(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048642
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】角度調整装置
(51)【国際特許分類】
B62D 33/067 20060101AFI20240402BHJP
【FI】
B62D33/067 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154667
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】521537852
【氏名又は名称】ダイムラー トラック エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100176946
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 智恵
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】青野 宣明
(57)【要約】
【課題】キャブをチルトする際のチルト操作力を調整できるようにする。
【解決手段】キャブチルト型トラックのキャブ2下方に設けられキャブ2をチルト方向へ付勢するためのトーションバー14Dの捩じり角度を調整する角度調整装置20であって、第一前端でトーションバー14Dに固定された第一アーム部材15Fと、第二前端で第一アーム部材15Fの第一後端に対して接続されかつ第二後端でキャブ2に当接するように設けられた第二アーム部材15Bとを含み、トーションバー14Dの付勢力をキャブ2に伝達するトーションバーアーム15Lと、第一アーム部材15Fに対して第二アーム部材15Bを回動自在に接続する接続部21と、接続部21において、第一アーム部材15Fおよび第二アーム部材15Bの何れか一方側に設けられ、第一アーム部材15Fに対する第二アーム部材15Bの回動位置を調整する調整部材25とを備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャブチルト型トラックのキャブ下方に設けられており前記キャブをチルト方向へ付勢するためのトーションバーの捩じり角度を調整する角度調整装置であって、
第一前端において前記トーションバーに固定された第一アーム部材と、第二前端において前記第一アーム部材の第一後端に対して接続されるとともに第二後端において前記キャブに当接するように設けられた第二アーム部材とを含み、前記トーションバーにより生じた付勢力を前記キャブに伝達するトーションバーアームと、
前記第一アーム部材の前記第一後端に対して前記第二アーム部材の前記第二前端を回動自在に接続する接続部と、
前記接続部において、前記第一アーム部材および前記第二アーム部材の何れか一方側に設けられ、前記第一アーム部材に対する前記第二アーム部材の回動位置を調整する調整部材と、を備えている
ことを特徴とする、角度調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、キャブチルト型トラックにおいてキャブのチルト操作力を補助するためのトーションバーの捩じり角度を調整する角度調整装置に関する。
に関する。
【背景技術】
【0002】
キャブチルト型トラックでは、キャブが車体側のシャシフレームに対してチルト可能に支持されており、エンジンの点検などのためにキャブを通常の使用位置(運転時の位置)から所定のチルト位置へチルト可能である。
従来、キャブをチルト可能に支持するためのキャブチルト構造として、トーションバーの捩じり力を用いてキャブのチルト操作力を補助する構造が知られている。
【0003】
具体的には、トーションバーは、キャブが通常の使用位置にあるときに、軸心を中心に角度(捩じり角度)を付けるように捩じられた状態をなすように、取り付けられている。そして、使用位置からチルト位置へキャブをチルトする際に、捩じられた状態から元に戻るトーションバーの復元力が、チルト操作力を補助するようになっている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、キャブの重さは、部品のばらつきやオプション部品の追加などによって様々に変化し得るものである。キャブの重さが変化した場合、必要なチルト操作力が変化する。そのため、キャブの重さに応じてトーションバーの捩じり角度を調整する必要がある。しかしながら、特許文献1の技術では、トーションバーの捩じり角度を変更することができないため、チルト操作力を変更できなかった。
したがって、特許文献1に開示されるような従来の技術は、キャブをチルトする際のチルト操作力を調整するうえで、改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本件は上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現できる。
【0007】
本適用例に係る角度調整装置は、キャブチルト型トラックのキャブ下方に設けられており前記キャブをチルト方向へ付勢するためのトーションバーの捩じり角度を調整する角度調整装置であって、第一前端において前記トーションバーに固定された第一アーム部材と、第二前端において前記第一アーム部材の第一後端に対して接続されるとともに第二後端において前記キャブに当接するように設けられた第二アーム部材とを含み、前記トーションバーにより生じた付勢力を前記キャブに伝達するトーションバーアームと、前記第一アーム部材の前記第一後端に対して前記第二アーム部材の前記第二前端を回動自在に接続する接続部と、前記接続部において、前記第一アーム部材および前記第二アーム部材の何れか一方側に設けられ、前記第一アーム部材に対する前記第二アーム部材の回動位置を調整する調整部材と、を備えている。
【0008】
本適用例によれば、トーションバーアームが第一アーム部材と第二アーム部材とに分割されており、第一アーム部材と第二アーム部材とは接続部を介して回動自在に接続されている。接続部において、第一アーム部材および第二アーム部材の何れか一方側に、第一アーム部材に対する第二アーム部材の回動位置を調整する調整部材が設けられている。
調整部材により第一アーム部材に対する第二アーム部材の回動位置を調整することで、トーションバーの捩じり角度を調整することが可能である。そのため、調整部材により第一アーム部材に対する第二アーム部材の回動位置を調整することで、トーションバーにより生じる、キャブをチルト方向へ付勢する付勢力(チルト操作力)を調整(微調整)できる。
【発明の効果】
【0009】
本件によれば、キャブをチルトする際のチルト操作力を容易に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第一実施形態に係る角度調整装置が適用されたキャブチルト構造の斜視図である。
【
図2】第一実施形態に係る角度調整装置の側面図である。
【
図4】
図2に対応する側面図であって、第二アーム部材が押圧された状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を参照して、本件の実施形態について説明する。以下の実施形態はあくまでも例示に過ぎず、この実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。下記の実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。また、必要に応じて取捨選択でき、あるいは適宜組み合わせられる。
【0012】
[1.構成]
図1は、本実施形態の角度調整装置が適用されたキャブチルト構造の説明図であって、車両前方から視た斜視図である。
キャブ2は、キャブチルト型トラック(図示省略)に搭載された運転台である。
図1では、キャブ2の下面部(詳しくはキャブ2下面側に配置されたフロアフレームなどから構成される)を二点鎖線で示すとともに一部を省略している。なお、本実施形態では、比較的重量の大きい中型トラックに搭載されたキャブ2におけるキャブチルト構造を例示する。
【0013】
キャブ2は、トラックの骨格をなすシャシフレーム3に対してキャブチルト構造1を介して取り付けられたチルト式キャブである。シャシフレーム3は、ラダーフレーム構造をなす。具体的に言えば、シャシフレーム3は、車長方向(前後方向)D1に延びるとともに車幅方向(左右方向)D2に互いに離隔する一対のサイドレール3L,3Rを有する。シャシフレーム3は、サイドレール3L,3Rとサイドレール3L,3Rどうしを接続する複数のクロスメンバ(図示省略)とにより、梯子形状をなす。
【0014】
キャブチルト構造1は、キャブ2をシャシフレーム3に対してチルト可能に支持する構造である。本明細書で「チルト」とは、キャブ2を運転位置(チルトダウン)からチルト位置(チルトアップ)へ回転移動することを言う。運転位置は通常の使用状態(運転時)のキャブ2の位置である。これに対してチルト位置は、キャブ2を運転位置から所定の回転角度傾けた位置である。
図1及び
図2は、キャブ2が運転位置にある状態を示している。
周知のように、キャブ2を運転位置からチルト位置までチルト方向へ移動させることで、エンジン上方を開放させ、エンジンの点検など車両の整備を行い易くしている。
図1において白抜き矢印はチルト方向を示す。
【0015】
図1に示すように、キャブチルト構造1には、車幅方向D2に所定距離を隔て配置された一対のキャブマウントブラケット11L,11Rが設けられている。
キャブマウントブラケット11L,11Rは、キャブ2の前方(
図1において「FR」で示す車長方向D1の一方)下面に配置され、キャブ2を前方下面側で支持する支持部材である。
【0016】
キャブマウントブラケット11L,11Rは、トーションバー14Uを介して、一対のキャブヒンジブラケット12L,12Rに回転可能に支持されている。各キャブヒンジブラケット12L,12Rは、サイドレール3L,3Rの上面側に立設されている。
キャブマウントブラケット11L,11Rは、各キャブヒンジブラケット12L,12Rの上端側においてラバーマウント13L,13Rを介して取り付けられている。ラバーマウント13L,13Rは、円筒状をなす振動抑制部材であって、軸が車幅方向D2に沿う姿勢でキャブマウントブラケット11L,11Rとキャブヒンジブラケット12L,12Rとの間に介装されている。
【0017】
キャブヒンジブラケット12L,12Rの間には、二本のトーションバー14U,14Dが上下に離間して配設されている。トーションバー14U,14Dは、キャブ2の下方において車幅方向D2に沿って延在する棒状バネ部材(ねじり棒)であり、チルト操作力を補助するために設けられている。
トーションバー14U,14Dのそれぞれは、キャブ2が通常の使用位置にあるときに、軸心を中心に角度(捩じり角度)を付けるように捩じられた状態をなすように、取り付けられている。そのため、使用位置からチルト位置へキャブ2をチルトする際に、捩じられた状態から元に戻るときに生じる各トーションバー14U,14Dの復元力(付勢力)が、キャブ2をチルト方向に付勢してキャブ2のチルトを補助するためのチルト操作力として作用する。
【0018】
図1において、下方トーションバー14D及び上方のトーションバー14Uの両端は、キャブヒンジブラケット12L,12Rよりも車幅方向D2の外側へ突出している。下方トーションバー14Dの右端はセレーションを介してキャブヒンジブラケット12Rに固定されている。下方トーションバー14Dの左端には、トーションバーアーム15Lが設けられている。トーションバーアーム15Lは、車長方向D1前方の端部(前端)においてセレーションを介して下方トーションバー14Dに固定され、下方トーションバー14Dから車長方向D1の後方でかつ上方へ延びた棒状をなす部材である。
上方トーションバー14Uの左端はセレーションを介してキャブヒンジブラケット12Lに固定されている。上方トーションバー14Uの右端には,トーションバーアーム15Rが設けられている。トーションバーアーム15Rは車長方向D1前方の端部(前端)においてセレーションを介して上方トーションバー14Uに固定され、上方トーションバー14Uから車長方向D1の後方でかつ上方へ延びた棒状をなす部材である。
【0019】
トーションバーアーム15L,15Rにおいて車長方向D1後方の端部(後端)は、キャブ2が運転位置にある状態で、キャブ2の下面側に設けられたマウント部材2Aに当接されている。トーションバーアーム15L,15Rの後端は、キャブ2が運転位置からチルトされると、マウント部材2Aから離間される。
キャブ2がチルト位置から運転位置へ下げられたとき、トーションバーアーム15L,15Rの後端がマウント部材2A(キャブ2)により押し下げられることで、下方トーションバー14D及び上方トーションバー14Uは捩じり角度が付いた状態をなす。キャブ2が運転位置からチルトされたとき、下方トーションバー14Dの復元力がトーションバーアーム15Lを介して、また、上方トーションバー14Uの復元力がトーションバーアーム15Rを介して、それぞれマウント部材2A(キャブ2)に伝達されて、チルト操作力を補助する。
【0020】
なお、上方トーションバー14Uからのチルト操作力はキャブマウントブラケット11L,11Rを介してキャブ2に伝達されるようになっている。
また、
図1のキャブチルト構造1には、サイドレール3Lにおいてキャブマウントブラケット11Lよりも車長方向D1後方に、リンク機構を介して連結された二つの部材からなるキャブステー16が設けられている。キャブステー16は、上端部がキャブ2の下面部(フロアフレーム)に連結されており、キャブ2が運転位置のとき
図1に示す屈曲状態をなし、キャブ2がチルト位置のときにニつの部材のリンク機構が回転しながら伸長して直線状になり、チルト位置でキャブ2を支持する。
【0021】
図1に示すように、キャブチルト構造1には下方トーションバー14Dの捩じり角度を調整するための角度調整装置20が付設されている。角度調整装置20は、本実施形態のトーションバーアーム15L,15Rのそれぞれに対応して設けられている。なお、
図1では、図示の便宜上、トーションバーアーム15Lに対応して設けられた角度調整装置20にのみ符号を付す。
次に、角度調整装置20について
図2を参照して説明する。なお、角度調整装置20の構成は、トーションバーアーム15L,15Rとのそれぞれで共通であるため、以下では、トーションバーアーム15Lの角度調整装置20を例に挙げて説明する。
【0022】
図2は、トーションバーアーム15Lを車幅方向D2の外側から見た側面図である。
図1及び
図2に示すように、トーションバーアーム15Lは、車長方向D1前方の第一アーム部材15Fと、車長方向D1後方の第二アーム部材15Bとを接続部21において接続して形成されている。言い換えれば、トーションバーアーム15Lは第一アーム部材15Fと第二アーム部材15Bとに分割されている。
詳しくは、第一アーム部材15Fの前端(第一前端)は、上述したトーションバーアーム15Lの前端をなす。すなわち、第一アーム部材15Fは、前端において下方トーションバー14Dにセレーションを介して固定されている。
【0023】
第一アーム部材15Fの後端(第一後端)には接続部21を介して第二アーム部材15Bの前端(第二前端)が回動自在に接続されている。第二アーム部材15Bは、第一アーム部材15Fの後端(第二後端)から車長方向D1後方かつ上方へ向かって延在している。第二アーム部材15Bの後端は、上述したトーションバーアーム15Lの後端をなす。すなわち、第二アーム部材15Bの後端は、キャブ2が運転位置にある状態でキャブ2の下面側のマウント部材2Aに当接されている。
【0024】
図3は、接続部21を拡大して示す斜視図である。
図3に示すように、第一アーム部材15Fの後端側と、第二アーム部材15Bの前端側とはそれぞれ車幅方向D2の厚みを切削する加工(「セギリ加工」)により、車幅方向D2の厚みが薄く形成さている。
接続部21において、第一アーム部材15Fの後端側と第二アーム部材15Bの前端側とのセギリ加工された箇所同士が、車幅方向D2から視て重複して配置されている。
【0025】
第一アーム部材15Fの後端側と第二アーム部材15Bの前端側とで互いに重複する箇所に通孔22が穿設されている。この通孔22に挿入されたパイプ部材23Aと、パイプ部材23Aに挿入されたボルト23Bと、ボルト23Bに装着されたナット23Cとにより、第一アーム部材15Fの後端側と第二アーム部材15Bの前端側とが回動自在に接続されている。
すなわち、通孔22,パイプ部材23A,ボルト23B及びナット23Cが第一アーム部材15Fの後端側と第二アーム部材15Bの前端側とが回動自在に接続するヒンジ構造をなす。このヒンジ構造を中心に第一アーム部材15Fに対する第二アーム部材15Bの回動位置(すなわち角度)を変更可能である。
【0026】
第一アーム部材15Fの後端において下面側には延出部24Fが形成されている。延出部24Fは、第一アーム部材15Fの後端において下面側から下方へ延出した部位である。一方、第二アーム部材15Bの前端において下面側には、当接部24Bが形成されている。当接部24Bは、第二アーム部材15Bの前端において下面側から下方へ延出した部位である。
図3に示すように、延出部24Fと当接部24Bとは互いに向かい合う位置に設けられている。
【0027】
図3の接続部21において、第一アーム部材15Fに対する第二アーム部材15Bの回動位置(すなわち角度)を調整するための調整部材25が、第一アーム部材15Fに設けられている。本実施形態では、調整部材としてアジャストボルト25を用いた場合を例に挙げている。
本実施形態のアジャストボルト25は、第一アーム部材15Fの延出部24Fに取り付けられている。
延出部24Fには、アジャストボルト25を挿通するためのネジ穴25Aが形成されている。ネジ穴25Aは、延出部24Fを車長方向D1に沿って貫通した貫通孔として形成されており、内周面にネジ山が設けられている。
【0028】
アジャストボルト25においてネジ部の軸に沿う長さは、ネジ穴25Aの深さ(車長方向D1に沿う寸法)よりも長く設定されている。そのため、ネジ穴25Aにアジャストボルト25を挿入したとき、アジャストボルト25の先端部は延出部24Fの後方から突出して、第二アーム部材15Bの当接部24Bにおける前方の面に当接し得る。
すなわち、アジャストボルト25は、先端部により当接部24B(第二アーム部材15B)を車長方向D1の後方へ向かって押圧する。
【0029】
アジャストボルト25がネジを締める方向(回動方向の一方)に回動された場合、アジャストボルト25は車長方向D1の後方へ向かって移動する。反対に、アジャストボルト25がネジを緩める方向(回動方向の他方)に回動された場合、アジャストボルト25は車長方向D1の前方へ向かって移動する。
そのため、アジャストボルト25の回動に応じて、アジャストボルト25の先端部が延出部24Fの後方から突出する突出量が調整(微調整)される。
そのほか、アジャストボルト25にはジャムナット26(
図2,
図4)が介装されている。ジャムナット26は、アジャストボルト25を所望の回動位置で係止する緩み防止部材として機能する。なお、
図3では、図示の便宜上、ジャムナット26を省略した。
【0030】
[2.作用及び効果]
図2は、アジャストボルト25の先端部が延出部24Fの後方から突出しておらず、第二アーム部材15Bがアジャストボルト25から押圧されていない状態を示している。
図4は、アジャストボルト25の先端部が延出部24Fの後方から突出して、第二アーム部材15Bがアジャストボルト25から押圧された状態を示している。
図2に示す状態では、第一アーム部材15Fに対する第二アーム部材15Bの角度θ1が最も開いた状態をなす。この場合、第一アーム部材15Fの軸線と第二アーム部材15Bとの軸線が略直線状をなすとともに、当接部24Bが延出部24Fに当接する。すなわち、第一アーム部材15Fに対する第二アーム部材15Bの角度は、当接部24Bにより
図2に示す角度θ1よりも開かないように規制されている。
【0031】
図4に示す状態では、アジャストボルト25の先端部により当接部24B(第二アーム部材15Bの前端側)が車長方向D1の後方へ押圧されている。そのため、第二アーム部材15Bは、
図2の状態に比べて、第一アーム部材15Fに対してヒンジ機構を中心に図上反時計回りに回動した状態をなす。よって、第一アーム部材15Fに対する第二アーム部材15Bの角度θ2は、
図2に示す角度θ1よりも狭くなる。この場合、第一アーム部材15Fと第二アーム部材15Bとは接続部21で屈曲した形状をなす。
【0032】
図4において、キャブ2を所定の運転位置P1まで下げたときの下方トーションバー14Dの捩じり角度は、
図2における下方トーションバー14Dの捩じり角度よりも大きくなる。すなわち、
図4と
図2とを比較した場合に、キャブ2をチルト状態から運転状態に戻す際に、第二アーム部材15Bが屈曲した分、先にキャブ2と当接するからである。
そのため、
図4に示す第二アーム部材15Bが押圧された状態では、下方トーションバー14Dにより生じる付勢力(チルト操作力)が、
図2に示すように第二アーム部材15Bが押圧されていない状態に比べて大きくなる。
【0033】
すなわち、アジャストボルト25の先端部の突出量が多いほど、キャブ2を所定の運転位置P1まで下げたときの下方トーションバー14Dの捩じり角度が大きくなるため、下方トーションバー14Dにより生じる付勢力が増大する。反対に、アジャストボルト25の先端部の突出量が少ない場合、キャブ2を所定の運転位置P1まで下げたときの下方トーションバー14Dの捩じり角度が小さくなり、下方トーションバー14Dにより生じる付勢力が弱まる。
よって、アジャストボルト25の回動に応じて下方トーションバー14Dにより生じる付勢力(チルト操作力)を調整(微調整)することが可能である。
【0034】
本角度調整装置20を用いたチルト操作力の調整は、キャブ2をチルトした状態で、作業者が工具を用いて手作業で行う。具体的には、作業者は、ジャムナット26を緩めてから、アジャストボルト25を所望の量だけ回動して、ジャムナット26を締める。
このように、本角度調整装置20によれば、キャブ2をチルトする際のチルト操作力を、アジャストボルト25を回動するだけで容易に調整(微調整)することができる。
【0035】
[3.変形例]
なお、上述した角度調整装置20においては、第一アーム部材15F側にアジャストボルト25(調整部材)が設けられた場合を例に挙げた。これに限らず、第二アーム部材15B側にアジャストボルト25(調整部材)が設けられてもよい。
調整部材25は、アジャストボルトに限らず、第一アーム部材15Fに対する第二アーム部材15Bの回動位置(すなわち角度)を調整できれば、どのような部材を用いて構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 キャブチルト構造
2 キャブ
2A マウント部材
3 シャシフレーム
3L,3R サイドレール
11L,11R キャブマウントブラケット
12L,12R キャブヒンジブラケット
13L,13R ラバーマウント
14U 上方トーションバー(トーションバー)
14D 下方トーションバー(トーションバー)
15L,15R トーションバーアーム
15F 第一アーム部材
15B 第二アーム部材
16 キャブステー
20 角度調整装置
21 接続部
22 通孔
23A パイプ部材
23B ボルト
23C ナット
24F 延出部
24B 当接部
25 アジャストボルト(調整部材)
25A ネジ穴
26 ジャムナット
D1 車長方向
D2 車幅方向
P1 運転位置
θ1 角度
θ2 角度