(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048639
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】感度試験装置
(51)【国際特許分類】
G08B 17/10 20060101AFI20240402BHJP
G08B 17/00 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
G08B17/10 K
G08B17/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154663
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000111074
【氏名又は名称】ニッタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】石井 藍理
(72)【発明者】
【氏名】浅妻 彩香
【テーマコード(参考)】
5C085
5G405
【Fターム(参考)】
5C085AA03
5C085BA33
5C085CA11
5C085FA21
5C085FA25
5G405AA01
5G405AB02
5G405CA13
5G405CA53
5G405FA17
(57)【要約】
【課題】一度に複数の煙感知器の検査を行うことで試験時間を短縮することができる煙感知器の感度試験装置を提供する。
【解決手段】発煙装置により発生された煙が導入される内部空間を備えた煙供給部と、1または2以上の試験対象の煙感知器が着脱可能に設置される取付け板が配設され煙供給部から煙が流入される試験空間を備えた試験器本体部と、煙感知器の感度を判定するための制御装置とを備えた煙感知器の感度を検査する感度試験装置において、試験空間は取付け板により複数の試験室に仕切られ、複数の試験室にはそれぞれ煙濃度検出手段が配設され、複数の試験室はそれぞれ煙供給部の壁体に形成された開口部を介して煙供給部の内部空間に連通されており、取付け板は当該取付け板の感知器取付け面と平行な方向に挿抜可能に構成され、制御装置は煙濃度検出手段からの信号に基づいて取付け板に設置されている煙感知器の感度を判定するようにした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発煙装置により発生された煙が導入される内部空間を備えた煙供給部と、1または2以上の試験対象の煙感知器が着脱可能に設置される取付け板が配設され前記煙供給部から煙が流入される試験空間を備えた試験器本体部と、煙感知器の感度を判定するための制御装置と、を備えた煙感知器の感度を検査する感度試験装置であって、
前記試験空間は、前記取付け板により複数の試験室に仕切られ、
前記複数の試験室にはそれぞれ煙濃度検出手段が配設されており、
前記複数の試験室はそれぞれ前記煙供給部の壁体に形成された開口部を介して前記煙供給部の前記内部空間に連通されており、前記取付け板は当該取付け板の感知器取付け面と平行な方向に挿抜可能に構成され、
前記制御装置は、前記煙濃度検出手段からの信号に基づいて前記取付け板に設置されている煙感知器の感度を判定することを特徴とする感度試験装置。
【請求項2】
前記試験器本体部が複数個連結され、前記煙供給部は複数個の前記試験器本体部に対応する長さを有するように構成されているとともに、
前記制御装置は複数個の前記試験器本体部内に配設された前記取付け板にそれぞれ設置されている煙感知器の感度を検査可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の感度試験装置。
【請求項3】
前記煙供給部の前記開口部には煙流入量調整手段がそれぞれ設けられており、
前記制御装置は、前記煙濃度検出手段からの信号に基づいて前記煙流入量調整手段を制御して対応する前記試験室内の煙濃度を調整するように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の感度試験装置。
【請求項4】
前記取付け板は当該取付け板に設置されている煙感知器の端子に一方の端部が接続された配線の他端部が接続された端子部を備え、
前記煙供給部の壁体には前記煙感知器の前記端子部が挿抜可能な複数個の接続部が設けられ、
前記制御装置は、前記複数個の接続部のそれぞれに前記煙感知器の前記端子部が接続されているか判定可能であり、前記接続部に前記端子部が接続されていない場合には、前記試験室に対応する前記煙流入量調整手段により前記開口部を閉鎖することを特徴とする請求項3に記載の感度試験装置。
【請求項5】
前記取付け板の前記感知器取付け面と反対の面には、当該取付け板の挿抜方向と同一方向に移動可能に、前記試験室の前記煙供給部と反対側の開口を閉鎖するための蓋体が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の感度試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、流入した煙の濃度が所定のしきい値に達したことを感知して火災の発生を検出する機能を有する煙感知器等の感度試験装置に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
火災感知器には、暗箱と呼ばれる煙検出室内に、それぞれの光軸が互いに交差するように発光素子と受光素子とを配置し、発光素子から放射されて煙検出室内に流入した煙の粒子によって散乱された光を受光素子に受光させ、その受光量が所定のレベルに達したことを感知すると火災発報信号を出力する機能を有する煙感知器がある。
煙感知器は長年使用していると暗箱内部に埃や塵が堆積あるいは付着して、感知器の感度が変化してしまうおそれがあるため、定期的に点検を行う必要がある。そこで、設置場所に持ち込んで煙感知器の感度を検査する可搬型の感度試験装置が開発され実用化されている。また、感度試験装置には、出荷前の感知器を工場にて検査する感度試験装置もある。このうち、可搬型の感度試験装置は、小型、軽量であることが要求される。また、同時に複数の感知器の感度試験が行えることが望まれる。
【0003】
従来、煙感知器の感度試験装置に関する発明として、例えば特許文献1~3に記載されているものがある。
このうち、特許文献1に記載されている感度試験装置は、1つの筐体の上部に試験対象となる煙感知器および濃度検出器が配置される試験空間を、また下部に擬似煙を発生させて試験空間に放出させる発煙容器収納部および循環用のファンを備えた発煙部を設け、発煙容器収納部内に、加熱により水溶性液体を霧化して疑似煙を発生させるためのヒータを配設し、濃度検出器に供給する電源からヒータに電力を供給するようにしたものである。また、特許文献1には、試験装置とは別個の構成された発煙装置により発生された疑似煙を筐体下部の空間に流入させる構成が記載されている。
【0004】
一方、特許文献2に記載されている感度試験装置は、試験対象となる複数の煙感知器が収容される試験空間を有する収容部と、試験空間に供給する疑似煙を発生させる煙発生部と、煙感知器が既定の範囲内で疑似煙を感知するか否かの判定を行う制御部と、上蓋部と、煙発生部から発生した疑似煙を試験空間内に循環させるファンとを備え、制御部は試験終了を表す条件が満たされると、煙発生部への電力を停止させるようにしたものである。また、特許文献2の試験装置は、1つの試験空間に複数の煙感知器を配設して同時に試験することができるように構成されている。
【0005】
特許文献3に記載されている感度試験装置は、煙を発生する煙発生手段と、煙発生手段で発生した煙により煙感知器の試験を行う試験部とを備え、試験部は、煙が通過する試験空間を内部に有する保持器を備え、煙感知器の煙を感知する部分である検煙部を含む一部分が、保持器の試験空間に設置されて煙感知器の試験を行うようにしたものである。なお、特許文献3には、試験空間を有する複数の保持器を並列に配設して、共通の発煙装置からの煙を各保持器内の試験空間に流入させる構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-168172号公報
【特許文献2】特開2019-207471号公報
【特許文献3】特開2022-52123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されている感度試験装置は、1度に1つの煙感知器を試験する構成であるため、試験効率が悪いという課題がある。
これに対し、特許文献2に記載されている感度試験装置は、持ち運びが可能であるとともに、1つの試験空間内に複数の煙感知器を配設して同時に試験することができるという利点を有するものの、複数の感知器取付けベースが互いに近接して設けられたプレート状の台座部が筐体の底壁と平行に設けられた構成であるため、試験空間内の清掃がしにくいという課題がある。
【0008】
また、特許文献1及び2の感度試験装置は、いずれも筐体上部の試験空間と筐体下部の煙発生空間が常時連通されている構成であるため、試験終了後に感知器を取出す際に煙発生空間内の煙も排出されてしまい、無駄に排出される煙が多く発煙物質の消費量が多い。さらに、特許文献1及び2いずれの試験装置も、感知器取付けベースが不要な埋込み型の煙感知器の試験はできないという課題がある。
一方、特許文献3に記載されている感度試験装置は、同時に複数の感知器の試験を行うことで試験時間を短縮できるとともに試験空間を狭くすることで発煙量を低減することができるという利点を有するものの、試験空間の数は固定されており柔軟性が低く、かつ運搬を容易にすることについて何ら考慮していない。
【0009】
本発明は上記のような課題に着目してなされたものでその目的とするところは、一度に複数の煙感知器の検査を行うことで試験時間を短縮することができるとともに発煙量が少なくて済む感度試験装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、装置の運搬や試験空間内部の清掃がし易くなり取扱い性が良好な感度試験装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本出願に係る発明は、
発煙装置により発生された煙が導入される内部空間を備えた煙供給部と、1または2以上の試験対象の煙感知器が着脱可能に設置される取付け板が配設され前記煙供給部から煙が流入される試験空間を備えた試験器本体部と、煙感知器の感度を判定するための制御装置と、を備えた煙感知器の感度を検査する感度試験装置において、
前記試験空間は、前記取付け板により複数の試験室に仕切られ、
前記複数の試験室にはそれぞれ煙濃度検出手段が配設されており、
前記複数の試験室はそれぞれ前記煙供給部の壁体に形成された開口部を介して前記煙供給部の前記内部空間に連通されており、前記取付け板は当該取付け板の感知器取付け面と平行な方向に挿抜可能に構成され、
前記制御装置は、前記煙濃度検出手段からの信号に基づいて前記取付け板に設置されている煙感知器の感度を判定するように構成したものである。
【0011】
上記のような構成によれば、試験空間は、煙感知器が着脱可能な取付け板により複数の試験室に仕切られ、小空間の複数の試験室が形成されることで、一度に複数の煙感知器の検査を行うことができ、試験時間を短縮することができる。また、試験対象の感知器を設置する取付け板が感知器取付け面と平行な方向に挿抜可能な構成であるため、取付け板により仕切られた試験室の空間を小さくすることができ、発煙量が少なくて済むようになるとともに、試験室の空間が狭くても取付け板を外すことで装置の運搬や試験空間内部の清掃がし易くなり取扱い性が良好となる。さらに、取付け板の交換が可能であることから、取付けベースを有する煙感知器と埋込み形の煙感知器の両方の感度試験を容易に行うことが可能となる。
【0012】
ここで、望ましくは、前記試験器本体部が複数個連結され、前記煙供給部は複数個の前記試験器本体部に対応する長さを有するように構成されているとともに、
前記制御装置は複数個の前記試験器本体部内に配設された前記取付け板にそれぞれ設置されている煙感知器の感度を検査可能に構成する。
かかる構成によれば、複数の試験器本体を連結して同時に多数の煙感知器の感度を検査することができるとともに、1つの発煙装置で発生した煙を煙供給部へ流入させることで、複数の試験室へ煙を導入することができるため、同時に複数の煙感知器の感度を検査するために複数の発煙装置を用意する必要がなくなり取扱いが容易になる。
【0013】
また、望ましくは、前記煙供給部の前記開口部には煙流入量調整手段がそれぞれ設けられており、
前記制御装置は、前記煙濃度検出手段からの信号に基づいて前記煙流入量調整手段を制御して対応する前記試験室内の煙濃度を調整するように構成する。
かかる構成によれば、各試験室内の煙濃度をそれぞれ独立して調整することができるとともに、時間差をおいて各試験室で煙感知器の感度を検査することができる。
【0014】
さらに、望ましくは、前記取付け板は当該取付け板に設置されている煙感知器の端子に一方の端部が接続された配線の他端部が接続された端子部を備え、
前記煙供給部の壁体には前記煙感知器の前記端子部が挿抜可能な複数個の接続部が設けられ、
前記制御装置は、前記複数個の接続部のそれぞれに前記煙感知器の前記端子部が接続されているか判定可能であり、前記接続部に前記端子部が接続されていない場合には、前記試験室に対応する前記煙流入量調整手段により前記開口部を閉鎖するようにする。
上記のような構成によれば、試験対象の感知器を設置する取付け板が挿入されていない試験室に煙が導入されるのを回避して、不適切な状態で試験がなされるのを防止することができる。また、煙感知器の取付け板に端子部が設けられていることから、試験室内で面倒な配線接続を行う必要がなく、試験に伴う作業が容易となる。
【0015】
さらに、望ましくは、前記取付け板の前記感知器取付け面と反対の面には、当該取付け板の挿抜方向と同一方向に移動可能に、前記試験室の前記煙供給部と反対側の開口を閉鎖するための蓋体が設けられているようにする。
かかる構成によれば、試験器本体に試験室の煙供給部と反対側の開口(試験室の上部の開口)を閉鎖するための上蓋を設ける必要がなく、試験器本体の構成を簡単にすることができるとともに、取付け板が接続されていない状態での不要な試験を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の感度試験装置によれば、煙感知器の設置場所へ搬送して使用することが可能であり、一度に複数の煙感知器の検査を行うことで試験時間を短縮することができる。また、試験対象の感知器を設置する取付け板により試験器本体の試験空間を複数の試験室に仕切るため、個々の試験室の空間を小さくすることができ、発煙量が少なくて済む。さらに、感知器取付け板が挿抜可能な構成であるため、装置の運搬や試験空間内部の清掃がし易くなり取扱い性が向上するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る煙感知器の感度試験装置の一実施形態の概略構成を示す装置構成図である。
【
図2】感度試験装置および煙供給部内の煙安定室の電気系統の構成および制御系の構成の例を示すブロック図である。
【
図3】実施形態の感度試験装置による試験手順を示すフローチャートである。
【
図4】実施形態の感度試験装置のより具体的な実施例を示す装置構成図である。
【
図5】実施形態の感度試験装置の他の実施例を示す装置構成図である。
【
図6】(A),(B),(C)は
図5の実施例の感知器取付け板に設けたスライド可能な上蓋の動作を示す斜視図である。
【
図7】実施形態の感度試験装置を拡張した構成例を示す斜視図である。
【
図8】
図5の実施例の感知器取付け板のより具体的な構成を示す斜視図である。
【
図9】(A),(B)は
図8の実施例の感知器取付け板に設けた扉を開いた状態を示す斜視図である。
【
図10】
図5の実施例の感度試験装置の変形例を示す斜視図である。
【
図11】
図5の感度試験装置の感知器取付け板の変形例を示す斜視図である。
【
図12】(A),(B),(C)は感知器取付け板に装着する感知器の他の設置例を示す斜視図である。
【
図13】(A),(B)は感知器取付け板の上面に設ける取っ手の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1には、本発明に係る煙感知器の感度試験装置の一実施形態の概略構成を示す。この実施形態の感度試験装置は、複数の試験室11を有する試験器本体部10、試験器本体部10の下部に接合されて各試験室へ供給される煙を誘導するとともに導入された煙の濃度を均一にするための煙安定室を有する煙供給部21、連結パイプ22を介して上記煙供給部21に接続され煙を煙供給部21内部へ流入させる発煙装置23、感度試験装置全体を制御し感知器の感度の判定を行う制御装置24を備えている。
【0019】
上記試験器本体部10は、試験対象の煙感知器を装着可能な一対の感知器取付け板12を感知器の取付け面が対向した状態で所定の間隔をおいて配設することで試験室11を構成するとともに、感知器取付け板12の数を増加させることで任意の数の試験室11を構築することができる。また、各試験室11の上部には開閉可能な上蓋11Aが設けられており、上蓋11Aを開いて感知器取付け板12を出し入れすることができるように構成されている。試験器本体部10に感知器取付け板12を配設し、上蓋11Aを閉じることによって密閉された試験室11が形成される。図示しないが、感知器取付け板12の内側の取付け面には、感知器を取付けるための取付けベース(感知器ベース)が設けられている。
【0020】
上記煙供給部21は、試験器本体部の下部に一体に設けられているが、別体として試験室11の数に応じた長さとなるように、試験室11の連結方向の長さに等しい長さを有するユニットを複数連結して構成しても良いし、1つの試験室11の長さをLwとすると、長さがそれぞれLw、2Lw、3Lw、……の複数の煙供給部を予め用意しておいて、構築する試験室の数に応じて使い分けるようにしても良い。また、煙供給部21内には煙の供給圧力を調整するためのファンを内蔵しても良い。なお、煙供給部21は、試験器本体部10の下部の他に側部等に設けられても良く、その接合箇所は問わない。
【0021】
また、煙供給部21内には、試験器本体部10の各感知器取付け板12へ電源を供給したり信号を伝送したりするケーブル25が配設されており、このケーブル25の一端には制御装置24から引き出された接続ケーブル26がコネクタ27を介して接続されるように構成されている。また、煙供給部21内にファンを設ける場合には、上記ケーブル25を介してファンへ電力を供給するように構成される。
なお、制御装置24は、マイクロプロセッサ(CPU)およびROM(リードオンリメモリ)やRAM(ランダムアクセスメモリ)などの記憶手段により構成される。また、制御装置24にはバッテリのような電源が設けられている。
発煙装置23は、例えば熱すると煙を発生する発煙物質を収納する収納部、発煙物質を加熱するヒータ、発生した煙を連結パイプ22へ送出するファンなどから構成される。
【0022】
図2には、
図1に示されている実施形態の感度試験装置の電気系統の構成および制御系の構成の例が示されている。なお、
図2において、実線の矢印は信号の伝達先を、破線の矢印は情報の反映先を示している。また、試験器本体部10の複数の試験室のうち一つが代表として示されている。
図2に示すように、本実施形態の感度試験装置においては、一対の感知器取付け板12で挟まれた試験室11内に煙濃度を検出する濃度計13が配設されているとともに、感知器取付け板12の内面側に試験対象の煙感知器Dがそれぞれ設置されている。濃度計13および煙感知器Dからの信号は制御装置24へ送信されるとともに、検出された感度や検査結果が制御装置24の表示部24Aに表示される。なお、
図2においては、制御装置24と表示部24Aを別体で構成しているが、一体に構成しても良い。
【0023】
また、連結パイプ22の終端が接続される試験室11の煙流入口には、煙の流入量を調整するための煙流入量調整弁14が設けられており、濃度計13により検出された煙濃度に応じて煙流入量調整弁14が制御装置24によって制御されるように構成されている。煙流入量調整弁14は、例えば煙流入口の開口面積を調節可能なシャッターおよびシャッターを移動させるモータのような駆動源により構成される。さらに、煙流入口の近傍に送風用のファン15が配設されている。なお、煙流入量調整弁14の開閉の手段は、上記に限定されず、例えばカメラにおける虹彩絞り機構のような手法を用いても良い。
一方、煙供給部21の煙安定室には、煙濃度を検出する濃度計28および送風用のファンなどが配設されており、濃度計28および13により検出された煙濃度に応じて発煙装置23が制御装置24によって制御されるように構成されている。
【0024】
次に、
図1および
図2に示す本実施形態の感度試験装置による試験手順について、
図3のフローチャートを用いて説明する。
試験に際しては、先ず、発煙装置23を作動させて煙供給部21の煙安定室へ煙を導入させる(ステップS1)。また、これと並行して、感知器取付け板(以下、取付け板と記す)12に試験対象の煙感知器Dを取付ける。
続いて、煙安定室内の煙濃度は十分かどうか判定する(ステップS2)。そして、煙安定室内の煙濃度が十分である(「はい」)と判定するとステップS3へ進んで、煙感知器Dが取付けられている取付け板12を試験室11内に差し込んで設置し上蓋11Aを閉じる。なお、試験室11内の所定部位に取付け板12を差し込むと、自動的に試験器本体部10との間の電気的な接続がなされるようになっている。
【0025】
次に、試験室11に取付け板12が1枚以上接続されているか否か判定し(ステップS4)、取付け板12が1枚以上接続されている(「はい」)と判定するとステップS5へ進んで、制御装置24に設けられている試験開始ボタンを押して試験を開始する。このとき、煙流入量調整弁(シャッター)14が開かれ、煙安定室から試験室11内へ煙が導入される。
その後、制御装置24の表示部24Aの表示を見て試験結果を確認(ステップS6)した後、試験室11の上蓋11Aを開いて取付け板12を引き抜いて試験器本体部10との接続を外す(ステップS7)。なお、試験結果は、制御装置24の内部のメモリに記憶しておくようにしても良い。また、試験終了時に煙流入量調整弁14が自動もしくはボタン操作等により閉じられるように構成しても良い。
【0026】
次に、試験室11内の煙を排出する(ステップS8)とともに、ステップS7で引き抜いた取付け板12から煙感知器を取外す。続いて、試験室11内の排煙は終了しているか判定し(ステップS9)、排煙は終了している(「はい」)と判定するとステップS10へ進んで、連続して他の感知器について試験を行う場合はステップS1へ戻って上記処理を繰り返す。また、試験を行わない(「いいえ」)場合は試験を終了する。
【0027】
次に、上記実施形態の感度試験装置のより具体的な実施例について、
図4~
図7を用いて説明する。
図4に示す実施例は、試験室11の前後左右の4つの側面にそれぞれ感知器取付け板12を配置するように構成したものである。感知器取付け板12の下部には、感知器取付け板12に取付けられた煙感知器Dと制御装置24とを電気的に接続するための端子部12aが設けられ、煙供給部21の上壁には、試験室11の4つの側面に対応して、感知器取付け板12の端子部12aが差し込まれる接続部21aが設けられている。
【0028】
また、煙供給部21の1つの側壁には、発煙装置から供給される煙を煙安定室内へ導入するための導入口21bが形成されているとともに、上壁の試験室11の中央に相当する部位には、煙流入口21cがそれぞれ形成されており、この煙流入口21cに対向するように煙流入量調整弁14(
図2)が設けられている。また、試験室11の前後左右の4辺には、感知器取付け板12を案内したり保持したりする外壁11B(
図4では前方、側方は不図示)が設けられている。また、外壁11Bの代わりに試験室の4隅に感知器取付け板12を案内したり保持したりする断面矩形状の支柱を設けるようにしても良い。
感知器取付け板12は、外壁11Bや支柱に設けられたレールもしくはガイド溝に沿って上下移動可能に構成され、感知器取付け板12には取っ手もしくは指先を引っ掛けることが可能な凹部12bが形成されている。
【0029】
さらに、各試験室11の上部は、複数のスラット(長方形の細長い板状部材)が蛇腹状に連なることで、変形しながら移動可能なシャッターからなる上蓋11Aによって閉塞可能に構成されている。この上蓋11Aは、例えば試験室11の上部開放時には試験室11の背部に垂直姿勢で設置され、上方へ移動させつつ先端部を前方へ移動させることで最終的に水平姿勢となり、試験室11の上部を閉塞できるように構成される。
また、煙供給部21の側壁の導入口21b近傍には、煙安定室内に配設されたケーブル25(
図1参照)と制御装置24から引き出された接続ケーブル26とを電気的に接続するためのコネクタ27が設けられている。
【0030】
さらに、制御装置24は、試験対象の感知器が設置された感知器取付け板12が試験器本体部10に配設されているか否か判定する機能を備えており、設置されていないと判定すると、煙流入量調整弁14を閉鎖状態に制御することで、誤った試験動作がなされるのを防止するように構成されている。具体的には、端子部12aが差し込まれる煙供給部21の上壁の接続部21aに、端子部12aが差し込まれたことを検知するスイッチ(接点)をそれぞれ設け、このスイッチの信号が制御装置24へ入力されることで、制御装置24は感知器取付け板12が試験器本体部10に設置されているか否か判定する。制御装置24は、接続ケーブル26を介して感知器取付け板12の配線間(L-C線間)に電圧を印加してインピーダンスを検出することで、感知器取付け板12が試験器本体部10に配設されているか否か判定することや、伝送信号に対する感知器からの応答信号の有無で判定するように構成しても良い。
【0031】
図5に示す実施例は、試験室11の左右の2つの側面にそれぞれ感知器取付け板12を配置するように構成したものである。試験室11の前後の側面には、前壁(不図示)と後壁11Cが設けられ、前壁と後壁11Cには感知器取付け板12を案内するレールもしくはガイド溝が設けられている。なお、前壁と後壁に加えて側壁を設けるようにしても良い。
また、各感知器取付け板12の外側面には、連続する2枚のプレートからなる上蓋11Aが各感知器取付け板12の外側面に沿って上下にスライド可能に接合されている。
【0032】
上蓋11Aを構成する2枚のプレートはヒンジによって回動可能に連結されており、感知器取付け板12の下部の端子部12aを煙供給部21の上壁の接続部21aに差し込んだ後、
図6に示すように、上蓋11Aとなる2枚のプレートを1枚分だけ持ち上げてから、1枚のプレートを90度内側へ回転させることとで、試験室11の上部開口を半分だけ覆うように構成されている。上部開口のうち残りの半分は、感知器取付け板12側の対向する上蓋11Aを構成するプレートによって閉塞される。なお、上蓋11Aとなるプレートには指先を引っ掛けるための凹部11aが形成されている。
【0033】
図7には、
図5に示す2つの試験室11を有する感度試験装置を2つ連結して、4つの試験室11を有する感度試験装置として構成したものが示されている。2つの感度試験装置を連結する場合、一方(図では右側)の煙供給部21は左右両側の側壁に煙導入口21bが形成され、他方の煙供給部21は左右両側壁のうち一方に煙導入口21bが形成され、他方の側壁には煙導入口21bが形成されず閉塞される。なお、煙供給部21の左右両側の側壁に、蓋(シャッター)によって開閉可能な煙導入口を設けるようにしても良い。
そして、煙供給部21の側壁には他の煙供給部21と結合するための結合手段30が設けられている。結合手段30は例えばマグネットで構成することができる。
また、各感度試験装置には、前後の他、左右両側にも側壁となるパネル11Eが設けられている。なお、
図7には感度試験装置を2つ連結したものを示したが、3つ以上の感度試験装置を接続するようにしても良い。
【0034】
次に、上記実施形態の感度試験装置を構成する感知器取付け板12のより具体的な実施例について、
図8および
図9を用いて説明する。
図8に示すように、感知器取付け板12の上下スライド可能な上蓋11Aが設けられる面の両側部には、上蓋11Aを案内する一対のガイドレール31が上下方向に設けられ、ガイドレール31の間には、取っ手部32aを有し前後に開閉可能に構成された扉32が設けられている。そして、この扉32の内側には、
図9に示すように、感知器取付け板12の反対側の面に設けられている感知器取付けベースの端子に接続され、取付けベースに装着された煙感知器や埋込み型の煙感知器へ給電したり信号を伝送したりするための一対の配線(ライン線Lとコモン線C)33a,33bを引き回す空間が設けられている。
【0035】
図9のうち(A)は感知器取付けベースを設けて試験する場合の形態を、(B)は埋込み型煙感知器を試験する場合の形態をそれぞれしている。
図9(A)の場合、感知器取付け板12の取付け面に複数(図では2個)の開口12dが形成され、この開口12dを覆うように、感知器取付けベースがビスによって取付け面(図示されている面の反対側の面)に固定されている。煙感知器にはライン線Lとコモン線Cに電気的に接続される端子金具が設けられ、感知器取付けベースには煙感知器の端子金具と結合離脱可能な取付け金具(ソケットに相当)が設けられており、配線33a,33bは感知器取付けベースの取付け金具に接続される。従って、
図9(A)においては、開口12dの内側に感知器取付けベースの一部が見えた状態となる。
【0036】
図9(B)の場合、感知器取付け板12の取付け面に複数(図では5個)の開口が形成され、この開口に、一対の翼状に広がるバネ片35を裏面に有する埋込み型煙感知器Dの一部が挿入されることで、感知器取付け板12に感知器が装着される。そして、感知器取付け板12に装着された煙感知器Dの裏面側の端子金具に対して、ライン線Lとコモン線Cとなる配線33a,33bの接続が行われる。従って、
図9(B)においては、感知器取付け板12の取付け面に形成された開口の内側に感知器Dの後端部が見えた状態となる。上記のように、本実施例によれば、取付けベースが必要な一般的な煙感知器および取付けベースが不要な埋込み型煙感知器のいずれの試験も行うことが可能な感度試験装置を提供することができる。
【0037】
次に、上記実施形態の感度試験装置の変形例について、
図10~
図13を用いて説明する。
図10~
図13のうち、
図10は、
図5の実施例の感度試験装置の変形例を示すもので、感知器取付け板12により仕切った試験室11を設けるとともに、各試験室11の4つの面のうち1つの面にのみ試験対象となる煙感知器Dを設置して試験を行うように構成したものである。この変形例の場合、一番端(図では右端)に位置する感知器取付け板12においては、スライド可能な上蓋11Aを2枚分持ち上げて90度内側へ回転させることで上部開口を閉鎖するように構成している。
【0038】
図11は、試験室11内に送風用のファン36を設ける場合の具体例を示すもので、感知器取付け板12の下部に水平な載置台12cを設け、この載置台12cにファン36を取付けたものである。なお、載置台12cのファン36に対応する部位には開口が形成される。
図12は、上記実施例の感度試験装置に共通の変形例を示すもので、(A)は感知器取付け板12に装着可能な感知器Dの数を2個ではなく5個としたもの、(B)は感知器取付け板12に対して感知器Dを縦に並べて設置する代わりに横方向に並べて設置して試験するように構成したもの、(C)は感知器取付け板12を平面とする代わりに台形状に形成して感知器Dをそれぞれ異なる3方向を向いた状態で装着して試験するように構成したものである。特に(B)の構成においては、試験器本体部10の開口を上部ではなく前面に設けて、前面から挿抜できるようにしても良い。なお、感知器取付け板12の形状は、(C)に代表されるように直方体に限定されるものではない。
【0039】
図13は、上記実施例の感度試験装置の感知器取付け板12に共通の変形例を示すもので、(A)は感知器取付け板12の上面に指先を引っ掛けることが可能な凹部12bを形成する代わりに、常態においては感知器取付け板12の上面と同一平面をなし使用時にピン軸Pを中心に180度回転させることで前方へ飛び出す構造の取っ手部32a’を設けるようにしたものである。また、(B)は感知器取付け板12の上面に形成した凹部12b内に、コの字状をなし先端部の内側に回転軸となるピンをそれぞれ有し、常態においては横向きに倒れて凹部12b内に埋没し使用時に90度回転させて起立させることで上方へ飛び出す構造の取っ手部32a”を設けるようにしたものである。
【0040】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。例えば、前記実施形態では、3つ以上の感度試験装置を連結する場合、直列に連結すると説明したが、前後左右に2次元的に連結することも可能である。また、煙供給部21の導入口21bの縁部には、煙供給部21同士を結合手段30で結合した際に煙が外部へ漏れないようにするためのシール材を設けるようにしても良い。他にも前記実施形態では感度試験装置は直方体としていたが、感度試験装置やその中の試験器本体部は他の立体形状でも良く、また形成される試験空間の底部も長方形以外の多角形や円形であっても良い。
さらに、上記説明では、本発明を、煙感知器の感度試験装置に適用した場合を例にとって説明したが、感知器が煙感知機能の他、熱感知機能を有する複合型感知器である場合にも、本発明を適用することができる。
【0041】
他の実施形態として、試験器本体部10の各感知器取付け板12へ電源を供給したり信号を伝送したりするケーブル25は、煙供給部21の外に設けられても良い。例えば、感知器取付け板12の上面にケーブル25を差し込めるコネクタを有すれば良い。この時、上蓋11Aは感知器取付け板12と別体として、感知器取付け板12の試験器本体部への接続後に被せれば良く、感知器取付け板12の下部に設けられている端子部12aの代わりに煙流入口21aの開閉のトリガーとなる突起部だけを有するような構成に置き換えても良い。
【符号の説明】
【0042】
10 試験器本体部
11 試験室
11A 上蓋
11B 外壁
11C 後壁
12 感知器取付け板
12a 端子部
12b 凹部
12c 載置台
12d 開口
13 濃度計
14 煙流入量調整弁
21 煙供給部
21a 接続部
21b 導入口
21c 煙流入口
22 連結パイプ
23 発煙装置
24 制御装置
24A 表示部
25 ケーブル
26 接続ケーブル
27 コネクタ
28 濃度計
30 結合手段
31 ガイドレール
32 扉
32a 取っ手部
33a,33b 配線(ライン線Lとコモン線C)
35 バネ片
36 ファン