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特開2024-48712蛍光X線分析用サンプル台紙およびその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048712
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】蛍光X線分析用サンプル台紙およびその用途
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/223 20060101AFI20240402BHJP
   G01N 23/2204 20180101ALI20240402BHJP
   G01N 23/2055 20180101ALI20240402BHJP
【FI】
G01N23/223
G01N23/2204
G01N23/2055
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154781
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100106057
【弁理士】
【氏名又は名称】柳井 則子
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100142309
【弁理士】
【氏名又は名称】君塚 哲也
(72)【発明者】
【氏名】武井 俊達
(72)【発明者】
【氏名】田原 江利子
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA04
2G001BA18
2G001CA01
2G001KA01
2G001LA03
2G001MA04
2G001QA01
(57)【要約】
【課題】本発明は、蛍光X線分析によって極微量サンプルの元素および成分を特定するための良好な測定データを取得できる蛍光X線分析用サンプル台紙およびその用途を提供する。
【解決手段】本発明の蛍光X線分析用サンプル台紙は、坪量が200~800g/mであり、厚さが0.4~1.2mmであり、王研式透気度が3秒以下であり、JIS-P8251-2003に記載の525℃燃焼法で測定した灰分が0.5質量%以下である紙(α)である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
坪量が200~800g/mであり、厚さが0.4~1.2mmであり、王研式透気度が3秒以下であり、JIS-P8251-2003に記載の525℃燃焼法で測定した灰分が0.5質量%以下である紙である、蛍光X線分析用サンプル台紙。
【請求項2】
サンプルが載置される面のJIS P8147に準じて測定した1回目の静摩擦係数が、0.75以下である、請求項1に記載の蛍光X線分析用サンプル台紙。
【請求項3】
真空引き可能な容器と、
前記容器の開口面を前記容器内の開口端部で塞ぐサンプル台紙と、
を備え、
前記サンプル台紙が、請求項1または2に記載の蛍光X線分析用サンプル台紙である、蛍光X線分析用サンプル容器。
【請求項4】
蛍光X線分析を行うことを含む、試料分析方法であって、
請求項1もしくは2に記載の蛍光X線分析用サンプル台紙または請求項3に記載の蛍光X線分析用サンプル容器を、前記蛍光X線分析に用いることを特徴とする、試料分析方法。
【請求項5】
前記蛍光X線分析で得られた元素情報をX線回折データの解析に用いることをさらに含む、請求項4に記載の試料分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光X線分析用サンプル台紙およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光X線分析は、試料の元素情報の取得のために種々の産業分野、学術領域で広く利用されている。特許文献1では、蛍光X線分析の試料容器の作製に使用される挿抜治具セットが提案されている。特許文献1の試料容器においては、円筒状の部材の下側の開口面を覆うフィルムの上に試料が載せられる。
【0003】
蛍光X線分析においては、真空条件下で励起X線が測定サンプルに照射されることで元素情報に関する測定データが取得される。蛍光X線分析の測定サンプルの前処理として、加圧成型法がある。
加圧成型法では、例えば、図12および図13に示すように、内径Φが20~30mm程のリング101の開口部の内側にサンプル102を加圧して敷き詰める。リング101は、容器103の開口面に位置するサンプル台104の上に固定されている。
【0004】
ところで近年、微量サンプルの元素分析のニーズが高まっている。図12および図13に例示した一般的な加圧成型法による前処理は、約4gのサンプル量を必要とする。そのため、このままでは1g未満の微量サンプルを蛍光X線分析に適用できない。
そこで、微量サンプルの蛍光X線分析のために、図13に示したリング101の内径Φをさらに狭めることでサンプルの必要量を少なくする改良が試みられている。例えば、図14および図15に示すように内径Φが10mm程のリング111をサンプル台104の上に固定した場合、150~200mg程度の微量サンプルを蛍光X線分析に適用できるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】登録実用新案第3224198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来法やその改良をもってしても、例えば50mg未満程の極微量サンプルを蛍光X線分析に適用することは困難である。図14に示すようにリング111の内径をさらに狭くすると、サンプル102の載置面積が小さくなるからである。その結果、励起X線の照射面積を絞る必要が生じるため、励起X線の強度や照射面積を充分に確保できない。
【0007】
加えて、極微量サンプルの場合、図15に示すようにリング111の開口面の上端まで極微量のサンプル102を敷き詰めることができない。蛍光X線分析において、励起X線はサンプル台に対して傾斜して入射する。そのため、極微量のサンプル102がリング111の開口面より下側に存在すると、励起X線が極微量サンプルに直接的かつ直線的に当たりにくくなる。
【0008】
以上の理由から、従来の極微量サンプルの蛍光X線分析においては、元素情報を示すピーク値が低くなる。そのため、極微量サンプルの元素および成分を特定するための良好な測定データは得られない。
【0009】
本発明は、蛍光X線分析によって極微量サンプルの元素および成分を特定するための良好な測定データを取得できる蛍光X線分析用サンプル台紙およびその用途を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、下記の態様を有する。
[1]坪量が200~800g/mであり、厚さが0.4~1.2mmであり、王研式透気度が3秒以下であり、JIS-P8251-2003に記載の525℃燃焼法で測定した灰分が0.5質量%以下である紙である、蛍光X線分析用サンプル台紙。
[2]サンプルが載置される面のJIS P8147に準じて測定した1回目の静摩擦係数が、0.75以下である、[1]に記載の蛍光X線分析用サンプル台紙。
[3]真空引き可能な容器と;前記容器の開口面を前記容器内の開口端部で塞ぐサンプル台紙と;を備え;前記サンプル台紙が、[1]または[2]に記載の蛍光X線分析用サンプル台紙である、蛍光X線分析用サンプル容器。
[4]蛍光X線分析を行うことを含む、試料分析方法であって;[1]もしくは[2]に記載の蛍光X線分析用サンプル台紙または[3]に記載の蛍光X線分析用サンプル容器を、前記蛍光X線分析に用いることを特徴とする、試料分析方法。
[5]前記蛍光X線分析で得られた元素情報をX線回折データの解析に用いることをさらに含む、[4]に記載の試料分析方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、蛍光X線分析によって極微量サンプルの元素および成分を特定するための良好な測定データを取得できる蛍光X線分析用サンプル台紙およびその用途が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、蛍光X線分析用サンプル容器の一例を示す斜視図である。
図2図2は、図1の蛍光X線分析用サンプル容器の上面図である。
図3図3は、図2のA-A線における断面図である。
図4図4は、図1の蛍光X線分析用サンプル容器の載置面に極微量サンプルを載せたところを模式的に示す断面図である。
図5図5は、図1の蛍光X線分析用サンプル容器の載置面に極微量サンプルを載せた後に、極微量サンプルの上からフィルムで覆ったところを模式的に示す斜視図である。
図6図6は、蛍光X線分析用サンプル容器の他の一例を示す斜視図である。
図7図7は、サンプルや容器を蛍光X線分析装置の測定室に格納するためのホルダーを模式的に示す斜視図である。
図8図8は、図7のホルダーの上蓋を外したところを示す斜視図である。
図9図9は、図7のホルダーの上蓋および本体の間に蛍光X線分析用サンプル台紙を挟んだところを示す斜視図である。
図10図10は、実験例におけるセメント標準試料のX線回折の測定結果を示す。
図11図11は、実験例におけるモデル紙用薬品のX線回折の測定結果を示す。
図12図12は、従来の加圧成型法により作製した蛍光X線分析用のサンプルおよび容器を模式的に示す斜視図である。
図13図13は、従来の加圧成型法により作製した蛍光X線分析用のサンプルおよび容器を模式的に示す断面図である。
図14図14は、改良された従来の加圧成型法により作製した蛍光X線分析用のサンプルおよび容器を模式的に示す斜視図である。
図15図15は、改良された従来の加圧成型法により作製した蛍光X線分析用のサンプルおよび容器を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において、数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値および上限値として含むことを意味する。
本明細書に開示の物性値の下限値および上限値は任意に組み合わせて新たな数値範囲とすることができる。
【0014】
以下、いくつかの実施形態について適宜図面を参照しながら説明する。図面における寸法比は、説明の便宜上のものであり、実際のものとは異なる場合がある。また、図面において、同一の構成については同じ符号を用いて示し、重複する構成について説明を省略することがある。
【0015】
<蛍光X線分析用サンプル台紙>
本発明の蛍光X線分析用サンプル台紙は、特定の紙(α)である。紙(α)の坪量は200~800g/mである。紙(α)の厚さは0.4~1.2mmである。紙(α)の王研式透気度は3秒以下である。そして、紙(α)の灰分は0.5質量%以下である。該灰分は、JIS-P8251-2003に記載の525℃燃焼法で測定した値である。
以下、蛍光X線分析用サンプル台紙、紙(α)の詳細および好ましい態様について説明する。
【0016】
紙(α)の坪量は200~800g/mである。紙(α)の坪量は250~700/mが好ましく、300~500g/mがより好ましい。紙(α)の坪量が前記数値範囲内の下限値以上であると、極微量サンプルの蛍光X線分析におけるサンプル台紙として充分な剛度が発現しやすい。紙(α)の坪量が前記数値範囲内の上限値以下であると、サンプルの載置面の裏側から蛍光X線分析用サンプル台紙を真空引きしやすい。
紙(α)の坪量は、ISO536-1976に基づいて測定される値である。
【0017】
紙(α)の厚さは0.4~1.2mmである。蛍光X線分析用サンプル台紙が適用され得る真空引き容器の形状に応じて、紙(α)の厚さは調整できる。真空引き容器を用いる場合、励起X線が極微量サンプルに充分に照射されるように、また、できるだけ真空引き容器の開口面の付近に極微量サンプルが位置するように、紙(α)の厚さを決定することが好ましい。
紙(α)の厚さは0.4~1.2mmであるが、複数の紙を貼り合わせて厚みを調節してもよい。また、サンプル載置面の中央部分の領域の厚みを周囲より薄くしてもよい。
紙(α)の厚さは、JIS P8118に基づいて測定される値である。
【0018】
紙(α)の王研式透気度は3秒以下である。紙(α)の王研式透気度は2秒以下が好ましい。紙(α)の王研式透気度が前記数値範囲内の上限値以下であるため、サンプルの載置面の裏側から蛍光X線分析用サンプル台紙を真空引きすることができる。
紙(α)の王研式透気度は、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.5-2:2000に基づいて測定される値である。
【0019】
紙(α)の灰分は0.5質量%以下である。紙(α)の灰分は0.3質量%以下が好ましく、0.2質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下がさらに好ましい。紙(α)の灰分が前記上限値以下であるため、蛍光X線分析の測定データが紙(α)の影響を受けにくい。結果、ノイズが少なく、良好な蛍光X線データが得られやすい。
紙(α)の灰分は、JIS-P8251―2003に記載の525℃燃焼法で測定した灰分である。
【0020】
紙(α)の剛度は特に限定されるものではないが、横方向のテーバーこわさが8mNm以上であることが好ましい。横方向のテーバーこわさが前記下限値以上であると、極微量サンプルを載置するのに充分な剛性が得られやすい。紙(α)の剛度の上限値は特に限定されるものではない。蛍光X線分析の前処理において蛍光X線分析用サンプル台紙を使用する際の便宜を考慮して適宜に設定すればよい。
紙(α)の剛度は、JIS P8125に基づいて測定される値である。
【0021】
紙(α)のサンプル載置面のJIS P8147に準じて測定した1回目の静摩擦係数は0.75以下であることが好ましく、0.70以下であることがより好ましい。静摩擦係数が前記上限値以下であると、サンプルの載置面に載置したサンプルの回収が容易となる。該静摩擦係数の下限値は特に限定されるものではないが、例えば、0.5以上であると、サンプルの取り扱いがしやすくなる。
【0022】
紙(α)のサンプルの載置面には、載置面であることを示す標識が付されていてもよい。また、紙(α)の表面のうちサンプルの載置面にはプレス処理が施されてもよい。
プレス未処理の場合、紙の空隙に細かい粒子が入り込んだときに、サンプル回収が難しくなる。そのため極微量サンプルを取り扱う場合、サンプルを回収した後の工程で同じサンプルについて分析ないし測定する場合に、分析値が影響を受ける可能性がある。プレス処理を施すことにより、サンプルが載置面に付着しにくくなる。よって、蛍光X線分析用サンプル台紙からほぼ100%量の測定後のサンプルの回収を見込むことができる。
【0023】
プレス処理は、特に限定されるものではないが、例えば、サンプルの載置面となる紙(α)の表面を乾燥状態で金属板等にてプレスすることは、好ましい手法の一つである。紙の表面をプレスすることで、表面の紙繊維の毛羽立ちを抑えることができるため、静摩擦係数を下げることができる。
プレス処理であれば、静摩擦係数を低くするための薬剤等を塗布する必要もない。そのため、蛍光X線分析を行ったときに、バックグラウンドとして検出される元素を追加しなくて済む。かかるプレス処理は、良好な蛍光X線データの取得に寄与し得る。
プレス処理として、湿潤状態でのプレスも可能である。ただし、紙の密度が上昇することで真空引きの効率が低下するため、乾燥状態でのプレスが好ましい。
【0024】
紙(α)は坪量、厚さ、王研式透気度および灰分が所定の条件をそれぞれ満たすものであれば、抄紙して得たものでもよく、市販品でもよい。市販品としては、例えば、ADVANTEC社のろ紙No.26、No.28、No.327、No.424等が挙げられる。また、ろ紙を重ねて使用することもできる。ろ紙を重ねて使用する場合、上述した紙(α)の各物性値は、重ねた状態について測定した値とする。
【0025】
紙(α)の形状は特に限定されない。蛍光X線分析に適用するときの便宜を考慮して適宜の形状に切り出せばよい。
【0026】
(蛍光X線分析用サンプル台紙の使用例)
本発明の蛍光X線分析用サンプル台紙は、蛍光X線分析の極微量サンプルを載置するために用いられる。
例えば、真空引き容器の開口端部の内側で開口面を塞ぐように、蛍光X線分析用サンプル台紙を真空引き容器に取り付けることができる。このとき、励起X線が充分に照射されるように、極微量サンプルを蛍光X線分析用サンプル台紙の表面に敷き詰めることができる。その後、敷き詰めた極微量サンプルの上からフィルムで覆うことで、極微量サンプルの載置面の裏側から真空引きできるようにする。
以上の処理が済んだのち、試料を蛍光X線分析装置の測定室に格納するためのホルダーに真空引き容器ごと極微量サンプルを蛍光X線分析装置の測定室に格納することができる。この例の詳細については、図1図5を用いて後述する。
【0027】
本発明の蛍光X線分析用サンプル台紙は、上述のように真空引き容器に取り付けて使用できるが、真空引き容器の使用は必須ではない。
例えば、前処理において、蛍光X線分析用サンプル台紙の載置面に極微量サンプルを載せた後、極微量サンプルの上からフィルムで載置面を覆うことができる。この状態で、極微量サンプルに励起X線が照射されるように、蛍光X線分析装置用のホルダーに直接固定することができる。このようにして蛍光X線分析用サンプル台紙を該ホルダーに取り付けることで、前処理を行うこともできる。この例の詳細については、図9を用いて後述する。
【0028】
フィルムは、蛍光X線分析の測定時において極微量サンプルが真空条件下の測定室内で飛散することを防止するために、極微量サンプルの載置面を覆うものである。フィルムの材質は、測定データのノイズとなる成分を含むものでなければ、特に限定されるものではない。例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムが挙げられる。
【0029】
(作用機序)
以上いくつかの例を示しながら説明した本発明の蛍光X線分析用サンプル台紙は、坪量、厚み、王研式透気度および灰分が所定の各条件を満たす特定の紙(α)である。紙(α)の坪量、厚み、王研式透気度および灰分が所定の各数値要件を満たすことで、極微量サンプルの蛍光X線分析に適したサンプル台紙が提供される。
紙(α)である蛍光X線分析用サンプル台紙によれば、紙(α)の表面の中央部分から周囲にかけて極微量サンプルを敷き詰めることで、極微量サンプルへの励起X線の照射面積を拡張できる。励起X線の照射面積を絞る必要もないため、励起X線の強度や照射面積を充分に確保できる。
加えて、蛍光X線分析の前処理において真空引き用の容器の開口面を蛍光X線分析用サンプル台紙で塞ぐ場合、紙(α)の厚みを所定の範囲内で変更することで、励起X線が極微量サンプルに直接当たるようにすることができる。
よって、本発明の蛍光X線分析用サンプル台紙によれば、蛍光X線分析において極微量サンプルに充分な強度の励起X線を照射できる。結果、元素情報を示すピーク値が高くなるため、極微量サンプルの元素および成分を特定するための良好な測定データが得られる。
【0030】
<蛍光X線分析用サンプル容器>
本発明の蛍光X線分析用サンプル容器は、真空引き可能な容器と;該容器の開口面を該容器内の開口端部で塞ぐサンプル台紙と;を備える。そして、該サンプル台紙が、上述の本発明の蛍光X線分析用サンプル台紙である。
【0031】
図1図2および図3に示す蛍光X線分析用サンプル容器10は、真空引き可能な容器2と;容器2の開口面2aを該容器2内の開口端部で塞ぐサンプル台紙1と;を備える。サンプル台紙1は、本発明の蛍光X線分析用サンプル台紙の一例である。
【0032】
図1図2および図3に示すように、容器2は、略円筒状の上壁部2bと、上壁部2bの下側に設けられた底部2cとを有する。底部2cは、上壁部2bよりその径が大きい略円筒状である。上壁部2bおよび底部2cの内部の空間は互いに連続しているが、底部2cの下側の開口は底面2dによって塞がれている。
【0033】
図3に示すように、容器2の開口面2aは、容器2内の開口端部でサンプル台紙1によって塞がれている。容器2内には、サンプル台紙1を取り付けるための足場2fが形成されている。足場2fは、上壁部2bの内壁面の形状に沿って開口面2aの周縁に形成されている。
【0034】
図3に示すように、サンプル台紙1は、足場2fの上に取り付けられている。サンプル台紙1は、上面(図3の上側)がサンプルの載置面となるように容器2に取り付けられている。サンプル台紙1の上には、サンプル(極微量サンプル)を載置するための空間5が形成される。空間5の上端は特に限定されるものではないが、上壁部2bの上端部とすることができる。
【0035】
サンプル台紙1は、容器2の開口面2aに押し込まれることで容器2に固定され得るが、容器2への取り付け方は特に限定されるものではない。サンプル台紙1は、必要に応じて容器2の足場2fに接着されていてもよい。
【0036】
図3に示す開口面2aの直径Rは、例えば、20~30mm、10~20mm、5~10mm等であり得る。直径Rが大きいほど、蛍光X線分析の測定時に励起X線の照射面積を確保しやすい。また、直径Rが小さいほど、極微量サンプルであっても蛍光X線分析の前処理のときにサンプルを空間5に敷き詰めやすい。
図3に示すサンプル台紙1の厚さDの詳細および好ましい態様は、蛍光X線分析用サンプル台紙の厚さについて説明した内容と同じである。
【0037】
容器2は、蛍光X線分析のために真空引きすることができれば、特に限定されるものではない。例えば、容器2の底部2cや底面2dには、真空引きするための溝が適宜形成され得る。容器2を含む製品として、リガク社製品の微量粉末用容器を購入してもよい。微量粉末用容器の一部の部品には、容器2として好適に使用できるものが含まれている。
【0038】
(作用機序)
蛍光X線分析用サンプル容器10によれば、図4に示すように、サンプル台紙1の載置面に極微量のサンプル3を載せたとき、サンプル3への励起X線の照射面積を拡張しやすい。また、サンプル台紙1の厚さを適宜変更することで、上壁部2bの上端部がサンプル3に照射されるべき励起X線の妨げとならないように、サンプル3をより上側に位置させることができる。そのため、励起X線が極微量のサンプル3に直接的かつ直線的に当たりやすい。
以上の理由から、蛍光X線分析において極微量サンプルに充分な強度の励起X線を照射できる。結果、元素情報を示すピーク値が高くなるため、極微量サンプルの元素および成分を特定するための良好な測定データが得られる。
【0039】
(蛍光X線分析用サンプル容器の使用例)
蛍光X線分析用サンプル容器は、蛍光X線分析の前処理から測定まで使用される。前処理においては、例えば図5に示すように、サンプル台紙の上側の載置面に極微量のサンプル3が載置される。サンプル3は、その上からフィルム4で覆われている。そのため、蛍光X線の測定時において、真空条件の測定室内でサンプル3が飛散することを防止できる。
【0040】
(他の例)
図6に示す蛍光X線分析用サンプル容器10’は、サンプルの載置面にプレス処理が施されている点で、蛍光X線分析用サンプル容器10と異なる。つまり、サンプル台紙1’は、表面にプレス処理が施されている点でサンプル台紙1と異なる。
【0041】
サンプル台紙1’の中央部分の領域1’aには、プレス処理が施されている。領域1’aの周囲を囲む領域1’bには、プレス処理が施されていない。領域1’aは、例えば、サンプル台紙1の中央部分を押しつぶすことで形成できる。表面の紙繊維の毛羽立ちを抑えることで、領域1’aがプレス処理されている。そのため、蛍光X線分析用サンプル容器10’によれば、蛍光X線分析の測定後のサンプルを載置面から回収しやすい。
よって、同じサンプルについて蛍光X線分析以外の分析を追加して行うとき、蛍光X線分析用サンプル容器10’は便利である。サンプル台紙1’は、本発明の蛍光X線分析用サンプル台紙の一例であるため、当然ながら蛍光X線分析用サンプル容器10’においても蛍光X線分析用サンプル容器10と同様の作用効果が得られる。
【0042】
(変形例)
蛍光X線分析用サンプル容器10および蛍光X線分析用サンプル容器10’において、容器2の上壁部2bおよび底部2cは一体的な部材として図示したが、他の例では、上壁部および底部をそれぞれ別々の部材で形成した後、これらの部材を接合してもよい。
【0043】
<試料分析方法>
本発明の試料分析方法は、蛍光X線分析を行うことを含む。
蛍光X線分析(XRF)は、サンプルの元素情報の取得のために実行される。蛍光X線分析には、蛍光X線分析装置が用いられる。蛍光X線分析装置は、特に限定されるものではない。また、蛍光X線分析の詳細な条件も特に限定されるものではない。種々の装置、実験プロトコルにしたがって蛍光X線分析を行うことができる。
【0044】
本発明の試料分析方法は、上述した本発明の蛍光X線分析用サンプル台紙または上述した本発明の蛍光X線分析用サンプル容器を蛍光X線分析に用いることを特徴とする。そのため、極微量サンプルの場合であっても、励起X線の照射面積を拡張できる。また、充分量の励起X線を照射することができる。
よって、極微量サンプルの元素および成分を特定するための良好な測定データが得られる。
【0045】
上述した蛍光X線分析用サンプル容器は、本発明の蛍光X線分析用サンプル台紙をサンプル台紙として備える。そのため、本発明の試料分析方法では、蛍光X線分析用サンプル台紙を必然的に蛍光X線分析に用いることになるが、蛍光X線分析用サンプル容器の使用は必須ではない。
【0046】
蛍光X線分析用サンプル台紙を用いる試料分析方法において、分析対象のサンプル量は特に限定されるものではない。極微量サンプルの量は、特に限定されるものではないが、例えば、50~100mg、25~50mg、5~25mg等であり得る。
【0047】
以下、試料分析方法の一例について詳細に説明する。
一例において、試料分析方法は、以下のステップS11、ステップS12およびステップS13を含み得る。
ステップS11:蛍光X線分析のサンプルの前処理
ステップS12:蛍光X線分析の測定データの取得
ステップS13:蛍光X線分析の測定データの解析
【0048】
ステップS11、ステップS12およびステップS13は、蛍光X線分析に関する。
ステップS11では、蛍光X線分析のためのサンプル(典型的には、極微量サンプル)の前処理が行われる。前処理は、良好な蛍光X線データを得るためのものである。次いで、ステップS12では、サンプルに励起X線を照射することで蛍光X線データを取得する。その後、ステップS13では、蛍光X線分析の測定データを解析することで、サンプル中に含まれる元素に関して情報を取得する。
【0049】
前処理においては、サンプルを蛍光X線分析用サンプル台紙の載置面に広げて敷き詰める。サンプル(典型的には、粉末状)の厚みは特に限定されるものではないが、一般的な蛍光X線分析装置であれば、50~300μm程度あればよい。
【0050】
蛍光X線分析には、図7および図8に示すようなホルダー20が用いられる。ホルダー20はサンプルを蛍光X線分析装置の測定室に格納するために用いられる。
ホルダー20は、上蓋20aと本体20bとを有する。上蓋20aには、蛍光X線分析の測定時にサンプルに励起X線を照射するための開口20cが形成されている。本体20bには、蛍光X線分析用サンプル容器を固定するための収容部20dが形成されている。収容部20dに蛍光X線分析用サンプル容器を収容した状態で上蓋20aを閉めると、開口20cの位置にはサンプル台紙の載置面が見える。
【0051】
蛍光X線分析用サンプル容器を用いる場合、サンプルとその飛散防止用のフィルムとが固定された蛍光X線分析用サンプル容器(例えば、図5を参照)が、図8に示す収容部20dに収容される。蛍光X線分析用サンプル容器を収容した状態で上蓋20aを閉めると、サンプルと蛍光X線分析用サンプル容器がホルダー20に固定される。その後、ホルダー20ごとサンプルが蛍光X線分析装置の測定室に格納される。
【0052】
蛍光X線分析装置の測定室への格納後には、蛍光X線分析用サンプル容器の下部からサンプル台紙の裏面を真空引きすることで、測定室内が真空条件となる。その後、サンプル台紙の載置面に広げられたサンプルに、励起X線が照射される。
【0053】
蛍光X線分析用サンプル容器を用いない場合、つまり、真空引き可能な容器を用いない場合、サンプルおよびサンプルの載置面を飛散防止用のフィルムで覆った後に、図9に示すようにホルダー20の上蓋20aと本体20bの間に、サンプル台紙1を挟めばよい。このとき、サンプル台紙1に載置されるサンプルが上蓋20aの開口20cの位置に見えるように、上蓋20aを閉める。その後、ホルダー20ごとサンプルが蛍光X線分析装置の測定室に格納される。
格納後には、サンプル台紙1の裏面を真空引きすることで、測定室内が真空条件となる。その後、サンプル台紙の載置面に広げられたサンプルに、励起X線が照射される。
【0054】
本発明の試料分析方法において、X線回折分析を行う場合は、蛍光X線分析で得られた元素情報をX線回折データの解析に用いることをさらに含むことが好ましい。結晶構造解析に蛍光X線分析で得られた元素情報を与えることで、極微量サンプルが多成分系であるときでも、その構成成分の検出や特定が可能となる。
【0055】
X線回折分析(XRD)は、サンプルの結晶構造の取得のために実行される。X線回折分析には、X線回折分析装置が用いられる。X線回折分析装置は、特に限定されるものではない。また、X線回折分析の詳細な条件も特に限定されるものではない。種々の装置、実験プロトコルにしたがってX線回折分析を行うことができる。
【0056】
一例において、X線回折分析が行われる場合、本発明の試料分析方法は、以下のステップS21、ステップS22およびステップS23を上述のステップS11、ステップS12およびステップS13に加えてさらに含み得る。
ステップS21:X線回折分析のサンプルの前処理
ステップS22:X線回折分析の測定データの取得
ステップS23:X線回折分析の測定データの解析
【0057】
ステップS21、ステップS22およびステップS23は、X線回折分析に関する。
ステップS21では、ステップS12にて蛍光X線分析に供したサンプルを回収した後、該サンプルについてX線回折分析を行うための前処理が行われる。
このとき、蛍光X線分析用サンプル台紙にプレス処理が施されていると、サンプルを回収しやすいため、X線回折分析の前処理の作業性が向上し得る。X線回折分析の前処理は、種々の実験プロトコルにしたがって行うことができるため、特に限定されるものではない。例えば、無反射試料板の使用は、良好なX線回折データが得られる点で有用である。
【0058】
ステップS22では、ステップS21で前処理したサンプルについて、X線回折データを取得する。その後、ステップS23では、得られたX線回折データの解析が行われる。このとき、ステップS13で取得した元素情報をX線回折データの解析に用いることができる。
X線回折データに基づく結晶構造解析に、蛍光X線分析で得られた元素情報を与えることで、極微量サンプルが多成分系であるときでも、その構成成分の検出や特定が可能となる。
【0059】
以上、具体的な実施形態の開示について説明したが、各実施形態は例として提示されたものであり、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書に記載された各実施形態は、発明の効果が奏される範囲内で、様々に変形することができ、かつ、実施可能な範囲内で、他の実施形態により説明された特徴と組み合わせることができる。
【0060】
<実験例>
以下、発明者が行った実験結果を示す。本発明は以下の記載に限定されない。
【0061】
1.試料
蛍光X線分析の標準試料として、蛍光X線分析用セメント標準試料601A(XRF-1、一般社団法人セメント協会の販売品)を用いた。
検証のために、モデル紙用薬品を調製した。モデル紙用薬品は、炭酸カルシウム(カルサイト)1g、炭酸カルシウム(アラゴナイト)3g、酸化チタン(ルチル)1g、酸化チタン(アナターゼ)1g、酸化亜鉛0.2g、タルク0.2g、クロライト1gの混合物である。クロライトは日本タルク株式会社の販売品を用いた。炭酸カルシウム(カルサイト)および炭酸カルシウム(アラゴナイト)は、奥多摩工業株式会社の販売品を用いた。その他については関東化学株式会社の販売品を用いた。
【0062】
2.蛍光X線分析装置、測定条件
蛍光X線分析装置として、リガク社製品の波長分散型ZSX PrimusIVを用いた。測定条件は以下の通りである。
・X線管:エンドウィンドウ型Rh管球(最大出力4kW、定格電圧40kV、定格電流:100mA)
・重元素用検出器:シンチレーションカウンター
・軽元素用検出器:ガスフロー
・2θ測定範囲:0°~148°
・試料径:10mmφ、30mmφの2種類を用意した。
【0063】
3.X線回折分析装置、測定条件
X線回折分析装置として、リガク社製品のRINT-UltimaIIIを用いた。測定条件は以下の通りである。
・検出器:高速検出器
・電圧:40kV
・電流:40mA
・光学系:CBO(クロスビーム光学系)を用いた平行ビーム
・2θ測定範囲:5°~60°
・スキャンスピード:0.5°/分~10°/分
・試料板:無反射試料板を適宜使用した。
【0064】
4.蛍光X線分析の前処理(改良ルースパウダー法)
リガク社製品の微量粉末用容器の上部の開口面を塞ぐように、厚さが1.0mmのろ紙を載せて固定した。このろ紙の坪量は400g/mであり、王研式透気度は1秒以下であり、灰分は0.5質量%以下である。
リガク製微量粉末用容器に付属するリングを使用せずに、ろ紙に約50mgの試料を載せた後、表面をフィルムで覆った。結果として、載置した試料の直径(測定面積)を10mmφから約20~30mmφに拡張できた。
【0065】
5.蛍光X線分析によるセメント標準試料の元素分析
改良ルースパウダー法の有用性を確認するため、50mgのセメント標準試料601Aを「4.蛍光X線分析の前処理」で説明した手法で前処理した。「2.蛍光X線分析装置、測定条件」に示した条件で、蛍光X線分析を行った。結果を表1に示す。表1中、分析値の元素表示は、標準試料に記載された理論値に併せ、酸化物表示としている。理論値の「Ig.loss」はIgnition lossの略称であり、強熱減量を意味する。
【0066】
【表1】
【0067】
改良ルースパウダー法で実施したセメント標準試料の蛍光X線分析による分析値は、理論値とほぼ同等であった。この結果から、改良ルースパウダー法の有用性を確認することができた。
【0068】
6.X線回折分析によるセメント標準試料の結晶構造分析
「5.蛍光X線分析によるセメント標準試料の元素分析」で用いたものと同じセメント標準試料を50mg計量した。「4.蛍光X線分析の前処理」で説明した手法で50mgのセメント標準試料を前処理した。「3.X線回折分析装置、測定条件」に示した条件で、X線回折を測定した。測定結果を図10に示す。検出したピークの一覧を表2に示す。セメント標準試料601Aの結晶相を表3に示す。
【0069】
【表2】
【0070】
【表3】
【0071】
蛍光X線分析の元素情報を使用せず、通常のX線回折データの解析を行ったところ、主要成分であるエーライト(CS)、ビーライト(CS)、アルミネート(CA)、フェライト(CAF)の4成分を検出できたが、その他の成分を解析できなかった。一方、主要成分以外に、蛍光X線分析で得られた主要成分元素(Ca、Si、Al、Fe、S)、および一般的な元素情報(C、O)を与えて解析することで、既に検出できた4成分に加えて炭酸カルシウム(カルサイト)、硫酸カルシウム(半水和物、一水和物)を同定できた。
【0072】
7.蛍光X線によるモデル紙用薬品の元素分析
比較検証のために、従来法と改良ルースパウダー法でそれぞれ前処理したモデル紙用薬品について蛍光X線分析を行った。それぞれの測定で得られた分析値を比較した。結果を表4に示す。
【0073】
【表4】
【0074】
表4において分析値の元素表示は、表1に併せて酸化物表示としている。結果、主要元素はCa、Ti、Si、Mg、Al、Znであった。微量元素はFe、P、K、Sであった。表4に示す通り、従来法と改良ルースパウダー法でほぼ変わらない分析結果が得られた。
【0075】
8.X線回折によるモデル紙用薬品の結晶構造分析
「4.蛍光X線分析の前処理」で説明した手法で50mgのモデル紙用薬品を前処理した。「3.X線回折分析装置、測定条件」に示した条件で、X線回折を測定した。測定結果を図11に示す。また、検出したピーク一覧を表5に示す。
【0076】
【表5】
【0077】
セメント標準試料のX線回折分析と同様に、上述の「7.蛍光X線によるモデル紙用薬品の元素分析」で取得した元素情報を、X線回折を利用した結晶構造解析に用いることで炭酸カルシウム(カルサイト/アラゴナイト)、酸化チタン(ルチル/アナターゼ)、酸化亜鉛、タルク、クロライトの主要7成分を問題なく検出することができた。蛍光X線分析によって取得できる元素情報を使用せず通常のX線回折解析を行うと、タルク、クロライトを検出できなかった。複雑な多成分系の結晶構造解析において、蛍光X線分析による元素情報が有益となることが確認できた。
【0078】
9.実験のまとめ
以上の実験結果に示すように、蛍光X線分析によって極微量サンプルの元素および成分を特定するための良好な測定データを取得するための技術を確立できた。蛍光X線分析による蛍光X線分析の元素情報を、X線回折分析の測定データと組み合わせることで、極微量サンプルにおける多成分系結晶構造解析も可能となることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明によれば、蛍光X線分析によって極微量サンプルの元素および成分を特定するための良好な測定データを取得できる蛍光X線分析用サンプル台紙およびその用途が提供される。
【符号の説明】
【0080】
1 サンプル台紙(蛍光X線分析用サンプル台紙)
2 真空引き可能な容器
2a 真空引き可能な容器の開口面
10 蛍光X線分析用サンプル容器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
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