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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048634
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】壁構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 2/76 20060101AFI20240402BHJP
   E04B 2/74 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
E04B2/76
E04B2/74 531Z
E04B2/74 531C
E04B2/74 531L
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154654
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】393016837
【氏名又は名称】株式会社桐井製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒井 智一
(72)【発明者】
【氏名】野曽原 瑞樹
(72)【発明者】
【氏名】濱崎 源記
(57)【要約】
【課題】施工費用や施工手間の増大を抑制しつつ、強度を高めることができる壁構造を提供する。
【解決手段】互いに上下方向に離間して水平方向に延設された一対のランナー部材2,3と、互いに水平方向に離間して上下方向に延設され一対のランナー部材2,3の間に配置された複数の縦下地材10,10・・と、水平方向延設され複数の縦下地材10,10・・に架け渡された振止め材20と、縦下地材10に固定される壁板材30と、を備えた壁構造1であって、縦下地材10は、断面C型の一対のスタッド材11,11を背中合わせに突き合わせて構成されており、壁板材30は、一対のスタッド材11,11のうち一方のスタッド材11のみに固定されていることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに上下方向に離間して水平方向に延設された一対のランナー部材と、
互いに水平方向に離間して上下方向に延設され前記一対のランナー部材の間に配置された複数の縦下地材と、
水平方向延設され前記複数の縦下地材に架け渡された振止め材と、
前記縦下地材に固定される壁板材と、を備えた壁構造であって、
前記縦下地材は、断面C型の一対のスタッド材を背中合わせに突き合わせて構成されており、
前記壁板材は、一対の前記スタッド材のうち一方のスタッド材のみに固定されている
ことを特徴とする壁構造。
【請求項2】
一対の前記スタッド材の間には、緩衝材が介設されている
ことを特徴とする請求項1に記載の壁構造。
【請求項3】
前記緩衝材は、前記スタッド材間に挟まれる緩衝板部と、前記スタッド材に形成された振止め材挿通孔に係止される係止部とを備えている
ことを特徴とする請求項2に記載の壁構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
室内の間仕切り壁の構造としては、上下一対のランナー部材と、上下の前記ランナー部材に係合する複数のスタッド材と、間隔をあけて配置された複数のスタッド材に架け渡された振止め材とを備えた壁下地に、壁板材を貼り付けたものが知られている(例えば特許文献1,2参照)。壁板材は、スタッド材にビス止めされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-100301号公報
【特許文献2】特開2002-138605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、耐震性能の強化や壁の大型化に伴って壁構造の強度向上が要求されている。前記した従来の壁構造では、強度を高めるために、スタッド材の設置ピッチを小さくすることや、スタッド材の断面積を大きくすることが考えられるが、施工費用や施工手間の増大を招いてしまう問題があった。
【0005】
このような観点から、本発明は、施工費用や施工手間の増大を抑制しつつ、強度を高めることができる壁構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための本発明は、互いに上下方向に離間して水平方向に延設された一対のランナー部材と、互いに水平方向に離間して上下方向に延設され前記一対のランナー部材の間に配置された複数の縦下地材と、水平方向延設され前記複数の縦下地材に架け渡された振止め材と、前記縦下地材に固定される壁板材と、を備えた壁構造である。前記縦下地材は、断面C型の一対のスタッド材を背中合わせに突き合わせて構成されており、前記壁板材は、一対の前記スタッド材のうち一方のスタッド材のみに固定されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の壁構造によれば、一対のスタッド材を突き合わせることで縦下地材の断面積が大きくなり壁下地の強度を大きくできる。また、スタッド材は互いに固定せず、壁板材を一方のスタッド材のみに固定しているので、スタッド材や壁板材の設置の施工手間の増大を防止できる。
【0008】
本発明の壁構造においては、一対の前記スタッド材の間には、緩衝材が介設されているものが好ましい。このような構成によれば、壁の振動によりスタッド材同士の擦れによって発生する軋み音を抑制できる。
【0009】
また、本発明の壁構造においては、前記緩衝材は、前記スタッド材間に挟まれる緩衝板部と、前記スタッド材に形成された振止め材挿通孔に係止される係止部とを備えているものが好ましい。このような構成によれば、緩衝材をスタッド材に容易に設置することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る壁構造によれば、施工費用や施工手間の増大を抑制しつつ、強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る壁構造を示した全体斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る壁構造を示した図であって、(a)は壁板材を示した正面図、(b)は壁下地を示した正面図である。
図3】本発明の実施形態に係る壁構造を示した水平方向断面図である。
図4】本発明の実施形態に係る壁構造のスタッド材を示した図であって、(a)は水平方向断面図、(b)は垂直方向断面図、(c)は側面図である。
図5】本発明の実施形態に係る壁構造の緩衝材を示した図であって、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
図6】本発明の実施形態に係る壁構造の緩衝材を示した斜視図である。
図7】本発明の実施形態に係る壁構造の壁下地の等分布試験の結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態に係る壁構造について図面を参照しつつ詳細に説明する。本実施形態では、壁構造として、壁下地の両面に壁板材が敷設された間仕切壁を例に挙げて、その構成を説明する。図1および図2に示すように、本実施形態に係る壁構造1は、上下のランナー部材2,3と、縦下地材10と、振止め材20と、壁板材30とを備えている。
【0013】
ランナー部材2,3は、互いに上下方向に離間して水平方向に延設されており、具体的には、室内の床部と天井部に沿って水平で、且つ互いに平行に設けられている。ランナー部材2,3は、溝型のチャンネル材にて構成されている。床部に設けられた下側のランナー部材2は、溝の開口部が上向きに開くように配置されていて、天井部に設けられた上側のランナー部材3は、溝の開口部が下向きに開くように配置されている。
【0014】
縦下地材10は、互いに水平方向に離間して上下方向に延設されている。縦下地材10は、上下のランナー部材2,3間に掛け渡されて配置され、各ランナー部材2,3にそれぞれ係合されている。縦下地材10は、断面C型の一対のスタッド材11,11を背中合わせに突き合わせて構成されている。図3および図4に示すように、スタッド材11は、ウエブ部11aと、ウエブ部11aの幅方向両端部に連続するフランジ部11bと、フランジ部11bの先端部に連続するリップ部11cとを備えている。ウエブ部11aは、幅方向中間部にリップ部11c側に凹む凹部12を備えている。隣り合うスタッド材11,11は、ウエブ部11a同士が突き合わされており、ウエブ部11a,11aの間に、凹部12,12が組み合わさって隙間Sが形成されている。ウエブ部11aには、振止め材20が挿通される開口部(振止め材挿通孔)13が形成されている。開口部13は、高さ方向に所定間隔をあけて所定高さ位置に複数形成されている。隣り合うスタッド材11,11の開口部13,13同士は、同じ高さ位置に形成されている。なお、スタッド材11同士は、突き合わされて配置されているのみで、互いに固定されていない。
【0015】
縦下地材10の下端部は、下側のランナー部材2の内側に上側から嵌合されている。縦下地材10の上端部は、上側のランナー部材3の内側に下側から嵌合されている。縦下地材10は、ランナー部材2,3の長手方向に沿って水平方向に所定間隔をあけて複数配列されている。
【0016】
振止め材20は、施工時に壁を平滑に仕上げるためのものである。振止め材20は、溝形のチャンネル材にて構成されており、溝の開口が上向きになるように配置されている。振止め材20は、水平方向に延在し、複数の縦下地材10,10・・に架け渡されている。振止め材20は、開口部13に挿通されて縦下地材10を貫通している。振止め材20は、上下に複数列設けられている。
【0017】
壁板材30は、壁の表面材または壁クロスが貼設される下地板になる板状部材であって、木質ボードや石膏ボードにて構成される。壁板材30は、縦下地材10に固定されている。具体的には、壁板材30は、所定間隔をあけて配置された縦下地材10のスタッド材11のフランジ部11b面に当接し、ビス止めされている。壁板材30は、縦下地材10の一対のスタッド材11のうち、一方のスタッド材11のみにビス止めされている。一枚の壁板材30の高さ寸法は、例えば1820mmであり、天井高に合わせて、縦方向に適宜積み上げ、上端部で端数の調整を行う。ビスVは、上下方向に所定間隔(例えば300mm)をあけて打ち込まれている。壁板材30の上端部と下端部におけるビスVの打込み位置は、上端または下端から一定距離をあけた高さ位置となっている。
【0018】
図4に示すように、縦下地材10のスタッド材11,11の間には、緩衝材50が介設されている。図5および図6にも示すように、緩衝材50は、緩衝板部52と係止部51とを備えている。
【0019】
緩衝板部52は、樹脂製の弾性材にて構成されており、矩形の板状を呈している。緩衝板部52は、スタッド材11,11間の隙間Sに垂直な状態で介設される。緩衝板部52の幅寸法は、スタッド材11,11間の隙間Sに挿入可能な幅寸法(隙間Sの幅寸法より僅かに小さい寸法)となっている。緩衝板部52の厚さ寸法は、スタッド材11,11間の隙間Sの厚さ幅寸法より僅かに大きい寸法となっており、緩衝板部52は、スタッド材11,11に両面が押圧された状態で挟持される。
【0020】
係止部51は、緩衝板部52をスタッド材11に係止するためのものであって、緩衝板部52の上端に取り付けられている。係止部51は、水平板部53と垂下板部54とを備えている。水平板部53は、スタッド材11の開口部13に挿通され、開口部13の下縁部上に載置されることで、緩衝材50をスタッド材11に係止する部材である。水平板部53の下面には、緩衝板部52の上端面が接着されている。水平板部53は、緩衝板部52の上端から、緩衝板部52の板厚方向両側に向かって同じ長さ延在しており、緩衝材50が側面視T字状を呈している。いる。水平板部53は、開口部13に挿通可能な幅寸法(開口部13の下縁部の幅寸法よりも僅かに小さい寸法)を備えている。水平板部53の上には、開口部13に挿通される振止め材20が載置される。
【0021】
垂下板部54は、水平板部53の下面から下方に延在している。垂下板部54は、一対設けられ、緩衝板部52の両側に緩衝板部52と間隔をあけて配置されている。垂下板部54と緩衝板部52との間の間隔は、スタッド材11のウエブ部11aの厚さ寸法と同等である。つまり、一対の垂下板部54,54によって、一対のウエブ部11aと緩衝板部52とを挟むこととなる。垂下板部54の垂下長さは、緩衝板部52の高さ寸法の半分程度の長さである。
【0022】
前記構成の緩衝材50は、スタッド材11の開口部13毎に設けられており、緩衝材50の水平板部53の上には、開口部13を挿通した振止め材20が載置されている。
【0023】
振止め材20の設置位置の上方には、スペーサ60が設けられている。スペーサ60は、スタッド材11のリップ部11c,11c間の隙間が閉じないようにするための部材である。スペーサ60は、リップ部11c,11c間に嵌装されている。スペーサ60は、縦板部61と横板部63とを備えている。縦板部61の上端部は、リップ部11cの外側に位置して外側からリップ部11cに当接している。縦板部61の下端部は、上端部よりも幅が小さく、リップ部11c,11c間の隙間を通過してスタッド材11内側に延在している。縦板部61の下端部には、振止め材20が通過する凹部62が形成されている。凹部62は、振止め材20が通過可能な幅寸法を備えており、下方に向かって開口している。横板部63は、縦板部61の上端に連続して屈曲し、スタッド材11の内側に向かって水平に延在している。横板部63の先端部には、外側に拡幅する突出部64が形成されている。突出部64は、リップ部11cの先端部に内側から係合することで、スペーサ60をスタッド材11に係止するための部分である。突出部64は、横板部63の幅方向両側に形成されており、両側のリップ部11cにそれぞれ係合するようになっている。
【0024】
本実施形態に係る壁構造1によれば、一対のスタッド材11,11を突き合わせて縦下地材10を形成することで、スタッド材11を増やした分、縦下地材10の断面積が大きくなるので、特に面外方向において、壁下地の強度を大きくできる。具体的には、本実施形態の壁構造1を形成し、強度試験を行ったところ、以下に示す結果が得られた。
【0025】
前記強度試験では、幅100mmのスタッド材(WS-100)を用いて、従来のスタッド材一本使い(補強なし)の試験体と、一対のスタッド材を抱き合わせ(背中合わせ)して補強を行った試験体とを形成した。試験体の壁高さ(長さ)は5000mm、ヤング率は205000N/mm2、試験体の配置ピッチは303mmである。各試験体の長手方向両端部と中間部の三か所に変位計を設置して変位を計測した。中間部に設けた変位計の計測値を図7に示す。図7のグラフに示すように、補強なしのWS-100では、最大荷重4617Nでの変位が42.48mmであり、剛性が108.69N/mmとなる。スタッド抱き合わせのWS-100では、最大荷重4617Nでの変位が19.97mmであり、剛性が231.25N/mmとなる。つまり、本実施形態の縦下地材10は、補強なしの従来の縦下地材と比較して、剛性が2.13倍となっている。
【0026】
一方、本実施形態の壁構造1では、縦下地材10の背中合わせのスタッド材11,11は互いに固定せず、壁板材30を一方のスタッド材11のみに固定しているので、スタッド材11の接合や壁板材30の設置時のビス止め等の施工手間の増大を防止できる。これによって、施工費用の増大も抑制できる。
【0027】
また、一対のスタッド材11,11の間に、緩衝材50が介設されているので、地震時等にスタッド材11,11同士が一体で揺れることとなる。したがって、スタッド材11,11同士の擦れによって発生する軋み音を抑制できる。緩衝材50は、係止部51と緩衝板部52とを備えているので、係止部51の水平板部53を開口部13の下縁部に載せるだけで、緩衝材50をスタッド材11に容易に設置することができる。また、水平板部53の上に振止め材20が載置されているので、振止め材20を安定した状態で支持することができる。
【0028】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、材質、形状や大きさなど適宜設計変更が可能である。たとえば、前記実施形態では、緩衝材50は、緩衝板部52と係止部51とを備え、側面視T字状を呈しているが、緩衝材50の形状はこれに限定されるものではない。緩衝板部52をスタッド材11の開口部13に係止できる形状であれば、側面視T字状でなくてもよい。
【0029】
また、前記実施形態では、壁構造1が、壁下地の両面に壁板材が敷設された間仕切壁に適用されているが、たとえば、壁下地の片面に壁板材が敷設された他の構造の壁体に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 壁構造
2 ランナー部材
3 ランナー部材
10 縦下地材
11 スタッド材
13 開口部(振止め材挿通孔)
20 振止め材
30 壁板材
50 緩衝材
51 係止部
52 緩衝板部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7