(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048681
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】蓄電デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20240402BHJP
H01G 11/84 20130101ALI20240402BHJP
H01M 50/186 20210101ALI20240402BHJP
H01M 50/193 20210101ALI20240402BHJP
H01M 10/0585 20100101ALI20240402BHJP
H01M 10/052 20100101ALN20240402BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01G11/84
H01M50/186
H01M50/193
H01M10/0585
H01M10/052
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154734
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】八十 和夫
(72)【発明者】
【氏名】衣川 達哉
(72)【発明者】
【氏名】河端 栄克
(72)【発明者】
【氏名】栗田 幹也
(72)【発明者】
【氏名】石黒 文彦
(72)【発明者】
【氏名】弘瀬 貴之
【テーマコード(参考)】
5E078
5H011
5H028
5H029
【Fターム(参考)】
5E078AA14
5E078AB02
5E078LA07
5H011AA09
5H011FF00
5H011GG01
5H011HH02
5H011JJ01
5H028AA08
5H028AA10
5H028BB01
5H028BB17
5H028CC07
5H028CC08
5H028CC11
5H028CC19
5H028EE06
5H029AJ14
5H029BJ12
5H029BJ17
5H029CJ05
5H029DJ03
5H029EJ12
(57)【要約】
【課題】本開示は、生産性が良好な蓄電デバイスの製造方法を提供することを主目的とする。
【解決手段】
本開示においては、複数の電極が厚さ方向に積層された電極積層体を準備する準備工程と、上記電極積層体において上記厚さ方向に延在する側面にモールドを配置するモールド配置工程と、上記電極積層体および上記モールドの間に樹脂を供給することで、樹脂体を成形する成形工程と、を有する蓄電デバイスの製造方法であって、上記モールド配置工程において、所定の入れ子をモールドの凹部に挿入する、蓄電デバイスの製造方法を提供することにより、上記課題を解決する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電極が厚さ方向に積層された電極積層体を準備する準備工程と、
前記電極積層体において前記厚さ方向に延在する側面にモールドを配置するモールド配置工程と、
前記電極積層体および前記モールドの間に樹脂を供給することで、樹脂体を成形する成形工程と、
を有する蓄電デバイスの製造方法であって、
前記電極積層体は、前記側面に、入れ子を有し、
前記入れ子は、一端部が前記電極積層体の内部に位置しており、かつ、他端部が前記電極積層体の前記側面より突出しており、
前記入れ子は、根元部と、前記根元部から延在し、かつ、前記他端部を含む延在部とを有し、
前記延在部の厚さは、前記根元部の厚さより小さく、
前記入れ子を前記厚さ方向から見て、前記根元部から前記延在部が延在する延在方向に直交する方向を幅方向とした場合に、前記延在部における前記他端部の前記幅方向の長さは、前記根元部の前記幅方向の長さより短く、
前記モールドは、前記入れ子が挿入される凹部を有し、
前記モールド配置工程において、前記入れ子の前記根元部および前記延在部を前記凹部に挿入し、前記凹部に挿入された前記根元部および前記延在部を、前記モールドに保持固定する、蓄電デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記入れ子を厚さ方向から見た場合に、前記入れ子は、第1辺と、前記第1辺に対向する第2辺と、前記延在部の前記他端部に該当する第3辺と、を有し、
前記入れ子は、前記第1辺および前記第3辺の間に第1面取り部を有し、前記第2辺および前記第3辺の間に第2面取り部を有する、請求項1に記載の蓄電デバイスの製造方法。
【請求項3】
前記入れ子は、基材と、前記基材の少なくとも一方の面に配置された被覆層と、を有し、
前記根元部は、前記基材および前記被覆層を有し、
前記延在部は、前記基材を有し、前記被覆層を有しない、請求項1または請求項2に記載の蓄電デバイスの製造方法。
【請求項4】
前記成形工程において、射出成形法により前記樹脂体を成形する、請求項1または請求項2に記載の蓄電デバイスの製造方法。
【請求項5】
前記電極積層体は、集電体の一方の面に配置された正極層と、前記集電体の他方の面に配置された負極層と、を有するバイポーラ電極を備え、
前記電極積層体は、前記厚さ方向において、前記バイポーラ電極を複数備え、
前記複数の前記バイポーラ電極において、隣り合う前記バイポーラ電極の間に、それぞれセパレータが配置され、
前記電極積層体は、前記集電体の外縁に沿って配置された樹脂部材を有し、
前記電極積層体において、前記入れ子は、前記樹脂部材を貫通するように配置されている、請求項1または請求項2に記載の蓄電デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池等の蓄電デバイスの製造方法において、電極積層体を取り囲むように樹脂体を形成する技術が知られている。例えば、特許文献1には、電極積層体と、上記電極積層体の積層方向から見て上記電極積層体を取り囲むように射出成形により形成される樹脂筒と、を備える蓄電モジュールの製造方法が開示されている。特許文献1では、連通孔形成部材(入れ子)を組み込んだ電極積層体を準備し、その後、射出成形することで、樹脂筒(樹脂体)を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
樹脂体を成形する際に、入れ子を組み込んだ電極積層体を予め準備し、その入れ子を、モールドの凹部に挿入し、保持固定する場合がある。入れ子をモールドの凹部に挿入する際に、入れ子およびモールドが干渉すると、異物が発生したり、入れ子が破損したりする場合がある。その結果、生産性が低下する場合がある。
【0005】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、生産性が良好な蓄電デバイスの製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]
複数の電極が厚さ方向に積層された電極積層体を準備する準備工程と、上記電極積層体において上記厚さ方向に延在する側面にモールドを配置するモールド配置工程と、上記電極積層体および上記モールドの間に樹脂を供給することで、樹脂体を成形する成形工程と、を有する蓄電デバイスの製造方法であって、上記電極積層体は、上記側面に、入れ子を有し、上記入れ子は、一端部が上記電極積層体の内部に位置しており、かつ、他端部が上記電極積層体の上記側面より突出しており、上記入れ子は、根元部と、上記根元部から延在し、かつ、上記他端部を含む延在部とを有し、上記延在部の厚さは、上記根元部の厚さより小さく、上記入れ子を上記厚さ方向から見て、上記根元部から上記延在部が延在する延在方向に直交する方向を幅方向とした場合に、上記延在部における上記他端部の上記幅方向の長さは、上記根元部の上記幅方向の長さより短く、上記モールドは、上記入れ子が挿入される凹部を有し、上記モールド配置工程において、上記入れ子の上記根元部および上記延在部を上記凹部に挿入し、上記凹部に挿入された上記根元部および上記延在部を、上記モールドに保持固定する、蓄電デバイスの製造方法。
【0007】
[2]
上記入れ子を厚さ方向から見た場合に、上記入れ子は、第1辺と、上記第1辺に対向する第2辺と、上記延在部の上記他端部に該当する第3辺と、を有し、上記入れ子は、上記第1辺および上記第3辺の間に第1面取り部を有し、上記第2辺および上記第3辺の間に第2面取り部を有する、[1]に記載の蓄電デバイスの製造方法。
【0008】
[3]
上記入れ子は、基材と、上記基材の少なくとも一方の面に配置された被覆層と、を有し、上記根元部は、上記基材および上記被覆層を有し、上記延在部は、上記基材を有し、上記被覆層を有しない、[1]または[2]に記載の蓄電デバイスの製造方法。
【0009】
[4]
上記成形工程において、射出成形法により上記樹脂体を成形する、[1]から[3]のいずれかに記載の蓄電デバイスの製造方法。
【0010】
[5]
上記電極積層体は、集電体の一方の面に配置された正極層と、上記集電体の他方の面に配置された負極層と、を有するバイポーラ電極を備え、上記電極積層体は、上記厚さ方向において、上記バイポーラ電極を複数備え、上記複数の上記バイポーラ電極において、隣り合う上記バイポーラ電極の間に、それぞれセパレータが配置され、上記電極積層体は、上記集電体の外縁に沿って配置された樹脂部材を有し、上記電極積層体において、上記入れ子は、上記樹脂部材を貫通するように配置されている、[1]から[4]までのいずれかに記載の蓄電デバイスの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本開示における蓄電デバイスの製造方法は、生産性が良好であるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示における蓄電デバイスの製造方法を例示する概略断面図である。
【
図2】本開示における蓄電デバイスの製造方法を例示する概略断面図である。
【
図3】本開示における入れ子を例示する概略断面図である。
【
図4】本開示における入れ子を例示する概略平面図である。
【
図5】本開示における電極積層体の形成方法を例示する概略断面図(分解図)である。
【
図6】本開示における入れ子および樹脂体を例示する概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示における実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。以下に示す各図は、模式的に示したものであり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張している。また、本明細書において、ある部材に対して他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」または「下に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上または直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方または下方に、別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含む。
【0014】
図1および
図2は、本開示における蓄電デバイスの製造方法を例示する概略断面図である。まず、
図1(a)に示すように、電極積層体10を準備する。電極積層体10は、側面SSに、貫通孔を形成するための入れ子6を有する。電極積層体10の側面SSは、電極積層体10において厚さ方向D
Tに延在する面である。また、入れ子6は、一端部t1が電極積層体10の内部に位置しており、かつ、他端部t2が電極積層体10の側面SSより外部に突出している。入れ子6は、金型の一部であって、モールド20(母型)に取り付けられ、樹脂成形品を作製するための部材である。なお、便宜上、
図1および
図2では、入れ子6の特徴部分については記載を省略している。入れ子6の特徴については、後述する
図3および
図4で説明する。
【0015】
次に、
図1(b)に示すように、電極積層体10の側面SSとモールド20の凹部21が形成された面とが対向するように、モールド20の中にインサート品である電極積層体10を配置する。モールド20の凹部21は、入れ子6が挿入される部位である。次に、
図1(c)に示すように、電極積層体10およびモールド20の間に樹脂を供給することで、樹脂体30を成形する。なお、
図1(c)では、記載を割愛しているが、樹脂体30の成形時には、通常、電極積層体10の上下方向にもモールドが配置される。次に、
図2(a)に示すように、電極積層体10からモールド20を除去する。次に、
図2(b)に示すように、電極積層体10から入れ子6を除去すると、電極積層体10の内部および外部を貫通する貫通孔Hが形成される。
【0016】
本開示においては、所定の形状を有する入れ子を用いる。
図3(a)に示すように、入れ子6は、根元部61と、根元部61から延在し、かつ、他端部t2を含む延在部62とを有する。延在部62の厚さは、根元部61の厚さより小さい。また、
図4(b)に示すように、入れ子6を厚さ方向から見て、根元部61から延在部62が延在する延在方向D
1とし、延在方向D
1に直交する方向を幅方向D
2とする。延在部62における他端部t2の幅方向D
2の長さW
2は、根元部61の幅方向D
2の長さW
1より短い。本開示においては、入れ子6における延在部62および根元部61の両方を、モールド20の凹部21に挿入する。モールド20の凹部21に挿入された延在部62および根元部61は、モールド20に保持固定される。
【0017】
本開示によれば、所定の形状を有する入れ子を用いることで、蓄電デバイスの生産性が向上する。上述したように、樹脂体を成形する際に、入れ子を組み込んだ電極積層体を予め準備し、その入れ子を、モールドの凹部に挿入し、保持固定する場合がある。入れ子は、典型的には、薄い金属片であり、入れ子をモールドの凹部に挿入する際に、入れ子およびモールドが干渉すると、異物が発生したり、入れ子が破損したりする場合がある。その結果、生産性が低下する場合がある。
【0018】
これに対して、本開示においては、所定の形状を有する入れ子を用いる。具体的には、
図3(a)に示すように、根元部61と、根元部61より薄い延在部62と、を有する入れ子6を用いる。
図3(b)に示すように、モールド20の凹部21の厚さ方向D
Tの長さT
3と、根元部61の厚さT
1とは、通常、根元部61を凹部21に挿入でき、かつ、樹脂体を成形する際に、根元部61と、凹部21の面と間に樹脂が流れ込まない程度の寸法関係にある。延在部62の厚さT
2は、根元部61の厚さT
1より小さいことから、延在部62の厚さT
2は、凹部21の長さT
3より十分に小さくなる。その結果、入れ子6をモールド20の凹部21に挿入する際に、入れ子6およびモールド20が干渉することを防止できる。さらに、
図3(c)に示すように、延在部62のみならず、延在部62および根元部61の両方(厳密には、延在部62の全体、および、根元部61の一部)をモールド20の凹部21に挿入する。上述したように、凹部21の厚さ方向D
Tの長さT
3と、根元部61の厚さT
1とは、通常、根元部61を凹部21に挿入でき、かつ、樹脂体を成形する際に、根元部61と、凹部21の面と間に樹脂が流れ込まない程度の寸法関係を有する。そのため、延在部62および根元部61の両方を凹部21に挿入することで、根元部61および凹部21の隙間に、樹脂が流れ込むことを防止できる。これにより、不良品の発生を抑制できる。
【0019】
図4(b)に示すように、入れ子6において、延在部62における他端部t2の幅方向D
2の長さW
2は、根元部61の幅方向D
2の長さW
1より短い。これにより、
図4(b)、(c)に示すように、入れ子6をモールド20の凹部21に挿入する際に、幅方向D
2においても、入れ子6およびモールド20が干渉することを防止できる。このように、本開示における入れ子を用いることで、厚さ方向および幅方向の両方において、入れ子とモールドとの干渉が生じにくくなる。
【0020】
1.準備工程
本開示における準備工程は、複数の電極が厚さ方向に積層された電極積層体を準備する工程である。電極は、集電体と、上記集電体の少なくとも一方の面上に配置された電極層(正極層または負極層)とを有する。また、電極積層体において上記厚さ方向に延在する面を側面とする。側面の法線方向は、通常、厚さ方向と交差している。「交差」とは、後述する「平行」に該当しないことをいう。すなわち、2つの方向のなす角度が30°より大きい関係をいう。また、側面の法線方向は、厚さ方向と直交していることが好ましい。また、電極積層体の側面は、通常、厚さ方向に対向する、電極積層体の頂面(一方の主面)、および、電極積層体の底面(他方の主面)を結ぶ面である。
【0021】
電極積層体は、側面に、電極積層体の内部および外部を貫通する貫通孔を形成するための入れ子を有する。入れ子は、一端部が電極積層体の内部に位置しており、かつ、他端部が電極積層体の側面より突出している。また、入れ子は、電極積層体の側面において、電極積層体を封止するシール部材(例えば、後述する樹脂部材)から突出するように配置されている。
【0022】
(1)入れ子
図3(a)に示すように、入れ子6は、根元部61と、根元部61から延在し、かつ、他端部t2を含む延在部62と、を有する。
図3(a)に示すように、根元部61とは、入れ子6が電極積層体10の側面から突出する起点pを含む部位である。
図3(a)に示すように、根元部61は、電極積層体の内部に位置する一端部t1を含んでいてもよい。延在部62は、入れ子6のモールド20側の他端部t2を含む部位である。
図3(b)に示すように、入れ子6は、通常、根元部61が電極積層体10の中心側(図面左側)、延在部62が電極積層体10の外側(図面右側)に位置するように、配置される。
図3(b)において、根元部61の一部は、樹脂部材5により固定され、根元部61の一部は、樹脂部材5から露出している。また、不図示の拘束部によって電極積層体が積層方向(厚さ方向)に拘束されることで、入れ子6は、積層方向に挟まれる上下の樹脂部材5によって保持される。
【0023】
図3(a)に示すように、根元部61の厚さをT
1とし、延在部62の厚さをT
2とする。T
1は、T
2より大きい。T
1に対するT
2の割合は、例えば0.5以上、1未満であり、0.6以上、0.9以下であってもよい。T
1は、特に限定されないが、例えば0.2mm以上0.5mm以下である。T
2は、特に限定されないが、例えば0.1mm以上0.4mm以下である。また、特に図示しないが、上記起点pから上記他端部t2に向けて、入れ子の厚さが、連続的または段階的に減少していてもよい。この場合、起点pの厚さが、根元部の厚さとなり、他端部t2の厚さが延在部の厚さとなる。
【0024】
図3(a)に示すように、入れ子6は、基材63と、基材63の少なくとも一方の面に配置された被覆層64と、を有していてもよい。
図3(a)における入れ子6は、基材63の一方の面に配置された被覆層64aと、基材63の他方の面に配置された被覆層64bとを有する。基材63は、例えば、金属基材である。基材63の厚さは、特に限定されないが、例えば、0.1mm以上0.4mm以下である。
【0025】
被覆層64は、金属層、セラミック層等の熱的安定性が高い層である。被覆層64の厚さは、特に限定されないが、例えば0.03mm以上0.08mm以下である。また、被覆層64は、後述する第1辺(
図4(a)における第1辺s
1)を構成する、基材63の側面を覆っていてもよく、覆っていなくてもよい。同様に、被覆層64は、後述する第2辺(
図4(a)における第2辺s
2)を構成する、基材63の側面を覆っていてもよく、覆っていなくてもよい。また、例えば入れ子自体を切削し、切削した薄肉部位を延在部として有し、切削していない部位を根元部として有する、入れ子を用いてもよい。
【0026】
図3(b)に示すように、根元部61の厚さをT
1とし、凹部21の厚さ方向D
Tの長さをT
3とする。根元部61は凹部21に挿入されるため、T
3およびT
1の差(T
3-T
1)は、0より大きい。T
3-T
1は、例えば0.05mm以下であり、0.03mm以下であってもよい。T
3-T
1を小さくすることで、根元部61および凹部21の隙間に、樹脂が流れ込むことを防止できる。
【0027】
図4(b)に示すように、根元部61から延在部62が延在する延在方向をD
1とし、D
1に直交する幅方向をD
2とする。延在部62における他端部t2の幅方向D
2の長さW
2は、根元部61の幅方向D
2の長さW
1より短い。W
1は、起点pにおける、根元部61の幅方向D
2の長さである。W
1に対するW
2の割合(W
2/W
1)は、通常、0より大きく、0.1以上であってもよく、0.3以上であってもよく、0.5以上であってもよい。一方、W
2/W
1は、例えば0.9以下であり、0.8以下であってもよい。
【0028】
図4(c)に示すように、幅方向D
2における凹部21の長さをW
3とする。入れ子6は凹部21に挿入されるため、W
3およびW
1の差(W
3-W
1)は、0より大きい。W
3-W
1は、例えば0.05mm以下であり、0.03mm以下であってもよい。W
3-W
1を小さくすることで、入れ子6および凹部21の隙間に、樹脂が流れ込むことを防止できる。
【0029】
図4(a)に示すように、入れ子6を厚さ方向から見た場合に、入れ子6は、第1辺s
1と、第1辺s
1に対向する第2辺s
2と、延在部62の他端部t2に該当する第3辺s
3と、を有する。
【0030】
第1辺s
1は、例えば、延在方向D
1に平行な直線部を有する。同様に、第2辺s
2は、例えば、延在方向D
1に平行な直線部を有する。本開示における「平行」とは、2つの方向のなす角度が30°以下である関係をいう。一方、第3辺s
3は、延在部62の他端部t2に該当する。
図4(a)における第3辺s
3は、幅方向D
2に平行な直線部を有する。なお、特に図示しないが、第3辺s
3は、線分ではなく、延在部62の端部に該当する点であってもよい。
【0031】
図4(a)に示すように、入れ子6は、第1辺s
1および第3辺s
3の間に、第1面取り部c
1を有する。
図4(a)における第1面取り部c
1は、曲線部(例えばR面)である。一方、特に図示しないが、第1面取り部は、直線部(例えばC面)であってもよい。また、第1辺s
1および第1面取り部c
1の境界をb
1とし、第1面取り部c
1および第3辺s
3の境界をb
31とする。
図4(a)に示すように、幅方向D
2において、b
31は、b
1より、入れ子6の中央寄りに位置する。
【0032】
図4(a)に示すように、入れ子6は、第2辺s
2および第3辺s
3の間に、第2面取り部c
2を有していてもよい。
図4(a)における第2面取り部c
2は、曲線部(例えばR面)である。一方、特に図示しないが、第2面取り部は、直線部(例えばC面)であってもよい。また、第2辺s
2および第2面取り部c
2の境界をb
2とし、第2面取り部c
2および第3辺s
3の境界をb
32とする。
図4(a)に示すように、幅方向D
2において、b
32は、b
2より、入れ子6の中央寄りに位置する。
【0033】
(2)発電単位
本開示における電極積層体は、発電単位を備える。発電単位は、正極層と、負極層と、正極層および負極層の間に配置されたセパレータと、を有する。正極、負極およびセパレータには、上述した
図2(b)に例示する貫通孔Hを形成した後に、貫通孔Hを介して電解液が供給される。その結果、正極、負極およびセパレータには、それぞれ、電解液が含浸される。
図1(a)に示す発電単位U
1は、正極層2と、負極層3と、正極層2および負極層3の間に配置されたセパレータ4と、を有する。発電単位U
1における正極層2および負極層3は、それぞれ、隣接する集電体1によって集電される。
【0034】
電極積層体は、厚さ方向に積層された、複数の発電単位を有していてもよい。
図1(a)における電極積層体10は、厚さ方向に積層された、複数の発電単位(U
1、U
2、U
3)を有する。
図1(a)に示すように、複数の発電単位は、互いに、直接接続されていてもよい。また、特に図示しないが、複数の発電単位は、互いに、並列接続されていてもよい。
【0035】
複数の発電単位は、互いに電解液が流通しないように、それぞれ独立している。
図1(a)において、複数の発電単位U
1~U
3は、互いに電解液が流通しないように、それぞれ独立している。例えば、発電単位U
1および発電単位U
2は、集電体1および樹脂部材5によって区画され、互いに独立している。
【0036】
複数の発電単位には、それぞれ、貫通孔が形成される。貫通孔は、電極積層体の内部(発電単位の空間)と、電極積層体の外部(発電単位の空間より外側の空間)とを貫通する孔である。例えば、貫通孔を介して、発電単位に電解液が供給される。
【0037】
1つの発電単位は、2つのバイポーラ電極を用いて構成されていてもよい。
図1(a)において、電極積層体10は、厚さ方向D
Tにおいて、バイポーラ電極BP
1およびバイポーラ電極BP
2を備える。隣り合うバイポーラ電極BP
1およびバイポーラ電極BP
2の間に、セパレータ4が配置されている。発電単位U
2は、バイポーラ電極BP
2における正極層2bと、バイポーラ電極BP
1における負極層3aと、正極層2bおよび負極層3aの間に配置されたセパレータ4と、から構成されている。
【0038】
(3)電極積層体
本開示における電極積層体は、集電体の外縁に沿って配置された樹脂部材を有していてもよい。例えば
図1(a)において、集電体1の外縁に沿って、樹脂部材5が配置されている。電極積層体10を厚さ方向から見た場合に、樹脂部材5は、電解液の漏れを防止する部材であり、通常、集電体1の外縁全周に配置されている。樹脂部材を構成する樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0039】
本開示における電極積層体は、厚さ方向において、バイポーラ電極を複数備え、複数のバイポーラ電極において、隣り合うバイポーラ電極の間に、それぞれセパレータが配置されていてもよい。
【0040】
図5は、本開示における電極積層体の形成方法を例示する概略断面図(分解図)である。
図5に示すように、バイポーラ電極BP
1およびバイポーラ電極BP
2を準備する。バイポーラ電極BP
1は、集電体1aの一方の面に配置された正極層2aと、集電体1aの他方の面に配置された負極層3aと、を有する。
【0041】
さらに、バイポーラ電極BP
1は、集電体1aの外縁に沿って配置された樹脂枠51aを有する。バイポーラ電極BP
1を厚さ方向から見た場合に、樹脂枠51aは、通常、集電体1aの外縁全周に沿って配置される。例えば、集電体1aの外縁形状が四角形である場合、その四角形の外縁全周に沿って、樹脂枠51aが配置される。また、
図5に示すように、樹脂枠51aは、集電体1aの一方の主面αの一部と、集電体1aの他方の主面βの一部と、集電体1aの外縁を構成する側面γの全体と、を覆うことが好ましい。
【0042】
図5に示すように、バイポーラ電極BP
2は、集電体1bの一方の面に配置された正極層2bと、集電体1bの他方の面に配置された負極層3bと、を有する。さらに、バイポーラ電極BP
2は、集電体1bの外縁に沿って配置された樹脂枠51bを有する。バイポーラ電極BP
2の詳細については、上述したバイポーラ電極BP
1の詳細と同様である。
【0043】
図5に示すように、バイポーラ電極BP
1における負極層3aと、バイポーラ電極BP
2における正極層2bとを、セパレータ4を介して、対向させる。この際、セパレータ4の外縁の少なくとも一部が、樹脂枠51aおよび樹脂枠51bの間に配置される。また、
図5に示すように、バイポーラ電極BP
1における樹脂枠51aと、バイポーラ電極BP
2における樹脂枠51bとの間に、入れ子6および樹脂枠(スペーサ)51cを配置する。
【0044】
図5に示すように、バイポーラ電極BP
1、バイポーラ電極BP
2、セパレータ4および入れ子6を配置し、その後、樹脂枠51a、51bおよび51cを溶着する。これにより、正極層2b、負極層3aおよびセパレータ4を有する発電単位が形成される。また、樹脂枠51a、51bおよび51cを溶着することで、樹脂部材5が形成される。さらに、入れ子6は、樹脂部材5を貫通するように配置される。
【0045】
2.モールド配置工程
本開示におけるモールド配置工程は、上記電極積層体の側面にモールドを配置する工程である。
【0046】
モールドは、入れ子が挿入される凹部を有する。
図1(b)に示すモールド20は、入れ子6が挿入される凹部21を有する。また、モールド20は、後述する隔壁部を形成するための凹部22を有していてもよい。
【0047】
モールド配置工程では、
図1(b)に示すように、電極積層体10の側面SSとモールド20の凹部21が形成された面とが対向するように、モールド20の中にインサート品である電極積層体10を配置する。また、電極積層体の入れ子を、モールドの凹部に挿入する。この際、延在部および根元部の両方を、モールドの凹部に挿入する。
【0048】
3.成形工程
本開示における成形工程は、上記電極積層体および上記モールドの間に樹脂を供給することで、樹脂体を成形する工程である。
【0049】
樹脂体を成形する方法としては、特に限定されないが、例えば、射出成形法が挙げられる。樹脂体を構成する樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂が挙げられる。樹脂体は、電極積層体の外縁に沿って配置される。例えば
図2(b)において、樹脂体30は、電極積層体10の外縁に沿って配置されている。蓄電デバイスを厚さ方向から見た場合に、樹脂体30は、電極積層体10の外縁の少なくとも一部(入れ子が配置された領域)に配置されていればよい。また、樹脂体30は、電極積層体10の外縁全周に配置されていてもよい。
【0050】
図6は、本開示における入れ子および樹脂体を例示する概略斜視図である。なお、
図6は、
図1および
図2とはセル(発電単位)の積層数が異なっており、6セル積層電池を示している。また、便宜上、
図6では、入れ子6の特徴部分については記載を省略している。
図6および
図2(a)に示すように、樹脂体30は、基部31と、基部31から延在する隔壁部32とを有していてもよい。基部31は、例えば、樹脂部材5と溶着している。一方、隔壁部32は、複数の縦壁32Xと、複数の横壁32Yとを有する。各々の入れ子6は、縦壁32Xおよび横壁32Yによって、それぞれ区画されている。なお、樹脂体30は、基部31を有さず、隔壁部32を有していてもよい。また、樹脂体30は、基部31を有し、隔壁部32を有しなくてもよい。
【0051】
4.その他の工程
本開示における蓄電デバイスの製造方法は、上述した成形工程の後に、上記電極積層体から上記入れ子を除くことにより上記貫通孔を形成する貫通孔形成工程を有していてもよい。例えば、
図2(a)および
図2(b)に示すように、電極積層体10から入れ子6を除くことにより、貫通孔Hが形成される。
図2(b)において、貫通孔Hは、樹脂体30を貫通する第1貫通孔H
1と、樹脂部材5を貫通する第2貫通孔H
2と、を有する。
【0052】
本開示における蓄電デバイスの製造方法は、上述した貫通孔形成工程の後に、上記貫通孔を介して、上記電極積層体の上記内部に、電解液を供給する電解液供給工程を有していてもよい。電解液の供給方法は、特に限定されず、公知の方法が用いられる。
【0053】
本開示における蓄電デバイスの製造方法は、上述した電解液供給工程の後に、上記貫通孔を封止する封止工程を有していてもよい。貫通孔の封止方法は特に限定されないが、例えば、樹脂体を加熱し溶融させることで、貫通孔を封止する方法が挙げられる。
【0054】
5.蓄電デバイス
本開示における蓄電デバイスの具体例としては、二次電池(例えばリチウムイオン二次電池)、電気二重層キャパシタが挙げられる。また、蓄電デバイスの用途としては、例えば、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、電気自動車(BEV)、ガソリン自動車、ディーゼル自動車等の車両の電源が挙げられる。特に、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)または電気自動車(BEV)の駆動用電源に用いられることが好ましい。また、本開示における蓄電デバイスは、車両以外の移動体(例えば、鉄道、船舶、航空機)の電源として用いられてもよく、情報処理装置等の電気製品の電源として用いられてもよい。
【0055】
本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示における特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示における技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0056】
1…集電体
2…正極層
3…負極層
4…セパレータ
5…樹脂部材
6…入れ子
10…電極積層体
20…モールド
30…樹脂体