(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048657
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】袋用留め具
(51)【国際特許分類】
B65D 33/26 20060101AFI20240402BHJP
D21H 11/20 20060101ALI20240402BHJP
B65D 30/02 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
B65D33/26
D21H11/20
B65D30/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154689
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000241810
【氏名又は名称】北越コーポレーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098899
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 信市
(74)【代理人】
【識別番号】100163865
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 健
(72)【発明者】
【氏名】田村 篤
【テーマコード(参考)】
3E064
4L055
【Fターム(参考)】
3E064BA60
3E064BC20
3E064EA07
3E064HN30
4L055AA02
4L055AA08
4L055AC07
4L055AC08
4L055AG07
4L055EA04
4L055EA05
4L055EA07
4L055EA08
(57)【要約】
【課題】 曲げやすいバルカナイズドファイバー製の袋用留め具を提供すること。
【解決手段】 密度0.85~1.15g/cm
3、厚み0.6~1.0mmのバルカナイズドファイバーで形成したことを特徴とする袋用留め具。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
密度0.85~1.15g/cm3、厚み0.6~1.0mmのバルカナイズドファイバーで形成したことを特徴とする袋用留め具。
【請求項2】
前記バルカナイズドファイバーのMD方向のガーレー剛度が200~1000mNであることを特徴とする請求項1に記載の袋用留め具。
【請求項3】
前記バルカナイズドファイバーの原料パルプは、針葉樹溶解サルフェイトパルプを15~55質量部、針葉樹未晒しクラフトパルプを25~75質量部、針葉樹晒しクラフトパルプを5~25質量部の割合で配合したものであり、叩解後のパルプスラリーのろ水度がカナダ標準ろ水度で450~750mlCSFであることを特徴とする請求項1に記載の袋用留め具。
【請求項4】
前記バルカナイズドファイバーの原料パルプは、コットンパルプを35~80質量部、針葉樹晒しクラフトパルプを20~65質量部の割合で配合したものであり、叩解後のパルプスラリーのろ水度がカナダ標準ろ水度で550~650mlCSFであることを特徴とする請求項1に記載の袋用留め具。
【請求項5】
濃度65~69ボーメ(゜Be)、温度28~55℃の塩化亜鉛水溶液に原紙を浸漬して膠化するステップと、
膠化された原紙から塩化亜鉛水溶液を脱液するステップと、
脱液された原紙を乾燥してバルカナイズドファイバーを得るステップと、
前記バルカナイズドファイバーを打ち抜き加工して袋用留め具を製造するステップと、を含み、
前記バルカナイズドファイバーは、密度0.85~1.15g/cm3、厚み0.6~1.0mmであることを特徴とする袋用留め具の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、留め具に関する。詳しくは、曲げやすいバルカナイズドファイバー製の留め具に関する。
【背景技術】
【0002】
バルカナイズドファイバーはバルカンファイバーとも呼ばれ、木材パルプ、コットンパルプなどの天然繊維を主とした原紙を、塩化亜鉛水溶液等のパルプを膨潤及び膠化する性質のある反応薬品に浸漬して原紙表面を膨潤及び膠化させ、その後反応薬品を洗浄液で除去して膨潤・膠化反応を停止させ、次いで乾燥、仕上げを行って製造される強靭な有機工業材料である。バルカナイズドファイバーは、主体繊維が天然セルロース繊維で構成されているため、廃棄された場合の生分解性及びクリーンな焼却処理適性も有しており、環境に優しい工業材料である。
【0003】
一方、最近食パン用の留め具として、例えば特許文献1の
図3に示すように、ポリスチレン等の樹脂製の板材を略2cm角の正方形状に打ち抜き、略正方形状の一端側に袋の閉じ部を導入する導入切欠き部1を形成し、該導入切欠き部1に連通する狭窄透孔部2を設け、該狭窄透孔部2に連通する袋状の拡大透孔部3を備え、かつ略正方形状の左右両側の上下からそれぞれ横方向に突出する突起4を形成する構造としているものが活用されている。
【0004】
しかしながら上記樹脂製の袋の留め具は、製品の抜きカスが多量に発生し、その廃棄に問題があった。抜きカスを焼却処分すると大気汚染の原因となる等の難点があった。また、樹脂製の袋の留め具は燃えないゴミに分類され、この留め具とともにパンの袋も燃えないゴミとして廃棄され、結果として燃えないゴミの量を増やすこととなっている。またパンを袋ごと冷凍庫に入れて冷凍保存する場合に、樹脂製の袋の留め具が割れてしまうという難点がある。樹脂製の袋の留め具をパンの出し入れするたびごとに曲げたりして使用する結果、その繰り返し曲げられる箇所が割れたりして怪我をする等の問題がある。さらに樹脂製の袋の留め具は経時的に劣化して割れる等の難点がある。
【0005】
またバルカナイズドファイバーは強靭な有機材料であることを利用したバッテリーケースなどに活用することが提案されている(特許文献2参照)。
【0006】
特許文献1ではバルカナイズドファイバーを打ち抜いて袋の留め具にするにとどまり物性の制限もないため再現することが難しい。特許文献2では強靭な特性が必要なため1~3mmの厚みのバルカナイズドファイバーが好ましいとし、また実施例としても1.61mmの厚みのものを使用しているが、袋用留め具のような曲げて対象物を留める用途には適していないと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11-278442号
【特許文献2】実用新案登録第3229795号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の問題点に着目してなされたものであり、その目的とするところは、曲げやすいバルカナイズドファイバー製の袋用留め具を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的並びに作用効果については、以下の記述を参照することにより、当業者であれば容易に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成するために、本発明の袋用留め具は、密度0.85~1.15g/cm3、厚み0.6~1.0mmのバルカナイズドファイバーで形成したものである。このような構成とすることで、バルカナイズドファイバー製であることから抜きカスの焼却処理が可能である。また、冷凍時の強度低下も生じず、袋用留め具として適切な密度と厚みを有しているために強靭で折れにくい。
【0011】
また、本発明の好ましい実施形態においては、バルカナイズドファイバーのMD方向のガーレー剛度が200~1000mNであっても良い。このような構成によれば、適度に曲がり、且つ曲げても割れづらく元に戻りやすい袋用留め具となる。
【0012】
本発明の他の好ましい実施の形態においては、バルカナイズドファイバーの原料パルプは、針葉樹溶解サルフェイトパルプを15~55質量部、針葉樹未晒しクラフトパルプを25~75質量部、針葉樹晒しクラフトパルプを5~25質量部の割合で配合したものであり、叩解後のパルプスラリーのろ水度がカナダ標準ろ水度で450~750mlCSFであってもよい。このような構成によれば、バルカナイズドファイバーの原料パルプがすべて天然繊維であるので、生分解性であり土壌で分解されるため環境にも優しいものとなる。
【0013】
本発明の他の好ましい実施の形態においては、バルカナイズドファイバーの原料パルプは、コットンパルプを35~80質量部、針葉樹晒しクラフトパルプを20~65質量部の割合で配合したものであり、叩解後のパルプスラリーのろ水度がカナダ標準ろ水度で550~650mlCSFであってもよい。このような構成によれば、バルカナイズドファイバーの原料パルプがすべて天然繊維であるので生分解性であることに加えて、コットンパルプを適量用いることでガーレー剛度を好ましい範囲に調整しやすくなる。
【0014】
また、本願発明は、袋用留め具の製造方法としても捉えることができる。本発明に係る袋用留め具の製造方法は、濃度65~69ボーメ(゜Be)、温度28~55℃の塩化亜鉛水溶液に原紙を浸漬して膠化するステップと、膠化された原紙から塩化亜鉛水溶液を脱液するステップと、脱液された原紙を乾燥してバルカナイズドファイバーを得るステップと、バルカナイズドファイバーを打ち抜き加工して袋用留め具を製造するステップと、を含み、バルカナイズドファイバーは、密度0.85~1.15g/cm3、厚み0.6~1.0mmであることを特徴とする。このような製造方法によれば、バルカナイズドファイバーの密度を袋用留め具に適した範囲に調整しやすい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、曲げやすく冷凍庫の使用等にも適したバルカナイズドファイバー製の袋用留め具を得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】バルカナイズドファイバーの製造工程の一例を示すゼネラルフローチャートである。
【
図2】バルカナイズドファイバーの断面構造の一例を示す図である。
【
図4】実施例及び比較例に係るバルカナイズドファイバーの組成及び評価結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。
【0018】
本発明に係るバルカナイズドファイバーは、密度0.85~1.15g/cm
3、厚み0.6~1.0mmのバルカナイズドファイバーで形成したことを特徴とする留め具である。バルカナイズドファイバーの製造工程の一例が
図1に示されている。以降においては
図1を参照しつつ説明する。
【0019】
<原紙準備工程10>
本発明においてバルカナイズドファイバーに用いるバルカナイズドファイバー原紙は、原料から製造しても良いし条件に合うものを仕入れて使用しても良い。バルカナイズドファイバー原紙を製造する場合には、木材パルプや、コットンパルプなどの天然繊維から製造する。木材パルプとしては、針葉樹溶解サルフェイトパルプ(NDSP)、針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP)や針葉樹未晒しクラフトパルプ(NUKP)、広葉樹晒しクラフトパルプ(LBKP)、広葉樹未晒しクラフトパルプ(LUKP)などの化学パルプ、砕木パルプ(GP)やサーモメカニカルパルプ(TMP)などの機械パルプ、脱墨パルプなどの古紙パルプが挙げられ、これらのパルプから選択した1種又は2種以上を使用することができる。例えば、全パルプスラリー100質量部中、NDSPを15~55質量部、NUKPを25~75質量部、NBKPを5~25質量部含むパルプスラリー(構成例1)や、全パルプスラリー100質量部中、コットンパルプを35~80質量部、NBKPを65~20質量部含むパルプスラリー(構成例2)を使用することができる。
【0020】
また、バルカナイズドファイバー原紙製造用のパルプスラリーは、適切なろ水度に調整することが好ましい。例えば、前述の構成例1,2であれば、叩解後のろ水度がカナダ標準ろ水度(フリーネス)(JIS P 8121:1995「パルプのろ水度試験方法」)で、構成例1:450~750mlCSF、構成例2:550~650mlCSFの範囲とすることが好ましい。450ml未満では原紙が緻密となり次工程での塩化亜鉛水溶液の吸収が不足する場合がある。750mlを超えると原紙の強度が低下し塩化亜鉛水溶液を吸収した時に断紙が発生し生産できない恐れがある。
【0021】
さらに、この原紙には、綿ボロパルプ、リンターなどの木綿繊維、木材繊維の製紙用パルプ、ケナフ、竹パルプなどの非木材繊維、レーヨンなどの再生セルロース繊維を湿式抄紙によって製造されたものを好適に用いることができる。また、本発明の目的とする効果が損なわれない範囲で有機化学合成繊維、無機繊維の配合も可能である。原紙は、パルプを膨潤及び膠化する性質の或る反応薬品、例えば塩化亜鉛水溶液への浸漬の際に、塩化亜鉛水溶液が原紙内に均一に浸透するように適度な吸水性、透気性及び均一な地合を有することが好ましい。
【0022】
<膠化工程20>
膠化工程20においては、バルカナイズドファイバー原紙を従来慣用の方法で反応薬品に浸漬して、表面を膨潤及び膠化させる。なお、以降において膠化工程を「バルカン化」と表現することがある。ここで用いる反応薬品としては、塩化亜鉛水溶液等のバルカナイズドファイバーの膨潤及び膠化に用いられる慣用のものを用いることができる。塩化亜鉛水溶液で膠化を行う際には69~74ボーメ(゜Be)で反応を行うのが一般的であるが、この濃度だとバルカナイズドファイバーの密度が1.15g/cm3を超えるおそれがある。このため本発明においては、膠化の反応条件を調整したり、生産速度を上げて塩化亜鉛水溶液への浸漬時間を短くすることで膨潤及び膠化を抑える方法や、バルカナイズドファイバーに彫刻を施し見かけ密度を下げる方法等を用いてバルカナイズドファイバーの密度を1.15g/cm3に調整する。反応条件を調整する際の例として、反応薬品として塩化亜鉛水溶液を用いる場合には、塩化亜鉛の濃度は65~69ボーメ(゜Be)の範囲であることが好ましく、浸漬処理時の水溶液の温度は28~55℃の範囲であることが好ましい。塩化亜鉛水溶液を上述の濃度、温度に設定することにより、求める密度のバルカナイズドファイバーを得ることができる。
【0023】
バルカナイズドファイバーに2枚以上の原紙を用いる場合には、膠化工程20でこれらの原紙を積層する。より具体的には、バルカナイズドファイバー原紙を反応薬品に浸漬させてから数秒後に液中で積層処理を行う。1枚の原紙からなるバルカナイズドファイバーには積層工程は不要である。ここで用いる反応薬品としては、セルロース繊維を膨潤及び膠化するものであれば特に限定するものではなく、塩化亜鉛の水溶液の他に、N-メチルモルフォリン-N-オキシド、N-メチルモルフォリン-N-オキシドと極性液体との混合溶液、硫酸などを用いることができるが、塩化亜鉛の水溶液を用いる方法が最も工業化されており、大量生産を行う上では最も望ましい。
【0024】
<脱液工程30>
脱液工程30では、膠化工程20で用いた反応薬品を洗浄液で除去する。より具体的には、洗浄液としては膠化工程20で用いた塩化亜鉛水溶液よりも濃度の低い塩化亜鉛水溶液を用い、段階的に塩化亜鉛濃度が低くなっていく複数の洗浄槽に順次浸漬する、若しくは洗浄槽内の洗浄液濃度を順次下げていくことで反応液の除去を行う。複数の洗浄槽を用いる場合には、第1槽から最終槽まで段階的に塩化亜鉛濃度が低くなっていくように洗浄槽を設け、最終槽の洗浄液は塩化亜鉛成分を殆ど含まない溶液若しくは真水とし、これらの洗浄槽に膠化工程20後の原紙を順次浸漬することで塩化亜鉛水溶液を除去する。一方、単槽で処理するのであれば、洗浄槽内の洗浄液を順次全量入れ替えて徐々に濃度の低い溶液にする、洗浄槽内に徐々に水を流し込むことで洗浄液の濃度を下げる、などの方法で反応液の除去を行うことができる。
【0025】
脱液工程30で用いる洗浄液は膠化工程20で用いた塩化亜鉛水溶液よりも濃度の低い塩化亜鉛水溶液とする。例えば、膠化工程20において濃度65~69ボーメの塩化亜鉛水溶液を用いたのであれば、これよりも濃度の低い15~33ボーメの塩化亜鉛水溶液から開始して、塩化亜鉛をほとんど含まない溶液、若しくは塩化亜鉛をまったく含まない水まで段階的に塩化亜鉛の濃度を落とした洗浄液を用意し、上述の方法で脱液を行う。さらに、脱液工程においては、特開平09-302594号に開示されているように、塩化亜鉛などの反応薬品の除去を促進するために軸方向に振動する振動軸に一段又は多段振動羽根板を回転不能に固定してなる装置を脱塩化亜鉛槽内、すなわち洗浄槽の洗浄液中に投入し、振動羽根板に振動数10~60Hz、振動幅2~30mmの振動を与えながら脱液処理を行ってもよい。
【0026】
<乾燥工程40、仕上工程50>
脱液工程30を経た後は、乾燥工程40及び仕上工程50を経てバルカナイズドファイバーを得る。ここで用いる乾燥方法は特に限定するものではなく、熱風乾燥、マイクロウェーブ乾燥、赤外線乾燥、ロールドライヤー乾燥など既知の乾燥方法を用いることができ、所望の含有水分量となるまでバルカナイズドファイバーを乾燥させる。仕上工程50では、ロール巻取り処理や平板断裁などによる所定の寸法への断裁加工処理等を行う。必要に応じてキャレンダー加工を施し平滑性を付与してもよい。
【0027】
本発明においてバルカナイズドファイバーの密度は0.85~1.15g/cm3とし、0.90~1.10g/cm3であればより好ましい。密度が0.85g/cm3未満だと、曲げた時に元に戻りづらくなり、また割れやすくなる。逆に密度が1.15g/cm3を超えると、硬くなり過ぎて曲げることが出来ず、袋等を留めることが出来ない。
【0028】
本発明においてバルカナイズドファイバーの厚みは0.6~1.0mmとし、0.78~0.86mmであればより好ましい。厚みが0.6mm未満だと、曲げた時に元に戻りづらくなり、また割れやすくなる。逆に厚みが1.0mmを超えると、硬くなり過ぎて曲げることが出来ず、袋等を留めることが出来ない。
【0029】
本発明においてバルカナイズドファイバーのMD方向のガーレー剛度は200~1000mNが好ましく、300~700mNがより好ましい。MD方向のガーレー剛度が200mN未満では曲げたときに元に戻りづらくなり、また割れやすくなる。MD方向のガーレー剛度が1000mNを超えると硬くて曲げることが出来ず、袋等を留めることが出来ない。またCD方向のガーレー剛度は150~700mNが好ましく、200~500mNがより好ましい。ガーレー剛度をコントロールする方法は特に限定するものではないが、例えば原紙の密度を調整する、原紙に用いるパルプの種類を選択する、グリセリン等の柔軟剤を添加する、彫刻により見かけ密度を下げる、などの方法により調整することが可能である。原紙の密度を高くすると剛度が大きくなり、密度を低くすると剛度が小さくなる傾向にある。また、繊維長の長いパルプを用いることで剛度は大きくなる傾向にあり、一例をあげると比較的繊維長が長いコットンパルプを使用すると剛度が大きくなりやすいので、コットンパルプの原料配合量で剛度を調整してもよい。
【0030】
本発明においては、バルカナイズドファイバーに彫刻などにより物理的な空隙を設けてみかけ密度を低下させることで密度調整をしても良い。バルカナイズドファイバーに彫刻を施した際の断面構造の一例が
図2に示されている。同図において、1はバルカナイズドファイバー、2はバルカナイズドファイバー表面、3は切削部(凹部)、Taはバルカナイズドファイバーの厚み、Tbは切削部の厚み、である。なお、彫刻などでバルカナイズドファイバーの表面に空隙を設けた場合のみかけ密度の算出は、空隙を設けていない部分の厚みを用いて行うため、
図2の例であれば彫刻が施された箇所の実際の厚みはTa-Tbとなるが、みかけ密度の算出はTaを用いて行われる。
【0031】
本発明における袋用留め具は、既知の方法によってバルカナイズドファイバーから製造することができる。袋用留め具の形態の一例が
図3に示されている。同図において、10は袋用留め具、11は連結部、100は連結された袋用留め具、である。例えば、ロール状に巻取られたバルカナイズドファイバー(一例として694mm巾)を所定の巾(一例として21mm巾)にスリット加工して、個々の袋用留め具10が連結部11にて切り離せる程度に一部が連結された形状で打ち抜いて巻き取る。連結された袋用留め具100は巻取り状態で最終ユーザーに提供され、ユーザーにて連結部11を切り離され、単体の袋用留め具10となり利用される。
【実施例0032】
以下、本発明に係るバルカナイズドファイバーの加工方法について、実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、例中の「部」、「%」は、特に断らない限りそれぞれ「質量部」、「質量%」を示す。なお、添加部数は、固形分換算の値である。
【0033】
(実施例1)
<原紙の作製>
C.S.F500mlに調整したコットンリンター70質量部、NBKP30質量部からなるスラリーを抄紙原料とし長網抄紙機で抄紙し、原紙を得た。
<バルカナイズドファイバーの作製>
原紙6枚をそれぞれ塩化亜鉛の水溶液(67゜Be、44℃)に浸漬して原紙表面を膨潤及び膠化させ、原紙を積層させた。その後、各槽毎に23゜Beの塩化亜鉛水溶液から塩化亜鉛を含まない水まで段階的に濃度を落とした洗浄液を含む複数の浴槽内に順次浸漬させ、原紙から塩化亜鉛水溶液を除去する脱液処理、熱風及びシリンダードライヤーでの乾燥処理、キャレンダー処理の順で行い、バルカナイズドファイバーを得た。バルカナイズドファイバーの厚みは0.8mm、密度は1.00g/cm3であった。
【0034】
(実施例2)
バルカナイズドファイバーの作製における塩化亜鉛水溶液の濃度を67゜Beから66゜Beへ変更した以外は実施例1と同様にしてバルカナイズドファイバーを得た。厚みは0.8mm、密度は0.85g/cm3であった。
【0035】
(実施例3)
バルカナイズドファイバーの作製における塩化亜鉛水溶液の濃度を67゜Beから68゜Beへ変更した以外は実施例1と同様にしてバルカナイズドファイバーを得た。厚みは0.8mm、密度は1.15g/cm3であった。
【0036】
(実施例4)
原紙坪量を上げバルカナイズドファイバーの厚みを調整した以外は実施例1と同様にしてバルカナイズドファイバーを得た。厚みは0.7mm、密度は1.00g/cm3であった。
【0037】
(実施例5)
原紙坪量を下げバルカナイズドファイバー厚みを調整した以外は実施例1と同様にしてバルカナイズドファイバーを得た。厚みは0.9mm、密度は1.00g/cm3であった。
【0038】
(実施例6)
バルカナイズドファイバーに彫刻を施し見かけ密度を調整した以外は実施例1と同様にしてバルカナイズドファイバーを得た。厚みは0.8mm、密度は0.85g/cm3であった。
【0039】
(比較例1)
バルカナイズドファイバーの作製における塩化亜鉛濃度を67゜Beから64゜Beへ変更した以外は実施例1と同様にしてバルカナイズドファイバーを得た。厚みは0.8mm、密度は0.80g/cm3であった。
【0040】
(比較例2)
バルカナイズドファイバーの作製における塩化亜鉛濃度を67゜Beから70゜Beへ変更した以外は実施例1と同様にしてバルカナイズドファイバーを得た。厚みは0.8mm、密度は1.20g/cm3であった。
【0041】
各実施例及び比較例で得られたバルカナイズドファイバーについてその評価結果が
図4にそれぞれ示されている。なお、
図4はバルカナイズドファイバーの評価例を示したものである。
図3に示された各数値の測定や評価は、以下の方法により行った。
【0042】
<厚さ及び密度>
JIS P 8118:14 紙及び板紙-厚さ、密度及び比容積の試験方法に準拠してバルカナイズドファイバーの厚み及び密度について測定した。
【0043】
<ガーレー剛度>
JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法No40:2000紙及び板紙-荷重曲げによるこわさ試験-ガーレー法に準拠してバルカナイズドファイバーのガーレー剛度について測定した。
【0044】
図4に示された結果から明らかなように、実施例1~6により得られたバルカナイズドファイバーは、留め具として優れるものであった。これに対して、比較例1で得られたバルカナイズドファイバーは、密度が低く腰がないため戻ることが出来ず留め具として不適であった。比較例2で得られたバルカナイズドファイバーは、密度が高く硬いため曲げることが出来ず留め具として不適であった。