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特開2024-48692糖類含有化合物の処理方法及び糖類含有化合物の分析方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048692
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】糖類含有化合物の処理方法及び糖類含有化合物の分析方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 1/32 20060101AFI20240402BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240402BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20240402BHJP
   C07K 2/00 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
C07K1/32
G01N33/53 V
G01N33/53 S
G01N33/543 541A
C07K2/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154753
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100194250
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 直志
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】金安 美雨
(72)【発明者】
【氏名】豊田 雅哲
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA20
4H045BA10
4H045BA53
4H045GA20
(57)【要約】
【課題】目的の糖タンパク質から生じた糖類含有化合物の処理方法および分析方法を提供する。
【解決手段】糖タンパク質を含む混合試料に抗体固定化担体を接触させ、前記抗体固定化担体に前記糖タンパク質を吸着させる工程と、前記混合試料から前記糖タンパク質を吸着させた前記抗体固定化担体を分離し、分離した前記抗体固定化担体に遊離試薬を含む液体を添加して前記糖タンパク質から遊離させた糖類含有化合物を含む混合液とし、前記混合液に精製剤を接触させて前記精製剤に前記糖類含有化合物を吸着させる工程と、前記混合液から分離した前記精製剤を、水を含む溶液に接触させ、前記精製剤から前記水に前記糖類含有化合物を溶出させる工程と、を含み、前記精製剤は、ベタイン構造を有するポリマー、又は前記ポリマーと前記ポリマーを担持する支持体とを有する複合体の少なくともいずれか一方を含有する、糖類含有化合物の処理方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖タンパク質を含む混合試料に抗体固定化担体を接触させ、前記抗体固定化担体に前記糖タンパク質を吸着させる工程と、
前記混合試料から前記糖タンパク質を吸着させた前記抗体固定化担体を分離し、分離した前記抗体固定化担体に遊離試薬を含む液体を添加して前記糖タンパク質から遊離させた糖類含有化合物を含む混合液とし、前記混合液に精製剤を接触させて前記精製剤に前記糖類含有化合物を吸着させる工程と、
前記混合液から分離した前記精製剤を、水を含む溶液に接触させ、前記精製剤から前記水に前記糖類含有化合物を溶出させる工程と、を含み、
前記精製剤は、ベタイン構造を有するポリマー、又は前記ポリマーと前記ポリマーを担持する支持体とを有する複合体の少なくともいずれか一方を含有する、糖類含有化合物の処理方法。
【請求項2】
前記混合液は、0.01体積%~20体積%の水を含む、請求項1に記載の糖類含有化合物の処理方法。
【請求項3】
前記ベタイン構造はアニオン基と、カチオン基と、及び前記アニオン基と前記カチオン基とを連結するリンカーと、を有し、
前記アニオン基は、リン酸基、ホスホン酸基、カルボキシル基及びスルホン酸基からなる群より選択される基であり、
前記カチオン基は、4級アンモニウム基であり、
前記リンカーは炭素数1~4のアルキレン基である、請求項1に記載の糖類含有化合物の処理方法。
【請求項4】
前記アニオン基がリン酸基である請求項3に記載の糖類含有化合物の処理方法。
【請求項5】
前記ベタイン構造が、ホスホリルコリン基である請求項3に記載の糖類含有化合物の処理方法。
【請求項6】
前記支持体に固定された前記ポリマーの重量が、前記支持体の単位表面積(m)当たり0.5mg~1.5mgである請求項1に記載の糖類含有化合物の処理方法。
【請求項7】
前記支持体が、無機化合物を材料とする請求項6に記載の糖類含有化合物の処理方法。
【請求項8】
前記複合体の比重が、1.05~3.00である、請求項6に記載の糖類含有化合物の処理方法。
【請求項9】
前記複合体は、形状が球状であり、平均粒径が0.5μm~100μmである、請求項6に記載の糖類含有化合物の処理方法。
【請求項10】
前記ポリマーが、(メタ)アクリル化合物に由来する繰り返し単位を含む請求項1に記載の糖類含有化合物の処理方法。
【請求項11】
前記抗体固定化担体が、磁性ビーズである、請求項1に記載の糖類含有化合物の処理方法。
【請求項12】
請求項1に記載の糖類含有化合物の処理方法と、
溶出させた前記糖類含有化合物を分析する工程と、を有する、糖類含有化合物の分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖類含有化合物の処理方法及び糖類含有化合物の分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体を構成するタンパク質の多くは、タンパク質を構成するアミノ酸の一部に糖鎖が結合した糖タンパク質として存在している。糖タンパク質は、細胞や生物の構造、免疫系、ホルモン、細胞間シグナル伝達等、生体内において、重要な役割を担っている。このような糖タンパク質の構造解析は、生命科学、医療、創薬等の種々の技術分野において、非常に重要視されており、検討されている。
【0003】
糖タンパク質の構造解析は、目的とする糖タンパク質をタンパク質混合溶液から分画する。さらに分画後の目的の糖タンパク質を消化酵素などによって分解し、生じる糖類や糖ペプチドを分析することによって行われる。構造解析の前処理段階として、目的の糖タンパク質を検出する方法が、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-152132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された糖タンパク質または多糖類の検出方法を用いると、染色した薄膜上の糖タンパク質または多糖類を検出することができる。検出された糖タンパク質や多糖類の量が十分に確保できれば、糖タンパク質や多糖類を構成する糖類含有化合物について、構造決定等の分析を行うことが可能となる。しかしながら、上記方法では、目的の糖タンパク質が微量である場合に、分画後の目的の糖タンパク質から糖類含有化合物を回収することが困難であり、改善が求められていた。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、目的の糖タンパク質から生じた糖類含有化合物の処理方法を提供することを目的とする。また、得られた糖類含有化合物の分析方法を提供することをあわせて目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様は、以下の態様を包含する。
【0008】
[1]糖タンパク質を含む混合試料に抗体固定化担体を接触させ、前記抗体固定化担体に前記糖タンパク質を吸着させる工程と、前記混合試料から前記糖タンパク質を吸着させた前記抗体固定化担体を分離し、分離した前記抗体固定化担体に遊離試薬を含む液体を添加して前記糖タンパク質から遊離させた糖類含有化合物を含む混合液とし、前記混合液に精製剤を接触させて前記精製剤に前記糖類含有化合物を吸着させる工程と、前記混合液から分離した前記精製剤を、水を含む溶液に接触させ、前記精製剤から前記水に前記糖類含有化合物を溶出させる工程と、を含み、前記精製剤は、ベタイン構造を有するポリマー、又は前記ポリマーと前記ポリマーを担持する支持体とを有する複合体の少なくともいずれか一方を含有する、糖類含有化合物の処理方法。
【0009】
[2]前記混合液は、0.01体積%~20体積%の水を含む、[1]に記載の糖類含有化合物の処理方法。
【0010】
[3]前記ベタイン構造はアニオン基と、カチオン基と、及び前記アニオン基と前記カチオン基とを連結するリンカーと、を有し、前記アニオン基は、リン酸基、ホスホン酸基、カルボキシル基及びスルホン酸基からなる群より選択される基であり、前記カチオン基は、4級アンモニウム基であり、前記リンカーは炭素数1~4のアルキレン基である、[1]又は[2]に記載の糖類含有化合物の処理方法。
【0011】
[4]前記アニオン基がリン酸基である[3]に記載の糖類含有化合物の処理方法。
【0012】
[5]前記ベタイン構造が、ホスホリルコリン基である[3]又は[4]に記載の糖類含有化合物の処理方法。
【0013】
[6]前記支持体に固定された前記ポリマーの重量が、前記支持体の単位表面積(m)当たり0.5mg~1.5mgである[1]~[5]いずれか1つに記載の糖類含有化合物の処理方法。
【0014】
[7]前記支持体が、無機化合物を材料とする[6]に記載の糖類含有化合物の処理方法。
【0015】
[8]前記複合体の比重が、1.05~3.00である、[6]又は[7]に記載の糖類含有化合物の処理方法。
【0016】
[9]前記複合体は、形状が球状であり、平均粒径が0.5μm~100μmである、[6]~[8]いずれか1つに記載の糖類含有化合物の処理方法。
【0017】
[10]前記ポリマーが、(メタ)アクリル化合物に由来する繰り返し単位を含む[1]~[9]いずれか1つに記載の糖類含有化合物の処理方法。
【0018】
[11]前記抗体固定化担体が、磁性ビーズである、[1]~[10]のいずれか1つに記載の糖類含有化合物の処理方法。
【0019】
[12][1]に記載の糖類含有化合物の処理方法と、溶出させた前記糖類含有化合物を分析する工程と、を有する、糖類含有化合物の分析方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、目的の糖タンパク質から生じた糖類含有化合物の処理方法を提供することができる。また、得られた糖類含有化合物の分析方法をあわせて提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本実施形態の分析方法で用いる精製剤の一例を示す模式図である。
図2図2は、本実施形態の分析方法を実施する装置の一例を説明する模式図である。
図3図3は、実施例1の結果を示すHPLCチャートである。
図4図4は、推定される糖鎖構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書において、数値範囲について、「A以上B以下」を「A~B」と表記する場合がある。例えば「0.01体積%~20体積%」と記載した場合、0.01体積%から20体積%までの範囲であって下限値(0.01体積%)と上限値(20体積%)を含む数値範囲、すなわち「0.01体積%以上20体積%以下」を意味する。
【0023】
本実施形態の糖類含有化合物の処理方法は、下記(I)~(III)の工程を含む。
(I)糖タンパク質を含む混合試料に抗体固定化担体を接触させ、抗体固定化担体に糖タンパク質を吸着させる工程
(II)混合試料から糖タンパク質を吸着させた抗体固定化担体を分離し、分離した抗体固定化担体に遊離試薬を含む液体を添加して糖タンパク質から遊離させた糖類含有化合物を含む混合液とし、混合液に精製剤を接触させて精製剤に糖類含有化合物を吸着させる工程
(III)混合液から分離した精製剤を、水を含む溶液に接触させ、精製剤から水に糖類含有化合物を溶出させる工程
【0024】
ここで、本明細書においては、以下のように用語を定義する。
「糖類」とは、単糖及び糖鎖をまとめた集合を指す。単糖は、誘導体であってもよい。「糖鎖」とは、2以上の単糖がグリコシド結合により直鎖状又は分岐鎖状につながった化合物を指す。糖鎖を構成する単糖は、誘導体であってもよい。
「糖ペプチド」は、糖類により修飾されたペプチドのことを指す。
「糖類含有化合物」は、糖類及び糖ペプチドをまとめた総称である。
「糖タンパク質」は、糖鎖修飾を受けたタンパク質のことをさす。
【0025】
「糖タンパク質を含む混合試料」としては、糖タンパク質を含有している可能性のある試料であれば特に制限はない。糖タンパク質を含む混合試料としては、生体試料及び環境試料を挙げることができる。このような試料としては、例えば、全血、血清、血漿、尿、唾液、糞便、脳脊髄液、細胞、細胞培養物及び細胞組織等の生体試料が挙げられる。生体試料及び環境試料は、未精製のものであってもよく、脱脂、脱塩、電気泳動等のタンパク質分画、濃縮、希釈、熱変性等の必要な前処理を行ったものであってもよい。
【0026】
生体試料及び環境試料を濃縮又は希釈する場合、適宜、予備実験を行い、混合試料として適切な濃度を設定しておくとよい。希釈時には、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を用いるとよい。
【0027】
上記試料は、有機溶媒の溶液であってもよく、水溶液であってもよい。
【0028】
混合試料は、0.01体積%~20体積%の水を含むことが好ましく、0.1体積%~15体積%の水を含むことがより好ましく、0.5体積%~12体積%の水を含むことがさらに好ましい。混合試料が上記量の水を含むことにより、糖類を効果的に精製剤に吸着させることができる。
【0029】
以下の説明においては、糖類含有化合物の処理方法を単に「処理方法」と称することがある。以下、処理方法について、順に説明する。
【0030】
[工程(I)]
まず、糖タンパク質を含む混合試料に抗体固定化担体を接触させ、抗体固定化担体に糖タンパク質を吸着させる。これにより、混合試料から抗体固定化担体に吸着可能な糖タンパク質を選択的に分離することができる。
【0031】
(抗体固定化担体)
抗体固定化担体とは、固相の表面に抗体を固定した担体をいう。固定の態様としては、特異的結合による非共有結合(水素結合およびイオン結合)、ならびに共有結合が含まれる。
【0032】
ここで、担体は、水に不溶な基材であって、抗体を固定化できるものであれば特に限定されず、有機担体、無機担体およびそれらの複合担体が挙げられる。有機担体としては、架橋ポリビニルアルコール、架橋ポリアクリレート、架橋ポリアクリルアミド、架橋ポリスチレンなどの合成高分子;架橋セファロース、結晶性セルロース、架橋セルロース、架橋アミロース、架橋アガロース、架橋デキストランなどの多糖類からなる担体が挙げられ、これらは単独担体、または複数の複合担体として用いることができる。無機担体としては、ガラスビーズ、シリカゲル、モノリスシリカ、磁性ビーズなどの担体が挙げられる。
混合試料中の糖タンパク質、上記抗体固定化担体の抗体を介して捕捉される。
【0033】
(糖タンパク質)
抗体固定化担体に吸着させる糖タンパク質は、部分構造として下記のような糖類含有化合物を有する。
【0034】
糖類含有化合物を構成する単糖又はその誘導体としては、グルコース、ガラクトース、マンノース、フコース、キシロース、アラビノース、N-アセチルグルコサミン、N-アセチルガラクトサミン、シアル酸、及びこれらの誘導体が挙げられる。
【0035】
糖類含有化合物としては、単糖及びその誘導体、多糖類、糖タンパク質、並びに、糖ペプチド、プロテオグリカン、及び、糖脂質等の複合糖質から遊離又は誘導された糖鎖等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
ここで、糖タンパク質を構成する糖類含有化合物は、主にアスパラギン残基に糖類が結合するN-グリコシド結合糖鎖(N型糖鎖)、及び、セリン及びスレオニン等と結合するO-グリコシド結合糖鎖(O型糖鎖)の2種類に大別される。精製剤は、いずれの糖類をも濃縮対象とし、糖類の種類、鎖長、構造等は特に制限されない。
【0037】
[工程(II)]
次いで、混合試料から糖タンパク質を吸着させた抗体固定化担体を分離し、分離した抗体固定化担体に遊離試薬を含む液体を添加して糖タンパク質から遊離させた糖類含有化合物を含む混合液とし、混合液に精製剤を接触させて精製剤に糖類含有化合物を吸着させる。
【0038】
本工程においては、まず、混合試料から抗体固定化担体を分離する。分離後には、抗体固定化担体を洗浄すると良い。洗浄により、抗体固定化担体に捕捉された糖タンパク質以外の夾雑物を除去することができる。
【0039】
洗浄は、糖タンパク質を吸着させた抗体固定化担体を、マイクロチューブ、遠心管、マイクロプレート等の容器中で洗浄液に浸漬し、洗浄液の交換を繰り返すことにより行うことができる。例えば、容器に抗体固定化担体を入れ、洗浄液を加え、振とう又は撹拌した後、固液分離により液相部分を除去する操作を繰り返すことにより行う。また、フィルター入りチューブを使用することで、抗体固定化担体の回収を効率的に行うことができる。
【0040】
次いで、分離した抗体固定化担体に遊離試薬を含む液体を添加し混合液を得る。混合試料から分離した抗体固定化担体を、サンプル管やマイクロチューブ等の容器に集め、遊離試薬を加えることで、抗体固定化担体が吸着した糖タンパク質のタンパク質(アミノ酸)と糖類含有化合物との間の結合を切る。これにより、抗体固定化担体に吸着させた糖タンパク質から、糖類含有化合物を遊離させる。抗体固定化担体には、糖タンパク質のうちタンパク質部分が残存する。
【0041】
糖鎖遊離処理は、糖タンパク質から糖鎖を遊離することができるものであれば、特に制限はなく、酵素的処理及び化学的処理等を用いることができる。また、糖鎖遊離処理に先立って、糖タンパク質や糖ペプチド等に対してタンパク質分解酵素を作用させ、タンパク質及びペプチド部分の断片化処理等を行ってもよい。
【0042】
(遊離試薬)
遊離試薬としては、糖鎖遊離酵素を採用することができる。糖鎖遊離酵素としては、アスパラギン側鎖に結合したN型糖鎖を特異的に切断する糖切断酵素(例えば、PNGase F)を用いることができる。また、糖鎖を遊離させる公知の方法で採用される試薬を、遊離試薬として採用することができる。このような公知の方法としては、O型糖鎖遊離法である「脱離オキシム化法」を挙げることができる。
【0043】
(精製剤)
本願発明においては、精製剤は、下記の(A)(B)の少なくともいずれか一方を含有する。
(A)ベタイン構造を有するポリマー
(B)ベタイン構造を有するポリマーと、当該ポリマーを担持する支持体と、を有する複合体
【0044】
本実施形態の糖類含有化合物の精製方法で用いる上記(A)(B)の精製剤は、いずれもベタイン構造を有する。このような精製剤は、ベタイン構造を有する部分において、試料中の糖類含有化合物を吸着する。
【0045】
「ベタイン構造」とは、下記(a)~(c)の要件を満たす分子構造を意味する。
(a)正電荷と負電荷を同一分子構造内の隣り合わない位置に有する。
(b)正電荷を持つ原子には解離しうる水素が結合していない。
(c)分子構造全体としては電荷を持たない。
【0046】
(精製剤)
精製剤に含まれるベタイン構造は、具体的には、下記式(1)又は式(2)のいずれかの構造である。下記式(1)又は式(2)のいずれかの構造を分子内に有する化合物は、分子末端にベタイン構造を有する。
-Z-L-A …(1)
-A-L-Z …(2)
[式(1)(2)中、Zは、2級アミノ基、3級アミノ基、4級アンモニウム基、イミノ基及びイミニウム基からなる群より選択されるカチオン基を表す。
Lは、炭素数1~10のアルキレン基を表す。
Aは、リン酸基、カルボキシル基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、スルホン酸基、スルフィン基、スルフェン基、水酸基、チオール基及びボロン酸基からなる群より選択されるアニオン基を表す。]
【0047】
すなわち、精製剤におけるベタイン構造は、アニオン基と、カチオン基と、アニオン基とカチオン基とを連結するリンカーと、を有する。
【0048】
((B)ベタイン構造を有するポリマーと、ポリマーを担持する支持体と、を有する複合体)
精製剤としては、上記ポリマーAを単独で用いてもよく、ポリマーAを不溶性の支持体に担持させた複合体として用いてもよい。上記ポリマーAを不溶性の支持体に担持させた複合体は、糖類含有化合物を吸着させた後、混合液から分離しやすく、精製操作が簡便になるため好ましい。
【0049】
図1は、本実施形態の精製方法で用いる精製剤の一例を示す模式図である。図1に示すように、精製剤1は、ベタイン構造を有するポリマー(ポリマーA)と、当該ポリマーを担持する支持体2とを有する複合体である。図1に示す精製剤1では、支持体2が球状(粒子状)であり、ベタイン構造を有するポリマーは、支持体2の表面に層状に設けられている。図1では、層状に設けられたポリマーの層を符号3で示しており、層3を構成するベタイン構造を有するポリマーを符号3aで示している。
【0050】
(支持体)
図1では、支持体2を、球状であることとして示したがこれに限らない。例えば、支持体の形状は、基板やマルチウェルプレート等の板状、シートやフィルム、メンブレン等の膜状、繊維状であってもよい。
【0051】
支持体2が球状であり、精製剤1が球状である場合、精製剤1の平均粒径は、0.5μm以上100μm以下が好ましく、1μm以上50μm以下がより好ましく、1μm以上10μm以下がさらに好ましく、3μm以上10μm以下が特に好ましい。精製剤1の平均粒径が上記下限値以上であると、取り扱いが容易となり好ましい。また、精製剤1の平均粒径が上記上限値以下であると、工程(I)で調製する混合液中で、糖類含有化合物と精製剤1とを良好に接触させ、精製剤1に糖類含有化合物を吸着させやすいため好ましい。
【0052】
精製剤1の平均粒径は、例えば、粒度分布計等で測定することができる。
【0053】
精製剤1は、スピンカラム等のフィルターカップ、マルチウェルプレートの各ウェル、フィルタープレートの各ウェル、マイクロチューブ等の容器の中に充填された状態で用いてもよい。
【0054】
また、図1では、ポリマー3aが支持体2の表面の全体を覆っているが、これに限らず、支持体2の表面が露出していてもよい。
【0055】
支持体2の材料は、糖類含有化合物の精製過程で使用する有機溶媒及び水に不溶な基材であり、上述のベタイン構造を有するポリマー(ポリマーA)を担持できるものを採用できる。このような支持体2の材料は、無機材料(無機化合物)であってもよく、有機材料であってもよく、無機材料と有機材料との複合材料であってもよい。
【0056】
無機材料としては、ガラス、酸化鉄(フェライト、マグネタイト等)、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア等の酸化物、鉄、銅、金、銀、白金、コバルト、アルミニウム、パラジウム、イリジウム、ロジウム等の金属及びその合金、グラファイト等の炭素材料等が挙げられる。
これらの材料は1種のみで用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
有機材料としては、架橋ポリビニルアルコール、架橋ポリアクリレート、架橋ポリアクリルアミド、架橋ポリスチレン等の合成高分子、架橋セファロース、結晶性セルロース、架橋セルロース、架橋アミロース、架橋アガロース、架橋デキストラン等の多糖類等が挙げられる。
これらの材料は1種のみで用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
支持体2としては、無機材料を用いることが好ましい。支持体2となりうる有機材料は比重が1前後であり、精製で用いる混合液との比重差が小さい。そのため、支持体2の材料として有機材料を採用すると、固液分離が煩雑になることがある。一方、支持体2の材料として無機材料を用いると、容易かつ簡便に混合液と精製剤とを固液分離できる。これにより、作業効率の向上に寄与することができる。
支持体2の材料としては、シリカが特に好ましい。
【0059】
支持体2は、多孔質体であってもよい。多孔質の支持体2を用いることにより、支持体2表面に固定するベタイン構造を有するポリマーAの量を増加できる。これにより、作業効率の向上に寄与することができる。
【0060】
また、空隙を有する支持体と空隙を有さない支持体とを併用する、または、多孔質体である支持体の空隙の量を調製することにより、精製剤全体の比重を調製することもできる。
【0061】
ポリマーAを支持体の表面に担持させる方法は、物理吸着、又は、化学結合のいずれであってもよい。糖類含有化合物の精製過程において、支持体からポリマーAが遊離し難いため、上記担持させる方法は、化学結合が好ましい。
【0062】
[工程(III)]
次いで、糖類含有化合物を吸着させた精製剤を混合液から分離し、分離した精製剤を、水を含む溶液に接触させる。これにより、精製剤から水に糖類含有化合物を溶出させる。
【0063】
本工程においては、まず、混合液から精製剤を分離する。分離後には、精製剤を洗浄すると良い。洗浄により、精製剤に捕捉された糖類含有化合物以外の夾雑物を除去することができる。
【0064】
洗浄は、糖類含有化合物を吸着させた精製剤を、マイクロチューブ、遠心管、マイクロプレート等の容器中で洗浄液に浸漬し、洗浄液の交換を繰り返すことにより行うことができる。例えば、容器に精製剤を入れ、洗浄液を加え、振とう又は撹拌した後、固液分離により液相部分を除去する操作を繰り返すことにより行う。また、フィルター入りチューブを使用することで、精製剤の回収を効率的に行うことができる。
【0065】
次いで、糖類含有化合物を吸着させた精製剤から糖類含有化合物を溶出させる。糖類含有化合物の溶出は、精製剤を溶出液に浸漬することによって行う。例えば、精製剤から十分に洗浄液を取り除いた後、マイクロチューブ、遠心管、マイクロプレート等の容器中で精製剤に溶出液を加え、振とう又は撹拌することで行う。
【0066】
溶出液には、水を含む溶液を用いる。具体的には、溶出液は有機溶媒と水との混合溶媒であってもよい。混合溶媒を使用する場合は、溶出液中の水の含有率は25体積%以上であるとよい。
【0067】
有機溶媒としては、糖類含有化合物を溶解可能なものである限り特に制限はない。例えば、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、アセトン、ジオキサン、ピリジン、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、および1-ブタノール等を挙げることができる。これらの有機溶媒は、1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。混合液に用いられる有機溶媒は、アセトニトリル、1-ブタノール又はエタノールが好ましい。
【0068】
また、溶出液は、前記標識物質とは異なる標識試薬を含んでもよい。溶出液を、標識試薬を含んだ状態で加熱することによって、溶出液に含まれる糖類含有化合物を標識することができる。
標識試薬としては、たとえば、2-アミノベンズアミド(2-aminobenzamide)、2-アミノ安息香酸(2-aminobenzoic acid)等が挙げられる。
なお、上記標識試薬は、溶出液中に含めず、溶出後に添加してもよい。
【0069】
[工程(IV)]
本実施形態の糖類含有化合物の分析方法は、上記糖類含有化合物の処理方法((I)~(III)の工程)と、溶出させた糖類含有化合物を分析する工程と、を有する。必要に応じて溶出液から溶媒を留去し、糖類含有化合物を濃縮してもよい。
【0070】
糖類含有化合物の分析方法としては、たとえば、キャピラリー電気泳動(CE)、液体クロマトグラフィー(LC)、液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)等を挙げることができる。
【0071】
図2は、本実施形態の分析方法を実施する装置の一例を説明する模式図である。装置100は、抗体固定化担体10を収容した容器15を保持する保持部20と、容器15に試薬を導入する導入部30と、精製剤10-2を収容した容器15-2を保持する保持部20-2を備える。装置100は、容器15の収容物を固液分離する分離部40を備えていてもよい。また、装置100は、容器15の収容物の温度を調節する温度調節部60を更に備えていてもよい。
【0072】
保持部20は、抗体固定化担体10を収容した容器15を直接又は間接的に保持する。装置100では保持部20が回収容器16を保持し、容器15が回収容器16に装着されていることで、保持部20が容器15を間接的に保持している。回収容器16は、例えばコレクションチューブ、コレクションプレート等を挙げることができる。
【0073】
導入部30は、保持部20に保持された容器15内に液体類(混合試料L1(試料L1)、有機溶媒L2、洗浄液L3、溶出液L4)を導入する。導入部30は、液体類をそれぞれ収容したタンク34と、タンク34が収容した液体類を送液する送液管35aと、液体類を容器15に導入するノズル35とを備えている。送液管35aは、各タンク34に分岐している。分岐した各送液管35aには、各液体類の送液を制御する弁(36,37,38,39)を備える。
【0074】
分離部40は、容器15の収容物から固体(抗体固定化担体10)と液体とを分離する。容器15には、回収容器16が装着されていてもよい。
【0075】
分離部40は、容器15を保持するラック41と、ラック41が接続されるドライブシャフト42と、ドライブシャフト42を回転させるモーター43とを備えている。
【0076】
分離部40は、保持部20から独立して構成されてもよい。この場合、装置100は、保持部20から分離部40へ、容器15を自動移送させる移送部50を含んでいてもよい。
【0077】
分離部40は、遠心力によって、精製剤10-2に固定された糖類含有化合物を容器15内に残すとともに、洗浄液を回収容器16中に廃棄することができる。また、溶出過程においては、糖類含有化合物を含む溶出液を回収容器16中に回収することができる。
【0078】
装置100においては、抗体固定化担体10を収容する容器15を保持部20にて保持し、導入部30を用いて容器15に試料L1を導入する。これにより、容器15において試料L1に含まれる糖タンパク質を抗体固定化担体10に吸着させる(工程(I))。
【0079】
次いで、分離部40を用いて糖タンパク質を吸着させた抗体固定化担体10を固液分離し、容器15から液相を抜き出す。固体である抗体固定化担体10が残された容器15に対し、導入部30を用いて洗浄液L3を導入し分離部40を用いて固液分離することで、抗体固定化担体10の洗浄を行う。
【0080】
次いで、洗浄後の抗体固定化担体10が収容された容器15に、導入部30を用いて遊離試薬を導入する。これにより、抗体固定化担体10に吸着させた糖タンパク質から糖類含有化合物を遊離させる(工程(II))。抗体固定化担体10には糖タンパク質が残存する。
【0081】
次いで、分離部40を用いて糖類含有化合物を精製剤10-2に吸着させ、糖類含有化合物を吸着させた精製剤10-2を固液分離し、容器15から液相を抜き出す。固体である精製剤10-2が残された容器15に対し、導入部30を用いて洗浄液L3を導入し分離部40を用いて固液分離することで、精製剤10の洗浄を行う。
【0082】
次いで、洗浄後の精製剤10-2が収容された容器15-2に、導入部30を用いて溶出液L4を導入する。これにより、精製剤10-2に吸着させた糖類含有化合物を溶出液L4に溶出させ、糖類含有化合物を精製する(工程(III))。
【0083】
次いで、溶出液L4に溶出させた糖類含有化合物を、不図示の分析装置(例えばLC-MS)を用いて分析する(工程(IV))。
【0084】
以上のような操作により、装置100を用いて本実施形態の分析方法を実施することができる。
【0085】
以上のような糖類含有化合物の処理方法によれば、目的の糖タンパク質を処理し糖類含有化合物を容易に得ることができる。
【0086】
以上のような糖類含有化合物の分析方法によれば、目的の糖タンパク質から生じた糖類含有化合物を容易に分析することができる。
【実施例0087】
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0088】
[実施例1]
(1)抗体結合磁性ビーズの作製
磁性ビーズ(invitrogen製。品番:14311D)付属のプロトコルに従い、磁性ビーズに抗CA19-9抗体(ORIGENE製。品番:CF190083)を結合させた。「抗CA19-9抗体を結合させた磁性ビーズ」を、以下の説明では単に「ビーズ」と称する。
【0089】
ビーズを、PBST(PBS:99.95質量%,Tween20:0.05質量%の混合液)に添加し、ビーズ含有量10mg/mLのビーズ液を調整した。
【0090】
(2)血清からの目的糖タンパク質の回収
(2-1)
2.0mLチューブに(1)で調製したビーズ液50μL(ビーズ0.5mg)を分注した。その後、チューブを磁石上に配置してビーズを磁力で固定し、上清を除去した。同じものを2本用意した。
【0091】
(2-2)
健常者血清(SIGMA製。品番:H6914-100ML)1mLにCA19-9 native protein(MYBioSource製。品番:MBS537644)1000Uを添加して混合試料を調製した。
【0092】
(2-3)
(2-2)で調製した混合試料全量にPBSを加えて2倍希釈した溶液を調製した。この溶液を(2-1)で用意したビーズ入りの各チューブに1mLずつ添加し、ビーズに糖タンパク質を結合させた。
【0093】
(2-4)
室温にて1時間チューブローテーターを用いて攪拌した。
【0094】
(2-5)
チューブを磁石上に配置してビーズを磁力で固定し、上清を除去した。
続けて、PBSTをチューブに添加した後、ボルテックスミキサーを用いて軽く撹拌した。チューブを磁石上に配置してビーズを磁力で固定し、上清を除去した。PBSTの添加から上清の除去までを1回として、この操作を計3回実施した。
【0095】
(2-6)
チューブにPBSTを添加してビーズを懸濁させ、懸濁液を新しい1.5mLチューブに移した。このとき、2本のチューブに分けていたビーズを一つの1.5mLチューブに入れて統合した。
【0096】
(3)糖鎖の遊離
(2-6)で準備した1.5mLチューブを磁石上に配置し、ビーズを磁力で固定して上清を除去した。
【0097】
その後、試薬2(住友ベークライト製、品番:BS-41601に付属)と試薬3(住友ベークライト製、品番:BS-41601に付属)を5:2の比率で混合した糖鎖遊離溶液15μLを上記1.5mLチューブに添加して混合した。その後、ビーズごと混合溶液を37℃で75分加熱して反応させた。
【0098】
(4)糖鎖の回収
(3)の反応終了後、混合溶液にアセトニトリル(富士フイルム和光純薬製。製品コード:018-19853、純度99.9%)を添加し、数回ピペッティングした。この混合溶液を精製剤封入チューブ4(住友ベークライト製、品番:BS-41601に付属)に添加し、懸濁させた。
【0099】
得られた懸濁液をカラム5(住友ベークライト製、品番:BS-41601に付属)に加え、卓上遠心機を用いて遠心分離して溶液を除去した。遠心分離条件は、3000×g、1分間とした。以下の操作においては、同じ条件で遠心分離を行った。
【0100】
続いて、カラム5にアセトニトリル200μLを加え、遠心分離してアセトニトリルを主成分とする溶液を除去した。再度、カラム5にアセトニトリル200μLを加え、遠心分離してアセトニトリルを主成分とする溶液を除去した。
【0101】
(5)糖鎖標識
(5-1)
試薬6(住友ベークライト製、品番:BS-41601に付属)8mgをメタノール45μLと酢酸10μLの混合溶液に溶かした後、超純水45μLを加えた溶液1を調製した。また、試薬7(住友ベークライト製、品番:BS-41601に付属)4mgをメタノール45μLと酢酸10μLの混合溶液に溶かした後、超純水45μLを加えた溶液2を調製した。溶液1に2μLの溶液2を加えて攪拌し、標識溶液とした。
【0102】
(5-2)
(4)でカラム5に残留した固体に(5-1)の標識溶液50μLを加えて、遠心分離により溶液をマイクロチューブに回収した。得られた溶液を50℃で2.5時間加熱した。
【0103】
(5-3)
反応終了後の(5-2)のマイクロチューブにアセトニトリル1mLを加え、攪拌した。
【0104】
(5-4)
(5-3)をカラム8(住友ベークライト製、品番:BS-41601に付属)に全量添加後、遠心分離によりカラム8に通液させ、溶液を除去した。その後、カラム8にアセトニトリル600μLを加え、遠心分離によりカラム8に通液させ、溶液を除去した。再度、カラム8にアセトニトリル600μLを加え、遠心分離によりカラム8に通液させ、溶液を除去した。
【0105】
(5-5)
上記カラム8に超純水50μLを加えて遠心分離し、標識糖鎖溶液をマイクロチューブに回収した。
【0106】
(6)標識糖鎖溶液の濃縮
(5-5)で得られた標識糖鎖溶液を凍結させた後、遠心乾燥機に1時間かけることで水分を乾燥させた。水分が完全になくなり糖鎖が残っているこのマイクロチューブに超純水10μLを加えて攪拌した。これにより5倍濃縮標識糖鎖溶液を得た。
【0107】
(7)HPLC分析
(6)で調製した溶液のうち1μLを用いて、下記表1の条件でHPLC分析を実施した。
【0108】
【表1】
【0109】
図3は、実施例の結果を示すHPLCチャートである。(7)のHPLC分析で得られたチャートにおいて、溶出時間34.7分の位置にCA19-9(シアリルルイスA構造を持つ糖鎖)のピークが見られた。図3において、該当するピークを符号Aで示す。
また、図4は、推定される糖鎖構造を示す模式図である。
【0110】
以上の結果より、CA19-9を持つ糖タンパク質を混合試料から回収し、その糖タンパク質から本キットでO型糖鎖を調製して糖鎖解析することが可能であると示された。
【0111】
従って、本発明により、混合試料からターゲットの糖タンパク質を回収し、抗体固定化担体から糖タンパク質を遊離することなく、本キットでO型糖鎖を調製し糖鎖解析することが可能であると示された。
【符号の説明】
【0112】
1,10…精製剤
2…支持体
3…ポリマーの層
3a…ポリマー
L1…試料
L2…有機溶媒
図1
図2
図3
図4