(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048706
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】発振器の製造方法
(51)【国際特許分類】
H03B 5/32 20060101AFI20240402BHJP
【FI】
H03B5/32 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154774
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100173428
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】磯畑 健作
(72)【発明者】
【氏名】牧 克彦
【テーマコード(参考)】
5J079
【Fターム(参考)】
5J079AA04
5J079BA43
5J079CA04
5J079CA08
5J079CA12
5J079FA01
5J079HA03
5J079HA07
5J079HA28
(57)【要約】
【課題】低コストで効率的に複数の発振器を製造することのできる発振器の製造方法を提供すること。
【解決手段】第1発振器および第2発振器を含む複数種類の発振器の製造方法であって、第1容器に第1振動素子および第1振動素子を発振させて第1発振信号を生成する第1回路素子を実装する第1発振器第1工程と、第1容器に第1発振信号に基づいて発振周波数が制御される第2振動素子を実装する第1発振器第2工程と、を含んで第1発振器を製造し、第1容器と同一種類の第2容器に、第1振動素子と同一種類の第3振動素子および第3振動素子を発振させて第2発振信号を生成する第1回路素子と同一種類の第2回路素子を実装する第2発振器第1工程と、第2容器に第2発振信号に基づいて発振周波数が制御され、第2振動素子と周波数が異なる第4振動素子を実装する第2発振器第2工程と、を含んで第2発振器を製造する。
【選択図】
図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1発振器および第2発振器を含む複数種類の発振器の製造方法であって、
第1容器に第1振動素子および前記第1振動素子を発振させて第1発振信号を生成する第1回路素子を実装する第1発振器第1工程と、前記第1容器に前記第1発振信号に基づいて発振周波数が制御される第2振動素子を実装する第1発振器第2工程と、を含んで前記第1発振器を製造し、
前記第1容器と同一種類の第2容器に、前記第1振動素子と同一種類の第3振動素子および前記第3振動素子を発振させて第2発振信号を生成する前記第1回路素子と同一種類の第2回路素子を実装する第2発振器第1工程と、前記第2容器に前記第2発振信号に基づいて発振周波数が制御され、前記第2振動素子と周波数が異なる第4振動素子を実装する第2発振器第2工程と、を含んで前記第2発振器を製造することを特徴とする発振器の製造方法。
【請求項2】
前記第1容器は、一方の主面に開口する第1凹部と、他方の主面に開口する第2凹部と、を有し、前記第1発振器第1工程では、前記第1凹部に前記第1振動素子および前記第1回路素子を実装し、前記第1発振器第2工程では、前記第2凹部に前記第2振動素子を実装し、
前記第2容器は、一方の主面に開口する第3凹部と、他方の主面に開口する第4凹部と、を有し、前記第2発振器第1工程では、前記第3凹部に前記第3振動素子および前記第2回路素子を実装し、前記第2発振器第2工程では、前記第4凹部に前記第4振動素子を実装する請求項1に記載の複数種類の発振器の製造方法。
【請求項3】
前記第1発振器第1工程では、さらに、前記第1容器に前記第1振動素子を加熱する第1ヒーター回路を実装し、
前記第2発振器第1工程では、さらに、前記第2容器に前記第3振動素子を加熱する前記第1ヒーター回路と同一種類の第2ヒーター回路を実装する請求項1に記載の複数種類の発振器の製造方法。
【請求項4】
前記第1回路素子が前記第1ヒーター回路を備え、
前記第2回路素子が前記第2ヒーター回路を備えている請求項3に記載の複数種類の発振器の製造方法。
【請求項5】
前記第1振動素子および前記第3振動素子は、それぞれ、SCカット水晶振動素子である請求項1に記載の複数種類の発振器の製造方法。
【請求項6】
前記第1振動素子および前記第3振動素子は、それぞれ、ATカット水晶振動素子である請求項1に記載の複数種類の発振器の製造方法。
【請求項7】
前記第2振動素子および前記第4振動素子は、それぞれ、ATカット水晶振動素子である請求項1、5および6のいずれか1項に記載の複数種類の発振器の製造方法。
【請求項8】
前記第1発振器第2工程では、さらに、前記第1容器に、前記第2振動素子を発振させて前記第1発振信号に基づいて周波数が制御された第3発振信号を生成する第3回路素子を実装し、
前記第2発振器第2工程では、さらに、前記第2容器に、前記第4振動素子を発振させて前記第2発振信号に基づいて周波数が制御された第4発振信号を生成する第4回路素子を実装する請求項1ないし6のいずれか1項に記載の複数種類の発振器の製造方法。
【請求項9】
前記第1発振器第2工程では、前記第2振動素子および前記第3回路素子を第3容器に収容した状態で前記第1容器に実装し、
前記第2発振器第2工程では、前記第4振動素子および前記第4回路素子を第4容器に収容した状態で前記第2容器に実装する請求項8に記載の複数種類の発振器の製造方法。
【請求項10】
さらに、前記第1容器と同一種類の第5容器に、前記第1振動素子と同一種類の第5振動素子および前記第5振動素子を発振させて第5発振信号を生成する前記第1回路素子と同一種類の第5回路素子を実装する第3発振器第1工程を含んで第3発振器を製造する請求項1ないし6のいずれか1項に記載の複数種類の発振器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されている恒温槽付水晶発振器(OCXO)は、第1振動素子および第1振動素子を発振させて第1発振信号を生成する第1回路素子を収容する第1容器を有し、この第1容器の下面には、第1発振信号に基づいて発振周波数が制御される第2振動素子が収容された第2容器が実装されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような恒温槽付水晶発振器においては、互いに特性の異なる第2振動素子が実装された複数種類の発振器を低コストで効率よく製造することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の発振器の製造方法は、第1発振器および第2発振器を含む複数種類の発振器の製造方法であって、
第1容器に第1振動素子および前記第1振動素子を発振させて第1発振信号を生成する第1回路素子を実装する第1発振器第1工程と、前記第1容器に前記第1発振信号に基づいて発振周波数が制御される第2振動素子を実装する第1発振器第2工程と、を含んで前記第1発振器を製造し、
前記第1容器と同一種類の第2容器に、前記第1振動素子と同一種類の第3振動素子および前記第3振動素子を発振させて第2発振信号を生成する前記第1回路素子と同一種類の第2回路素子を実装する第2発振器第1工程と、前記第2容器に前記第2発振信号に基づいて発振周波数が制御され、前記第2振動素子と周波数が異なる第4振動素子を実装する第2発振器第2工程と、を含んで前記第2発振器を製造する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態に係る共通パッケージを示す断面図である。
【
図2】共通パッケージを上面側から見た平面図である。
【
図3】共通パッケージが有する内側パッケージおよびその内部を示す断面図である。
【
図4】内側パッケージを下面側から見た平面図である。
【
図5】共通パッケージが有する回路素子に含まれるPLL回路を示す回路図である。
【
図6】PLL回路の第1ルートを示す回路図である。
【
図7】PLL回路の第2ルートを示す回路図である。
【
図8】PLL回路の第3ルートを示す回路図である。
【
図10】第1発振器が有する電圧制御型水晶発振器を示す断面図である。
【
図11】電圧制御型水晶発振器を下面側から見た平面図である。
【
図15】発振器の製造方法を示すフローチャートである。
【
図16】発振器の製造方法を示すフローチャートである。
【
図17】第2実施形態に係る共通パッケージを示す断面図である。
【
図18】第3実施形態に係る共通パッケージを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の発振器の製造方法の好適な実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、説明の便宜上、各図には互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を図示している。また、以下では、X軸に沿う方向を「X軸方向」とも言い、Y軸に沿う方向を「Y軸方向」とも言い、Z軸に沿う方向を「Z軸方向」とも言う。また、各軸の矢印側を「プラス側」とも言い、反対側を「マイナス側」とも言う。また、Z軸方向プラス側を「上」とも言い、Z軸方向マイナス側を「下」とも言う。また、Z軸方向からの平面視を単に「平面視」とも言う。
【0008】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る共通パッケージを示す断面図である。
図2は、共通パッケージを上面側から見た平面図である。
図3は、共通パッケージが有する内側パッケージおよびその内部を示す断面図である。
図4は、内側パッケージを下面側から見た平面図である。
図5は、共通パッケージが有する回路素子に含まれるPLL回路を示す回路図である。
図6は、PLL回路の第1ルートを示す回路図である。
図7は、PLL回路の第2ルートを示す回路図である。
図8は、PLL回路の第3ルートを示す回路図である。
図9は、第1発振器を示す断面図である。
図10は、第1発振器が有する電圧制御型水晶発振器を示す断面図である。
図11は、電圧制御型水晶発振器を下面側から見た平面図である。
図12は、第2発振器を示す断面図である。
図13は、第3発振器を示す断面図である。
図14は、第4発振器を示す断面図である。
図15および
図16は、それぞれ、発振器の製造方法を示すフローチャートである。
【0009】
本実施形態の発振器1の製造方法では、共通パッケージ100を用いて複数種類の発振器1を製造する。以下では、その一例として、恒温槽付水晶発振器(OCXO)である第1発振器1A、第2発振器1B、第3発振器1C、第4発振器1D、計4種類の発振器1を製造する場合を例に挙げて説明する。このように、共通パッケージ100を用いることにより、複数種類の発振器1を低コストでかつ効率よく製造することができる。そのため、まずは、共通パッケージ100について説明する。
【0010】
図1ないし
図4に示す共通パッケージ100は、恒温槽付水晶発振器(OCXO)に好適に利用され、振動素子6と、回路素子8と、温度制御素子7と、振動素子6、回路素子8および温度制御素子7を収容する内側パッケージ3と、回路素子4と、内側パッケージ3および回路素子4を収容する外側パッケージ2と、を有する。
【0011】
振動素子6は、第1発振器1Aの第1振動素子、第2発振器1Bの第3振動素子、第3発振器1Cの第5振動素子に相当する。したがって、第1振動素子、第3振動素子および第5振動素子として同一種類の振動素子6を使用することを意味する。同一種類の振動素子6とは、共振周波数、外形形状、電極形状に代表される各部の形状および寸法や、各部の材質(構成材料)が互いに同じであることを意味する。また、同じ型番または識別コードの振動素子を意味してもよい。
【0012】
回路素子8は、第1発振器1Aの第1回路素子、第2発振器1Bの第2回路素子、第3発振器1Cの第5回路素子に相当する。したがって、第1回路素子、第2回路素子および第5回路素子として同一種類の回路素子8を使用することを意味する。同一種類の回路素子8とは、形状、寸法、回路構成、回路レイアウトなどが互いに同じであることを意味する。また、同じ型番または識別コードの回路素子を意味してもよい。
【0013】
温度制御素子7は、第1発振器1Aの第1ヒーター回路、第2発振器1Bの第2ヒーター回路に相当する。したがって、第1ヒーター回路および第2ヒーター回路として同一種類の温度制御素子7を使用することを意味する。同一種類の温度制御素子7とは、形状、寸法、回路構成、回路レイアウトなどが互いに同じであることを意味する。また、同じ型番または識別コードの温度制御素子を意味してもよい。
【0014】
≪外側パッケージ2≫
図1に示すように、外側パッケージ2は、外側ベース21と、外側リッド22と、を有する。外側ベース21は、箱状をなし、上面に開口する上側凹部211と、下面に開口する下側凹部212と、を有する。また、外側リッド22は、板状をなし、上側凹部211の開口を塞ぐようにして、シールリング、低融点ガラス等の封止部材23を介して外側ベース21の上面に接合されている。これにより、上側凹部211が気密封止され、外側パッケージ2内に収容空間Q2が形成される。一方、下側凹部212の開口は、封止されておらず、外側パッケージ2の外部に臨んでいる。
【0015】
なお、外側ベース21および外側リッド22の構成材料としては、それぞれ、特に限定されないが、例えば、外側ベース21をアルミナ、チタニア等の各種セラミック材料で構成し、外側リッド22をコバール等の各種金属材料で構成することができる。
【0016】
収容空間Q2について詳細に説明すると、上側凹部211は、上面に開口する第1上側凹部211aと、第1上側凹部211aの底面に開口し、第1上側凹部211aよりも開口が小さい第2上側凹部211bと、第2上側凹部211bの底面に開口し、第2上側凹部211bよりも開口が小さい第3上側凹部211cと、を有する。そして、第1上側凹部211aの底面に回路素子4が配置され、第3上側凹部211cの底面に内側パッケージ3が配置されている。
【0017】
収容空間Q2は、気密であり、減圧状態、好ましくはより真空に近い状態となっている。これにより、外側パッケージ2の断熱性が高まる。また、温度制御素子7の熱が逃げ難くなり、振動素子6の加熱効率が高まる。そのため、振動素子6の温度が安定すると共に省電力化を図ることもできる。ただし、収容空間Q2の雰囲気は、特に限定されない。
【0018】
また、外側ベース21には、第1上側凹部211aの底面に配置された複数の内部端子241と、第2上側凹部211bの底面に配置された複数の内部端子242と、下側凹部212の底面に配置された複数の内部端子243と、下面に配置された複数の外部端子244と、を有する。これら端子は、所望の回路が構成されるように外側ベース21内に形成された図示しない内部配線を介して電気的に接続されている。また、各内部端子241は、ボンディングワイヤーBW1を介して回路素子4と電気的に接続され、各内部端子242は、ボンディングワイヤーBW2を介して内側パッケージ3と電気的に接続されている。
【0019】
以上、外側パッケージ2について説明した。なお、外側ベース21は、第1発振器1Aの第1容器、第2発振器1Bの第2容器、第3発振器1Cの第5容器、第4発振器1Dの第7容器に相当する。つまり、第1容器、第2容器、第5容器および第7容器として同一種類の外側ベース21を使用することを意味する。同一種類の外側ベース21とは、外形、凹部、電極、配線などの各部の形状、寸法や、各部の材質(構成材料)が互いに同じであることを意味する。また、同じ型番(識別コード)の外側パッケージを意味してもよい。
【0020】
また、上側凹部211は、第1発振器1Aの第1凹部、第2発振器1Bの第3凹部、第3発振器1Cの第5凹部、第4発振器1Dの第7凹部に相当し、下側凹部212は、第1発振器1Aの第2凹部、第2発振器1Bの第4凹部、第3発振器1Cの第6凹部、第4発振器1Dの第8凹部に相当する。
【0021】
≪内側パッケージ3≫
図3に示すように、内側パッケージ3は、内側ベース31と、内側リッド32と、を有する。内側ベース31は、箱状をなし、下面に開口する凹部311を有する。また、内側リッド32は、板状をなし、凹部311の開口を塞ぐようにして、シールリング、低融点ガラス等の封止部材33を介して内側ベース31の下面に接合されている。これにより、凹部311が気密封止され、内側パッケージ3内に収容空間Q3が形成される。そして、収容空間Q3に振動素子6、温度制御素子7および回路素子8が収容されている。
【0022】
なお、内側ベース31および内側リッド32の構成材料としては、それぞれ、特に限定されないが、例えば、内側ベース31をアルミナ、チタニア等の各種セラミック材料で構成し、内側リッド32をコバール等の各種金属材料で構成することができる。
【0023】
収容空間Q3について詳細に説明すると、凹部311は、下面に開口する第1凹部311aと、第1凹部311aの底面に開口し、第1凹部311aよりも開口が小さい第2凹部311bと、第2凹部311bの底面に開口し、第2凹部311bよりも開口が小さい第3凹部311cと、を有する。そして、第1凹部311aの底面に振動素子6が配置され、第3凹部311cの底面に温度制御素子7および回路素子8が並んで配置されている。
【0024】
このような収容空間Q3は、気密であり、減圧状態、好ましくはより真空に近い状態となっている。これにより、収容空間Q3の粘性抵抗が減り、振動素子6の振動特性が向上する。ただし、収容空間Q3の雰囲気は、特に限定されない。
【0025】
また、内側ベース31は、第1凹部311aの底面に配置された複数の内部端子341と、第2凹部311bの底面に配置された複数の内部端子342、343と、内側ベース31の上面に配置された複数の外部端子344と、を有する。これら端子は、所望の回路が構成されるように内側ベース31内に形成された図示しない内部配線を介して電気的に接続されている。
【0026】
また、各内部端子341は、導電性の接合部材B2およびボンディングワイヤーBW3を介して振動素子6と電気的に接続されている。また、各内部端子342は、ボンディングワイヤーBW4を介して温度制御素子7と電気的に接続されている。また、各内部端子343は、ボンディングワイヤーBW5を介して回路素子8と電気的に接続されている。また、各外部端子344は、ボンディングワイヤーBW2を介して外側パッケージ2と電気的に接続されている。
【0027】
以上のような内側パッケージ3は、内側リッド32において接合部材B3を介して第3上側凹部211cの底面に固定されている。
【0028】
≪振動素子6≫
振動素子6は、SCカット水晶振動素子である。SCカット水晶振動素子は、三次の周波数温度特性を有するため、周波数安定性に優れた振動素子6となる。特に、SCカット水晶振動素子は、変極点が95℃付近にあるため、振動素子6を加熱して使用する恒温槽付水晶発振器(OCXO)に適している。そのため、共通パッケージ100を用いて高精度な発振器1を低コストで製造することができる。なお、SCカットとは、水晶の結晶軸であるY軸(機械軸)に直交する面をX軸(電気軸)まわりに33°~35°程度回転し、回転後の位置から、さらに、Z軸(光軸)まわりに22°~24°程度回転した面から切り出すカット角をいう。
【0029】
図4に示すように、振動素子6は、SCカットで切り出された平面視で矩形の水晶基板61と、上面の中央部に配置された励振電極621と、励振電極621から引き出され上面の縁部に配置されたパッド電極622と、下面の中央部に励振電極621と対向配置された励振電極631と、励振電極631から引き出され下面の縁部に配置されたパッド電極632と、を有する。
【0030】
以上、振動素子6について説明したが、その構成は、特に限定されない。例えば、水晶基板61の平面視形状は、矩形に限定されず、円形、楕円形、半円形、その他の多角形であってもよい。また、水晶基板61の外縁部を研削するベベル加工や、水晶基板61の上面および下面を凸曲面とするコンベックス加工が施されていてもよい。
【0031】
また、振動素子6は、ATカット水晶振動であってもよい。ATカット水晶振動素子は、三次の周波数温度特性を有するため、SCカット水晶振動素子と同様、周波数安定性に優れた振動素子6となる。特に、ATカット水晶振動素子は、SCカット水晶振動子よりも需要が高く流通量も多いため、低コスト化を図ることがでる。
【0032】
ただし、振動素子6として、SCカット水晶振動素子、ATカット水晶振動素子ではなく、BTカット水晶振動素子、音叉型水晶振動素子、弾性表面波共振子、その他の圧電振動素子、MEMS共振素子等を用いてもよい。
【0033】
このような振動素子6は、その端部において、第1凹部311aの底面に接合部材B2を介して固定されている。また、接合部材B2およびボンディングワイヤーBW3を介してパッド電極622、632と各内部端子341とが電気的に接続されている。ただし、振動素子6の固定方法や電気接続方法としては、特に限定されない。
【0034】
≪温度制御素子7≫
図3に示すように、温度制御素子7は、温度センサー71および発熱回路72を有する。温度センサー71は、その周囲温度、特に振動素子6の温度を検出する温度検出部として機能し、発熱回路72は、振動素子6を加熱する発熱部として機能する。温度制御素子7は、第3凹部311cの底面に配置され、ボンディングワイヤーBW4を介して複数の内部端子342と電気的に接続されている。本実施形態では、振動素子6および温度制御素子7を同一空間内に収容しているため、温度センサー71の検出結果と実際の振動素子6の温度との差が小さくなる。
【0035】
このように、温度制御素子7を備えることで、環境温度変化に対して周波数変動の少ない高精度な発振信号を出力可能な共通パッケージ100となる。そして、そのような共通パッケージ100を用いることにより、各発振器1A、1B、1C、1Dを低コストで効率よく製造することができる。
【0036】
≪回路素子8≫
図3に示すように、回路素子8は、振動素子6を発振させる発振回路81を有する。この発振回路81は、振動素子6から出力される信号を増幅して振動素子6にフィードバックすることにより振動素子6を発振させ、発振信号を生成するための回路である。なお、回路素子8は、さらに、温度補償回路82を有する。温度補償回路82は、温度センサー71から出力される温度情報と温度補償データとに基づいて、発振信号の周波数変動が振動素子6自身の周波数温度特性よりも小さくなるように、好ましくは所定温度範囲において発振信号が一定となるように温度補償する。回路素子8では、温度補償回路82を使用するか、使用しないかをユーザーの希望に応じて設定できるようになっている。
【0037】
本実施形態では、温度制御素子7の温度センサー71を用いて温度補償を行う形態を説明したが、回路素子8に温度センサーを内蔵し、当該温度センサーを用いて温度補償を行ってもよい。具体的には、回路素子8に内蔵された温度センサーから出力される温度情報と温度補償データとに基づいて、発振信号の周波数変動が振動素子6自身の周波数温度特性よりも小さくなるように、好ましくは所定温度範囲において発振信号が一定となるように温度補償してもよい。
【0038】
≪回路素子4≫
図1に示すように、回路素子4は、温度制御素子7の駆動を制御する温度制御用回路41と、PLL回路42の一部と、出力バッファー回路43と、を有する。
【0039】
温度制御用回路41は、温度センサー71の出力信号に基づき、発熱回路72の抵抗を流れる電流量を制御し、振動素子6を一定温度に保つための回路である。例えば、温度制御用回路41は、温度センサー71の出力信号から判定される現在の温度が設定された基準温度よりも低い場合には、発熱回路72の抵抗に所望の電流を流し、現在の温度が基準温度よりも高い場合には発熱回路72の抵抗に電流が流れないように制御する。また、例えば、温度制御用回路41は、現在の温度と基準温度との差に応じて、発熱回路72の抵抗を流れる電流量を増減させるように制御する。
【0040】
また、
図5に示すように、回路素子4は、PLL回路42の一部として、第1位相比較器421と、第1ローパスフィルター422と、電圧制御型発振器423と、第1分周器424と、第2位相比較器425と、第2ローパスフィルター426と、発振回路427と、第2分周器428と、を有する。また、回路素子4は、汎用性を高める目的で、電圧制御型発振器423と第2位相比較器425との間に配置された第1スイッチ回路SW1と、第2ローパスフィルター426と発振回路427との間に配置された第2スイッチ回路SW2と、を有する。
【0041】
このような回路素子4では、第1、第2スイッチ回路SW1、SW2でルートを切り替えることにより、
図6に示す第1ルートR1、
図7に示す第2ルートR2または
図8に示す第3ルートR3に設定することができる。これにより、汎用性の高い回路素子4となる。ルートの設定は、例えば、設定するルートに応じたプログラムを回路素子4に書き込むことで行ってもよいし、全ルートに応じたプログラムを予め書き込んでおき、その中から所定のプログラムを選択することで行ってもよい。
【0042】
以上、共通パッケージ100について説明した。次に、共通パッケージ100を用いて製造された第1発振器1A、第2発振器1B、第3発振器1Cおよび第4発振器1Dについて順に説明する。
【0043】
≪第1発振器1A≫
第1発振器1Aは、恒温槽付水晶発振器(OCXO)である。そのため、回路素子8に含まれる温度補償回路82を使用しない設定となっている。また、回路素子4は、第1ルートR1に設定されている。このような第1発振器1Aは、
図9に示すように、共通パッケージ100に電圧制御型水晶発振器5を配置した構成となっている。電圧制御型水晶発振器5は、下側凹部212に配置されており、導電性の接合部材B1を介して各内部端子243と電気的に接続されている。
【0044】
このように、外側パッケージ2の下面に下側凹部212を形成し、下側凹部212に電圧制御型水晶発振器5を実装することにより、電圧制御型水晶発振器5の実装が容易となる。また、このような構成によれば、上側凹部211を外側リッド22で封止した状態のものを共通パッケージ100とすることができる。そのため、共通パッケージ100が備える部品手数が増え、その分、発振器1A、1B、1C、1D毎の個別工程が減り、これらを効率的に製造することができる。
【0045】
図6に示したように、電圧制御型水晶発振器5は、PLL回路42に含まれる発振器である。
図10に示すように、電圧制御型水晶発振器5は、パッケージ51と、パッケージ51に収容された振動素子55および回路素子59と、を有する。このように、振動素子55および回路素子59をパッケージ51に収容することにより、振動素子55および回路素子59を一括して外側ベース21に実装することができる。また、パッケージ51により振動素子55および回路素子59を保護することもできる。
【0046】
パッケージ51は、第1発振器1Aの第3容器、第2発振器1Bの第4容器に相当する。また、振動素子55は、第1発振器1Aの第2振動素子、第2発振器1Bの第4振動素子に相当する。また、回路素子59は、第1発振器1Aの第3回路素子、第2発振器1Bの第4回路素子に相当する。
【0047】
パッケージ51は、ベース52およびリッド53を有する。ベース52は、箱状をなし、下面に開口する凹部521を有する。また、リッド53は、板状をなし、凹部521の開口を塞ぐようにして、シールリング、低融点ガラス等の封止部材54を介してベース52の下面に接合されている。これにより、凹部521が気密封止され、パッケージ51内に収容空間Q5が形成される。そして、収容空間Q5に振動素子55および回路素子59が収容されている。
【0048】
なお、ベース52およびリッド53の構成材料としては、それぞれ、特に限定されないが、例えば、ベース52をアルミナ、チタニア等の各種セラミック材料で構成し、リッド53をコバール等の各種金属材料で構成することができる。
【0049】
収容空間Q5について詳細に説明すると、凹部521は、下面に開口する第1凹部521aと、第1凹部521aの底面に開口し、第1凹部521aよりも開口が小さい第2凹部521bと、第2凹部521bの底面に開口し、第2凹部521bよりも開口が小さい第3凹部521cと、を有する。そして、第1凹部521aの底面に振動素子55が配置され、第3凹部521cの底面に回路素子59が配置されている。収容空間Q5は、気密であり、減圧状態、好ましくはより真空に近い状態となっている。これにより、収容空間Q5の粘性抵抗が減り、振動素子55の振動特性が向上する。ただし、収容空間Q5の雰囲気は、特に限定されない。
【0050】
また、ベース52は、第1凹部521aの底面に配置された複数の内部端子561と、第2凹部521bの底面に配置された複数の内部端子562と、ベース52の上面に配置された複数の外部端子564と、を有する。これら端子は、所望の回路が構成されるようにベース52内に形成された図示しない内部配線を介して電気的に接続されている。また、各内部端子561は、導電性の接合部材B4を介して振動素子55と電気的に接続されている。また、各内部端子562は、ボンディングワイヤーBW6を介して回路素子59と電気的に接続されている。また、各外部端子564は、接合部材B1を介して各内部端子243と電気的に接続されている。
【0051】
振動素子55は、ATカット水晶振動素子である。ATカット水晶振動素子は、三次の周波数温度特性を有するため、周波数安定性に優れた振動素子55となる。そのため、高精度な第1発振器1Aとなる。なお、ATカットとは、水晶の結晶軸であるY軸(機械軸)に直交する面をX軸(電気軸)まわりに33°~36°程度回転した面から切り出すカット角をいう。
【0052】
図11に示すように、振動素子55は、ATカットで切り出された長方形状の水晶基板551と、水晶基板551の上下面に対向配置された励振電極553a、554aと、水晶基板551の上面に配置されたパッド電極553b、554bと、励振電極553a、554aとパッド電極553b、554bとを接続する引出電極553c、554cと、を有する。
【0053】
以上、振動素子55について説明したが、その構成は、特に限定されない。例えば、水晶基板551の平面視形状は、長方形に限定されず、円形、長方形以外の矩形、その他の多角形であってもよい。また、水晶基板551の外縁部を研削するベベル加工や、水晶基板551の上面および下面を凸曲面とするコンベックス加工が施されていてもよい。また、振動素子55として、ATカット水晶振動素子ではなく、SCカット水晶振動素子、BTカット水晶振動素子、音叉型水晶振動素子、弾性表面波共振子、その他の圧電振動素子、MEMS共振素子等を用いてもよい。
【0054】
このような振動素子55は、その端部において、第1凹部521aの底面に一対の接合部材B4を介して固定されている。また、接合部材B4を介してパッド電極553b、554bと各内部端子561とが電気的に接続されている。ただし、振動素子55の固定方法や電気接続方法としては、特に限定されない。
【0055】
回路素子59は、振動素子55を発振する発振回路591を有する。発振回路591は、振動素子55と電気的に接続され、振動素子55の出力信号を増幅し、増幅した信号を振動素子55にフィードバックすることにより振動素子55を発振させる。
【0056】
以上、第1発振器1Aの構成について説明した。このような第1発振器1Aでは、PLL回路42は、次のように動作する。第1発振器1Aは、電圧制御型水晶発振器5を備えるため、PLL回路42中の発振回路427が不要となる。そのため、前述したように、
図6に示す第1ルートR1に設定される。
【0057】
第1位相比較器421は、発振回路81から出力される基準周波数信号である第1発振信号V1と第1分周器424から出力される周波数信号との間の位相差を検出し、第1ローパスフィルター422に出力する。第1ローパスフィルター422は、第1位相比較器421からの出力信号から高周波成分を除去し、電圧に変換して電圧制御型発振器423を制御する直流信号として出力する。第1分周器424は、電圧制御型発振器423から出力される周波数信号を分周した周波数信号を第1位相比較器421に出力する。
【0058】
なお、第1分周器424は、例えば、整数の分周比を切り替えて平均的に小数の分周比とすることにより、小数の分周比を設定可能である。これにより、第1位相比較器421、第1ローパスフィルター422、電圧制御型発振器423および第1分周器424で構成される前段のPLL回路部分は、小数分周PLL回路(フラクショナルPLL回路)として機能する。その結果、小数分周PLL回路では、任意の周波数の信号を出力することが可能になる。
【0059】
第2位相比較器425は、電圧制御型発振器423から出力される周波数信号と第2分周器428から出力される周波数信号との間の位相差を検出し、第2ローパスフィルター426に出力する。第2ローパスフィルター426は、第2位相比較器425からの出力信号から高周波成分を除去し、電圧に変換して電圧制御型水晶発振器5を制御する直流信号を出力する。第2分周器428は、電圧制御型水晶発振器5から出力される周波数信号を分周した周波数信号を第2位相比較器425に出力する。
【0060】
なお、第2分周器428は、例えば、入力された信号を整数分周する整数分周器である。これにより、第2位相比較器425、第2ローパスフィルター426、電圧制御型水晶発振器5および第2分周器428で構成される後段のPLL回路部分は、整数分周PLL回路(インテジャーPLL回路)として機能する。整数分周PLL回路では、位相ノイズが比較的少なく、回路構成も比較的単純な回路とすることができる。
【0061】
そして、電圧制御型水晶発振器5からは、直流信号の電圧に応じた周波数信号である第3発振信号V3が出力バッファー回路43に向けて出力される。つまり、PLL回路42は、振動素子55を発振させて、第1発振信号V1に基づいて周波数が制御された第3発振信号V3を生成する。これにより、高精度な第1発振器1Aとなる。
【0062】
<第2発振器1B>
図12に示す第2発振器1Bは、電圧制御型水晶発振器5の構成が異なること以外は、上述した第1発振器1Aと同じ構成である。第2発振器1Bでは、振動素子55の周波数(発振周波数)が第1発振器1Aと異なっている。例えば、第1発振器1Aでは、振動素子55の発振周波数が20MHzであるのに対して、第2発振器1Bでは、振動素子55の発振周波数が40MHzである。
【0063】
以上、第2発振器1Bの構成について説明した。このような第2発振器1Bでは、PLL回路42は、次のように動作する。
【0064】
図6に示すように、第1位相比較器421は、発振回路81から出力される基準周波数信号である第2発振信号V2と第1分周器424から出力される周波数信号との間の位相差を検出し、第1ローパスフィルター422に出力する。第1ローパスフィルター422は、第1位相比較器421からの出力信号から高周波成分を除去し、電圧に変換して電圧制御型発振器423を制御する直流信号として出力する。第1分周器424は、電圧制御型発振器423から出力される周波数信号を分周した周波数信号を第1位相比較器421に出力する。
【0065】
第2位相比較器425は、電圧制御型発振器423から出力される周波数信号と第2分周器428から出力される周波数信号との間の位相差を検出し、第2ローパスフィルター426に出力する。第2ローパスフィルター426は、第2位相比較器425からの出力信号から高周波成分を除去し、電圧に変換して電圧制御型水晶発振器5を制御する直流信号を出力する。第2分周器428は、電圧制御型水晶発振器5から出力される周波数信号を分周した周波数信号を第2位相比較器425に出力する。
【0066】
そして、電圧制御型水晶発振器5からは、直流信号の電圧に応じた周波数信号である第4発振信号V4が出力バッファー回路43に向けて出力される。つまり、PLL回路42は、振動素子55を発振させて、第2発振信号V2に基づいて周波数が制御された第4発振信号V4を生成する。これにより、高精度な第2発振器1Bとなる。
【0067】
<第3発振器1C>
図13に示す第3発振器1Cは、電圧制御型水晶発振器5を省略し、PLL回路42が第3ルートR3に設定されていること以外は、上述した第1発振器1Aと同様である。つまり、第3発振器1Cは、共通パッケージ100だけで構成されている。これにより、第3発振器1Cを低コストで製造することができる。このような第3発振器1Cでは、PLL回路42は、次のように動作する。
【0068】
図8に示すように、第1位相比較器421は、発振回路81から出力される基準周波数信号である第5発振信号V5と第1分周器424から出力される周波数信号との間の位相差を検出し、第1ローパスフィルター422に出力する。第1ローパスフィルター422は、第1位相比較器421からの出力信号から高周波成分を除去し、電圧に変換して電圧制御型発振器423を制御する直流信号として出力する。第1分周器424は、電圧制御型発振器423から出力される周波数信号を分周した周波数信号を第1位相比較器421に出力する。そして、電圧制御型発振器423からは、直流信号の電圧に応じた周波数信号である第6発振信号V6が出力バッファー回路43に向けて出力される。
【0069】
<第4発振器1D>
図14に示す第4発振器1Dは、電圧制御型水晶発振器5の代わりに水晶振動子50を用い、回路素子4が第2ルートR2に設定されていること以外は、上述した第1発振器1Aと同様である。水晶振動子50は、電圧制御型水晶発振器5から回路素子59を省略した構成となっている。その代わり、
図7に示すように、回路素子4の発振回路427が振動素子55と電気的に接続されている。このような第4発振器1Dでは、PLL回路42は、次のように動作する。
【0070】
図7に示すように、第1位相比較器421は、発振回路81から出力される基準周波数信号である第7発振信号V7と第1分周器424から出力される周波数信号との間の位相差を検出し、第1ローパスフィルター422に出力する。第1ローパスフィルター422は、第1位相比較器421からの出力信号から高周波成分を除去し、電圧に変換して電圧制御型発振器423を制御する直流信号として出力する。第1分周器424は、電圧制御型発振器423から出力される周波数信号を分周した周波数信号を第1位相比較器421に出力する。
【0071】
第2位相比較器425は、電圧制御型発振器423から出力される周波数信号と第2分周器428から出力される周波数信号との間の位相差を検出し、第2ローパスフィルター426に出力する。第2ローパスフィルター426は、第2位相比較器425からの出力信号から高周波成分を除去し、電圧に変換して発振回路427を制御する直流信号を出力する。第2分周器428は、発振回路427から出力される周波数信号を分周した周波数信号を第2位相比較器425に出力する。
【0072】
そして、発振回路427からは、直流信号の電圧に応じた周波数信号である第8発振信号V8が出力バッファー回路43に向けて出力される。つまり、PLL回路42は、振動素子55を発振させて、第7発振信号V7に基づいて周波数が制御された第8発振信号V8を生成する。これにより、高精度な第4発振器1Dとなる。
【0073】
以上、各発振器1A、1B、1C、1Dについて説明した。次に、これら複数の発振器1(1A、1B、1C、1D)の製造方法について説明する。
図15に示すように、複数の発振器1の製造方法は、共通パッケージ100を複数準備する工程S1と、共通パッケージ100の下側凹部212に所定の発振周波数の電圧制御型水晶発振器5を実装し、PLL回路42を第1ルートR1に設定して第1発振器1Aを製造する工程S2と、共通パッケージ100の下側凹部212に第1発振器1Aに実装した電圧制御型水晶発振器5とは発振周波数の異なる電圧制御型水晶発振器5を実装し、PLL回路42を第1ルートR1に設定して第2発振器1Bを製造する工程S3と、PLL回路42を第3ルートR3に設定して第3発振器1Cを製造する工程S4と、共通パッケージ100の下側凹部212に水晶振動子50を実装し、PLL回路42を第2ルートR2に設定して第4発振器1Dを製造する工程S5と、を含む。
【0074】
4種類の発振器1A、1B、1C、1Dを製造する場合は、工程S1を行った後、製造対象が第1発振器1Aの場合は工程S2を行い、製造対象が第2発振器1Bの場合は工程S3を行い、製造対象が第3発振器1Cの場合は工程S4を行い、製造対象が第4発振器1Dの場合は工程S5を行う。
【0075】
また、工程S1は、外側ベース21を準備する工程S11と、外側ベース21の上側凹部211に振動素子6、温度制御素子7および回路素子8を収容した内側パッケージ3を実装する工程S12と、外側ベース21の上側凹部211に回路素子4を実装する工程S13と、外側ベース21に外側リッド22を接合して共通パッケージ100を得る工程S14と、を含む。
【0076】
ここで、上述の製造方法について言いかえると、発振器1の製造方法は、
図16に示すように、外側ベース21の上側凹部211に振動素子6、温度制御素子7および回路素子8を実装する第1発振器第1工程Sa1と、外側ベース21の下側凹部212に電圧制御型水晶発振器5を実装する第1発振器第2工程Sa2と、PLL回路42の設定を行う第1発振器第3工程Sa3と、を含んで第1発振器1Aを製造し、外側ベース21の上側凹部211に振動素子6、温度制御素子7および回路素子8を実装する第2発振器第1工程Sb1と、外側ベース21の下側凹部212に電圧制御型水晶発振器5を実装する第2発振器第2工程Sb2と、PLL回路42の設定を行う第2発振器第3工程Sb3と、を含んで第2発振器1Bを製造し、外側ベース21の上側凹部211に振動素子6、温度制御素子7および回路素子8を実装する第3発振器第1工程Sc1と、PLL回路42の設定を行う第3発振器第2工程Sc2と、を含んで第3発振器1Cを製造し、外側ベース21の上側凹部211に振動素子6、温度制御素子7および回路素子8を実装する第4発振器第1工程Sd1と、外側ベース21の下側凹部212に水晶振動子50を実装する第4発振器第2工程Sd2と、PLL回路42の設定を行う第4発振器第3工程Sd3と、を含んで第4発振器1Dを製造する。
【0077】
このような発振器1の製造方法によれば、共通パッケージ100を用いるため、種類の異なる複数の発振器1(1A、1B、1C、1D)を低コストでかつ効率的に製造することができる。
【0078】
なお、本実施形態では、共通パッケージ100を用いて4種類の発振器1A、1B、1C、1Dを製造しているが、これに限定されず、共通パッケージ100を用いて、少なくとも、出力周波数が異なる2つの発振器を製造できればよい。本実施形態の例では、第1発振器1Aと、第2発振器1Bと、を製造できればよい。この場合、PLL回路42では、第1ルートR1しか使用されないため、PLL回路42から発振回路427、第1スイッチ回路SW1および第2スイッチ回路SW2を省略することができる。また、第3発振器1Cと、第3発振器1Cと振動素子55の周波数が異なる第5発振器と、を製造できればよい。この場合、PLL回路42では第2ルートR2しか使用されないため、PLL回路42から第1スイッチ回路SW1および第2スイッチ回路SW2を省略することができる。
【0079】
また、本実施形態では、共通パッケージ100を用いて恒温槽付水晶発振器(OCXO)である発振器1を製造しているが、発振器1としては、恒温槽付水晶発振器(OCXO)に限定されない。例えば、温度制御素子7および温度補償回路82を共に使用しない設定として、パッケージ水晶発振器(SPXO)である発振器1を製造してもよいし、温度制御素子7を使用せず、温度補償回路82を使用する設定として、温度補償水晶発振器(TCOX)である発振器1を製造してもよい。なお、恒温槽付水晶発振器である発振器1だけを製造する場合には、回路素子8から温度補償回路82を省略してもよい。
【0080】
また、本実施形態では、振動素子55と回路素子59とがパッケージ51に収容された状態で外側ベース21に実装されているが、パッケージ51を省略し、振動素子55および回路素子59をそれぞれ外側ベース21に実装してもよい。この場合、下側凹部212の開口をリッドで覆い、収容空間を形成することが好ましい。このような構成によれば、共通パッケージ100の小型化を図ることができる。
【0081】
以上、発振器1の製造方法について説明した。このような発振器1の製造方法は、前述したように、第1発振器1Aおよび第2発振器1Bを含む複数種類の発振器1の製造方法であって、第1容器である外側ベース21に第1振動素子である振動素子6および振動素子6を発振させて第1発振信号V1を生成する第1回路素子である回路素子8を実装する第1発振器第1工程Sa1と、外側ベース21に第1発振信号V1に基づいて発振周波数が制御される第2振動素子である振動素子55を実装する第1発振器第2工程Sa2と、を含んで第1発振器1Aを製造し、第1発振器1Aの外側ベース21と同一種類の第2容器である外側ベース21に、第1発振器1Aの振動素子6と同一種類の第3振動素子である振動素子6および振動素子6を発振させて第2発振信号V2を生成する第1発振器1Aの回路素子8と同一種類の第2回路素子である回路素子8を実装する第2発振器第1工程Sb1と、外側ベース21に第2発振信号V2に基づいて発振周波数が制御され、振動素子55と周波数が異なる第4振動素子である振動素子55を実装する第2発振器第2工程Sb2と、を含んで第2発振器1Bを製造する。このような製造方法によれば、第1発振器第1工程Sa1と第2発振器第1工程Sb1とが共通化されるため、出力周波数が異なる第1発振器1Aおよび第2発振器1Bを低コストでかつ効率的に製造することができる。
【0082】
また、前述したように、第1容器としての外側ベース21は、一方の主面に開口する第1凹部である上側凹部211と、他方の主面に開口する第2凹部である下側凹部212と、を有し、第1発振器第1工程Sa1では、上側凹部211に振動素子6および回路素子8を実装し、第1発振器第2工程Sa2では、下側凹部212に振動素子55を実装する。また、第2容器としての外側ベース21は、一方の主面に開口する第3凹部である上側凹部211と、他方の主面に開口する第4凹部である下側凹部212と、を有し、第2発振器第1工程Sb1では、上側凹部211に振動素子6および回路素子8を実装し、第2発振器第2工程Sb2では、下側凹部212に振動素子55を実装する。このような方法によれば、共通化された第1発振器第1工程Sa1と第2発振器第1工程Sb1で進めることができる工程を増やすことができる。そのため、その分、個別工程である第1発振器第2工程Sa2と第2発振器第2工程Sb2における工程数を削減することができる。したがって、出力周波数が異なる第1発振器1Aおよび第2発振器1Bを低コストでかつ効率的に製造することができる。
【0083】
また、前述したように、第1発振器第1工程Sa1では、さらに、外側ベース21に振動素子6を加熱する第1ヒーター回路である温度制御素子7を実装し、第2発振器第1工程Sb1では、さらに、外側ベース21に振動素子6を加熱する温度制御素子7と同一種類の第2ヒーター回路である温度制御素子7を実装する。このように、温度制御素子7を備えることで、環境温度変化に対して周波数変動の少ない高精度な発振信号を出力可能な第1発振器1Aおよび第2発振器1Bを製造することができる。
【0084】
また、前述したように、第1発振器1Aの振動素子6および第2発振器1Bの振動素子6は、それぞれ、SCカット水晶振動素子である。SCカット水晶振動素子は、三次の周波数温度特性を有するため、周波数安定性に優れた振動素子6となる。特に、SCカット水晶振動素子は、変極点が95℃付近にあるため、振動素子6を加熱して使用する恒温槽付水晶発振器(OCXO)に適している。
【0085】
また、前述したように、第1発振器1Aの振動素子6および第2発振器1Bの振動素子6は、それぞれ、ATカット水晶振動素子でもよい。ATカット水晶振動素子は、三次の周波数温度特性を有するため、周波数安定性に優れた振動素子6となる。特に、ATカット水晶振動素子は、SCカット水晶振動子よりも需要が高く流通量も多いため、低コスト化を図ることがでる。
【0086】
また、前述したように、第1発振器1Aの振動素子55および第2発振器1Bの振動素子55は、それぞれ、ATカット水晶振動素子である。ATカット水晶振動素子は、三次の周波数温度特性を有するため、周波数安定性に優れた振動素子6となる。
【0087】
また、前述したように、第1発振器第2工程Sa2では、さらに、外側ベース21に振動素子55を発振させて第1発振信号V1に基づいて周波数が制御された第3発振信号V3を生成する第3回路素子である回路素子59を実装し、第2発振器第2工程Sb2では、さらに、外側ベース21に振動素子55を発振させて第2発振信号V2に基づいて周波数が制御された第4発振信号V4を生成する第4回路素子である回路素子59を実装する。これにより、位相ノイズの少ない第3発振信号V3および第4発振信号V4を生成することができる。
【0088】
また、前述したように、第1発振器第2工程Sa2では、振動素子55および回路素子59を第3容器であるパッケージ51に収容した状態で外側ベース21に実装し、第2発振器第2工程でSb2は、振動素子55および回路素子59を第3容器であるパッケージ51に収容した状態で外側ベース21に実装する。このように、パッケージ51を用いることにより、振動素子55および回路素子59を一括して実装することができるため、ハンドリング性が向上する。そのため、第1発振器第2工程Sa2および第2発振器第2工程でSb2をスムーズに行うことができる。また、パッケージ51により振動素子55および回路素子59を保護することもできる。
【0089】
また、前述したように、発振器1の製造方法は、第1発振器1Aの外側ベース21と同一種類の第5容器である外側ベース21に、第1発振器1Aの振動素子6と同一種類の第5振動素子である振動素子6および振動素子6を発振させて第5発振信号V5を生成する第1発振器1Aの回路素子8と同一種類の第5回路素子である回路素子8を実装する第3発振器第1工程Sc1を含んで第3発振器1Cを製造する。このような製造方法によれば、第1発振器第1工程Sa1、第2発振器第1工程Sb1および第3発振器第1工程Sc1が共通化されるため、種類の異なる第1発振器1A、第2発振器1Bおよび第3発振器1Cを低コストでかつ効率的に製造することができる。
【0090】
<第2実施形態>
図17は、第2実施形態に係る共通パッケージの断面図である。
【0091】
本実施形態に係る共通パッケージ100は、回路素子8が温度制御素子7を備えていること以外は、前述した第1実施形態の共通パッケージ100と同様である。なお、以下の説明では、本実施形態の共通パッケージ100に関し、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、本実施形態の図では、前述した実施形態と同様の構成について、同一符号を付している。
【0092】
図17に示すように、本実施形態の共通パッケージ100では、回路素子8が温度制御素子7を備えている。言い換えると、回路素子8が温度制御素子7の機能を備えている。これにより、部品点数が削減し、共通パッケージ100の製造が容易となる。
【0093】
以上のように、本実施形態では、第1発振器1Aの回路素子8が温度制御素子7を備え、第2発振器1Bの回路素子8が温度制御素子7を備えている。これにより、部品点数が削減し、共通パッケージ100の製造が容易となる。
【0094】
このような第2実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0095】
<第3実施形態>
図18は、第3実施形態に係る共通パッケージの断面図である。
【0096】
本実施形態に係る共通パッケージ100は、回路素子4が、回路素子8および温度制御素子7を備えていること以外は、前述した第1実施形態の共通パッケージ100と同様である。なお、以下の説明では、本実施形態の共通パッケージ100に関し、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、本実施形態の図では、前述した実施形態と同様の構成について、同一符号を付している。
【0097】
図18に示すように、本実施形態の共通パッケージ100では、回路素子4が、回路素子8および温度制御素子7を備えている。言い換えると、回路素子4が、回路素子8および温度制御素子7の機能を備えている。これにより、部品点数が削減し、共通パッケージ100の製造が容易となる。なお、図示の形態では、振動素子6を加熱するために回路素子4で生じる熱が振動素子6に伝わり易くなるように、回路素子4を内側パッケージ3の上面に載置している。
【0098】
このような第3実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0099】
以上、本発明の発振器の製造方法を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。また、各実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0100】
1…発振器、1A…第1発振器、1B…第2発振器、1C…第3発振器、1D…第4発振器、2…外側パッケージ、21…外側ベース、211…上側凹部、211a…第1上側凹部、211b…第2上側凹部、211c…第3上側凹部、212…下側凹部、22…外側リッド、23…封止部材、241…内部端子、242…内部端子、243…内部端子、244…外部端子、3…内側パッケージ、31…内側ベース、311…凹部、311a…第1凹部、311b…第2凹部、311c…第3凹部、32…内側リッド、33…封止部材、341…内部端子、342…内部端子、343…内部端子、344…外部端子、4…回路素子、41…温度制御用回路、42…PLL回路、421…第1位相比較器、422…第1ローパスフィルター、423…電圧制御型発振器、424…第1分周器、425…第2位相比較器、426…第2ローパスフィルター、427…発振回路、428…第2分周器、43…出力バッファー回路、5…電圧制御型水晶発振器、50…水晶振動子、51…パッケージ、52…ベース、521…凹部、521a…第1凹部、521b…第2凹部、521c…第3凹部、53…リッド、54…封止部材、55…振動素子、551…水晶基板、553a…励振電極、553b…パッド電極、553c…引出電極、554a…励振電極、554b…パッド電極、554c…引出電極、561…内部端子、562…内部端子、564…外部端子、59…回路素子、591…発振回路、6…振動素子、61…水晶基板、621…励振電極、622…パッド電極、631…励振電極、632…パッド電極、7…温度制御素子、71…温度センサー、72…発熱回路、8…回路素子、81…発振回路、82…温度補償回路、100…共通パッケージ、B1…接合部材、B2…接合部材、B3…接合部材、B4…接合部材、BW1…ボンディングワイヤー、BW2…ボンディングワイヤー、BW3…ボンディングワイヤー、BW4…ボンディングワイヤー、BW5…ボンディングワイヤー、BW6…ボンディングワイヤー、Q2…収容空間、Q3…収容空間、Q5…収容空間、R1…第1ルート、R2…第2ルート、R3…第3ルート、S1…工程、S11…工程、S12…工程、S13…工程、S14…工程、S2…工程、S3…工程、S4…工程、S5…工程、SW1…第1スイッチ回路、SW2…第2スイッチ回路、Sa1…第1発振器第1工程、Sa2…第1発振器第2工程、Sa3…第1発振器第3工程、Sb1…第2発振器第1工程、Sb2…第2発振器第2工程、Sb3…第2発振器第3工程、Sc1…第3発振器第1工程、Sc2…第3発振器第2工程、Sd1…第4発振器第1工程、Sd2…第4発振器第2工程、Sd3…第4発振器第3工程、V1…第1発振信号、V2…第2発振信号、V3…第3発振信号、V4…第4発振信号、V5…第5発振信号、V6…第6発振信号、V7…第7発振信号、V8…第8発振信号