(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048714
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】作業機械、および作業機械の制御方法
(51)【国際特許分類】
B62D 6/00 20060101AFI20240402BHJP
B62D 5/18 20060101ALI20240402BHJP
B62D 113/00 20060101ALN20240402BHJP
B62D 123/00 20060101ALN20240402BHJP
【FI】
B62D6/00
B62D5/18
B62D113:00
B62D123:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154783
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】竹中 唯太
【テーマコード(参考)】
3D232
3D333
【Fターム(参考)】
3D232CC28
3D232CC33
3D232CC38
3D232DC33
3D232DC34
3D232EA10
3D232EB30
3D232EC04
3D232GG20
3D333EB06
3D333HA02
3D333LA02
3D333MA04
(57)【要約】
【課題】センサが故障している場合に意図せずステアリング速度制限が生じることを防止することが可能な作業機械を提供すること。
【解決手段】作業機械1では、ステアリングシリンダ9a、9bは、リアフレーム11に対してフロントフレーム11を回転させる。操向入力デバイス22は、リアフレーム12に対するフロントフレーム11の回転動作を入力する。第1センサ23は、リアフレーム12に対するフロントフレーム11の回転角度を検出する。コントローラ25は、第1センサ23の検出値によってフロントフレーム11が所定角度範囲における端の範囲に位置していると判定した場合に走行入力デバイス21の入力に応じたフロントフレーム11の回転速度を制限する速度制限制御を、第1センサ23の故障状態に基づいて実行する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1フレームと、
前記第1フレームに接続され、前記第1フレームに対して所定角度範囲で回転可能な第2フレームと、
前記第1フレームに対して前記第2フレームを回転させるアクチュエータと、
前記第1フレームに対する前記第2フレームの回転動作を入力する操作部材と、
前記第1フレームに対する前記第2フレームの回転角度を検出する第1センサと、
前記第1センサの検出値によって前記第2フレームが前記所定角度範囲における終端範囲に位置していると判定した場合に前記操作部材の入力に応じて前記第2フレームの回転速度を制限する速度制限制御を、前記第1センサの故障状態に基づいて実行する制御部と、を備えた、
作業機械。
【請求項2】
前記第2フレームの前記第1フレームに対する回転角度を検出する第2センサを更に備え、
前記制御部は、前記速度制限制御において前記第1センサまたは前記第2センサの検出値によって前記第2フレームが前記所定角度範囲における前記終端範囲に位置していると判定し、
前記第1センサおよび前記第2センサの故障状態に基づいて前記速度制限制御を実行する、
請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記速度制限制御は、第1制御と、前記第1制御よりも前記回転速度の制限を緩和した第2制御と、を含み、
前記制御部は、
前記第1センサと前記第2センサの双方とも故障していないと判定した場合、前記第1制御による前記速度制限制御を実行し、
前記第1センサと前記第2センサのいずれか一方のみが故障していると判定した場合、前記第2制御による前記速度制限制御を実行する、
請求項2に記載の作業機械。
【請求項4】
前記速度制限制御は、第1制御と、前記第1制御よりも前記回転速度の制限を緩和した第2制御と、を含み、
前記制御部は、
前記第1センサの検出値と前記第2センサの検出値の差が所定閾値未満のとき、前記第1制御または前記第2制御による前記速度制限制御を実行する、
請求項2に記載の作業機械。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1センサと前記第2センサの双方とも故障していると判定した場合、または前記第1センサの検出値と前記第2センサの検出値の差が所定閾値以上の場合、前記所定角度範囲の全範囲において、前記回転速度を制限する第3制御を実行する、
請求項2に記載の作業機械。
【請求項6】
前記操作部材の操作に応じて前記アクチュエータへの作動油の供給量を変更するバルブを更に備え、
前記制御部は、前記速度制限制御において、前記アクチュエータに供給可能な作動油の量の最大値を制限するように前記バルブを制御することによって、前記回転速度を制限する、
請求項1に記載の作業機械。
【請求項7】
前記操作部材の操作に応じて前記アクチュエータへの作動油の供給量を変更するバルブを更に備え、
前記制御部は、
前記第1制御では、前記終端範囲において前記終端範囲に含まれる終端に向かうに従って、前記アクチュエータに供給可能な作動油の量の最大値を徐々に小さく設定し、前記端に達する前に前記最大値がゼロになるように前記バルブを制御し、
前記第2制御では、前記終端範囲おいて前記終端範囲に含まれる前記終端に向かうに従って、前記アクチュエータに供給可能な作動油の量の最大値を徐々に小さく設定し、前記端に達する前に前記最大値がゼロよりも大きい所定値になるように前記バルブを制御する、
請求項3に記載の作業機械。
【請求項8】
前記操作部材の操作に応じて前記アクチュエータへの作動油の供給量を変更するバルブを更に備え、
前記制御部は、前記第3制御において、前記アクチュエータに供給可能な作動油の量の最大値を前記所定角度範囲の全範囲で所定値に制限することによって、前記回転速度を制限する、
請求項5に記載の作業機械。
【請求項9】
第1フレームと、前記第1フレームに接続され、前記第1フレームに対して所定角度範囲で回転可能に接続された第2フレームと、前記第1フレームに対して前記第2フレームを回転させるアクチュエータと、前記第1フレームに対する前記第2フレームの回転動作を入力する操作部材と、を備えた作業機械の制御方法であって、
前記第1フレームに対する前記第2フレームの回転角度を検出する第1センサの故障状態を取得する故障状態取得ステップと、
前記第1センサの検出値によって前記第2フレームが前記所定角度範囲における終端範囲に位置していると判定した場合に前記操作部材の入力に応じて前記第2フレームの回転速度を制限する速度制限制御を、前記第1センサの故障状態に基づいて実行する実行ステップとを備えた、
作業機械の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械および作業機械の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホイールローダ等の屈折機構を有する作業機械は、前後の独立したフレームを有し、ステアリング操作を行う際には前後フレームを繋ぐステアリング用の油圧シリンダの伸縮によって車両が屈折する。この油圧シリンダを駆動する作動油がメインバルブを介して油圧ポンプによって供給される。
【0003】
リアフレームに対するフロントフレームのステアリング可能な角度には機構的な限界があり、ステアリングの最大角度(ステアリング終端)でフロントフレームとリアフレームが接触すると大きな衝撃が発生する。
【0004】
そのため、ステアリング可能な角度の終端範囲にフロントフレームが位置していることをセンサによって検出し、操向入力デバイスによって要求されるステアリング速度よりも実際のステアリング速度を小さくするように制御することによって、衝撃を緩和する構成が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、リアフレームに対するフロントフレームの回転角度を検出するセンサが故障している場合には、終端範囲以外において意図せずにステアリング速度を制限する制御が実行される可能性ことがある。
【0007】
本開示は、センサが故障している場合に意図せずステアリング速度制限が生じることを防止することが可能な作業機械および作業機械の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様に係る作業機械は、第1フレームと、第2フレームと、アクチュエータと、操作部材と、第1センサと、制御部と、を備える。第2フレームは、第1フレームに接続され、第1フレームに対して所定角度範囲で回転可能である。アクチュエータは、第1フレームに対して第2フレームを回転させる。操作部材は、第1フレームに対する第2フレームの回転動作を入力する。第1センサは、第1フレームに対する第2フレームの回転角度を検出する。制御部は、第1センサの検出値によって第2フレームが所定角度範囲における終端範囲に位置していると判定した場合に操作部材の入力に応じた第2フレームの回転速度を制限する速度制限制御を、第1センサの故障状態に基づいて実行する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、センサが故障している場合に意図せずステアリング速度制限が生じることを防止することが可能な作業機械および作業機械の制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示にかかる実施形態1の作業機械を示す側面図。
【
図2】
図1のステアリングシステムの構成を示す図。
【
図3】リアフレームに対するフロントフレームの回動可能範囲を示す図
【
図4】第1モードにおいてフレーム角度に対して設定される許容最大目標流量を示す図。
【
図5】第2モードにおいてフレーム角度に対して設定される許容最大目標流量を示す図。
【
図6】第3モードにおいてフレーム角度に対して設定される許容最大目標流量を示す図。
【
図7】センサの故障モードとその検出方法のテーブルを示す図。
【
図8】実際のセンサ状態と、コントローラによるセンサ状態の認識と、実行されるモードとのテーブルを示す図。
【
図9】本開示にかかる実施形態1の作業機械の制御動作を示すフロー図。
【
図10】本開示に係る実施形態2の作業機械のステアリングシステムの構成を示す図。
【
図11】ソフトエンドストップの制御を実行する場合と実行しない場合においてフレーム角度に対して設定される最大目標流量を示す図。
【
図12】本開示にかかる実施形態2の作業機械の制御動作を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示にかかる作業機械について図面を参照しながら以下に説明する。
【0012】
(実施形態1)
<構成>
(作業機械の概要)
図1は、本実施形態1の作業機械1の側面図である。本実施形態1の作業機械1は、車体フレーム2と、作業機3と、一対のフロントタイヤ4、キャブ5、エンジンルーム6、一対のリアタイヤ7、ステアリングシステム8(
図2参照)、ステアリングシリンダ9a、9b(アクチュエータの一例)と、を備えている。
【0013】
なお、以下の説明において、「前」、「後」、「右」、「左」、「上」、及び「下」とは運転席から前方を見た状態を基準とする方向を示す。また、「車幅方向」と「左右方向」は同義である。
【0014】
作業機械1は、作業機3を用いて土砂積み込み作業などを行う。
【0015】
車体フレーム2は、いわゆるアーティキュレート式であり、フロントフレーム11(第2フレームの一例)とリアフレーム12(第1フレームの一例)と、連結軸部13と、を有している。フロントフレーム11は、リアフレーム12の前方に配置されている。連結軸部13は、車幅方向の中央に設けられており、フロントフレーム11とリアフレーム12を互いに揺動可能に連結する。一対のフロントタイヤ4は、フロントフレーム11の左右に取り付けられている。また、一対のリアタイヤ7は、リアフレーム12の左右に取り付けられている。
【0016】
作業機3は、図示しない作業機ポンプからの作動油によって駆動される。作業機3は、ブーム14と、バケット15と、リフトシリンダ16と、バケットシリンダ17と、ベルクランク18と、を有する。ブーム14は、フロントフレーム11に装着されている。バケット15は、ブーム14の先端に取り付けられている。
【0017】
リフトシリンダ16およびバケットシリンダ17は、油圧シリンダである。リフトシリンダ16の一端はフロントフレーム11に取り付けられており、リフトシリンダ16の他端はブーム14に取り付けられている。リフトシリンダ16の伸縮により、ブーム14が上下に揺動する。バケットシリンダ17の一端はフロントフレーム11に取り付けられており、バケットシリンダ17の他端はベルクランク18を介してバケット15に取り付けられている。バケットシリンダ17が伸縮することによって、バケット15が上下に揺動する。
【0018】
キャブ5は、リアフレーム12上に載置されており、内部には、ステアリング操作のための操向入力デバイス22(
図2参照)、作業機3を操作するためのレバー、各種の表示装置等が配置されている。エンジンルーム6は、キャブ5の後側であってリアフレーム12上に配置されており、エンジンが収納されている。
【0019】
図2は、ステアリングシステム8を示す構成図である。ステアリングシステム8は、ステアリングシリンダ9a、9bに供給する油の流量を変更することによって、フロントフレーム11のリアフレーム12に対する回転角度であるフレーム角を変更し、作業機械1の進行方向を変更する。
図2において、前方向が矢印Xfで示され、後方向が矢印Xbで示され、右方向が矢印Yrで示され、左方向が矢印Ylで示されている。
【0020】
一対のステアリングシリンダ9a、9bは、油圧によって駆動される。一対のステアリングシリンダ9a、9bは、連結軸部13を挟んで車幅方向の左右側に並んで配置されている。ステアリングシリンダ9aは、連結軸部13の左側に配置されている。ステアリングシリンダ9bは、連結軸部13の右側に配置されている。ステアリングシリンダ9a、9bは、それぞれの一端がフロントフレーム11に取り付けられており、それぞれの他端が、リアフレーム12に取り付けられている。
【0021】
図示は省略するが、ステアリングシリンダ9aのシリンダ室は、ピストンによって伸長室と収縮室に分割されている。伸長室に作動油が供給されると、ピストンが移動してステアリングシリンダ9aは伸長し、収縮室に作動油が供給されると、ピストンが移動してステアリングシリンダ9aは収縮する。
【0022】
また、ステアリングシリンダ9bのシリンダ室は、ピストンによって伸長室と収縮室に分割されている。伸長室に作動油が供給されると、ピストンが移動してステアリングシリンダ9bは伸長し、収縮室に作動油が供給されると、ピストンが移動してステアリングシリンダ9bは収縮する。
【0023】
ステアリングシリンダ9aが伸長し、ステアリングシリンダ9bが収縮すると、フレーム角度が変化し車両は右(
図2のYr参照)に曲がる。また、ステアリングシリンダ9aが収縮し、ステアリングシリンダ9bが伸長すると、フレーム角度が変化し車両は左(
図2のYl参照)に曲がる。
【0024】
(ステアリングシステム8)
【0025】
ステアリングシステム8は、油圧回路21と、操向入力デバイス22(操作部材の一例)と、第1センサ23と、第2センサ24と、コントローラ25(制御部の一例)と、を有する。油圧回路21は、ステアリングシリンダ9a、9bの駆動出力を調整する。なお、
図2では、電気に基づいた信号の伝達については点線で示し、油圧の伝達については実線で示す。
【0026】
操向入力デバイス22は、例えば、ステアリングホイールまたはジョイスティックレバーである。オペレータが操向入力デバイス22を操作することによって、フロントフレーム11のリアフレーム12に対する回転動作の入力が行われる。操向入力デバイス22の操作量に応じた回転速度(ステアリング速度)でフロントフレーム11がリアフレーム12に対して回転する。操向入力デバイス22の操作量は、ステアリングシリンダ9a、9bに供給する作動油の流量の目標値に対応する。
【0027】
第1センサ23は、リアフレーム12に対するフロントフレーム11の回転角度であるフレーム角を検出する。第2センサ24は、リアフレーム12に対するフロントフレーム11の回転角度であるフレーム角を検出する。第1センサ23と第2センサ24は、例えば角度センサであって、連結軸部13の回転角度を検出する。第1センサ23と第2センサ24は、例えばステアリングシリンダ9a、9bのストロークを検出するストロークセンサであってもよい。第1センサ23と第2センサ24は、同じ種類のセンサでなくてもよく、冗長性の観点から異なる種類のセンサが用いられてもよい。例えば、一方に角度センサが用いられ、他方にストロークセンサが用いられてもよい。
【0028】
(油圧回路21)
油圧回路21は、油圧バルブ31(バルブの一例)と、メインポンプ32と、電磁パイロットバルブ33と、パイロットポンプ34と、を有する。油圧バルブ31は、入力されるパイロット圧に応じてステアリングシリンダ9a、9bに供給される油の流量を調整する流量調整弁である。油圧バルブ31には、例えばスプール弁が用いられる。メインポンプ32は、ステアリングシリンダ9a、9bを作動する作動油を油圧バルブ31に供給する。
【0029】
油圧バルブ31は、左ステアリング位置、中立位置、および右ステアリング位置に移動可能な弁体(図示せず。例えば、スプール)を有する。油圧バルブ31において弁体が左ステアリング位置に配置されている場合、ステアリングシリンダ9aが収縮し、ステアリングシリンダ9bが伸長して、フレーム角が小さくなり車体は左に曲がる。なお、フロントフレーム11がリアフレーム12に対して前後方向(矢印Xf,Xb参照)に沿っている場合のフレーム角θを0度とし、フロントフレーム11がリアフレーム12に対して左方向に回転した場合のフレーム角をマイナスの値で示し、フロントフレーム11がリアフレーム12に対して右方向に回転した場合のフレーム角をプラスの値で示す。
【0030】
油圧バルブ31において弁体が右ステアリング位置に配置されている場合、ステアリングシリンダ9bが収縮し、ステアリングシリンダ9aが伸長して、フレーム角θが大きくなり車体は右に曲がる。油圧バルブ31において弁体が中立位置に配置されている場合は、フレーム角は変化しない。供給されるパイロット圧に応じて弁体が中立位置から右ステアリング位置に向かうに従って、開度が大きくなり、ステアリングシリンダ9aの伸長室およびステアリングシリンダ9bの収縮室に供給される作動油の量が大きくなる。そして、弁体が右ステアリング位置に配置されているとき、ステアリングシリンダ9aの伸長室およびステアリングシリンダ9bの収縮室に供給される作動油の量が最大となる。また、供給されるパイロット圧に応じて弁体が中立位置から左ステアリング位置に向かうに従って、開度が大きくなり、ステアリングシリンダ9aの収縮室およびステアリングシリンダ9bの伸長室に供給される作動油の量が大きくなる。そして、弁体が左ステアリング位置に配置されているとき、ステアリングシリンダ9aの収縮室およびステアリングシリンダ9bの伸長室に供給される作動油の量が最大となる。
【0031】
電磁パイロットバルブ33は、コントローラ25からの指令に応じて油圧バルブ31に供給するパイロット油圧の流量または圧力を調整する流量調整弁である。パイロットポンプ34は、油圧バルブ31を作動させる作動油を電磁パイロットバルブ33に供給する。電磁パイロットバルブ33は、例えばスプールバルブ等であって、コントローラ25からの指令に従って制御される。
【0032】
電磁パイロットバルブ33は、左パイロット位置、中立位置、および右パイロット位置に移動可能な弁体(図示せず、例えばスプール)を有する。電磁パイロットバルブ33において弁体が左パイロット位置に配置されている場合、油圧バルブ31は左ステアリング位置の状態をとる。電磁パイロットバルブ33において弁体が右パイロット位置に配置されている場合、油圧バルブ31は右ステアリング位置の状態をとる。電磁パイロットバルブ33において弁体が中立位置に配置されている場合、油圧バルブ31は中立位置の状態をとる。
【0033】
コントローラ25からの指令流量に応じて電磁パイロットバルブ33からのパイロット圧またはパイロット流量が制御されることにより、油圧バルブ31が制御されてステアリングシリンダ9a、9bが制御される。指令流量は、油圧バルブ31からステアリングシリンダ9a、9bに供給する作動油の流量の指令値である。
【0034】
操向入力デバイス22の操作によって、電磁パイロットバルブ33の弁体が中立位置から右パイロット位置に移動していくに従って油圧バルブ31の弁体を右ステアリング位置に移動させる流量が大きくなり、右パイロット位置において右方向にステアリングを移動させる流量が100%の状態となる。また、操向入力デバイス22の操作によって、電磁パイロットバルブ33の弁体が中立位置から左パイロット位置に移動していくに従って油圧バルブ31の弁体を左ステアリング位置に移動させる流量が大きくなり、左パイロット位置において左方向にステアリングを移動させる流量が100%の状態となる。なお、右方向にステアリングを移動させる流量をプラスの値で示し、左方向にステアリングを移動させる流量をマイナスの値で示す。
【0035】
電磁パイロットバルブ33の弁体が中立位置に配置されている状態から操向入力デバイス22を操作した場合、操作量が大きい程、弁体が右パイロット位置または左パイロット位置に向かって大きく移動する。そのため、油圧バルブ31の弁体も右ステアリング位置または左ステアリング位置に向かって大きく移動し、ステアリングシリンダ9a、9bに供給される作動油の量も大きくなる。
【0036】
(コントローラ25)
コントローラ25は、プロセッサと、記憶装置を含む。プロセッサは、例えばCPU(Central Processing Unit)である。或いは、プロセッサは、CPUと異なるプロセッサであってもよい。プロセッサは、プログラムに従って作業機械1の制御のための処理を実行する。記憶装置は、ROM(Read Only Memory)のような不揮発性メモリおよびRAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリを含む。記憶装置は、ハードディスク、あるいはSSD(Solid State Drive)などの補助記憶装置を含んでいてもよい。記憶装置は、非一時的な(non-transitory)コンピュータで読取り可能な記録媒体の一例である。記憶装置は、作業機械1を制御するためのプログラムおよびデータを記憶している。記憶装置は、例えば、後述する、終端範囲、第1モード、第2モードおよび第3モードのデータを記憶している。
【0037】
コントローラ25は、操向入力デバイス22の操作、第1センサ23の検出値および第2センサ24の検出値に基づいて、油圧回路21にステアリングシリンダ9a、9bの駆動出力を調整する指示を行う。
【0038】
コントローラ25は、操向入力読取り部41と、目標流量決定部42と、第1フレーム角読取り部43と、第2フレーム角読取り部44と、モード決定部45と、最大流量制限部46と、指令電流決定部47と、を有する。プロセッサがメモリに記憶されているプログラムを実行することで、操向入力読取り部41、目標流量決定部42、第1フレーム角読取り部43、第2フレーム角読取り部44、モード決定部45、最大流量制限部46、および指令電流決定部47の機能を実現する。
【0039】
操向入力読取り部41は、操向入力デバイス22の操作を読み取る。操向入力デバイス22の操作は、操作方向と操作量を含む。目標流量決定部42は、操向入力読取り部41において読み取った操向入力デバイス22の操作に基づいて、ステアリングシリンダ9a、9bに供給する作動油の目標流量を決定する。第1フレーム角読取り部43は、第1センサ23の状態および検出値を含む信号を読み取る。第2フレーム角読取り部44は、第2センサ24の状態および検出値を含む信号を読み取る。モード決定部45は、第1センサ23および第2センサ24からの信号に基づいて、第1モード(第1制御の一例)、第2モード(第2制御の一例)または第3モード(第3制御の一例)のいずれの制御を実行するか決定する。詳しくは後述するが、第1モード、第2モード、および第3モードは、フロントフレーム11がリアフレーム12に大きな衝撃で接触しないように、ステアリング速度に制限を設ける制御であり、モードによって、ステアリング速度に対する制限の設け方が異なる。第1モードおよび第2モードは、後述する回転可能範囲の終端範囲において、ステアリング速度に制限を設ける制御である。第3モードは、回転可能範囲の全範囲において、ステアリング速度に制限を設ける制御である。
【0040】
最大流量制限部46は、モード決定部45によって決定されたモードに基づいて、ステアリングシリンダ9a、9bに供給される作動油の許容可能な最大目標流量を決定し、目標流量決定部42で決定した目標流量が許容可能な最大目標流量を超えている場合には、目標流量を許容可能な最大目標流量に制限し、制限した目標流量を指令電流決定部47に出力する。最大流量制限部46は、目標流量決定部42で決定した目標流量が許容可能な最大目標流量以下の場合には、目標流量決定部42で決定された目標流量を指令電流決定部47に出力する。指令電流決定部47は、ステアリングシリンダ9a、9bに目標流量が供給されるように、電磁パイロットバルブ33に開度を指示する指令電流を出力する。
【0041】
(回転可能範囲、終端範囲)
次に、上述した回転可能範囲(所定角度範囲の一例)と終端範囲について説明する。
【0042】
図3は、リアフレーム12に対するフロントフレーム11の回転可能範囲Raを示すための模式図である。
図3では、フロントフレーム11、リアフレーム12およびバケット15が模式的に示されている。
【0043】
フロントフレーム11はリアフレーム12に連結軸部13を中心にして回動可能に接続されているが、フレーム同士が物理的に接触するため、リアフレーム12に対してフロントフレーム11は回転可能範囲Ra内において回動することができる。
【0044】
図3の実線で示すフロントフレーム11に示すように、リアフレーム12に対してフロントフレーム11が前後方向に沿って配置されている場合のフレーム角θをゼロとする。
図3では、詳細には、リアフレーム12の幅方向における中心線がフロントフレーム11の幅方向における中心線と一致している状態が、フレーム角θがゼロとなっている。フレーム角θは、リアフレーム12の幅方向の中心線に対するフロントフレーム11の幅方向の中心線の成す角度である。リアフレーム12に対してフロントフレーム11が右方向に回動した場合のフレーム角θをプラスの値とし、リアフレーム12に対してフロントフレーム11が左方向に回動した場合のフレーム角θをマイナスの値とする。
【0045】
これにより、回転可能範囲Raは、フレーム角θが+θe度~-θe度に設定される。すなわち、フロントフレーム11がリアフレーム12に対して右側にθe度回動すると、リアフレーム12に対して接触し、それ以上右側に回動できない。また、フロントフレーム11がリアフレーム12に対して左側にθe度回動すると、リアフレーム12に対して接触し、それ以上左側に回動できない。
【0046】
フレーム角θが+θeのときが回転可能範囲Raの右側の終端であり、フレーム角θが-θeのときが、回転可能範囲Raの左側の終端である。
図3では、回転可能範囲Raの右側の終端まで回動した状態のフロントフレーム11およびバケット15が二点鎖線で示されている。+θeおよび-θeは、ステアリングエンドともいう。
【0047】
終端範囲は、回転可能範囲Raのうち、右側の終端近傍であって右側の終端を含む所定範囲と、左側の終端近傍であって左側の終端を含む所定範囲である。
【0048】
回転可能範囲Raのうち右側の終端近傍の所定の範囲を終端範囲Rreとし、左側の終端近傍の所定範囲を終端範囲Rleとする。終端範囲Rreは、フレーム角度が+θ1~+θeの間に設定することができる。+θ1は、右側の終端範囲Rreの閾値である。なお、終端範囲Rreは、例えば10度程度に設定することができる。終端範囲Rleは、フレーム角度が-θ1~-θeの範囲に設定することができる。-θ1は、左側の終端範囲Rleの閾値である。また、終端範囲Rleは、例えば10度程度に設定することができる。
【0049】
すなわち、コントローラ25は、第1センサ23および第2センサ24の検出値から算出したフレーム角θが、+θ1~+θeまたは-θ1~-θeの範囲内の場合、フロントフレーム11が終端範囲に位置していると判定する。
【0050】
(第1モード)
次に、フロントフレーム11のリアフレーム12への接触による衝撃を緩和するための第1モードについて説明する。
【0051】
図4は、第1モードにおいてフレーム角に対して許容可能な最大目標流量を示す図である。横軸は、フレーム角θを示す。横軸において、原点におけるフレーム角度が0°であり、正の値は、右方向へのフレーム角を示し、負の値は、左方向へのフレーム角を示す。縦軸は、操向入力デバイス22によって設定可能な最大目標流量に対して許容可能な最大目標流量の割合(%)を示す。縦軸において、原点における設定最大目標流量は0%であり、正の値は、右方向へのステアリング操作における許容最大目標流量を示し、負の値は、左方向へのステアリング操作における許容最大目標流量を示す。
【0052】
図4の第1モードのグラフG1に示すように、右方向にステアリング操作した場合、フレーム角が-θe~θ1までの範囲では、許容最大目標流量は100%であり、最大目標流量には制限が設けられていない。すなわち、操向入力デバイス22で入力した操作量に応じて目標流量が決定される。右方向にステアリング操作した場合において、終端範囲Rre(θ1~θe)にフロントフレーム11が位置すると、最大目標流量に制限が設けられている。すなわち、操向入力デバイス22で入力した操作量に応じた目標流量が許容最大目標流量よりも大きい場合には、目標流量は許容最大目標流量に制限される。具体的には、フレーム角がθ1からθeに向かうに従って、許容最大目標流量が徐々に減少するように設定され、フレーム角θeよりも手前のフレーム角θcで許容最大目標流量が0(%)に設定されている。フレーム角度がθcに達すると、それ以上操向入力デバイス22をフロントフレーム11が右回転するように操作しても作動油はステアリングシリンダ9a、9bには供給されない。
【0053】
上述のように、右方向にステアリング操作した場合、フレーム角が-θe~θ1までの範囲では、許容最大目標流量に制限が設けられていないため、ステアリング速度の最大値にも制限が設けられていない。一方、終端範囲Rreにおいて、ステアリングシリンダ9a、9bに供給される作動油の許容最大目標流量が制限されているため、ステアリング速度も制限される。右方向のステアリング操作した場合、フレーム角がθ1からθeに向かうに従って、ステアリング速度の最大値が徐々に減少するように設定され、フレーム角θeよりも手前のフレーム角θcでステアリング速度が0に設定される。
【0054】
左方向にステアリング操作した場合、フレーム角度が-θ1~θeまでの範囲では、許容大目標流量は-100%であり、最大目標流量には制限が設けられていない。すなわち、操向入力デバイス22で入力した操作量に応じて目標流量が決定される。左方向にステアリング操作した場合において、終端範囲Rle(-θe~-θe)にフロントフレーム11が位置すると、最大目標流量に制限が設けられている。すなわち、操向入力デバイス22で入力した操作量に応じた目標流量が許容最大目標流量よりも大きい場合、目標流量は許容最大目標流量に制限される。具体的には、フレーム角度が-θ1から-θeに向かうに従って、許容最大目標流量が徐々に減少するように設定され、フレーム角-θeよりも手前のフレーム角-θcで許容最大目標流量がゼロに設定されている。フレーム角度が-θcに達すると、それ以上操向入力デバイス22をフロントフレーム11が左回転するように操作しても作動油がステアリングシリンダ9a、9bには供給されない。
【0055】
上述のように、左方向にステアリング操作した場合、フレーム角が-θ1~θeまでの範囲では、許容最大目標流量に制限が設けられていないため、ステアリング速度の最大値にも制限が設けられていない。一方、このように終端範囲Rleにおいて、ステアリングシリンダ9a、9bに供給される作動油の許容最大目標流量が制限されているため、ステアリング速度も制限される。左方向のステアリング操作した場合、フレーム角が-θ1から-θeに向かうに従って、ステアリング速度の最大値が徐々に減少するように設定され、フレーム角-θeよりも手前のフレーム角-θcでステアリング速度が0に設定される。
【0056】
このように、回転可能範囲Raの終端に向かうに従って許容最大目標流量が減少し、終端よりも手前で許容最大目標流量がゼロに設定されている。このため、フロントフレーム11がリアフレーム12に接触することを防ぐことが出来る。また、積載している荷の重さ等による慣性力によって、フロントフレーム11がリアフレーム12に接触したとしてもステアリング速度が遅いため衝撃を緩和することができる。
【0057】
(第2モード)
次に、フロントフレーム11のリアフレーム12への接触による衝撃を緩和するための第2モードについて説明する。
【0058】
図5は、第2モードにおいてフレーム角に対して許容可能な最大目標流量を示す図である。横軸は、フレーム角θを示す。横軸において、原点におけるフレーム角度が0°であり、正の値は、右方向へのフレーム角度を示し、負の値は、左方向へのフレーム角度を示す。縦軸は、操向入力デバイス22によって設定可能な最大目標流量に対して許容可能な最大目標流量の割合(%)を示す。縦軸において、原点における設定最大目標流量は0%であり、正の値は、右方向へのステアリング操作における許容最大目標流量を示し、負の値は、左方向へのステアリング操作における許容最大目標流量を示す。なお、
図5には、第1モードのグラフG1が一点鎖線で示されている。
【0059】
図5の第2モードのグラフG2に示すように、右方向にステアリング操作した場合、フレーム角度が-θe~θ1までの範囲では、許容最大目標流量は100%であり、最大目標流量には制限が設けられていない。すなわち、操向入力デバイス22で入力した操作量に応じて目標流量が決定される。右方向にステアリング操作した場合において、終端範囲Rre(θ1~θe)にフロントフレーム11が位置すると、最大目標流量に制限が設けられている。すなわち、操向入力デバイス22で入力した操作量に応じた目標流量が許容最大目標流量よりも大きい場合には、目標流量は許容最大目標流量に制限される。フレーム角度がθ1からθeに向かうに従って、許容最大目標流量が徐々に減少するように設定され、フレーム角θeよりも手前のフレーム角θc′で所定の許容最大目標流量F1(%)に設定されている。そして、フレーム角θc′~フレーム角θeまでは、許容最大目標流量はF1(%)に制限されている。
【0060】
上述のように、右方向にステアリング操作した場合、フレーム角が-θe~θ1までの範囲では、許容最大目標流量に制限が設けられていないため、ステアリング速度の最大値にも制限が設けられていない。一方、終端範囲Rreにおいて、ステアリングシリンダ9a、9bに供給される作動油の許容最大目標流量が制限されているため、ステアリング速度も制限される。右方向にステアリング操作した場合、フレーム角がθ1からθeに向かうに従って、ステアリング速度の最大値が徐々に減少し、フレーム角θeよりも手前のフレーム角θc′でステアリング速度の最大値は流量F1に対応する速度に制限される。
【0061】
左方向にステアリング操作した場合、フレーム角度が-θ1~θeまでの範囲では、許容大目標流量は-100%であり、最大目標流量には制限が設けられていない。すなわち、操向入力デバイス22で入力した操作量に応じて目標流量が決定される。左方向にステアリング操作した場合において、終端範囲Rle(-θ1~-θe)にフロントフレーム11が位置すると、最大目標流量に制限が設けられている。すなわち、操向入力デバイス22で入力した操作量に応じた目標流量が許容最大目標流量よりも大きい場合、目標流量は許容最大目標流量に制限される。具体的には、フレーム角度が-θ1から-θeに向かうに従って、許容最大目標流量が徐々に減少するように設定され、フレーム角-θeよりも手前のフレーム角-θc′で所定の許容最大目標流量-F1(%)に設定されている。そして、フレーム角-θc′~フレーム角-θeまでは、許容最大目標流量は-F1(%)に設定されている。
【0062】
上述のように、左方向にステアリング操作した場合、フレーム角が-θ1~θeまでの範囲では、許容最大目標流量に制限が設けられていないため、ステアリング速度の最大値にも制限が設けられていない。一方、終端範囲Rleにおいて、ステアリングシリンダ9a、9bに供給される作動油の許容最大目標流量が制限されているため、ステアリング速度も制限される。左方向にステアリング操作した場合、フレーム角が-θ1から-θeに向かうに従って、ステアリング速度の最大値が徐々に減少し、フレーム角-θeよりも手前のフレーム角-θc′でステアリング速度の最大値は流量F1に対応する速度に制限される。
【0063】
許容最大目標流量±F1(%)は、特に限定されるものではないが、例えば最大ステアリング速度の最大値が半分程度に制限されるような流量に設定することができる。
【0064】
このように、回転可能範囲Raの終端に向かうに従って許容最大目標流量が減少し、終端よりも手前で許容最大目標流量がF1(%)に設定されている。許容最大目標流量F1(%)は中程度に設定されているため、フロントフレーム11がリアフレーム12に接触する場合、ステアリング速度が遅いので、衝撃を緩和することができる。
【0065】
(第3モード)
次に、第3モードについて説明する。
【0066】
図6は、第3モードにおいてフレーム角に対して許容可能な最大目標流量を示す図である。横軸は、フレーム角θを示す。横軸において、原点におけるフレーム角度が0°であり、正の値は、右方向へのフレーム角度を示し、負の値は、左方向へのフレーム角度を示す。縦軸は、操向入力デバイス22によって設定可能な最大目標流量に対して許容可能な最大目標流量の割合(%)を示す。縦軸において、原点における設定最大目標流量は0%であり、正の値は、右方向へのステアリング操作における許容最大目標流量を示し、負の値は、左方向へのステアリング操作における許容最大目標流量を示す。なお、
図6には、第1モードのグラフG1が一点鎖線で示されている。
【0067】
図6の第3モードのグラフG3に示すように、第3モードでは、回転可能範囲Ra(フレーム角-θe~+θe)の全範囲において許容最大目標流量がF1(%)に制限されている。すなわち、右方向にステアリング操作した場合、許容最大目標流量(%)はF1(%)に設定されており、左方向にステアリング操作した場合、許容最大目標流量(%)は-F1(%)に設定されている。
【0068】
このようにステアリング可能な全範囲において許容最大目標流量F1(%)が100%よりも小さく設定されているため、全範囲においてステリング速度の最大値が制限されることになり、フロントフレーム11がリアフレーム12に接触する場合に衝撃を緩和することができる。
【0069】
ここで、第1センサ23または第2センサ24によってフロントフレーム11が終端範囲に位置していることを検出して作動油の流量を制限してステアリング速度を制限する制御をソフトエンドストップ制御(速度制限制御の一例)と定義する。このように定義した場合、上述した第1モードと第2モードはソフトエンドストップ制御に含まれるが、第3モードは、全範囲において作動油の流量を制限しているため、ソフトエンドストップ制御に含まれない。
【0070】
いいかえると、第1モードおよび第2モードを実行している場合は、ソフトエンドストップ制御を実行しているといえ、第3モードを実行している場合は、ソフトエンドストップ制御を実行していないといえる。
【0071】
上述したように、第1モード、第2モードおよび第3モードのいずれを実行するかの選択は、第1センサ23の故障状態と第2センサ24の故障状態に基づいてモード決定部45が行う。
【0072】
(第1センサ23,第2センサ24の故障状態)
第1センサ23と第2センサ24の故障状態について説明する。
図7は、センサの故障モードとその検出方法のテーブルを示す図である。
【0073】
第1センサ23と第2センサ24の故障モードとしては、断線、地絡、天絡、センサ停止、および信号ズレを挙げることができる。断線は、センサ内若しくはセンサとコントローラ25を繋ぐ線が断線することである。地絡は、センサの信号線が地面と電気的に接触することである。天絡は、センサの信号線が電源と接触することである。センサ停止は、センサに含まれるICチップの故障である。モード決定部45は、センサ信号の電圧や信号周波数を監視し、それらの値が正常範囲外の場合に断線、地絡、天絡、およびセンサ停止のいずれかの故障であると判定し、正常範囲内の場合、センサが故障していないと判定する。
【0074】
信号ズレ故障は、検出される信号にズレが生じることであり、フレーム角が誤って検出される。信号ズレ故障の検出は、2つ以上のセンサからの信号出力、あるいは1つのセンサからの2つの信号出力が必要である。モード決定部45は、2つ以上の信号を比較し、ズレが正常範囲外の場合に信号ズレ故障と判定し、ズレが正常範囲内の場合に信号ズレ故障が無いと判定する。
【0075】
次に、センサの故障状態の判定と実行するモードの選択について説明する。
図8は、実際のセンサ状態と、コントローラ25によるセンサ状態の認識と、選択されるモードとのテーブルを示す図である。
図8に示すように、実際の2つのセンサの状態を(1)~(9)の9つ状態に分ける。
【0076】
状態(1)では、第1センサ23および第2センサ24の双方とも正常である。状態(1)では、コントローラ25のモード決定部45は、第1フレーム角読取り部43および第2フレーム角読取り部44が読み取った信号に基づいて第1センサ23と第2センサ24の双方が正常であると判定する。また、第1センサ23および第2センサ24の双方とも正常の場合、2つの信号のズレも正常範囲内であるため、モード決定部45はズレ故障もないと判定する。モード決定部45は、第1センサ23を正常と判定し、第2センサ24が正常と判定し、ズレ故障も無いと判定した場合、第1モードを選択する。
【0077】
状態(2)では、第1センサ23は停止故障しており、第2センサ24は正常である。状態(2)では、コントローラ25のモード決定部45は、第1フレーム角読取り部43が読み取った信号に基づいて、第1センサ23が故障していると判定する。また、モード決定部45は、第2フレーム角読取り部44が読み取った信号に基づいて、第2センサ24が正常であると判定する。第1センサ23が停止故障しているため、ズレ故障の有無は判定できず、不明となる。モード決定部45は、第1センサ23を異常停止と判定し、第2センサ24を正常と判定した場合、第2モードを選択する。
【0078】
状態(3)では、第1センサ23は正常であり、第2センサ24は停止故障している。状態(3)では、コントローラ25のモード決定部45は、第1フレーム角読取り部43が読み取った信号に基づいて、第1センサ23が正常であると判定する。また、モード決定部45は、第2フレーム角読取り部44が読み取った信号に基づいて、第2センサ24が停止故障していると判定する。第2センサ24が停止故障しているため、ズレ故障の有無は判定できず、不明となる。モード決定部45は、第1センサ23を正常と判定し、第2センサ24を異常停止と判定した場合、第2モードを選択する。
【0079】
状態(4)では、第1センサ23はズレ故障しており、第2センサ24は正常である。状態(4)では、コントローラ25のモード決定部45は、第1フレーム角読取り部43が読み取った信号に基づいて、第1センサ23が正常であると判定する。ズレ故障の場合、1つのセンサからの信号では判定できないため、正常と判定される。また、モード決定部45は、第2フレーム角読取り部44が読み取った信号に基づいて、第2センサ24が正常であると判定する。第1センサ23がズレ故障しているため、2つのセンサからの信号のズレは正常範囲内に収まらず、モード決定部45はズレ故障があると判定する。モード決定部45は、第1センサ23を正常と判定し、第2センサ24を正常と判定し、ズレ故障が有ると判定した場合、第3モードを選択する。
【0080】
状態(5)では、第1センサ23は正常であり、第2センサ24はズレ故障している。状態(5)では、コントローラ25のモード決定部45は、第1フレーム角読取り部43が読み取った信号に基づいて、第1センサ23が正常であると判定する。また、モード決定部45は、第2フレーム角読取り部44が読み取った信号に基づいて、第2センサ24が正常であると判定する。第2センサ24がズレ故障しているため、2つのセンサからの信号のズレは正常範囲内に収まらず、モード決定部45はズレ故障があると判定する。モード決定部45は、第1センサ23を正常と判定し、第2センサ24を正常と判定し、ズレ故障が有ると判定した場合、第3モードを選択する。
【0081】
状態(6)では、第1センサ23はズレ故障しており、第2センサ24は停止故障している。状態(6)では、コントローラ25のモード決定部45は、第1フレーム角読取り部43が読み取った信号に基づいて、第1センサ23が正常であると判定する。また、モード決定部45は、第2フレーム角読取り部44が読み取った信号に基づいて、第2センサ24が停止故障している判定する。第2センサ24が停止故障しているため、ズレ故障の有無は判定できず、不明となる。モード決定部45は、第1センサ23が正常と判定し、第2センサ24が異常停止と判定した場合、第2モードを選択する。
【0082】
状態(7)では、第1センサ23は停止故障しており、第2センサ24はズレ故障している。状態(7)では、コントローラ25のモード決定部45は、第1フレーム角読取り部43が読み取った信号に基づいて、第1センサ23が停止故障していると判定する。また、モード決定部45は、第2フレーム角読取り部44が読み取った信号に基づいて、第2センサ24が正常であると判定する。第1センサ23が停止故障しているため、ズレ故障の有無は判定できず、不明となる。モード決定部45は、第1センサ23が停止故障していると判定し、第2センサ24が正常であると判定した場合、第2モードを選択する。
【0083】
状態(8)では、第1センサ23は停止故障しており、第2センサ24は停止故障している。状態(8)では、コントローラ25のモード決定部45は、第1フレーム角読取り部43が読み取った信号に基づいて、第1センサ23が停止故障していると判定する。また、モード決定部45は、第2フレーム角読取り部44が読み取った信号に基づいて、第2センサ24が停止故障していると判定する。第1センサ23が停止故障し、第2センサ24が停止故障しているため、ズレ故障の有無は判定できず、不明となる。モード決定部45は、第1センサ23が停止故障していると判定し、第2センサ24が停止故障していると判定した場合、第3モードを選択する。
【0084】
状態(9)では、第1センサ23はズレ故障しており、第2センサ24はズレ故障している。状態(9)では、コントローラ25のモード決定部45は、第1フレーム角読取り部43が読み取った信号に基づいて、第1センサ23が正常と判定する。また、モード決定部45は、第2フレーム角読取り部44が読み取った信号に基づいて、第2センサ24が正常と判定する。第1センサ23がズレ故障し、第2センサ24がズレ故障しているため、2つのセンサからの信号のズレは正常範囲内に収まらず、モード決定部45はズレ故障があると判定する。モード決定部45は、第1センサ23が正常と判定し、第2センサ24が正常と判定し、ズレ故障が有ると判定した場合、第3モードを選択する。
【0085】
コントローラ25は、状態(1)~状態(9)におけるコントローラの認識とモードの選択の対応テーブルを記憶しており、このテーブルに基づいて、モード決定部45は、実行するモードを選択する。
【0086】
モード決定部45は、第1センサ23と第2センサ24の双方が正常であると判定した場合、第1モードを選択する。これにより、フレーム角度を正確に判定することができるため、意図しないステアリング速度の制限を防止し、ステアリングエンドにおける衝撃を緩和することができる。
【0087】
モード決定部45は、第1センサ23と第2センサ24のいずれか一方だけが停止故障していると判定した場合、第2モードを選択する。センサにおけるズレ故障は発生し難いため、一方のセンサが正常であると判定した場合、そのセンサを用いることによって、ステアリングエンドにおける衝撃を緩和することができる。また、終端範囲以外では、第1モードと同様の性能でステアリング操作を行うことができる。ただし、第2モードでは、状態(6)および状態(7)に示すように、正常と判定されたセンサにズレ故障が発生し、意図せずステアリング操作が出来なくなる可能性を考慮して、ステアリング速度の制限を緩く、反応が遅くなるもののステリング操作を可能としている。
【0088】
モード決定部45は、第1センサ23と第2センサ24の少なくとも一方にズレ故障が発生していると判定した場合、第3モードを選択する。ズレ故障の場合、2つのうちのどちらのセンサが故障しているか判定できないため、フロントフレーム11が終端範囲に位置していることを検出できない。また、モード決定部45は、第1センサ23と第2センサ24の双方が停止故障していると判定した場合、第3モードを選択する。2つのセンサとも停止故障している場合、フロントフレーム11が終端範囲に位置していることを検出できない。このように、フロントフレーム11が終端範囲に位置していることが検出できない場合に、第3モードを選択することによって、全ての範囲においてステアリング速度に制限を設けることができる。これにより、ステアリングエンドにおける衝撃を緩和することができる。また、第1モードよりも反応性が悪くなるものの全範囲においてステアリング操作を行うことができる。
【0089】
<動作>
次に、本実施形態の作業機械1の制御動作について説明する。
図9は、本実施形態の作業機械1の制御動作のフロー図を示す図である。
【0090】
はじめに、ステップS10において、第1フレーム角読取り部43が、第1センサ23の状態および検出値を含む信号を読取り、第2フレーム角読取り部44が、第2センサ24の状態および検出値を含む信号を読み取る。ステップS10は、故障状態取得ステップの一例に対応する。
【0091】
ステップS11において、モード決定部45は、第1センサ23の状態から、第1センサ23に、断線、地絡、天絡またはセンサ停止等の故障が発生しているか否かを判定する。
【0092】
ステップS11において、故障が発生していないと判定した場合、ステップS12において、モード決定部45は、第2センサ24の状態から、第2センサ24に、断線、地絡、天絡またはセンサ停止等の故障が発生しているか否かを判定する。
【0093】
ステップS12において、故障が発生していないと判定した場合、ステップS13において、モード決定部45は、第1センサ23または第2センサ24にズレ故障が発生しているか否かを判定する。具体的には、モード決定部45は、第1センサ23から検出された第1フレーム角と第2センサ24から第2フレーム角との差の絶対値が許容ズレ角度以上の場合にズレ故障が発生していると判定し、差の絶対値が許容ズレ角度未満の場合にズレ故障が発生していないと判定する。
【0094】
ステップS13において、ズレ故障が発生していないと判定した場合、ステップS14において、モード決定部45は、第1モードの制御を選択して実行する。
【0095】
一方、ステップS11において、第1センサ23が故障していると判定した場合、ステップS15において、モード決定部45は、第2センサ24の状態から、第2センサ24に、断線、地絡、天絡またはセンサ停止等の故障が発生しているか否かを判定する。
【0096】
ステップS15において、第2センサ24が故障していないと判定した場合、ステップS16において、モード決定部45は、第2モードの制御を選択して実行する。
【0097】
一方、ステップS15において、第2センサ24が故障していると判定した場合、ステップS17において、モード決定部45は、第3モードの制御を選択して実行する。
【0098】
また、ステップS12において、第2センサ24が故障していると判定した場合、ステップS16において、モード決定部45は、第2モードの制御を選択して実行する。
【0099】
また、ステップS13において、ズレ故障が発生していると判定した場合、ステップS17において、モード決定部45は、第3モードの制御を選択して実行する。ステップS11~S17は、実行ステップの一例に対応する。
【0100】
以上のように、本実施形態の作業機械1では、第1センサ23または第2センサ24の一方または双方が故障した場合でも、第2モードまたは第3モードで示したようにステアリング速度を中程度まで制限可能であるため、フロントフレーム11のリアフレーム12への早い速度での衝突による大きな衝撃の発生を抑制することできる。
【0101】
一方で、第1センサ23が停止故障中に第2センサ24にズレ故障が発生する場合のように検出できない故障の組み合わせが発生することにより正しいフレーム角が読み取れなくなっている場合でもステアリング速度が中程度までしか制限されない。そのため、万が一、検出できない故障の組み合わせが発生し、フレーム角度を誤認識した場合でも、走行中に意図せずにステアリングが操作できなくなるような事態を防ぐことができ、最低でも中程度の速度でステアリングを操作することができる。
【0102】
このように、センサが故障した場合でも、フロントフレーム11のリアフレーム12への衝突による大きな衝撃の発生を抑制できるとともに、意図せずにステアリング操作ができなくなるような事態を防ぐことができる。また、本来の性能が発揮できないが、少なくとも操作できるステアリング性能を確保しつつ、フレームの衝突による衝撃の緩和も図ることができる。
【0103】
(実施形態2)
次に、本開示にかかる実施形態2の作業機械について説明する。本実施形態2の作業機械は、実施形態1の作業機械と比較して、コントローラの制御構成が異なる。
【0104】
<構成>
図10は、本実施形態2のステアリングシステム108の構成を示す図である。本実施形態2の作業機械のコントローラ125は、実施形態1のコントローラ25のモード決定部45に代えて実行判断部145を備えている。実行判断部145は、第1センサ23の状態および第2センサ24の状態に基づいて、ソフトエンドストップの制御を実行するか否かを判断する。
【0105】
ソフトエンドストップの制御は、上述した実施形態1の第1モードと同様の制御である。本実施形態2における実行判断部145は、第1モードの制御を実行するか否かを判断する。
【0106】
図11は、ソフトエンドストップの制御を実行する場合のフレーム角に対して許容可能な最大目標流量を示す図である。ソフトエンドストップの制御を実行する場合のグラフG1を一点鎖線で示し、実行しない場合のグラフG4を実線で示す。上述したようにソフトエンドストップの制御を実行する場合のグラフG1は、
図4に示す第1モードのグラフG1と同じである。ソフトエンドストップ制御を実行しない場合は、回転可能範囲Raの全範囲において、許容最大目標流量が100%に設定されており、最大目標流量の制限が行われず、ステアリング速度の制限が行われない。
【0107】
実行判断部145は、第1センサ23および第2センサ24の少なくとも一方が停止故障と判定した場合、およびズレ故障が有ると判定した場合に、ソフトエンドストップ制御を実行しない。一方、実行判断部145は、第1センサ23および第2センサ24の双方とも正常と判定し、且つズレ故障が無いと判定した場合に、ソフトエンドストップ制御を実行する。
【0108】
<動作>
次に、本実施形態2の作業機械の制御方法について説明する。
図12は、本実施形態2の作業機械の制御方法を示すフロー図である。
【0109】
はじめに、ステップS20において、第1フレーム角読取り部43が、第1センサ23の状態および検出値を含む信号を読取り、第2フレーム角読取り部44が、第2センサ24の状態および検出値を含む信号を読み取る。ステップS20は、故障状態取得ステップの一例に対応する。
【0110】
ステップS21において、実行判断部145は、第1センサ23の状態から、第1センサ23に、断線、地絡、天絡またはセンサ停止等の故障が発生しているか否かを判定する。
【0111】
ステップS21において、故障が発生していないと判定した場合、ステップS22において、実行判断部145は、第2センサ24の状態から、第2センサ24に、断線、地絡、天絡またはセンサ停止等の故障が発生しているか否かを判定する。
【0112】
ステップS22において、故障が発生していないと判定した場合、ステップS23において、実行判断部145は、第1センサ23または第2センサ24にズレ故障が発生しているか否かを判定する。具体的には、実行判断部145は、第1センサ23から検出された第1フレーム角と第2センサ24から第2フレーム角との差の絶対値が許容ズレ角度以上の場合にズレ故障が発生していると判定し、差の絶対値が許容ズレ角度未満の場合にズレ故障が発生していないと判定する。
【0113】
ステップS23において、ズレ故障が発生していないと判定した場合、ステップS24において、実行判断部145は、ソフトエンドストップの制御を実行する。
【0114】
一方、ステップS21において、第1センサ23が故障していると判定した場合、ステップS25において、実行判断部145は、ソフトエンドストップの制御を実行しない。
【0115】
一方、ステップS22において、第2センサ24が故障していると判定した場合、ステップS25において、実行判断部145は、ソフトエンドストップの制御を実行しない。
【0116】
また、ステップS23において、ズレ故障が発生していると判定した場合、ステップS25において、実行判断部145は、ソフトエンドストップの制御を無効に設定する。ステップS21~S25は、実行判定ステップの一例に対応する。
【0117】
以上のように、本実施形態2の作業機械1では、第1センサ23および第2センサ24の少なくとも一方の停止故障が発生していると判定した場合または第1センサ23若しくは第2センサ24にズレ故障が発生していると判定した場合、ソフトエンドストップ制御を実行しない。これにより、意図しないタイミングでソフトエンドストップ制御が実行されることを防止することができる。
【0118】
<他の実施形態>
以上、本開示の一実施の形態について説明したが、本開示は上記実施の形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0119】
(A)
上記実施形態1では、第1モードにおいて、フレーム角±θcにおいてステアリングシリンダ9a、9bに供給する作動油の流量がゼロに設定されているが、ゼロでなくてもよく、少なくとも100(%)よりも減少させていればよい。ただし、フレーム角θcにおける許容最大目標流量は、第2モードにおけるF1より小さい値に設定される。すなわち、第1モードの方が、第2モードよりもステアリング速度の制限が大きくなるように許容最大目標流量が設定されていればよい。
【0120】
(B)
上記実施形態2では、ソフトエンドストップ制御を実行しない場合、許容最大目標流量に制限を設けていないが、これに限らず、例えば、第3モードのように全範囲に亘って許容最大目標流量に制限が設けられていてもよい。すなわち、実施形態2の実行判断部145は、ソフトエンドストップ制御を実行する場合には、第1モードの制御を実行し、シフトエンドストップ制御を実行しない場合には、第3モードの制御を実行してもよい。
【0121】
(C)
上記実施形態1では、第2モードにおけるフレーム角θc′における許容最大目標流量と、第3モードにおける全範囲の許容最大目標流量が同じF1(%)に設定されているが、異なっていてもよい。
【0122】
(D)
上記実施形態2の作業機械1は、第1センサ23と第2センサ24の2つのセンサを備えているが、少なくとも1つのセンサを備えていればよい。実行判断部145は、この1つのセンサの状態を取得し、故障していると判定した場合にはソフトエンドストップ制御を実効せず、正常と判定した場合にはソフトエンドストップ制御を実行する。
【0123】
(E)
上記実施形態1の作業機械1は、第1センサ23と第2センサ24の2つのセンサを備えているが、これに限られるものではない。例えば、3つ以上のセンサが設けられていてもよい。また、1つのセンサだけが設けられていてもよいが、その場合、ズレ故障を検出するために1つのセンサから2つ以上の信号を出力し、その2つ以上の信号をコントローラ25が取得する必要がある。
【0124】
(F)
上記実施形態では、右方向における終端範囲Rre(+θ1~+θe)と、左方向における終端範囲Rle(-θ1~-θe)は同じ角度範囲に設定されているが、異なっていてもよい。例えば、回転可能範囲Raの右方向における終端のフレーム角の絶対値(上記実施の形態では|+θe|)と、左方向における終端のフレーム角の絶対値(上記実施の形態では|-θe|)が異なっていてもよい。また、右側の終端範囲を決める閾値の絶対値(上記実施の形態では|+θ1|)と左側の終端範囲を決める閾値の絶対値(上記実施の形態では|-θ1|)が異なっていてもよい。
【0125】
(G)
上記実施の形態では、作業機械1としてホイールローダを用いて説明したが、ホイールローダに限られるものではなく、アーティキュレート式のダンプトラック、モータグレーダ等であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明の作業機械および作業機械の制御方法は、センサが故障している場合に意図せずステアリング速度制限が生じることを防止することが可能な効果を有し、ホイールローダ等として有用である。
【符号の説明】
【0127】
1 :作業機械
9a :ステアリングシリンダ
9b :ステアリングシリンダ
11 :フロントフレーム
12 :リアフレーム
22 :操向入力デバイス
23 :第1センサ
24 :第2センサ
25 :コントローラ