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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048618
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28F 3/08 20060101AFI20240402BHJP
   F28D 9/00 20060101ALI20240402BHJP
   C01B 32/50 20170101ALN20240402BHJP
【FI】
F28F3/08 301A
F28D9/00
C01B32/50 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154633
(22)【出願日】2022-09-28
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構、「環境調和型プロセス技術の開発/水素還元等プロセス技術の開発(フェーズII-STEP1)」委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100132230
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100198269
【弁理士】
【氏名又は名称】久本 秀治
(74)【代理人】
【識別番号】100088203
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100100192
【弁理士】
【氏名又は名称】原 克己
(74)【代理人】
【識別番号】100226894
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 夏詩子
(72)【発明者】
【氏名】小林 一暁
(72)【発明者】
【氏名】小水流 広行
(72)【発明者】
【氏名】関屋 政洋
【テーマコード(参考)】
3L103
4G146
【Fターム(参考)】
3L103AA37
4G146JA02
4G146JB09
4G146JC09
4G146JC28
4G146JC29
4G146JC35
4G146JC37
(57)【要約】
【課題】工場や製鉄所等で発生する排ガスから大量の熱を回収するのに適して、熱交換効率に優れた高性能な熱交換器を提供する。
【解決手段】熱を有した気体と熱回収媒体である液体との熱交換を行う熱交換コアと、熱交換コアへ気体を導入する気体導入口と、熱交換コアから気体を排出する気体排出口と、熱交換コアへ液体を導入する液体導入口と、熱交換コアから液体を排出する液体排出口とを備えた熱交換器であって、前記熱交換コアは、ストレート型コルゲートフィンと、オフセット型コルゲートフィンとが、仕切り板を介して交互に複数積層されており、気体導入口から導入された気体は、ストレート型コルゲートフィンに対して順方向に流れて気体排出口から排出され、液体導入口から導入された液体は、オフセット型コルゲートフィンに対して交差方向に流れて液体排出口から排出される熱交換器である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱を有した気体と熱回収媒体である液体との熱交換を行う熱交換コアと、
熱交換コアへ気体を導入する気体導入口と、
熱交換コアから気体を排出する気体排出口と、
熱交換コアへ液体を導入する液体導入口と、
熱交換コアから液体を排出する液体排出口と、
を備えた熱交換器であって、
前記熱交換コアは、第1の方向に対して山部と谷部とが交互に形成されると共に、第1の方向と直交する第2の方向に対して山部と谷部がそれぞれ連続して連なるストレート型コルゲートフィンと、
第1の方向に対して山部と谷部とが交互に形成されると共に、第1の方向と直交する第2の方向に対して所定のピッチで山部の一部が谷部側に迫り出したオフセット部を有するオフセット型コルゲートフィンとが、仕切り板を介して交互に複数積層されており、
気体導入口から導入された気体は、ストレート型コルゲートフィンの第2の方向に沿って流れて、気体排出口から排出され、
液体導入口から導入された液体は、オフセット型コルゲートフィンの第1の方向に沿って流れて、液体排出口から排出されることを特徴とする、熱交換器。
【請求項2】
前記熱交換コアは、ストレート型コルゲートフィンの第2の方向とオフセット型コルゲートフィンの第1の方向とが揃うようにして、これらが交互に複数積層されている、請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記気体が、排熱温度400℃以下の低品位排ガスである、請求項1又は2に記載の熱交換器。
【請求項4】
化学吸収法によりCOを吸収させたCO吸収液を加熱するための熱源回収に用いられるものである、請求項1又は2に記載の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、熱を有した気体と熱回収媒体である液体との熱交換を行う熱交換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化に対する取り組みとして二酸化炭素(CO2)の削減が求められている。COの排出抑制や省エネ技術の開発といった抜本的な対策に加えて、排出されたCOを分離回収する技術が検討されており、例えば、鉄鋼プロセスにおいて大気放散されるようなCOへの対策として重要になる。
【0003】
COを分離回収する技術として、化学吸収法や物理吸着法が知られている。このうち、化学吸収法では、アミン等のアルカリ性水溶液(化学吸収液)とCO含有ガスとを接触させ、化学吸収液にCOを選択的に吸収させた後、COを吸収したCO吸収液を吸収液再生設備である再生塔で加熱して、高純度のCOを分離回収する。また、物理吸着法では、吸着剤にCOを選択的に吸着させた後、減圧操作によって吸着させたCOを高純度で分離回収する。
【0004】
現在、環境調和型プロセス技術の開発/水素還元等プロセス技術の開発(COURSE 50)において、COの分離回収に関しては、所定の粗鋼生産量の一貫製鉄所をモデルとしながら、そこから放散されるCOの回収目標量が随時定められている。また、化学吸収法によるCOの分離回収では、例えば、これまでの研究開発によりCOの回収に必要なCO吸収液の加熱温度の低温化が実現され、115℃の飽和蒸気を用いることが可能になっている。
【0005】
ところが、化学吸収法でのCOの回収のためにCO吸収液を加熱するには、極めて大量の熱が必要になる。そのために化石燃料を用いたのでは、地球温暖化対策にはならない。また、物理吸着法の場合にも、減圧操作に必要な真空ポンプの駆動等に電力が必要になるが、その電力を従来の方法で供給するのでは解決策にならない。そのため、これらのエネルギーを賄うために、未利用排熱の活用とそれを安価に行うことができる方法の実現とが求められている。
【0006】
例えば、特許文献1には、熱を有した気体と熱回収媒体である液体との熱交換を行う熱交換器に係る発明が記載されている。すなわち、気体と液体との熱交換を行う熱交換コアに対して液体を分配して導入する分配部と、該熱交換コアから液体を集合させる集合部とを備えて、これらの分配部と集合部とが所定方向から見て熱交換コアと重なるようにし、また、分配部に液体を導入する導入ヘッダと、集合部から液体を排出する排出ヘッダとは、熱交換コアを挟んで反対側に位置して、尚且つ、所定方向から見てこれらが重ならないようにし、更には、分配部及び集合部の形状について、液体の導入・排出方向に関して分配部は断面積が単調減少する形状とし、集合部は断面積が単調増加する形状となるようにした熱交換器が提案されている。
【0007】
一般に、工場や製鉄所等で発生する排ガスから熱回収を行う場合、排ガスは体積流量が多く、送風のためのブロア動力も大きくなってしまうことから、排ガス側の圧力損失をできるだけ小さくするのが有利である。一方で、熱回収媒体となる液体側は、熱交換コアへの導入や排出において分配/集合が必要になり、これらは位置的に排ガスの流れと重なることから、分配部や集合部はできるだけコンパクトな構造にするのが望ましい。
【0008】
上述した特許文献1に記載の熱交換器ではこれらが考慮されており、また、例えば400℃以下といった比較的低温の排ガスから熱回収を行うのに適したものとなっている。しかし、大量の熱を排ガスから回収するためには、更なる高性能な熱交換器についての検討が必要になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2017-207237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような状況のもと、本発明者らは、プレートフィン型の熱交換器に着目した。すなわち、気体の熱を液体に移動させるのに用いられる熱交換器として、一般には、フィンチューブ型の熱交換器とプレートフィン型の熱交換器とが知られているところ、フィンチューブ型の熱交換器は液体の流量均一性を得やすいものの、熱交換効率の点で劣る。これに対して、プレートフィン型では、液体の流量均一性を得るのが難しいものの、熱交換効率の点では有利であると考えられる。気体と液体との熱交換においては、これらの流体が均等に流動したときに、その熱交換器は最大効率を発揮する。すなわち、交換熱量が最も大きくなり、高効率な熱交換が達成できることから、流量均一性を得ることは重要な課題である。
【0011】
そこで、本発明者らは、プレートフィン型の熱交換器について、特に、気体と液体との熱交換を行う熱交換コアに関して、気体を流すコルゲートフィンと液体を流すコルゲートフィンとを仕切り板を介して交互に複数積層して形成すると共に、気体を流すコルゲートフィンをストレート型にし、液体を流すコルゲートフィンをオフセット型にして、尚且つ、オフセット型コルゲートフィンに対しては、いわゆる順方向であるコルゲートフィンの山部からなる流路、及び谷部からなる流路に沿ってそれぞれ液体を流すのではなく、これらの流路と直交する交差方向に液体を流すようにすることで、液体の流量均一性を高めながら、熱交換効率に優れたものが得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
したがって、本発明の目的は、工場や製鉄所等で発生する排ガスから大量の熱を回収するのに適して、熱交換効率に優れた高性能な熱交換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち、本発明の要旨は次のとおりである。
(1)熱を有した気体と熱回収媒体である液体との熱交換を行う熱交換コアと、
熱交換コアへ気体を導入する気体導入口と、
熱交換コアから気体を排出する気体排出口と、
熱交換コアへ液体を導入する液体導入口と、
熱交換コアから液体を排出する液体排出口と、
を備えた熱交換器であって、
前記熱交換コアは、第1の方向に対して山部と谷部とが交互に形成されると共に、第1の方向と直交する第2の方向に対して山部と谷部がそれぞれ連続して連なるストレート型コルゲートフィンと、
第1の方向に対して山部と谷部とが交互に形成されると共に、第1の方向と直交する第2の方向に対して所定のピッチで山部の一部が谷部側に迫り出したオフセット部を有するオフセット型コルゲートフィンとが、仕切り板を介して交互に複数積層されており、
気体導入口から導入された気体は、ストレート型コルゲートフィンの第2の方向に沿って流れて、気体排出口から排出され、
液体導入口から導入された液体は、オフセット型コルゲートフィンの第1の方向に沿って流れて、液体排出口から排出されることを特徴とする、熱交換器。
(2)前記熱交換コアは、ストレート型コルゲートフィンの第2の方向とオフセット型コルゲートフィンの第1の方向とが揃うようにして、これらが交互に複数積層されている、(1)に記載の熱交換器。
(3)前記気体が、排熱温度400℃以下の低品位排ガスである、(1)又は(2)に記載の熱交換器。
(4)化学吸収法によりCOを吸収させたCO吸収液を加熱するための熱源回収に用いられるものである、(1)又は(2)に記載の熱交換器。
なお、オフセット型コルゲートフィンは、単にオフセットフィンやセレートフィンと称されることがあり、また、ストレート型コルゲートフィンは、単にコルゲートフィンやストレートフィンと称されるが、本発明では、これらを明確に区別するために、オフセット型、ストレート型を付すものとする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、排ガスから大量の熱を回収するのに適しており、熱交換効率に優れて高性能な熱交換器を実現することができる。そのため、例えば、鉄鋼プロセスにおいて大気放散されるCOを化学吸収法で分離回収するにあたり、COを吸収したCO吸収液を加熱するような場合に必要となる大量の熱を比較的低温の排ガスから回収することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1(a)は、ストレート型コルゲートフィンを説明する平面図であり、図1(b)は、そのストレート型コルゲートフィンのX-X断面図である。
図2図2(a)は、オフセット型コルゲートフィンを説明する平面図であり、図2(b)は、そのオフセット型コルゲートフィンのX-X断面図である。
図3図3は、熱交換コアを説明するための分解斜視図である。
図4図4は、熱交換コアを説明するための斜視図である。
図5図5は、熱交換器を説明するための斜視図である。
図6図6は、熱交換コアにおけるストレート型コルゲートフィンと気体の流れを説明するための平面模式図である。
図7図7は、熱交換コアにおけるオフセット型コルゲートフィンと液体の流れを説明するための平面模式図である。
図8図8(a)は、オフセット型コルゲートフィンに対して交差方向に液体が流れる様子を説明するための平面模式図であり、図8(b)は、図8(a)に液体の流れを書き加えた模式図である。
図9図9(a)は、オフセット型コルゲートフィンに対して順方向に液体が流れる様子を説明するための平面模式図であり、図9(b)は、図9(a)に液体の流れを書き加えた模式図である。
図10図10は、オフセット型コルゲートフィンの液体入口側に設ける分配部と液体出口側に設ける集合部の変形例を説明するための平面模式図である。
図11図11は、オフセット型コルゲートフィンの液体入口側に設ける分配部と液体出口側に設ける集合部の更なる変形例を説明するための平面模式図である。
図12図12は、実施例における数値流体解析に用いたモデル熱交換コアと流体の流れを説明するための断面模式図である。
図13図13は、数値流体解析に用いたストレート型コルゲートフィンを示す断面模式図である。
図14図14(a)は、数値流体解析に用いたオフセット型コルゲートフィンを示す断面模式図であり、図14(b)は平面模式図である。
図15図15は、オフセット型コルゲートフィンの設置方向による伝熱性能への影響を示す結果である(数値流体解析)。
図16図16は、オフセット型コルゲートフィンの設置方向による水側圧力損失への影響を示す結果である(数値流体解析)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を用いながら、本発明について詳しく説明する。
本発明の熱交換器は、熱を有した気体と熱回収媒体である液体との熱交換を行う熱交換コアと、熱交換コアへ気体を導入する気体導入口と、熱交換コアから気体を排出する気体排出口と、熱交換コアへ液体を導入する液体導入口と、熱交換コアから液体を排出する液体排出口とを備えて、
前記熱交換コアは、第1の方向に対して山部と谷部とが交互に形成されると共に、第1の方向と直交する第2の方向に対して山部と谷部がそれぞれ連続して連なるストレート型コルゲートフィンと、第1の方向に対して山部と谷部とが交互に形成されると共に、第1の方向と直交する第2の方向に対して所定のピッチで山部の一部が谷部側に迫り出したオフセット部を有するオフセット型コルゲートフィンとが、仕切り板を介して交互に複数積層されており、気体導入口から導入された気体は、ストレート型コルゲートフィンの第2の方向に沿って流れて、気体排出口から排出され、液体導入口から導入された液体は、オフセット型コルゲートフィンの第1の方向に沿って流れて、液体排出口から排出されるものである。
【0017】
一般に、熱交換コアにおいて液体の均一な流量配分を得るためには、その基本的な考え方として、熱交換コアの内部やその出入口で高い圧力損失を掛けることである。このうち、熱交換コアの内部で圧力損失を高めるには、例えば、熱交換コアの内部に障害物を多く置いたり、流路幅を狭めたりすることが考えられるが、それでは熱交換コアの内部における空隙率が下がり、それにより液体の流速が上がるため、熱交換能力自体が低下するおそれがある。一方で、熱交換コアの出入口に追加の部材を設置するなどして圧力損失を高めることが考えられるが、そのような部材は熱交換に直接関与するものではないため、コスト増を招いてしまう。また、追加の部材によって熱交換器の全長が伸びれば、気体の圧力損失を高めてしまうことにもなる。特に、工場等の排ガスを熱回収の対象とする場合には、多量のガスを熱交換コアに導入するために圧力損失は低い方がよく、ブロワ等の動力コストも余計に掛からないようにするのが望ましい。
【0018】
そこで、本発明における熱交換器では、熱を有した気体はストレート型のコルゲートフィンに流すようにし、熱回収媒体である液体はオフセット型のコルゲートフィンに流すようにして、仕切り板を介してこれらのコルゲートフィンを交互に複数積層させて熱交換コアを形成する。すなわち、仕切り板を介してストレート型コルゲートフィンとオフセット型のコルゲートフィンとを積層し、これを一組として複数組を有するようにして、仕切り板の外周部分同士を溶接等により接合して熱交換コアとする。
【0019】
一般に、コルゲートフィンは、ストレート型、オフセット型共に、アルミニウムや銅、ステンレス、チタン、ニッケル系耐熱合金等の薄い金属板をプレス加工して波型に製作されるものである。そのため、流路としての空隙率を大きくすることが可能であり、気体や液体の流速を低く保つことができる。このうち、オフセット型コルゲートフィンは、コルゲートフィンのなかでも伝熱促進能力が高い反面、圧力損失も大きくなる。そのため、その適用には十分な見極めが必要であるが、本発明では、高い熱交換能力を有する熱交換器を実現すべく、気体はストレート型コルゲートフィンに流すようにし、液体はオフセット型コルゲートフィンに流すようにした。
【0020】
ここで、オフセット型コルゲートフィンに流す液体の方向について、本発明では、オフセットを有したコルゲートフィンの山部からなる流路、及び谷部からなる流路に沿った通常の方向、いわゆる順方向に流すのではなく、これらの流路と直交するように90度回転させた方向、いわゆる交差方向に液体を流すようにする。交差方向に液体が流れるようにすると、オフセット型コルゲートフィンは液体に対する大きな流動抵抗となり、圧力損失を更に大きくすることができると共に、このときの熱交換器としての伝熱性能は維持できる。その際、熱交換コアに使用するオフセット型コルゲートフィンは、順方向に液体を流す場合と同じものであるため、液体の流れる方向が90度回転しても空隙率に違いはなく、液体の流速も変わらない。また、オフセット型コルゲートフィンの設置向きを90度回転させて熱交換コアの内部の圧力損失をより高めることから、部材の追加に伴うコストの増加や設置スペースの追加等は特に必要とならない。
【0021】
また、気体は、ストレート型コルゲートフィンの山部からなる流路と谷部からなる流路とに沿った順方向に流すようにする。工場や製鉄所等で発生する大量の排ガスから熱を回収するような場合を想定して、熱交換コアに流す排ガスは圧力損失をできるだけ小さくして、排ガスブロワ等の動力コストを抑えるようにする必要がある。また、排ガスのなかに含まれる油分等の成分がストレート型コルゲートフィンに付着するのをできるだけ防ぐことも重要である。
【0022】
すなわち、本発明で用いるストレート型コルゲートフィンは、図1(a)、(b)に示したように、このストレート型コルゲートフィン1を平面視したときに、任意に選ばれる第1の方向に山部2と谷部3とが交互に形成されると共に、この第1の方向と直交する第2の方向には、山部2と谷部3がそれぞれ連続して形成されて、流路を成したものである。
【0023】
一方、オフセット型コルゲートフィンについては、図2(a)、(b)に示したように、このオフセット型コルゲートフィン2を平面視したときに、任意に選ばれる第1の方向に山部5と谷部6とが交互に形成されると共に、この第1の方向と直交する第2の方向には、所定のピッチdで山部5の一部が谷部6側に迫り出した(切り出された)オフセット部7を有する。これは、谷部6に着目すれば、所定のピッチdで谷部6の一部が山部5側に迫り出した(切り出された)オフセット部8を有するとも言える。つまり、オフセット型コルゲートフィン2は、ストレート型コルゲートフィン1とは違い、第2の方向に対して、山部5と谷部6はオフセット部7、8の部分で不連続となる流路を成している。
【0024】
そして、本発明における熱交換器では、図3に示したように、ストレート型コルゲートフィン1とオフセット型コルゲートフィン2とを仕切り板9を介して交互に複数積層して熱交換コア10を形成する。その際、ストレート型、オフセット型の各コルゲートフィンの周囲を取り囲む位置やその一部に耳部11を設けて、仕切り板9同士の接合に用いたり、図示外のスペーサやガスケット等を挟むために用いるようにしてもよい。
【0025】
この熱交換コア10に対して、熱を有した気体と熱回収媒体である液体とを導入、排出するにあたり、本発明では特に制限はないが、熱交換器の構造をコンパクトにしたり、気体を多量に導入するのに適しているなどの観点から、好ましくは、図4に示したように、熱交換コア10のある側面から気体を導入し、気体の導入側とは反対側から気体を排出して、また、残りの側面のひとつから液体を導入し、液体の導入側とは反対側から液体を排出するようにするのがよい。その際、液体の導入と排出については、熱交換コア10にそれぞれ導入ヘッダ12、排出ヘッダ13を設けて、これらを介してオフセット型コルゲートフィンに対して液体を導入すると共に、オフセット型コルゲートフィンから液体を排出するようにしてもよい。
【0026】
一方、気体の導入と排出については、好ましくは、図5に示したように、熱交換コア10の側面に気体導入口となる導入角ダクト14を設けて、大量の気体が導入できるようにすると共に、その反対側に気体排出口となる排出角ダクト15を設けて、気体を排出するようにするのがよい。また、図5に示した熱交換器では、熱交換コア10に液体を導入するための導入ヘッダに接続される液体導入口16と、同じく排出ヘッダに接続される液体排出口17とが設けられている。
【0027】
図6に示したように、本発明では、気体導入口となる導入角ダクト14から導入された気体は、ストレート型コルゲートフィン1の第2の方向に沿って流れて、気体排出口から排出されるようにする。すなわち、上下に仕切り板9が設けられたストレート型コルゲートフィン1の山部3と谷部4により形成された流路に沿って平行に(順方向に)気体が流れるようにすればよい。
【0028】
一方、図7に示したように、液体導入口16から導入された液体は、オフセット型コルゲートフィン2の第1の方向に沿って流れて液体排出口17から排出されるようにする。すなわち、上下に仕切り板9が設けられたオフセット型コルゲートフィン2の山部5と谷部6により形成された流路に沿って平行に液体を流すのではなく、山部5のオフセット部7を通じて流れ込んだ液体が谷部6のオフセット部8を通じて流れ出るようにしながら(谷部6のオフセット部8を通じて流れ込んだ液体が山部5のオフセット部7を通じて流れ出る場合もある)、山部5と谷部6とを縫うようにして液体が流れるようにする。この様子(交差方向の液体の流れ)を模式的に表したものが図8である。なお、参考までに、オフセット型コルゲートフィンの山部と谷部に沿って液体を流す様子(順方向の液体の流れ)を模式的に表したものが図9である。
【0029】
また、本発明においては、先の図7に示したように、液体導入口から導入された液体が導入ヘッダ12を介してオフセット型コルゲートフィン2の面内方向に均一に分配して導入されるように、オフセット型コルゲートフィン2の液体入口側に分配部18を設けるのがよい。同じく、オフセット型コルゲートフィン2から排出された液体をまとめて排出ヘッダ13に送り出すことができるように、オフセット型コルゲートフィン2の液体出口側に集合部19を設けるのがよい。
【0030】
その際、分配部18や集合部19の形状は、図7に示したように矩形にしてもよく、或いは、それ以外の形状にすることもできる。例えば、分配部18や集合部19によるオフセット型コルゲートフィン2における流量均一性を高めるために、図10に示したように、分配部18については、導入ヘッダ12からの液体の導入方向に関して、導入ヘッダ側からの流路の断面積が単調減少するような形状を有するようにしてもよく、集合部19については、排出ヘッダ13からの液体の排出方向に関して、排出ヘッダ側へ流路の断面積が単調増加するような形状を有するようにしてもよい。また、分配部18と集合部19の向きを図10の例とは逆にして、すなわち、図11に示したように、分配部18及び集合部19をそれぞれオフセット型コルゲートフィン2の端部領域内に設けることで、オフセット型コルゲートフィン2の第1の方向の全長を保ちつつ、熱交換器がよりコンパクトな構造になるようにしてもよい。
【0031】
また、本発明では、先の図4~7等で示した熱交換器において、詳しくは、分配部18と集合部19は、所定方向Yから見て、熱交換器コア10と重なる部分に位置して、導入ヘッダ12及び排出ヘッダ13は、所定方向Yから見て、熱交換器コア10の外側に位置し、導入ヘッダ12は、熱交換器コア10を挟んで排出ヘッダ13と反対側に位置して、その際、熱交換コアは、ストレート型コルゲートフィンの第2の方向とオフセット型コルゲートフィンの第1の方向とが揃うようにして積層される。すなわち、ストレート型コルゲートフィンとオフセット型コルゲートフィンとが交互に複数積層してなる熱交換コアの内部で気体が流れる方向(図6)と液体が流れる方向(図7)とが同一直線上で揃うときに(双方の流体の向きは正、負で逆になる)、ストレート型コルゲートフィンの第2の方向とオフセット型コルゲートフィンの第1の方向とが上下で揃うことになる。なお、ここでの所定方向Yは、例えば気体の流れる方向である。
【0032】
本発明における熱交換コアでは、気体導入口から導入された気体は、ストレート型コルゲートフィンに対して順方向に流れて気体排出口から排出され、液体導入口から導入された液体は、オフセット型コルゲートフィンに対して交差方向に流れて液体排出口から排出される。特に、オフセット型コルゲートフィンの交差方向に液体を流すようにすることで、熱交換コア内部での液体の流量均一性を高めることができて、熱交換効率に優れた高性能な熱交換器が実現できる。そのため、本発明における熱交換器は、工場や製鉄所等で排出される排ガスから大量の熱を回収するのに適していることから、例えば、加熱炉の排ガス、焼成炉の排ガス、発電所やボイラーの排ガス、コークス炉の排ガス、焼成された高温の焼結鉱を冷却するクーラーの排ガス等といった排熱温度400℃以下の低品位排ガスを用いて、好ましくは排熱温度が150℃以上300℃以下の排ガスを用いて、化学吸収法においてCOを吸収したCO吸収液を加熱する際に好適に用いることができる。
【実施例0033】
〔熱交換特性の評価〕
ストレート型コルゲートフィンとオフセット型コルゲートフィンとを用いたモデル熱交換コアについて、以下のように数値流体解析による性能評価を行った。
すなわち、解析には汎用流体解析ソフトウェアであるAnsys Fluent(Ansys社製)を用いた。この解析では、図12に示したように、オフセット型コルゲートフィン2の上下に仕切り板9を介してストレート型コルゲートフィン1を積層させた長さ150mmのモデル熱交換コアに対して、気体として空気を流し、液体として水を流すとして、また、これらを流すにあたり、空気側はモデル熱交換コアの前後に126mmの助走区間及び後流区間を設け、水側は同じく63mmの助走区間及び後流区間を設けて、入口及び出口境界が解析結果に与える影響を低減するようにした。その際、これらの助走区間及び後流区間においては空気側と水側とを隔てるセパレータ20は断熱として、両流体の熱交換はモデル熱交換コアのみで行われるようにした。また、モデル熱交換コアに流す水と空気の流れは対向するようにした。
【0034】
また、この解析では、高さ方向に周期性があると考えて、オフセット型コルゲートフィン2に仕切り板9を介して積層されたストレート型コルゲートフィン1を含む1周期の高さ5mm、すなわち、ストレート型コルゲートフィン1の高さ3mm+仕切り板9の高さ0.5mm+オフセット型コルゲートフィン2の高さ1mm+仕切り板9の高さ0.5mmを解析領域とした(数値解析上、実際には、図12に示したように、ストレート型コルゲートフィン1の高さを1/2に分割して、オフセット型コルゲートフィン2の上下に位置するとして計算した。)。また、幅方向についても同様に周期性があると考えられることから、解析領域は幅6mmとした。ここで、モデル熱交換コアに使用したストレート型コルゲートフィンを図13に、オフセット型コルゲートフィンを図14にそれぞれ示す。これらの材質はいずれもSUS316Lとした。また、仕切り板9は厚さ0.5mmのSUS316Lとした。
【0035】
そして、この解析におけるモデル熱交換コアでは、ストレート型コルゲートフィンに対する空気の流れは順方向であるとし、一方のオフセット型コルゲートフィンは、水の流れる向きに対して順方向に設置した場合と交差方向に設置した場合との2種類として、それぞれのモデル熱交換コアで交換される熱量と各流体の圧力損失を評価した。なお、解析において、流れはレイノルズ数が小さいことから層流とした。また、重力による熱対流の影響は無視した。更に、水は100℃を超えても沸騰することがない加圧されたものを想定した。
【0036】
図15では、モデル熱交換コアでのオフセット型コルゲートフィンの設置方向が伝熱性能に及ぼす影響について示している。この図15のグラフは、モデル熱交換コアの単位断面積当りの水流量に対する単位伝熱面積当りの交換熱量を表しており、これから分かるように、オフセット型コルゲートフィンの設置方向による伝熱性能の違いは見られない。すなわち、伝熱性能の観点から、オフセット型コルゲートフィンの交差方向の設置での悪影響は発生しないことが確認された。
【0037】
また、図16には、同じくオフセット型コルゲートフィンの設置方向が水側圧力損失に及ぼす影響が示されている。図16のグラフでは、モデル熱交換コアの単位断面積当りの水流量に対する水側の単位長さ当りの圧力損失を表している。これより、オフセット型コルゲートフィンの設置方向が交差方向になると、順方向の場合の圧力損失より5~10倍程度大きくなることが分かる。
【0038】
〔流量均一性の評価〕
特許文献1(特開2017-207237号公報)を参考に、本発明における熱交換コアのオフセット型コルゲートフィンでの圧力損失(水側圧力損失)の上昇が流量均一性に及ぼす影響について評価した。
【0039】
先ず、本発明で対象としている熱交換器と特許文献1で対象としている熱交換は、どちらもプレートフィン型の熱交換器である。しかも、図4~7等で示したように、分配部18と集合部19は、所定方向Yから見て、熱交換器コア10と重なる部分に位置し、また、導入ヘッダ12及び排出ヘッダ13は、所定方向Yから見て、熱交換器コア10の外側に位置して、導入ヘッダ12は、熱交換器コア10を挟んで排出ヘッダ13と反対側に位置する場合、熱交換コア10における気体の導入方向に対して垂直に液体が供給されて分配部18を通過し、熱交換コア10の内部では気体の流れ方向に対向して液体が流れて、その液体は集合部19を通過した後、気体の流れ方向に対して垂直に排出される。そのため、両者は共通することから、ここでは特許文献1における評価方法を適用した。
【0040】
次に、特許文献1においては、分配部と集合部の形状や熱交換コアの長さを変化させた際に、これら分配部、集合部の圧力損失や熱交換コアにおける液体側の圧力損失がどのように変化するかを調査し、圧力損失の比(圧損の比)を求めて、この圧損の比と熱交換コアにおける液体側の流量(流速)偏差との関係性を得ている。そこで、特許文献1と同様の定義に基づき、本発明に係る熱交換コアでの水側の流量偏差を評価する。
【0041】
すなわち、圧損の比は、dPd=Pdin-Pdout、dPc=Pcin-Pcoutとしたときに、「圧損の比=(dPd-dPc)/dPc」で与えられる。このときの式中の用語の意味は次のとおりである。また、本発明では、これらに加えてdPd1、dPd2の定義を追加する。
din:分配部18への導入時の水の圧力
cin:熱交換コア10への導入時の水の圧力
cout:熱交換コア10からの排出時の水の圧力
dout:集合部19からの排出時の水の圧力
dPd1:分配部18の圧力損失(=Pdin-Pcin
dPd2:集合部19の圧力損失(=Pcout-Pdout
【0042】
特許文献1におけるdPdは、分配部、熱交換コア及び集合部の圧力損失を合計したものであることから、次のように表現できる。
dPd=Pdin-Pdout=dPd1+dPc+dPd2
つまり、特許文献1における圧損の比は以下のように表すことができる。
圧損の比=(dPd-dPc)/dPc
=(dPd1+dPc+dPd2-dPc)/dPc
=(dPd1+dPd2)/dPc
したがって、ある形状を有する分配部及び集合部において、すなわちdPd1及びdPd2が変化しない状態において、熱交換コアの圧力損失dPcが10倍になれば、圧損の比は0.1倍になることが分かる。
【0043】
ここで、特許文献1の図15のグラフによれば、圧損の比が0.1倍になると、辺長さの比(先の図10で示すような分配部18で水が導入される辺の長さとそれに対向する辺の長さとの比、もしくは集合部19で水が集合される辺の長さとそれに対抗する辺の長さとの比)によらずに、流量偏差がおおよそ0.1倍になることが分かる。つまり、分配部と集合部の形状によらず、それらが同じものを使う限り、圧損の比が0.1倍になれば、流量偏差もおおよそ0.1倍になる。
したがって、本発明を適用することで、熱交換コアにおける水側の圧力損失が5~10倍程度に上昇すれば、それに伴い流量偏差は大きく低減することが分かる。
【0044】
以上より、本発明によれば、プレートフィン型の熱交換器において、追加部材を用いて熱交換器の全長を長くしたり、追加コストを発生させたりすることなく、また、熱交換性能を低下させることなく、液体側の流量偏差を大きく低減させることが可能になる。そのため、工場や製鉄所等で発生する排ガスから大量の熱を回収するのに適しており、熱交換効率に優れた高性能な熱交換器を提供することができる。
【符号の説明】
【0045】
1:ストレート型コルゲートフィン、2:オフセット型コルゲートフィン、3、5:山部、4、6:谷部、7、8:オフセット部、9:仕切り板、10:熱交換コア、11:耳部、12:導入ヘッダ、13:排出ヘッダ、14:導入角ダクト、15:排出角ダクト、16:液体導入口、17:液体排出口、18:分配部、19:集合部、20:セパレータ。
図1
図2
図3
図4
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図6
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図8
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図10
図11
図12
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図16