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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048700
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】支保材交差部の固定構造
(51)【国際特許分類】
   E04G 17/00 20060101AFI20240402BHJP
【FI】
E04G17/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154765
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】川上 浩史
(72)【発明者】
【氏名】南野 貴洋
(72)【発明者】
【氏名】市岡 大幸
【テーマコード(参考)】
2E150
【Fターム(参考)】
2E150BA18
2E150BA32
2E150BA67
2E150BA72
2E150CA01
2E150GA03
2E150GA05
2E150GA22
2E150GB01
2E150MA02Z
(57)【要約】
【課題】施工者の技量によらず、支保材交差部を固定して、せき板の変形を抑制することが可能な支保材交差部の固定構造を提供する。
【解決手段】支保材交差部の固定構造100は、複数のせき板2A,2Bが交差する隅角部において、第1方向に延在してせき板を支持する第1支保材10と、第1支保材の上に配置され、第2方向に延在してせき板を支持する第2支保材20とが交差する、支保材交差部の固定構造であって、第2方向に第1支保材と隣り合って配置され、第1方向に延在する第1部材51と、第1部材の上に配置され、第1方向に第2支保材と隣り合って配置され、第2方向に延在し、第1部材に対して固定された第2部材52と、第1支保材を、第1部材及び第2部材の少なくとも一方に固定する第1固定部材61と、第2支保材を、第1部材及び第2部材の少なくとも一方に固定する第2固定部材62と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向と第2方向に延在する複数のせき板が交差する隅角部において、前記第1方向に延在して前記せき板を支持する長尺状の第1支保材と、前記第1支保材の上に配置され、前記第2方向に延在して前記せき板を支持する長尺状の第2支保材とが交差する、支保材交差部の固定構造であって、
前記第2方向において前記第1支保材と隣り合って配置され、前記第1方向に延在する第1部材と、
前記第1部材の上に配置され、前記第1方向において前記第2支保材と隣り合って配置され、前記第2方向に延在し、前記第1部材に対して固定された第2部材と、
前記第1支保材を、前記第1部材及び前記第2部材の少なくとも一方に固定する第1固定部材と、
前記第2支保材を、前記第1部材及び前記第2部材の少なくとも一方に固定する第2固定部材と、を備えることを特徴とする支保材交差部の固定構造。
【請求項2】
前記隅角部は、出隅部であり、
前記第1固定部材は、前記第1支保材の先端部と前記第2部材とを上下方向で固定し、
前記第2固定部材は、前記第2支保材の先端部と前記第1部材とを上下方向で固定することを特徴とする請求項1に記載の支保材交差部の固定構造。
【請求項3】
前記隅角部は、出隅部であり、
前記第1固定部材は、前記第1支保材の先端部と前記第1部材とを前記第2方向で固定し、
前記第2固定部材は、前記第2支保材の先端部と前記第2部材とを前記第1方向で固定することを特徴とする請求項1に記載の支保材交差部の固定構造。
【請求項4】
前記隅角部は、入隅部であり、
前記第1固定部材は、前記第1支保材と前記第2部材とを上下方向で固定し、
前記第2固定部材は、前記第2支保材と前記第1部材とを上下方向で固定することを特徴とする請求項1に記載の支保材交差部の固定構造。
【請求項5】
前記第1部材及び前記第2部材は、角パイプ又は形鋼材であり、
前記第1部材及び前記第2部材は、平面視において十字状を成していることを特徴とする請求項1に記載の支保材交差部の固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支保材交差部の固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建物の基礎を施工する際にコンクリートを打設する場合には、コンクリートが打設される空間を取り囲むように、せき板が配置される。せき板は、角パイプなどの支保材によって支持される。出隅部や入隅部などの隅角部では、支保材が互いに交差するように配置される。隅角部において交差する支保材同士は、固定具を用いて固定される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-62224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来から、支保材を固定する方法として、各種の方法が知られている。例えば、しゃこ万力を用いて、支保材同士を固定する方法がある。この方法では、しゃこ万力を用いて上下方向に複数の支保材を挟むことにより、支保材を固定することができる。しゃこ万力を用いた固定方法では、土圧やコンクリート圧がせき板に作用することにより、せき板から支保材に力が伝達されると、しゃこ万力によって固定した点を中心として、支保材が回転移動して、せき板が外側へ膨らむように移動するおそれがある。
【0005】
他の方法としては、専用のクランプを用いて、支保材同士を固定する方法がある。専用のクランプを用いた場合には、専用のクランプとせき板とが干渉することにより、せき板と支保材との間に隙間が生じることになる。せき板と支保材との間に隙間が生じると、この隙間に張り出すようにせき板が変形しやすく、コンクリートの施工に誤差が生じることとになる。
【0006】
また他の方法としては、番線を用いて支保材同士を固定する方法がある。番線を用いた場合には、施工者による技量によってばらつきが生じてしまい、技量が低い施工者が施工した場合には、支保材が強固に固定されず、せき板がずれてしまうおそれがある。
【0007】
本発明は、施工者の技量のばらつきによらず、交差する支保材を固定して、せき板の変形を抑制することが可能な支保材交差部の固定構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成すべく、本発明による支保材交差部の固定構造の一態様は、
第1方向と第2方向に延在する複数のせき板が交差する隅角部において、前記第1方向に延在して前記せき板を支持する長尺状の第1支保材と、前記第1支保材の上に配置され、前記第2方向に延在して前記せき板を支持する長尺状の第2支保材とが交差する、支保材交差部の固定構造であって、
前記第2方向において前記第1支保材と隣り合って配置され、前記第1方向に延在する第1部材と、
前記第1部材の上に配置され、前記第1方向において前記第2支保材と隣り合って配置され、前記第2方向に延在し、前記第1部材に対して固定された第2部材と、
前記第1支保材を、前記第1部材及び前記第2部材の少なくとも一方に固定する第1固定部材と、
前記第2支保材を、前記第1部材及び前記第2部材の少なくとも一方に固定する第2固定部材と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本態様によれば、第1方向に延在する第1部材を、第2方向において第1支保材と隣り合うように配置することにより、第2方向において第1支保材に作用する力を第1部材で受けることができる。第1部材からの反力によって、第1支保材を支持することができる。第1部材が受けた力は、第2部材を介して第2支保材からの反力によって受けることができる。また、第2方向に延在する第2部材を、第1方向において第2支保材と隣り合うように配置することにより、第1方向において第2支保材に作用する力を第2部材で受けることができる。第2部材からの反力によって、第2支保材を支持することができる。第2部材が受けた力は、第1部材を介して第1支保材からの反力によって受けることができる。本態様では、第1支保材及び第2支保材とせき板との間に隙間が形成されないように、支保材交差部を強固に固定することができることにより、せき板の変形を抑制することができる。また、本態様では、第1部材と第2部材とが固定されていることにより、一体化された第1部材及び第2部材を容易に配置することができる。本態様では、施工者の技量のばらつきによらず、支保材交差部を強固に固定することができる。
【0010】
また、本発明の他の態様において、
前記隅角部は、出隅部であり、
前記第1固定部材は、前記第1支保材の先端部と前記第2部材とを上下方向で固定し、
前記第2固定部材は、前記第2支保材の先端部と前記第1部材とを上下方向で固定することを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、出隅部において、第1支保材に作用する力を第2支保材の先端部に固定された第1部材で受けることができる。また、本態様では、出隅部において、第2支保材に作用する力を第1支保材の先端部に固定された第2部材で受けることができる。
【0012】
また、本発明の他の態様において、
前記隅角部は、出隅部であり、
前記第1固定部材は、前記第1支保材の先端部と前記第1部材とを前記第2方向で固定し、
前記第2固定部材は、前記第2支保材の先端部と前記第2部材とを前記第1方向で固定することを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、出隅部において、第1支保材に作用する力を第1部材によって受けることができ、第1部材に作用する力を、第2部材を介して、第2支保材で受けることができる。また、本態様では、出隅部において、第2支保材に作用する力を第2部材によって受けることができ、第2部材に作用する力を、第1部材を介して、第1支保材で受けることができる。
【0014】
また、本発明の他の態様において、
前記隅角部は、入隅部であり、
前記第1固定部材は、前記第1支保材と前記第2部材とを上下方向で固定し、
前記第2固定部材は、前記第2支保材と前記第1部材とを上下方向で固定することを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、入隅部において、第1支保材に作用する力を第1部材によって受けることができ、第1部材に作用する力を、第2部材を介して、第2支保材で受けることができる。また、本態様では、入隅部において、第2支保材に作用する力を第2部材によって受けることができ、第2部材に作用する力を、第1部材を介して、第1支保材で受けることができる。
【0016】
また、本発明の他の態様において、
前記第1部材及び前記第2部材は、角パイプ又は形鋼材であり、
前記第1部材及び前記第2部材は、平面視において十字状を成していることを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、第1部材及び第2部材が十字状を成すように交差する構成となり、簡素な構成とすることができる。第1支保材に対して第1部材の側面を当接させ、第2支保材に対して第2部材の側面を当接させるように、第1部材及び第2部材を配置することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上の説明から理解できるように、施工者の技量のばらつきによらず、交差する支保材を固定して、せき板の変形を抑制することが可能な支保材交差部の固定構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】出隅部において、複数のせき板を支持する支保材交差部を示す平面図である。
図2】支保材交差部を固定する固定具を示す斜視図である。
図3】第1実施形態に係る支保材交差部の固定構造を示す平面図である。
図4】第2実施形態に係る支保材交差部の固定構造を示す平面図である。
図5】入隅部において、複数のせき板を支持する支保材交差部を示す平面図である。
図6】第3実施形態に係る支保材交差部の固定構造を示す平面図である。
図7】第1変形例に係る固定具を示す斜視図である。
図8】第2変形例に係る固定具を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、実施形態に係る支保材交差部の固定構造について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0021】
[第1実施形態に係る支保材交差部の固定構造]
はじめに、図1乃至図3を参照して、第1実施形態に係る支保材交差部の固定構造の一例について説明する。ここで、図1は、出隅部において、複数のせき板を支持する支保材交差部を示す平面図である。図2は、支保材交差部を固定する固定具を示す斜視図である。図3は、第1実施形態に係る支保材交差部の固定構造を示す平面図である。
【0022】
また、各図において、互いに直交する3方向として、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向を示す矢印を適宜図示する場合がある。X軸方向及びY軸方向は、水平方向に沿う。X軸方向は、第1方向の一例であり、Y軸方向は、第1方向に交差する第2方向の一例である。Z軸方向は、鉛直方向に沿う。
【0023】
図1に示される出隅部101には、土間コンクリート及びベースコンクリートが施工される。出隅部101は、隅角部の一例である。コンクリートを打設する際に、複数のせき板2A,2Bが配置される。複数のせき板2Aは、X軸方向に沿って配置され、複数のせき板2Bは、Y軸方向に沿って配置されている。複数のせき板2Aは、X軸方向に延在する第1支保材10によって支持されている。複数のせき板2Bは、Y軸方向に延在する第2支保材20によって支持されている。せき板2A,2Bは、互いに交差するように配置されている。
【0024】
第1支保材10及び第2支保材20は、長尺状の部材であり、例えば角パイプである。第1支保材10及び第2支保材20は、互いに交差する支保材交差部30を形成する。第2支保材20は、第1支保材10の上に配置されている。なお、交差する支保材のうち、下に配置された支保材を第1支保材10とし、上に配置された方を第2支保材20とする。第1支保材10が延在する方向を第1方向とし、第2支保材20が延在する方向を第2方向とする。
【0025】
支保材交差部30は、第1支保材10と第2支保材20との交点を含む。第1支保材10は、本体部11及び先端部12を有する。本体部11は、せき板2Aを支持する部分であり、Y軸方向において、せき板2Aと隣り合うように配置されている。先端部12は、支保材交差部30よりも本体部11とは反対側に張り出す部分である。
【0026】
第2支保材20は、本体部21及び先端部22を有する。本体部21は、せき板2Bを支持する部分であり、X軸方向において、せき板2Bと隣り合うように配置されている。先端部22は、支保材交差部30よりも本体部21とは反対側に張り出す部分である。
【0027】
図2及び図3に示される固定具50は、支保材交差部30を固定するための固定具である。固定具50は、X軸方向に延在する第1部材51と、Y軸方向に延在する第2部材52とを有する。第1部材51及び第2部材52は、例えば角パイプから形成され、互いに交差するように配置され、平面視において十字状を成している。第2部材52は、第1部材51の上に配置され、上下方向に固定されている。第1部材51及び第2部材52は、例えば溶接により一体化されている。第1部材51及び第2部材52は、溶接によって一体化されているものに限定されず、例えばリベットにより接合されていてもよく、その他の方法によって一体化されていてもよい。第1部材51及び第2部材52は、第1支保材10及び第2支保材20と同じ仕様の角パイプから形成されていてもよい。固定具50において、交差する第1部材51及び第2部材52のうち、下に配置されている方を第1部材51とし、上に配置されている方を第2部材52とする。
【0028】
図3に示されるように、支保材交差部の固定構造100は、固定具50と、しゃこ万力61,62とを有する。固定具50の第1部材51は、Y軸方向において、第1支保材10と隣り合って配置され、X軸方向に延在する。第1部材51は、例えば、第1支保材10の先端部12よりも長い。上下方向において、第1支保材10と第1部材51とは同じ位置に配置されている。Y軸方向において、第1部材51の側面は、先端部12の側面と当接している。
【0029】
固定具50の第2部材52は、X軸方向において、第2支保材20と隣り合って配置され、Y軸方向に延在する。第2部材52は、例えば、第2支保材20の先端部22よりも長い。上下方向において、第2支保材20と第2部材52とは同じ位置に配置されている。X軸方向において、第2部材52の側面は、先端部22の側面と当接している。
【0030】
第2部材52の一方の端部52aは、第1支保材10の先端部12の上に載置されている。一方の端部52aは、Y軸方向において第1支保材10に近い方の端部であり、他方の端部52bは、第1支保材10から遠い方の端部である。第1部材51の一方の端部51aは、第2支保材20の先端部22の下に配置されている。一方の端部51aは、X軸方向において第2支保材20に近い方の端部であり、他方の端部51bは、第2支保材20から遠い方の端部である。
【0031】
しゃこ万力61は、第1支保材10の先端部12と第2部材52の一方の端部とを上下方向に挟んで固定する。しゃこ万力62は、第2支保材20の先端部22と第1部材51の一方の端部とを上下方向に挟んで固定する。しゃこ万力61は、第1固定部材の一例であり、しゃこ万力62は、第2固定部材の一例である。
【0032】
第1部材51は、Y軸方向において第1支保材10の先端部12と当接すると共に、上下方向において第2支保材20の先端部22と当接する。第2部材52は、X軸方向において第2支保材20の先端部22と当接する共に、上下方向において第1支保材10の先端部12と当接する。第1部材51及び第2部材52は、互いに固定され一体化されている。
【0033】
(支保材に作用する力の伝達)
次に、Y軸方向に延在する第2支保材20に作用する力の伝達について説明する。せき板2A,2Bによって囲まれた領域内には、内部盛土又はコンクリートが施工される。せき板2A,2Bには、土圧が作用する。せき板2Aは、Y軸方向に土圧を受ける。せき板2Bは、X軸方向に土圧を受ける。
【0034】
第2支保材20は、せき板2BからX軸方向の力を受ける。第2支保材20は、Y軸方向に力を伝達する。第2支保材20の先端部22は、X軸方向に第2部材52と当接している。X軸方向において、第2支保材20に作用する力は、第2部材52で受けることができる。
【0035】
しゃこ万力62によって固定された位置を支点として、第2支保材20が右回りに回転する方向に力が作用する場合、第2支保材20の本体部21がせき板2Bから押される方向に力が作用している。なお、「左」、「右」の位置関係は、図面の位置関係に基づく。このとき、第2支保材20に作用するX軸方向の力は、第2部材52で受けることができる。第2部材52からの反力によって、第2支保材20のX軸方向の移動が拘束される。第2部材52に作用する力は、第1部材51及び第1支保材10に伝達される。
【0036】
第2部材52から第1部材51へ力が伝達されることにより、第1部材51の他方の端部が、平面視において、右回りに回転する方向に力が作用する。第1部材51の一方の端部51aは、Y軸方向において第1支保材10と当接している。第1部材51は、第1支保材10からの反力を受けて、回転移動が抑制される。換言すると、第1部材51に固定された第2部材52の回転移動が抑制される。第2支保材20は、固定具50によって回転移動が抑制される。せき板2Bは、第2支保材20によって支持されて、変形が抑制される。
【0037】
X軸方向に延在する第1支保材10に作用する力の伝達については、第2支保材20に作用する力の伝達と同様であり、説明を省略する。第1支保材10に作用する力の伝達は、第2支保材20に作用する力の伝達と力の向きが異なるだけであり、第1支保材10は、固定具50によって回転移動が抑制される。せき板2Aは、第1支保材10によって支持されて、変形が抑制される。
【0038】
(支保材交差部の固定構造の作用効果)
第1実施形態に係る支保材交差部の固定構造100によれば、X軸方向に延在する第1部材51を、Y軸方向において第1支保材10と隣り合うように配置することにより、Y軸方向において第1支保材10に作用する力を第1部材51で受けることができる。第1部材51からの反力によって、第1支保材10を支持することができる。第1部材51が受けた力は、第2部材52を介して第2支保材20からの反力によって受けることができる。
【0039】
また、支保材交差部の固定構造100によれば、Y軸方向に延在する第2部材52を、X軸方向において第2支保材20と隣り合うように配置することにより、X軸方向において第2支保材20に作用する力を第2部材52で受けることができる。第2部材52からの反力によって、第2支保材20を支持することができる。第2部材52が受けた力は、第1部材51を介して第1支保材10からの反力によって受けることができる。
【0040】
また、支保材交差部の固定構造100では、第1支保材10及び第2支保材20とせき板2A,2Bとの間に隙間が形成されないように、支保材交差部30を強固に固定することができることにより、せき板2A,2Bの変形を抑制することができる。また、支保材交差部の固定構造100では、第1部材51と第2部材52とが固定されていることにより、一体化された固定具50を容易に配置することができる。支保材交差部の固定構造100では、施工者の技量のばらつきによらず、支保材交差部30を強固に固定することができる。
【0041】
また、支保材交差部の固定構造100では、しゃこ万力61は、第1支保材10の先端部12と第2部材52の端部52aとを上下方向で固定し、しゃこ万力62は、第2支保材20の先端部22と第1部材51の端部51aとを上下方向で固定する。この構成の支保材交差部の固定構造100によれば、第1支保材10に作用する力を第2支保材20の先端部22に固定された第1部材51で受けることができる。また、支保材交差部の固定構造100によれば、第2支保材20に作用する力を第1支保材10の先端部12に固定された第2部材52で受けることができる。しゃこ万力61,62を用いることにより、施工者の技量によらず、安定して支保材交差部30を固定することができる。
【0042】
また、支保材交差部の固定構造100では、第1部材51及び第2部材52は、角パイプから形成され、平面視において十字状を成している。この構成では、固定具50を簡素な構成とすることができる。第1支保材10に対して角パイプである第1部材51の側面を当接させ、第2支保材20に対して角パイプである第2部材52の側面を当接させるように、固定具50を配置することができる。第1支保材10、第2支保材20、第1部材51及び第2部材52をそれぞれ各パイプにより構成することにより、互いの接触面積を増やすことができる。
【0043】
[第2実施形態に係る支保材交差部の固定構造]
次に、図4を参照して、第2実施形態に係る支保材交差部の固定構造について説明する。図4は、第2実施形態に係る支保材交差部の固定構造を示す平面図である。第2実施形態に係る支保材交差部の固定構造100Bが、第1実施形態に係る支保材交差部の固定構造100と違う点は、しゃこ万力61B,62Bの配置が異なる点である。なお、第2実施形態の説明において、第1実施形態と同様の説明を省略する。
【0044】
支保材交差部の固定構造100Bは、固定具50及びしゃこ万力61B,62Bを備える。しゃこ万力61Bは、第1支保材10の先端部12と第1部材51の端部51bとをY軸方向に挟んで固定する。しゃこ万力62Bは、第2支保材20の先端部22と第2部材52の端部52bとをX軸方向に挟んで固定する。
【0045】
このような第2実施形態に係る支保材交差部の固定構造100Bにおいても、第1実施形態に係る支保材交差部の固定構造100と同様の作用効果を奏する。支保材交差部の固定構造100Bでは、第1支保材10と第1部材51とをY軸方向に固定することにより、第1支保材10に作用するY軸方向の力を好適に受けることができる。支保材交差部の固定構造100では、第2支保材20と第2部材52とをX軸方向に固定することにより、第2支保材20に作用するX軸方向の力を好適に受けることができる。しゃこ万力61B,62Bによって、支保材と第1部材51又は第2部材52とを挟む方向を、土圧により支保材に作用する力の向きに合わせることができる。
【0046】
[第3実施形態に係る支保材交差部の固定構造]
次に、図5及び図6を参照して、第3実施形態に係る支保材交差部の固定構造について説明する。図5は、入隅部において、複数のせき板を支持する支保材交差部を示す平面図である。図6は、第3実施形態に係る支保材交差部の固定構造を示す平面図である。第3実施形態に係る支保材交差部の固定構造100Cが、第1実施形態に係る支保材交差部の固定構造100と違う点は、入隅部102における支保材交差部30Bを固定する点である。なお、第3実施形態の説明において、第1実施形態と同様の説明は省略する。
【0047】
せき板2A,2Bは、互いに交差するように配置され、入隅部102を構成する。図6に示されるように、支保材交差部の固定構造100Cは、固定具50と、しゃこ万力61C,62Cとを備える。固定具50は、出隅部101で使用したものと同じ構成である。固定具50は、出隅部101及び入隅部102で使用できる。しゃこ万力61Cは、第1支保材10と第2部材52の端部52bとを上下方向に挟んで固定する。しゃこ万力62Cは、第2支保材20と第1部材51とを上下方向に挟んで固定する。
【0048】
第1部材51は、Y軸方向において第1支保材10と当接すると共に、上下方向において第2支保材20と当接する。第2部材52は、X軸方向において第2支保材20と当接する共に、上下方向において第1支保材10と当接する。
【0049】
(支保材に作用する力の伝達)
次に、第2支保材20に作用する力の伝達について説明する。第2支保材20は、せき板2BからX軸方向の力を受ける。第2支保材20は、Y軸方向に力を伝達する。第2支保材20は、X軸方向に第2部材52と当接している。X軸方向において、第2支保材20に作用する力は、第2部材52で受けることができる。
【0050】
しゃこ万力62Cによって固定された位置を支点として、第2支保材20が、左回りに回転する方向に力が作用する場合、第2支保材20がせき板2Bから押される方向に力が作用している。このとき、第2支保材20に作用するX軸方向の力は、第2部材52で受けることができる。第2部材52からの反力によって、第2支保材20のX軸方向の移動が拘束される。第2部材52に作用する力は、第1部材51及び第1支保材10に伝達される。
【0051】
第2部材52から第1部材51へ力が伝達されることにより、第1部材51の端部(第2支保材20から離れた方の端部)が、平面視において、左回り回転する方向に力が作用する。第1部材51は、Y軸方向において第1支保材10と当接している。第1部材51は、第1支保材10からの反力を受けて、回転移動が抑制される。換言すると、第1部材51に固定された第2部材52の回転移動が抑制される。第2支保材20は、固定具50によって回転移動が抑制される。せき板2Bは、第2支保材20によって支持されて、変形が抑制される。
【0052】
このような第3実施形態に係る支保材交差部の固定構造100Cにおいても、支保材交差部30Bを固定することができる。支保材交差部の固定構造100Cでは、入隅部102において、第1支保材10に作用する力を第1部材51によって受けることができ、第1部材51に作用する力を、第2部材52を介して、第2支保材20で受けることができる。また、支保材交差部の固定構造100Cでは、入隅部102において、第2支保材20に作用する力を第2部材52によって受けることができ、第2部材52に作用する力を、第1部材51を介して、第1支保材10で受けることができる。
【0053】
[第1変形例]
次に、図7を参照して、第1変形例に係る固定具50Bについて説明する。図7は、第1変形例に係る固定具を示す斜視図である。固定具50Bは、溝形鋼(形鋼材)からなる第1部材51B及び第2部材52Bを有する。支保材交差部の固定構造100,100B,100Cは、固定具50に代えて、固定具50Bを備える構成でもよい。
【0054】
[第2変形例]
次に、図8を参照して、第2変形例に係る固定具50Cについて説明する。図8は、第2変形例に係る固定具を示す斜視図である。固定具50Cは、山形鋼(形鋼材)からなる第1部材51C及び第2部材52Cを有する。支保材交差部の固定構造100,100B,100Cは、固定具50に代えて、固定具50Cを備える構成でもよい。なお、固定具50は、例えばH形鋼から形成されていてもよい。
【0055】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【0056】
上記の実施形態では、第1固定部材及び第2固定部材がしゃこ万力61,62である場合について説明しているが、第1固定部材及び第2固定部材は、しゃこ万力に限定されず、その他の固定部材でもよい。
【0057】
上記の第1実施形態では、第1固定部材及び第2固定部材として、しゃこ万力61,62を用いる場合について説明しているが、例えば、しゃこ万力61,62Bを用いてもよく、しゃこ万力61B,62を用いてもよい。また、しゃこ万力61,61B,62,62Bを同時に用いてもよい。
【符号の説明】
【0058】
100,100B,100C:支保材交差部の固定構造
101:出隅部(隅角部)
102:入隅部(隅角部)
2A,2B:せき板
10:第1支保材
11:本体部
12:先端部
20:第2支保材
21:本体部
22:先端部
30:支保材交差部
50,50B,50C:固定具
51,51B,51C:第1部材
52,52B,52C:第2部材
61,61B,61C:しゃこ万力(第1固定部材)
62,62B,62C:しゃこ万力(第2固定部材)
X:X軸方向(第1方向)
Y:Y軸方向(第2方向)
Z:Z軸方向(鉛直方向)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8