形性を補正するために、副干渉計にて干渉信号を取得し、Kクロックと呼ばれる補正信号を生成する。
【0079】
具体的には、光カプラ54によって副干渉計に分岐された光は、光カプラ54dによって、さらに分岐される。ここで、分岐された各光の光路は、例えば、光カプラ54dと光カプラ54eとの間において異なる長さの光ファイバを用いて光路長差を有するように構成されて、当該光路長差に応じた干渉光が光カプラ54eから出力される。そして、バランスディテクタ60は、光カプラ54eからの干渉光を受光し、その逆位相の信号との差分を取ることによってノイズを除去しつつ、光信号を増幅して電気信号に変換する。
【0080】
なお、光カプラ54d及び光カプラ54eは、いずれも50:50の割合で光を分岐すればよい。
【0081】
補正信号生成部61は、バランスディテクタ60からの電気信号に基づいて、波長掃引光源51の掃引時における波長の非線形性を把握し、当該非線形に応じたKクロックを生成し、AD変換部58a~58cに出力する。
【0082】
波長掃引光源51の掃引時における波長の非線形性から、主干渉計においてそれぞれAD変換部58a~58cに入力されるアナログ信号の波の間隔は等間隔ではない。AD変換部58a~58cでは、波の間隔が等間隔になるように、上述したKクロックに基づいてサンプリング時間を補正してAD変換(サンプリング)される。
【0083】
なお、Kクロックは、上述したように、主干渉計のアナログ信号をサンプリングするために用いられる補正信号であるため、主干渉計のアナログ信号よりも高周波に生成される必要がある。具体的には、副干渉計における光カプラ54dと光カプラ54eとの間で設けられた光路長差を、主干渉計における光ファイバの先端(端面)と計測対象物Tとの間で設けられた光路長差よりも長くしてもよいし、補正信号生成部61で周波数を逓倍(例えば、8倍等)して高周波化してもよい。
【0084】
処理部59は、それぞれAD変換部58a~58cによって非線形性が補正されつつAD変換されたデジタル信号を取得し、当該デジタル信号に基づいて、計測対象物Tの変位(計測対象物Tまでの距離)を算出する。具体的には、処理部59では、高速フーリエ変換(FFT:fast Fourier transform)を用いてデジタル信号を周波数変換し、それらを解析することによって距離が算出される。処理部59における詳細な処理については後述する。
【0085】
なお、処理部59では、高速処理が要求されることから、FPGA(field-programmable gate array)等の集積回路で実現される場合が多い。
【0086】
また、ここでは、主干渉計において3段の光路を設けて、センサヘッド20によってそれぞれの光路から計測対象物Tに対して測定光が照射され、それぞれから得られる干渉光(戻り光)に基づいて、計測対象物Tまでの距離等が計測される(マルチチャネル)。主干渉計におけるチャネルは、3段に限定されるものではなく、1段又は2段であってもよいし、4段以上であってもよい。
【0087】
図5Bは、本開示に係る変位センサ10によって計測対象物Tが計測される別の原理を説明するための図である。
図5Bに示されるように、変位センサ10は、センサヘッド20及びコントローラ30を備える。センサヘッド20は、対物レンズ21と、複数のコリメートレンズ22a~22cとを含み、コントローラ30は、波長掃引光源51と、光増幅器52と、複数のアイソレータ53及び53a~53bと、複数の光カプラ54及び54a~54jと、減衰器55と、複数の受光素子(例えば、フォトディテクタ(PD))56a~56cと、複数の増幅回路57a~57cと、複数のアナログデジタル(AD)変換部(例えば、アナログデジタルコンバータ)58a~58cと、処理部(例えば、プロセッサ)59と、バランスディテクタ60と、補正信号生成部61とを含む。
図5Bに示された変位センサ10は、主に、光カプラ54f~54jを備えている点で、
図5Aに示された変位センサ10の構成とは異なり、当該異なる構成による原理について、
図5Aと比較しながら詳しく説明する。
【0088】
波長掃引光源51から投光された光は、光増幅器52によって増幅され、アイソレータ53を介して、光カプラ54によって主干渉計側と副干渉計側とに分岐されるが、主干渉計側に分岐された光は、さらに、光カプラ54fによって測定光と参照光とに分岐される。
【0089】
測定光は、
図5Aで説明したように、1段目の光カプラ54aによってコリメートレンズ22a及び対物レンズ21を通過して計測対象物Tに照射され、当該計測対象物Tで反射する。ここで、
図5Aでは、光ファイバの先端(端面)を参照面として、当該参照面で反射した光と計測対象物Tで反射した光とが干渉し、干渉光が生成されていたが、
図5Bでは、光が反射する参照面を設けていない。すなわち、
図5Bでは、
図5Aのように参照面で反射する光が発生しないため、計測対象物Tで反射された測定光が1段目の光カプラ54aに戻ることなる。
【0090】
同様に、1段目の光カプラ54aから2段目の光カプラ54bの方向に分岐された光は、当該2段目の光カプラ54bによってコリメートレンズ22b及び対物レンズ21を通過して計測対象物Tに照射され、当該計測対象物Tで反射して2段目の光カプラ54bに戻る。2段目の光カプラ54bから3段目の光カプラ54cの方向に分岐された光は、当該3段目の光カプラ54cによってコリメートレンズ22c及び対物レンズ21を通過して計測対象物Tに照射され、当該計測対象物Tで反射して3段目の光カプラ54cに戻る。
【0091】
一方、光カプラ54fによって分岐された参照光は、さらに、光カプラ54gによって光カプラ54h、54i及び54jに分岐される。
【0092】
光カプラ54hでは、光カプラ54aから出力される計測対象物Tで反射された測定光と、光カプラ54gから出力される参照光とが干渉し、干渉光が生成されて、受光素子56aで受光されて電気信号に変換される。換言すれば、光カプラ54fによって測定光と参照光とに分岐され、当該測定光の光路(光カプラ54fから、光カプラ54a、コリメートレンズ22a、対物レンズ21を介して計測対象物Tで反射し、光カプラ54hまで到達する光路)と、当該参照光の光路(光カプラ54fから、光カプラ54gを介して光カプラ54hまで到達する光路)との光路長差に応じた干渉光が生成されて、当該干渉光が受光素子56aで受光されて電気信号に変換される。
【0093】
同様に、光カプラ54iでは、測定光の光路(光カプラ54fから、光カプラ54a、54b、コリメートレンズ22b、対物レンズ21を介して計測対象物Tで反射し、光カプラ54iまで到達する光路)と、参照光の光路(光カプラ54fから、光カプラ54gを介して光カプラ54iまで到達する光路)との光路長差に応じた干渉光が生成されて、当該干渉光が受光素子56bで受光されて電気信号に変換される。
【0094】
光カプラ54jでは、測定光の光路(光カプラ54fから、光カプラ54a、54b、54c、コリメートレンズ22c、対物レンズ21を介して計測対象物Tで反射し、光カプラ54jまで到達する光路)と、参照光の光路(光カプラ54fから、光カプラ54gを介して光カプラ54jまで到達する光路)との光路長差に応じた干渉光が生成されて、当該干渉光が受光素子56cで受光されて電気信号に変換される。なお、受光素子56a~56cは、例えば、バランスフォトディテクタであってもよい。
【0095】
このように、主干渉計では、3段の光路(3チャネル)を有し、それぞれ計測対象物Tで反射されて光カプラ54h、54i及び54jに入力される測定光と、光カプラ54f及び54gを介してそれぞれ光カプラ54h、54i及び54jに入力される参照光との光路長差に応じた3つの干渉光を生成している。
【0096】
なお、測定光と参照光との光路長差は、3チャネルにおいてそれぞれ異なるように、例えば、光カプラ54gと、各光カプラ54h、54i及び54jとの光路長を異なるように設定してもよい。
【0097】
そして、それぞれから得られる干渉光に基づいて、計測対象物Tまでの距離等が計測される(マルチチャネル)。
【0098】
[センサヘッドの構造]
ここで、変位センサ10に用いられるセンサヘッドの構造について説明する。
図6Aは、センサヘッド20の概略構成を示す斜視図であり、
図6Bは、センサヘッドの内部構造を示す模式図である。
【0099】
図6Aに示されるように、センサヘッド20は、レンズホルダ23に対物レンズ21及びコリメートレンズが格納されている。例えば、レンズホルダ23のサイズは、対物レンズ21を囲う一辺の長さが20mm程度であり、光軸方向への長さが40mm程度である。
【0100】
図6Bに示されるように、レンズホルダ23には、1つの対物レンズ21及び3つのコリメートレンズ22a~22cが格納されている。光ファイバからの光は、光ファイバアレイ24を介して3つのコリメートレンズ22a~22cに導かれるように構成されており、さらに、3つのコリメートレンズ22a~22cを通過した光は、対物レンズ21を介して計測対象物Tに照射される。
【0101】
このように、これらの光ファイバ、コリメートレンズ22a~22c及び光ファイバアレイ24は、対物レンズ21とともに、レンズホルダ23によって保持されて、センサヘッド20を構成している。
【0102】
また、センサヘッド20を構成するレンズホルダ23は、高強度で、また高精度に加工できる金属(例えば、A2017)で作製されていてもよい。
【0103】
図7は、コントローラ30における信号処理について説明するためのブロック図である。
図7に示されるように、コントローラ30は、複数の受光素子71a~71eと、複数の増幅回路72a~72cと、複数のAD変換部74a~74cと、処理部75と、差動増幅回路76と、補正信号生成部77とを備える。
【0104】
コントローラ30では、
図5Aで示されたように、波長掃引光源51から投光された光を光カプラ54によって主干渉計と副干渉計とに分岐し、それぞれより得られる主干渉信号及び副干渉信号を処理することによって、計測対象物Tまでの距離値を算出している。
【0105】
複数の受光素子71a~71cは、
図5Aに示された受光素子56a~56cに相当し、主干渉計からの主干渉信号をそれぞれ受光して、電流信号としてそれぞれ増幅回路72a~72cに出力する。
【0106】
複数の増幅回路72a~72cは、電流信号を電圧信号に変換(I-V変換)して増幅する。
【0107】
複数のAD変換部74a~74cは、
図5Aに示されたAD変換部58a~58cに相当し、後述する補正信号生成部77からのKクロックに基づいて、電圧信号をデジタル信号に変換する(AD変換)。
【0108】
処理部75は、
図5Aに示された処理部59に相当し、AD変換部74a~74cからのデジタル信号をFFTを用いて周波数に変換し、それらを解析して、計測対象物Tまでの距離値を算出する。
【0109】
複数の受光素子71d~71e及び差動増幅回路76は、
図5Aに示されたバランスディテクタ60に相当し、副干渉計における干渉光をそれぞれ受光して、一方は位相の反転した干渉信号を出力し、2つの信号の差分を取ることによってノイズを除去しつつ、干渉信号を増幅して電圧信号に変換する。
【0110】
補正信号生成部77は、
図5Aに示された補正信号生成部61に相当し、電圧信号をコンパレータで2値化し、Kクロックを生成し、AD変換部74a~74cに出力する。Kクロックは、主干渉計のアナログ信号よりも高周波に生成される必要があるため、補正信号生成部77で周波数を逓倍(例えば、8倍等)して高周波化してもよい。
【0111】
図8は、コントローラ30における処理部59によって実行される、計測対象物Tまでの距離を算出する方法を示すフローチャートである。
図8に示されるように、当該方法は、ステップS31~S34を含む。
【0112】
ステップS31では、処理部59は、下記FFTを用いて、波形信号(電圧vs時間)をスペクトル(電圧vs周波数)に周波数変換する。
図9Aは、波形信号(電圧vs時間)がスペクトル(電圧vs周波数)に周波数変換される様子を示す図である。
【数1】
【0113】
ステップS32では、処理部59は、スペクトル(電圧vs周波数)をスペクトル(電圧vs距離)に距離変換する。
図9Bは、スペクトル(電圧vs周波数)がスペクトル(電圧vs距離)に距離変換される様子を示す図である。
【0114】
ステップS33では、処理部59は、スペクトル(電圧vs距離)に基づいてピークに対応する距離値を算出する。
図9Cは、スペクトル(電圧vs距離)に基づいてピークを検出し、それに対応する距離値が算出される様子を示す図である。
図9Cに示されるように、ここでは、3チャネルにおいて、それぞれスペクトル(電圧vs距離)に基づいてピークが検出され、それぞれピークに対応する距離値が算出される。
【0115】
ステップS34では、処理部59は、ステップS33で算出された距離値を平均化する。具体的には、処理部59は、ステップS33で3チャネルにおいてそれぞれスペクトル(電圧vs距離)に基づいてピークが検出され、それに対応する距離値が算出されているため、それらを平均化して、当該平均化した算出結果を計測対象物Tまでの距離として出力する。
【0116】
なお、ステップS34では、処理部59は、ステップS33で算出された距離値を平均化する際に、SNRが閾値以上である距離値平均化することが好ましい。例えば、3チャンネルのうち、いずれかのチャンネルにおいて、そのスペクトル(電圧vs距離)に基づいてピークが検出されたものの、SNRが閾値未満の場合には、当該スペクトルに基づいて算出される距離値は、信頼性が低いと判断し、採用しない。
【0117】
次に、本開示に関して、より特徴的な構成、機能及び性質を中心に、具体的な実施形態として詳細に説明する。なお、以下に示される光干渉測距センサは、
図1~
図9を用いて説明した変位センサ10に相当し、当該光干渉測距センサに含まれる基本的な構成、機能及び性質の全部又は一部は、
図1~
図9を用いて説明した変位センサ10に含まれる構成、機能及び性質と共通している。
【0118】
<一実施形態>
[光干渉測距センサの構成]
図10は、本発明の一実施形態に係る光干渉測距センサ100の構成概要を示す模式図である。
図10に示されるように、光干渉測距センサ100は、コントローラ110とセンサヘッド120とを有し、さらに、これらを接続する光ファイバケーブル130を含み、干渉光に基づいて計測対象物Tまでの距離を計測する。
【0119】
コントローラ110は、波長掃引光源111と、主干渉計112と、第1フォトディテクタ(受光部)113と、副干渉計114と、第2フォトディテクタ(受光部)115と、処理部116とを備える。光ファイバケーブル130は、複数の光ファイバから構成される光ファイバ群であって、ここでは、第1光ファイバ131と第2光ファイバ132から構成されており、第2光ファイバ132の端部には、反射部133が形成されている。
【0120】
波長掃引光源111は、連続的に波長を変化させながら光を投光する。すなわち、波長掃引光源111から投光される光は、継続して波長が変化している。そして、波長掃引光源111から投光された光は、例えば、光カプラ等の光分岐部を介して、主干渉計112と副干渉計114とに供給される。
【0121】
主干渉計112は、光ファイバケーブル130の第1光ファイバ131に接続されており、波長掃引光源111から投光された光を、第1光ファイバ131を介してセンサヘッド120に供給し、さらに、センサヘッド120からの戻り光を第1フォトディテクタ113に導く。
【0122】
具体的には、主干渉計112から第1光ファイバ131を介してセンサヘッド120に導かれた光は、測定光として、例えば、センサヘッド120に配置されたコリメートレンズや対物レンズを介して、計測対象物Tに照射される。そして、当該計測対象物Tでの反射光がセンサヘッド120に戻る。
【0123】
また、主干渉計112から第1光ファイバ131を介してセンサヘッド120に導かれた光の一部は、参照光として、例えば、第1光ファイバ131の先端に設けられた参照面で反射される。そして、上述した測定光と当該参照光とが干渉することにより、測定光及び参照光の光路長差に応じた干渉光が生成される(第1干渉信号)。
【0124】
このように、主干渉計112は、波長掃引光源111から投光された光が供給され、センサヘッド120により計測対象物Tに照射して反射される測定光と、測定光とは少なくとも一部異なる光路を辿る参照光とに基づく第1干渉信号を生成する。なお、波長掃引光源111から投光された光が供給され、第1干渉信号を生成するということから、主干渉計112に第1光ファイバ131及びセンサヘッド120を含めて主干渉計と言うこともできる。
【0125】
第1フォトディテクタ113は、主干渉計112によって生成された第1干渉信号を受光し、処理部116は、後述する第2干渉信号に基づいて当該第1干渉信号を補正しつつ、計測対象物Tまでの距離を算出する。
【0126】
副干渉計114は、波長掃引光源111から投光された光が供給され、異なる光路長の光路を辿る2つの光に基づいて第2干渉信号を生成する。例えば、副干渉計114は、光カプラ等の光分岐部を備え、波長掃引光源111から投光された光を異なる光路長の光路に分岐させ、さらに、それらを合成させて干渉させることにより第2干渉信号を生成すればよい。
【0127】
そして、副干渉計114は、光ファイバケーブル130の第2光ファイバ132に接続されており、第2干渉信号を第2光ファイバ132に伝搬させた後、第2フォトディテクタ115に導く。具体的には、第2干渉信号は、第2光ファイバ132を伝搬し、反射部133で反射され、再び第2光ファイバ132を介して第2フォトディテクタ115によって受光される。なお、波長掃引光源111から投光された光が供給され、第2干渉信号を生成するということから、副干渉計114に第2光ファイバ132及び反射部133を含めて副干渉計と言うこともできる。
【0128】
処理部116は、主干渉計112によって生成されて第1フォトディテクタ113で受光した第1干渉信号を、副干渉計114によって生成されて第2フォトディテクタ115で受光した第2干渉信号に基づいて補正しつつ、計測対象物Tまでの距離を算出する。
【0129】
具体的には、波長掃引光源111の掃引時における波長の非線形性から、第1フォトディテクタ113で受光する第1干渉信号は、アナログ信号の波の間隔は等間隔ではない。このため、当該アナログ信号をAD変換する際に、例えば、補正信号(Kクロック)を用いて、波の間隔が等間隔になるようにリニアライズ補正するとよい。
【0130】
ここで、補正信号(Kクロック)は、補正信号生成部(
図5A、
図5B及び
図7等)によって、第2干渉信号に基づいて生成される。第2干渉信号は、掃引時における波長の非線形性から、第1干渉信号と同様に非線形であるため、補正信号生成部は、当該第2干渉信号に基づいて掃引時における波長の非線形性を把握し、第1干渉信号のアナログ信号を適切にAD変換(サンプリング)する補正信号(Kクロック)を生成することができる。
【0131】
なお、補正信号生成部において適切な補正信号(Kクロック)を生成するためには、第1フォトディテクタ113で受光する第1干渉信号の非線形性を、補正信号生成部で適切に把握される必要がある。このためには、第1干渉信号と第2干渉信号との特性(非線形性)を整合させておくことが好ましい。
【0132】
具体的には、光ファイバケーブル130において、第1光ファイバ131の光路長及び第2光ファイバ132の光路長を適切に設定する。波長掃引光源111から投光されてから第1干渉信号が第1フォトディテクタ113で受光されるまでの第1光路長と、波長掃引光源111から投光されてから第2フォトディテクタ115で受光されるまでの第2光路長とが略同一となるように、光ファイバケーブル130に配置される第1光ファイバ131及び第2光ファイバ132の長さが設定されるとよい。
【0133】
このように、主干渉計112を経由する第1光路長と副干渉計114を経由する第2光路長とが略同一となるように、光ファイバケーブル130において第1光ファイバ131及び第2光ファイバ132が配置されている。このため、例えば、主干渉計112に繋がるセンサヘッド120(光ファイバを含む)を付け替えたり、主干渉計112とセンサヘッド120とを接続する光ファイバを付け替えたりした場合であっても、副干渉計114に接続される光ファイバも適切に付け替えることができる。その結果、波長掃引光源111の掃引時における波長の非線形性を適切に補正して、高精度に計測対象物Tを計測することができる。
【0134】
[コントローラと光ファイバケーブルとの接続]
図11は、光ファイバケーブル130がコントローラ110に着脱可能である様子を示す図である。
図11に示されるように、コントローラ110側には、第1光コネクタC11及び第2光コネクタC12が備えられ、光ファイバケーブル130側には、第1光コネクタC31及び第2光コネクタC32が備えられている。
【0135】
コントローラ110側において、第1光コネクタC11は、主干渉計112に接続される光ファイバの端部であり、第2光コネクタC12は、副干渉計114に接続される光ファイバの端部である。
【0136】
光ファイバケーブル130側の第1光コネクタC31は、コントローラ110側の第1光コネクタC11と接続されることによって、主干渉計112と第1光ファイバ131とを接続する。
【0137】
光ファイバケーブル130側の第2光コネクタC32は、コントローラ110側の第2光コネクタC12と接続されることによって、副干渉計114と第2光ファイバ132とを接続する。
【0138】
このように、コントローラ110側の第1光コネクタC11及び第2光コネクタC12と、光ファイバケーブル130側の第1光コネクタC31及び第2光コネクタC32とによって、容易に、センサヘッド120に繋がる光ファイバを付け替えるとともに、副干渉計114に接続される光ファイバも適切に付け替えることができる。
【0139】
[主干渉計及び副干渉計の具体的構成]
図12は、主干渉計112及び副干渉計114の具体的な構成を模式的に示す光干渉測距センサ101の構成概要図である。
図12に示されるように、主干渉計112は、光カプラ112aを備え、副干渉計114は、第1光カプラ114aと、第2光カプラ114bと、サーキュレータ114cとを備える。
【0140】
主干渉計112では、波長掃引光源111から投光された光が供給され、光カプラ112aを介して光ファイバケーブル130の第1光ファイバ131を伝搬し、センサヘッド120に供給される。そして、センサヘッド120からの戻り光(測定光と参照光との第1干渉信号)は、第1光ファイバ131を伝搬し、光カプラ112aを介して第1フォトディテクタ113に導かれる。なお、光カプラ112aの残りのポートは、コアレスファイバ終端を備えた光ファイバに接続され、又は減衰器に接続されるとよい。
【0141】
副干渉計114では、波長掃引光源111から投光された光が供給され、第1光カプラ114aによって異なる光路長の光路を辿る2つの光に分岐され、その後、第2光カプラ114bによって合成されて、その光路長差に基づく第2干渉信号が生成される。当該第2干渉信号は、サーキュレータ114cを介して光ファイバケーブル130の第2光ファイバ132を伝搬し、反射部133で反射され、再び、第2光ファイバ132を伝搬し、サーキュレータ114cを介して第2フォトディテクタ115に導かれる。
【0142】
図13は、主干渉計112及び副干渉計114の他の具体的な構成を模式的に示す光干渉測距センサ102の構成概要図である。
図13に示されるように、主干渉計112は、光カプラ112aを備え、副干渉計114は、第1光カプラ114aと、第2光カプラ114bと、第3光カプラ114dとを備える。
【0143】
図13に示された光干渉測距センサ102は、
図12に示された光干渉測距センサ101と比べて、副干渉計114において、サーキュレータ114cに替えて第3光カプラ114dが配置されている点で異なる。
【0144】
副干渉計114では、波長掃引光源111から投光された光が供給され、第1光カプラ114aによって異なる光路長の光路を辿る2つの光に分岐され、その後、第2光カプラ114bによって合成されて、その光路長差に基づく第2干渉信号が生成される。当該第2干渉信号は、第3光カプラ114dを介して光ファイバケーブル130の第2光ファイバ132を伝搬し、反射部133で反射され、再び、第2光ファイバ132を伝搬し、第3光カプラ114dを介して第2フォトディテクタ115に導かれる。なお、第3光カプラ114dの残りのポートは、コアレスファイバ終端を備えた光ファイバに接続され、又は減衰器に接続されるとよい。
【0145】
[光ファイバケーブルにおける反射部の具体的構成]
図14は、光ファイバケーブル130における反射部133の具体的な構成を示す模式図である。
図14に示されるように、第2光ファイバ132の端部には、反射部133が形成されているが、当該反射部133を光ファイバケーブル130の内部に形成する(A)非貫通型、又は当該反射部133を光ファイバケーブル130の外部に形成する(B)貫通型とすることができる。
【0146】
(A)非貫通型の場合、光ファイバケーブル130の内部に反射部133が形成されるため、当該反射部133は破損し難く適切に保護されるというメリットがある。一方、(B)貫通型の場合、光ファイバケーブル130の外部に反射部133が形成されるため、第1光ファイバ131の光路長に合わせて第2光ファイバ132の光路長を調整しし易いというメリットがある。
【0147】
なお、第1光ファイバ131は、センサヘッド120に繋がるため、その接続部は、光ファイバケーブル130の外部に形成され、例えば、1%程度の反射コートとして構成されて、伝搬される光の反射を抑制することが好ましい。
【0148】
以上のように、本発明の一実施形態に係る光干渉測距センサ100(光干渉測距センサ101及び102を含む)によれば、光ファイバケーブル130は、主干渉計112に接続される第1光ファイバ131と、副干渉計114に接続される第2光ファイバ132とを備え、第1光ファイバ131の光路長及び第2光ファイバ132の光路長は、主干渉計112を経由する第1光路長と副干渉計114を経由する第2光路長とが略同一となるように設定されている。これにより、主干渉計112に接続される第1光ファイバ131に対応して、副干渉計114に適切な第2光ファイバ132を接続することができる。その結果、波長掃引の非線形を適切に補正して、高精度に計測対象物を計測することができる。
【0149】
なお、本実施形態では、光ファイバケーブル130において、第2光ファイバ132の端部に反射部133を形成していたが、第2光ファイバ132の構成は、これに限定されるものではなく、例えば、反射部133に替えて折り返し部を形成するようにしてもよい。
【0150】
図15は、第2光ファイバ132に折り返し部134が形成された光ファイバケーブル130を用いた場合における、主干渉計112及び副干渉計114の具体的な構成を模式的に示す光干渉測距センサ103の構成概要図である。
図15に示されるように、主干渉計112は、光カプラ112aを備え、副干渉計114は、第1光カプラ114aと、第2光カプラ114bとを備える。
【0151】
図15に示された光干渉測距センサ103は、
図12に示された光干渉測距センサ101及び
図13に示された光干渉測距センサ102と比べて、副干渉計114において、サーキュレータ114c及び第3光カプラ114dが配置されていない点で異なっている。
【0152】
副干渉計114では、波長掃引光源111から投光された光が供給され、第1光カプラ114aによって異なる光路長の光路を辿る2つの光に分岐され、その後、第2光カプラ114bによって合成されて、その光路長差に基づく第2干渉信号が生成される。当該第2干渉信号は、光ファイバケーブル130の第2光ファイバ132を伝搬し、折り返し部134を経由して、副干渉計114に戻って第2フォトディテクタ115に導かれる。
【0153】
光干渉測距センサ103では、副干渉計114から光ファイバケーブル130に出力される光路を形成するために、コントローラ110側と光ファイバケーブル130側とを接続する光コネクタ、及び光ファイバケーブル130から副干渉計114に戻る光路を形成するために、コントローラ110側と光ファイバケーブル130側とを接続する光コネクタを備えるとよい。これにより、副干渉計114において、
図12に示されたサーキュレータ114cや
図13に示された第3光カプラ114dを配置する必要がなく、簡易な構成とすることができ、コストの軽減にも繋がる。
【0154】
なお、ここでは、第2光ファイバ132に折り返し部134が形成される構成としたが、主干渉計112を経由する第1光路長と副干渉計114を経由する第2光路長とが略同一となるように設定されるように、第2光ファイバ132を形成して配置すれば、これに限定されるものではない。例えば、第2光ファイバ132を渦巻き状にしたり、蛇腹状にしたり、光ファイバケーブル130内を周回させるように配置したりしてもよい。
【0155】
さらに、光ファイバケーブル130の他の実施形態として、副干渉計114と接続される第2光ファイバを複数備えてもよい。
【0156】
図16は、副干渉計114と接続される第2光ファイバを複数備えた光ファイバケーブル130を用いた場合における、主干渉計112及び副干渉計114の具体的な構成を模式的に示す光干渉測距センサ104の構成概要図である。
図16に示されるように、主干渉計112は、光カプラ112aを備え、副干渉計114は、第1光カプラ114aと、第2光カプラ114bと、第3光カプラ114dとを備える。さらに、光ファイバケーブル130は、主干渉計112と接続される第1光ファイバ131、副干渉計114と接続される第2光ファイバ132a及び132bを備え、当該第2光ファイバ132a及び132bそれぞれの端部には、反射部133a及び133bが形成されている。
【0157】
図16に示された光干渉測距センサ104は、副干渉計114における第3光カプラ114dの2つのポートは、それぞれ光ファイバケーブル130の第2光ファイバ132a及び132bに接続されている。
【0158】
副干渉計114では、波長掃引光源111から投光された光が供給され、第1光カプラ114aによって異なる光路長の光路を辿る2つの光に分岐され、その後、第2光カプラ114bによって合成されて、その光路長差に基づく第2干渉信号が生成される。
【0159】
当該第2干渉信号は、第3光カプラ114dで分岐されて、それぞれ光ファイバケーブル130の第2光ファイバ132a及び132bを伝搬し、反射部133a及び133bで反射される。反射部133a及び133bで反射された第2干渉信号は、再び、それぞれ第2光ファイバ132a及び132bを伝搬し、第3光カプラ114dを介して第2フォトディテクタ115に導かれる。
【0160】
ここで、第2光ファイバ132a又は132bのうちいずれかの光路を伝搬した第2干渉信号を選択し、主干渉計112によって生成されて第1フォトディテクタ113で受光された第1干渉信号を適切にリニアライズ補正すればよい。
【0161】
このように、副干渉計114と接続される第2光ファイバを複数備えていれば、例えば、主干渉計112を経由する第1光路長に変更がある場合でも、副干渉計114を経由する第2光路長を適切に選択して対応することができる。
【0162】
なお、上述した光干渉測距センサ100~104は、シングルチャネルとして説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、波長掃引光源111から投光された光を、主干渉計112において複数の光カプラ等を用いて分岐させて、多段式の光干渉測距センサとして構成してもよい。本発明は、多段式の光干渉測距センサに適用することも可能である。
【0163】
図17は、多段式の光路が設けられた主干渉計112を用いた場合における、主干渉計112及び副干渉計114の具体的な構成を模式的に示す光干渉測距センサ105の構成概要図である。
図17に示されるように、主干渉計112は、第1段目の光カプラ112a~第3段目の光カプラ112cを備えることによって3つの光路を構成するとともに、第1段目のフォトディテクタ113a~第3段目のフォトディテクタ113cを備えている。さらに、主干渉計112は、当該3つの光路について、それぞれ光ファイバケーブル130に接続するために第1段目の光コネクタC11a~第3段目の光コネクタC11cを備えている。
【0164】
副干渉計114は、
図12に示された光干渉測距センサ101の構成と同様であってもよく、光ファイバケーブル130に接続するための第2光コネクタC12を備えている。
【0165】
光ファイバケーブル130は、3つの第1光ファイバ131a~131c、及び1つの第2光ファイバ132を備え、さらに、それぞれコントローラ110に接続するために3つの第1光コネクタC31a~C31c、及び1つの第2光コネクタC32を備えている。
【0166】
なお、コントローラ110側の3つの第1光コネクタC11a~C11cと、光ファイバケーブル130側の3つの第1光コネクタC31a~C31cとがそれぞれ接続され、コントローラ110側の第2光コネクタC12と、光ファイバケーブル130側の第2光コネクタC32とが接続される。
【0167】
主干渉計112における3つの光路それぞれにおいて生成された第1干渉信号は、第1段目のフォトディテクタ113a~第3段目のフォトディテクタ113cで受光され、処理部116は、副干渉計114によって生成される第2干渉信号に基づいて当該第1干渉信号を補正しつつ、計測対象物Tまでの距離を算出する。
【0168】
なお、本実施形態では、主干渉計112によって生成された第1干渉信号を、副干渉計114によって生成された第2干渉信号に基づくKクロック(補正信号生成部)を用いてリニアライズ補正する例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、主干渉計112によって生成された第1干渉信号から、副干渉計114によって生成された第2干渉信号のゼロクロス点に対応するのデータを抽出したり、第2干渉信号の連続位相の等分割点の対応するデータを抽出したりする等、ソフトウェア処理を用いて、第1干渉信号をリニアライズ補正してもよい。
【0169】
[干渉計の変形例]
上述した実施形態では、光干渉測距センサ100~105は、主干渉計112(光ファイバケーブル130及びセンサヘッド120を含む)において光ファイバの先端を参照面とすることで参照光を発生させるフィゾー型干渉計を用いていたが、干渉計は、これに限定されるものではない。
【0170】
図18は、測定光と参照光とを用いて干渉光を発生させる干渉計のバリエーションを示す図である。
図18(a)では、主干渉計112を経由する光路において、光ファイバの先端(端面)を参照面とする参照光と、センサヘッドから照射され計測対象物Tで反射される測定光との光路長差に基づいて干渉光が生成される。上述した実施形態に係る光干渉測距センサ100~105の主干渉計112の構成であり(フィゾー型干渉計)、当該参照面は、光ファイバと空気との屈折率の違いによって光が反射するように構成されていてもよい(フレネル反射)。また、光ファイバの先端に反射膜をコーティングしてもよいし、光ファイバの先端に無反射コーティングを施して、別途、レンズ面等の反射面を配置してもよい。
【0171】
図18(b)では、主干渉計112を経由する光路において、計測対象物Tに測定光を導く測定光路Lmと、参照光を導く参照光路Lrとを形成し、参照光路Lrの先には参照面が配置されている(マイケルソン型干渉計)。参照面は、光ファイバの先端に反射膜をコーティングしてもよいし、光ファイバの先端に無反射コーティングを施して、別途、ミラー等を配置してもよい。当該構成では、測定光路Lmの光路長と参照光路Lrの光路長とで光路長差を設けることによって干渉光が生成される。
【0172】
図18(c)では、主干渉計112を経由する光路において、計測対象物Tに測定光を導く測定光路Lmと、参照光を導く参照光路Lrとを形成し、参照光路Lrには、バランスディテクタが配置されている(マッハツェンダ型干渉計)。当該構成では、測定光路Lmと参照光路Lrの光路長とで光路長差を設けることによって、干渉光が生成される。
【0173】
このように、主干渉計は、実施形態で説明したフィゾー型干渉計に限定されるものではなく、例えば、マイケルソン型干渉計やマッハツェンダ型干渉計であってもよいし、測定光と参照光との光路長差を設定することによって干渉光を発生させることができれば、どのような干渉計を適用してもよいし、これらの組み合わせ等やその他の構成を適用してもよい。
【0174】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【0175】
[附記]
波長掃引光源(111)を用いて計測対象物を計測するための第1干渉信号を生成する主干渉計(112)と、前記第1干渉信号の非線形性を補正するための第2干渉信号を生成する副干渉計(114)とを有する光干渉測距センサ(100)に用いられる光ファイバケーブル(130)であって、
前記主干渉計(112)に接続されることで当該主干渉計(112)から入力された光をセンサヘッド(120)に導くとともに、当該センサヘッド(120)からの光を当該主干渉計(112)に出力する第1光ファイバ(131)と、
前記副干渉計(114)に接続されることで当該副干渉計(114)から入力された光を伝搬させて当該副干渉計(114)に出力する第2光ファイバ(132)と、を備え、
前記第1光ファイバ(131)の光路長及び前記第2光ファイバ(132)の光路長は、前記波長掃引光源(111)から投光されてから前記主干渉計(112)における受光部(113)で受光されるまでの第1光路長と、前記波長掃引光源(111)から投光されてから前記副干渉計(114)における受光部(115)で受光されるまでの第2光路長とが略同一となるように設定される、
光ファイバケーブル(130)。
【符号の説明】
【0176】
1…センサシステム、10…変位センサ、11…制御機器、12…制御信号入力用センサ、13…外部接続機器、20…センサヘッド、21…対物レンズ、22a~22c…コリメートレンズ、23…レンズホルダ、24…光ファイバアレイ、30…コントローラ、31…表示部、32…設定部、33…外部インタフェース(I/F)部、34…光ファイバ接続部、35…外部記憶部、36…計測処理部、40…光ファイバ、51…波長掃引光源、52…光増幅器、53,53a~53b…アイソレータ、54,54a~54e…光カプラ、55…減衰器、56a~56c…受光素子、58…AD変換部、59…処理部、60…バランスディテクタ、61…補正信号生成部、71a~71e…受光素子、72a~72c…増幅回路、74a~74c…AD変換部、75…処理部、76…差動増幅回路、77…補正信号生成部、100~105…光干渉測距センサ、110…コントローラ、111…波長掃引光源、112…主干渉計、112a~112c…光カプラ、113,113a~113c…第1フォトディテクタ(受光部)、114…副干渉計、114a,114b,114d…光カプラ、114c…サーキュレータ、115…第2フォトディテクタ(受光部)、116…処理部、120,120a~120c…センサヘッド、130…光ファイバケーブル、131,131a~131c…第1光ファイバ、132,132a,132b…第2光ファイバ、133,133a,133b…反射部、134…折り返し部、C11,C11a~C11c…第1光コネクタ、C12…第2光コネクタ、C31,C31a~C31c…第1光コネクタ、C32…第2光コネクタ、Lm…測定光路、Lr…参照光路、T…計測対象物