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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048669
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】コントローラ及び光干渉測距センサ
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/00 20060101AFI20240402BHJP
   G01B 9/02004 20220101ALI20240402BHJP
   G01B 9/02055 20220101ALI20240402BHJP
【FI】
G01B11/00 G
G01B9/02004
G01B9/02055
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154714
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(72)【発明者】
【氏名】木村 和哉
(72)【発明者】
【氏名】長崎 裕介
【テーマコード(参考)】
2F064
2F065
【Fターム(参考)】
2F064AA01
2F064CC01
2F064DD08
2F064FF01
2F064FF08
2F064GG02
2F065AA06
2F065DD04
2F065FF52
2F065GG04
2F065GG25
2F065LL02
2F065QQ16
2F065QQ28
2F065SS13
(57)【要約】
【課題】サンプリングのタイミングのずれを低減する。
【解決手段】計測対象物に光を照射する第1センサヘッド121及び第2センサヘッド122のそれぞれに、光ファイバケーブル130を介して接続されるコントローラ110であって、光源140と、第1主干渉信号を生成する第1主干渉計151と、第2主干渉信号を生成する第2主干渉計152と、副干渉信号を生成する副干渉計160と、を備え、コントローラ110は、第1補正信号を生成する第1補正信号生成部171と、第1光ファイバ131の光路長と第2光ファイバ132の光路長との光路長差に基づく遅延量を生成する遅延量生成部と、副干渉信号と遅延量とに基づいて、第2主干渉信号のサンプリング周期を補正する第2補正信号を生成する第2補正信号生成部172と、をさらに備える。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測対象物に光を照射する第1センサヘッド及び第2センサヘッドのそれぞれに、光ファイバケーブルを介して接続されるコントローラであって、
波長を変化させながら光を投光する光源と、
前記光源から投光された光が供給され、前記第1センサヘッドにより前記計測対象物に照射して反射される第1測定光と、前記第1測定光とは少なくとも一部異なる光路を辿る第1参照光とに基づく第1主干渉信号を生成する第1主干渉計と、
前記光源から投光された光が供給され、前記第2センサヘッドにより前記計測対象物に照射して反射される第2測定光と、前記第2測定光とは少なくとも一部異なる光路を辿る第2参照光とに基づく第2主干渉信号を生成する第2主干渉計と、
前記光源から投光された光が供給され、異なる光路を辿る2つの光に基づく副干渉信号を生成する副干渉計と、を備え、
前記光ファイバケーブルは、前記第1主干渉計に接続され、前記第1主干渉計からの光を前記第1センサヘッドに伝搬し、前記第1センサヘッドからの光を前記第1主干渉計に伝搬する第1光ファイバと、前記第2主干渉計に接続され、前記第2主干渉計からの光を前記第2センサヘッドに伝搬し、前記第2センサヘッドからの光を前記第2主干渉計に伝搬する第2光ファイバと、を含み、
前記第2光ファイバは、前記第1光ファイバの光路長と異なる光路長を有し、
前記コントローラは、
前記副干渉信号に基づいて、前記第1主干渉信号のサンプリング周期を補正する第1補正信号を生成する第1補正信号生成部と、
前記第1光ファイバの光路長と前記第2光ファイバの光路長との光路長差に基づく遅延量を生成する遅延量生成部と、
前記副干渉信号と前記遅延量とに基づいて、前記第2主干渉信号のサンプリング周期を補正する第2補正信号を生成する第2補正信号生成部と、をさらに備える、
コントローラ。
【請求項2】
前記遅延量生成部は、前記副干渉信号を伝搬し、前記光路長差に基づく光路長を有する第3光ファイバを含む、
請求項1に記載のコントローラ。
【請求項3】
前記遅延量生成部は、前記副干渉信号を電気信号に変換させた副干渉計信号において、時間軸方向に前記遅延量に応じた遅延を発生させて前記第2補正信号生成部に出力する遅延線を含む、
請求項1に記載のコントローラ。
【請求項4】
前記第2補正信号生成部は、副干渉信号を電気信号に変換させた副干渉計信号において、時間軸方向に前記遅延量に応じた遅延を発生させた信号に基づいて、前記第2補正信号であるパルス信号を生成する、
請求項1に記載のコントローラ。
【請求項5】
前記第2主干渉信号を電気信号に変換させた第2主干渉計信号を、前記第2補正信号に基づいてサンプリングしてデジタル信号に変換するAD変換部をさらに備える、
請求項1に記載のコントローラ。
【請求項6】
前記遅延量は、前記光路長差による光の遅延時間との差の絶対値が、前記AD変換部における最小のサンプリング周期よりも小さくなるように設定される、
請求項5に記載のコントローラ。
【請求項7】
前記第1主干渉信号及び前記第2主干渉信号のうちの少なくとも1つと前記副干渉信号とに基づいて、前記計測対象物までの距離を計測する処理部をさらに備える、
請求項1に記載のコントローラ。
【請求項8】
コントローラと、該コントローラに接続される光ファイバケーブルとを含む光干渉測距センサであって、
前記コントローラは、
波長を変化させながら光を投光する光源と、
前記光源から投光された光が供給され、第1センサヘッドにより計測対象物に照射して反射される第1測定光と、前記第1測定光とは少なくとも一部異なる光路を辿る第1参照光とに基づく第1主干渉信号を生成する第1主干渉計と、
前記光源から投光された光が供給され、第2センサヘッドにより前記計測対象物に照射して反射される第2測定光と、前記第2測定光とは少なくとも一部異なる光路を辿る第2参照光とに基づく第2主干渉信号を生成する第2主干渉計と、
前記光源から投光された光が供給され、異なる光路を辿る2つの光に基づく副干渉信号を生成する副干渉計と、を備え、
前記光ファイバケーブルは、前記第1主干渉計に接続され、前記第1主干渉計からの光を前記第1センサヘッドに伝搬し、前記第1センサヘッドからの光を前記第1主干渉計に伝搬する第1光ファイバと、前記第2主干渉計に接続され、前記第2主干渉計からの光を前記第2センサヘッドに伝搬し、前記第2センサヘッドからの光を前記第2主干渉計に伝搬する第2光ファイバと、を含み、
前記第2光ファイバは、前記第1光ファイバの光路長と異なる光路長を有し、
前記コントローラは、
前記副干渉信号に基づいて、前記第1主干渉信号のサンプリング周期を補正する第1補正信号を生成する第1補正信号生成部と、
前記第1光ファイバの光路長と前記第2光ファイバの光路長との光路長差に基づく遅延量を生成する遅延量生成部と、
前記副干渉信号と前記遅延量とに基づいて、前記第2主干渉信号のサンプリング周期を補正する第2補正信号を生成する第2補正信号生成部と、をさらに備える、
光干渉測距センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コントローラ及び光干渉測距センサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非接触で計測対象物までの距離を計測する光測距センサが普及している。例えば、光測距センサとして、波長掃引光源から投光される光から、参照光と測定光とに基づく干渉光を生成し、当該干渉光に基づいて計測対象物までの距離を計測する光干渉測距センサが知られている。
【0003】
従来、この種の光周波数領域反射測定装置として、掃引光源と、掃引光源の出力光の一部に所定の遅延時間差を与えて干渉させ補助干渉信号として出力する補助干渉計と、掃引光源の出力光の一部を被測定光ファイバに入力すると共に被測定光ファイバからの反射光と掃引光源の出力光の一部を干渉させ測定干渉信号として出力する測定干渉計と、補助干渉信号を用いて測定干渉信号に対して掃引光源の波長掃引の非線形を補正する線形化部と、線形化部の出力信号をフーリエ変換して周波数領域の信号を出力するフーリエ変換部と、を有する光周波数領域反射測定装置において、線形化部は各々異なる遅延時間を持つ複数の線形化部を有し、フーリエ変換部は複数の線形化部の出力信号に対してそれぞれ異なる重みをつけて加算しフーリエ変換された結果を出力する重み付き加算・フーリエ変換部を有するものが知られている(特許文献1参照)。この光周波数領域反射測定装置では、被測定光ファイバの広い範囲にわたり波長掃引の非線形を補正する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-181115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、コントローラと複数のセンサヘッドとを備える光干渉測距センサにおいて、複数のセンサヘッドの間で、コントローラとセンサヘッドとを接続する光ファイバの長さを変えることで、異なる距離にある計測対象物に対応することが求められている。
【0006】
しかしながら、主干渉計における各光ファイバの長さが異なる場合、主干渉計の信号と副干渉計の信号との間でサンプリングのタイミングにずれが生じ、両者の信号の干渉によって生成される信号は、信号強度(信号レベル)の低下を招くことがあった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、サンプリングのタイミングのずれを低減することのできるコントローラ及び光干渉測距センサを提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係るコントローラは、計測対象物に光を照射する第1センサヘッド及び第2センサヘッドのそれぞれに、光ファイバケーブルを介して接続されるコントローラであって、波長を変化させながら光を投光する光源と、光源から投光された光が供給され、第1センサヘッドにより計測対象物に照射して反射される第1測定光と、第1測定光とは少なくとも一部異なる光路を辿る第1参照光とに基づく第1主干渉信号を生成する第1主干渉計と、光源から投光された光が供給され、第2センサヘッドにより計測対象物に照射して反射される第2測定光と、第2測定光とは少なくとも一部異なる光路を辿る第2参照光とに基づく第2主干渉信号を生成する第2主干渉計と、光源から投光された光が供給され、異なる光路を辿る2つの光に基づく副干渉信号を生成する副干渉計と、を備え、光ファイバケーブルは、第1主干渉計に接続され、第1主干渉計からの光を第1センサヘッドに伝搬し、第1センサヘッドからの光を第1主干渉計に伝搬する第1光ファイバと、第2主干渉計に接続され、第2主干渉計からの光を第2センサヘッドに伝搬し、第2センサヘッドからの光を第2主干渉計に伝搬する第2光ファイバと、を含み、第2光ファイバは、第1光ファイバの光路長と異なる光路長を有し、コントローラは、副干渉信号に基づいて、第1主干渉信号のサンプリング周期を補正する第1補正信号を生成する第1補正信号生成部と、第1光ファイバの光路長と第2光ファイバの光路長との光路長差に基づく遅延量を生成する遅延量生成部と、副干渉信号と遅延量とに基づいて、第2主干渉信号のサンプリング周期を補正する第2補正信号を生成する第2補正信号生成部と、をさらに備える。
【0009】
この態様によれば、第1光ファイバの光路長と第2光ファイバの光路長との光路長差に基づく遅延量が生成され、副干渉信号と遅延量とに基づいて、第2主干渉信号のサンプリング周期を補正する第2補正信号が生成される。これにより、第2主干渉信号において、第1光ファイバの光路長と第2光ファイバの光路長との光路長差に応じた遅延を発生させることが可能となる。従って、第2主干渉信号をサンプリングする際のタイミングのずれを低減し、サンプリングされたデジタル信号の信号強度の低下を抑制することができる。
【0010】
上記態様において、遅延量生成部は、副干渉信号を伝搬し、光路長差に基づく光路長を有する第3光ファイバを含んでいてもよい。
【0011】
この態様によれば、副干渉信号を伝搬し、第1光ファイバの光路長と第2光ファイバの光路長との光路長差に基づく光路長を有する第3光ファイバを含む。これにより、第3光ファイバの光路長を変更することで、遅延量を容易に設定することができる。
【0012】
上記態様において、遅延量生成部は、副干渉信号を電気信号に変換させた副干渉計信号において、時間軸方向に遅延量に応じた遅延を発生させて第2補正信号生成部に出力する遅延線を含んでいてもよい。
【0013】
この態様によれば、副干渉信号を電気信号に変換させた副干渉計信号において、時間軸方向に遅延量に応じた遅延を発生させて第2補正信号生成部に出力する遅延線を含む。これにより、電気的に遅延を発生させた副干渉計信号を出力することで、第2補正信号生成部は、電気信号である第2補正信号を容易に生成することができる。
【0014】
上記態様において、第2補正信号生成部は、副干渉信号を電気信号に変換させた副干渉計信号において、時間軸方向に遅延量に応じた遅延を発生させた信号に基づいて、第2補正信号であるパルス信号を生成してもよい。
【0015】
この態様によれば、第2補正信号生成部が、副干渉信号を電気信号に変換させた副干渉計信号において、時間軸方向に遅延量に応じた遅延を発生させた信号に基づいて、第2補正信号であるパルス信号を生成する。これにより、第2主干渉信号のサンプリングのタイミングを容易に合わせる(同期をとる)ことができる。
【0016】
上記態様において、第2主干渉信号を電気信号に変換させた第2主干渉計信号を、第2補正信号に基づいてサンプリングしてデジタル信号に変換するAD変換部をさらに備えていてもよい。
【0017】
この態様によれば、第2主干渉信号を電気信号に変換させた第2主干渉計信号を、第2補正信号に基づいてサンプリングしてデジタル信号に変換するAD変換部をさらに備える。これにより、第2主干渉計信号をサンプリング周期が補正されたデジタル信号に変換する構成を容易に実現することができる。
【0018】
上記態様において、遅延量は、光路長差による光の遅延時間との差の絶対値が、AD変換部における最小のサンプリング周期よりも小さくなるように設定されていてもよい。
【0019】
この態様によれば、遅延量は、光路長差による光の遅延時間との差の絶対値が、AD変換部における最小のサンプリング周期よりも小さくなるように設定される。これにより、サンプリングされたデジタル信号の信号強度の低下を所定割合以下、例えば10%以下に抑制することができる。
【0020】
上記態様において、第1主干渉信号及び第2主干渉信号のうちの少なくとも1つと副干渉信号とに基づいて、計測対象物までの距離を計測する処理部をさらに備えていてもよい。
【0021】
この態様によれば、第1主干渉信号及び第2主干渉信号のうちの少なくとも1つと副干渉信号とに基づいて、計測対象物までの距離を計測する処理部をさらに備える。これにより、計測対象物までの距離を計測する構成を容易に実現することができる。
【0022】
本開示の一態様に係る光干渉測距センサは、コントローラと、該コントローラに接続される光ファイバケーブルとを含む光干渉測距センサであって、コントローラは、波長を変化させながら光を投光する光源と、光源から投光された光が供給され、第1センサヘッドにより計測対象物に照射して反射される第1測定光と、第1測定光とは少なくとも一部異なる光路を辿る第1参照光とに基づく第1主干渉信号を生成する第1主干渉計と、光源から投光された光が供給され、第2センサヘッドにより計測対象物に照射して反射される第2測定光と、第2測定光とは少なくとも一部異なる光路を辿る第2参照光とに基づく第2主干渉信号を生成する第2主干渉計と、光源から投光された光が供給され、異なる光路を辿る2つの光に基づく副干渉信号を生成する副干渉計と、を備え、光ファイバケーブルは、第1主干渉計に接続され、第1主干渉計からの光を第1センサヘッドに伝搬し、第1センサヘッドからの光を第1主干渉計に伝搬する第1光ファイバと、第2主干渉計に接続され、第2主干渉計からの光を第2センサヘッドに伝搬し、第2センサヘッドからの光を第2主干渉計に伝搬する第2光ファイバと、を含み、第2光ファイバは、第1光ファイバの光路長と異なる光路長を有し、コントローラは、副干渉信号に基づいて、第1主干渉信号のサンプリング周期を補正する第1補正信号を生成する第1補正信号生成部と、第1光ファイバの光路長と第2光ファイバの光路長との光路長差に基づく遅延量を生成する遅延量生成部と、副干渉信号と遅延量とに基づいて、第2主干渉信号のサンプリング周期を補正する第2補正信号を生成する第2補正信号生成部と、をさらに備える。
【0023】
この態様によれば、第1光ファイバの光路長と第2光ファイバの光路長との光路長差に基づく遅延量が生成され、副干渉信号と遅延量とに基づいて、第2主干渉信号のサンプリング周期を補正する第2補正信号が生成される。これにより、第2主干渉信号において、第1光ファイバの光路長と第2光ファイバの光路長との光路長差に応じた遅延を発生させることが可能となる。従って、第2主干渉信号をサンプリングする際のタイミングのずれを低減し、サンプリングされたデジタル信号の信号強度の低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、サンプリングのタイミングのずれを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本開示に係る変位センサ10の概要を示す外観模式図である。
図2】本開示に係る変位センサ10によって計測対象物Tが計測される手順を示すフローチャートである。
図3】本開示に係る変位センサ10が用いられるセンサシステム1の概要を示す機能ブロック図である。
図4】本開示に係る変位センサ10が用いられるセンサシステム1によって計測対象物Tが計測される手順を示すフローチャートである。
図5A】本開示に係る変位センサ10によって計測対象物Tが計測される原理を説明するための図である。
図5B】本開示に係る変位センサ10によって計測対象物Tが計測される別の原理を説明するための図である。
図6A】センサヘッド20の概略構成を示す斜視図である。
図6B】センサヘッド20の内部構造を示す模式図である。
図7】コントローラ30における信号処理について説明するためのブロック図である。
図8】コントローラ30における処理部59によって実行される、計測対象物Tまでの距離を算出する方法を示すフローチャートである。
図9A】波形信号(電圧vs時間)がスペクトル(電圧vs周波数)に周波数変換される様子を示す図である。
図9B】スペクトル(電圧vs周波数)がスペクトル(電圧vs距離)に距離変換される様子を示す図である。
図9C】スペクトル(電圧vs距離)に基づいてピークを検出し、それに対応する距離値が算出される様子を示す図である。
図10】本発明の一実施形態に係る光干渉測距センサ100の構成概要を示す模式図である。
図11】本発明の一実施形態に係る他の光干渉測距センサ101の構成概要を示す模式図である。
図12】第1主干渉計信号及び第2主干渉計信号のサンプリングのタイミングを説明するための図である。
図13】デジタル信号に変換された第2主干渉計信号の信号強度と時間差Δtとの関係を説明するための図である。
図14】3つのセンサヘッドを備える場合の副干渉計160及びその後段の具体的な構成の一例を示す模式図である。
図15】3つのセンサヘッドを備える場合の副干渉計160及びその後段の具体的な構成の他の例を示す模式図である。
図16】測定光と参照光とを用いて干渉光を発生させる干渉計のバリエーションを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好適な各実施形態について、添付図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する各実施形態は、あくまで、本発明を実施するための具体的な一例を挙げるものであって、本発明を限定的に解釈させるものではない。また、説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する場合がある。
【0027】
[変位センサの概要]
先ず、本開示に係る変位センサの概要について説明する。
図1は、本開示に係る変位センサ10の概要を示す外観模式図である。図1に示されるように、変位センサ10は、センサヘッド20とコントローラ30とを備え、計測対象物Tの変位(計測対象物Tまでの距離)を計測する。
【0028】
センサヘッド20とコントローラ30とは、光ファイバ40で接続されており、センサヘッド20には対物レンズ21が取り付けられている。また、コントローラ30は、表示部31と、設定部32と、外部インタフェース(I/F)部33と、光ファイバ接続部34と、外部記憶部35とを含み、さらに、内部には、計測処理部36を有する。
【0029】
センサヘッド20は、コントローラ30から出力される光を計測対象物Tに照射し、当該計測対象物Tからの反射光を受光する。センサヘッド20は、コントローラ30から出力されて光ファイバ40を介して受光した光を反射させ、上述した計測対象物Tからの反射光と干渉させるための参照面を、内部に有している。
【0030】
なお、センサヘッド20には対物レンズ21が取り付けられているが、当該対物レンズ21は着脱可能な構成となっている。対物レンズ21は、センサヘッド20と計測対象物Tとの距離に応じて、適切な焦点距離を有する対物レンズに交換可能であって、又は可変焦点の対物レンズを適用してもよい。
【0031】
さらに、センサヘッド20を設置する際には、ガイド光(可視光)を計測対象物Tに照射して、当該変位センサ10の計測領域内に計測対象物Tが適切に位置するようにセンサヘッド20及び/又は計測対象物Tを設置してもよい。
【0032】
光ファイバ40は、コントローラ30に配置される光ファイバ接続部34に接続されて延伸し、当該コントローラ30とセンサヘッド20とを接続する。これにより、光ファイバ40は、コントローラ30から投光される光をセンサヘッド20に導き、さらに、センサヘッド20からの戻り光をコントローラ30へ導くように構成されている。なお、光ファイバ40は、センサヘッド20及びコントローラ30に着脱可能であって、長さ、太さ及び特性等において種々の光ファイバを適用することができる。
【0033】
表示部31は、例えば、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイ等で構成される。表示部31には、変位センサ10の設定値、センサヘッド20からの戻り光の受光量、及び変位センサ10によって計測された計測対象物Tの変位(計測対象物Tまでの距離)等の計測結果が表示される。
【0034】
設定部32は、例えば、機械式ボタンやタッチパネル等をユーザが操作することによって、計測対象物Tを計測するために必要な設定が行われる。これらの必要な設定の全部又は一部は、予め設定されていてもよいし、外部I/F部33に接続された外部接続機器(図示せず)から設定されてもよい。また、外部接続機器は、ネットワークを介して有線又は無線で接続されていてもよい。
【0035】
ここで、外部I/F部33は、例えば、Ethernet(登録商標)、RS232C、及びアナログ出力等で構成される。外部I/F部33には、他の接続機器に接続されて当該外部接続機器から必要な設定が行われたり、変位センサ10によって計測された計測結果等を外部接続機器に出力したりしてもよい。
【0036】
また、コントローラ30が外部記憶部35に記憶されたデータを取り込むことにより、計測対象物Tを計測するために必要な設定が行われてもよい。外部記憶部35は、例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリ等の補助記憶装置であって、計測対象物Tを計測するために必要な設定等が予め記憶されている。
【0037】
コントローラ30における計測処理部36は、例えば、連続的に波長を変化させながら光を投光する波長掃引光源、センサヘッド20からの戻り光を受光して電気信号に変換する受光素子、及び電気信号を処理する信号処理回路等を含む。計測処理部36では、センサヘッド20からの戻り光に基づいて、最終的には、計測対象物Tの変位(計測対象物Tまでの距離)が算出されるように制御部及び記憶部等を用いて様々な処理がなされている。これらの処理についての詳細は後述する。
【0038】
図2は、本開示に係る変位センサ10によって計測対象物Tが計測される手順を示すフローチャートである。図2に示されるように、当該手順は、ステップS11~S14を含む。
【0039】
ステップS11では、センサヘッド20を設置する。例えば、センサヘッド20から計測対象物Tにガイド光を照射して、それを参考にして、センサヘッド20を適切な位置に設置する。
【0040】
具体的には、コントローラ30における表示部31に、センサヘッド20からの戻り光の受光量を表示し、ユーザは、当該受光量を確認しながら、センサヘッド20の向き及び計測対象物Tとの距離(高さ位置)等を調整してもよい。基本的には、センサヘッド20からの光を計測対象物Tに対して垂直に(より垂直に近い角度で)照射できれば、当該計測対象物Tからの反射光の光量が大きく、センサヘッド20からの戻り光の受光量も大きくなる。
【0041】
また、センサヘッド20と計測対象物Tとの距離に応じて、適切な焦点距離を有する対物レンズ21に交換してもよい。
【0042】
さらに、計測対象物Tを計測するに際して適切な設定ができない場合(例えば、計測に必要な受光量を得られない、又は対物レンズ21の焦点距離が不適切である等)には、エラー又は設定未完了等を、表示部31に表示したり、外部接続機器に出力したりして、ユーザに通知するようにしてもよい。
【0043】
ステップS12では、計測対象物Tを計測するに際して種々の計測条件を設定する。例えば、センサヘッド20が有する固有の校正データ(線形性を補正する関数等)を、ユーザがコントローラ30における設定部32を操作することによって設定する。
【0044】
また、各種パラメータを設定してもよい。例えば、サンプリング時間、計測範囲、及び計測結果を正常とするか異常とするかの閾値等が設定される。さらに、計測対象物Tの反射率及び材質等の計測対象物Tの特性に応じて測定周期が設定され、及び計測対象物Tの材質に応じた測定モード等が設定されるようにしてもよい。
【0045】
なお、これらの計測条件及び各種パラメータの設定は、コントローラ30における設定部32を操作することによって設定されるが、外部接続機器から設定されてもよいし、外部記憶部35からデータを取り込むことによって設定されてもよい。
【0046】
ステップS13では、ステップS11で設置されたセンサヘッド20で、ステップS12で設定された計測条件及び各種パラメータに従って、計測対象物Tを計測する。
【0047】
具体的には、コントローラ30の計測処理部36において、波長掃引光源から光が投光され、センサヘッド20からの戻り光を受光素子で受光し、信号処理回路によって周波数解析、距離変換及びピーク検出等がなされて、計測対象物Tの変位(計測対象物Tまでの距離)が算出される。具体的な計測処理についての詳細は、後述する。
【0048】
ステップS14では、ステップS13で計測された計測結果を出力する。例えば、ステップS13で計測された計測対象物Tの変位(計測対象物Tまでの距離)等を、コントローラ30における表示部31に表示したり、外部接続機器に出力したりする。
【0049】
また、ステップS13で計測された計測対象物Tの変位(計測対象物Tまでの距離)が、ステップS12で設定された閾値に基づいて、正常の範囲内であるか異常かについても計測結果として表示又は出力されてもよい。さらに、ステップS12で設定された計測条件、各種パラメータ及び測定モード等も共に表示又は出力されてもよい。
【0050】
[変位センサを含むシステムの概要]
図3は、本開示に係る変位センサ10が用いられるセンサシステム1の概要を示す機能ブロック図である。図3に示されるように、センサシステム1は、変位センサ10と、制御機器11と、制御信号入力用センサ12と、外部接続機器13とを備える。なお、変位センサ10は、制御機器11及び外部接続機器13とは、例えば、通信ケーブル又は外部接続コード(例えば、外部入力線、外部出力線及び電源線等を含む)で接続され、制御機器11と制御信号入力用センサ12とは信号線で接続される。
【0051】
変位センサ10は、図1及び図2を用いて説明したように、計測対象物Tの変位(計測対象物Tまでの距離)を計測する。そして、変位センサ10は、その計測結果等を制御機器11及び外部接続機器13に出力してもよい。
【0052】
制御機器11は、例えば、PLC(Programmable Logic Controller)であって、変位センサ10が計測対象物Tを計測するに際して、当該変位センサ10に対して各種の指示を与える。
【0053】
例えば、制御機器11は、制御機器11に接続された制御信号入力用センサ12からの入力信号に基づいて、測定タイミング信号を変位センサ10に出力してもよいし、ゼロリセット命令信号(現在の計測値を0に設定するための信号)等を変位センサ10に出力してもよい。
【0054】
制御信号入力用センサ12は、変位センサ10が計測対象物Tを計測するタイミングを指示するオン/オフ信号を、制御機器11に出力する。例えば、制御信号入力用センサ12は、計測対象物Tが移動する生産ラインの近傍に設置され、計測対象物Tが所定の位置に移動してきたことを検知して、制御機器11にオン/オフ信号を出力すればよい。
【0055】
外部接続機器13は、例えば、PC(Personal Computer)であって、ユーザが操作することによって、変位センサ10に対して様々な設定を行うことができる。
【0056】
具体例としては、測定モード、動作モード、測定周期、及び計測対象物Tの材質等が設定される。
【0057】
測定モードの設定として、制御機器11内部で周期的に計測開始する「内部同期計測モード」、又は制御機器11外部からの入力信号に応じて計測開始する「外部同期計測モード」等が選択される。
【0058】
動作モードの設定として、実際に計測対象物Tを計測する「運転モード」、又は計測対象物Tを計測するための計測条件を設定する「調整モード」等が選択される。
【0059】
測定周期は、計測対象物Tを測定する周期であり、計測対象物Tの反射率に応じて設定すればよいが、仮に、計測対象物Tの反射率が低い場合であっても、測定周期を長くして適切に測定周期を設定すれば、計測対象物Tを適切に測定することができる。
【0060】
計測対象物Tについて、反射光の成分として拡散反射が比較的多い場合に適した「粗面モード」、反射光の成分として鏡面反射が比較的多い場合に適した「鏡面モード」、又はこれらの中間的な「標準モード」等が選択される。
【0061】
このように、計測対象物Tの反射率及び材質に応じて、適切な設定を行うことによって、より高精度に計測対象物Tを計測することができる。
【0062】
図4は、本開示に係る変位センサ10が用いられるセンサシステム1によって計測対象物Tが計測される手順を示すフローチャートである。図4に示されるように、当該手順は、上述した外部同期計測モードの場合の手順であって、ステップS21~S24を含む。
【0063】
ステップS21では、センサシステム1は、計測される対象である計測対象物Tを検知する。具体的には、制御信号入力用センサ12は、生産ライン上において、計測対象物Tが所定の位置に移動してきたことを検知する。
【0064】
ステップS22では、センサシステム1は、ステップS21で検知された計測対象物Tを変位センサ10によって計測するように計測指示する。具体的には、制御信号入力用センサ12は、制御機器11にオン/オフ信号を出力することにより、ステップS21で検知された計測対象物Tを測定するタイミングを指示し、制御機器11は、当該オン/オフ信号に基づいて、変位センサ10に測定タイミング信号を出力して、計測対象物Tを計測するように計測指示する。
【0065】
ステップS23では、変位センサ10によって計測対象物Tが計測される。具体的には、変位センサ10は、ステップS22で受け取った計測指示に基づいて、計測対象物Tを計測する。
【0066】
ステップS24では、センサシステム1は、ステップS23で計測された計測結果を出力する。具体的には、変位センサ10は、計測処理の結果を、表示部31に表示したり、外部I/F部33を経由して制御機器11又は外部接続機器13等に出力したりする。
【0067】
なお、ここでは、図4を用いて、制御信号入力用センサ12によって計測対象物Tが検知されることにより計測対象物Tを計測する外部同期計測モードの場合についての手順を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、内部同期計測モードの場合は、ステップS21及びS22に代わって、予め設定された周期に基づいて測定タイミング信号が生成されることにより、計測対象物Tを計測するように変位センサ10に指示する。
【0068】
次に、本開示に係る変位センサ10によって計測対象物Tが計測される原理を説明する。
図5Aは、本開示に係る変位センサ10によって計測対象物Tが計測される原理を説明するための図である。図5Aに示されるように、変位センサ10は、センサヘッド20及びコントローラ30を備える。センサヘッド20は、対物レンズ21と、複数のコリメートレンズ22a~22cとを含み、コントローラ30は、波長掃引光源51と、光増幅器52と、複数のアイソレータ53及び53a~53bと、複数の光カプラ54及び54a~54eと、減衰器55と、複数の受光素子(例えば、フォトディテクタ(PD))56a~56cと、複数の増幅回路57a~57cと、複数のアナログデジタル(AD)変換部(例えば、アナログデジタルコンバータ)58a~58cと、処理部(例えば、プロセッサ)59と、バランスディテクタ60と、補正信号生成部61とを含む。
【0069】
波長掃引光源51は、波長を掃引したレーザ光を投光する。波長掃引光源51としては、例えば、VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)を電流で変調する方式を適用すれば、共振器長が短いためにモードホップを起こしにくく、波長を変化させることが容易であり、低コストで実現することができる。
【0070】
光増幅器52は、波長掃引光源51から投光される光を増幅する。光増幅器52は、例えば、EDFA(erbium-doped fiber amplifier)を適用し、例えば、1550nm専用の光増幅器であってもよい。
【0071】
アイソレータ53は、入射した光を一方向に透過させる光学素子であって、戻り光によって発生するノイズの影響を防ぐために、波長掃引光源51の直後に配置されてもよい。
【0072】
このように、波長掃引光源51から投光された光は、光増幅器52によって増幅され、アイソレータ53を介して、光カプラ54によって主干渉計と副干渉計とに分岐される。例えば、光カプラ54では、主干渉計と副干渉計とに分岐する光の割合は、主干渉計側に90%以上分岐させるようにしてもよい。
【0073】
主干渉計に分岐された光は、さらに、1段目の光カプラ54aによって、センサヘッド20の方向と2段目の光カプラ54bの方向とに分岐される。
【0074】
1段目の光カプラ54aによってセンサヘッド20の方向に分岐された光は、センサヘッド20において、光ファイバの先端からコリメートレンズ22a及び対物レンズ21を通過して計測対象物Tに照射される。そして、当該光ファイバの先端(端面)が参照面となり、当該参照面で反射した光と、計測対象物Tで反射した光とが干渉し、干渉光が生成されて、1段目の光カプラ54aに戻り、その後、受光素子56aで受光されて電気信号に変換される。
【0075】
1段目の光カプラ54aによって2段目の光カプラ54bの方向に分岐された光は、アイソレータ53aを介して2段目の光カプラ54bに向かい、当該2段目の光カプラ54bによって、さらにセンサヘッド20の方向と3段目の光カプラ54cの方向とに分岐される。光カプラ54bからセンサヘッド20の方向に分岐された光は、1段目と同様に、センサヘッド20において、光ファイバの先端からコリメートレンズ22b及び対物レンズ21を通過して計測対象物Tに照射される。そして、当該光ファイバの先端(端面)が参照面となり、当該参照面で反射した光と、計測対象物Tで反射した光とが干渉し、干渉光が生成されて、2段目の光カプラ54bに戻り、当該光カプラ54bによってアイソレータ53a及び受光素子56bそれぞれの方向へ分岐される。光カプラ54bから受光素子56bの方向へ分岐された光は、受光素子56bで受光されて電気信号に変換される。一方、アイソレータ53aは、前段の光カプラ54aから後段の光カプラ54bへ光を透過し、後段の光カプラ54bから前段の光カプラ54aへの光を遮断するため、光カプラ54bからアイソレータ53aの方向へ分岐された光は、遮断される。
【0076】
2段目の光カプラ54bによって3段目の光カプラ54cの方向に分岐された光は、アイソレータ53bを介して3段目の光カプラ54cに向かい、当該3段目の光カプラ54cによって、さらにセンサヘッド20の方向と減衰器55の方向とに分岐される。光カプラ54cからセンサヘッド20の方向に分岐された光は、1段目及び2段目と同様に、センサヘッド20において、光ファイバの先端からコリメートレンズ22c及び対物レンズ21を通過して計測対象物Tに照射される。そして、当該光ファイバの先端(端面)が参照面となり、当該参照面で反射した光と、計測対象物Tで反射した光とが干渉し、干渉光が生成されて、3段目の光カプラ54cに戻り、当該光カプラ54cによってアイソレータ53b及び受光素子56cそれぞれの方向へ分岐される。光カプラ54cから受光素子56cの方向へ分岐された光は、受光素子56cで受光されて電気信号に変換される。一方、アイソレータ53bは、前段の光カプラ54bから後段の光カプラ54cへ光を透過し、後段の光カプラ54cから前段の光カプラ54bへの光を遮断するため、光カプラ54cからアイソレータ53bの方向へ分岐された光は、遮断される。
【0077】
なお、3段目の光カプラ54cによってセンサヘッド20でない方向に分岐された光は、計測対象物Tの計測に用いられないため、反射して戻ってこないように、例えば、ターミネータ等の減衰器55によって減衰されるとよい。
【0078】
このように、主干渉計では、3段の光路(3チャネル)を有し、それぞれセンサヘッド20の光ファイバの先端(端面)から計測対象物Tまでの距離の2倍(往復)を光路長差とした干渉計であり、それぞれ光路長差に応じた3つの干渉光を生成している。
【0079】
受光素子56a~56cは、上述したように主干渉計からの干渉光を受光し、当該受光した受光量に応じた電気信号を生成する。
【0080】
増幅回路57a~57cは、それぞれ受光素子56a~56cから出力される電気信号を増幅する。
【0081】
AD変換部58a~58cは、それぞれ増幅回路57a~57cによって増幅された電気信号を受信して、当該電気信号に関してアナログ信号からデジタル信号に変換する(AD変換)。ここで、AD変換部58a~58cは、副干渉計における補正信号生成部61からの補正信号に基づいて、AD変換する。
【0082】
副干渉計では、波長掃引光源51の掃引時における波長の非線形性を補正するために、副干渉計にて干渉信号を取得し、Kクロックと呼ばれる補正信号を生成する。
【0083】
具体的には、光カプラ54によって副干渉計に分岐された光は、光カプラ54dによって、さらに分岐される。ここで、分岐された各光の光路は、例えば、光カプラ54dと光カプラ54eとの間において異なる長さの光ファイバを用いて光路長差を有するように構成されて、当該光路長差に応じた干渉光が光カプラ54eから出力される。そして、バランスディテクタ60は、光カプラ54eからの干渉光を受光し、その逆位相の信号との差分を取ることによってノイズを除去しつつ、光信号を増幅して電気信号に変換する。
【0084】
なお、光カプラ54d及び光カプラ54eは、いずれも50:50の割合で光を分岐すればよい。
【0085】
補正信号生成部61は、バランスディテクタ60からの電気信号に基づいて、波長掃引光源51の掃引時における波長の非線形性を把握し、当該非線形に応じたKクロックを生成し、AD変換部58a~58cに出力する。
【0086】
波長掃引光源51の掃引時における波長の非線形性から、主干渉計においてそれぞれAD変換部58a~58cに入力されるアナログ信号の波の間隔は等間隔ではない。AD変換部58a~58cでは、波の間隔が等間隔になるように、上述したKクロックに基づいてサンプリング時間を補正してAD変換(サンプリング)される。
【0087】
なお、Kクロックは、上述したように、主干渉計のアナログ信号をサンプリングするために用いられる補正信号であるため、主干渉計のアナログ信号よりも高周波に生成される必要がある。具体的には、副干渉計における光カプラ54dと光カプラ54eとの間で設けられた光路長差を、主干渉計における光ファイバの先端(端面)と計測対象物Tとの間で設けられた光路長差よりも長くしてもよいし、補正信号生成部61で周波数を逓倍(例えば、8倍等)して高周波化してもよい。
【0088】
処理部59は、それぞれAD変換部58a~58cによって非線形性が補正されつつAD変換されたデジタル信号を取得し、当該デジタル信号に基づいて、計測対象物Tの変位(計測対象物Tまでの距離)を算出する。具体的には、処理部59では、高速フーリエ変換(FFT:fast Fourier transform)を用いてデジタル信号を周波数変換し、それらを解析することによって距離が算出される。処理部59における詳細な処理については後述する。
【0089】
なお、処理部59では、高速処理が要求されることから、FPGA(field-programmable gate array)等の集積回路で実現される場合が多い。
【0090】
また、ここでは、主干渉計において3段の光路を設けて、センサヘッド20によってそれぞれの光路から計測対象物Tに対して測定光が照射され、それぞれから得られる干渉光(戻り光)に基づいて、計測対象物Tまでの距離等が計測される(マルチチャネル)。主干渉計におけるチャネルは、3段に限定されるものではなく、1段又は2段であってもよいし、4段以上であってもよい。
【0091】
図5Bは、本開示に係る変位センサ10によって計測対象物Tが計測される別の原理を説明するための図である。図5Bに示されるように、変位センサ10は、センサヘッド20及びコントローラ30を備える。センサヘッド20は、対物レンズ21と、複数のコリメートレンズ22a~22cとを含み、コントローラ30は、波長掃引光源51と、光増幅器52と、複数のアイソレータ53及び53a~53bと、複数の光カプラ54及び54a~54jと、減衰器55と、複数の受光素子(例えば、フォトディテクタ(PD))56a~56cと、複数の増幅回路57a~57cと、複数のアナログデジタル(AD)変換部(例えば、アナログデジタルコンバータ)58a~58cと、処理部(例えば、プロセッサ)59と、バランスディテクタ60と、補正信号生成部61とを含む。図5Bに示された変位センサ10は、主に、光カプラ54f~54jを備えている点で、図5Aに示された変位センサ10の構成とは異なり、当該異なる構成による原理について、図5Aと比較しながら詳しく説明する。
【0092】
波長掃引光源51から投光された光は、光増幅器52によって増幅され、アイソレータ53を介して、光カプラ54によって主干渉計側と副干渉計側とに分岐されるが、主干渉計側に分岐された光は、さらに、光カプラ54fによって測定光と参照光とに分岐される。
【0093】
測定光は、図5Aで説明したように、1段目の光カプラ54aによってコリメートレンズ22a及び対物レンズ21を通過して計測対象物Tに照射され、当該計測対象物Tで反射する。ここで、図5Aでは、光ファイバの先端(端面)を参照面として、当該参照面で反射した光と計測対象物Tで反射した光とが干渉し、干渉光が生成されていたが、図5Bでは、光が反射する参照面を設けていない。すなわち、図5Bでは、図5Aのように参照面で反射する光が発生しないため、計測対象物Tで反射された測定光が1段目の光カプラ54aに戻ることなる。
【0094】
同様に、1段目の光カプラ54aから2段目の光カプラ54bの方向に分岐された光は、当該2段目の光カプラ54bによってコリメートレンズ22b及び対物レンズ21を通過して計測対象物Tに照射され、当該計測対象物Tで反射して2段目の光カプラ54bに戻る。2段目の光カプラ54bから3段目の光カプラ54cの方向に分岐された光は、当該3段目の光カプラ54cによってコリメートレンズ22c及び対物レンズ21を通過して計測対象物Tに照射され、当該計測対象物Tで反射して3段目の光カプラ54cに戻る。
【0095】
一方、光カプラ54fによって分岐された参照光は、さらに、光カプラ54gによって光カプラ54h、54i及び54jに分岐される。
【0096】
光カプラ54hでは、光カプラ54aから出力される計測対象物Tで反射された測定光と、光カプラ54gから出力される参照光とが干渉し、干渉光が生成されて、受光素子56aで受光されて電気信号に変換される。換言すれば、光カプラ54fによって測定光と参照光とに分岐され、当該測定光の光路(光カプラ54fから、光カプラ54a、コリメートレンズ22a、対物レンズ21を介して計測対象物Tで反射し、光カプラ54hまで到達する光路)と、当該参照光の光路(光カプラ54fから、光カプラ54gを介して光カプラ54hまで到達する光路)との光路長差に応じた干渉光が生成されて、当該干渉光が受光素子56aで受光されて電気信号に変換される。
【0097】
同様に、光カプラ54iでは、測定光の光路(光カプラ54fから、光カプラ54a、54b、コリメートレンズ22b、対物レンズ21を介して計測対象物Tで反射し、光カプラ54iまで到達する光路)と、参照光の光路(光カプラ54fから、光カプラ54gを介して光カプラ54iまで到達する光路)との光路長差に応じた干渉光が生成されて、当該干渉光が受光素子56bで受光されて電気信号に変換される。
【0098】
光カプラ54jでは、測定光の光路(光カプラ54fから、光カプラ54a、54b、54c、コリメートレンズ22c、対物レンズ21を介して計測対象物Tで反射し、光カプラ54jまで到達する光路)と、参照光の光路(光カプラ54fから、光カプラ54gを介して光カプラ54jまで到達する光路)との光路長差に応じた干渉光が生成されて、当該干渉光が受光素子56cで受光されて電気信号に変換される。なお、受光素子56a~56cは、例えば、バランスフォトディテクタであってもよい。
【0099】
このように、主干渉計では、3段の光路(3チャネル)を有し、それぞれ計測対象物Tで反射されて光カプラ54h、54i及び54jに入力される測定光と、光カプラ54f及び54gを介してそれぞれ光カプラ54h、54i及び54jに入力される参照光との光路長差に応じた3つの干渉光を生成している。
【0100】
なお、測定光と参照光との光路長差は、3チャネルにおいてそれぞれ異なるように、例えば、光カプラ54gと、各光カプラ54h、54i及び54jとの光路長を異なるように設定してもよい。
【0101】
そして、それぞれから得られる干渉光に基づいて、計測対象物Tまでの距離等が計測される(マルチチャネル)。
【0102】
[センサヘッドの構造]
ここで、変位センサ10に用いられるセンサヘッドの構造について説明する。
図6Aは、センサヘッド20の概略構成を示す斜視図であり、図6Bは、センサヘッドの内部構造を示す模式図である。
【0103】
図6Aに示されるように、センサヘッド20は、レンズホルダ23に対物レンズ21及びコリメートレンズが格納されている。例えば、レンズホルダ23のサイズは、対物レンズ21を囲う一辺の長さが20mm程度であり、光軸方向への長さが40mm程度である。
【0104】
図6Bに示されるように、レンズホルダ23には、1つの対物レンズ21及び3つのコリメートレンズ22a~22cが格納されている。光ファイバからの光は、光ファイバアレイ24を介して3つのコリメートレンズ22a~22cに導かれるように構成されており、さらに、3つのコリメートレンズ22a~22cを通過した光は、対物レンズ21を介して計測対象物Tに照射される。
【0105】
このように、これらの光ファイバ、コリメートレンズ22a~22c及び光ファイバアレイ24は、対物レンズ21とともに、レンズホルダ23によって保持されて、センサヘッド20を構成している。
【0106】
また、センサヘッド20を構成するレンズホルダ23は、高強度で、また高精度に加工できる金属(例えば、A2017)で作製されていてもよい。
【0107】
図7は、コントローラ30における信号処理について説明するためのブロック図である。図7に示されるように、コントローラ30は、複数の受光素子71a~71eと、複数の増幅回路72a~72cと、複数のAD変換部74a~74cと、処理部75と、差動増幅回路76と、補正信号生成部77とを備える。
【0108】
コントローラ30では、図5Aで示されたように、波長掃引光源51から投光された光を光カプラ54によって主干渉計と副干渉計とに分岐し、それぞれより得られる主干渉信号及び副干渉信号を処理することによって、計測対象物Tまでの距離値を算出している。
【0109】
複数の受光素子71a~71cは、図5Aに示された受光素子56a~56cに相当し、主干渉計からの主干渉信号をそれぞれ受光して、電流信号としてそれぞれ増幅回路72a~72cに出力する。
【0110】
複数の増幅回路72a~72cは、電流信号を電圧信号に変換(I-V変換)して増幅する。
【0111】
複数のAD変換部74a~74cは、図5Aに示されたAD変換部58a~58cに相当し、後述する補正信号生成部77からのKクロックに基づいて、電圧信号をデジタル信号に変換する(AD変換)。
【0112】
処理部75は、図5Aに示された処理部59に相当し、AD変換部74a~74cからのデジタル信号をFFTを用いて周波数に変換し、それらを解析して、計測対象物Tまでの距離値を算出する。
【0113】
複数の受光素子71d~71e及び差動増幅回路76は、図5Aに示されたバランスディテクタ60に相当し、副干渉計における干渉光をそれぞれ受光して、一方は位相の反転した干渉信号を出力し、2つの信号の差分を取ることによってノイズを除去しつつ、干渉信号を増幅して電圧信号に変換する。
【0114】
補正信号生成部77は、図5Aに示された補正信号生成部61に相当し、電圧信号をコンパレータで2値化し、Kクロックを生成し、AD変換部74a~74cに出力する。Kクロックは、主干渉計のアナログ信号よりも高周波に生成される必要があるため、補正信号生成部77で周波数を逓倍(例えば、8倍等)して高周波化してもよい。
【0115】
図8は、コントローラ30における処理部59によって実行される、計測対象物Tまでの距離を算出する方法を示すフローチャートである。図8に示されるように、当該方法は、ステップS31~S34を含む。
【0116】
ステップS31では、処理部59は、下記FFTを用いて、波形信号(電圧vs時間)をスペクトル(電圧vs周波数)に周波数変換する。図9Aは、波形信号(電圧vs時間)がスペクトル(電圧vs周波数)に周波数変換される様子を示す図である。
【数1】
【0117】
ステップS32では、処理部59は、スペクトル(電圧vs周波数)をスペクトル(電圧vs距離)に距離変換する。図9Bは、スペクトル(電圧vs周波数)がスペクトル(電圧vs距離)に距離変換される様子を示す図である。
【0118】
ステップS33では、処理部59は、スペクトル(電圧vs距離)に基づいてピークに対応する距離値を算出する。図9Cは、スペクトル(電圧vs距離)に基づいてピークを検出し、それに対応する距離値が算出される様子を示す図である。図9Cに示されるように、ここでは、3チャネルにおいて、それぞれスペクトル(電圧vs距離)に基づいてピークが検出され、それぞれピークに対応する距離値が算出される。
【0119】
ステップS34では、処理部59は、ステップS33で算出された距離値を平均化する。具体的には、処理部59は、ステップS33で3チャネルにおいてそれぞれスペクトル(電圧vs距離)に基づいてピークが検出され、それに対応する距離値が算出されているため、それらを平均化して、当該平均化した算出結果を計測対象物Tまでの距離として出力する。
【0120】
なお、ステップS34では、処理部59は、ステップS33で算出された距離値を平均化する際に、SNRが閾値以上である距離値平均化することが好ましい。例えば、3チャンネルのうち、いずれかのチャンネルにおいて、そのスペクトル(電圧vs距離)に基づいてピークが検出されたものの、SNRが閾値未満の場合には、当該スペクトルに基づいて算出される距離値は、信頼性が低いと判断し、採用しない。
【0121】
次に、本開示に関して、より特徴的な構成、機能及び性質を中心に、具体的な実施形態として詳細に説明する。なお、以下に示される光干渉測距センサは、図1図9を用いて説明した変位センサ10に相当し、当該光干渉測距センサに含まれる基本的な構成、機能及び性質の全部又は一部は、図1図9を用いて説明した変位センサ10に含まれる構成、機能及び性質と共通している。
【0122】
<一実施形態>
[光干渉測距センサの構成]
図10は、本発明の一実施形態に係る光干渉測距センサ100の構成概要を示す模式図である。図10に示されるように、光干渉測距センサ100は、コントローラ110と、コントローラ110と第1センサヘッド121及び第2センサヘッド122とを接続する光ファイバケーブル130と、を含んで構成されている。光干渉測距センサ100は、さらに、第1センサヘッド121及び第2センサヘッド122を含んで構成されていてもよい。
【0123】
コントローラ110は、波長掃引光源140と、光分岐部111と、主干渉計150と副干渉計160と、第1フォトダイオード(PD)112,113と、増幅回路114,115と、第2フォトダイオード(PD)116,117と、第1補正信号生成部171と、第2補正信号生成部172と、AD変換部181,182と、処理部118と、を備える。
【0124】
光ファイバケーブル130は、複数の光ファイバから構成される光ファイバ群である。光ファイバケーブル130は、コントローラ110並びに第1センサヘッド121及び第2センサヘッド122のそれぞれに、着脱自在、つまり、取り付け及び取り外しが可能に構成されている。光ファイバケーブル130は、例えば、第1光ファイバ131と第2光ファイバ132とを含んで構成される。第1光ファイバ131は、長さL1に比例する光路長を有し、第2光ファイバ132は、長さL2に比例する光路長を有する。第1光ファイバ131の長さL1は、計測対象物T1までの距離に基づいて設定されており、第2光ファイバ132の長さL2は、計測対象物T2までの距離に基づいて設定されている。計測対象物T2は、計測対象物T1とは異なる距離、図1に示す例では遠い距離、に存在する対象物を想定している。そのため、第2光ファイバ132の光路長は、第1光ファイバ131の光路長と異なり、第1光ファイバ131の光路長よりも長くなっている。
【0125】
波長掃引光源140は、波長を連続的に変化させながら光を投光する。すなわち、波長掃引光源140から投光される光は、継続して波長が変化している。そして、波長掃引光源140から投光された光は、例えば光カプラ等で構成される光分岐部111を介して、主干渉計150と副干渉計160とに供給される。波長掃引光源140では、入力する電流の大きさを変化させることで波長を連続的に制御する。入力電流波形には主に三角波やのこぎり波が用いられる。
【0126】
主干渉計150は、複数の光路(複数チャネル)を有しており、図10に示す例では、第1主干渉計151と第2主干渉計とを含んで構成される。
【0127】
第1主干渉計151は、光ファイバケーブル130の第1光ファイバ131に接続されており、波長掃引光源140から投光された光を、第1光ファイバ131を介して第1センサヘッド121に供給し、さらに、第1センサヘッド121からの戻り光を第1フォトダイオード112に導く。
【0128】
具体的には、第1主干渉計151から第1センサヘッド121に導かれた光は、第1測定光として、例えば、第1センサヘッド121に配置されたコリメートレンズや対物レンズを介して、計測対象物Tに照射される。そして、当該計測対象物Tでの反射光が第1センサヘッド121に戻る。
【0129】
また、第1主干渉計151から第1センサヘッド121に導かれた光の一部は、第1参照光として、例えば、第1光ファイバ131の先端等に設けられた参照面で反射される。そして、上述した第1測定光と当該第1参照光とが干渉することにより、第1測定光及び第1参照光の光路長差に応じた干渉光(「第1主干渉信号」ともいう)が生成される。
【0130】
このように、第1主干渉計151は、波長掃引光源140から投光された光が供給され、第1センサヘッド121により計測対象物Tに照射して反射される第1測定光と、第1測定光とは少なくとも一部異なる光路を辿る第1参照光とに基づく第1主干渉信号を生成する。なお、波長掃引光源から投光された光が供給され、第1主干渉信号を生成するということから、第1主干渉計151に第1センサヘッド121を含めて第1主干渉計と言うこともできる。
【0131】
第2主干渉計152は、光ファイバケーブル130の第2光ファイバ132に接続されており、波長掃引光源140から投光された光を、第2光ファイバ132を介して第2センサヘッド122に供給し、さらに、第2センサヘッド122からの戻り光を第1フォトダイオード113に導く。
【0132】
具体的には、第2主干渉計152から第2センサヘッド122に導かれた光は、第2測定光として、例えば、第2センサヘッド122に配置されたコリメートレンズや対物レンズを介して、計測対象物Tに照射される。そして、当該計測対象物Tでの反射光が第2センサヘッド122に戻る。
【0133】
また、第2主干渉計152から第2センサヘッド122に導かれた光の一部は、第2参照光として、例えば、第2光ファイバ132の先端等に設けられた参照面で反射される。そして、上述した第2測定光と当該第2参照光とが干渉することにより、第2測定光及び第2参照光の光路長差に応じた干渉光(「第2主干渉信号」ともいう)が生成される。
【0134】
このように、第2主干渉計152は、波長掃引光源140から投光された光が供給され、第2センサヘッド122により計測対象物Tに照射して反射される第2測定光と、第2測定光とは少なくとも一部異なる光路を辿る第2参照光とに基づく第2主干渉信号を生成する。なお、波長掃引光源から投光された光が供給され、第2主干渉信号を生成するということから、第2主干渉計152に第2センサヘッド122を含めて第2主干渉計と言うこともできる。
【0135】
第1フォトダイオード112は、第1主干渉計151によって生成された第1主干渉信号を受光して電気信号に変換する。第1フォトダイオード112によって変換された電気信号は、例えば電流信号である。第1フォトダイオード113は、第2主干渉計152によって生成された第2主干渉信号を受光して電気信号に変換する。第1フォトダイオード113によって変換された電気信号は、同様に、例えば電流信号である。
【0136】
増幅回路114は、第1フォトダイオード112から入力された電気信号を、所定の利得(「ゲイン」ともいう)で増幅する。第1フォトダイオード112から電流信号が入力される場合、増幅回路114は、当該電流信号を電圧信号に変換(「I-V変換」ともいう)して増幅する。増幅された電気信号は、AD変換部181に出力される。増幅回路115は、第1フォトダイオード113から入力された電気信号を、所定の利得で増幅する。第1フォトダイオード113から電流信号が入力される場合、増幅回路115は、当該電流信号を電圧信号に変換して増幅する。増幅された電気信号は、AD変換部182に出力される。
【0137】
副干渉計160は、波長掃引光源140から投光された光が光分岐部111によって分岐されて供給され、異なる光路長の光路を辿る2つの光に基づいて副干渉信号を生成する。具体的には、第1光カプラ161によって異なる光路長の光路を辿る2つの光に分岐され、その後、第2光カプラ162によって合成して干渉させることで、その光路長差に基づく副干渉信号が生成される。当該副干渉信号は、光ファイバ163を伝搬して第2フォトダイオード116に導かれるとともに、光ファイバ164を伝搬して第2フォトダイオード117に導かれる。
【0138】
光ファイバ163は、長さL1rに比例する光路長を有し、光ファイバ164は、長さL2rに比例する光路長を有する。本実施形態の光ファイバ164は、本発明における「遅延量生成部」の一例に相当する。また、本実施形態の光ファイバ164は、本発明における「第3光ファイバ」の一例にも相当する。
【0139】
すなわち、光ファイバ164は、第1光ファイバ131の光路長と第2光ファイバ132の光路長との光路長差に基づく遅延量を生成するように構成されている。
【0140】
具体的には、光ファイバ164は、副干渉信号を伝搬し、第1光ファイバ131の光路長と第2光ファイバ132の光路長との光路長差に基づく光路長を有している。よって、光ファイバ164を介して第2フォトディテクタ117に導かれた副干渉信号は、光ファイバ164によって遅延させた副干渉計信号(以下、「遅延副干渉信号」ともいう)である。このように、光ファイバ164は、副干渉信号を伝搬し、第1光ファイバ131の光路長と第2光ファイバ132の光路長との光路長差に基づく光路長を有することにより、光ファイバ164の光路長を変更することで、遅延量を容易に設定することができる。
【0141】
第2フォトダイオード116は、副干渉計160の光ファイバ163を伝搬した副干渉信号を受光して電気信号(以下、「副干渉計信号」ともいう)に変換する。第2フォトダイオード116によって変換された電気信号は、例えば電流信号である。第2フォトダイオード117は、副干渉計160の光ファイバ164を伝搬した副干渉信号を受光して電気信号(以下、「遅延副干渉計信号」ともいう)に変換する。第2フォトダイオード116によって変換された電気信号は、同様に、例えば電流信号である。
【0142】
なお、第2フォトダイオード116,117から出力される電気信号は、それぞれ、図示を省略した増幅回路によって、所定のゲインで増幅してもよい。
この場合、増幅回路は、増幅した電気信号を、第1補正信号生成部171と第2補正信号生成部172とに出力する。
【0143】
第1補正信号生成部171は、副干渉信号に基づいて、第1補正信号(「第1Kクロック信号」、又は単に「第1Kクロック」ともいう)を生成するように構成されている。第1補正信号は、第1主干渉計151が生成する第1主干渉信号のサンプリング周期を補正する信号である。副干渉信号は、掃引時における波長の非線形性から、第1主干渉信号と同様に非線形であるため、第1補正信号生成部171は、当該副干渉信号に基づいて掃引時における波長の非線形性を把握することで、第1主干渉信号のアナログ信号を適切にサンプリングしてAD変換するための第1補正信号、つまり、第1Kクロック信号を生成することができる。
【0144】
なお、第1補正信号生成部171において適切な第1補正信号を生成するためには、第1フォトダイオード112で受光する第1主干渉信号の非線形性を、第1補正信号生成部171で適切に把握される必要がある。このためには、第1主干渉信号と副干渉信号との特性(非線形性)を整合させておく、言い換えれば、第1主干渉信号と副干渉信号とを時間的に合わせておくことが好ましい。
【0145】
第2補正信号生成部172は、副干渉信号と遅延量とに基づいて、第2補正信号(「第2Kクロック信号」、又は単に「第2Kクロック」ともいう)を生成するように構成されている。第2補正信号は、第2主干渉計152が生成する第2主干渉信号のサンプリング周期を補正する信号である。副干渉信号は、掃引時における波長の非線形性から、第2主干渉信号と同様に非線形であるため、第2補正信号生成部172は、当該副干渉信号に基づいて掃引時における波長の非線形性を把握することで、第2主干渉信号のアナログ信号を適切にサンプリングしてAD変換するための第2補正信号、つまり、第2Kクロック信号を生成することができる。
【0146】
このように、第1光ファイバ131の光路長と第2光ファイバ132の光路長との光路長差に基づく遅延量を生成し、副干渉信号と遅延量とに基づいて、第2主干渉信号のサンプリング周期を補正する第2補正信号を生成することにより、第2主干渉信号において、第1光ファイバ131の光路長と第2光ファイバ132の光路長との光路長差に応じた遅延を発生させることが可能となる。従って、第2主干渉信号をサンプリングする際のタイミングのずれを低減し、サンプリングされたデジタル信号の信号強度の低下を抑制することができる。
【0147】
より詳細には、第2補正信号生成部172は、遅延副干渉計信号に基づいて、第2補正信号を生成するように構成されている。すなわち、第2補正信号は、副干渉信号を電気信号に変換させた副干渉計信号において、時間軸方向に遅延を発生させた信号に基づいて、生成される。当該遅延は、上述した遅延量に応じた時間である。
【0148】
なお、第2補正信号生成部172において適切な第2補正信号を生成するためには、第1フォトダイオード113で受光する第2主干渉信号の非線形性を、第2補正信号生成部172で適切に把握される必要がある。このためには、第2主干渉信号と遅延させた副干渉信号との特性(非線形性)を整合させておく、言い換えれば、第1主干渉信号と副干渉信号とを時間的に合わせておくことが好ましい。
【0149】
また、第2補正信号生成部172は、副干渉信号を電気信号に変換させた副干渉計信号において、時間軸方向に上述した遅延量に応じた遅延を発生させた信号に基づいて、第2補正信号であるパルス信号を生成してもよい。これにより、第2主干渉信号のサンプリングのタイミングを容易に合わせる(同期をとる)ことができる。
【0150】
第2補正信号生成部172と同様に、第1補正信号生成部171が生成する第1補正信号は、パルス信号であってもよい。
【0151】
AD変換部181は、第1主干渉信号を電気信号に変換させた第1主干渉計信号を、第1補正信号に基づいてサンプリングしてデジタル信号に変換するように構成されている。AD変換部181に入力される第1主干渉信号は、アナログ信号の波の間隔が等間隔ではない。AD変換部181は、当該第1主干渉信号における波の間隔が等間隔になるように、上述した第1補正信号、つまり、第1Kクロック信号に基づいて補正したサンプリング周期(サンプリング間隔)で、第1主干渉信号のアナログ信号をサンプリングしてAD変換する。
【0152】
AD変換部182は、第2主干渉信号を電気信号に変換させた第2主干渉計信号を、第1補正信号に基づいてサンプリングしてデジタル信号に変換するように構成されている。AD変換部182に入力される第2主干渉信号は、アナログ信号の波の間隔が等間隔ではない。AD変換部182は、当該第2主干渉信号における波の間隔が等間隔になるように、上述した第2補正信号、つまり、第2Kクロック信号に基づいて補正したサンプリング周期(サンプリング間隔)で、第2主干渉信号のアナログ信号をサンプリングしてAD変換する。
【0153】
このように、AD変換部182が第2主干渉信号を電気信号に変換させた第2主干渉計信号を、第2補正信号に基づいてサンプリングしてデジタル信号に変換することにより、第2主干渉計信号をサンプリング周期が補正されたデジタル信号に変換する構成を容易に実現することができる。
【0154】
処理部118は、第1主干渉計151によって生成された第1主干渉信号及び第2主干渉計152によって生成された第2主干渉信号のうちの少なくとも1つと、副干渉計160によって生成された副干渉信号とに基づいて、計測対象物Tまでの距離を算出するように構成されている。
【0155】
より詳細には、処理部118は、第1フォトダイオード112で受光され、増幅回路114で増幅された第1主干渉信号と、第1フォトダイオード113で受光され、増幅回路115で増幅された第2主干渉信号と、第2フォトダイオード116,117で受光された副干渉信号とに基づいて、計測対象物Tまでの距離を算出するように構成されている。
【0156】
具体的には、AD変換部181において、第1主干渉信号に基づく非線形なアナログ信号が、副干渉信号に基づく第1補正信号によって補正されたサンプリング周期でデジタル信号に変換されるので、処理部118は、当該デジタル信号を、FFT等を用いて周波数に変換し、それらを解析して計測対象物Tまでの距離値を算出する。
【0157】
また、AD変換部182において、第2主干渉信号に基づく非線形なアナログ信号が、副干渉信号と遅延量とに基づく第2補正信号によって補正されたサンプリング周期でデジタル信号に変換されるので、処理部118は、当該デジタル信号を、FFT等を用いて周波数に変換し、それらを解析して計測対象物Tまでの距離値を算出する。
【0158】
このように、処理部118が、第1主干渉計151によって生成された第1主干渉信号及び第2主干渉計152によって生成された第2主干渉信号のうちの少なくとも1つと、副干渉計160によって生成された副干渉信号とに基づいて、計測対象物Tまでの距離を算出することにより、計測対象物Tまでの距離を計測する構成を容易に実現することができる。
【0159】
図11は、本発明の一実施形態に係る他の光干渉測距センサ101の構成概要を示す模式図である。なお、図11は、図10に示す光干渉測距センサ100と同一又は類似の構成について同一又は類似の符号を付し、その説明を適宜省略する。また、図10に示す光干渉測距センサ100と同様の構成による同様の作用効果については、逐次言及しない。
【0160】
図11に示すように、光干渉測距センサ101は、コントローラ110と、第1センサヘッド121及び第2センサヘッド122と、を備え、コントローラ110と第1センサヘッド121及び第2センサヘッド122とを接続する光ファイバケーブル130をさらに備える。図11に示す光干渉測距センサ101のコントローラ110は、図10に示す光干渉測距センサ100のコントローラ110と比較して、光ファイバ164を備えていない代わりに、遅延線191を備える点で相違する。
【0161】
コントローラ110の副干渉計160は、波長掃引光源140から投光された光が光分岐部111によって分岐されて供給され、異なる光路長の光路を辿る2つの光に基づいて副干渉信号を生成する。具体的には、第1光カプラ161によって異なる光路長の光路を辿る2つの光に分岐され、その後、第2光カプラ162によって合成して干渉させることで、その光路長差に基づく副干渉信号が生成される。当該副干渉信号は、光ファイバ163を伝搬して第2フォトダイオード116に導かれる。一方、第2光カプラ162の残りのポートは、コアレスファイバ終端を備えた光ファイバに接続され、又は減衰器に接続される。
【0162】
第2フォトダイオード116は、副干渉計160の光ファイバ163を伝搬した第2干渉信号を受光して電気信号である副干渉計信号に変換する。第2フォトダイオード116によって変換された電気信号は、例えば電流信号である。なお、第2フォトダイオード116から出力される電気信号は、図示を省略した増幅回路によって、所定のゲインで増幅してもよい。この場合、増幅回路は、増幅した電気信号を、第1補正信号生成部171と遅延線191とに出力する。
【0163】
遅延線191は、副干渉信号を電気信号に変換させた副干渉計信号において、時間軸方向に遅延量に応じた遅延を発生させて第2補正信号生成部172に出力するように構成されている。遅延線191の遅延量は、光ファイバ164の遅延量と同様に、第1光ファイバ131の光路長と第2光ファイバ132の光路長との光路長差に基づいて、設定される。本実施形態の遅延線191は、本発明における「遅延量生成部」の一例に相当する。遅延線191は、遅延を発生させた信号、つまり、遅延副干渉計信号」を第2補正信号生成部172に出力する。
【0164】
遅延線191は、電気信号の伝搬を遅らせる電子部品、例えばディレイラインを含んで構成される。なお、遅延線191の電子部品は、副干渉信号に遅延を発生させるものであれば、その構造、種類、数等は問わない。
【0165】
このように、遅延線191、副干渉信号を電気信号に変換させた副干渉計信号において、時間軸方向に遅延量に応じた遅延を発生させて第2補正信号生成部172に出力することにより、電気的に遅延を発生させた副干渉計信号を出力することで、第2補正信号生成部172は、電気信号である第2補正信号を容易に生成することができる。
【0166】
[第1主干渉計信号及び第2主干渉計信号のサンプリングのタイミング]
図12は、第1主干渉計信号及び第2主干渉計信号のサンプリングのタイミングを説明するための図である。図12において、第1主干渉計151の第1干渉信号に基づく第1主干渉計信号のサンプリングする場合の信号を上段に示し、第2主干渉計152の第2干渉信号に基づく第2主干渉計信号のサンプリングする場合の信号を下段に示す。なお、以下の例では、明示する場合を除き、図10に示す光干渉測距センサ100を用いて説明し、図11に示す光干渉測距センサ101を用いる場合の説明は省略する。
【0167】
図12の上段に示すように、第1主干渉計信号は、時刻t1において、副干渉信号を電気信号に変換させた副干渉計信号に基づいて生成された第1補正信号によるサンプリングが開始される。そして、第1主干渉計信号は、第1補正信号によって補正された周期でサンプリングされ、デジタル信号に変換される。
【0168】
一方、図12の下段に示すように、第2主干渉計信号は、時刻t1の時点では発生しておらず、時刻t2(t2>t1)において発生している。この時刻のズレ(以下、「遅延時間t12」ともいう)は、第1光ファイバ131の光路長と第2光ファイバ132の光路長との光路長差によって生じた光の遅延時間である。
【0169】
第2主干渉計信号におけるこの遅延時間t12に対応するために、図10に示す光干渉測距センサ100の光ファイバ164は、遅延量tdelayを生成する。遅延量tdelayは、光ファイバ163の長さL1r及び光ファイバ164の長さL2rと、光の速さcとを用いて以下の式(1)で表される。
tdelay=|L2r-L1r|/c …(1)
【0170】
そのため、第2主干渉計信号は、時刻t2において、この遅延量tdelayと、副干渉信号を電気信号に変換させた副干渉計信号とに基づいて生成された第2補正信号によるサンプリングが開始される。そして、第2主干渉計信号は、第2補正信号によって補正された周期でサンプリングされ、デジタル信号に変換される。
【0171】
光ファイバ164が生成する遅延量tdelayは、第1光ファイバ131の光路長と第2光ファイバ132の光路長との光路長差による光の遅延時間t12との差の絶対値が、AD変換部182における最小のサンプリング周期Tsminよりも小さくなるように設定されることが好ましい。
【0172】
言い換えれば、光の遅延時間t12と遅延量tdelayとの時間差Δtが以下の式(2)を満たすように、遅延量tdelayを設定する。
Δt=|t12-tdelay|<Tsmin …(2)
【0173】
[デジタル信号に変換された第2主干渉計信号の信号強度と時間差との関係]
図13は、デジタル信号に変換された第2主干渉計信号の信号強度と時間差Δtとの関係を説明するための図である。図12において、デジタル信号に変換された第2主干渉計信号の信号強度は、時間差Δtがゼロである場合の信号強度を基準値「1」として正規化されたものである。また、図12に示す例は、図10に示す光干渉測距センサ100を用いて説明し、図11に示す光干渉測距センサ101を用いる場合の説明は省略する。
【0174】
図10に示す光干渉測距センサ100において、第1センサヘッド121から計測対象物T1までの距離が1[m]、第1光ファイバ131の長さL1が2[m]、第2センサヘッド122から計測対象物T2までの距離が1[m]、第2光ファイバ132の長さL2が10[m]、第1光ファイバ131及び第2光ファイバ132の屈折率が1.5、光の速さcが3×10[m/s]である場合、遅延時間t12は8×10-8[s]と算出される。ここで、光干渉測距センサ100が、100[MHz]の最大サンプリング時間を有するAD変換部181,182を備える場合、AD変換部181,182における最小のサンプリング周期Tsminは、1×10-8[s]となる。これらの値を上述した式(2)に代入し、遅延量tdelayを7×10-8[s]以上、9×10-8[s]以下に設定する。
【0175】
図13に示すように、遅延量tdelayを7×10-8[s]以上、9×10-8[s]以下に設定すると、デジタル信号に変換された第2主干渉計信号の信号強度は、10[%]以下の低下に抑制することができる。例えば、副干渉計160の光ファイバ163の長さL1rが1[m]であるときに、副干渉計160の光ファイバ164の長さL2rが14[m]に設定する。
【0176】
このように、遅延量tdelayは、第1光ファイバ131の光路長と第2光ファイバ132の光路長との光路長差による光の遅延時間t12との差の絶対値が、AD変換部182における最小のサンプリング周期Tsminよりも小さくなるように設定されることにより、サンプリングされたデジタル信号の信号強度の低下を所定割合以下、例えば10%以下に抑制することができる。
【0177】
本実施形態では、光干渉測距センサ100,101が、それぞれ、2つのセンサヘッドと、各センサヘッドをコントローラ110に接続する2つの光ファイバを含む光ファイバケーブルとを備える例を示したが、これに限定されるものではない。光干渉測距センサは、3つ以上のセンサヘッド、及び、これと同数の光ファイバを含む光ファイバケーブルとを備えていてもよい。以下、説明の簡略化のため、光干渉測距センサが3つのセンサヘッドと2つの光ファイバを含む光ファイバケーブルとを備える場合に、コントローラ110の構成、特に、副干渉計160とその後段(下流)の構成について説明する。
【0178】
[3つのセンサヘッドを備える場合の副干渉計及びその後段の具体的構成]
図14は、3つのセンサヘッドを備える場合の副干渉計160及びその後段の具体的な構成の一例を示す模式図であり、図15は、3つのセンサヘッドを備える場合の副干渉計160及びその後段の具体的な構成の他の例を示す模式図である。
【0179】
図14に示すように、副干渉計160は、波長掃引光源140から投光された光が光分岐部111によって分岐されて供給され、異なる光路長の光路を辿る2つの光に基づいて副干渉信号を生成する。具体的には、第1光カプラ161によって異なる光路長の光路を辿る2つの光に分岐され、その後、第2光カプラ162によって合成して干渉させることで、その光路長差に基づく副干渉信号が生成される。当該副干渉信号は、光ファイバ163を伝搬して第2フォトダイオード116に導かれるとともに、光ファイバ164を伝搬して第2フォトダイオード117に導かれる。さらに、副干渉信号は、光ファイバ164と同様に、遅延量を生成する。光ファイバ165を伝搬して第2フォトダイオード119に導かれる。光ファイバ165は、第2フォトダイオード119は、副干渉計160の光ファイバ165を伝搬した副干渉信号を受光して電気信号(以下、「遅延副干渉計信号」ともいう)に変換する。
【0180】
第3補正信号生成部173は、副干渉信号と遅延量とに基づいて、第3補正信号(「第3Kクロック信号」、又は単に「第3Kクロック」ともいう)を生成するように構成されている。第3補正信号は、図示を省略する第3主干渉計が生成する第3主干渉信号のサンプリング周期を補正する信号である。第3補正信号生成部173は、副干渉信号に基づいて掃引時における波長の非線形性を把握することで、第3主干渉信号のアナログ信号を適切にサンプリングしてAD変換するための第3補正信号、つまり、第3Kクロック信号を生成することができる。
【0181】
また、図15に示すように、副干渉計160は、波長掃引光源140から投光された光が光分岐部111によって分岐されて供給され、異なる光路長の光路を辿る2つの光に基づいて副干渉信号を生成する。具体的には、第1光カプラ161によって異なる光路長の光路を辿る2つの光に分岐され、その後、第2光カプラ162によって合成して干渉させることで、その光路長差に基づく副干渉信号が生成される。当該副干渉信号は、光ファイバ163を伝搬して第2フォトダイオード116に導かれる。一方、第2光カプラ162の残りのポートは、コアレスファイバ終端を備えた光ファイバに接続され、又は減衰器に接続されてもよい。
【0182】
第2フォトダイオード116は、副干渉計160の光ファイバ163を伝搬した第2干渉信号を受光して電気信号である副干渉計信号に変換し、第1補正信号生成部171と遅延線191とに出力する。
【0183】
遅延線191は、副干渉信号を電気信号に変換させた副干渉計信号において、時間軸方向に遅延量に応じた遅延を発生させて第2補正信号生成部172に出力するように構成されている。遅延線191は、遅延を発生させた信号、つまり、遅延副干渉計信号を、第2補正信号生成部172と遅延線192とに出力する。
遅延線192は、遅延線191と同様に、副干渉信号を電気信号に変換させた副干渉計信号において、時間軸方向に遅延量に応じた遅延を発生させて第3補正信号生成部173に出力するように構成されている。遅延線192には、遅延線191から遅延副干渉計信号が入力され、さらに遅延を発生させた副干渉計信号が第3補正信号生成部173に出力される。
【0184】
[干渉計の変形例]
上述した実施形態では、光干渉測距センサ100,101は、主干渉計150において光ファイバの先端を参照面とすることで参照光を発生させるフィゾー干渉計を用いていたが、干渉計は、これに限定されるものではない。
【0185】
図16は、測定光と参照光とを用いて干渉光を発生させる干渉計のバリエーションを示す図である。図16(a)では、主干渉計150を経由する光路において、光ファイバの先端(端面)を参照面とする参照光と、センサヘッドから照射され計測対象物Tで反射される測定光との光路長差に基づいて干渉光が生成される。上述した実施形態に係る光干渉測距センサ100,101の主干渉計150の構成であり(フィゾー型干渉計)、当該参照面は、光ファイバと空気との屈折率の違いによって光が反射するように構成されていてもよい(フレネル反射)。また、光ファイバの先端に反射膜をコーティングしてもよいし、光ファイバの先端に無反射コーティングを施して、別途、レンズ面等の反射面を配置してもよい。
【0186】
図16(b)では、主干渉計150を経由する光路において、計測対象物Tに測定光を導く測定光路Lmと、参照光を導く参照光路Lrとを形成し、参照光路Lrの先には参照面が配置されている(マイケルソン型干渉計)。参照面は、光ファイバの先端に反射膜をコーティングしてもよいし、光ファイバの先端に無反射コーティングを施して、別途、ミラー等を配置してもよい。当該構成では、測定光路Lmの光路長と参照光路Lrの光路長とで光路長差を設けることによって干渉光が生成される。
【0187】
図16(c)では、主干渉計150を経由する光路において、計測対象物Tに測定光を導く測定光路Lmと、参照光を導く参照光路Lrとを形成し、参照光路Lrには、バランスディテクタが配置されている(マッハツェンダ型干渉計)。当該構成では、測定光路Lmと参照光路Lrの光路長とで光路長差を設けることによって、干渉光が生成される。
【0188】
このように、主干渉計は、実施形態で説明したフィゾー型干渉計に限定されるものではなく、例えば、マイケルソン型干渉計やマッハツェンダ型干渉計であってもよいし、測定光と参照光との光路長差を設定することによって干渉光を発生させることができれば、どのような干渉計を適用してもよいし、これらの組み合わせ等やその他の構成を適用してもよい。また、図示しない副干渉計についても、同様に、フィゾー型干渉計、マイケルソン型干渉計、及びマッハツェンダ型干渉計のいずれであってもよいし、測定光と参照光との光路長差を設定することによって干渉光を発生させることができれば、どのような干渉計を適用してもよいし、これらの組み合わせ等やその他の構成を適用してもよい。
【0189】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。すなわち、実施形態に当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、実施形態が備える各要素及びその配置、材料、条件、形状、サイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、実施形態は例示であり、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換又は組み合わせが可能であることは言うまでもなく、これらも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【0190】
[付記1]
計測対象物に光を照射する第1センサヘッド(121)及び第2センサヘッド(122)のそれぞれに、光ファイバケーブル(130)を介して接続されるコントローラ(110)であって、
波長を変化させながら光を投光する光源(140)と、
光源(140)から投光された光が供給され、第1センサヘッド(121)により計測対象物に照射して反射される第1測定光と、第1測定光とは少なくとも一部異なる光路を辿る第1参照光とに基づく第1主干渉信号を生成する第1主干渉計(151)と、
光源(140)から投光された光が供給され、第2センサヘッド(122)により計測対象物に照射して反射される第2測定光と、第2測定光とは少なくとも一部異なる光路を辿る第2参照光とに基づく第2主干渉信号を生成する第2主干渉計(152)と、
光源(140)から投光された光が供給され、異なる光路を辿る2つの光に基づく副干渉信号を生成する副干渉計(160)と、
第1主干渉信号及び第2主干渉信号のうちの少なくとも1つと副干渉信号とに基づいて、計測対象物までの距離を計測する処理部(118)と、を備え、
光ファイバケーブル(130)は、第1主干渉計(151)に接続され、第1主干渉計(151)からの光を第1センサヘッド(121)に伝搬し、第1センサヘッド(121)からの光を第1主干渉計(151)に伝搬する第1光ファイバ(131)と、第2主干渉計(152)に接続され、第2主干渉計(152)からの光を第2センサヘッド(122)に伝搬し、第2センサヘッド(122)からの光を第2主干渉計(152)に伝搬する第2光ファイバ(132)と、を含み、
第2光ファイバ(132)は、第1光ファイバ(131)の光路長と異なる光路長を有し、
コントローラ(110)は、
副干渉信号に基づいて、第1主干渉信号のサンプリング周期を補正する第1補正信号を生成する第1補正信号生成部(171)と、
第1光ファイバ(131)の光路長と第2光ファイバ(132)の光路長との光路長差に基づく遅延量を生成する遅延量生成部と、
副干渉信号と遅延量とに基づいて、第2主干渉信号のサンプリング周期を補正する第2補正信号を生成する第2補正信号生成部(172)と、をさらに備える、
コントローラ(110)。
[付記8]
コントローラ(110)と、該コントローラ(110)に接続される光ファイバケーブル(130)とを含む光干渉測距センサ(100)であって、
コントローラ(110)は、
波長を変化させながら光を投光する光源(140)と、
光源(140)から投光された光が供給され、第1センサヘッド(121)により計測対象物に照射して反射される第1測定光と、第1測定光とは少なくとも一部異なる光路を辿る第1参照光とに基づく第1主干渉信号を生成する第1主干渉計(151)と、
光源(140)から投光された光が供給され、第2センサヘッド(122)により計測対象物に照射して反射される第2測定光と、第2測定光とは少なくとも一部異なる光路を辿る第2参照光とに基づく第2主干渉信号を生成する第2主干渉計(152)と、
光源(140)から投光された光が供給され、異なる光路を辿る2つの光に基づく副干渉信号を生成する副干渉計(160)と、を備え、
光ファイバケーブル(130)は、第1主干渉計(151)に接続され、第1主干渉計(151)からの光を第1センサヘッド(121)に伝搬し、第1センサヘッド(121)からの光を第1主干渉計(151)に伝搬する第1光ファイバ(131)と、第2主干渉計(152)に接続され、第2主干渉計(152)からの光を第2センサヘッド(122)に伝搬し、第2センサヘッド(122)からの光を第2主干渉計(152)に伝搬する第2光ファイバ(132)と、を含み、
第2光ファイバ(132)は、第1光ファイバ(131)の光路長と異なる光路長を有し、
コントローラ(110)は、
副干渉信号に基づいて、第1主干渉信号のサンプリング周期を補正する第1補正信号を生成する第1補正信号生成部(171)と、
第1光ファイバ(131)の光路長と第2光ファイバ(132)の光路長との光路長差に基づく遅延量を生成する遅延量生成部と、
副干渉信号と遅延量とに基づいて、第2主干渉信号のサンプリング周期を補正する第2補正信号を生成する第2補正信号生成部(172)と、をさらに備える、
光干渉測距センサ(100)。
【符号の説明】
【0191】
1…センサシステム、10…変位センサ、11…制御機器、12…制御信号入力用センサ、13…外部接続機器、20…センサヘッド、21…対物レンズ、22a…コリメートレンズ、22b…コリメートレンズ、22c…コリメートレンズ、23…レンズホルダ、24…光ファイバアレイ、30…コントローラ、31…表示部、32…設定部、33…外部I/F部、34…光ファイバ接続部、35…外部記憶部、36…計測処理部、40…光ファイバ、51…波長掃引光源、52…光増幅器、53,53a,53b…アイソレータ、54,54a,54b,54c,53d,54e,54f,54g,54h,54i,54j…光カプラ、55…減衰器、56a,56b,56c…受光素子、57a,57b,57c…増幅回路、58a,58b,58c…AD変換部、59…処理部、60…バランスディテクタ、61…補正信号生成部、71a,71b,71c,71d,71e…受光素子、72a72b,72c…増幅回路,74a,74b,74c…AD変換部、75…処理部、76…差動増幅回路、77…補正信号生成部、100,101…光干渉測距センサ、110…コントローラ、111…光分岐部、
112,113…第1フォトダイオード、114,115…増幅回路、116,116,119…第2フォトダイオード、118…処理部、121…第1センサヘッド、122…第2センサヘッド、130…光ファイバケーブル、131…第1光ファイバ、132…第2光ファイバ、140…波長掃引光源、150…主干渉計、151…第1主干渉計、152…第2主干渉計、160…副干渉計、161…第1光カプラ、162…第2光カプラ、163…光ファイバ、164…光ファイバ、165…光ファイバ、171…第1補正信号生成部、172…第2補正信号生成部、173…第3補正信号生成部、181,182…AD変換部、191,192…遅延線、Lm…測定光路、Lr…参照光路、T,T1,T2…計測対象物、t1…時刻、t2…時刻、t12…遅延時間、Tsmin…サンプリング周期、vs…電圧、Δt…時間差。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16