(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048628
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】液体噴射ヘッド及び液体噴射装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20240402BHJP
B41J 2/18 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
B41J2/14 603
B41J2/18
B41J2/14 605
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154647
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 英一郎
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EA14
2C056EC08
2C056EC32
2C056FA04
2C056FA10
2C056FA13
2C056HA05
2C056KB16
2C056KB37
2C056KC01
2C057AF21
2C057AF72
2C057AG29
2C057AG32
2C057AG68
2C057AG72
2C057AG75
2C057AG84
2C057AK07
2C057AN01
2C057AN05
2C057AP31
2C057AP46
2C057AQ02
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】供給側共通液室及び回収側共通液室の両端に配置された2つのバイパス流路の流路抵抗の関係について十分に考慮されていなかった。
【解決手段】第1ノズル21Aに連通する第1個別流路60Aと、第1ノズル21Aへインクを供給するための第1供給側共通液室81Aと、第1ノズル21Aから排出されなかったインクを回収するための第1回収側共通液室82Aと、第1供給側共通液室81Aに連通した第1導入口51Aと、第1回収側共通液室82Aに連通した第1導出口52Aと、第1バイパス流路91と、第2バイパス流路92と、を備え、第1導入口51A及び第1導出口52Aは、第1バイパス流路91と第2バイパス流路92との間に配置され、第1バイパス流路91の流路抵抗と第2バイパス流路92の流路抵抗とは、異なる。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射する複数の第1ノズルが第1方向に並ぶことで構成された第1ノズル列と、
前記複数の第1ノズルの夫々に連通する複数の第1個別流路と、
前記複数の第1個別流路に接続され、前記複数の第1個別流路を介して前記複数の第1ノズルへ液体を供給するための第1供給側共通液室と、
前記複数の第1個別流路に接続され、前記複数の第1個別流路を介して前記複数の第1ノズルから排出されなかった液体を回収するための第1回収側共通液室と、
前記第1供給側共通液室へ液体を供給するための第1導入口と、
前記第1回収側共通液室から液体を排出するための第1導出口と、
前記第1供給側共通液室の前記第1方向の端部と前記第1回収側共通液室の前記第1方向の端部とを接続する第1バイパス流路と、
前記第1供給側共通液室の前記第1方向とは反対方向である第2方向の端部と前記第1回収側共通液室の前記第2方向の端部とを接続する第2バイパス流路と、
を備え、
前記第1導入口は、前記第1方向に関して前記第1バイパス流路と前記第2バイパス流路との間に配置され、
前記第1導出口は、前記第1方向に関して前記第1バイパス流路と前記第2バイパス流路との間に配置され、
前記第1バイパス流路の流路抵抗と前記第2バイパス流路の流路抵抗とは、異なる、
ことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項2】
前記第1導入口から前記第1供給側共通液室の前記第1方向の端までの流路抵抗は、前記第1導入口から前記第1供給側共通液室の前記第2方向の端までの流路抵抗よりも小さく、
前記第1導出口から前記第1回収側共通液室の前記第1方向の端までの流路抵抗は、前記第1導出口から前記第1回収側共通液室の前記第2方向の端までの流路抵抗よりも小さく、
前記第1バイパス流路の流路抵抗は、前記第2バイパス流路の流路抵抗よりも小さい、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項3】
前記第1導入口は、前記第1供給側共通液室の前記第1方向に関する中心に対して前記第1方向に配置され、
前記第1導出口は、前記第1回収側共通液室の前記第1方向に関する中心に対して前記第1方向に配置され、
前記第1バイパス流路の流路抵抗は、前記第2バイパス流路の流路抵抗よりも小さい、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項4】
前記第1導入口は、前記第1供給側共通液室を前記第1方向に関して3分割した領域のうち、前記第1方向側に位置する前記領域に配置され、
前記第1導出口は、前記第1回収側共通液室を前記第1方向に関して3分割した領域のうち、前記第1方向側に位置する前記領域に配置される、
ことを特徴とする請求項3に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項5】
前記第1導入口は、前記第1供給側共通液室を前記第1方向に関して5分割した領域のうち、前記第1方向側に位置する前記領域に配置され、
前記第1導出口は、前記第1回収側共通液室を前記第1方向に関して5分割した領域のうち、前記第1方向側に位置する前記領域に配置される、
ことを特徴とする請求項3に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項6】
前記第1方向に関して前記第1導入口から前記第1供給側共通液室の前記第1方向の端までの距離をαとし、前記第1方向に関して前記第1導入口から前記第1供給側共通液室の前記第2方向の端までの距離をβとし、前記第1バイパス流路の流路抵抗をRbp1とし、前記第2バイパス流路の流路抵抗をRbp2としたとき、
Rbp1≒Rbp2×α/β を満たす、
ことを特徴とする請求項3に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項7】
前記第1導入口から前記第1供給側共通液室の前記第1方向の端までの単位長さ当たりの平均の流路抵抗は、前記第1導入口から前記第1供給側共通液室の前記第2方向の端までの単位長さ当たりの平均の流路抵抗よりも小さく、
前記第1導出口から前記第1回収側共通液室の前記第1方向の端までの単位長さ当たりの平均の流路抵抗は、前記第1導出口から前記第1回収側共通液室の前記第2方向の端までの単位長さ当たりの平均の流路抵抗よりも小さく、
前記第1バイパス流路の流路抵抗は、前記第2バイパス流路の流路抵抗よりも小さい、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項8】
前記第1導入口は、前記第1供給側共通液室の前記第1方向に関する中央に配置され、
前記第1導出口は、前記第1回収側共通液室の前記第1方向に関する中央に配置される、
ことを特徴とする請求項7に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項9】
前記第1導入口から前記第1供給側共通液室の前記第1方向の前記端までの単位長さ当たりの平均の流路抵抗をγとし、前記第1導入口から前記第1供給側共通液室の前記第2方向の前記端までの単位長さ当たりの平均の流路抵抗をδとし、前記第1バイパス流路の流路抵抗をRbp1とし、前記第2バイパス流路の流路抵抗をRbp2としたとき、
Rbp1≒Rbp2×γ/δ を満たす、
ことを特徴とする請求項7に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項10】
前記第1供給側共通液室の一部を画定し、可撓性を有する供給側可撓性部材と、
前記第1回収側共通液室の一部を画定し、可撓性を有する回収側可撓性部材と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項11】
前記第1導入口と前記第1供給側共通液室の前記第1方向の端との距離と、前記第1導出口と前記第1回収側共通液室の前記第1方向の端との距離とは、略同じである、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項12】
液体を噴射する複数の第2ノズルが前記第1方向に並ぶことで構成された第2ノズル列と、
前記複数の第2ノズルの夫々に連通する複数の第2個別流路と、
前記複数の第2個別流路に接続され、前記複数の第2個別流路を介して前記複数の第2ノズルへ液体を供給するための第2供給側共通液室と、
前記複数の第2個別流路に接続され、前記複数の第2個別流路を介して前記複数の第2ノズルから排出されなかった液体を回収するための第2回収側共通液室と、
前記第2供給側共通液室へ液体を供給するための第2導入口と、
前記第2回収側共通液室から液体を排出するための第2導出口と、
前記第2供給側共通液室の前記第1方向の端部と前記第2回収側共通液室の前記第1方向の端部とを接続する第3バイパス流路と、
前記第2供給側共通液室の前記第2方向の端部と前記第2回収側共通液室の前記第2方向の端部とを接続する第4バイパス流路と、
を備え、
前記第2導入口は、前記第1方向に関して前記第3バイパス流路と前記第4バイパス流路との間に配置され、
前記第2導出口は、前記第1方向に関して前記第3バイパス流路と前記第4バイパス流路との間に配置され、
前記液体噴射ヘッドに対向する媒体の搬送方向に見て、前記第1ノズル列の前記第2方向の端部と前記第2ノズル列の前記第1方向の端部とが重なる、又は、前記第1ノズル列の前記第1方向の端部と前記第2ノズル列の前記第2方向の端部とが重なり、
前記第2導入口から前記第2供給側共通液室の前記第1方向の端までの流路抵抗が前記第2導入口から前記第2供給側共通液室の前記第2方向の端までの流路抵抗よりも小さく、且つ、前記第2導出口から前記第2回収側共通液室の前記第1方向の端までの流路抵抗が前記第2導出口から前記第2回収側共通液室の前記第2方向の端までの流路抵抗よりも小さい場合、前記第3バイパス流路の流路抵抗は、前記第4バイパス流路の流路抵抗よりも小さく、
前記第2導入口から前記第2供給側共通液室の前記第1方向の前記端までの流路抵抗が前記第2導入口から前記第2供給側共通液室の前記第2方向の前記端までの流路抵抗よりも大きく、且つ、前記第2導出口から前記第2回収側共通液室の前記第1方向の前記端までの流路抵抗が前記第2導出口から前記第2回収側共通液室の前記第2方向の前記端までの流路抵抗よりも大きい場合、前記第3バイパス流路の流路抵抗は、前記第4バイパス流路の流路抵抗よりも大きい、
ことを特徴とする請求項2に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項13】
請求項1乃至12の何れか一項に記載の液体噴射ヘッドと、
液体を貯留する液体貯留部を含み、前記液体噴射ヘッドと前記液体貯留部との間で液体を循環させるための循環機構と、
を備えることを特徴とする液体噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を噴射する液体噴射ヘッド及び液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンターやプロッターなどのインクジェット式記録装置に代表される液体噴射装置は、インクを噴射するインクジェット式記録ヘッドなどの液体噴射ヘッドを備える。
【0003】
例えば、特許文献1には、液体を噴射する複数のノズルが並んだノズル列、ノズルの夫々に連通する個別流路、個別流路に接続された供給側共通液室及び回収側共通液室、並びに供給側共通液室及び回収側共通液室の長手方向の端部に、供給側共通液室と回収側共通液室とを接続するバイパス流路を備えた液体噴射ヘッドが開示されている。また、供給側共通液室には長手方向の中心に液体の導入口が設けられ、回収側共通液室の長手方向の中心にインクの導出口が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の液体噴射ヘッドでは、供給側共通液室及び回収側共通液室の両端に配置された2つのバイパス流路の流路抵抗の関係について十分に考慮されていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の態様は、液体を噴射する複数の第1ノズルが第1方向に並ぶことで構成された第1ノズル列と、前記複数の第1ノズルの夫々に連通する複数の第1個別流路と、前記複数の第1個別流路に接続され、前記複数の第1個別流路を介して前記複数の第1ノズルへ液体を供給するための第1供給側共通液室と、前記複数の第1個別流路に接続され、前記複数の第1個別流路を介して前記複数の第1ノズルから排出されなかった液体を回収するための第1回収側共通液室と、前記第1供給側共通液室へ液体を供給するための第1導入口と、前記第1回収側共通液室から液体を排出するための第1導出口と、前記第1供給側共通液室の前記第1方向の端部と前記第1回収側共通液室の前記第1方向の端部とを接続する第1バイパス流路と、前記第1供給側共通液室の前記第1方向とは反対方向である第2方向の端部と前記第1回収側共通液室の前記第2方向の端部とを接続する第2バイパス流路と、を備え、前記第1導入口は、前記第1方向に関して前記第1バイパス流路と前記第2バイパス流路との間に配置され、前記第1導出口は、前記第1方向に関して前記第1バイパス流路と前記第2バイパス流路との間に配置され、前記第1バイパス流路の流路抵抗と前記第2バイパス流路の流路抵抗とは、異なる、ことを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
【0007】
上記目的を達成するための本発明の他の態様は、上記態様の液体噴射ヘッドと、液体を貯留する液体貯留部を含み、前記液体噴射ヘッドと前記液体貯留部との間で液体を循環させるための循環機構と、を備えることを特徴とする液体噴射装置にある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態1に係るインクジェット式記録装置の平面図である。
【
図2】実施形態1に係る記録ヘッドの分解斜視図である。
【
図3】実施形態1に係る記録ヘッドをZ1方向にみた平面図である。
【
図4】実施形態1に係る記録ヘッドをZ2方向にみた平面図である。
【
図6】実施形態1に係るヘッドチップの分解斜視図であり、
【
図7】実施形態1に係るヘッドチップに形成されるインクの流路の平面図である。
【
図11】実施形態1に係る記録ヘッドと、比較例の記録ヘッドとの圧力差を示す図である。
【
図12】実施形態2に係るヘッドチップに形成されるインクの流路の平面図である。
【
図14】実施形態2に係る記録ヘッドと、比較例の記録ヘッドとの圧力差を示す図である。
【
図15】実施形態3に係るヘッドチップに形成されるインクの流路の平面図である。
【
図17】実施形態4に係るヘッドチップに形成されるインクの流路の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本発明の一態様を示すものであって、本発明の範囲内で任意に変更可能である。
【0010】
各図においてX、Y、Zは、互いに直交する3つの空間軸を表している。正方向及び負方向を限定せず、それら3つの軸に沿った方向をX方向、Y方向、及びZ方向とする。各図の矢印が向かう方向をX1方向、Y1方向、Z1方向、矢印の反対方向をX2方向、Y2方向、Z2方向とする。X1方向は「第1方向」に相当し、X2方向は第1方向と反対方向の「第2方向」に相当する。また、Y方向(Y1方向及びY2方向)は「液体噴射ヘッドに対向する媒体の搬送方向」に相当する。なお、「液体噴射ヘッドに対向する媒体の搬送方向」は、Y方向と交差する方向であっても構わない。Z1方向は鉛直方向の下向きであり、Z2方向は鉛直方向の上向きである。なお、Z方向は鉛直方向である必要はない。さらに、X軸、Y軸、Z軸は互いに直交するがこれに限定されず、例えば、80度以上100度以下の範囲内の角度で交差していてもよい。
【0011】
〈実施形態1〉
図1に示すインクジェット式記録装置(以下、単に「記録装置」と称する)1は、「液体噴射装置」の一例であり、「液体」の一種であるインクをインク滴として印刷用紙等の媒体Sに噴射・着弾させて、当該媒体Sに形成されるドットの配列により画像等の印刷を行う印刷装置である。なお、媒体Sとしては、記録用紙の他、樹脂フィルムや布等の任意の材質を用いることができる。
【0012】
記録装置1は、インクジェット式記録ヘッド10(以下、単に「記録ヘッド10」とも称する)と、液体容器2と、制御部3と、媒体Sを送り出す搬送機構4と、を具備する。インクジェット式記録ヘッド10は、「液体噴射ヘッド」の一例である。
【0013】
記録ヘッド10は、液体容器2から供給されるインクを複数のノズルから媒体Sに噴射する。記録ヘッド10の詳細な構成は後述する。
【0014】
液体容器2は、記録ヘッド10から噴射されるインクを貯留する。液体容器2としては、例えば、記録装置1に着脱可能なカートリッジ、可撓性のフィルムで形成された袋状のインクパック、インクを補充可能なインクタンクなどが挙げられる。
【0015】
本実施形態では液体容器2は2個設けられており、1個の記録ヘッド10に対して2個の液体容器2からインクが供給される。本実施形態では、2個の液体容器2に同じ種類のインクが貯留されている。つまり、後述する記録ヘッド10が備える2つのヘッドチップ100Aおよびヘッドチップ100Bには同じ種類のインクが供給される。なお、複数の液体容器2の夫々には、色や成分等が異なるインクが貯留されていてもよい。1個の記録ヘッド10に対応する2個の液体容器2をそれぞれ液体容器2A、液体容器2Bとするが、
図1では複数の液体容器2を纏めて一つに図示している。
【0016】
記録装置1は、記録ヘッド10と副液体容器503との間でインクを循環させるための循環機構500を備えている。本実施形態では、2個の循環機構500を備えており、液体容器2Aに接続された循環機構500を循環機構500Aと称し、液体容器2Bに接続された循環機構500を循環機構500Bと称する。
循環機構500は、供給ポンプ501と、循環ポンプ502と、副液体容器503と、回収チューブ504、供給チューブ505とを含んで構成されている。副液体容器503は、「液体貯留部」の一例である。本実施形態では、循環機構500Aの各構成要素を供給ポンプ501A、循環ポンプ502A、副液体容器503Aと、回収チューブ504A、供給チューブ505Aと称し、循環機構500Bの各構成要素を供給ポンプ501B、循環ポンプ502B、副液体容器503Bと、回収チューブ504B、供給チューブ505Bと称する。循環機構500A及び循環機構500Bに共通する構成については循環機構500と記載して説明する。
【0017】
供給ポンプ501は、液体容器2に貯留されたインクを副液体容器503に供給するポンプである。循環ポンプ502は、副液体容器503に貯留されたインクを記録ヘッド10に供給するためのポンプである。
【0018】
回収チューブ504は、記録ヘッド10で印刷に使用されず、副液体容器503に回収されるインクの流路を形成する部材である。供給チューブ505は、副液体容器503から記録ヘッド10に供給されるインクの流路を形成する部材である。
【0019】
副液体容器503は、液体容器2から供給されるインクを一時的に貯留する容器である。また、副液体容器503は、記録ヘッド10で印刷に使用されず、回収チューブ504を介して回収されたインクを一時的に貯留する。
【0020】
このような循環機構500は、循環ポンプ502により、副液体容器503から供給チューブ505を介して記録ヘッド10へインクを供給し、記録ヘッド10で使用されなかったインクを、回収チューブ504を介して副液体容器503に回収する。また、副液体容器503に貯留されたインクが一定量以下となると、供給ポンプ501により液体容器2から副液体容器503へインクが供給される。
【0021】
液体容器2A、液体容器2B、循環機構500A、循環機構500Bが1個の記録ヘッド10に設けられているが、このような構成に限定されない。例えば、記録装置1には複数個の記録ヘッド10が設けられていてもよい。記録装置1に複数個の記録ヘッド10が設けられている場合、記録ヘッド10のそれぞれに複数の液体容器や循環機構を設けてもよい。または、複数の記録ヘッド10に共通した液体容器をインクの種類分設け、各種のインクを各記録ヘッド10へ分配して供給するとともに回収する循環機構を設けてもよい。
【0022】
制御部3は、例えば、CPU(Central Processing Unit)またはFPGA(Field Programmable Gate Array)等の制御装置と、半導体メモリー等の記憶装置と、を備えている。制御部3は、記憶装置に記憶されたプログラムを制御装置が実行することで記録装置1の各要素、すなわち、記録ヘッド10、搬送機構4等を統括的に制御する。
【0023】
搬送機構4は、媒体SをY方向に搬送するものであり、搬送ローラー5を有する。すなわち搬送機構4は、搬送ローラー5が回転することで媒体SをY方向に搬送する。なお媒体Sを搬送する搬送機構4は、搬送ローラー5を備えるものに限られず、例えば、ベルトやドラムによって媒体Sを搬送するものであってもよい。
【0024】
このような記録装置1は、記録ヘッド10が固定され、記録ヘッド10に対してY方向に媒体Sが搬送される、いわゆるライン型の記録装置である。記録ヘッド10のX方向の幅は、媒体SのX方向の幅よりも広くなっており、媒体SのX方向の幅全体に亘ってインク滴を噴射することが可能となっている。
【0025】
記録ヘッド10は、制御部3による制御のもとで、液体容器2から供給されたインクを複数のノズルのそれぞれからインク滴としてZ1方向に媒体Sに噴射する噴射動作を実行する。この記録ヘッド10による噴射動作が搬送機構4による媒体Sの搬送と並行して行われることにより、媒体Sの表面にインクによる画像が形成される、いわゆる印刷が行われる。
【0026】
なお、記録装置はライン型に限らない。例えば、記録装置は、一方向に媒体Sを搬送させる搬送機構と、一方向に対して交差する他方向に記録ヘッド10を往復移動させる移動機構と、を備えた、いわゆるシリアル型であってもよい。このようなシリアル型の記録装置では、記録ヘッド10による噴射動作が搬送機構による媒体Sの搬送と移動機構による記録ヘッドの往復移動と並行して行われることにより、媒体Sの表面にインクによる画像が形成される、いわゆる印刷が行われる。
【0027】
図2から
図5を用いて記録ヘッド10を説明する。
図2は記録ヘッドの分解斜視図であり、
図3は記録ヘッドをZ1方向にみた平面図であり、
図4は記録ヘッドをZ2方向にみた平面図であり、
図5は
図3のA-A線断面図である。
図3は、記録ヘッド10のヘッドチップ100A及びヘッドチップ100Bを示し、その他の部材の図示は省略されている。
【0028】
図示するように、記録ヘッド10は、ヘッドチップ100と、流路部材200と、中継基板300と、固定板400と、を備えている。本実施形態では、記録ヘッド10は2個のヘッドチップ100A及びヘッドチップ100Bを備えている。ヘッドチップ100A及びヘッドチップ100Bに共通する構成はヘッドチップ100と記載して説明し、ヘッドチップ100A及びヘッドチップ100Bに特有の構成はヘッドチップ100A及びヘッドチップ100Bと記載して説明する。なお、ヘッドチップ100の個数は2個に限定されない。
【0029】
流路部材200は、第1流路部材210と、第2流路部材220と、第3流路部材230と、シール部材240と、を備えている。
【0030】
第1流路部材210は、インクの流路を備えた部材であり、Z2方向を向く面に、Z2方向に向けて突出した筒状の接続部215を有する。また、第1流路部材210は、第1導入路211A、第1導入路211B、第1導出路212A、及び第1導出路212Bを備えている。本実施形態では、第1導入路211A、第1導入路211B、第1導出路212A、及び第1導出路212Bのそれぞれに対応して計4個の接続部215が設けられている。
【0031】
第1導入路211A、第1導入路211B、第1導出路212A、及び第1導出路212BのZ2方向側のそれぞれの開口は、接続部215の先端に形成されている。供給チューブ505Aは接続部215に接続されて第1導入路211Aに連通する。同様に、供給チューブ505Bは接続部215に接続されて第1導入路211Bに連通し、回収チューブ504Aは接続部215に接続されて第1導出路212Aに連通し、回収チューブ504Bは接続部215に接続されて第1導出路212Bに連通する。
【0032】
第2流路部材220は、2つのヘッドチップ100を保持し、インクの流路を備えた部材である。具体的には、第2流路部材220は、Z1方向側にヘッドチップ100を収容可能な収容部223が設けられている。収容部223は、Z1方向側に向けて突出して、ヘッドチップ100を囲うように形成された壁部228により形成されている。本実施形態では2個のヘッドチップ100に共通して一つの収容部223が形成されているが、ヘッドチップ100ごとに収容部223を形成してもよい。
【0033】
第2流路部材220は、第2導入路221A、第2導入路221B、第2導出路222A、及び第2導出路222Bを備えている。第2導入路221A、第2導入路221B、第2導出路222A、及び第2導出路222BのZ2方向側のそれぞれの開口は、第2流路部材220のZ2方向を向く面に形成された収容凹部225の底部に開口し、後述する第3導入路231A、第3導入路231B、第3導出路232A、及び第3導出路232Bにそれぞれ連通している。第2導入路221A、第2導入路221B、第2導出路222A、及び第2導出路222BのZ1方向側のそれぞれの開口は、収容部223内に開口し、後述するヘッドチップ100の第5導入路53A、第5導入路53B、第5導出路54A、及び第5導出路54Bにそれぞれ連通している。
【0034】
また、第1流路部材210のZ1方向側には第1凹部214が形成されており、第2流路部材220のZ2方向側には第2凹部224が形成されており、第1流路部材210と第2流路部材220とが接合されることで、第1凹部214及び第2凹部224からなる基板収容部201が形成されている。基板収容部201は、第3流路部材230及び中継基板300が収容される大きさの空間である。
【0035】
第3流路部材230は、インクの流路を備えた部材であり、Z1方向を向く面に、Z1方向に向けて突出した筒状の接続部233を有する。また、第3流路部材230は、第3導入路231A、第3導入路231B、第3導出路232A、及び第3導出路232Bを備えている。本実施形態では第3導入路231A、第3導入路231B、第3導出路232A、及び第3導出路232Bのそれぞれに対応して計4個の接続部233が設けられている。
【0036】
第3導入路231A、第3導入路231B、第3導出路232A、及び第3導出路232BのZ2方向側のそれぞれの開口は、接続部233の先端に形成されている。また、第3導入路231A、第3導入路231B、第3導出路232A、及び第3導出路232BのZ1方向側のそれぞれの開口は、第3流路部材230のZ1方向を向く面に形成されている。
【0037】
第3流路部材230は、第2流路部材220の収容凹部225に嵌め込まれる形状を有している。第3流路部材230が収容凹部225に嵌め込まれて第2流路部材220に固定されている。そして、第3導入路231A、第3導入路231B、第3導出路232A、及び第3導出路232BのZ1方向側のそれぞれの開口は、第2導入路221A、第2導入路221B、第2導出路222A、及び第2導出路222Bにそれぞれ連通している。第3導入路231A、第3導入路231B、第3導出路232A、及び第3導出路232BのZ2方向側のそれぞれの開口は、後述する第4導入路241A、第4導入路241B、第4導出路242A、及び第4導出路242Bにそれぞれ連通している。
【0038】
シール部材240は、インクの流路を備えた部材であり、Z1方向を向く面に、Z1方向に向けて突出した筒状の接続部245を有する。また、シール部材240は、第4導入路241A、第4導入路241B、第4導出路242A、及び第4導出路242Bを備えている。本実施形態では、第4導入路241A、第4導入路241B、第4導出路242A、及び第4導出路242Bのそれぞれに対応して計4個の接続部245が設けられている。
【0039】
第4導入路241A、第4導入路241B、第4導出路242A、及び第4導出路242BのZ1方向側のそれぞれの開口は、接続部245の先端に形成されている。また、第4導入路241A、第4導入路241B、第4導出路242A、及び第4導出路242BのZ2方向側のそれぞれの開口は、シール部材240のZ2方向を向く面に形成されている。
【0040】
シール部材240は、第1流路部材210と第3流路部材230とに挟み込まれており、第1流路部材210と第3流路部材230の流路同士を接続している。具体的には、第4導入路241A、第4導入路241B、第4導出路242A、及び第4導出路242BのZ1方向側のそれぞれの開口は、第3導入路231A、第3導入路231B、第3導出路232A、及び第3導出路232Bにそれぞれ連通している。第4導入路241A、第4導入路241B、第4導出路242A、及び第4導出路242BのZ2方向側のそれぞれの開口は、第1導入路211A、第1導入路211B、第1導出路212A、及び第1導出路212Bにそれぞれ連通している。
【0041】
シール部材240は、インク等の液体に対して耐液体性を有し、且つ弾性変形可能な弾性材料で形成されている。このようなシール部材240を設けることで、第1導入路211Aから第4導入路241Aにインクが漏れずに供給される。同様に、第1導入路211Bから第4導入路241Bにインクが漏れずに供給される。また、第4導出路242Aから第1導出路212Aにインクが漏れずに回収される。同様に、第4導出路242Bから第1導出路212Bにインクが漏れずに回収される。
【0042】
中継基板300は、ヘッドチップ100A、ヘッドチップ100Bの配線基板140と、制御部3とを電気的に中継する回路や電子部品を備えた基板である。また、中継基板300には、第3流路部材230の接続部233が挿通する貫通孔である挿通孔302が設けられている。本実施形態では、挿通孔302は、各接続部233に対応して計4個設けられている。
【0043】
また、中継基板300はZ方向に貫通した第1配線挿通孔301が形成されており、第2流路部材220はZ方向に貫通した第2配線挿通孔226が形成されており、第3流路部材230はZ方向に貫通した第3配線挿通孔234が形成されている。第1配線挿通孔301、第2配線挿通孔226、及び第3配線挿通孔234は、いずれもヘッドチップ100の配線基板140が挿通することが可能な形状である。本実施形態では、2個のヘッドチップ100A、ヘッドチップ100Bのそれぞれの配線基板140に対応して第1配線挿通孔301、第2配線挿通孔226、第3配線挿通孔234がそれぞれ2個ずつ設けられている。
【0044】
中継基板300は、Z1側に配線基板140が接続される端子部310が設けられている。本実施形態では、第1配線挿通孔301の開口縁部に設けられている。配線基板140は、第1配線挿通孔301にZ2方向へ挿通され、先端部が折り曲げられて端子部310に電気的に接続されている。また、中継基板300のY1方向側にコネクタ320が設けられている。コネクタ320は、第2流路部材220のY1側に設けられた基板収容部201と外部とを連通するコネクタ挿入口227に対向している。コネクタ320は、図示しない配線が接続され、当該配線を介して制御部3に電気的に接続される。すなわち、制御部3から印刷するための各種の信号や電源からの電力が当該配線及びコネクタ320を介して中継基板300の回路に接続される。
【0045】
中継基板300は、第2流路部材220の収容凹部225に固定された第3流路部材230の接続部233が第1配線挿通孔301を挿通した状態で第2流路部材220のZ2方向側に載置されている。そして、中継基板300のZ2方向側にシール部材240が配置されており、シール部材240の接続部245と第3流路部材230の接続部233とが接続されている。第1流路部材210及び第2流路部材220は、これらの中継基板300及びシール部材240を挟持し、互いに接合されている。第1流路部材210及び第2流路部材220は図示しないネジなどの固定手段により固定されることで、基板収容部201に中継基板300を収容した流路部材200が構成されている。
【0046】
このように各部材が接合されることにより、第1導入路211A、第4導入路241A、第3導入路231A、第2導入路221A、第5導入路53Aの順で連通した第1供給流路83Aが形成されている。同様に、第1導入路211B、第4導入路241B、第3導入路231B、第2導入路221B、第5導入路53Bの順で連通した第2供給流路83Bが形成されている。第1導出路212A、第4導出路242A、第3導出路232A、第2導出路222A、第5導出路54Aの順で連通した第1回収流路84Aが形成されている。第1導出路212B、第4導出路242B、第3導出路232B、第2導出路222B、第5導出路54Bの順で連通した第2回収流路84Bが形成されている。
【0047】
第1供給流路83Aは、供給チューブ505Aからヘッドチップ100Aの第1供給側共通液室81Aに供給されるインクの流路である。第2供給流路83Bは、供給チューブ505Bからヘッドチップ100Bの第2供給側共通液室81Bに供給されるインクの流路である。第1回収流路84Aは、ヘッドチップ100Aの第1回収側共通液室82Aから回収チューブ504Aに回収されるインクの流路である。第2回収流路84Bは、ヘッドチップ100Bの第2回収側共通液室82Bから回収チューブ504Bに回収されるインクの流路である。
【0048】
第1供給流路83A及び第2供給流路83Bに共通した説明をする場合は供給流路83と記載し、それぞれの特有の説明をする場合は第1供給流路83A及び第2供給流路83Bと記載する。第1回収流路84A及び第2回収流路84Bに共通した説明をする場合は回収流路84と記載し、それぞれの特有の説明をする場合は第1回収流路84A及び第2回収流路84Bと記載する。
【0049】
このように中継基板300を収容し、供給流路83及び回収流路84を備えた流路部材200は、Z1方向側に固定板400が設けられている。固定板400は、本実施形態では、収容部223のZ1方向側の開口を覆う大きさを有する。また、固定板400には、第1ノズル21A又は第2ノズル21Bを露出する露出開口401が設けられている。本実施形態では、2個のヘッドチップ100のそれぞれに対応して2個の露出開口401が設けられている。このようにヘッドチップ100ごとに複数の露出開口401を設けてもよいし、複数のヘッドチップ100に共通した露出開口401を設けてもよい。
【0050】
図6はヘッドチップ100の分解斜視図であり、
図7はヘッドチップ100に形成されるインクの流路の平面図である。
図8は
図7のB-B線断面図であり、
図9は
図7のC-C線断面図であり、
図10は
図7のD-D線断面図である。
図3、
図4、
図6から
図10を用いてヘッドチップ100Aについて説明する。
図6から
図10ではヘッドチップ100Aを図示して説明するが、ヘッドチップ100Aとヘッドチップ100Bとは同じ構成であり、ヘッドチップ100Aとヘッドチップ100Bとで名称が異なる各部は次の通りである。
【0051】
ヘッドチップ100Aの第1ノズル21Aは、ヘッドチップ100Bでは第2ノズル21Bである。
ヘッドチップ100Aの第1ノズル列22Aは、ヘッドチップ100Bでは第2ノズル列22Bである。
ヘッドチップ100Aの第1個別流路60Aは、ヘッドチップ100Bでは第2個別流路60Bである。
ヘッドチップ100Aの第1供給側共通液室81Aは、ヘッドチップ100Bでは第2供給側共通液室81Bである。
ヘッドチップ100Aの第1回収側共通液室82Aは、ヘッドチップ100Bでは第2回収側共通液室82Bである。
ヘッドチップ100Aの第1導入口51Aは、ヘッドチップ100Bでは第2導入口51Bである。
ヘッドチップ100Aの第1導出口52Aは、ヘッドチップ100Bでは第2導出口52Bである。
ヘッドチップ100Aの第1バイパス流路91は、ヘッドチップ100Bでは第3バイパス流路93である。
ヘッドチップ100Aの第2バイパス流路92は、ヘッドチップ100Bでは第4バイパス流路94である。
ヘッドチップ100Aの第1供給流路83Aは、ヘッドチップ100Bでは第2供給流路83Bである。
ヘッドチップ100Aの第1回収流路84Aは、ヘッドチップ100Bでは第2回収流路84Bである。
【0052】
ヘッドチップ100Aは、インクが流通するインク流路が形成される流路形成基板110と、振動板120と、圧電アクチュエーター130とを具備する。
【0053】
流路形成基板110を構成するノズル基板20には、インクを噴射する複数の第1ノズル21Aが形成されている。本実施形態では、ノズル基板20には、複数の第1ノズル21AがX1方向に並ぶことで構成された第1ノズル列22Aが設けられている。なおノズル基板20は、例えば、エッチング等の半導体製造技術を利用してシリコンの単結晶基板を加工することで製造される。ただし、ノズル基板20の材料や製造方法は特に限定されず、公知の材料及び製法を任意に採用できる。
【0054】
流路形成基板110は、Z方向に積層される複数枚の基板で構成され、内部にインクが流通するインク流路が形成されている。本実施形態では、流路形成基板110は、Z方向に積層されるノズル基板20、連通板30、圧力室基板40及び液室形成基板50を含んで構成されている。
【0055】
ヘッドチップ100Aは、複数の第1個別流路60Aが設けられている。本実施形態では、Z方向に見て第1個別流路60AはY方向に延在しており、複数の第1個別流路60AがX方向に間隔を空けて配置されている。各第1個別流路60Aは、ノズル基板20の各第1ノズル21Aに連通している。
【0056】
ヘッドチップ100Aは、複数の第1個別流路60Aに接続され、複数の第1個別流路60Aを介して複数の第1ノズル21Aへインクを供給するための第1供給側共通液室81Aと、複数の第1個別流路60Aに接続され、複数の第1個別流路60Aを介して複数の第1ノズル21Aから排出されなかったインクを回収するための第1回収側共通液室82Aと、が設けられている。本実施形態では、第1供給側共通液室81Aは、X方向に延在しており、第1個別流路60Aに対してY1方向に設けられている。第1回収側共通液室82Aは、X方向に延在しており、第1個別流路60Aに対してY2方向に設けられている。
【0057】
ヘッドチップ100Aは、第1供給側共通液室81AのX1方向の端部と第1回収側共通液室82AのX1方向の端部とを接続する第1バイパス流路91が設けられている。流路形成基板110には、第1供給側共通液室81AのX2方向の端部と第1回収側共通液室82AのX2方向の端部とを接続する第2バイパス流路92が設けられている。
【0058】
ここで、第1供給側共通液室81Aの端部とは、第1供給側共通液室81Aを第1供給側共通液室81Aの長手方向であるX1方向に関して三分割したときの両端の領域である。また、第1供給側共通液室81Aの端部は、より好ましくは第1供給側共通液室81AをX1方向に関して五分割したときの両端であり、更に好ましくは10分割したときの両端である。第1回収側共通液室82Aの端部とは、第1回収側共通液室82Aを第1回収側共通液室82Aの長手方向であるX1方向に関して三分割したときの両端の領域である。また、第1回収側共通液室82Aの端部は、より好ましくは第1回収側共通液室82AをX1方向に関して五分割したときの両端であり、更に好ましくは10分割したときの両端である。
【0059】
本実施形態では、第1バイパス流路91は、第1供給側共通液室81AをX1方向に関して三分割したときのX1方向側の領域A1と、第1回収側共通液室82AをX1方向に関して三分割したときのX1方向側の領域B1と、を接続している。第2バイパス流路92は、第1供給側共通液室81AをX1方向に関して三分割したときのX2方向側の領域A3と、第1回収側共通液室82AをX1方向に関して三分割したときのX2方向側の領域B3と、を接続している。なお、領域A2は領域A1と領域A3との間の領域であり、領域B2は領域B1と領域B3との間の領域である。
【0060】
第1バイパス流路91の一方の開口である第1バイパス導入口91aは、領域A1のX1方向の端に配置されており、第1バイパス流路91の他方の開口である第1バイパス導出口91bは、領域B1のX1方向の端に配置されている。本実施形態では、第1バイパス導入口91a及び第1バイパス導出口91bは、X方向に関して、X方向に並ぶ第1ノズル列22Aの両端の第1ノズル21Aよりも外側に位置している。
【0061】
第2バイパス流路92の一方の開口である第2バイパス導入口92aは、領域A3のX2方向の端に配置されており、第2バイパス流路92の他方の開口である第2バイパス導出口92bは、領域B3のX2方向の端に配置されている。本実施形態では、第2バイパス導入口92a及び第2バイパス導出口92bは、X方向に関して、X方向に並ぶ第1ノズル列22Aの両端の第1ノズル21Aよりも外側に位置している。
【0062】
ヘッドチップ100Aは、第1供給側共通液室81Aにインクを供給するための第1導入口51Aが設けられている。本実施形態では、第1導入口51Aは、第1供給流路83Aの開口のうち第1供給側共通液室81A側の開口である。また、流路形成基板110には、第1回収側共通液室82Aからインクを排出するための第1導出口52Aが設けられている。本実施形態では、第1導出口52Aは、第1回収流路84Aの開口のうち第1回収側共通液室82A側の開口である。
【0063】
第1導入口51Aは、X1方向に関して第1バイパス流路91と第2バイパス流路92との間に配置されている。具体的には、第1導入口51Aは、第1供給側共通液室81AのX1方向に関する中心に対してX1方向に配置されている。本実施形態では、第1導入口51Aは第1供給側共通液室81Aの領域A1に配置されている。なお、特に図示しないが、第1導入口51Aは、第1供給側共通液室81AをX1方向に関して5分割した領域のうち、X1方向側に位置する領域に配置されていてもよい。
【0064】
第1導出口52Aは、X1方向に関して第1バイパス流路91と第2バイパス流路92との間に配置されている。具体的には、第1導出口52Aは、第1回収側共通液室82AのX1方向に関する中心に対してX1方向に配置されている。本実施形態では、第1導出口52Aは第1回収側共通液室82Aの領域B1に配置されている。なお、特に図示しないが、第1導出口52Aは、第1回収側共通液室82AをX1方向に関して5分割した領域のうち、X1方向側に位置する領域に配置されていてもよい。
【0065】
また、X方向に関して、第1供給側共通液室81Aに対する第1導入口51Aの相対位置と、第1回収側共通液室82Aに対する第1導出口52Aの相対位置とは、ほぼ同じである。具体的には、第1導入口51Aと第1供給側共通液室81AのX1方向の端との距離であるα1と、第1導出口52Aと第1回収側共通液室82AのX1方向の端との距離であるα2とは、略同じである。ここでいう「略同じ」とは、長手方向であるX方向における第1供給側共通液室81A及び第1回収側共通液室82Aの流路長を100%としたとき、α1とα2とが同じ場合であるか、又はα1とα2との差が流路長の10%以内である場合をいう。
【0066】
このような流路形成基板110では、循環機構500Aの副液体容器503Aから供給チューブ505A及び第1供給流路83Aを経由して第1導入口51Aから第1供給側共通液室81Aにインクが供給される。
【0067】
第1供給側共通液室81Aのインクは、各第1個別流路60Aに供給され、各第1個別流路60Aに供給されたインクは各第1ノズル21Aから噴射される。各第1個別流路60Aに供給されたインクのうち第1ノズル21Aから噴射されないものが第1回収側共通液室82Aに排出される。また、第1供給側共通液室81Aから第1バイパス流路91及び第2バイパス流路92を通って第1回収側共通液室82Aにインクが導入される。そして、第1回収側共通液室82Aに導入されたインクは、第1導出口52Aから第1回収流路84A及び回収チューブ504Aを経由して循環機構500Aの副液体容器503Aに回収される。
【0068】
以上から理解される通り、第1供給側共通液室81Aを流れるインクと、第1回収側共通液室82Aを流れるインクはX方向において逆向きの流れを有する。具体的には、第1供給側共通液室81Aでは、第1導入口51Aから第1バイパス流路91へX1方向にインクが流れ、且つ、第1導入口51Aから第2バイパス流路92へX2方向にインクが流れる。また、第1回収側共通液室82Aでは、第1バイパス流路91から第1導出口52AへX2方向にインクが流れ、且つ、第2バイパス流路92から第1導出口52AへX1方向にインクが流れる。
【0069】
このようにヘッドチップ100Aは、液体容器2Aから供給されたインクが、第1供給側共通液室81A、第1個別流路60A及び第1回収側共通液室82Aを介して循環するように構成されている。このような構成の記録ヘッド10は、第1個別流路60Aのインクが第1ノズル21Aから噴射されない期間が存在する場合であっても、第1個別流路60A、第1バイパス流路91、第2バイパス流路92におけるインクの滞留を抑制できる。よって、第1ノズル21Aや後述する第1圧力室41及び第2圧力室42等におけるインクの増粘が抑えられ、インクの増粘に起因する噴射異常の発生を予防することができる。
【0070】
次に、ヘッドチップ100の流路形成基板110の構成についてより具体的に説明する。圧力室基板40には、各第1ノズル21Aに対応する複数の第1圧力室41及び第2圧力室42が設けられている。第1圧力室41及び第2圧力室42は、圧力室基板40を厚さ方向であるZ方向に貫通して設けられている。本実施形態では、一本の第1個別流路60Aは1個の第1圧力室41と1個の第2圧力室42とを含んでいる。第1個別流路60Aのうち第1ノズル21Aよりも第1供給側共通液室81A側の一部が第1圧力室41となっている。第1個別流路60Aのうち第1ノズル21Aよりも第1回収側共通液室82A側の一部が第2圧力室42となっている。第1圧力室41及び第2圧力室42は、Y方向に沿って一列に並設されている。また、複数の第1圧力室41は、X方向に沿って一列に並設されており、複数の第2圧力室42は、X方向に沿って一列に並設されている。なお、1つの第1ノズル21Aに対応して設けられる圧力室の数は1つでもよく、換言すれば、1つの第1ノズル21Aに対して第1圧力室41及び第2圧力室42のうちいずれか一方が設けられている構成であってもよい。
【0071】
圧力室基板40は、例えば、半導体製造技術を利用してシリコンの単結晶基板を加工することで製造される。ただし、圧力室基板40の材料および製造方法は、特に限定されず、任意の材料や製造方法を採用できる。
【0072】
圧力室基板40のZ2方向側には、振動板120及び圧電アクチュエーター130が形成される。圧電アクチュエーター130は、振動板120上の第1圧力室41及び第2圧力室42に対応する位置に設けられている。
【0073】
圧電アクチュエーター130は、圧電素子とも呼ばれ、第1電極、圧電体層及び第2電極を含む部分を言う。一般的には、圧電アクチュエーター130の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体層を第1圧力室41及び第2圧力室42毎にパターニングして構成する。本実施形態では、第1電極を圧電アクチュエーターの共通電極とし、第2電極を圧電アクチュエーターの個別電極としているが、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。なお圧電アクチュエーター130の第2電極には、リード電極がそれぞれ接続されており、このリード電極を介して各圧電アクチュエーター130に選択的に電圧が印加されるようになっている。
【0074】
振動板120のZ2方向側の面には、配線基板140が実装され、圧電アクチュエーター130と接続されている。この配線基板140には、圧電アクチュエーター130を駆動するための駆動IC等である駆動回路141が実装されている。
【0075】
連通板30には、第1個別流路60Aの一部を構成する第1連通流路33A、第1連通流路33B、第1連通流路33C、第2連通流路34A、第2連通流路34B、第2連通流路34C、第2連通流路34Dと、第1個別流路60Aの一端が接続される第1供給流路部31と、第1回収流路部32とが形成されている。
【0076】
第1供給流路部31は、連通板30のY1方向側の端部付近に、X方向に沿って第1個別流路60Aに対応する領域に亘って連続的に設けられている。第1供給流路部31は、液室形成基板50に設けられる第2供給流路部57と連通して第1供給側共通液室81Aを構成する。
【0077】
第1回収流路部32は、連通板30のY2方向側の端部付近に、X方向に沿って第1個別流路60Aに対応する領域に亘って連続的に設けられている。第1回収流路部32は、液室形成基板50に設けられる第2回収流路部58と連通して第1回収側共通液室82Aを構成する。
【0078】
連通板30には、第1個別流路60Aを構成する流路として、第1連通流路33A、第1連通流路33B、第1連通流路33Cと、第2連通流路34A,第2連通流路34B,第2連通流路34C,第2連通流路34Dとが設けられている。
第1連通流路33Aは、連通板30のZ1方向側に開口してY方向に延在し、その一方の端部が第1供給流路部31に連通している。
第1連通流路33Bは、連通板30のZ1方向側に開口してY方向に延在し、第1ノズル21Aと連通している。
第1連通流路33Cは、連通板30のZ1方向側に開口してY方向に延在し、その一方の端部が第1回収流路部32に連通している。
【0079】
第2連通流路34Aは、連通板30をZ方向に貫通し、第1連通流路33Aと第1圧力室41とを連通する。
第2連通流路34Bは、連通板30をZ方向に貫通し、第1圧力室41と第1連通流路33Bとを連通する。
第2連通流路34Cは、連通板30をZ方向に貫通し、第1連通流路33Bと第2圧力室42とを連通する。
第2連通流路34Dは、連通板30をZ方向に貫通し、第2圧力室42と第1連通流路33Cとを連通する。
【0080】
連通板30には、第1バイパス流路91を構成する流路として、第1バイパス流路部35A、第1バイパス流路部35B、第1バイパス流路部35Cが設けられ、第2バイパス流路92を構成する流路として、第2バイパス流路部36A、第2バイパス流路部36B、第2バイパス流路部36Cが設けられている。
第1バイパス流路部35Aは、連通板30のZ1方向側に開口し、領域A1からX1方向に延在した凹部である。
第1バイパス流路部35Bは、連通板30のZ1方向側に開口し、第1バイパス流路部35Aと第1バイパス流路部35Cとを接続してY方向へ延在した凹部である。
第1バイパス流路部35Cは、連通板30のZ1方向側に開口し、領域B1からX1方向に延在した凹部である。
第2バイパス流路部36Aは、連通板30のZ1方向側に開口し、領域A3からX2方向に延在した凹部である。
第2バイパス流路部36Bは、連通板30のZ1方向側に開口し、第2バイパス流路部36Aと第2バイパス流路部36Cとを接続してY方向へ延在した凹部である。
第2バイパス流路部36Cは、連通板30のZ1方向側に開口し、領域B3からX2方向に延在した凹部である。
【0081】
連通板30は、例えば、半導体製造技術を利用してシリコンの単結晶基板を加工することで製造される。ただし、連通板30の材料および製造方法は、特に限定されず、任意の材料や製造方法を採用できる。
【0082】
連通板30のZ1方向側の面には、コンプライアンス基板70が設けられている。本実施形態では、コンプライアンス基板70は、ノズル基板20の周囲を囲うような形状に形成され、Z2方向側からZ1方向に向かい、可撓性を有する薄膜からなる封止膜71、金属等の硬質の材料からなる固定基板72がこの順で接合された構成となっている。
【0083】
コンプライアンス基板70は、第1供給流路部31、第1回収流路部32、第1連通流路33A、第1連通流路33C、第2連通流路34A、第2連通流路34D、第1バイパス流路部35A、第1バイパス流路部35B、第1バイパス流路部35C、第2バイパス流路部36A、第2バイパス流路部36B、第2バイパス流路部36Cの開口を閉塞している。
【0084】
第1連通流路33A、第2連通流路34A、第2連通流路34D及び第1連通流路33Cがコンプライアンス基板70により閉塞され、第2連通流路34B、第1連通流路33B及び第2連通流路34Cがノズル基板20に閉塞されることで、第1個別流路60Aが形成されている。
【0085】
第1バイパス流路部35A、第1バイパス流路部35B、第1バイパス流路部35Cがコンプライアンス基板70により閉塞されることで第1バイパス流路91が形成されている。
【0086】
第2バイパス流路部36A、第2バイパス流路部36B、第2バイパス流路部36Cがコンプライアンス基板70により閉塞されることで第2バイパス流路92が形成されている。
【0087】
固定基板72のうち第1供給流路部31及び第1回収流路部32のそれぞれに対向する領域は、厚さ方向であるZ方向に完全に除去された開口部75となっている。開口部75に露出した封止膜71の一部は、第1コンプライアンス部73及び第2コンプライアンス部74である。開口部75のZ1方向側は、固定板400によって閉塞される。つまり、封止膜71のZ1方向を向く面、固定基板400の開口部75が形成された内周面、及び、固定板400のZ2方向を向く面は、コンプライアンス空間を画定する。当該コンプライアンス空間は、不図示の大気連通路を介して大気に連通している。なお、固定基板72のうち、第1バイパス流路部35A、第1バイパス流路部35B、第1バイパス流路部35C、第2バイパス流路部36A、第2バイパス流路部36B、第2バイパス流路部36Cのそれぞれに対向する領域には、厚さ方向に貫通する開口部は形成されていない。
【0088】
第1コンプライアンス部73は封止膜71のうち第1供給流路部31のZ1方向側の開口を封止した部分である。第1コンプライアンス部73は、第1供給側共通液室81Aの一部を画定するZ2方向側の第1面S1と、第1面S1とは反対の面であり大気に接する第2面S2とを有し、「可撓性を有する供給側可撓性部材」に相当する。第1コンプライアンス部73は、第1供給側共通液室81A内のインクの圧力変動を吸収する。
【0089】
第2コンプライアンス部74は封止膜71のうち第1回収流路部32のZ1方向側の開口を封止した部分である。第2コンプライアンス部74は、第1回収側共通液室82Aの一部を画定するZ2方向側の第3面S3と、第3面S3とは反対の面であり大気に接する第4面S4とを有し、「可撓性を有する回収側可撓性部材」に相当する。第2コンプライアンス部74は、第1回収側共通液室82A内のインクの圧力変動を吸収する。
【0090】
液室形成基板50は、連通板30のZ2方向側に設けられ、第2供給流路部57及び第2回収流路部58を備えている。液室形成基板50、連通板30、コンプライアンス基板70が接合されることで、第1供給流路部31と第2供給流路部57とが連通し、第1コンプライアンス部73により封止された第1供給側共通液室81Aが形成されている。また、第1回収流路部32と第2回収流路部58とが連通し、第2コンプライアンス部74により封止された第1回収側共通液室82Aが形成されている。
【0091】
液室形成基板50には、第2供給流路部57と連通する第5導入路53Aと、第2回収流路部58に連通する第5導出路54Aと、が設けられている。第5導入路53Aは、第2導入路221Aと連通しており、第1供給流路83Aの一部を構成している。第5導入路53Aは、第2導入路221Aと連通しており、第1供給流路83Aの一部を構成している。
【0092】
第1供給側共通液室81Aには、第1導入口51Aを介して液体容器2A及び循環機構500Aからインクが供給される。第1回収側共通液室82Aに貯留されたインクは、第1導出口52Aを介して循環機構500Aの副液体容器503Aに回収される。また、液室形成基板50の中央部には、開口55が設けられており、圧力室基板40は、開口55の内側に配置されている。
【0093】
なお液室形成基板50は、例えば、樹脂材料の射出成形により形成される。ただし、液室形成基板50の材料や製造方法は、特に限定されず、任意の材料や製造方法を採用できる。
【0094】
ここで、上述した第1バイパス流路91、第2バイパス流路92、第1供給側共通液室81A、第1回収側共通液室82Aの流路抵抗について説明する。
【0095】
第1バイパス流路91の流路抵抗をRbp1と表記し、第2バイパス流路92の流路抵抗をRbp2と表記する。これらのRbp1とRbp2とは異なっている。本実施形態では、第1バイパス流路91の流路長と、第2バイパス流路92の流路長とは略同じ長さであり、第1バイパス流路91の断面積が第2バイパス流路92の断面積よりも大きく形成されている。したがって、流路抵抗Rbp1は、流路抵抗Rbp2よりも小さくなっている。もちろん、異なる流路抵抗とするために、第1バイパス流路91及び第2バイパス流路92を同一流路長かつ異なる断面積の形状にすることに限定されない。流路の長さ、流路の経路、流路の断面形状など流路抵抗に影響を与える各種要因を適宜設定することで、第1バイパス流路91及び第2バイパス流路92の流路抵抗を異ならせることができる。
【0096】
第1導入口51Aから第1供給側共通液室81AのX1方向の端までの流路抵抗をRα1とする。第1導入口51Aから第1供給側共通液室81AのX2方向の端までの流路抵抗をRβ1とする。流路抵抗Rα1は、流路抵抗Rβ1よりも小さい。
【0097】
本実施形態では、第1供給側共通液室81Aは、X方向に垂直な断面形状が矩形であり、X方向に亘って略同形状で連続するように形成されている。このような形状の第1供給側共通液室81Aに、第1導入口51Aが第1供給側共通液室81AのX1方向に関する中心に対してX1方向、すなわち領域A1に配置されているので、流路抵抗Rα1は流路抵抗Rβ1よりも小さくなっている。もちろん、第1供給側共通液室81Aの形状や第1導入口51Aの位置は例示したものに限定されない。第1導入口51Aの位置、流路の長さ、流路の経路、流路の断面形状など流路抵抗に影響を与える各種要因を適宜設定することで、流路抵抗Rα1を流路抵抗Rβ1より小さくすることができる。
【0098】
第1導出口52Aから第1回収側共通液室82AのX1方向の端までの流路抵抗をRα2とする。第1導出口52Aから第1回収側共通液室82AのX2方向の端までの流路抵抗をRβ2とする。流路抵抗Rα2は、流路抵抗Rβ2よりも小さい。
【0099】
本実施形態では、第1回収側共通液室82Aは、X方向に垂直な断面形状が矩形であり、X方向に亘って略同形状で連続するように形成されている。このような形状の第1回収側共通液室82Aに、第1導出口52Aが第1回収側共通液室82AのX1方向に関する中心に対してX1方向、すなわち領域B1に配置されているので、流路抵抗Rα2は流路抵抗Rβ2よりも小さくなっている。もちろん、第1回収側共通液室82Aの形状や第1導出口52Aの位置は例示したものに限定されない。第1導出口52Aの位置、流路の長さ、流路の経路、流路の断面形状など流路抵抗に影響を与える各種要因を適宜設定することで、流路抵抗Rα2を流路抵抗Rβ2より小さくすることができる。
【0100】
また、X1方向に関して第1導入口51Aから第1供給側共通液室81AのX1方向の端までの距離をα1とし、X1方向に関して第1導入口51Aから第1供給側共通液室81AのX2方向の端までの距離をβ1とする。同様に、X1方向に関して第1導出口52Aから第1回収側共通液室82AのX1方向の端までの距離をα2とし、X1方向に関して第1導出口52Aから第1回収側共通液室82AのX2方向の端までの距離をβ2とする。流路抵抗Rbp1と流路抵抗Rbp2は次の式(1)、式(2)を満たすことが好ましい。なお、≒は、左辺の値が、右辺の値に対して±10%以内の値であることを意味する。
【0101】
【0102】
上述した構成の記録ヘッド10は、第1バイパス流路91の流路抵抗Rbp1と第2バイパス流路92の流路抵抗Rbp2とは異なっており、流路抵抗Rbp1は流路抵抗Rbp2よりも小さい。
【0103】
第1導入口51Aから第1供給側共通液室81AのX1方向側の端までの流路抵抗Rα1は、第1導入口51Aから第1供給側共通液室81AのX2方向側の端までの流路抵抗Rβ1よりも小さい。
第1導出口52Aから第1回収側共通液室82AのX1方向側の端までの流路抵抗Rα2は、第1導出口52Aから第1回収側共通液室82AのX2方向側の端までの流路抵抗Rβ2よりも小さい。
第1バイパス流路91の流路抵抗Rbp1は、第2バイパス流路92の流路抵抗Rbp2よりも小さい。
【0104】
このような流路抵抗の関係を満たす記録ヘッド10は、比較例の記録ヘッドと比べて、それぞれの記録ヘッドに同じ流量のインクを循環させている場合において、第1供給側共通液室81A及び第1回収側共通液室82Aのそれぞれにおける圧力差を小さくすることができる。本実施形態でいう比較例の記録ヘッドとは、第1バイパス流路91の流路抵抗Rbp1と第2バイパス流路92の流路抵抗Rbp2とが同じであり、それ以外の構成が記録ヘッド10と同じである記録ヘッドをいう。
【0105】
第1供給側共通液室81Aにおける圧力差とは、第1供給側共通液室81AのX方向における一端と他端との圧力差と、第1供給側共通液室81A内における最大圧力と最小圧力との差と、の双方をいう。
【0106】
第1回収側共通液室82Aにおける圧力差とは、第1回収側共通液室82AのX方向における一端と他端との圧力差と、第1回収側共通液室82A内における最大圧力と最小圧力との差と、の双方をいう。
【0107】
なお、一端及び他端とは、第1供給側共通液室81A及び第1回収側共通液室82AのそれぞれのX方向の先端のみを指す。例えば、第1供給側共通液室81Aについては、一端は第1供給側共通液室81AのX1側の先端であり、他端は第1供給側共通液室81AのX2側の先端である。
【0108】
本実施形態の記録ヘッド10及び比較例の記録ヘッドの双方において、第1供給側共通液室81Aの最大圧力とは、第1供給側共通液室81Aの第1導入口51Aが設けられた位置における圧力である。また、比較例の記録ヘッドに関して、第1バイパス流路91の流路抵抗Rbp1と第2バイパス流路92の流路抵抗Rbp2とが同じであるため、第1供給側共通液室81Aの最小圧力とは、第1供給側共通液室81Aの第1導入口51Aから最も離れた位置における圧力である。つまり、比較例の記録ヘッドにおける第1供給側共通液室81Aの最小圧力は、第1供給側共通液室81AのX2方向側の先端の位置における圧力である。
【0109】
一方、本実施形態の記録ヘッド10に関して、第1バイパス流路91の流路抵抗Rbp1が第2バイパス流路92の流路抵抗Rbp2よりも小さいため、第1供給側共通液室81AのX1方向側の先端の位置における圧力とX2方向側の先端の位置における圧力との差が小さくなる。そのため、流路抵抗Rbp1が流路抵抗Rbp2よりも小さい場合、流路抵抗Rbp1と流路抵抗Rbp2との比に応じて、第1供給側共通液室81AのX2方向側の先端の位置における圧力がX1方向側の先端の位置における圧力よりも小さくなることもあるし、第1供給側共通液室81AのX1方向側の先端の位置における圧力がX2方向側の先端の位置における圧力よりも小さくなることもあるし、第1供給側共通液室81AのX1方向側の先端の位置における圧力とX2方向側の先端の位置における圧力とが等しくなることもある。
【0110】
後述の
図11で示される通り、本実施形態の記録ヘッド10は、第1供給側共通液室81AのX2方向側の先端の位置における圧力がX1方向側の先端の位置における圧力よりも小さくなるため、第1供給側共通液室81AのX2方向側の先端の位置における圧力が第1供給側共通液室81Aの最小圧力となる。但し、例えば、第1供給側共通液室81AのX1方向側の先端の位置における圧力とX2方向側の先端の位置における圧力とが等しくなるように流路抵抗Rbp1と流路抵抗Rbp2との比を設定することで、第1供給側共通液室81AのX1方向側の先端及びX2方向側の先端の双方の位置における圧力を第1供給側共通液室81Aの最小圧力としてもよい。また、例えば、第1供給側共通液室81AのX1方向側の先端の位置における圧力がX2方向側の先端の位置における圧力よりも小さくなるように流路抵抗Rbp1と流路抵抗Rbp2との比を設定することで、第1供給側共通液室81AのX1方向側の先端の位置における圧力を第1供給側共通液室81Aの最小圧力としてもよい。
【0111】
本実施形態の記録ヘッド10及び比較例の記録ヘッドの双方において、第1回収側共通液室82Aの最小圧力とは、第1回収側共通液室82Aの第1導出口52Aが設けられた位置における圧力である。また、比較例の記録ヘッドに関して、第1バイパス流路91の流路抵抗Rbp1と第2バイパス流路92の流路抵抗Rbp2とが同じであるため、第1回収側共通液室82Aの最大圧力とは、第1回収側共通液室82Aの第1導出口52Aから最も離れた位置における圧力である。つまり、比較例の記録ヘッドにおける第1回収側共通液室82Aの最大圧力は、第1回収側共通液室82AのX2方向側の先端の位置における圧力である。
【0112】
一方、本実施形態の記録ヘッド10に関して、第1バイパス流路91の流路抵抗Rbp1が第2バイパス流路92の流路抵抗Rbp2よりも小さいため、第1回収側共通液室82AのX1方向側の先端の位置における圧力とX2方向側の先端の位置における圧力との差が小さくなる。そのため、流路抵抗Rbp1が流路抵抗Rbp2よりも小さい場合、流路抵抗Rbp1と流路抵抗Rbp2との比に応じて、第1回収側共通液室82AのX2方向側の先端の位置における圧力がX1方向側の先端の位置における圧力よりも大きくなることもあるし、第1回収側共通液室82AのX1方向側の先端の位置における圧力がX2方向側の先端の位置における圧力よりも大きくなることもあるし、第1回収側共通液室82AのX1方向側の先端の位置における圧力とX2方向側の先端の位置における圧力とが等しくなることもある。
【0113】
後述の
図11で示される通り、本実施形態の記録ヘッド10は、第1回収側共通液室82AのX2方向側の先端の位置における圧力がX1方向側の先端の位置における圧力よりも大きくなるため、第1回収側共通液室82AのX2方向側の先端の位置における圧力が第1回収側共通液室82Aの最大圧力となる。但し、第1供給側共通液室81Aと同様の理由から、流路抵抗Rbp1と流路抵抗Rbp2との比によっては、第1回収側共通液室82AのX1方向側の先端の位置における圧力が第1回収側共通液室82Aの最大圧力であってもよいし、第1回収側共通液室82AのX1方向側の先端及びX2方向側の先端の双方の位置における圧力が第1回収側共通液室82Aの最大圧力であってもよい。
【0114】
図11に本実施形態の記録ヘッド10の第1供給側共通液室81A内の圧力分布と、比較例の記録ヘッドの第1供給側共通液室81A内の圧力分布を示す。
図11の縦軸は圧力を示している。第1供給側共通液室81Aのインクの圧力は、正圧であり横軸よりも上方に示されている。第1回収側共通液室82Aのインクの圧力は、負圧であり横軸よりも下方に示されている。
【0115】
図11の横軸の「1」から「5」の数字は、第1供給側共通液室81A及び第1回収側共通液室82AのX方向における位置である第1位置から第5位置を示している。第1位置は、第1供給側共通液室81A及び第1回収側共通液室82Aの夫々のX1方向の端となる位置を表わす。第5位置は、第1供給側共通液室81A及び第1回収側共通液室82Aの夫々のX2方向の端となる位置を表わす。第2位置は、X方向における第1導入口51A及び第1導出口52Aの位置を表わす。第3位置及び第4位置は、第2位置と第5位置との間を三等分した位置を表わす。
【0116】
比較例の記録ヘッドの第1供給側共通液室81A及び第1回収側共通液室82Aの圧力は鎖線で示され、本実施形態の記録ヘッド10の第1供給側共通液室81A及び第1回収側共通液室82Aの圧力は実線で示されている。
【0117】
比較例の記録ヘッドは、第1導入口51Aから第1位置までの流路抵抗Rα1、及び第1導入口51Aから第5位置までの流路抵抗Rβ1は、本実施形態の記録ヘッド10のものと同じである。流路抵抗Rα2及び流路抵抗Rβ2についても同様である。また、比較例の記録ヘッドは、第1バイパス流路91の流路抵抗Rbp1と、第2バイパス流路92の流路抵抗Rbp2とは同じである。
【0118】
このような比較例の記録ヘッドにおける第1供給側共通液室81A及び第1回収側共通液室82Aの圧力差は次の通りである。
第1供給側共通液室81AのX方向における一端と他端との圧力差、すなわち第1位置における圧力と第5位置における圧力の差をΔPsup(1,5)とする。
第1供給側共通液室81AのX方向における最大圧力と最小圧力との圧力差、すなわち第2位置における圧力と第5位置における圧力の差をΔPsup(2,5)とする。
第1回収側共通液室82AのX方向における一端と他端との圧力差、すなわち第1位置における圧力と第5位置における圧力の差をΔPcol(1,5)とする。
第1回収側共通液室82AのX方向における最大圧力と最小圧力との圧力差、すなわち第2位置における圧力と第5位置における圧力の差をΔPcol(2,5)とする。
図11に示す例では、第1供給側共通液室81Aの第1位置における圧力が8.7kPaであり、第1供給側共通液室81Aの第2位置における圧力が10kPaであり、第1供給側共通液室81Aの第5位置における圧力が6.6kPaであり、第1回収側共通液室82Aの第1位置における圧力が-9.7kPaであり、第1回収側共通液室82Aの第2位置における圧力が-11kPaであり、第1回収側共通液室82Aの第5位置における圧力が-7.6kPaであるため、ΔPsup(1,5)は2.1kPaであり、ΔPsup(2,5)は3.4kPaであり、ΔPcol(1,5)は2.1kPaであり、ΔPcol(2,5)は3.4kPaである。
【0119】
一方、本実施形態の記録ヘッド10は、第1導入口51Aから第1位置までの流路抵抗Rα1は、第1導入口51Aから第5位置までの流路抵抗Rβ1よりも小さい。第1導出口52Aから第1位置までの流路抵抗Rα2は、第1導出口52Aから第5位置までの流路抵抗Rβ2よりも小さい。また、第1バイパス流路91の流路抵抗Rbp1と、第2バイパス流路92の流路抵抗Rbp2とは異なり、流路抵抗Rbp1は流路抵抗Rbp2より小さい。
【0120】
このような本実施形態の記録ヘッド10における第1供給側共通液室81A及び第1回収側共通液室82Aの圧力差は次の通りである。
第1供給側共通液室81AのX方向における一端と他端との圧力差、すなわち第1位置における圧力と第5位置における圧力の差をδPsup(1,5)とする。
第1供給側共通液室81AのX方向における最大圧力と最小圧力との圧力差、すなわち第2位置における圧力と第5位置における圧力の差をδPsup(2,5)とする。
第1回収側共通液室82AのX方向における一端と他端との圧力差、すなわち第1位置における圧力と第5位置における圧力の差をδPcol(1,5)とする。
第1回収側共通液室82AのX方向における最大圧力と最小圧力との圧力差、すなわち第2位置における圧力と第5位置における圧力の差をδPcol(2,5)とする。
図11に示す例では、第1供給側共通液室81Aの第1位置における圧力が8.2kPaであり、第1供給側共通液室81Aの第2位置における圧力が10kPaであり、第1供給側共通液室81Aの第5位置における圧力が8.1kPaであり、第1回収側共通液室82Aの第1位置における圧力が-9.2kPaであり、第1回収側共通液室82Aの第2位置における圧力が-11kPaであり、第1回収側共通液室82Aの第5位置における圧力が-9.1kPaであるため、δPsup(1,5)は0.1kPaであり、δPsup(2,5)は1.9kPaであり、δPcol(1,5)は0.1kPaであり、δPcol(2,5)は1.9kPaである。
【0121】
図11に示す通り、比較例の記録ヘッドは、第1導入口51Aが第1供給側共通液室81AのX方向に関して中心には配置されておらず、X1方向側の領域A1に設けられている。このため、第1供給側共通液室81A内では、最も圧力が高い第2位置からX2方向に離れるほどインクの圧力が低下している。
【0122】
一方、流路抵抗Rbp1が流路抵抗Rbp2よりも小さくなるようにした第1バイパス流路91及び第2バイパス流路92を設けることで、
図11に示す通り、本実施形態の記録ヘッド10は、第1供給側共通液室81A内においても第2位置からX2方向に離れるほどインクの圧力が低下しているものの、低下の度合いは比較例の記録ヘッドよりも小さい。これは、流路抵抗Rbp1が流路抵抗Rbp2よりも小さいため、第1導入口51Aから第2バイパス流路92へ向かって流れるインクの流量が減少することで、第1導入口51Aから第2バイパス流路92へ流れるインクの圧力損失が減少するため、第1供給側共通液室81Aの第5位置における圧力が上昇するからである。
【0123】
また、本実施形態の記録ヘッド10は、第1供給側共通液室81A内において第2位置からX1方向に離れるほどインクの圧力が低下しており、低下の度合いは比較例の記録ヘッドよりも大きいものの、上述した圧力差としては小さくなっている。これは、流路抵抗Rbp1が流路抵抗Rbp2よりも小さいため、第1導入口51Aから第1バイパス流路91へ向かって流れるインクの流量が増加することで、第1導入口51Aから第1バイパス流路91へ流れるインクの圧力損失が増大するため、第1供給側共通液室81Aの第1位置における圧力が低下するからである。
【0124】
まとめると、本実施形態の記録ヘッド10と比較例の記録ヘッドの第1供給側共通液室81Aにおける圧力差は、次のような関係にある。δPsup(1,5)はΔPsup(1,5)よりも小さく、δPsup(2,5)はΔPsup(2,5)よりも小さい。
【0125】
第1回収側共通液室82Aの圧力差についても同様である。比較例の記録ヘッドは、第1導出口52Aが第1回収側共通液室82AのX方向に関して中心には配置されておらず、X1方向側の領域B1に設けられている。このため、第1回収側共通液室82A内では、最も圧力が高い第2位置からX2方向に離れるほどインクの圧力が上昇している。
【0126】
一方、本実施形態の記録ヘッド10は、第1回収側共通液室82A内において第2位置からX2方向に離れるほどインクの圧力が増加しているものの、増加の度合いは比較例の記録ヘッドよりも小さい。これは、流路抵抗Rbp1が流路抵抗Rbp2よりも小さいため、第2バイパス流路92から第1導出口52Aへ向かって流れるインクの流量が減少することで、第2バイパス流路92から第1導出口52Aへ流れるインクの圧力損失が減少するため、第1回収側共通液室82Aの第5位置における圧力が減少するからである。
【0127】
また、本実施形態の記録ヘッド10は、第1回収側共通液室82A内において第2位置からX1方向に離れるほどインクの圧力が増加しており、増加の度合いは比較例の記録ヘッドよりも大きいものの、上述した圧力差としては小さくなっている。これは、流路抵抗Rbp1が流路抵抗Rbp2よりも小さいため、第1バイパス流路91から第1導出口52Aへ向かって流れるインクの流量が増加することで、第1バイパス流路91から第1導出口52Aへ流れるインクの圧力損失が増大するため、第1回収側共通液室82Aの第1位置における圧力が上昇するからである。
【0128】
まとめると、本実施形態の記録ヘッド10と比較例の記録ヘッドの第1回収側共通液室82Aにおける圧力差は、次のような関係にある。δPcol(1,5)はΔPcol(1,5)よりも小さく、δPcol(2,5)はΔPcol(2,5)よりも小さい。
【0129】
特許文献1に記載されたような従来の記録ヘッドでは、第1導入口51Aが第1供給側共通液室81AのX方向に関して中心に配置され、第1導出口52Aが第1回収側共通液室82AのX方向に関して中心に配置されている。
【0130】
しかしながら、第1導入口51Aへインクを供給するための第1供給流路83Aや第1導出口52Aからインクを回収する第1回収流路84Aの引き回しの都合により、第1導入口51Aを第1供給側共通液室81AのX1方向に関する中心に対してX1方向に配置し、且つ、第1導出口52Aを第1回収側共通液室82AのX1方向に関する中心に対してX1方向に配置する場合がある。
【0131】
そのような場合において、上述した比較例の記録ヘッドのように第1バイパス流路91の流路抵抗Rbp1と、第2バイパス流路92の流路抵抗Rbp2が同じであると、
図11の鎖線で示したように、第1供給側共通液室81Aにおける圧力差、及び、第1回収側共通液室82Aにおける圧力差がそれぞれ大きくなる。
【0132】
このように圧力差が大きいと、複数の第1個別流路60Aの夫々へ供給されるインクの流量がバラつき、印字にムラが生じる虞がある。
【0133】
例えば、第2位置における第1供給側共通液室81Aの圧力が10kPaであり、第2位置における第1回収側共通液室82Aの圧力が-11kPaであるとする。第2位置付近の第1個別流路60Aにはそれらの圧力の差である21kPaに応じた流量のインクが流入する。
【0134】
一方、第5位置における第1供給側共通液室81Aの圧力が6.6kPaであり、第5位置における第1回収側共通液室82Aの圧力が-7.6kPaであるとする。第5位置付近の第1個別流路60Aにはそれらの圧力の差である14.2kPaに応じた流量のインクが流入する。
【0135】
このように、第2位置付近の第1個別流路60Aには圧力差21kPa、第5位置付近の第1個別流路60Aには圧力差14.2kPaに応じた流量のインクが流入することから、第1個別流路60Aごとのインクの流量のバラつきは比較的大きい。
【0136】
つまり、第1供給側共通液室81Aにおける圧力差、及び、第1回収側共通液室82Aにおける圧力差が大きいと、X方向に離れた第2位置と第5位置付近の第1個別流路60Aに流入するインクの量にも大きな差が出る。したがって、上述した圧力差によって、複数の第1個別流路60Aへのインクの流量がバラつき、印字にムラが生じる虞がある。
【0137】
一方、本実施形態の記録ヘッド10は、第1導入口51Aから近いX1方向側の第1バイパス流路91の流路抵抗Rbp1が、第1導入口51Aから遠いX2方向側の第2バイパス流路92の流路抵抗Rbp2よりも小さい。
【0138】
このような構成とすることで本実施形態の記録ヘッド10は、流路抵抗Rbp1と流路抵抗Rbp2が同じ記録ヘッドと比較して、第1供給側共通液室81Aにおける圧力差、及び、第1回収側共通液室82Aにおける圧力差のそれぞれを小さくすることができる。その結果、第1ノズル21A毎に流れる流量のバラツキを緩和することができ、また、第1ノズル21A毎に液体の粘度にバラつきが生じることを抑制することができる。
【0139】
例えば、第2位置における第1供給側共通液室81Aの圧力が10kPaであり、第2位置における第1回収側共通液室82Aの圧力が-11kPaであるとする。第2位置付近の第1個別流路60Aにはそれらの圧力の差である21kPaに応じた流量のインクが流入する。
【0140】
一方、本実施形態では、前述の圧力差が緩和されているため、第5位置における第1供給側共通液室81Aの圧力は第2位置の圧力に近い値、例えば8.1kPaであり、第5位置における第1回収側共通液室82Aの圧力が-9.1kPaであるとする。第5位置付近の第1個別流路60Aにはそれらの圧力の差である17.2kPaに応じた流量のインクが流入する。
【0141】
第2位置付近の第1個別流路60Aには圧力差21kPa、第5位置付近の第1個別流路60Aには圧力差17.2kPaに応じた流量のインクが流入することから、先に述べた圧力差が緩和されていない比較例の記録ヘッドと比較して、第1個別流路60Aごとに供給されるインクの流量のバラつきは小さい。
【0142】
このように、本実施形態の記録ヘッド10は、第1供給側共通液室81Aにおける圧力差、及び、第1回収側共通液室82Aにおける圧力差が緩和されているので、各第1個別流路60A、すなわち各第1ノズル21Aに流入するインクの流量のバラつきを緩和することができる。
【0143】
なお、第1供給側共通液室81A及び第1回収側共通液室82AのそれぞれのZ1方向側の開口は、第1コンプライアンス部73及び第2コンプライアンス部74により閉塞されている。第1コンプライアンス部73及び第2コンプライアンス部74は可撓性を有しているので、インクの圧力変動が吸収される。本実施形態の記録ヘッド10は、流路抵抗を上述のように規定することによって第1供給側共通液室81Aにおける圧力差が緩和されているので、第1コンプライアンス部73が撓む挙動も第1供給側共通液室81Aの長手方向であるX方向に関して均一化され、上述したような印字ムラもより一層抑制される。この点、第2コンプライアンス部74についても同様である。
【0144】
ここで、ヘッドチップ100Aとヘッドチップ100Bとの配置について説明する。
図3及び
図4に示すように、記録ヘッド10は、記録ヘッド10に対向する媒体Sの搬送方向であるY方向に見て、第1ノズル列22AのX2方向側の端部TAと第2ノズル列22BのX1方向側の端部TBとが重なっている。又は、特に図示しないが、第1ノズル列22AのX1方向の端部と第2ノズル列22BのX2方向の端部とが重なっていてもよい。
【0145】
仮に、上記のヘッドチップ100A及びヘッドチップ100Bにおいて、ヘッドチップ100Aの第1バイパス流路91と第2バイパス流路92の流路抵抗が同じであり、ヘッドチップ100Bの第3バイパス流路93と第4バイパス流路94の流路抵抗が同じであるとする。すなわち
図11に示した比較例の記録ヘッドと同様の圧力差であるとする。
【0146】
ヘッドチップ100Aを、第1供給側共通液室81AのうちX2方向の端が端部TA側となるように配置し、ヘッドチップ100Bを、第2供給側共通液室81BのうちX1方向の端が端部TB側となるように配置したとする。
【0147】
このような配置では、端部TAにヘッドチップ100Aの第5位置付近が位置し、端部TBにヘッドチップ100Bの第1位置付近が位置することになり、Y方向にみて重なる端部TA及び端部TBにおいて、第1供給側共通液室81Aと第1回収側共通液室82Aとの圧力差と、第2供給側共通液室81Bと第2回収側共通液室82Bとの圧力差との差が大きく相違することになる。この差が大きく相違すると、第1ノズル列22Aと第2ノズル列22Bとのつなぎ目である端部TA及び端部TB付近での印字ムラが大きくなる虞がある。
【0148】
したがって、印字ムラを抑制するためには、例えばヘッドチップ100BをZ方向周りに180度反転させる必要がある。端部TAにヘッドチップ100Aの第5位置付近が位置し、端部TBにヘッドチップ100Bの第5位置付近が位置することによって、Y方向にみて重なる端部TA及び端部TBにおいて、第1供給側共通液室81Aと第1回収側共通液室82Aとの圧力差と、第2供給側共通液室81Bと第2回収側共通液室82Bとの圧力差との差を小さくするためである。
【0149】
これに対し、本実施形態の記録ヘッド10では、次のように流路抵抗が規定されている。
第1導入口51Aから第1供給側共通液室81AのX1方向の端までの流路抵抗Rα1が第1導入口51Aから第1供給側共通液室81AのX2方向の端までの流路抵抗Rβ1よりも小さく、且つ、第1導出口52Aから第1回収側共通液室82AのX1方向の端までの流路抵抗Rα2が第1導出口52Aから第1回収側共通液室82AのX2方向の端までの流路抵抗Rβ2よりも小さい。そして、第1バイパス流路91の流路抵抗Rbp1は、第2バイパス流路92の流路抵抗Rbp2よりも小さい。
【0150】
第2導入口51Bから第2供給側共通液室81BのX1方向の端までの流路抵抗Rα1が第2導入口51Bから第2供給側共通液室81BのX2方向の端までの流路抵抗Rβ1よりも小さく、且つ、第2導出口52Bから第2回収側共通液室82BのX1方向の端までの流路抵抗Rα2が第2導出口52Bから第2回収側共通液室82BのX2方向の端までの流路抵抗Rβ2よりも小さい。そして、第3バイパス流路93の流路抵抗Rbp3は、第4バイパス流路94の流路抵抗Rbp4よりも小さい。
【0151】
このような流路抵抗とすることで、本実施形態の記録ヘッド10は、第1供給側共通液室81A、第1回収側共通液室82A、第2供給側共通液室81B、第2回収側共通液室82Bのそれぞれの圧力差を小さくできる。このため上述したように端部TAと端部TBとをY方向にみて重なるようにヘッドチップ100Aとヘッドチップ100Bとを配置する際に、隣り合う第1ノズル列22A、第2ノズル列22Bのつなぎ目である端部TA及び端部TBにおける印字ムラを抑制するために、ヘッドチップ100A又はヘッドチップ100Bの何れか一方を反転することを不要とすることができる。
【0152】
なお、第2導入口51Bから第2供給側共通液室81BのX1方向の端までの流路抵抗Rα1が第2導入口51Bから第2供給側共通液室81BのX2方向の端までの流路抵抗Rβ1よりも大きく、且つ、第2導出口52Bから第2回収側共通液室82BのX1方向の端までの流路抵抗Rα2が第2導出口52Bから第2回収側共通液室82BのX2方向の端までの流路抵抗Rβ2よりも大きい場合、第3バイパス流路93の流路抵抗Rbp3は、第4バイパス流路94の流路抵抗Rbp4よりも大きくすることが好ましい。換言すれば、第2導入口51Bが第2供給側共通液室81BのX1方向に関する中心に対してX2方向に配置され、且つ、第2導出口52Bが第2回収側共通液室82BのX1方向に関する中心に対してX2方向に配置される場合、第3バイパス流路93の流路抵抗Rbp3は、第4バイパス流路94の流路抵抗Rbp4よりも大きくすることが好ましい。このような場合であっても、端部TAと端部TBとをY方向にみて重なるようにヘッドチップ100Aとヘッドチップ100Bとを配置する際に、隣り合う第1ノズル列22A、第2ノズル列22Bのつなぎ目である端部TA及び端部TBにおける印字ムラを抑制するために、ヘッドチップ100A又はヘッドチップ100Bの何れか一方を反転することを不要とすることができる。
【0153】
また、本実施形態では、ヘッドチップ100Aの第1ノズル列22AのX2方向側の端部TAと、ヘッドチップ100Bの第2ノズル列22BのX1方向側の端部TBとが、媒体Sの搬送方向に見て重なるようにヘッドチップ100Aとヘッドチップ100Bとを配置したが、これには限られない。例えば、ヘッドチップ100Aの第1ノズル列22AのX1方向側の端部と、ヘッドチップ100Bの第2ノズル列22BのX2方向側の端部とが、媒体Sの搬送方向に見て重なるようにヘッドチップ100Aとヘッドチップ100Bとを配置してもよい。この場合、ヘッドチップ100Aの第1ノズル列22AのX1方向側の端部が、つなぎ目である端部TAとなり、ヘッドチップ100Bの第2ノズル列22BのX2方向側の端部が、つなぎ目である端部TBとなる。
【0154】
〈実施形態2〉
図12は、ヘッドチップ100に形成されるインクの流路の平面図であり、
図13は
図12のE-E線断面図である。なお実施形態1と同一の部材には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また以下の説明はヘッドチップ100Aについての説明であるが、ヘッドチップ100Bについても同様であるので重複する説明は省略する。
【0155】
第1導入口51Aは、第1供給側共通液室81AのX1方向に関する中央に配置され、第1導出口52Aは、第1回収側共通液室82AのX1方向に関する中央に配置されている。本実施形態では、第1導入口51Aは、第1供給側共通液室81AのX1方向に関する中心に配置され、第1導出口52Aは、第1回収側共通液室82AのX1方向に関する中心に配置されている。
【0156】
第1供給側共通液室81AのX1方向に関する中央とは、第1供給側共通液室81Aを長手方向であるX1方向に関して三分割したときの中央の領域であり、より好ましくは、第1供給側共通液室81AをX1方向に関して五分割したときの中央の領域であり、更に好ましくは第1供給側共通液室81AをX1方向に関して十分割したときの中央の領域である。
【0157】
第1回収側共通液室82AのX1方向に関する中央とは、第1回収側共通液室82Aを長手方向であるX1方向に関して三分割したときの中央の領域であり、より好ましくは、第1回収側共通液室82AをX1方向に関して五分割したときの中央の領域であり、更に好ましくは第1回収側共通液室82AをX1方向に関して十分割したときの中央の領域である。
【0158】
第1導入口51Aから第1供給側共通液室81AのX1方向の端までの単位長さ当たりの平均の流路抵抗をγ1とする。第1導入口51Aから第1供給側共通液室81AのX2方向の端までの単位長さ当たりの平均の流路抵抗をδ1とする。流路抵抗γ1は、流路抵抗δ1よりも小さい。
【0159】
このような流路抵抗γ1と流路抵抗δ1の関係を満たす一例として、本実施形態の第1供給側共通液室81Aは、X方向に垂直な断面形状がX方向に亘って変化するように形成されている。すなわち、X2方向からX1方向に向けて断面形状が拡大するように形成されている。
【0160】
第1導出口52Aから第1回収側共通液室82AのX1方向の端までの単位長さ当たりの平均の流路抵抗をγ2とする。第1導出口52Aから第1回収側共通液室82AのX2方向の端までの単位長さ当たりの平均の流路抵抗をδ2とする。流路抵抗γ2は、流路抵抗δ2よりも小さい。
【0161】
このような流路抵抗γ2と流路抵抗δ2の関係を満たす一例として、本実施形態の第1回収側共通液室82Aは、X方向に垂直な断面形状がX方向に亘って変化するように形成されている。すなわち、X2方向からX1方向に向けて断面形状が拡大するように形成されている。
【0162】
もちろん、第1供給側共通液室81A及び第1回収側共通液室82Aの形状は例示したものに限定されない。流路の長さ、流路の経路、流路の断面形状など流路抵抗に影響を与える各種要因を適宜設定することで、流路抵抗γ1及び流路抵抗γ2を流路抵抗δ1及び流路抵抗δ2より小さくすることができる。
【0163】
実施形態1と同様に、第1バイパス流路91の流路抵抗Rbp1は、第2バイパス流路92の流路抵抗Rbp2よりも小さい。また、流路抵抗Rbp1と流路抵抗Rbp2は次の式(3)、式(4)を満たすことが好ましい。なお、≒は、左辺の値が、右辺の値に対して±10%以内の値であることを意味する。
【0164】
【0165】
第1導入口51Aから第1供給側共通液室81AのX1方向側の端までの単位長さあたりの平均の流路抵抗γ1は、第1導入口51Aから第1供給側共通液室81AのX2方向側の端までの単位長さあたりの平均の流路抵抗δ1よりも小さい。
第1導出口52Aから第1回収側共通液室82AのX1方向側の端までの単位長さあたりの平均の流路抵抗γ2は、第1導出口52Aから第1回収側共通液室82AのX2方向側の端までの単位長さあたりの平均の流路抵抗δ2よりも小さい。
つまり、第1導入口51Aから第1供給側共通液室81AのX1方向側の端までの流路抵抗は、第1導入口51Aから第1供給側共通液室81AのX2方向側の端までの流路抵抗よりも小さく、第1導出口52Aから第1回収側共通液室82AのX1方向側の端までの流路抵抗は、第1導出口52Aから第1回収側共通液室82AのX2方向側の端までの流路抵抗よりも小さい。
そして、第1バイパス流路91の流路抵抗Rbp1は、第2バイパス流路92の流路抵抗Rbp2よりも小さい。
【0166】
このような流路抵抗の関係を満たす記録ヘッド10は、比較例の記録ヘッドと比べて、それぞれの記録ヘッドに同じ流量のインクを循環させている場合において、第1供給側共通液室81A及び第1回収側共通液室82Aのそれぞれにおける圧力差を小さくすることができる。本実施形態でいう比較例の記録ヘッドとは、第1バイパス流路91の流路抵抗Rbp1と第2バイパス流路92の流路抵抗Rbp2とが同じであり、それ以外の構成が本実施形態の記録ヘッド10と同じである記録ヘッドをいう。
【0167】
図14に本実施形態の記録ヘッド10の第1供給側共通液室81A内の圧力分布と、比較例の記録ヘッドの第1供給側共通液室81A内の圧力分布を示す。
図14の縦軸は圧力を示している。第1供給側共通液室81Aのインクの圧力は、正圧であり横軸よりも上方に示されている。第1回収側共通液室82Aのインクの圧力は、負圧であり横軸よりも下方に示されている。
【0168】
図14の横軸の「1」から「5」の数字は、第1供給側共通液室81A及び第1回収側共通液室82AのX方向における位置である第1位置から第5位置を示している。第1位置は、第1供給側共通液室81A及び第1回収側共通液室82Aの夫々のX1方向の端となる位置を表わす。第5位置は、第1供給側共通液室81A及び第1回収側共通液室82Aの夫々のX2方向の端となる位置を表わす。第3位置は、X方向における第1導入口51A及び第1導出口52Aの位置を表わす。第2位置は、第1位置と第3位置との間を二等分した位置を表わす。第4位置は、第3位置と第5位置との間を二等分した位置を表わす。
【0169】
比較例の記録ヘッドの第1供給側共通液室81A及び第1回収側共通液室82Aの圧力は鎖線で示され、本実施形態の記録ヘッド10の第1供給側共通液室81A及び第1回収側共通液室82Aの圧力は実線で示されている。
【0170】
比較例の記録ヘッドは、第1導入口51Aから第1位置までの流路抵抗Rα1、及び第1導入口51Aから第5位置までの流路抵抗Rβ1は、本実施形態の記録ヘッド10のものと同じである。流路抵抗Rα2及び流路抵抗Rβ2についても同様である。また、比較例の記録ヘッドは、第1バイパス流路91の流路抵抗Rbp1と、第2バイパス流路92の流路抵抗Rbp2とは同じである。
【0171】
本実施形態の記録ヘッド10及び比較例の記録ヘッドにおける第1供給側共通液室81Aの最大圧力及び最小圧力は次の通りである。本実施形態の記録ヘッド10及び比較例の記録ヘッドにおける第1供給側共通液室81Aの最大圧力は、第1供給側共通液室81Aの第1導入口51Aが設けられた位置における圧力である。比較例の記録ヘッドでは、第1導入口51Aは第1供給側共通液室81AのX方向に関して中心に位置しているが、断面形状がX2方向からX1方向へ向けて大きくなるように変化しているため、第1供給側共通液室81Aの両端の位置における圧力は相違しており、第1供給側共通液室81AのX2方向側の先端の位置である第5位置における圧力が最小圧力となっている。
【0172】
一方、本実施形態の記録ヘッド10では、流路抵抗Rbp1が流路抵抗Rbp2より小さいため、第1供給側共通液室81Aの第1位置における圧力と第5位置における圧力との差が小さくなっている。そのため、実施形態1と同様に、流路抵抗Rbp1と流路抵抗Rbp2との比に応じて、第1供給側共通液室81Aの第1位置における圧力、第5位置における圧力、及び、第1位置及び第5位置における双方における圧力、の何れかが第1供給側共通液室81Aの最小圧力となる。本実施形態においては、第1供給側共通液室81Aの第5位置における圧力が第1供給側共通液室81Aの最小圧力となっている。
【0173】
本実施形態の記録ヘッド100及び比較例の記録ヘッドにおける第1回収側共通液室82Aの最大圧力及び最小圧力は次の通りである。本実施形態の記録ヘッド10及び比較例の記録ヘッドにおける第1回収側共通液室82Aの最小圧力とは、第1回収側共通液室82Aの第1導出口52Aが設けられた位置における圧力である。比較例の記録ヘッドでは、第1導出口52Aは第1回収側共通液室82AのX方向に関して中心に位置しているが、断面形状がX2方向からX1方向へ向けて大きくなるように変化しているため、第1回収側共通液室82Aの両端の位置における圧力は相違しており、第1回収側共通液室82AのX2方向側の先端の位置である第5位置における圧力が最大圧力となっている。
【0174】
一方、本実施形態の記録ヘッド10では、流路抵抗Rbp1が流路抵抗Rbp2より小さいため、第1回収側共通液室82Aの第1位置における圧力と第5位置における圧力との差が小さくなっている。そのため、実施形態1と同様に、流路抵抗Rbp1と流路抵抗Rbp2との比に応じて、第1回収側共通液室82Aの第1位置における圧力、第5位置における圧力、及び、第1位置及び第5位置における双方における圧力、の何れかが第1回収側共通液室82Aの最大圧力となる。本実施形態においては、第1回収側共通液室82Aの第5位置における圧力が、第1回収側共通液室82Aの最大圧力となっている。
【0175】
このような比較例の記録ヘッドにおける第1供給側共通液室81A及び第1回収側共通液室82Aの圧力差は次の通りである。
第1供給側共通液室81AのX方向における一端と他端との圧力差、すなわち第1位置における圧力と第5位置における圧力の差をΔPsup(1,5)とする。
第1供給側共通液室81AのX方向における最大圧力と最小圧力との圧力差、すなわち第3位置における圧力と第5位置における圧力の差をΔPsup(3,5)とする。
第1回収側共通液室82AのX方向における一端と他端との圧力差、すなわち第1位置における圧力と第5位置における圧力の差をΔPcol(1,5)とする。
第1回収側共通液室82AのX方向における最大圧力と最小圧力との圧力差、すなわち第3位置における圧力と第5位置における圧力の差をΔPcol(3,5)とする。
【0176】
一方、本実施形態の記録ヘッド10は、第1導入口51Aから第1位置までの流路抵抗Rα1は、第1導入口51Aから第5位置までの流路抵抗Rβ1よりも小さい。第1導出口52Aから第1位置までの流路抵抗Rα2は、第1導出口52Aから第5位置までの流路抵抗Rβ2よりも小さい。また、第1バイパス流路91の流路抵抗Rbp1と、第2バイパス流路92の流路抵抗Rbp2とは異なり、流路抵抗Rbp1は流路抵抗Rbp2より小さい。
【0177】
このような本実施形態の記録ヘッド10における第1供給側共通液室81A及び第1回収側共通液室82Aの圧力差は次の通りである。
第1供給側共通液室81AのX方向における一端と他端との圧力差、すなわち第1位置における圧力と第5位置における圧力の差をδPsup(1,5)とする。
第1供給側共通液室81AのX方向における最大圧力と最小圧力との圧力差、すなわち第3位置における圧力と第5位置における圧力の差をδPsup(3,5)とする。
第1回収側共通液室82AのX方向における一端と他端との圧力差、すなわち第1位置における圧力と第5位置における圧力の差をδPcol(1,5)とする。
第1回収側共通液室82AのX方向における最大圧力と最小圧力との圧力差、すなわち第3位置における圧力と第5位置における圧力の差をδPcol(3,5)とする。
【0178】
図14に示す通り、比較例の記録ヘッドは、第1導入口51Aが第1供給側共通液室81AのX方向に関して領域A2の中心に配置されている。第1供給側共通液室81A内では、最も圧力が高い第3位置からX2方向に離れるほどインクの圧力が低下している。
【0179】
一方、流路抵抗Rbp1が流路抵抗Rbp2よりも小さくなるようにした第1バイパス流路91及び第2バイパス流路92を設けることで、
図14に示す通り、本実施形態の記録ヘッド10は、第1供給側共通液室81A内においても第3位置からX2方向に離れるほどインクの圧力が低下しているものの、低下の度合いは比較例の記録ヘッドよりも小さい。
【0180】
また、本実施形態の記録ヘッド10は、第1供給側共通液室81A内において第3位置からX1方向に離れるほどインクの圧力が低下しており、低下の度合いは比較例の記録ヘッドよりも大きいものの、上述した圧力差としては小さくなっている。
【0181】
まとめると、本実施形態の記録ヘッド10と比較例の記録ヘッドの第1供給側共通液室81Aにおける圧力差は、次のような関係にある。δPsup(1,5)はΔPsup(1,5)よりも小さく、δPsup(3,5)はΔPsup(3,5)よりも小さい。
【0182】
第1回収側共通液室82Aの圧力差についても同様である。比較例の記録ヘッドは、第1導出口51Aが第1回収側共通液室82AのX方向に関して領域A2の中心に配置されている。第1回収側共通液室82A内では、最も圧力が高い第3位置からX2方向に離れるほどインクの圧力が上昇している。
【0183】
一方、本実施形態の記録ヘッド10は、第1回収側共通液室82A内において第3位置からX2方向に離れるほどインクの圧力が増加しているものの、増加の度合いは比較例の記録ヘッドよりも小さい。
【0184】
また、本実施形態の記録ヘッド10は、第1回収側共通液室82A内において第3位置からX1方向に離れるほどインクの圧力が増加しており、増加の度合いは比較例の記録ヘッドよりも大きいものの、上述した圧力差としては小さくなっている。
【0185】
まとめると、本実施形態の記録ヘッド10と比較例の記録ヘッドの第1回収側共通液室82Aにおける圧力差は、次のような関係にある。δPcol(1,5)はΔPcol(1,5)よりも小さく、δPcol(3,5)はΔPcol(3,5)よりも小さい。
【0186】
このような本実施形態の記録ヘッド10は、実施形態1と同様の作用効果を奏する。すなわち、本実施形態の記録ヘッド10は、流路抵抗Rbp1と流路抵抗Rbp2が同じ記録ヘッドと比較して、第1供給側共通液室81A及び第1回収側共通液室82Aのそれぞれの圧力差を小さくすることができる。そして、第1供給側共通液室81A及び第1回収側共通液室82Aの圧力差を小さくできることから、第1ノズル21A毎に流れる流量のバラツキの大小を緩和することができ、また、第1ノズル毎に液体の粘度にバラつきが生じることを抑制することができる。
【0187】
また、実施形態1と同様に、印字ムラを抑制するために、本実施形態の記録ヘッド10においてヘッドチップ100A又はヘッドチップ100Bの何れか一方をZ方向周りに180度反転させることは不要である。
【0188】
なお、第2導入口51Bから第2供給側共通液室81BのX1方向の端までの流路抵抗が第2導入口51Bから第2供給側共通液室81BのX2方向の端までの流路抵抗よりも大きく、且つ、第2導出口52Bから第2回収側共通液室82BのX1方向の端までの流路抵抗が第2導出口52Bから第2回収側共通液室82BのX2方向の端までの流路抵抗よりも大きい場合、第3バイパス流路93の流路抵抗Rbp3は、第4バイパス流路94の流路抵抗Rbp4よりも大きくすることが好ましい。換言すれば、第2導入口51Bから第2供給側共通液室81BのX1方向の端までの単位長さ当たりの平均の流路抵抗が、第2導入口51Bから第2供給側共通液室81BのX2方向の端までの単位長さ当たりの平均の流路抵抗よりも大きく、且つ、第2導出口52Bから第2回収側共通液室82BのX1方向の端までの単位長さ当たりの平均の流路抵抗が、第2導出口52Bから第2回収側共通液室82BのX2方向の端までの単位長さ当たりの平均の流路抵抗よりも大きい場合、第3バイパス流路93の流路抵抗Rbp3は、第4バイパス流路94の流路抵抗Rbp4よりも大きくすることが好ましい。このような場合であっても、端部TAと端部TBとをY方向にみて重なるようにヘッドチップ100Aとヘッドチップ100Bとを配置する際に、隣り合う第1ノズル列22A、第2ノズル列22Bのつなぎ目である端部TA及び端部TBにおける印字ムラを抑制するために、ヘッドチップ100A又はヘッドチップ100Bの何れか一方を反転することを不要とすることができる。
【0189】
〈実施形態3〉
図15は、ヘッドチップ100に形成されるインクの流路の平面図であり、
図16は
図15のF-F線断面図である。なお実施形態1と同一の部材には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また以下の説明はヘッドチップ100Aについての説明であるが、ヘッドチップ100Bについても同様であるので重複する説明は省略する。
【0190】
実施形態1では、第1バイパス流路91及び第2バイパス流路92は、第1供給側共通液室81A及び第1回収側共通液室82Aを形成する連通板30及びコンプライアンス基板70によって形成されていたが、このような構成に限定されない。
【0191】
本実施形態の記録ヘッド10は、第1バイパス流路191及び第2バイパス流路192を有している。
【0192】
液室形成基板50には、Z方向に貫通し、第1供給側共通液室81Aに連通する第1バイパス流路部121が形成されている。また、液室形成基板50には、Z方向に貫通し、第1回収側共通液室82Aに連通する第1バイパス流路部125が形成されている。
【0193】
第2流路部材220には、Z方向に貫通し、第1バイパス流路部121に連通する第1バイパス流路部122が形成されている。また、第2流路部材220には、Z方向に貫通し、第1バイパス流路部125に連通する第1バイパス流路部124が形成されている。
【0194】
第2流路部材220と、第3流路部材230との接合面には、第1バイパス流路部123が形成されている。第1バイパス流路部123は、第2配線挿通孔226及び第3配線挿通孔234をX1方向へ迂回するようにして第1バイパス流路部122及び第1バイパス流路部124に接続している。
【0195】
このような第1バイパス流路部121、第1バイパス流路部122、第1バイパス流路部123、第1バイパス流路部124、第1バイパス流路部125がこの順で連通して第1バイパス流路191が形成されている。
【0196】
液室形成基板50には、Z方向に貫通し、第1供給側共通液室81Aに連通する第2バイパス流路部151が形成されている。また、液室形成基板50には、Z方向に貫通し、第1回収側共通液室82Aに連通する第2バイパス流路部155が形成されている。
【0197】
第2流路部材220には、Z方向に貫通し、第2バイパス流路部151に連通する第2バイパス流路部152が形成されている。また、第2流路部材220には、Z方向に貫通し、第2バイパス流路部155に連通する第2バイパス流路部154が形成されている。
【0198】
第2流路部材220と、第3流路部材230との接合面には、第2バイパス流路部153が形成されている。第2バイパス流路部153は、第2配線挿通孔226及び第3配線挿通孔234をX2方向へ迂回するようにして第2バイパス流路部152及び第2バイパス流路部154に接続している。
【0199】
このような第2バイパス流路部151、第2バイパス流路部152、第2バイパス流路部153、第2バイパス流路部154、第2バイパス流路部155がこの順で連通して第2バイパス流路192が形成されている。
【0200】
このように本実施形態の記録ヘッド10では、第1バイパス流路191及び第2バイパス流路192が第1供給側共通液室81A及び第1回収側共通液室82Aを構成する連通板30及びノズル基板20とは異なる第2流路部材220及び第3流路部材230に形成されている。つまり、ヘッドチップ100Aには、第1バイパス流路191の一部及び第2バイパス流路192の一部を備える構成であってもよい。ヘッドチップ100Bについても同様である。
【0201】
また、本実施形態の記録ヘッド10では、第1バイパス流路191の両端の開口は、Z1方向にみてX方向に並ぶ第1ノズル列22Aの両端の第1ノズル21Aよりも内側に位置している。同様に、第2バイパス流路192の両端の開口は、Z1方向にみてX方向に並ぶ第1ノズル列22Aの両端の第1ノズル21Aよりも内側に位置している。もちろんこのような構成に限定されず、実施形態1と同様に、第1バイパス流路191の両端の開口、及び第2バイパス流路192の両端の開口は、Z1方向にみてX方向に並ぶ第1ノズル列22Aの両端の第1ノズル21Aよりも外側に位置していてもよい。
【0202】
第1バイパス流路191の流路抵抗Rbp1は、第2バイパス流路192の流路抵抗Rbp2よりも小さい。
【0203】
このような本実施形態の記録ヘッド10は、実施形態1と同様の作用効果を奏する。また、実施形態1と同様に、印字ムラを抑制するために、本実施形態の記録ヘッド10においてヘッドチップ100A又はヘッドチップ100Bの何れか一方をZ方向周りに180度反転させることは不要である。
【0204】
なお、本実施形態のような第1バイパス流路191及び第2バイパス流路192は、実施形態1や実施形態2、実施形態4の記録ヘッド10にも適用することができる。
【0205】
〈実施形態4〉
図17は、ヘッドチップ100に形成されるインクの流路の平面図である。実施形態1と同一の部材には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また以下の説明はヘッドチップ100Aについての説明であるが、ヘッドチップ100Bについても同様であるので重複する説明は省略する。
【0206】
ヘッドチップ100Aは、M個の第1ノズル21Aと1対1に対応するM個のノズル流路133と、M個の第1ノズル21Aと1対2に対応する2×M個の第2連通流路34Bと、M個の第1ノズル21Aと1対2に対応する2×M個の第2連通流路34Cと、M個の第1ノズル21Aと1対2に対応する2×M個の第2連通流路34Aと、M個の第1ノズル21Aと1対2に対応する2×M個の第2連通流路34Dと、M個の第1ノズル21Aと1対2に対応する2×M個の第1連通流路33Aと、M個の第1ノズル21Aと1対2に対応する2×M個の第1連通流路33Cと、を備えている。
【0207】
ノズル流路133は、X方向に隣り合う2個の第1圧力室41のそれぞれに連通する第2連通流路34Bに連通し、それらの2個の第2連通流路34Bを介してX方向に隣り合う2個の第1圧力室41に連通している。
【0208】
ノズル流路133は、X方向に隣り合う2個の第2圧力室42のそれぞれに連通する第2連通流路34Cに連通し、それらの2個の第2連通流路34Cを介してX方向に隣り合う2個の第2圧力室42に連通している。
【0209】
ノズル流路133は、各ノズル流路133に対応する第1ノズル21Aに連通する。
【0210】
ヘッドチップ100Aでは、第1供給側共通液室81A及び第1回収側共通液室82Aは、M個の第1ノズル21Aと1対1に対応するM個の第1個別流路60Aにより連通している。
【0211】
各第1個別流路60Aは、第1供給側共通液室81Aに連通し、X方向に隣り合う2個の第1連通流路33Aと、2個の第1連通流路33Aにそれぞれに連通したX方向に隣り合う2個の第1圧力室41と、X方向に隣り合う2個の第1圧力室41のそれぞれに連通したX方向に隣り合う第2連通流路34Bと、X方向に隣り合う2個の第2連通流路34Bに連通するノズル流路133と、ノズル流路133に連通し、X方向に隣り合う2個の第2連通流路34Cと、X方向に隣り合う2個の第2連通流路34Cのそれぞれに連通したX方向に隣り合う2個の第2圧力室42と、X方向に隣り合う2個の第2圧力室42にそれぞれ連通したX方向に隣り合う2個の第2連通流路34Dと、X方向に隣り合う2個の第2連通流路34Dにそれぞれ連通したX方向に隣り合う2個の第1連通流路33Cと、を含む。
【0212】
このように、本実施形態の記録ヘッド10では、1個の第1個別流路60Aは1個の第1ノズル21Aに連通し、その第1ノズル21Aに連通する複数の第1圧力室41及び第2圧力室42を備えている。
【0213】
このような本実施形態の記録ヘッド10は、実施形態1と同様の作用効果を奏する。また、実施形態1と同様に、印字ムラを抑制するために、本実施形態の記録ヘッド10においてヘッドチップ100A又はヘッドチップ100Bの何れか一方をZ方向周りに180度反転させることは不要である。
【0214】
なお、本実施形態のような第1個別流路60Aは、実施形態1から実施形態3の記録ヘッド10にも適用することができる。
【0215】
〈他の実施形態〉
上記実施形態においては、液体吐出ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを挙げて説明したが、本発明は、広く液体吐出ヘッドを対象としたものであり、インク以外の液体を吐出する液体吐出ヘッドにも適用することができる。その他の液体吐出ヘッドとしては、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられ、かかる液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置にも適用できる。
【0216】
上記実施形態において、圧力室に圧力変化を生じさせる駆動素子として圧電アクチュエーターを用いて説明したが、特にこれに限定されない。例えば、駆動素子として、圧力室内に発熱素子を配置して、発熱素子の発熱で発生するバブルによってノズルからインク滴を吐出させるものや、振動板と電極との間に静電気を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズルからインク滴を吐出させるいわゆる静電式アクチュエーターなどを使用することができる。
【0217】
(付記)
以上に例示した形態から、例えば以下の構成が把握される。
【0218】
好適な態様である態様1は、液体を噴射する複数の第1ノズルが第1方向に並ぶことで構成された第1ノズル列と、前記複数の第1ノズルの夫々に連通する複数の第1個別流路と、前記複数の第1個別流路に接続され、前記複数の第1個別流路を介して前記複数の第1ノズルへ液体を供給するための第1供給側共通液室と、前記複数の第1個別流路に接続され、前記複数の第1個別流路を介して前記複数の第1ノズルから排出されなかった液体を回収するための第1回収側共通液室と、前記第1供給側共通液室へ液体を供給するための第1導入口と、前記第1回収側共通液室から液体を排出するための第1導出口と、前記第1供給側共通液室の前記第1方向の端部と前記第1回収側共通液室の前記第1方向の端部とを接続する第1バイパス流路と、前記第1供給側共通液室の前記第1方向とは反対方向である第2方向の端部と前記第1回収側共通液室の前記第2方向の端部とを接続する第2バイパス流路と、を備え、前記第1導入口は、前記第1方向に関して前記第1バイパス流路と前記第2バイパス流路との間に配置され、前記第1導出口は、前記第1方向に関して前記第1バイパス流路と前記第2バイパス流路との間に配置され、前記第1バイパス流路の流路抵抗と前記第2バイパス流路の流路抵抗とは、異なる、ことを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
【0219】
このような構成によれば、第1供給側共通液室及び第1回収側共通液室の両端に配置された第1バイパス流路と第2バイパス流路の流路抵抗を相違させることで、第1供給側共通液室及び第1回収側共通液室の夫々における圧力差の小さくすることができる。また、第1ノズル毎に流れる液体の流量のバラツキの大小を緩和することができる。このように液体の流量のバラツキの大小が緩和されるので、第1ノズル毎に液体の粘度にバラつきが生じることを抑制することができる。
【0220】
態様1の具体例である態様2は、前記第1導入口から前記第1供給側共通液室の前記第1方向の端までの流路抵抗は、前記第1導入口から前記第1供給側共通液室の前記第2方向の端までの流路抵抗よりも小さく、前記第1導出口から前記第1回収側共通液室の前記第1方向の端までの流路抵抗は、前記第1導出口から前記第1回収側共通液室の前記第2方向の端までの流路抵抗よりも小さく、前記第1バイパス流路の流路抵抗は、前記第2バイパス流路の流路抵抗よりも小さいことが好ましい。このような構成とすることで、第1バイパス流路と第2バイパス流路の流路抵抗を同じにした構成と比較して、第1供給側共通液室及び第1回収側共通液室の夫々における圧力差を小さくすることができる。また、第1ノズル毎に流れる液体の流量のバラツキの大小を緩和することができる。このように液体の流量のバラツキの大小が緩和されるので、第1ノズル毎に液体の粘度にバラつきが生じることを抑制することができる。
【0221】
態様1の具体例である態様3は、前記第1導入口は、前記第1供給側共通液室の前記第1方向に関する中心に対して前記第1方向に配置され、前記第1導出口は、前記第1回収側共通液室の前記第1方向に関する中心に対して前記第1方向に配置され、前記第1バイパス流路の流路抵抗は、前記第2バイパス流路の流路抵抗よりも小さいことが好ましい。このような構成とすることで、第1バイパス流路と第2バイパス流路の流路抵抗を同じにした構成と比較して、同じ流量で液体を循環させている場合において、より一層、第1供給側共通液室及び第1回収側共通液室の夫々における圧力差を低減することができる。
【0222】
態様3の具体例である態様4は、前記第1導入口は、前記第1供給側共通液室を前記第1方向に関して3分割した領域のうち、前記第1方向側に位置する前記領域に配置され、前記第1導出口は、前記第1回収側共通液室を前記第1方向に関して3分割した領域のうち、前記第1方向側に位置する前記領域に配置されることが好ましい。このような構成では、第1導入口は、第1供給側共通液室の第1方向側の端部に偏って配置され、第1導出口は、第1回収側共通液室の第1方向側の端部に偏って配置される。このような第1導入口及び第1導出口の配置では、第1供給側共通液室のX方向の両端の圧力差がより大きくなるので、第1バイパス流路の流路抵抗を第2バイパス流路の流路抵抗よりも小さくすることによる圧力差を低減させる効果が顕著となる。
【0223】
態様3の具体例である態様5は、前記第1導入口は、前記第1供給側共通液室を前記第1方向に関して5分割した領域のうち、前記第1方向側に位置する前記領域に配置され、前記第1導出口は、前記第1回収側共通液室を前記第1方向に関して5分割した領域のうち、前記第1方向側に位置する前記領域に配置されることが好ましい。このような構成では、第1導入口は、第1供給側共通液室の第1方向側の端部に偏って配置され、第1導出口は、第1回収側共通液室の第1方向側の端部に偏って配置される。このような第1導入口及び第1導出口の配置では、第1供給側共通液室のX方向の両端の圧力差がより大きくなるので、第1バイパス流路の流路抵抗を第2バイパス流路の流路抵抗よりも小さくすることによる圧力差を低減させる効果がより一層顕著となる。
【0224】
態様3の具体例である態様6は、前記第1方向に関して前記第1導入口から前記第1供給側共通液室の前記第1方向の端までの距離をαとし、前記第1方向に関して前記第1導入口から前記第1供給側共通液室の前記第2方向の端までの距離をβとし、前記第1バイパス流路の流路抵抗をRbp1とし、前記第2バイパス流路の流路抵抗をRbp2としたとき、Rbp1≒Rbp2×α/βを満たすことが好ましい。
【0225】
態様1の具体例である態様7は、前記第1導入口から前記第1供給側共通液室の前記第1方向の端までの単位長さ当たりの平均の流路抵抗は、前記第1導入口から前記第1供給側共通液室の前記第2方向の端までの単位長さ当たりの平均の流路抵抗よりも小さく、前記第1導出口から前記第1回収側共通液室の前記第1方向の端までの単位長さ当たりの平均の流路抵抗は、前記第1導出口から前記第1回収側共通液室の前記第2方向の端までの単位長さ当たりの平均の流路抵抗よりも小さく、前記第1バイパス流路の流路抵抗は、前記第2バイパス流路の流路抵抗よりも小さい。第1バイパス流路と第2バイパス流路の流路抵抗を同じにした構成と比較して、第1供給側共通液室及び第1回収側共通液室の夫々における圧力差を緩和することができる。また、第1ノズル毎に流れる液体の流量のバラツキの大小を緩和することができる。このように液体の流量のバラツキの大小が緩和されるので、第1ノズル毎に液体の粘度にバラつきが生じることを抑制することができる。
【0226】
態様7の具体例である態様8は、前記第1導入口は、前記第1供給側共通液室の前記第1方向に関する中央に配置され、前記第1導出口は、前記第1回収側共通液室の前記第1方向に関する中央に配置されることが好ましい。
【0227】
態様7又は態様8の具体例である態様9は、前記第1導入口から前記第1供給側共通液室の前記第1方向の前記端までの単位長さ当たりの平均の流路抵抗をγとし、前記第1導入口から前記第1供給側共通液室の前記第2方向の前記端までの単位長さ当たりの平均の流路抵抗をδとし、前記第1バイパス流路の流路抵抗をRbp1とし、前記第2バイパス流路の流路抵抗をRbp2としたとき、Rbp1≒Rbp2×γ/δを満たすことが好ましい。
【0228】
態様1~9の何れかの具体例である態様10は、前記第1供給側共通液室の一部を画定し、可撓性を有する供給側可撓性部材と、前記第1回収側共通液室の一部を画定し、可撓性を有する回収側可撓性部材とを備えることが好ましい。このような構成では、供給側可撓性部材及び回収側可撓性部材の夫々が撓む挙動が均一化されるため各第1ノズルへの圧力変動の影響も均一に低減され、印字ムラもより一層抑制される。
【0229】
態様1~10の何れかの具体例である態様11は、前記第1導入口と前記第1供給側共通液室の前記第1方向の端との距離と、前記第1導出口と前記第1回収側共通液室の前記第1方向の端との距離とは、略同じであることが好ましい。
【0230】
態様1~11の何れかの具体例である態様12は、液体を噴射する複数の第2ノズルが前記第1方向に並ぶことで構成された第2ノズル列と、前記複数の第2ノズルの夫々に連通する複数の第2個別流路と、前記複数の第2個別流路に接続され、前記複数の第2個別流路を介して前記複数の第2ノズルへ液体を供給するための第2供給側共通液室と、前記複数の第2個別流路に接続され、前記複数の第2個別流路を介して前記複数の第2ノズルから排出されなかった液体を回収するための第2回収側共通液室と、前記第2供給側共通液室へ液体を供給するための第2導入口と、前記第2回収側共通液室から液体を排出するための第2導出口と、前記第2供給側共通液室の前記第1方向の端部と前記第2回収側共通液室の前記第1方向の端部とを接続する第3バイパス流路と、前記第2供給側共通液室の前記第2方向の端部と前記第2回収側共通液室の前記第2方向の端部とを接続する第4バイパス流路と、を備え、前記第2導入口は、前記第1方向に関して前記第3バイパス流路と前記第4バイパス流路との間に配置され、前記第2導出口は、前記第1方向に関して前記第3バイパス流路と前記第4バイパス流路との間に配置され、前記液体噴射ヘッドに対向する媒体の搬送方向に見て、前記第1ノズル列の前記第2方向の端部と前記第2ノズル列の前記第1方向の端部とが重なる、又は、前記第1ノズル列の前記第1方向の端部と前記第2ノズル列の前記第2方向の端部とが重なり、前記第2導入口から前記第2供給側共通液室の前記第1方向の端までの流路抵抗が前記第2導入口から前記第2供給側共通液室の前記第2方向の端までの流路抵抗よりも小さく、且つ、前記第2導出口から前記第2回収側共通液室の前記第1方向の端までの流路抵抗が前記第2導出口から前記第2回収側共通液室の前記第2方向の端までの流路抵抗よりも小さい場合、前記第3バイパス流路の流路抵抗は、前記第4バイパス流路の流路抵抗よりも小さく、前記第2導入口から前記第2供給側共通液室の前記第1方向の前記端までの流路抵抗が前記第2導入口から前記第2供給側共通液室の前記第2方向の前記端までの流路抵抗よりも大きく、且つ、前記第2導出口から前記第2回収側共通液室の前記第1方向の前記端までの流路抵抗が前記第2導出口から前記第2回収側共通液室の前記第2方向の前記端までの流路抵抗よりも大きい場合、前記第3バイパス流路の流路抵抗は、前記第4バイパス流路の流路抵抗よりも大きいことが好ましい。
【0231】
このような構成では、隣り合う第1ノズル列、第2ノズル列のつなぎ目における印字ムラを抑制するために、液体を吐出する構造体を反転して配置することが不要となる。
【0232】
なお、構造体とは、上記に示した実施形態のヘッドチップ100A及びヘッドチップ100Bに相当し、少なくとも、第1ノズル列と、第1個別流路と、第1供給側共通液室と、第1回収側共通液室と、第1導入口と、第1導出口と、第1バイパス流路の少なくとも一部と、第2バイパス流路の少なくとも一部と、を備えた装置、又は第2ノズル列と、第2個別流路と、第2供給側共通液室と、第2回収側共通液室と、第2導入口と、第2導出口と、第3バイパス流路の少なくとも一部と、第4バイパス流路の少なくとも一部と、を備えた装置である。
【0233】
態様1から態様12の何れかの具体例である態様13は、上述の液体噴射ヘッドと、液体を貯留する液体貯留部を含み、前記液体噴射ヘッドと前記液体貯留部との間で液体を循環させるための循環機構と、を備えることを特徴とする液体噴射装置にある。
【符号の説明】
【0234】
1…記録装置(液体噴射装置)、2…液体容器、10…記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、21A…第1ノズル、21B…第2ノズル、22A…第1ノズル列、22B…第2ノズル列、51A…第1導入口、51B…第2導入口、52A…第1導出口、52B…第2導出口、60A…第1個別流路、60B…第2個別流路、70…コンプライアンス基板、73…第1コンプライアンス部(供給側可撓性部材)、74…第2コンプライアンス部(回収側可撓性部材)、81A…第1供給側共通液室、81B…第2供給側共通液室、82A…第1回収側共通液室、82B…第2回収側共通液室、91、191…第1バイパス流路、92、192…第2バイパス流路、93…第3バイパス流路、94…第4バイパス流路、100…ヘッドチップ、500…循環機構