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特開2024-48689半導体装置、及び、半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048689
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】半導体装置、及び、半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/34 20060101AFI20240402BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20240402BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
H01L23/34 A
H01L25/04 C
H05K7/20 D
H05K7/20 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154747
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(72)【発明者】
【氏名】仲野 逸人
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322AA03
5E322AA05
5E322AB01
5E322AB02
5E322AB08
5E322FA04
5F136BB04
5F136BB13
5F136FA02
5F136FA03
5F136FA14
5F136FA16
5F136FA18
5F136FA52
5F136FA63
5F136GA02
(57)【要約】
【課題】半導体装置及び半導体装置の製造方法において、半導体素子が配置される基板の反りを抑制する。
【解決手段】半導体装置(1)は、半導体素子(7)が配置された基板(6)と、この基板(6)の下部に位置する冷却器(3)と、基板(6)上に接合された導電性のブロック(70~76)とを備える。このブロック(70~76)は、基板(6)側の下面と、上面とのうち少なくとも一方に凹部(71a,72a,73a,74a,75a,76a)を有する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子が配置された基板と、
前記基板の下部に位置する冷却器と、
前記基板上に接合された導電性のブロックとを備え、
前記ブロックは、前記基板側の下面と、上面とのうち少なくとも一方に凹部を有する
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記ブロックは、前記基板と外部接続端子とを電気的に接続する
ことを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記ブロックは、前記基板上に半田によって接合され、
前記凹部は、前記ブロックの前記下面に位置する
ことを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項4】
前記基板には、前記半導体素子を含む1つ以上の部品が配置され、
少なくとも1つの前記部品は、第1半田によって接合され、
前記ブロックは、前記第1半田よりも融点が高い第2半田によって前記基板上に接合されている
ことを特徴とする請求項1又は3記載の半導体装置。
【請求項5】
単一の前記冷却器の上部に位置する少なくとも3つの前記基板を備え、
前記ブロックは、少なくとも1つの前記基板上に位置する
ことを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項6】
半導体素子を含む1つ以上の部品が配置された基板と、前記基板の下部に位置する冷却器と、前記基板上に接合された導電性のブロックとを備える半導体装置を製造する、半導体装置の製造方法であって、
前記ブロックは、前記基板側の下面と、上面とのうち少なくとも一方に凹部を有し、
少なくとも1つの前記部品を第1半田によって接合し、前記ブロックを第2半田によって前記基板上に接合するように、前記第1半田の融点及び前記第2半田の融点よりも高い温度まで前記基板を加熱することと、
前記第2半田の融点が前記第1半田の融点よりも高いことによって、前記第2半田が前記第1半田よりも先に凝固するように、加熱後の前記基板を冷却することを含む、
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子が配置された基板を備える半導体装置と、この半導体装置の製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、パワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、FWD(Free Wheeling Diode)等の半導体素子が配置された基板を有し、インバータ装置等に利用されている(例えば、特許文献1~3参照)。
【0003】
この種の半導体装置において、絶縁基板と、この絶縁基板の上面に配置された回路部と、絶縁基板の下面に配置された金属部と、この金属部の下面に接合される金属板とを備え、金属板の硬度を部分的に異ならせることによって、金属板の反りを低減する半導体装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6090529号公報
【特許文献2】特開2022-012569号公報
【特許文献3】特開2022-006780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、半導体素子が配置された基板(単位モジュール)を冷却するための冷却器においては、基板と冷却器との接合面がフラットではないこと、基板に生じていた反り、基板の一括半田プロセスによる加熱時の反り(加熱反り)などによって、基板と冷却器とを接合する半田のヒケ、半田流れなどの接合不良が発生する。
【0006】
そのため、上述の金属板などの冷却器の反りを低減しても、基板の反りに起因する接合不良を低減することはできない。
【0007】
本発明の目的は、半導体素子が配置される基板の反りを抑制することができる、半導体装置、及び半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つの態様では、半導体装置は、半導体素子が配置された基板と、前記基板の下部に位置する冷却器と、前記基板上に接合された導電性のブロックとを備え、前記ブロックは、前記基板側の下面と、上面とのうち少なくとも一方に凹部を有する。
【0009】
他の1つの態様では、半導体装置の製造方法は、半導体素子を含む1つ以上の部品が配置された基板と、前記基板の下部に位置する冷却器と、前記基板上に接合された導電性のブロックとを備える半導体装置を製造する、半導体装置の製造方法であって、前記ブロックは、前記基板側の下面と、上面とのうち少なくとも一方に凹部を有し、少なくとも1つの前記部品を第1半田によって接合し、前記ブロックを第2半田によって前記基板上に接合するように、前記第1半田の融点及び前記第2半田の融点よりも高い温度まで前記基板を加熱することと、前記第2半田の融点が前記第1半田の融点よりも高いことによって、前記第2半田が前記第1半田よりも先に凝固するように、加熱後の前記基板を冷却することを含む。
【発明の効果】
【0010】
前記態様によれば、半導体素子が配置される基板の反りを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施の形態に係る半導体装置の概略構成を示す平面図である。
図2】一実施の形態に係る半導体装置の概略構成を示す断面図である。
図3】一実施の形態における絶縁基板及び冷却器の反りを説明するための説明図である。
図4】一実施の形態におけるブロックの配置例を示す平面図(その1)である。
図5】一実施の形態におけるブロックの配置例を示す平面図(その2)である。
図6】一実施の形態におけるブロックを示す正面図(その1)である。
図7】一実施の形態におけるブロックを示す正面図(その2)である。
図8】一実施の形態におけるブロックを示す正面図(その3)である。
図9】一実施の形態におけるブロックを示す正面図(その4)である。
図10】一実施の形態におけるブロックを示す右側面図(その1)である。
図11】一実施の形態におけるブロックを示す右側面図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態に係る半導体装置について、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、以下で説明する実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲内で適宜変形して実施することができる。
【0013】
図1は、一実施の形態に係る半導体装置1の概略構成を示す平面図である。
【0014】
図2は、半導体装置1の概略構成を示す断面図である。
【0015】
なお、図1及び図2並びに後述する図3図11に示すX方向、Y方向、及びZ方向について、半導体装置1の上下方向(基板の厚み方向)をZ方向、このZ方向に直交するX方向及びY方向のうち、半導体装置1の長手方向をX方向、半導体装置1の短手方向をY方向と定義することにする。また、場合によっては、X方向を前後方向、Y方向を左右方向、Z方向を上下方向と呼ぶことがある。これらの方向は、説明の便宜上用いる文言であり、半導体装置1の取付姿勢によっては、XYZ方向のそれぞれとの対応関係が変わることがある。
【0016】
本実施の形態に係る半導体装置1は、例えばパワーコントロールユニット等の電力変換装置に適用されるものであり、インバータ回路を構成するパワー半導体モジュールである。
【0017】
図1及び図2に示す半導体装置1は、3つの単位モジュール2と、これらの単位モジュール2を冷却する冷却器3(図2参照)と、複数の単位モジュール2を収容するケース部材4と、このケース部材4内に注入される図示しない封止樹脂とを備える。
【0018】
単位モジュール2は、絶縁基板6と、この絶縁基板6上に配置される半導体素子7とを含む。絶縁基板6は、半導体素子7が配置された基板の一例である。本実施の形態では、3つの単位モジュール2がX方向に並んで配置されている。3つの単位モジュール2は、例えば、U相、V相、W相を構成し、全体として三相インバータ回路を形成する。なお、単位モジュール2は、パワーセルあるいは半導体ユニットと呼ばれてもよい。単位モジュール2は、1つ以上の任意の数で配置されればよいが、単一の冷却器3の上部に単位モジュール2が3つ以上並んで配置されている場合に、冷却器3に反りが生じやすく、後述する絶縁基板6の反りを抑制する必要性も高まる。
【0019】
図2に示すように、絶縁基板6は、例えば、DCB(Direct Copper Bonding)基板やAMB(Active Metal Brazing)基板、あるいは金属ベース基板で構成される。例えば、絶縁基板6は、絶縁板60と、この絶縁板60の下面に配置された放熱板61と、絶縁板60の上面に配置された複数の回路板62とを有する。絶縁基板6は、例えば平面視矩形状に形成される。
【0020】
絶縁板60は、例えば、アルミナ(Al)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化珪素(Si)等のセラミックス材料、エポキシ等の樹脂材料、又はセラミックス材料をフィラーとして用いたエポキシ樹脂材料等の絶縁材料によって形成される。なお、絶縁板60は、絶縁層又は絶縁フィルムと呼ばれてもよい。
【0021】
放熱板61は、Z方向に所定の厚みを有し、絶縁板60の下面を覆うように形成される。放熱板61は、例えば銅やアルミニウム等の熱伝導性の良好な金属板によって形成される。放熱板61は、例えば、半田Sによって半導体素子7等の部品が絶縁基板6に接合されるのと同時又は後で、且つ、ケース部材4に封止樹脂が注入されるのよりも前に、半田S等の接合材によって、冷却器3に接合される。
【0022】
絶縁板60の上面には、複数の回路板62が形成される。絶縁板60の上面には、1つ以上の任意の数の回路板62が形成されてよい。これらの回路板62は、銅箔等の金属層であり、絶縁板60上に電気的に互いに絶縁された状態で島状に形成される。なお、回路板62は、回路層と呼ばれてもよい。
【0023】
図2に示すように、絶縁基板6(回路板62)の上面には、第1半田S1を介して半導体素子7が配置されている。図1では、1つの絶縁基板6につき4つの半導体素子7を示すが、半導体素子7の数は任意である。半導体素子7は、例えばシリコン(Si)、炭化けい素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、及びダイヤモンド等の半導体基板によって平面視方形状又は矩形状に形成される。
【0024】
なお、半導体素子7としては、IGBT、パワーMOSFET等のスイッチング素子、FWD等のダイオードが用いられる。スイッチング素子とダイオードは逆並列接続されてよい。また、半導体素子7として、IGBTとFWDを一体化したRC(Reverse Conducting)-IGBT素子、又はパワーMOSFET素子、逆バイアスに対して十分な耐圧を有するRB(Reverse Blocking)-IGBT等が用いられてもよい。
【0025】
半導体素子7は、金属配線板10を介して所定の回路板62に導電接続される。金属配線板10は、例えば、銅素材、銅合金系素材、アルミニウム合金系素材、鉄合金系素材等の金属素材を用いて、プレス加工等によって折り曲げて形成される。例えば、半導体素子7と金属配線板10とは、半田等の接合材によって接合される。これらの金属配線板10は、リードフレームと呼ばれてもよい。なお、金属配線板10に代えて導体ワイヤ等の他の接続部材が配置されてもよい。
【0026】
ケース部材4は、中央に開口部4aを有する矩形枠状に形成されている。矩形状の開口部4aには、上述の3つの単位モジュール2が収容される。すなわち、3つの単位モジュール2は、枠状のケース部材4によって画定される空間に収容される。
【0027】
図1に示すように、ケース部材4には、外部接続用の外部接続端子の一例である主端子(P端子16、N端子17、M端子18)と、制御用の制御端子19とが設けられている。ケース部材4の短手方向(Y方向)で対向する一対の壁部40,41のうち、Y方向負側(図1の下側)に位置する壁部40には、平面視四角形状の凹部42,43が形成されている。
【0028】
凹部42には、P端子16が配置されている。P端子16は、1つの単位モジュール2につき、1つずつ配置されている。P端子16は、回路板62上に接合された導電性のブロック70にレーザ溶接により接合される。このブロック70は、例えば、銅又は銅合金からなるブロックである。
【0029】
同様に、凹部43には、N端子17が配置されている。N端子17は、1つの単位モジュール2につき、1つずつ配置されている。N端子17も、P端子16と同様に、回路板62上に接合された導電性のブロック70にレーザ溶接により接合される。
【0030】
また、ケース部材4の短手方向(Y方向)で対向する一対の壁部40,41のうち、Y方向正側(図1の上側)の壁部41には、平面視四角形状の凹部44が形成されている。凹部44には、M端子18が配置されている。M端子18は、1つの単位モジュール2につき、1つずつ配置されている。M端子18も、P端子16及びN端子17と同様に、回路板62上に接合された導電性のブロック70にレーザ溶接により接合される。
【0031】
P端子16は正極端子(入力端子)、N端子17は負極端子(出力端子)、M端子18は中間端子(出力端子)と呼ばれてもよい。P端子16、N端子17、及びM端子18の一端は上述のようにレーザ溶接によりブロック70に接合され、P端子16、N端子17、及びM端子18の他端は、外部導体に接続可能な主端子を構成する。なお、P端子16、N端子17、及びM端子18は、半田接合や超音波溶接などによってブロック70に接合されてもよい。
【0032】
P端子16、N端子17、及びM端子18に接合される3つのブロック70は、回路板62(絶縁基板6)上に第2半田S2によって接合されている。この第2半田S2は、半導体素子7を回路板62(絶縁基板6)に接合するための第1半田S1よりも融点が高いことが望ましい。一例ではあるが、第2半田S2は、Sn,Sbを有し、融点が240℃であり、第1半田S1は、Sn,Cu,Ni,Pを有し、融点が230℃である。これにより、半田接合のための加熱工程において、半導体素子7及びブロック70を回路板62に接合するために第1半田S1の融点及び第2半田S2の融点よりも高い温度まで絶縁基板6を加熱した後、冷却工程において、第2半田S2が第1半田S1よりも先に凝固する。なお、第1半田S1は、絶縁基板6に配置される半導体素子7を含む1つ以上の部品のうち少なくとも1つの部品を接合するものであればよい。また、冷却は、冷却装置等による強制冷却であってもよいし、自然冷却で絶縁基板6が第1半田S1の融点を下回るまで冷却されてもよい。
【0033】
ケース部材4のY方向正側の壁部41には、制御端子19が設けられている。制御端子19は、1つの単位モジュール2につき、例えば10個ずつ配置されている。より具体的には、1つの単位モジュール2において、10個の制御端子19は、M端子18を左右方向(X方向)で挟むように5つずつ配置されている。10個の制御端子は、開口部4aの外周に沿って配置されている。なお、制御端子19の形状、配置箇所、及び配置数は、これに限らず適宜変更が可能である。
【0034】
制御端子19は、例えば銅素材、銅合金系素材、アルミニウム合金系素材、鉄合金系素材等の金属素材により形成される。例えば、制御端子19は、ケース部材4に埋め込まれるように、一体成型(インサート成型)され、配線部材W(制御配線と呼ばれてもよい)によって単位モジュール2の各部に接続される。配線部材Wには、導体ワイヤ(ボンディングワイヤ)が用いられる。導体ワイヤの材質は、金、銅、アルミニウム、金合金、銅合金、アルミニウム合金のいずれか1つ又はそれらの組み合わせを用いることができる。また、配線部材として導体ワイヤ以外の部材を用いることも可能である。例えば、配線部材としてリボンを用いることができる。
【0035】
また、ケース部材4には、外周縁に沿って複数の貫通孔4bが形成されている。貫通孔4bは、半導体装置1の固定用のネジ45(図2参照)を挿通するための穴である。貫通孔4bは、冷却器3のケース部30まで貫通している。
【0036】
なお、ケース部材4用の樹脂は、例えば、ポリフェニレンスルファイド(PPS)の他、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリブチルアクリレート(PBA)、ポリアミド(PA)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ウレタンやシリコン等の絶縁性樹脂から選択され得る。また、選択される樹脂は、2種以上の樹脂の混合物でもよい。樹脂には、強度又は機能性を向上させるためのフィラー(例えばガラスフィラー)が含まれてもよい。
【0037】
また、枠状のケース部材4により規定される内部空間に注入される図示しない封止樹脂は、絶縁基板6、及びこの絶縁基板6に実装された半導体素子7を上記の空間内に封止する。封止樹脂は、熱硬化性の樹脂により構成される。封止樹脂は、エポキシ、シリコーン、ウレタン、ポリイミド、ポリアミド、及びポリアミドイミドのいずれかを少なくとも含むことが好ましい。封止樹脂には、例えば、フィラーを混入したエポキシ樹脂が、絶縁性、耐熱性及び放熱性の点から好適である。
【0038】
図2に示すように、冷却器3は、ケース部30及び天板31を有する。ケース部30は、天板31の下部に配置され、上面が開口し、周囲にフランジ部分を有する直方体形状を呈し、内部に空洞32を有する。この空洞32は、水等の冷媒が流通する冷媒流通部として機能する。ケース部30の周囲のフランジ部分は、上述のネジ45によって天板31及びケース部材4に固定されている。天板31は、水平に配置された矩形板状を呈し、例えばアルミニウムを含む金属で形成されている。
【0039】
空洞32の内部には、冷却フィン33が配置されている。この冷却フィン33は、天板31の下面に固定されている。冷却フィン33は、主に半導体素子7が発生させる熱を上述の冷媒に伝える。
【0040】
ケース部30における空洞32の下部の周縁には、空洞32に対する冷媒の導入又は導出のための2つ以上の開口部30aが設けられている。これらの開口部30aのそれぞれには、冷媒を流すパイプ34が接続されている。
【0041】
次に、上述の絶縁基板6及び冷却器3に発生する反りについて説明する。
【0042】
図3は、絶縁基板6及び冷却器3の反りを説明するための説明図である。
【0043】
図3に示す冷却器3には、3つの絶縁基板6(単位モジュール2)がX方向に並んで配置されている。絶縁基板6は、上述のように半田S(図2参照)等の接合材によって冷却器3に接合されている。
【0044】
冷却器3には、上述のように、図2に示す空洞32を冷媒が流れることなどに起因して、例えば、X方向において上側が凹となる反り(正反り)が発生したり、Y方向において上側が凸となる反り(負反り)が発生したりする。この冷却器3の反りによって、冷却器3と3つの絶縁基板6とを接合する半田Sには、3つの絶縁基板6のうち真ん中の絶縁基板6のX方向の中央部分で且つY方向の両端部分にヒケSa(図3において破線で囲んで図示)が発生しやすい。このヒケSaの発生を抑制するには、絶縁基板6と冷却器3との接合面を平行に近づけるために、絶縁基板6と冷却器3とが異なる向きに反るのを抑制することが有効である。
【0045】
ところで、絶縁基板6には、絶縁基板6に反りが生じていたり、絶縁基板6の半田S(第1半田S1等)を一括して接合するための加熱工程における反り(加熱反り)が生じたりする。これらの絶縁基板6の反りが冷却器3の反りとは異なる向きに大きくなると、絶縁基板6と冷却器3との接合面に隙間が生じやすい。したがって、絶縁基板6の反りを抑制することが望ましい。
【0046】
図4及び図5は、ブロック70の配置例を示す平面図である。
【0047】
図4に示すブロック70の配置例は、図1に示す単位モジュール2における配置と同様であり、Y方向の負側(図4の下側)に、P端子16及びN端子17に電気的に接続される2つのブロック70がX方向に並んで配置され、Y方向の正側(図4の上側)に、M端子18に電気的に接続される1つのブロック70が配置されている。
【0048】
一方、図5に示すブロック70の配置例は、図1に示す単位モジュール2の配置とは異なり、Y方向の負側(図5の下側)のP端子16及びN端子17に電気的に接続される2つのブロック70がX方向ではなくY方向に並んで配置され、Y方向の正側(図5の上側)に、M端子18に電気的に接続される1つのブロック70が配置されている。
【0049】
なお、図4及び図5に示すブロック70の配置例は、あくまで一例であり、ブロック70の位置や個数は特に制限されない。また、ブロック70は、P端子16、N端子17、及びM端子18に電気的に接続されるものに限定されない。
【0050】
次に、図6図11を参照しながらブロック70の様々な例(ブロック71~76)について説明する。
【0051】
図6図9は、ブロック71~74を示す正面図であり、図10及び図11は、ブロック75,76を示す右側面図である。なお、図2に示す第2半田S2の半田溜まりとなる凹部71a~76aが設けられるブロック71~76は、図3に示す3つの絶縁基板6のうち少なくとも1つの絶縁基板6に設けられているとよいが、望ましくは、少なくとも中央の絶縁基板6に設けられるとよい。
【0052】
図6に示すブロック71は、下面に凹部71aを有する。この凹部71aは、ブロック71の長手方向であるX方向の中央部分において、Y方向に貫通するように設けられた溝である。また、凹部71aは、X方向の幅がブロック71の下面よりも内部で狭くなるように設けられている。この凹部71aが設けられていることによって、ブロック71は、上述の第2半田S2(図2参照)が第1半田S1よりも先に凝固する際に、図6に矢印で示すようにX方向において負反り(上側が凸となる反り)の応力を絶縁基板6に与える。これにより、絶縁基板6のX方向における正反り(上側が凹となる反り)を抑制することができる。そのため、図3の例とは異なるが、冷却器3がX方向において負反りとなっている場合に特に有効である。
【0053】
図7に示すブロック72は、下面に凹部72aを有する。この凹部72aは、図6に示す凹部71aと同様に、ブロック72の長手方向であるX方向の中央部分において、Y方向に貫通するように設けられた溝である。凹部72aは、凹部71aとは異なり、X方向の幅が一定となるように設けられている。凹部72aが設けられていることによって、ブロック72は、ブロック71と同様に、上述の第2半田S2(図2参照)が第1半田S1よりも先に凝固する際に、図7に矢印で示すようにX方向において負反りの応力を絶縁基板6に与える。
【0054】
図8に示すブロック73は、下面に2つの凹部73aを有する。これらの凹部73aは、ブロック73の長手方向であるX方向の中央部分において、Y方向に貫通するように且つX方向に並んで設けられた溝である。この凹部73aが設けられていることによって、ブロック73は、ブロック71,72と同様に、上述の第2半田S2(図2参照)が第1半田S1よりも先に凝固する際に、図8に矢印で示すようにX方向において負反りの応力を絶縁基板6に与える。なお、凹部73aの数は、2つに限らず、3つ以上であってもよい。また、各凹部73aの深さや幅が互いに異なってもよい。
【0055】
図9に示すブロック74は、上面に2つの凹部74aを有する。これらの凹部74aは、ブロック74が上述のようにレーザ溶接によって外部接続端子の一例である主端子(P端子16、N端子17、M端子18)に接合される際に形成されるレーザ溶接部分Lを挟んでX方向の両側に位置する。また、2つの凹部74aは、Y方向に貫通するように設けられた溝である。この凹部74aが設けられていることによって、ブロック74は、ブロック71~73と同様に、上述の第2半田S2(図2参照)が第1半田S1よりも先に凝固する際に、図9に矢印で示すようにX方向において負反りの応力を絶縁基板6に与える。なお、凹部74aの数は、2つに限らず、1つ又は3つ以上であってもよい。また、各凹部74aの深さや幅が互いに異なってもよい。
【0056】
図10に示すブロック75は、下面に凹部75aを有する。この凹部75aは、ブロック75のY方向の中央部分において、X方向に貫通するように設けられた溝である。凹部75aが設けられていることによって、ブロック75は、上述の第2半田S2(図2参照)が第1半田S1よりも先に凝固する際に、図10に矢印で示すようにY方向において負反りの応力を絶縁基板6に与える。これにより、絶縁基板6のY方向における正反りを抑制することができるため、図3の例のように冷却器3がY方向に負反りとなっている場合に特に有効である。
【0057】
図11に示すブロック76は、上面に2つの凹部76aを有する。これらの凹部76aは、上述のようにレーザ溶接によって外部接続端子の一例である主端子(P端子16、N端子17、M端子18)に接合される際に形成されるレーザ溶接部分Lを挟んでY方向の両側に位置する。2つの凹部76aは、X方向に貫通するように設けられた溝である。凹部76aが設けられていることによって、ブロック76は、ブロック75と同様に、上述の第2半田S2(図2参照)が第1半田S1よりも先に凝固する際に、図11に矢印で示すようにY方向において負反りの応力を絶縁基板6に与える。なお、凹部76aの数は、2つに限らず、1つ又は3つ以上であってもよい。また、各凹部76aの深さや幅が互いに異なってもよい。
【0058】
ここで、単一の絶縁基板6に接合される例えば3つのブロック70~76は、相互に異なるものであってもよい。例えば、X方向において負反りの応力を絶縁基板6に与える図6図9に示すブロック71~74と、Y方向において負反りの応力を絶縁基板6に与える図10及び図11に示すブロック75,76とを組み合わせて単一の絶縁基板6に接合してもよい。また、凹部71a~76aは、ブロック71~76をY方向又はX方向に貫通する溝でなくともよい。その場合、X方向及びY方向の両方において負反りの応力を絶縁基板6に与え得る。
【0059】
以上説明した本実施の形態では、半導体装置1は、半導体素子7が配置された基板の一例である絶縁基板6と、この絶縁基板6の下部に位置する冷却器3と、絶縁基板6上に接合された導電性のブロック70~76とを備え、このブロック70~76は、絶縁基板6側の下面と、上面とのうち少なくとも一方に凹部71a~76aを有する。
【0060】
このように、ブロック70~76の下面又は上面に凹部71a~76aが設けられていることによって、ブロック70~76が絶縁基板6に負反り(上側が凸となる反り)の応力を与えることができるため、ブロック70~76が接合される絶縁基板6の反り(正反り:上側が凹となる反り)を抑制することができる。これにより、絶縁基板6と冷却器3とを接合する半田SのヒケSaなどによる接合不良が発生するのを抑制することもできる。
【0061】
また、本実施の形態では、ブロック70~76は、絶縁基板6と外部接続端子の一例である主端子(P端子16、N端子17、M端子18)とを電気的に接続する。
【0062】
そのため、絶縁基板6と主端子とを接続するブロック70~76を用いた簡素な構成によって、絶縁基板6の反りを抑制することができる。
【0063】
また、本実施の形態では、ブロック70~76は、絶縁基板6上に半田S(第2半田S2)によって接合されている。また、ブロック71~73,75の凹部71a,72a,73a,75aは、ブロック71~73,75の下面に位置する。
【0064】
これにより、凹部74a,76aが上面に位置するブロック74,76と比較して、ブロック71~73,75に負反りが生じやすいため、絶縁基板6に負反りの応力を与えやすくなる。また、半田Sによるブロック71~73,75と絶縁基板6との接合時に、絶縁基板6に加熱反りが発生するのを抑制することができる。
【0065】
また、本実施の形態の半導体装置1では、絶縁基板6には、半導体素子7を含む1つ以上の部品が配置され、少なくとも1つの部品は、第1半田S1によって接合され、ブロック70~76は、第1半田S1よりも融点が高い第2半田S2によって絶縁基板6上に接合されている。
【0066】
他の観点では、半導体装置1の製造方法は、半導体素子7を含む1つ以上の部品が配置された基板の一例である絶縁基板6と、この絶縁基板6の下部に位置する冷却器3と、絶縁基板6上に接合された導電性のブロック70~76とを備える半導体装置1を製造する、半導体装置1の製造方法であって、ブロック70~76は、絶縁基板6側の下面と、上面とのうち少なくとも一方に凹部71a~76aを有し、少なくとも1つの上記部品を第1半田S1によって接合し、ブロック70~76を第2半田S2によって絶縁基板6上に接合するように、第1半田S1の融点及び第2半田S2の融点よりも高い温度まで絶縁基板6を加熱すること(加熱工程)と、第2半田S2の融点が第1半田S1の融点よりも高いことによって、第2半田S2が第1半田S1よりも先に凝固するように、加熱後の絶縁基板6を冷却すること(冷却工程)とを含む。
【0067】
上記の半導体装置1、及び半導体装置1の製造方法では、絶縁基板6を第1半田S1及び第2半田S2の融点よりも高温に加熱した後、第2半田S2が第1半田S1よりも先に凝固するため、絶縁基板6に第1半田S1に起因する加熱反りが発生する前にブロック70~76が絶縁基板6に負反りの応力を与えることができる。そのため、ブロック70~76が接合される絶縁基板6の反り(正反り)をより一層抑制することができる。なお、ブロック70~76に凹部71a~76aが設けられていない場合でも、第2半田S2が第1半田S1よりも先に凝固することによって絶縁基板6に反りが発生するのを抑制することができる。この観点では、ブロック70~76の凹部71a~76aを省略することも可能である。
【0068】
また、本実施の形態では、単一の冷却器3の上部に位置する少なくとも3つの絶縁基板6を備え、ブロック70~76は、少なくとも1つの絶縁基板6上に位置する。
【0069】
このように3つ以上の絶縁基板6が配列されることによって、冷却器3が絶縁基板6の配列方向に長くなって冷却器3に反りが発生しやすくなっても、ブロック70~76が絶縁基板6に負反りの応力を与え、ブロック70~76が接合される絶縁基板6の反り(正反り)を抑制することができる。そのため、例えば、冷却器3の反りと反対向きの反りが絶縁基板6に生じて、冷却器3と絶縁基板6との隙間が大きくなるのを防止することができる。
【0070】
以下、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0071】
<付記1>
半導体素子が配置された基板と、
前記基板の下部に位置する冷却器と、
前記基板上に接合された導電性のブロックとを備え、
前記ブロックは、前記基板側の下面と、上面とのうち少なくとも一方に凹部を有する
ことを特徴とする半導体装置。
【0072】
<付記2>
前記ブロックは、前記基板と外部接続端子とを電気的に接続する
ことを特徴とする付記1記載の半導体装置。
【0073】
<付記3>
前記ブロックは、前記基板上に半田によって接合され、
前記凹部は、前記ブロックの前記下面に位置する
ことを特徴とする付記1記載の半導体装置。
【0074】
<付記4>
前記基板には、前記半導体素子を含む1つ以上の部品が配置され、
少なくとも1つの前記部品は、第1半田によって接合され、
前記ブロックは、前記第1半田よりも融点が高い第2半田によって前記基板上に接合されている
ことを特徴とする付記1又は3記載の半導体装置。
【0075】
<付記5>
単一の前記冷却器の上部に位置する少なくとも3つの前記基板を備え、
前記ブロックは、少なくとも1つの前記基板上に位置する
ことを特徴とする付記1記載の半導体装置。
【0076】
<付記6>
半導体素子を含む1つ以上の部品が配置された基板と、前記基板の下部に位置する冷却器と、前記基板上に接合された導電性のブロックとを備える半導体装置を製造する、半導体装置の製造方法であって、
前記ブロックは、前記基板側の下面と、上面とのうち少なくとも一方に凹部を有し、
少なくとも1つの前記部品を第1半田によって接合し、前記ブロックを第2半田によって前記基板上に接合するように、前記第1半田の融点及び前記第2半田の融点よりも高い温度まで前記基板を加熱することと、
前記第2半田の融点が前記第1半田の融点よりも高いことによって、前記第2半田が前記第1半田よりも先に凝固するように、加熱後の前記基板を冷却することを含む、
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0077】
以上説明したように、本発明は、半導体製造及び半導体装置の製造方法において、半導体素子が配置される基板の反りを抑制することができるという効果を奏し、例えば、パワー半導体装置などに有用である。
【符号の説明】
【0078】
1 :半導体装置
2 :単位モジュール
3 :冷却器
30 :ケース部
30a :開口部
31 :天板
32 :空洞
33 :冷却フィン
34 :パイプ
4 :ケース部材
4a :開口部
4b :貫通孔
40,41:壁部
42,43,44:凹部
45 :ネジ
6 :絶縁基板
60 :絶縁板
61 :放熱板
62 :回路板
7 :半導体素子
10 :金属配線板(リードフレーム)
16 :P端子
17 :N端子
18 :M端子
19 :制御端子
70~76:ブロック
71a~76a:凹部
L:レーザ溶接部分
S:半田
Sa:ヒケ
S1:第1半田
S2:第2半田
W:配線部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11