(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048635
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】網目天井構造、網目天井材の支持金具および網目天井材の設置方法
(51)【国際特許分類】
E04B 9/18 20060101AFI20240402BHJP
E04B 9/34 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
E04B9/18 R
E04B9/18 B
E04B9/18 N
E04B9/34 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154655
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】393016837
【氏名又は名称】株式会社桐井製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】楫田 祐也
(57)【要約】
【課題】施工手間や施工時間を低減しつつ、安定して網目天井材を固定する。
【解決手段】野縁受け11と野縁12とを備えた天井下地材10と、線状部材を格子状に組み合わせてなる網目天井材20と、網目天井材20を野縁12に固定する支持金具30とを備えた網目天井構造1であって、支持金具30は、野縁12の下面に当接して固定される固定部31と、固定部31に連続し網目天井材20の線状部材を係止する断面U字状の係止部32とを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
野縁受けと野縁とを備えた天井下地材と、線状部材を格子状に組み合わせてなる網目天井材と、前記網目天井材を前記野縁に固定する支持金具とを備えた網目天井構造であって、
前記支持金具は、前記野縁の下面に当接して固定される固定部と、前記固定部に連続し前記網目天井材の線状部材を係止する断面U字状の係止部とを備えている
ことを特徴とする網目天井構造。
【請求項2】
前記支持金具は、前記網目天井材の前記線状部材を単独で支持する第一支持金具と、前記網目天井材の前記線状部材を2つ支持する第二支持金具との二種を備えており、
前記第一支持金具は、前記固定部の一端部に前記係止部が設けられており、
前記第二支持金具は、前記固定部の両端部に前記係止部がそれぞれ設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の網目天井構造。
【請求項3】
前記網目天井材は、縦横の前記線状部材が互いに上下二段に組み合わされて構成され、下段の前記線状部材が前記野縁に沿った方向になるように配置されており、
前記第二支持金具は、前記網目天井材の連設部分に位置する下段の前記線状部材を支持し、
前記第一支持金具は、上段の前記線状部材を支持する
ことを特徴とする請求項2に記載の網目天井構造。
【請求項4】
前記第二支持金具の前記係止部は、前記固定部から立ち下がる基端部と、前記基端部の下端から延出する底部と、前記底部の先端から立ち上がる先端部と、を備え、
前記基端部は、前記固定部から前記線状部材の二段分立ち下がり、
前記先端部は、前記底部から前記線状部材の一段分立ち上がっている
ことを特徴とする請求項3に記載の網目天井構造。
【請求項5】
野縁受けと野縁とを備えた天井下地材に、線状部材を格子状に組み合わせてなる網目天井材を固定する支持金具であって
前記野縁の下面に当接して固定される固定部と、前記固定部に連続し前記網目天井材の線状部材を係止する断面U字状の係止部とを備えている
ことを特徴とする網目天井材の支持金具。
【請求項6】
前記固定部の両端部に前記係止部がそれぞれ設けられ、
前記網目天井材の連設部分において隣り合う前記網目天井材の周縁部の前記線状部材をそれぞれ支持する
ことを特徴とする請求項5に記載の網目天井材の支持金具。
【請求項7】
前記固定部の一端部に前記係止部が設けられ、
前記網目天井材の前記線状部材を単独で支持する
ことを特徴とする請求項5に記載の網目天井材の支持金具。
【請求項8】
野縁受けと野縁とを備えた天井下地材に、線状部材を格子状に組み合わせてなる網目天井材を設置する網目天井材の設置方法であって
前記野縁の下面に当接して固定される固定部と、前記固定部に連続し前記網目天井材の線状部材を係止する断面U字状の係止部とを備えた支持金具を、前記野縁の下面に固定する支持金具固定工程と、
前記係止部に、前記網目天井材の周縁部の一辺の前記線状部材を係止する網目天井材係止工程と、
前記一辺の前記線状部材を中心に前記網目天井材を回動させ、前記一辺に対向する他辺の前記線状部材を前記支持金具に対向する位置の野縁高さまで上昇させる網目天井材回動工程と、
前記網目天井材の周縁部の前記他辺の前記線状部材を、別途の前記支持金具で野縁に固定する網目天井材固定工程と、を備えた
ことを特徴とする網目天井材の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、網目天井構造、網目天井材の支持金具および網目天井材の設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤーメッシュ状の網目天井材は、天井の上部構造体に吊り下げられた吊り具または天井下地材に固定されている。吊り具は、例えば、天井壁(上部構造体)から垂下する懸架部材の下端部に設けられた吊り具本体にて網目天井材を固定する。吊り具本体は、特許文献1に示すように、下端部にワイヤーメッシュが嵌合する溝とネジ部が形成されており、下部からネジ部に螺合するナット状の保持部と、吊り具本体の下端部とで網目天井材を挟持するものがあった。一方、天井下地材は、メインバーとクロスバーとからなる下地材を格子状に組み付けてなる天井構造枠を備えたシステム天井の天井下地材が用いられている。この天井下地材では、メインバーとクロスバーで区画されたグリッド内に、正方形の網目天井材がそれぞれ配置されている。網目天井材は、断面逆T字状のメインバーとクロスバーの底面平板部状に載置され、押え金具にて固定されている。天井下地材で網目天井材を支持すると、下地材の強度が高く、安定して網目天井材を固定できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、システム天井の天井下地材に網目天井材を取り付けると、一枚の網目天井材の大きさが小さくなり、網目天井材の取付作業の施工手間と施行時間の増大を招いていた。また、特許文献1の吊り具本体では、支持できる網目天井材の大きさが限定され、設置枚数が増大する。
【0005】
このような観点から、本発明は、施工手間や施工時間を低減しつつ、安定して網目天井材を固定することができる網目天井構造、網目天井材の支持金具および網目天井材の設置方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための第一の本発明は、野縁受けと野縁とを備えた天井下地材と、線状部材を格子状に組み合わせてなる網目天井材と、前記網目天井材を前記野縁に固定する支持金具とを備えた網目天井構造であって、前記支持金具は、前記野縁の下面に当接して固定される固定部と、前記固定部に連続し前記網目天井材の線状部材を係止する断面U字状の係止部とを備えていることを特徴とする。
【0007】
本発明の網目天井構造によれば、天井下地材の下方に、野縁受けと野縁とで区画されたグリッドよりも大きい網目天井材を設置できるので、網目天井材の取付枚数を少なくできる。よって、施工手間や施工時間を低減できる。また、天井下地材が格子状に組まれた野縁受けと野縁とで構成されているので、天井下地材の強度が高く安定して網目天井材を固定することができる。さらに、固定部と係止部とを備えた支持金具を用いることで、網目天井材を容易且つ確実に野縁に固定することができる。
【0008】
本発明の網目天井構造においては、前記支持金具は、前記網目天井材の前記線状部材を単独で支持する第一支持金具と、前記網目天井材の前記線状部材を2つ支持する第二支持金具との二種を備えており、前記第一支持金具は、前記固定部の一端部に前記係止部が設けられており、前記第二支持金具は、前記固定部の両端部に前記係止部がそれぞれ設けられているものが好ましい。このような構成によれば、第一支持金具を網目天井材の中間部や周縁部に追加して野縁に固定することで、固定強度を高めることができる。また、第二支持金具を用いることで、隣り合う網目天井材を連結して固定できる。
【0009】
本発明の網目天井構造においては、前記網目天井材は、縦横の前記線状部材が互いに上下二段に組み合わされて構成され、下段の前記線状部材が前記野縁に沿った方向になるように配置されており、前記第二支持金具は、前記網目天井材の連設部分に位置する下段の前記線状部材を支持し、前記第一支持金具は、上段の前記線状部材を支持するものが好ましい。このような構成によれば、網目天井材を、上下二段の線状部材の高さに応じて、適宜支持することができる。
【0010】
本発明の網目天井構造においては、前記第二支持金具の前記係止部は、前記固定部から立ち下がる基端部と、前記基端部の下端から延出する底部と、前記底部の先端から立ち上がる先端部と、を備え、前記基端部は、前記固定部から前記線状部材の二段分立ち下がり、前記先端部は、前記底部から前記線状部材の一段分立ち上がっているものが好ましい。このような構成によれば、第二支持金具を野縁の下面に設置した後に、網目天井材を、先端部の上方の隙間を通して底部の上に移動することができる。
【0011】
前記課題を解決するための第二の本発明は、野縁受けと野縁とを備えた天井下地材に、線状部材を格子状に組み合わせてなる網目天井材を固定する支持金具であって、前記野縁の下面に当接して固定される固定部と、前記固定部に連続し前記網目天井材の線状部材を係止する断面U字状の係止部とを備えていることを特徴とする網目天井材の支持金具である。
【0012】
本発明の網目天井材の支持金具によれば、請求項1に係る発明と同様に、天井下地材の下方に、野縁と野縁受けとで区画されたグリッドよりも大きい網目天井材を設置できるので、網目天井材の取付枚数を少なくできる。よって、施工手間や施工時間を低減できる。また、固定部と係止部とを備えた支持金具を用いることで、網目天井材を容易且つ確実に野縁に固定することができる。
【0013】
本発明の網目天井材の支持金具においては、前記固定部の両端部に前記係止部がそれぞれ設けられ、前記網目天井材の連設部分において隣り合う前記網目天井材の周縁部の前記線状部材をそれぞれ支持するものが好ましい。このような構成によれば、隣り合う網目天井材の連設部分において、網目天井材同士を連結して固定できる。
【0014】
本発明の網目天井材の支持金具においては、前記固定部の一端部に前記係止部が設けられ、前記網目天井材の前記線状部材を単独で支持するものが好ましい。このような構成によれば、網目天井材の中間部や周縁部を野縁に追加固定できるので、固定強度を高めることができる。
【0015】
前記課題を解決するための第三の本発明は、野縁受けと野縁とを備えた天井下地材に、線状部材を格子状に組み合わせてなる網目天井材を設置する網目天井材の設置方法であって、前記野縁の下面に当接して固定される固定部と、前記固定部に連続し前記網目天井材の線状部材を係止する断面U字状の係止部とを備えた支持金具を、前記野縁の下面に固定する支持金具固定工程と、前記係止部に、前記網目天井材の周縁部の一辺の前記線状部材を係止する網目天井材係止工程と、前記一辺の前記線状部材を中心に前記網目天井材を回動させ、前記一辺に対向する他辺の前記線状部材を前記支持金具に対向する位置の野縁高さまで上昇させる網目天井材回動工程と、前記網目天井材の周縁部の前記他辺の前記線状部材を、別途の前記支持金具で野縁に固定する網目天井材固定工程と、を備えたことを特徴とする網目天井材の設置方法である。
【0016】
本発明の網目天井材の設置方法によれば、請求項1に係る発明と同様に、施工手間や施工時間を低減できるとともに、安定して網目天井材を固定することができる。さらに、一方の支持金具に網目天井材を係止して仮固定した状態で、網目天井材の回動と固定を行うことができるので、作業員が網目天井材を支える重さを小さくでき、作業を行い易い。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る網目天井構造、網目天井材の支持金具および網目天井材の設置方法によれば、施工手間や施工時間を低減しつつ、安定して網目天井材を固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係る網目天井構造を示した見上図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る網目天井構造を示した
図1のA線矢視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る網目天井構造を示した
図1のB線矢視図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る網目天井構造の支持金具を示した斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る網目天井構造の支持金具を示した斜視図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る網目天井構造の網目天井材と支持金具との係止状態を示した斜視図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る網目天井構造の網目天井材と支持金具との係止状態を示した斜視図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る網目天井構造の網目天井材と支持金具との係止状態を示した斜視図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る網目天井構造の設置方法を説明するための図であって、(a)は網目天井材係止工程を示した側面図、(b)は網目天井材回動工程を示した側面図、(c)は網目天井材固定工程を示した側面図である。
【0019】
本発明の実施形態に係る網目天井構造、網目天井材の支持金具および網目天井材の設置方法について図面を参照しつつ詳細に説明する。まず、網目天井構造および網目天井材の支持金具の構造を説明する。
図1乃至
図3に示すように、かかる網目天井構造1は、天井下地材10と、網目天井材20と、支持金具30とを備えている。
【0020】
天井下地材10は、野縁受け11と野縁12とを備えている。野縁受け11は、天井躯体13から垂下された吊ボルト14の下端部に吊金具15を介して支持される部材である。野縁受け11は、断面C型のチャンネル材にて構成されており、ウェブが縦になるように配置されている。野縁受け11は、複数設けられ、所定の間隔をあけて互いに平行になるように並列されている。
【0021】
野縁12は、野縁受け11に係止金具16を介して支持される部材であって、断面溝型の長尺部材からなる。溝型の両側面の上端部には、幅方向内側にそれぞれ突出するリップ部が形成されている。幅方向両側のリップ部の下側には係止金具16が挿入されており、係止金具16がリップ部を下方から係止している。下側から溝型の底面には、支持金具30がビス等の固定部材によって固定される。野縁12は、平面視で野縁受け11に対して直交する方向に延在している。野縁12は、複数設けられ、所定の間隔をあけて互いに平行になるように並列されている。つまり、野縁12と野縁受け11とで、平面視格子状を呈している。
【0022】
網目天井材20は、線状部材である鋼線を格子状に組み付けてなるワイヤーメッシュにて構成されている。網目天井材20は、野縁受け11と野縁12とで区画されたグリッドよりも大きく、野縁受け11の配置ピッチの整数倍の長さの辺×野縁12の配置ピッチの整数倍の長さの辺の矩形形状になっている。本実施形態では、網目天井材20は、縦横の鋼線を上下に配した二段形状になっており、上段ワイヤー21と下段ワイヤー22とを備えている。上段ワイヤー21は、上段の線状部材であって、野縁受け11の長手方法に沿って延在している。下段ワイヤー22は、下段の線状部材であって、野縁12の長手方向に沿って延在している。上段ワイヤー21は、複数設けられ、野縁12の長手方向に所定の間隔をあけて平行配置されている。下段ワイヤー22は、複数設けられ、野縁受け11の長手方向に所定の間隔をあけて平行配置されている。上段ワイヤー21と下段ワイヤー22は、平面視で互いに直交している。上段ワイヤー21の配置ピッチと下段ワイヤー22の配置ピッチは同等であり、上段ワイヤー21と下段ワイヤー22とで正方形が区画されている。網目天井材20は、上段ワイヤー21と下段ワイヤー22が支持金具30に係止されることで、野縁12に固定される。
【0023】
支持金具30は、網目天井材20を野縁12に固定する部材である。
図4および
図5に示すように、支持金具30は、金属製の板状部材を屈曲させて構成されており、固定部31と係止部32とを備えている。支持金具30は、第一支持金具33と第二支持金具34との二種を備えている。第一支持金具33は、網目天井材20の線状部材を単独で支持する金具である。第二支持金具34は、網目天井材20の線状部材を2つ支持する金具である。
【0024】
固定部31は、野縁12の下面に当接して固定される平板状の部位であり、平面視で矩形形状を呈している。固定部31の中央部(対角線の交点部分)には、固定孔35が形成されている。固定孔35は、支持金具30を野縁12に固定するためのビスV(
図6,7,8参照)が挿通する貫通孔である。ビスVは、固定部31の下方から上方に向かって固定孔35に挿通し、野縁12に底面に打ち込まれる。
【0025】
係止部32は、網目天井材の線状部材を係止する部位であって、固定部31に連続して形成されている。係止部32は、基端部36と底部37と先端部38とを備え、断面U字状を呈している。基端部36は、固定部31に連続する板状部であり、固定部31の端部から下方に向かって直交して立ち下がっている。底部37は、基端部36に連続する板状部であり、網目天井材の線状部材が載置される支持部である。底部37は、基端部の下端から固定部31から離れる側に直交して延出している。先端部38は、底部37に連続する板状部であり、底部37の先端から上方に向かって直交して立ち上がっている。先端部38は、底部37に載置された線状部材が幅方向にずれないように押える立上り壁部である。
【0026】
第一支持金具33は、
図4に示すように、固定部31の一端部に係止部32が設けられている。第一支持金具33の係止部32では、基端部36は、固定部31から線状部材の一段分(線状部材の高さ寸法(直径))立ち下がっている。底部37は、線状部材の一段分(線状部材の幅寸法(直径))延出している。先端部38は、底部37から線状部材の一段分(基端部36と同じ高さ寸法)立ち上がっている。第一支持金具33は、上段ワイヤー21を支持するものであって、野縁12の底面で上段ワイヤー21と交差する部分に取り付けられている。第一支持金具33は、係止部32の軸方向(支持する線状部材の軸方向)が野縁12の長手方向に直交する方向に延在するように配置される(
図1,6,7参照)。第一支持金具33は、網目天井材20の周縁部の上段ワイヤー21を支持する位置と、下段ワイヤー22の長手方向中間部で交差する上段ワイヤー21を支持する位置に配置されている(
図1参照)。
【0027】
第二支持金具34は、
図5に示すように、固定部31の両端部に係止部32がそれぞれ設けられている。第二支持金具34の係止部32では、基端部36は、固定部31から線状部材の二段分(線状部材の高さ寸法(直径)の二倍)立ち下がっている。底部37は、線状部材の一段分(線状部材の幅寸法(直径))延出している。先端部38は、底部37から線状部材の一段分立ち上がっている。つまり、先端部38は、基端部36の上端から線状部材の一段分低くなっている。第二支持金具34は、下段ワイヤー22を支持するものであって、網目天井材20の周縁部の下段ワイヤー22が配置される位置の野縁12の底面に取り付けられている。第二支持金具34は、係止部32の軸方向(支持する線状部材の軸方向)が野縁12の長手方向に沿った方向に延在するように配置される(
図1,8参照)。第二支持金具34は、網目天井材20の周縁部の下段ワイヤー22の長手方向両端部と中間部に配置されている(
図1参照)。網目天井材20の連設部分(隣り合って配置された部分)において、第二支持金具34は、隣り合う網目天井材20,20の周縁部の下段ワイヤー22同士が所定の間隔(野縁12の幅寸法と同等の間隔)をあけて互いに平行になるように、各下段ワイヤー22を両端の係止部32,32でそれぞれ支持している。
【0028】
次に、
図9を参照しながら、本実施形態の網目天井材20の設置方法を説明する。かかる網目天井材20の設置方法は、野縁受け11と野縁12とを備えた天井下地材10に、線状部材を格子状に組み合わせてなる網目天井材20を設置する方法である。網目天井材20の設置方法は、支持金具固定工程と、網目天井材係止工程と、網目天井材回動工程と、網目天井材固定工程と、を備えている。
【0029】
支持金具固定工程は、
図9の(a)に示すように、支持金具30を野縁12の底面の下側に固定する工程である。具体的には、網目天井材20の連設部分となる野縁12に第二支持金具34を取り付ける。第二支持金具34は、両端の係止部32,32が、野縁12の幅方向両側に位置するように配置して、固定部31を下側からビス止めする。
【0030】
網目天井材係止工程は、係止部32に、網目天井材20の周縁部の一辺の線状部材を係止する工程である。具体的には、第二支持金具34の係止部32に、網目天井材20の周縁部の下段ワイヤー22を係止する。このとき、先端部38の立上り寸法は、線状部材の一段分であるので、先端部38の上方に線状部材の高さ分の隙間が存在している。よって、第二支持金具34を固定後に、下段ワイヤー22を先端部38の上方の隙間を通して底部37上に移動させることができる。このとき、下段ワイヤー22は、係止部32の底部37上に載置され、幅方向両側が基端部36と先端部38とで挟まれるので落下しない状態となり、第二支持金具34に仮止めされる。また、下段ワイヤー22は、断面円形であるので係止部32に対して回転可能となっている。
【0031】
網目天井材回動工程は、網目天井材20の周縁部の一辺の線状部材を中心に網目天井材20を回動させ、一辺に対向する他辺の線状部材を支持金具30に対向する位置の野縁12の高さまで上昇させる工程である。具体的には、第二支持金具34の係止部32に係止された下段ワイヤー22を中心に網目天井材20を回動させる。すると、係止された下段ワイヤー22に対向する他辺の部分が円弧状に回動する。他方の部分を固定される野縁12の高さまで上昇させ、網目天井材20を水平状態にする(
図9の(b)参照)。
【0032】
網目天井材固定工程は、網目天井材20の周縁部のうち、他辺の線状部材を、支持金具30で野縁12に固定する工程である。具体的には、網目天井材20の下段ワイヤー22および野縁12の下方から第二支持金具34を取り付けて、係止部32で下段ワイヤー22を係止し、下方からビスVを固定部31および野縁12の底面に打ち込んで、網目天井材20を固定する(
図9の(c)参照)。これによって、網目天井材20の水平状態が保持される。その後、所定の位置に第一支持金具33を追加固定して、網目天井材20の固定が完了する。
【0033】
本実施形態に係る網目天井構造1および支持金具30によれば、天井下地材10の下方に、野縁受け11と野縁12とで区画されたグリッドよりも大きい網目天井材20を設置できるので、網目天井材20の取付枚数を少なくできる。よって、施工手間および施工時間を低減することができるとともに、施工費用も低減できる。
【0034】
また、天井下地材10が格子状に組まれた野縁受け11と野縁12とで構成されているので、天井下地材10の強度が高く、安定した状態で網目天井材20を支持することができる。さらに、固定部31と係止部32とを備えた支持金具30を用いることで、網目天井材20を容易且つ強固に野縁12に固定することができる。
【0035】
特に、支持金具30は、網目天井材20の線状部材を単独で支持する第一支持金具33と、網目天井材20の線状部材を2つ支持する第二支持金具34との二種を備えているので、網目天井材20の固定位置のバリエーションが増える。具体的には、第二支持金具34を用いることで、隣り合う網目天井材20を所定の間隔(固定部31の長さ寸法)をあけて連結して固定できる。さらに、第一支持金具33を、網目天井材20の中間部や周縁部等の適宜の場所に追加することで、野縁12への固定個所数が多くなる。したがって、網目天井材20の野縁12への固定強度を高めることができる。
【0036】
第一支持金具33は網目天井材20の上段ワイヤー21を支持し、第二支持金具34は網目天井材20の下段ワイヤー22を支持するので、上下二段に形成された網目天井材20を、上下二段の線状部材の高さに応じて、適宜支持することができる。そして、第二支持金具34の係止部32では、基端部36が固定部31から線状部材の二段分立ち下がり、先端部38が底部37から線状部材の一段分立ち上がっているので、第二支持金具34を野縁12の下面に設置した後に、網目天井材20を、先端部38の上方の隙間を通して底部37上に移動させることができる。
【0037】
本実施形態に係る網目天井材20の設置方法によれば、先に設置した一方の第二支持金具34に網目天井材20を係止して仮固定することができる。そして網目天井材20を仮固定した状態で、網目天井材20の回動と固定を行うことができるので、作業員が網目天井材20を支える力を小さくでき、作業員の負担を軽減できる。
【0038】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は前記の実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、材質、形状や大きさなど適宜設計変更が可能である。たとえば、前記実施形態では、網目天井材20は、縦横の鋼線を上下に配した二段形状になっているが、これに限定されるものではなく、縦横の鋼線が同じ高さで組み合わされたフラット形状であってもよい。この場合、第一支持金具の基端部の立下り寸法と第二支持金具の基端部の立下り寸法は同じとする。基端部の立下り寸法を線状部材の一段分とした場合は、網目天井材を野縁の下に配置し下方から押さえた状態で各支持金具をビス止めする。一方、基端部の立下り寸法を線状部材の二段分とした場合は、前記実施形態と同様に、網目天井材を第二支持金具に係止した後に回動させて、第一支持金具をビス止めする方法で設置することができる。
【0039】
また、前記実施形態では、第二支持金具34の先端部38は、底部37から線状部材の一段分立ち上がっているが、先端部38の立上り寸法はこれに限定されるものではない。下段ワイヤーが幅方向にずれるのを防止できれば、先端部の立上り寸法は線状部材の一段分より小さくてもよい。また、先端部の上方に、下段ワイヤーが通過可能な隙間を確保できるのであれば、先端部の立上り寸法は線状部材の一段分より大きくてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 網目天井構造
10 天井下地材
11 野縁受け
12 野縁
20 網目天井材
21 上段ワイヤー(線状部材)
22 下段ワイヤー(線状部材)
30 支持金具
31 固定部
32 係止部
33 第一支持金具
34 第二支持金具
36 基端部
37 底部
38 先端部