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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048698
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】軸受、波動歯車装置及び産業ロボット
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/58 20060101AFI20240402BHJP
   F16H 1/32 20060101ALI20240402BHJP
   F16C 19/36 20060101ALI20240402BHJP
   B25J 17/00 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
F16C33/58
F16H1/32 B
F16C19/36
B25J17/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154763
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100145481
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 昌邦
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】浅川 雄一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 崇文
【テーマコード(参考)】
3C707
3J027
3J701
【Fターム(参考)】
3C707BS10
3C707CS04
3C707CX01
3C707CX03
3C707HS27
3C707HT26
3J027FA11
3J027FA37
3J027FB32
3J027GB03
3J027GC06
3J027GC22
3J027GE25
3J701AA13
3J701AA26
3J701AA42
3J701AA54
3J701AA62
3J701BA53
3J701BA54
3J701BA56
3J701BA69
3J701FA31
3J701GA11
3J701GA32
3J701XB03
3J701XB26
(57)【要約】
【課題】継続して確実に安定動作させることができる軸受、波動歯車装置及び産業ロボットを提供する。
【解決手段】実施形態の第1軸受4は、内輪と、外輪と、円筒ころ18と、を備える。内輪は、下面に形成され、内輪軌道面41と外輪軌道面との間に円筒ころ18を挿入するための挿入溝43と、挿入溝43を封鎖するとともに内輪軌道面41の一部が形成された封鎖栓45と、挿入溝43に封鎖栓45を固定するためのボルト47と、を備える。挿入溝43の底面43bに対する封鎖栓45の合わせ面45bのうち、ボルト挿入孔46から内輪軌道面41に至る間の最短長さをLaとし、ボルト挿入孔46から内周面に至る間の最短長さをLbとしたとき、最短長さLa,Lbは、La/Lb>0.65を満たす。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に内輪軌道面が形成された内輪と、
内周面に外輪軌道面が形成された外輪と、
前記内輪軌道面と前記外輪軌道面との間に配置された複数の転動体と、
を備え、
前記内輪又は前記外輪は、
前記内輪又は前記外輪の軸方向側面に形成され、前記内輪軌道面と前記外輪軌道面との間に前記転動体を挿入するための挿入溝と、
前記挿入溝を封鎖するとともに前記内輪軌道面又は前記外輪軌道面の一部が形成された封鎖栓と、
前記挿入溝に前記封鎖栓を固定するためのボルトと、
を備え、
前記封鎖栓は、
軸方向に貫通形成されて前記ボルトが挿入されるボルト挿入孔を有する栓本体と、
前記栓本体に形成され、前記挿入溝の底面に重なる合わせ面と、
を備え、
前記合わせ面のうち、前記ボルト挿入孔から前記内輪軌道面又は前記外輪軌道面に至る間の最短長さをLaとし、前記ボルト挿入孔から前記内輪軌道面又は前記外輪軌道面とは径方向で反対側の周面に至る間の最短長さをLbとしたとき、最短長さLa,Lbは、
La/Lb>0.65
を満たす、
軸受。
【請求項2】
前記ボルトの頭部を軸方向からみて前記合わせ面上に投影させた場合、前記合わせ面内に前記ボルトの前記頭部が収まっている、
請求項1に記載の軸受。
【請求項3】
前記挿入溝は平坦な複数の内側面を含み、
前記封鎖栓は前記複数の内側面と重なる平坦な複数の外側面を含み、
前記内側面は前記底面を含み、前記外側面は前記合わせ面を含む、
請求項1又は請求項2に記載の軸受。
【請求項4】
前記内輪軌道面及び前記外輪軌道面はV溝状を含み、
前記転動体は、円筒ころを含み、傾斜角度が周方向に交互に変わるように配置されている、
請求項1又は請求項2に記載の軸受。
【請求項5】
外周面にV溝状の内輪軌道面が形成された内輪と、
内周面にV溝状の外輪軌道面が形成された外輪と、
前記内輪軌道面と前記外輪軌道面との間に、傾斜角度が周方向に交互に変わるように配置された複数の円筒ころと、
を備え、
前記内輪又は前記外輪は、
前記内輪又は前記外輪の軸方向側面に形成され、前記内輪軌道面と前記外輪軌道面との間に前記円筒ころを挿入するための挿入溝と、
前記挿入溝を封鎖するとともに前記内輪軌道面又は前記外輪軌道面の一部が形成された封鎖栓と、
前記挿入溝に前記封鎖栓を固定するためのボルトと、
を備え、
前記封鎖栓は、
軸方向に貫通形成されて前記ボルトが挿入されるボルト挿入孔を有する栓本体と、
前記栓本体に形成され、前記挿入溝の平坦な底面に重なる平坦な合わせ面と、
を備え、
前記合わせ面のうち、前記ボルト挿入孔から前記内輪軌道面又は前記外輪軌道面に至る間の最短長さをLaとし、前記ボルト挿入孔から前記内輪軌道面又は前記外輪軌道面とは径方向で反対側の周面に至る間の最短長さをLbとしたとき、最短長さLa,Lbは、
La/Lb>0.65
を満たし、
前記ボルトの頭部を軸方向からみて前記合わせ面上に投影させた場合、前記合わせ面内に前記ボルトの前記頭部が収まっている、
軸受。
【請求項6】
内歯歯車と、
前記内歯歯車の径方向内側に配置され、前記内歯歯車に部分的に噛み合って前記内歯歯車に対して回転軸線回りに相対的に回転し、弾性を有する外歯歯車と、
前記外歯歯車の内周面に接触し、前記内歯歯車と前記外歯歯車との噛み合い位置を前記回転軸線回りの周方向に移動させる波動発生器と、
前記外歯歯車から延びる延出部と、
前記内歯歯車に対して前記延出部を回転自在に支持する軸受と、
を備え、
前記軸受は、
外周面に内輪軌道面が形成された内輪と、
内周面に外輪軌道面が形成された外輪と、
前記内輪軌道面と前記外輪軌道面との間に配置された複数の転動体と、
を備え、
前記内輪又は前記外輪は、
前記内輪又は前記外輪の軸方向側面に形成され、前記内輪軌道面と前記外輪軌道面との間に前記転動体を挿入するための挿入溝と、
前記挿入溝を封鎖するとともに前記内輪軌道面又は前記外輪軌道面の一部が形成された封鎖栓と、
前記挿入溝に前記封鎖栓を固定するためのボルトと、
を備え、
前記封鎖栓は、
軸方向に貫通形成されて前記ボルトが挿入されるボルト挿入孔を有する栓本体と、
前記栓本体に形成され、前記挿入溝の底面に重なる合わせ面と、
を備え、
前記合わせ面のうち、前記ボルト挿入孔から前記内輪軌道面又は前記外輪軌道面に至る間の最短長さをLaとし、前記ボルト挿入孔から前記内輪軌道面又は前記外輪軌道面とは径方向で反対側の周面に至る間の最短長さをLbとしたとき、最短長さLa,Lbは、
La/Lb>0.65
を満たす、
波動歯車装置。
【請求項7】
回転力を発生させる動力発生部と、
前記動力発生部の前記回転力が入力される入力部、及び前記入力部の回転を変速して出力する出力部を有する波動歯車装置と、
前記波動歯車装置の前記出力部に取り付けられる相手部材と、を備え、
前記波動歯車装置は、
内歯歯車と、
前記内歯歯車の径方向内側に配置され、前記内歯歯車に部分的に噛み合って前記内歯歯車に対して回転軸線回りに相対的に回転し、弾性を有する外歯歯車と、
前記外歯歯車の内周面に接触し、前記内歯歯車と前記外歯歯車との噛み合い位置を前記回転軸線回りの周方向に移動させる波動発生器と、
前記外歯歯車から延びる延出部と、
前記内歯歯車に対して前記延出部を回転自在に支持する軸受と、
を備え、
前記外歯歯車は、前記入力部又は前記出力部のいずれか一方として機能し、
前記軸受は、
外周面に内輪軌道面が形成された内輪と、
内周面に外輪軌道面が形成された外輪と、
前記内輪軌道面と前記外輪軌道面との間に配置された複数の転動体と、
を備え、
前記内輪又は前記外輪は、
前記内輪又は前記外輪の軸方向側面に形成され、前記内輪軌道面と前記外輪軌道面との間に前記転動体を挿入するための挿入溝と、
前記挿入溝を封鎖するとともに前記内輪軌道面又は前記外輪軌道面の一部が形成された封鎖栓と、
前記挿入溝に前記封鎖栓を固定するためのボルトと、
を備え、
前記封鎖栓は、
軸方向に貫通形成されて前記ボルトが挿入されるボルト挿入孔を有する栓本体と、
前記栓本体に形成され、前記挿入溝の底面に重なる合わせ面と、
を備え、
前記合わせ面のうち、前記ボルト挿入孔から前記内輪軌道面又は前記外輪軌道面に至る間の最短長さをLaとし、前記ボルト挿入孔から前記内輪軌道面又は前記外輪軌道面とは径方向で反対側の周面に至る間の最短長さをLbとしたとき、最短長さLa,Lbは、
La/Lb>0.65
を満たす、
産業ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受、波動歯車装置及び産業ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
軸受は、外周面に内輪軌道面が形成された内輪と、内周面に外輪軌道面が形成された外輪と、内輪軌道面と外輪軌道面との間に配置された複数の転動体と、を備える。このような軸受の中には、クロスローラ軸受と称される軸受がある。クロスローラ軸受の内輪軌道面及び外輪軌道面はV溝状に形成されており、これら内輪軌道面と外輪軌道面とにより周方向からみて矩形状の軌道が形成される。クロスローラ軸受の転動体は、いわゆる円筒ころである。複数の円筒ころは、傾斜角度が周方向に交互に変わるように配置されている。
【0003】
このようなクロスローラ軸受の内輪には、軸方向の側面から内輪軌道面に至る挿入溝(ころ挿入溝)が形成されている。クロスローラ軸受では、組み立てる際に挿入溝を介して内輪軌道面と外輪軌道面との間に複数の転動体を挿入する。
挿入溝は、封鎖栓(栓)によって封鎖される。封鎖栓は、ボルトによって挿入溝(内輪)に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-163462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のようなクロスローラ軸受を装置に使用すると、この装置の稼働中、封鎖栓に転動体を介して荷重が繰り返し加わる。この荷重によって封鎖栓がガタつき、封鎖栓を固定するボルトが緩んでしまう可能性があった。このため、転動体の転動が不安定になるなど、軸受を継続して安定動作させることが困難になる可能性があった。
【0006】
本発明は、継続して確実に安定動作させることができる軸受、波動歯車装置及び産業ロボットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る軸受は、外周面に内輪軌道面が形成された内輪と、内周面に外輪軌道面が形成された外輪と、前記内輪軌道面と前記外輪軌道面との間に配置された複数の転動体と、を備え、前記内輪又は前記外輪は、前記内輪又は前記外輪の軸方向側面に形成され、前記内輪軌道面と前記外輪軌道面との間に前記転動体を挿入するための挿入溝と、前記挿入溝を封鎖するとともに前記内輪軌道面又は前記外輪軌道面の一部が形成された封鎖栓と、前記挿入溝に前記封鎖栓を固定するためのボルトと、を備え、前記封鎖栓は、軸方向に貫通形成されて前記ボルトが挿入されるボルト挿入孔を有する栓本体と、前記栓本体に形成され、前記挿入溝の底面に重なる合わせ面と、を備え、前記合わせ面のうち、前記ボルト挿入孔から前記内輪軌道面又は前記外輪軌道面に至る間の最短長さをLaとし、前記ボルト挿入孔から前記内輪軌道面又は前記外輪軌道面とは径方向で反対側の周面に至る間の最短長さをLbとしたとき、最短長さLa,Lbは、La/Lb>0.65を満たす。
【0008】
このように構成することで、挿入溝の底面に封鎖栓の合わせ面をできる限り密接させることができる。このため、軸受を使用する際の封鎖栓のガタつきをできる限り抑制することができ、ボルトの緩みもできる限り抑制できる。よって、軸受を継続して安定動作させることができる。
【0009】
上記構成で、前記ボルトの頭部を軸方向からみて前記合わせ面上に投影させた場合、前記合わせ面内に前記ボルトの前記頭部が収まってもよい。
【0010】
上記構成で、前記挿入溝は平坦な複数の内側面を含み、前記封鎖栓は前記複数の内側面と重なる平坦な複数の外側面を含み、前記挿入溝の前記底面及び前記封鎖栓の前記合わせ面は平坦を含んでもよい。
【0011】
上記構成で、前記内輪軌道面及び前記外輪軌道面はV溝状を含み、前記転動体は、円筒ころを含み、傾斜角度が周方向に交互に変わるように配置されてもよい。
【0012】
本発明の他の態様に係る軸受は、外周面にV溝状の内輪軌道面が形成された内輪と、内周面にV溝状の外輪軌道面が形成された外輪と、前記内輪軌道面と前記外輪軌道面との間に、傾斜角度が周方向に交互に変わるように配置された複数の円筒ころと、を備え、前記内輪又は前記外輪は、前記内輪又は前記外輪の軸方向側面に形成され、前記内輪軌道面と前記外輪軌道面との間に前記円筒ころを挿入するための挿入溝と、前記挿入溝を封鎖するとともに前記内輪軌道面又は前記外輪軌道面の一部が形成された封鎖栓と、前記挿入溝に前記封鎖栓を固定するためのボルトと、を備え、前記封鎖栓は、軸方向に貫通形成されて前記ボルトが挿入されるボルト挿入孔を有する栓本体と、前記栓本体に形成され、前記挿入溝の平坦な底面に重なる平坦な合わせ面と、を備え、前記合わせ面のうち、前記ボルト挿入孔から前記内輪軌道面又は前記外輪軌道面に至る間の最短長さをLaとし、前記ボルト挿入孔から前記内輪軌道面又は前記外輪軌道面とは径方向で反対側の周面に至る間の最短長さをLbとしたとき、最短長さLa,Lbは、La/Lb>0.65を満たし、前記ボルトの頭部を軸方向からみて前記合わせ面上に投影させた場合、前記合わせ面内に前記ボルトの前記頭部が収まっている。
【0013】
このように構成することで、挿入溝の底面に封鎖栓の合わせ面をできる限り密接させることができる。このため、軸受を使用する際の封鎖栓のガタつきをできる限り抑制することができ、ボルトの緩みもできる限り抑制できる。よって、クロスローラ軸受を継続して安定動作させることができる。
また、挿入溝は平坦な底面を有し、封鎖栓の栓本体は挿入溝の底面に重なる平坦な合わせ面を備える。このため、ボルトの頭部によって押される封鎖栓の荷重を挿入溝の底面で確実に受けることができる。
さらに、ボルトの頭部を軸方向からみて合わせ面上に投影させた場合、合わせ面内にボルトの前記頭部が収まっているので、封鎖栓の合わせ面の一部が挿入溝の底面から外れて押されることが無い。このため、挿入溝に対して封鎖栓が斜めに傾いてしまうことを防止できる。よって、ボルトによって挿入溝に封鎖栓を確実に固定できる。
【0014】
本発明の他の態様に係る波動歯車装置は、内歯歯車と、前記内歯歯車の径方向内側に配置され、前記内歯歯車に部分的に噛み合って前記内歯歯車に対して回転軸線回りに相対的に回転し、弾性を有する外歯歯車と、前記外歯歯車の内周面に接触し、前記内歯歯車と前記外歯歯車との噛み合い位置を前記回転軸線回りの周方向に移動させる波動発生器と、前記外歯歯車から延びる延出部と、前記内歯歯車に対して前記延出部を回転自在に支持する軸受と、を備え、前記軸受は、外周面に内輪軌道面が形成された内輪と、内周面に外輪軌道面が形成された外輪と、前記内輪軌道面と前記外輪軌道面との間に配置された複数の転動体と、を備え、前記内輪又は前記外輪は、前記内輪又は前記外輪の軸方向側面に形成され、前記内輪軌道面と前記外輪軌道面との間に前記転動体を挿入するための挿入溝と、前記挿入溝を封鎖するとともに前記内輪軌道面又は前記外輪軌道面の一部が形成された封鎖栓と、前記挿入溝に前記封鎖栓を固定するためのボルトと、を備え、前記封鎖栓は、軸方向に貫通形成されて前記ボルトが挿入されるボルト挿入孔を有する栓本体と、前記栓本体に形成され、前記挿入溝の底面に重なる合わせ面と、を備え、前記合わせ面のうち、前記ボルト挿入孔から前記内輪軌道面又は前記外輪軌道面に至る間の最短長さをLaとし、前記ボルト挿入孔から前記内輪軌道面又は前記外輪軌道面とは径方向で反対側の周面に至る間の最短長さをLbとしたとき、最短長さLa,Lbは、La/Lb>0.65を満たす。
【0015】
このように構成することで、波動歯車装置を使用する際に、軸受の封鎖栓のガタつきをできる限り抑制することができる。軸受のボルトの緩みもできる限り抑制できる。このため、波動歯車装置を継続して安定動作させることができる。
【0016】
本発明の他の態様に係る産業ロボットは、回転力を発生させる動力発生部と、前記動力発生部の前記回転力が入力される入力部、及び前記入力部の回転を変速して出力する出力部を有する波動歯車装置と、前記波動歯車装置の前記出力部に取り付けられる相手部材と、を備え、前記波動歯車装置は、内歯歯車と、前記内歯歯車の径方向内側に配置され、前記内歯歯車に部分的に噛み合って前記内歯歯車に対して回転軸線回りに相対的に回転し、弾性を有する外歯歯車と、前記外歯歯車の内周面に接触し、前記内歯歯車と前記外歯歯車との噛み合い位置を前記回転軸線回りの周方向に移動させる波動発生器と、前記外歯歯車から延びる延出部と、前記内歯歯車に対して前記延出部を回転自在に支持する軸受と、を備え、前記外歯歯車は、前記入力部又は前記出力部のいずれか一方として機能し、前記軸受は、外周面に内輪軌道面が形成された内輪と、内周面に外輪軌道面が形成された外輪と、前記内輪軌道面と前記外輪軌道面との間に配置された複数の転動体と、を備え、前記内輪又は前記外輪は、前記内輪又は前記外輪の軸方向側面に形成され、前記内輪軌道面と前記外輪軌道面との間に前記転動体を挿入するための挿入溝と、前記挿入溝を封鎖するとともに前記内輪軌道面又は前記外輪軌道面の一部が形成された封鎖栓と、前記挿入溝に前記封鎖栓を固定するためのボルトと、を備え、前記封鎖栓は、軸方向に貫通形成されて前記ボルトが挿入されるボルト挿入孔を有する栓本体と、前記栓本体に形成され、前記挿入溝の底面に重なる合わせ面と、を備え、前記合わせ面のうち、前記ボルト挿入孔から前記内輪軌道面又は前記外輪軌道面に至る間の最短長さをLaとし、前記ボルト挿入孔から前記内輪軌道面又は前記外輪軌道面とは径方向で反対側の周面に至る間の最短長さをLbとしたとき、最短長さLa,Lbは、La/Lb>0.65を満たす。
【0017】
このように構成することで、上述の波動歯車装置を用いた産業ロボットを駆動する際に、軸受の封鎖栓のガタつきをできる限り抑制することができる。軸受のボルトの緩みもできる限り抑制できる。このため、産業ロボットを継続して安定動作させることができる。
【発明の効果】
【0018】
上述の軸受、波動歯車装置及び産業ロボットは、継続して確実に安定動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態における産業ロボットの概略構成図である。
図2】本発明の実施形態における波動歯車装置の回転軸線に沿う断面図である。
図3】本発明の実施形態における第1軸受を下方からみた斜視図である。
図4図3のIV-IV線に沿う断面図である。
図5】本発明の実施形態における挿入溝の底面に対する封鎖栓の合わせ面の密接度合いを比較した図であり、(a)は所定の条件を満たした場合を示し、(b)は所定の条件を満たしていない場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
<産業ロボット>
図1は、産業ロボット100の概略構成図である。
図1に示すように、産業ロボット100は、走行レール101と、走行レール101上に移動自在に設けられたベースユニット(請求項の相手部材の一例)102と、ベースユニット102上に設けられたロボット本体103と、を備える。ベースユニット102やロボット本体103の各アーム(請求項の相手部材の一例)115a~115dの関節部111,112a~112eには、それぞれ減速機付きモータ106,113a~113fが設けられている。
【0022】
各減速機付きモータ106,113a~113fは、同様の構成である。各減速機付きモータ106,113a~113fのうち、ベースユニット102に設けられた減速機付きモータ106を例に説明すると、この減速機付きモータ106は、波動歯車装置1と、波動歯車装置1に動力を付与する電動モータ(請求項の動力発生部の一例)110と、を備える。
【0023】
図1では、その他の減速機付きモータ113a~113fの図示を簡略化するとともに、波動歯車装置及び電動モータの符号を省略する。以下の説明では、ベースユニット102の減速機付きモータ106のみについて説明し、他の減速機付きモータ113a~113fの説明を省略する。
産業ロボット100は、各減速機付きモータ106,113a~113fを駆動することにより、走行レール101上をロボット本体103が走行したり、各アーム115a~115dがさまざまな姿勢をとったりする。
【0024】
<波動歯車装置>
次に、図2に基づいて、波動歯車装置1について説明する。
図2は、波動歯車装置1の回転軸線Cに沿う断面図である。図2では、回転軸線Cを中心に下半分の図示を省略している。以下の説明では、回転軸線C方向を単に軸方向、回転軸線C回りを周方向、軸方向及び周方向に直交する波動歯車装置1の径方向を単に径方向と称して説明する。以下の説明では、ベースユニット102上に減速機付きモータ106を固定した状態で上方向、下方向をいうものとする。
【0025】
図2に示すように、波動歯車装置1は、ハウジング2と、ハウジング2に固定された内歯歯車3及び第1軸受(請求項の軸受の一例)4と、内歯歯車3の径方向内側に設けられた外歯歯車5と、外歯歯車5の径方向内側に設けられた波動発生器6と、外歯歯車5に第1軸受4とともに固定された出力プレート(請求項の出力部の一例)7と、電動モータ110のモータシャフト110aに連結され、波動発生器6に回転力を付与する減速機シャフト8と、を備える。減速機シャフト8の上端(図2における右側)に、電動モータ110のモータシャフト110aが連結される。減速機シャフト8の下端(図2における左側)に、出力プレート7が配置される。
【0026】
<ハウジング>
ハウジング2は、ベースユニット102に図示しないボルトによって固定されている。
ハウジング2には、段付き貫通孔9が形成されている。段付き貫通孔9に、減速機シャフト8が挿入されている。
段付き貫通孔9は、上部(電動モータ110側)に形成された小径孔9aと、小径孔9aよりも下部(電動モータ110とは反対側)に形成された大径孔9bと、を有する。大径孔9bは、段差部9cを介して小径孔9aに連なっている。大径孔9bの内径は、小径孔9aよりも大きい。
【0027】
小径孔9aには、ハウジング2と減速機シャフト8との間のシール性を確保するシール部材10が取り付けられている。
大径孔9bには、第2軸受11が嵌め合わされている。第2軸受11は、ハウジング2に減速機シャフト8の上端を回転自在に支持する。第2軸受11としては、例えば深溝玉軸受が用いられる。
【0028】
ハウジング2の下面2aには、径方向中央の大部分に凹部12が形成されている。凹部12に、内歯歯車3が収納される。凹部12の底面12aには、外周部に、軸方向に貫通する複数の貫通孔2bが形成されている。複数の貫通孔2bは、内歯歯車3及び第1軸受4とともにベースユニット102にハウジング2を図示しないボルトで固定するためのものである。
【0029】
<内歯歯車>
内歯歯車3は、剛体により円環状に形成されている。内歯歯車3の軸心は、回転軸線Cと一致している。内歯歯車3には、ハウジング2の貫通孔2bと同軸上に、それぞれ軸方向に貫通する貫通孔3fが形成されている。これら貫通孔3fは、それぞれハウジング2の対応する貫通孔2bに通じている。
内歯歯車3の内周面には、全周に渡って内歯3bが形成されている。この内歯3bに、外歯歯車5の後述する外歯5aが噛合わされる。内歯歯車3の下面3cには、第1軸受4が図示しないボルトで固定されている。
【0030】
<第1軸受>
図3は、第1軸受4を下方からみた斜視図である。図3では、説明を分かりやすくするために外輪16を破断している。図4は、図3のIV-IV線に沿う断面図である。
図2から図4に示すように、第1軸受4は、いわゆるクロスローラ軸受である。すなわち、第1軸受4は、外輪16と、内輪17と、外輪16と内輪17との間に配置される複数の転動体である複数の円筒ころ18と、を備える。
【0031】
内輪17の上面17aには、内歯歯車3の貫通孔3fと同軸上に、それぞれ雌ネジ部17bが形成されている。これら雌ネジ部17bは、それぞれ内歯歯車3の対応する貫通孔3fに通じている。ハウジング2の各貫通孔2bに上方から挿入された図示しないボルトは、内歯歯車3の貫通孔3fを介して内輪17の雌ネジ部17bに締め付けられる。これにより、図示しないボルトによって、ハウジング2、内歯歯車3、及び第1軸受4の内輪17が一体となってベースユニット102に固定される。
【0032】
内輪17の外周面には、円筒ころ18を配置するための内輪軌道面41が形成されている。内輪軌道面41は、V溝状に形成されている。V溝状とは、内輪17(外輪16)の軸方向中央に向かうに従って漸次溝深さが深くなるように、周方向からみてV状に形成された溝である。内輪軌道面41の最も溝深さが深い頂部41aには、逃げ溝42が形成されている。また、内輪17の下面(請求項の軸方向側面の一例)17cの一部には、挿入溝43が形成されている。挿入溝43は、外輪16と内輪17との間に円筒ころ18を挿入するためのものである。
【0033】
挿入溝43は、周方向からみて内輪17の下面17cから内輪軌道面41の頂部41aに至る間に形成されている。挿入溝43は、周方向両側に形成された2つ平坦な内側面43aと、頂部41aを通る径方向と平行な平面上に位置する平坦な底面43bと、を有する。挿入溝43の周方向の幅W(2つの内側面43a間の幅W)は、円筒ころ18の直径よりもやや大きい程度である。底面43bには、後述のボルト47が締め付けられる雌ネジ部44が形成されている。
【0034】
挿入溝43には、この挿入溝43を封鎖する封鎖栓(栓本体)45が設けられている。封鎖栓45は、挿入溝43の形状に対応するように直方体状に形成されている。封鎖栓45の大きさは、挿入溝43の大きさよりも若干小さい。すなわち、封鎖栓45は、挿入溝43を封鎖した状態で挿入溝43の内側面43aに重なる外側面45aと、挿入溝43の底面43bに重なる合わせ面45bと、を有する。この他、封鎖栓45は、内輪17の下面17cの一部を構成する封鎖下面45cと、内輪軌道面41の一部を構成する封鎖軌道面45dと、を有する。封鎖栓45によって挿入溝43を封鎖した状態では、封鎖下面45cは、内輪17の下面17cと同一平面上に位置する。封鎖栓45によって挿入溝43を封鎖した状態では、封鎖軌道面45dは、内輪軌道面41と同一平面上に位置する。
【0035】
封鎖栓45には、挿入溝43の底面43bに形成された雌ネジ部44と同軸上に、ボルト挿入孔46が形成されている。このボルト挿入孔46にボルト47が挿入され、雌ネジ部44にボルト47が締め付けられることにより、挿入溝43に封鎖栓45が固定される。ボルト挿入孔46には、封鎖下面45c側に座繰り部46aが形成されている、座繰り部46aに、ボルト47の頭部47aが収納される。
ボルト47としては、例えば六角穴付きボルトが用いられる。このため、封鎖栓45の座繰り部46aの内径は、ボルト47の頭部47aの外径よりも若干大きい程度である。
【0036】
ここで、封鎖栓45の合わせ面45bのうち、ボルト挿入孔46から内輪軌道面41に至る間の最短長さをLaとし、ボルト挿入孔46から内輪軌道面41とは径方向で反対側の内周面に至る間の最短長さをLbとしたとき、最短長さLa,Lbは、
La/Lb>0.65 ・・・(1)
を満たす。内輪軌道面41の頂部41aには、逃げ溝42が形成されているので、上記最短長さLaとは、逃げ溝42を除いた長さになる。
【0037】
また、ボルト47の頭部47aを軸方向からみて封鎖栓45の合わせ面45b上に投影させた場合、合わせ面45b内にボルト47の頭部47aが収まっている(図4における破線参照)。換言すれば、ボルト47の頭部47aのうち、径方向の最外側の位置は、軸方向からみて上記最短長さLaに対応する箇所よりも径方向外側に位置していない。ボルト47の頭部47aのうち、径方向の最内側の位置は、軸方向からみて上記最短長さLbに対応する箇所よりも径方向内側に位置していない。
【0038】
図5は、ボルト47によって挿入溝43に封鎖栓45を固定した際、上記式(1)を満たす場合と満たさない場合とで封鎖栓45の合わせ面45bと挿入溝43の底面43bとの間の密接度合いを比較した図である。図5(a)は、上記式(1)を満たす場合を示す。図5(b)は、上記式(1)を満たさない場合を示す。図5(a)、図5(b)では、密接度合いを濃淡で示している。濃い箇所ほど密接していることを示す。
【0039】
図5(a)、図5(b)に示すように、上記式(1)を満たす場合、上記式(1)を満たさない場合と比較して挿入溝43の底面43bに封鎖栓45の合わせ面45bが全体的に密接されていることが確認できる。とりわけ、上記式(1)を満たさない場合、上記最短長さLaに対応する領域に隙間が生じることが確認できる(図5(b)参照)。
【0040】
図2図3に戻り、第1軸受4の外輪16には、外周部に軸方向に貫通する複数の貫通孔16aが形成されている。複数の貫通孔16aは、第1軸受4の外輪16、外歯歯車5、及び出力プレート7を図示しないボルトによって一体に固定するためのものである。
外輪16の上面16bには、内周部に、シール収納凹部19が形成されている。シール収納凹部19に、シール部材20が設けられている。シール部材20は、第1軸受4の上側で、外輪16と内輪17との間をシールする。シール部材20としては、例えばゴム製のオイルシール等、さまざまなシール部材を用いることができる。
【0041】
外輪16の内周面には、円筒ころ18を配置するための外輪軌道面48が形成されている。外輪軌道面48は、V溝状に形成されている。外輪軌道面48の最も溝深さが深い頂部48aには、逃げ溝49が形成されている。
【0042】
外輪16と内輪17との間に配置される複数の円筒ころ18は、外輪軌道面48と内輪軌道面41との間に配置されているともいえる。円筒ころ18は、外輪軌道面48と内輪軌道面41との間に、傾斜角度が周方向に交互に変わるように配置されている。したがって、円筒ころ18の外周縁18aは、外輪軌道面48の頂部48aや内輪軌道面41の頂部41aに位置する。これら頂部48a,41aには、それぞれ逃げ溝42,49が形成されているので、各軌道面48,41に円筒ころ18の外周縁18aが干渉してしまうことがない。
【0043】
このような構成のもと、第1軸受4を組み立てるには、まず内輪34の封鎖栓45を取り外す。そして、挿入溝43を介し、外輪16と内輪17との間に(外輪軌道面48と内輪軌道面41との間に)円筒ころ18を挿入する。
全ての円筒ころ18を挿入した後、封鎖栓45によって挿入溝43を封鎖する。この後、ボルト47によって挿入溝43に封鎖栓45を固定する。これにより、第1軸受4の組み立てが完了する。
【0044】
ここで、ボルト47の頭部47aを軸方向からみて封鎖栓45の合わせ面45b上に投影させた場合、合わせ面45b内にボルト47の頭部47aが収まっている(図4における破線参照)。このため、ボルト47の頭部47aによって押される封鎖栓45の荷重は、挿入溝43の底面43bで確実に受けられる。すなわち、例えばボルト47の頭部47aのうち、径方向の最外側の位置が、軸方向からみて上記最短長さLaに対応する箇所よりも径方向外側に位置しているとする。このような場合、封鎖栓45の径方向外側に、頂部41aを支点として底面43b側に倒れ込むような荷重がかかってしまう(図4における矢印Y1参照)。このような場合、挿入溝43の底面43bに対する封鎖栓45の合わせ面45bの密接度合いが低下してしまう。本実施形態ではこのようなことがなく、挿入溝43の底面43bに封鎖栓45の合わせ面45bが全体的に密接される。
【0045】
<外歯歯車>
図2に示すように、外歯歯車5は、弾性を有する部材により形成されている。例えば、外歯歯車5は、薄肉の金属板等により形成される。外歯歯車5は、内歯歯車3と同心円状の円筒部21と、円筒部21の下端から径方向外側に屈曲して張り出す外フランジ部(請求項の延出部の一例)22と、を有する。円筒部21は、内歯歯車3の上面3aから第1軸受4の外輪16の下面16cに至る間に延びている。円筒部21の外周面には、径方向で内歯歯車3の内歯3bと対向する位置に、外歯5aが形成されている。外歯5aが、内歯歯車3の内歯3bに噛合わされる。外歯5aの歯数は、内歯3bの歯数よりも少ない。例えば、外歯5aの歯数は、内歯3bの歯数よりも2つ少ない。
【0046】
外フランジ部22は、円筒部21の下端から第1軸受4の外輪16の外周面に至る間に延びている。外フランジ部22の外周部は、外輪16の下面16cと軸方向で重なっている。外フランジ部22の外周部には、軸方向で外輪16と重なる箇所に、他の箇所よりも肉厚の厚い厚肉部22aが形成されている。厚肉部22aには、外輪16の貫通孔16aと同軸上に、貫通孔22bが形成されている。これら貫通孔22bは、それぞれ外輪16の対応する貫通孔16aに通じている。
【0047】
<出力プレート>
出力プレート7は、外フランジ部22の厚肉部22aに軸方向で重なるように配置されている。出力プレート7は、円板状に形成されている。出力プレート7の下面7aに、例えば減速機付きモータ106の動力をベースユニット102に伝達するためのピニオンギア107が取り付けられる。
【0048】
出力プレート7の外周部で、第1軸受4側に向かって突き出す嵌合円筒部23よりも径方向内側には、厚肉部22aの貫通孔22bと同軸上に、貫通孔7bが形成されている。これら貫通孔7bは、それぞれ厚肉部22aの対応する貫通孔22bに通じている。このような構成のもと、例えば外輪16の上方から貫通孔16a、厚肉部22aの貫通孔22b、及び出力プレート7の貫通孔7bの順に図示しないボルトを挿入し、ピニオンギア107に形成されている図示しない雌ネジ部にボルトを締め付ける。これにより、図示しないボルトによって、第1軸受4の外輪16、外歯歯車5、及び出力プレート7が一体となってピニオンギア107に固定される。
【0049】
出力プレート7の径方向中央には、軸方向に貫通するシャフト挿入孔24が形成されている。シャフト挿入孔24に、減速機シャフト8が挿入されている。出力プレート7のシャフト挿入孔24には、出力プレート7と減速機シャフト8との間のシール性を確保するシール部材26が取り付けられている。
出力プレート7のシャフト挿入孔24には、第3軸受28の外周面が嵌め合わされている。第3軸受28は、出力プレート7に減速機シャフト8の下端を回転自在に支持する。第3軸受28としては、例えば深溝玉軸受が用いられる。
【0050】
<減速機シャフト>
両端を2つの軸受11,28によって回転自在に支持された減速機シャフト8は、中空状に形成されている。減速機シャフト8の外周面は、段付き状に形成されている。
【0051】
<波動発生器>
波動発生器6は、径方向で減速機シャフト8のシャフト本体外周面8aと外歯歯車5の外歯5aとの間に設けられている。波動発生器6は、シャフト本体外周面8aに一体成形されているカム31と、カム31の外周面31aと外歯歯車5の円筒部21の内周面21aとの間に配置される第4軸受32と、を備える。
カム31は、シャフト本体外周面8aから径方向外側に向かって張り出すように形成されている。カム31の外周面31aは、軸方向からみて楕円形状に形成されている。第4軸受32としては、例えば深溝玉軸受が用いられる。
【0052】
<波動歯車装置の動作>
次に、減速機付きモータ106の波動歯車装置1の動作について説明する。なお、ロボット本体103に設けられた他の減速機付きモータ113a~113fの波動歯車装置についてもベースユニット102に設けられた減速機付きモータ106の波動歯車装置1の動作と同様である。
【0053】
まず、波動発生器6のカム31の外周面31aが軸方向からみて楕円形状に形成されているので、第4軸受32を介して外歯歯車5が弾性変形されて外歯5aと内歯歯車3の内歯3bが部分的に噛み合わされる。この状態で、電動モータ110を駆動させることによりモータシャフト110aが回転されると、このモータシャフト110aと一体となって減速機シャフト8が回転される。さらに、減速機シャフト8と一体となってカム31が回転される。すなわち、波動発生器6のカム31は、電動モータ110のモータシャフト110aの回転力が入力される入力部として機能している。
【0054】
外歯5aと内歯3bとは、互いに歯数が異なるため、互いの噛み合い位置が周方向に移動しながら、これらの歯数差に起因して回転軸線C回りに相対的に回転する。本実施形態では、外歯5aの歯数が内歯3bの歯数よりも少ないので、減速機シャフト8よりも低い回転速度で外歯歯車5が回転される。外歯歯車5は、弾性変形しながら回転される。
【0055】
外歯歯車5の外フランジ部22は、第1軸受4の外輪16及び出力プレート7と一体化されているので、これら第1軸受4の外輪16及び出力プレート7がモータシャフト110a(減速機シャフト8)の回転に対して減速されて出力される。すなわち、外歯歯車5は、入力部であるカム31の回転を減速して出力する出力部として機能している。第1軸受4は、外歯歯車5から延びる外フランジ部22を、内歯歯車3に対して回転自在に支持している。
【0056】
出力プレート7の回転によって、ピニオンギア107が回転される。すると、走行レール101に沿ってベースユニット102がスライド移動される(図1参照)。
ところで、第1軸受4では、内輪17に対して外輪16が回転すると、これに伴って円筒ころ18が転動される。すると、内輪17の封鎖栓45に円筒ころ18を介して荷重が繰り返し加わる。
【0057】
ここで、封鎖栓45の合わせ面45bのうち、ボルト挿入孔46から内輪軌道面41に至る間の最短長さLa、及びボルト挿入孔46から内輪軌道面41の内周面に至る間の最短長さLbは、上記式(1)を満たす。このため、挿入溝43の底面43bに封鎖栓45の合わせ面45bが全体的に密接されている(図5(a)参照)。この結果、円筒ころ18によって封鎖栓45に繰り返し荷重が加わった場合でも封鎖栓45がガタついてしまうことを極力抑制できる。この封鎖栓45のガタつきに起因するボルト47の緩みも防止できる。
【0058】
また、第1軸受4はいわゆるクロスローラ軸受である。円筒ころ18は、傾斜角度が周方向に交互に変わるように配置されている。このため、内輪軌道面41では、円筒ころ18の向きによって下側の軌道面(傾斜面、封鎖栓45側の軌道面)に大きな荷重がかかる箇所と上側の軌道面(傾斜面、封鎖栓45とは反対側の軌道面)に大きな荷重がかかる箇所とがある。これらの荷重に加え、ボルト47による軸力の荷重を考慮して上記式(1)を導き出している。
【0059】
したがって、上述の第1軸受4によれば、内輪17に形成された挿入溝43の底面43bに、封鎖栓45の合わせ面45bをできる限り密接させることができる。このため、第1軸受4を使用する際の封鎖栓45のガタつきをできる限り抑制することができ、ボルト47の緩みもできる限り抑制できる。よって、第1軸受4を継続して安定動作させることができる。
【0060】
第1軸受4では、ボルト47の頭部47aを軸方向からみて封鎖栓45の合わせ面45b上に投影させた場合、合わせ面45b内にボルト47の頭部47aが収まっている(図4における破線参照)。このため、ボルト47の頭部47aによって押される封鎖栓45の荷重を、挿入溝43の底面43bで確実に受けることができる。この結果、封鎖栓45の合わせ面45bの一部が挿入溝43の底面43bから外れて押されることが無い。したがって、挿入溝43に対して封鎖栓45が斜めに傾いてしまうことを防止できる。よって、ボルト47によって挿入溝43に封鎖栓45を確実に固定できる。
【0061】
挿入溝43は、挿入溝43は、周方向両側に形成された2つ平坦な内側面43aと、頂部41aを通る径方向と平行な平面上に位置する平坦な底面43bと、を有する。封鎖栓45は、挿入溝43を封鎖した状態で挿入溝43の内側面43aに重なる外側面45aと、挿入溝43の底面43bに重なる合わせ面45bと、を有する。このため、挿入溝43の底面43bと封鎖栓45の合わせ面45bとを確実に面接触させることができる。挿入溝43の内側面43aと封鎖栓45の外側面45aとを確実に面接触させることができる。このように、挿入溝43に挿入された封鎖栓45を各平坦な面で安定して押さえることができる。よって、封鎖栓45のガタつきを確実に抑制できる。
【0062】
また、このような構成は、いわゆるクロスローラ軸受である第1軸受4に好適に用いることができる。
波動歯車装置1に第1軸受4を用いることにより、波動歯車装置1を継続して安定動作させることができる。
また、このような波動歯車装置1を用いた産業ロボット100は、継続して安定動作できる。
【0063】
本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
【0064】
例えば、上述の実施形態では、産業ロボット100に、波動歯車装置1を備えた減速機付きモータ106,113a~113fを用いた場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、産業ロボット100以外のさまざまな産業ロボットの駆動部に、波動歯車装置1を採用できる。ここでいう産業ロボットとしては、例えば電動車いす、走行装置、複合加工機等のさまざまな加工機等を含む。
【0065】
上述の実施形態では、入力部としてのカム31に回転力を発生させる動力発生部として、電動モータ110を用いた場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、動力発生部としてカム31に回転力を発生させるものであればよい。例えば、電動モータ110に代わって、油圧モータ、エンジン等を採用することができる。
【0066】
上述の実施形態では、減速機として波動歯車装置に第1軸受4を用いた場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、第1軸受4は、トロコイド減速機、遊星歯車減速機、偏心揺動型の減速機等、さまざまな減速機の出力部を回転自在に支持する軸受に用いることができる。
【0067】
上述の実施形態では、第1軸受4の内輪17には、下面17cに挿入溝43が形成されている場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、内輪17の上面17aに挿入溝43が形成されていてもよい。外輪16の上面16bや下面16cに挿入溝43が形成されていてもよい。外輪16に挿入溝43を形成する場合、封鎖栓45のボルト挿入孔46から外輪軌道面48に至る間の最短長さをLaとし、ボルト挿入孔46から外輪軌道面48とは径方向で反対側の外周面に至る間の最短長さをLbとする。
【0068】
上述の実施形態では、挿入溝43は、周方向両側に形成された2つ平坦な内側面43aと、頂部41aを通る径方向と平行な平面上に位置する平坦な底面43bと、を有する場合について説明した。封鎖栓45は、挿入溝43を封鎖した状態で挿入溝43の内側面43aに重なる外側面45aと、挿入溝43の底面43bに重なる合わせ面45bと、を有する場合について説明した。しかしながら、挿入溝43や封鎖栓45の形状はこれに限られるものではない。挿入溝43は、外輪16と内輪17との間に転動体を挿入できる溝形状であればよい。封鎖栓45は、挿入溝43を封鎖するとともに内輪軌道面41(外輪軌道面48)の一部が形成されていればよい。
【0069】
上述の実施形態では、第1軸受4は、いわゆるクロスローラ軸受である場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、他の転がり軸受にも第1軸受4の挿入溝43及び封鎖栓45の構成を採用することが可能である。
【0070】
上述の実施形態では、第1軸受4は、外歯歯車5から延びる延出部としての外フランジ部22を、内歯歯車3に対して回転自在に支持する場合について説明した。外フランジ部22は、外歯歯車5の円筒部21の下端から第1軸受4の外輪16の外周面に至る間に延びている場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、延出部は、外歯歯車5から延びていればよい。例えば延出部は、円筒部21の下端からそのまま軸方向に延びたように円筒形状でもよい。波動歯車装置1では、第1軸受4は、内歯歯車3に対して延出部を回転自在に支持すればよい。
【0071】
上述の実施形態では、図示しないボルトによって、ハウジング2、内歯歯車3、及び第1軸受4の内輪17が一体となってベースユニット102に固定される場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、内歯歯車3、及び第1軸受4の内輪17の固定方法は、さまざまな方法を採用できる。例えば、内歯歯車3と第1軸受4の内輪17を予め固定してもよい。ハウジング2、内歯歯車3、及び第1軸受4の内輪17を予め固定し、相手部材(例えばベースユニット102等)に固定してもよい。
【0072】
本明細書で開示した実施形態のうち、複数の物体で構成されているものは、当該複数の物体を一体化してもよく、逆に一つの物体で構成されているものを複数の物体に分けることができる。一体化されているか否かにかかわらず、発明の目的を達成できるように構成されていればよい。
【符号の説明】
【0073】
1…波動歯車装置、3…内歯歯車(変速部)、4…第1軸受(軸受)、5…外歯歯車(出力部、入力部)、6…波動発生器(変速部)、7…出力プレート(出力部)、8…減速機シャフト(出力部、入力部)、16…外輪、16b…上面(軸方向側面)、16c…下面(軸方向側面)、17…内輪、17a…上面(軸方向側面)、17c…下面(軸方向側面)、18…円筒ころ(転動体)、22…外フランジ部(延出部)、31…カム(出力部、入力部)、41…内輪軌道面、43…挿入溝、43b…底面、45…封鎖栓(栓本体)、45b…合わせ面、46…ボルト挿入孔、47…ボルト、47a…頭部、48…外輪軌道面、100…産業ロボット、102…ベースユニット(相手部材)、110…電動モータ(動力発生部)、115a…第1アーム(相手部材)、115b…第2アーム(相手部材)、115c…第3アーム(相手部材)、115d…第4アーム(相手部材)、C…回転軸線
図1
図2
図3
図4
図5