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特開2024-48727廃プラスチックの評価装置、処理システム、評価方法および評価プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048727
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】廃プラスチックの評価装置、処理システム、評価方法および評価プログラム
(51)【国際特許分類】
   C04B 7/38 20060101AFI20240402BHJP
   C10L 5/48 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
C04B7/38 ZAB
C10L5/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154802
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114258
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100125391
【弁理士】
【氏名又は名称】白川 洋一
(72)【発明者】
【氏名】下田 翔
【テーマコード(参考)】
4H015
【Fターム(参考)】
4H015AA02
4H015AB01
4H015BA01
4H015BB05
4H015BB10
4H015CB01
(57)【要約】
【課題】廃プラスチックの性状や形状も踏まえて窯前燃料としての利用可否を判定できる廃プラスチックの評価装置、処理システム、評価方法および評価プログラムを提供する。
【解決手段】窯前燃料としての利用可否に対する廃プラスチックの評価装置であって、評価対象となる廃プラスチック片の集合体の密度、集合体に含まれる廃プラスチック片個々の体積および表面積に等価な一組のデータを取得するデータ取得部330と、一組のデータに基づいて集合体がセメントキルンの窯前燃料として利用可能か否かを判定する判定部360と、集合体がセメントキルンの窯前燃料として利用可能と判定された場合には、集合体をセメントキルンの窯前部に送り出す制御を行う制御部370と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窯前燃料としての利用可否に対する廃プラスチックの評価装置であって、
評価対象となる廃プラスチック片の集合体の密度、前記集合体に含まれる前記廃プラスチック片個々の体積および表面積に等価な一組のデータを取得するデータ取得部と、
前記一組のデータに基づいて前記集合体がセメントキルンの窯前燃料として利用可能か否かを判定する判定部と、
前記集合体がセメントキルンの窯前燃料として利用可能と判定された場合には、前記集合体をセメントキルンの窯前部に送り出す制御を行う制御部と、を備えることを特徴とする廃プラスチックの評価装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記集合体の密度をρ、前記集合体に含まれる前記廃プラスチック片個々の体積をVn、表面積をSnで表したとき、数値An=ρ・Vn/Snに基づいた指標を用いて、前記集合体がセメントキルンの窯前燃料として利用可能か否かと判断することを特徴とする請求項1記載の廃プラスチックの評価装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記数値Anが第1閾値以下の廃プラスチック片が所定割合以上含まれる場合に、前記集合体をセメントキルンの窯前燃料として利用可能と判定することを特徴とする請求項2記載の廃プラスチックの評価装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記集合体の代表値から得られる前記数値Anまたは前記数値Anの代表値が第2閾値以下である場合に、前記集合体をセメントキルンの窯前燃料として利用可能と判定することを特徴とする請求項2記載の廃プラスチックの評価装置。
【請求項5】
前記集合体の画像データに基づいて、前記集合体を構成する各廃プラスチック片の体積および表面積を算出する画像処理部をさらに備え、
前記データ取得部は、前記各廃プラスチック片の体積および表面積に基づいて、前記一組のデータを取得することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の廃プラスチックの評価装置。
【請求項6】
前記集合体からサンプリングされた一部の重量を測定する重量測定部、前記集合体の一部の画像データを取得する画像データ取得部および前記集合体の送出先を前記窯前部に切り替える切替部を備える処理設備と、
請求項1から請求項4のいずれかに記載の廃プラスチックの評価装置と、を備えることを特徴とする廃プラスチックの処理システム。
【請求項7】
窯前燃料としての利用可否に対する廃プラスチックの評価方法であって、
評価対象となる廃プラスチック片の集合体の密度、前記集合体に含まれる前記廃プラスチック片個々の体積および表面積に等価な一組のデータを取得するステップと、
前記一組のデータに基づいて前記集合体がセメントキルンの窯前燃料として利用可能か否かを判定するステップと、
前記集合体がセメントキルンの窯前燃料として利用可能と判定された場合には、前記集合体をセメントキルンの窯前部に送り出す制御を行うステップと、を含むことを特徴とする廃プラスチックの評価方法。
【請求項8】
窯前燃料としての利用可否に対する廃プラスチックの評価プログラムであって、
評価対象となる廃プラスチック片の集合体の密度、前記集合体に含まれる前記廃プラスチック片個々の体積および表面積に等価な一組のデータを取得する処理と、
前記一組のデータに基づいて前記集合体がセメントキルンの窯前燃料として利用可能か否かを判定する処理と、
前記集合体がセメントキルンの窯前燃料として利用可能と判定された場合には、前記集合体をセメントキルンの窯前部に送り出す制御を行う処理と、をコンピュータに実行させることを特徴とする廃プラスチックの評価プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窯前燃料としての利用可否に対する廃プラスチックの評価装置、処理システム、評価方法および評価プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
中国の輸入規制に加え、バーゼル法改正の影響等で各国の受入規制が加速し、今後国内において更なる廃プラスチックの処理量の増加が見込まれている。一方で、廃プラスチックは焼成用燃料として利用可能な程度の熱量を有している。そこで、セメントキルンにおいてはセメントクリンカの焼成に利用される主燃料である微粉炭の代替燃料(補助燃料)として、廃プラスチックの利用が進められている(特許文献1~6参照)。
【0003】
従来、セメントキルンの燃料として廃プラスチック等の可燃性固形廃棄物を用いる場合には、セメントクリンカの品質や製造工程に与える影響の小さい、セメントキルンの窯尻部や仮焼炉で利用されてきた。しかし、窯尻部や仮焼炉での可燃性廃棄物の使用量が飽和に近付いたため、窯前部に設置されている主バーナにおいて可燃性廃棄物を利用することが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-191658号公報
【特許文献2】特許第5014519号公報
【特許文献3】特許第6261518号公報
【特許文献4】特許第5655485号公報
【特許文献5】特開2012-202618号公報
【特許文献6】特開2000-319049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、セメントキルンの主バーナにおいて、廃プラスチック等の可燃性固形廃棄物を補助燃料として利用した場合、主バーナから噴出された可燃性固形廃棄物がセメントキルン内のセメントクリンカ上に着地し、その表面で燃焼を継続する現象(以下、着地燃焼)が生じる場合がある。この着地燃焼が生じると、可燃性廃棄物の着地点周辺のセメントクリンカが還元焼成され、セメントクリンカの色調の変化等を生じさせるため好ましくない。
【0006】
上述したように、廃プラスチックの利用拡大が見込まれる状況においては、これまで工場で使用実績の無い廃プラスチックをセメント燃料として受入れる可能性がある。このため、燃焼性の観点から、対象となる廃プラスチックを窯前部への投入可否や投入するための条件等の判断指標を予め設定しておくことが好ましい。
【0007】
廃プラスチックを窯前部に投入してもよいかどうかの判断指標の一つとして、廃プラスチックの粒径が挙げられる。一般的には、粒径の大きい廃プラスチックの場合、セメントキルン内の気流中で完全燃焼せずに、上述した着地燃焼が生じやすい。このため、廃プラスチックの粒径が基準値よりも小さい場合にのみ窯前部に対して投入する方法が考えられる。
【0008】
しかし、廃プラスチックの性状や形状によっては、粒径がほぼ同等であっても燃焼時間に差異が生じる。このため、粒径を基準にして、窯前部への受入れ可否を判断した場合には、廃プラスチックによっては着地燃焼を生じさせ、セメントクリンカの品質を低下させるおそれがある。また別の観点では、粒径基準を満たすために過度な破砕や選別を行うことにより、設備や運用コストの増加や窯前燃料として利用可能な廃プラスチックの収率低下に繋がりうる。また例えば、特許文献4記載の方法では廃プラスチックの工業分析値、成分分析値や熱重量分析による燃焼性試験等からバーナに吹き込むプラスチック粒子の範囲を規定しているが、これらの分析には時間を要するため、廃プラスチックの性状変動に即座に対応できない。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、廃プラスチックの性状や形状も踏まえて窯前燃料としての利用可否を判定できる廃プラスチックの評価装置、処理システム、評価方法および評価プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上記の目的を達成するため、本発明の廃プラスチックの評価装置は、窯前燃料としての利用可否に対する廃プラスチックの評価装置であって、評価対象となる廃プラスチック片の集合体の密度、前記集合体に含まれる前記廃プラスチック片個々の体積および表面積に等価な一組のデータを取得するデータ取得部と、前記一組のデータに基づいて前記集合体がセメントキルンの窯前燃料として利用可能か否かを判定する判定部と、前記集合体がセメントキルンの窯前燃料として利用可能と判定された場合には、前記集合体をセメントキルンの窯前部に送り出す制御を行う制御部と、を備えることを特徴としている。
【0011】
これにより、廃プラスチックの性状や形状も踏まえて窯前燃料としての利用可否を判定できる。すなわち球形の粒子だけでなく板状の粒子や、密度の小さい発泡スチロールの粒子の燃焼時間に応じた判定が可能になる。その結果、着地燃焼を生じさせることなく、燃料化できる廃プラスチックの量を増やすことができる。
【0012】
(2)また、上記(1)記載の廃プラスチックの評価装置において、前記判定部が、前記集合体の密度をρ、前記集合体に含まれる前記廃プラスチック片個々の体積をVn、表面積をSnで表したとき、数値An=ρ・Vn/Snに基づいた指標を用いて、前記集合体がセメントキルンの窯前燃料として利用可能か否かと判断することを特徴としている。これにより、廃プラスチック片の形状や材質によらず指標に応じて燃焼時間の長短を判断できる。指標としては数値Anに等価な燃焼時間または微粒子の燃焼時間を用いた燃焼時間であってもよい。
【0013】
(3)また、上記(2)記載の廃プラスチックの評価装置において、前記判定部が、前記数値Anが第1閾値以下の廃プラスチック片が所定割合以上含まれる場合に、前記集合体をセメントキルンの窯前燃料として利用可能と判定することを特徴としている。このように燃焼しやすい廃プラスチック片の構成比も考慮し、基準外の粒子の存在を許容しつつ柔軟に窯前燃料として利用可能か否かを判断できる。
【0014】
(4)また、上記(2)記載の廃プラスチックの評価装置において、前記判定部が、前記集合体の代表値から得られる前記数値Anまたは前記数値Anの代表値が第2閾値以下である場合に、前記集合体をセメントキルンの窯前燃料として利用可能と判定することを特徴としている。このように一組のデータの各パラメータの代表値を用いることで数値Anを容易に計算でき、窯前燃料として利用可能か否かを判定できる。なお、代表値には、平均値および中央値が含まれる。
【0015】
(5)また、上記(1)~(4)のいずれかに記載の廃プラスチックの評価装置において、前記集合体の画像データに基づいて、前記集合体を構成する各廃プラスチック片の体積および表面積を算出する画像処理部をさらに備え、前記データ取得部は、前記各廃プラスチック片の体積および表面積に基づいて、前記一組のデータを取得することを特徴としている。このように画像処理により必要なパラメータを算出するため、各廃プラスチック片の形状に応じた評価が可能になる。
【0016】
(6)また、本発明の廃プラスチックの処理システムは、前記集合体からサンプリングされた一部の重量を測定する重量測定部、前記集合体の一部の画像データを取得する画像データ取得部および前記集合体の送出先を前記窯前部に切り替える切替部を備える処理設備と、上記(1)から(5)のいずれかに記載の廃プラスチックの評価装置と、を備えることを特徴としている。これにより、供給された廃プラスチック片からデータを取り、セメントキルンの窯前燃料として利用可能か否かの判定に応じて廃プラスチック片を輸送できる。
【0017】
(7)また、本発明の廃プラスチックの評価方法は、窯前燃料としての利用可否に対する廃プラスチックの評価方法であって、評価対象となる廃プラスチック片の集合体の密度、前記集合体に含まれる前記廃プラスチック片個々の体積および表面積に等価な一組のデータを取得するステップと、前記一組のデータに基づいて前記集合体がセメントキルンの窯前燃料として利用可能か否かを判定するステップと、前記集合体がセメントキルンの窯前燃料として利用可能と判定された場合には、前記集合体をセメントキルンの窯前部に送り出す制御を行うステップと、を含むことを特徴としている。これにより、廃プラスチックの性状や形状も踏まえて窯前燃料としての利用可否を判定できる。
【0018】
(8)また、本発明の廃プラスチックの評価プログラムは、窯前燃料としての利用可否に対する廃プラスチックの評価プログラムであって、評価対象となる廃プラスチック片の集合体の密度、前記集合体に含まれる前記廃プラスチック片個々の体積および表面積に等価な一組のデータを取得する処理と、前記一組のデータに基づいて前記集合体がセメントキルンの窯前燃料として利用可能か否かを判定する処理と、前記集合体がセメントキルンの窯前燃料として利用可能と判定された場合には、前記集合体をセメントキルンの窯前部に送り出す制御を行う処理と、をコンピュータに実行させることを特徴としている。これにより、廃プラスチックの性状や形状も踏まえて窯前燃料としての利用可否を判定できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、廃プラスチックの性状や形状も踏まえて窯前燃料としての利用可否を判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】廃プラスチックの処理システムを示す概略図である。
図2】廃プラスチックの処理設備を示すブロック図の一例である。
図3】廃プラスチックの評価装置を示すブロック図である。
図4】廃プラスチックの評価装置の動作を示すフローチャートである。
図5】(a)、(b)それぞれ画像処理を示す概略図および画像処理結果を示す表である。
図6】プラスチック片の燃焼試験装置を示す側断面図である。
図7】燃焼試験結果を示すグラフである。
図8】プラスチック片の数値Anと燃焼時間との関係を示すグラフである。
図9】各サンプルの粒径および数値Anの分布を示すグラフである。
図10】推定燃焼時間を算出するまでの実験のフローチャートである。
図11】微粒子の燃焼試験装置を示す概略図である。
図12】各サンプルの推定燃焼時間を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0022】
[廃プラスチックの処理システム]
図1は、廃プラスチックの処理システム100を示す概略図である。廃プラスチックの処理システム100は、廃プラスチックの処理設備200および評価装置300を備えている。処理設備200は、セメント製造プラント400内に設けられる。処理設備200と評価装置300とは有線または無線で接続され、相互に情報を送受信している。
【0023】
処理設備200は、雑多な廃プラスチックを選別および破砕し、処理された対象物の一部を分取し、重量を計測するとともに体積(Vn)と表面積(Sn)を計測する。そして、評価装置300は、計測された重量と体積から密度(ρ)を求め、それらから算定される数値An(=ρ×Vn/Sn)により、必要に応じて追加選別を行い、数値Aの基準を満たした場合に窯前に投入するよう処理設備200を制御する。これにより、供給された廃プラスチック片からデータを取り、セメントキルンの窯前燃料として利用可能か否かの判定に応じて廃プラスチック片を輸送できる。
【0024】
[廃プラスチックの処理設備]
図2は、廃プラスチックの処理設備200を示すブロック図の一例である。処理設備200は、粗破砕機201、機械式選別機202、2次破砕機211、測定部215、225、風力選別機221および切替部218、228を備えている。測定部215は、重量測定部216および画像データ取得部217を備えており、測定部225は、重量測定部226および画像データ取得部227を備えている。可燃性廃棄物(廃プラスチック)は、まずは粗破砕機201に投入される。
【0025】
粗破砕機201は、投入された廃プラスチックに対して例えば高い強度を有する金属のカッターを回転させることで、投入された廃プラスチックを100~500mmサイズの破片に粗破砕する。機械式選別機202は、振動ふるいや風力を用いた選別機であり、例えば傾斜角度、回転数、風力調整、エレメント枚数およびスクリーン穴などを用いて、粗破砕された廃プラスチック片を機械式の選別により軽量物、細粒物および重量物に選別する。機械式選別機202は、評価装置300等のコンピュータにより調整(傾き、風量等)されることが好ましい。
【0026】
2次破砕機211は、軽量物として選別された廃プラスチック片の輸送路に配置され、廃プラスチック片をさらに細かく30~50mmサイズに破砕する。破砕された廃プラスチック片は集合体ごとに管理され、集合体の一部は分取されて測定部215に送られる。測定部215は、分取された一部の廃プラスチック片に対して、重量や形状のデータを測定する。この測定は、自動で行われることが好ましい。
【0027】
重量測定部216は、集合体から分取された一部の廃プラスチック片の全体の重量を測定する。画像データ取得部217は、集合体から分取された一部の廃プラスチック片をカメラで撮影し、画像データを取得する。測定部215は、測定データを評価装置300に送信する。
【0028】
切替部218は、測定部215による測定データに対する評価結果に応じて、廃プラスチック片の集合体ごとに送り先を切り替える。廃プラスチック片の集合体がセメントキルンの窯前燃料として利用可能と判定されたときには、その集合体は窯前に送られ、窯前燃料として利用可能と判定されなかったときには、その集合体は細粒物の輸送路に送られる。
【0029】
風力選別機221は、細粒物として選別された廃プラスチック片の輸送路に配置され、一定の風力により細粒物のうちの軽量物と重量物とに選別する。軽量物として選別された細粒物は、風選軽量物として細粒物の輸送路に残される。風選軽量物である廃プラスチック片は集合体ごとに管理され、集合体の一部は分取されて測定部225に送られる。風力選別機221は、評価装置300等のコンピュータにより風量等の調整がなされることが好ましい。
【0030】
測定部225は、分取された一部の廃プラスチック片に対して、重量や形状のデータを測定する。この測定は、自動で行われることが好ましい。一方、重量物として選別された細粒物は、重量物の輸送路に送られる。
【0031】
重量測定部226は、風選軽量物の集合体から分取された一部の廃プラスチック片の全体の重量を測定する。画像データ取得部227は、風選軽量物の集合体から分取された一部の廃プラスチック片をカメラで撮影し、画像データとして保存する。測定部225は、測定データを評価装置300に送信する。
【0032】
切替部228は、測定部225による測定データに対する評価結果に応じて、廃プラスチック片の集合体ごとに送り先を切り替える。廃プラスチック片の集合体がセメントキルンの窯前燃料として利用可能と判定されたときには、その集合体は窯前に送られ、窯前燃料として利用可能と判定されなかったときには、その集合体は重量物の輸送路に送られる。
【0033】
機械式選別機202により重量物として選別された廃プラスチック片の集合体は、重量物の輸送路を通り、そのまま窯尻へ送られる。なお、窯尻へ送られる廃プラスチック片は、ガス化等の追加処理を行った上で窯前あるいは窯尻へ送られてもよい。
【0034】
[廃プラスチックの評価装置]
図3は、廃プラスチックの評価装置300を示すブロック図である。廃プラスチックの評価装置300は、処理設備200から廃プラスチックの集合体ごとにデータを取得し、窯前燃料として廃プラスチックの集合体の利用可否を評価する。
【0035】
評価装置300は、例えばPCのようなコンピュータであり、処理を実行するプロセッサおよびプログラムやデータを記憶するメモリまたはハードディスク等により構成される。評価装置300は、クラウド上に置かれたサーバ装置であってもよい。また、処理負担の観点で、測定データを処理する機能と処理設備200の動作を制御する機能とを分離し、制御を現場に設置されたPCで実行し、データ処理をサーバ装置で実行してもよい。なお、評価装置300は、キーボード、マウス等の入力装置380から判定条件等の入力を受け付け、ディスプレイ等の出力装置390に判定結果等を表示してもよい。
【0036】
図3に示すように、評価装置300は、送受信部310、画像処理部320、データ取得部330、数値算出部340、指標算出部350、判定部360および制御部370を備えており、各部の機能は、プログラムを実行することで実現される。
【0037】
送受信部310は、処理設備200から測定データおよび画像データを受信する。また、判定結果に基づく制御情報を処理設備200へ送信する。画像処理部320は、集合体の画像データに基づいて、集合体を構成する各廃プラスチック片の体積および表面積を算出する。画像処理部は、インラインで自動測定することもできる。このように画像処理により必要なパラメータを算出するため、各廃プラスチック片の形状に応じた評価が可能になる。
【0038】
データ取得部330は、評価対象となる廃プラスチック片の集合体の密度、体積および表面積に等価な一組のデータを取得する。「等価な」とは同じ結果が得られる一組のデータを意味し、例えば、「重量、体積および表面積」の一組のデータが挙げられる。
【0039】
数値算出部340は、集合体の密度をρ、集合体に含まれる粒子個々の体積をVn、表面積をSnで表したとき、数値An=ρ・Vn/Snを算出する。指標算出部350は、集合体の数値An=ρ・Vn/Snに基づいた指標を算出する。例えば、数値Anと測定された微粒子の燃焼時間から集合体を構成する廃プラスチック片の推定燃焼時間を算出できる。なお、数値Anそのものが指標であってもよい。その場合、代表値から得られた数値Anまたは数値Anの代表値を用いることもできる。なお、代表値には、平均値および中央値が含まれる。
【0040】
判定部360は、数値Anに基づく指標を用いて、集合体がセメントキルンの窯前燃料として利用可能か否かと判定する。これにより、廃プラスチック片の形状や材質によらず指標に応じて燃焼時間の長短を判定できる。すなわち球形の粒子だけでなく板状の粒子や、密度の小さい発泡スチロールの粒子の燃焼時間に応じた判定が可能になる。
【0041】
例えば、数値Anが第1閾値以下の廃プラスチック片が所定割合以上含まれる場合に、集合体をセメントキルンの窯前燃料として利用可能と判定できる。第1閾値として0.5×10-3[g/mm]、所定割合として80%が挙げられる。このように燃焼しやすい廃プラスチック片の構成比も考慮し、基準外の粒子の存在を許容しつつ柔軟に窯前燃料として利用可能か否かを判断できる。
【0042】
また、集合体の代表値から得られる数値Anまたは数値Anの代表値が第2閾値以下である場合に、集合体をセメントキルンの窯前燃料として利用可能と判定してもよい。第2閾値としては、例えば1.0×10-3[g/mm]が挙げられる。このように一組のデータの各パラメータの平均値を用いることで数値Anを容易に計算でき、窯前燃料として利用可能か否かを判定できる。
【0043】
判定部360は、機械学習モデルに代表されるAI機能を有していてもよい。例えば、入力層、中間層および出力層からなるニューラルネットワークで構成される機械学習モデルを利用できる。廃プラスチック片の集合体の密度、集合体に含まれる粒子個々の体積および表面積に等価な一組のデータと窯前に送るか否かと、が既知である場合に、それらを関連付けて教師データに用い、機械学習モデルに学習させる。すなわち廃プラスチック片の集合体の密度、集合体に含まれる粒子個々の体積および表面積に等価な一組のデータを入力し、出力層で窯前に送るか否かについての正しい判定結果を高確率で出力するように、繰り返し学習させることで中間層の各ニューロンの重みをチューニングしておく。その際には、大まかに対象を認識できるように畳み込みニューラルネットワークを用いてもよい。これにより、指標を用いることなく、蓄積されたデータを教師データに用いて、集合体がセメントキルンの窯前燃料として利用可能か否かを評価できる。
【0044】
制御部370は、集合体がセメントキルンの窯前燃料として利用可能と判定された場合には、集合体をセメントキルンの窯前部に送り出す制御を行う。これにより、廃プラスチックの性状や形状も踏まえて窯前燃料として利用できる。その結果、着地燃焼を生じさせることなく、燃料化できる廃プラスチックの量を増やすことができる。
【0045】
[廃プラスチックの評価方法]
(評価装置の動作全般)
図4は、廃プラスチックの評価装置300の動作を示すフローチャートである。図4に示すように、まず、処理設備200から測定データを受信する(ステップS1)。測定データには、重量データや画像データが含まれる。
【0046】
次に、受信した画像データの画像処理を行う(ステップS2)。これにより、サンプリングされた各廃プラスチック片の体積および表面積を推定できる。体積および表面積の推定の詳細は、後述する。
【0047】
得られた測定データおよび画像処理データを数値Anの算出のためのデータとして取得する(ステップS3)。取得されたデータをもとに数値An=ρ・Vn/Snを算出する(ステップS4)。そして、数値Anを用いて指標を算出する(ステップS5)。指標は、数値Anそのものであってもよい。
【0048】
次に、廃プラスチック片の集合体がセメントキルンの窯前燃料として利用可能か否かを判定する(ステップS6)。判定は、一組のデータに基づいて行われ、数値Anに基づく指標を用いて行なわれることが効率の観点では好ましい。
【0049】
窯前燃料として利用可能であると判定された場合には、廃プラスチック片の集合体を窯前へ送るよう処理設備200の切替部218、228を制御する。一方、窯前燃料として利用可能であると判定されなかった場合には、廃プラスチック片の集合体を窯前以外へ送るよう処理設備200の切替部218、228を制御する。
【0050】
(画像処理)
図5(a)、(b)は、それぞれ画像処理を示す概略図および画像処理結果を示す表である。図5(a)に示すように、廃プラスチック片の集合体から分取された一部は、鉛直上方から撮影され、その画像データを評価装置300が受信する。
【0051】
この画像データを画像処理にかけることで、各廃プラスチック片が認識され、各廃プラスチック片の表面積および体積が算出される。例えば、分取された廃プラスチック片の総数をN個として、n番目の平板状の廃プラスチック片に対し、主面の面積Qn、周囲長Pnおよび厚さtnが画像認識により推定できる。分取された廃プラスチック片合計N個の全体の重量をGで表すと、以下の式(1)によりn番目の平板状の廃プラスチック片の表面積Sn、体積Vnおよび分取された廃プラスチック片の平均密度が得られる。
【0052】
【数1】
【0053】
(指標の算出)
例えば、上記の平均密度、表面積、体積をρ、SnおよびVnとして用いて数値An=ρ・Vn/Snを算出できる。また、材質ごとに廃プラスチック片の推定燃焼時間Tp=Tf・Anp/Anfを指標として算出してもよい。なお、Tfは、微粒子の燃焼時間、Anfは微粒子の数値An、Anpは廃プラスチック片の数値Anを表す。
【0054】
[第1実験]
プラスチック粒子のサイズや形状が燃焼挙動に及ぼす影響を調査するため、板状と球状の二種類の形状の単一樹脂サンプルを使用した燃焼試験を実施した。試験に供した単一樹脂サンプルについては工業分析を行い、可燃分(揮発分および固定炭素)の定量値を燃焼試験結果の解析に用いた。以下の表1に分析項目とその方法を示す。表2には、単一樹脂サンプルの工業分析結果を示す。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
燃焼試験では、燃焼時の急速昇温を模擬するために電気加熱バッチ式縦型管状炉を使用した。図6は、プラスチック片の燃焼試験装置を示す側断面図である。図6に示す装置は、等温熱重量測定装置であり、燃焼試験に使用した縦型管状炉を備えている。装置は加熱部、反応管および計測部より構成され、加熱部と反応管は一体型となっており、垂直方向に上下移動が可能である。
【0058】
計測部はPCと電子天秤で構成されている。電子天秤の底面には、測定物を吊るして秤量できるようにフックがついており、そのフックに白金製のカゴに入れた試料が吊るされる。炉の温度は熱電対によって測定し、プログラムに沿って温度制御している。反応管に供給する雰囲気ガスは反応管下部の水冷ジャケットに設けられたガス供給口より流入させており、流量はマスフローコントローラにより制御している。また、電子天秤を燃焼排ガスから守るために、電子天秤にもシールガスとして不活性ガスである窒素を供給している。
【0059】
白金カゴに試料を入れて電子天秤に吊るしておき、あらかじめ所定の実験温度まで昇温しておいた電気炉を速やかに白金カゴの位置まで上昇させ、燃焼試験を開始した。この時間を反応開始時間(0秒)とし、実験中の試料の重量減少を電子天秤により連続的に測定した。なお、試験は窯前を模擬して1400℃、O=21%雰囲気(大気条件)にて行った。
【0060】
試料中のある時間における可燃分の残存率X[%](以降、残存可燃分)を以下の式(2)によって定義した。
【数2】
【0061】
ここで上式のmは初期質量、mは反応終了時の質量、mは時間tでの質量を表しており、分母は可燃分を示す。なお、mはサンプル中の可燃分が完全燃焼し、電子天秤の計測値が恒量となった時点の重量である。
【0062】
図7は、燃焼試験結果を示すグラフである。廃プラスチックの燃焼挙動は、熱分解による揮発分の放出と燃焼(以降、揮発分燃焼)と熱分解後に残った固定炭素の燃焼に起因するチャー燃焼の大きく二つの段階に分けられる。試験で使用したサンプルはほぼ揮発分からなることから本試験では揮発分燃焼のみを評価対象とした。揮発分燃焼時間は以下の要領で求められる時間と定義した。
【0063】
(1)残存可燃分が70~90%の範囲のプロットを用いて近似直線を引く。
(2)工業分析値から可燃分中の揮発分の割合を算出する。
(3)近似直線が揮発分量に相当する重量減少に到達した時点の経過時間を求める。
【0064】
なお、厳密には本試験方法では揮発分燃焼とチャー燃焼はほぼ同時進行していると考えられるが、一般的に燃焼反応初期に起こる急激な重量減少の主たる要因は揮発分燃焼によるものであることから上記方法で揮発分燃焼時間を評価することとした。
【0065】
このようにして各サンプルの燃焼時間を評価した。図8は、プラスチック片の数値Anと燃焼時間との関係を示すグラフである。図8に示すように、数値Anと燃焼時間とは比例関係にあることを実証できた。
表3は、各サンプルの数値Anおよび揮発分燃焼時間を示す表である。
【表3】
【0066】
[第2実験]
表2に示すように、粒径および数値Anが異なるプラスチック粒子を、それぞれ異なる配合で混合したサンプルの燃焼時間の推定を試みた。なお、それぞれのサンプルの特徴は以下の通りであり、具体的な配合は、表4に示す通りである。また、図9は、各サンプルに含まれる粒子の粒径および数値Anの分布を示すグラフである。
【0067】
サンプルA: 粒径も数値Anも比較的小さい領域に分布する。
サンプルB: 粒径は比較的大きい領域に分布するが、数値Anは比較的小さい領域に分布する。
サンプルC: 粒径は比較的小さい領域に分布するが、数値Anは比較的大きい領域に分布する。
サンプルD: 粒径、数値Anがサンプル内で中間程度の領域に分布する。
サンプルE: 粒径も数値Anも比較的大きい領域に分布する。
【0068】
【表4】
【0069】
図10は、推定燃焼時間を算出するまでの実験のフローチャートである。通常のラボレベルの試験装置ではキルンのような空間内を模擬した燃焼試験は難しい。そのため、有姿の廃プラスチックを準備し(ステップT1)、それを粉砕し(ステップT2)、微粒子の燃焼時間を測定し(ステップT3)、実際の廃プラスチックのサイズおよび形状等を考慮した補正を加える(ステップT4)ことで有姿の廃プラスチックの燃焼時間を推定した(ステップT5)。
【0070】
図11は、微粒子の燃焼試験装置を示す概略図である。まず、図11に示すような試験装置を用いて、キルン内燃焼環境を模擬した炉内に廃プラスチックの微粒子を気流搬送し、高速度カメラによって撮影することで微粒子の燃焼時間T1を計測した。
【0071】
上記の試験装置では粒径の大きい廃プラスチックの燃焼時間を直接測定することが困難だが、図8に示すようにプラスチック粒子の燃焼時間は数値Anに概ね比例することが確認されている。そのような関係から有姿の廃プラスチック粒子の燃焼時間Tpは微粒子の燃焼時間Tfとそれぞれの数値AnであるAnp、Anfを用いて以下の式(3)によって算出した。
【0072】
【数3】
【0073】
有姿の廃プラスチックは形状や大きさが異なる雑多な粒子の混合物であるが、例えば以下の要領で画像処理等を用いて多数の粒子の数値Anを解析することで、代表性の高いデータを抽出することができる。
【0074】
廃プラスチック片の集合体から一部を分取し、鉛直上方から撮影する。その画像データを画像処理にかけることで、各廃プラスチック片が認識され、各廃プラスチック片の主面の面積Qn、周囲長Pnが画像認識により推定できる。これに廃プラスチック粒子個々の厚さtnを考慮することで平板状の廃プラスチック片の表面積Sn、体積Vnが算出できる。また分取された廃プラスチック片の総数をN個とし、N個の粒子の合計重量をGで表すと、式(1)により廃プラスチック片の平均密度が得られ、数値An=ρ・Vn/Snを算出できる
【0075】
上記の方法を用いて有姿廃プラスチックの粒子を解析して指標Apを求めた。次に、以下に示す要領で有姿の廃プラスチック粒子の燃焼時間を粒子毎に推定した。まず以下の表に示すように、図11に示す試験装置を用いて廃プラスチックの微粒子の燃焼時間を計測した。
【0076】
【表5】
【0077】
そして、微粒子の燃焼時間に基づいて、実寸補正を行い、以下の表のように有姿の廃プラスチック粒子の推定燃焼時間を算出した。
【表6】
【0078】
図12は、各サンプルの推定燃焼時間を示すグラフである。図12には、供試サンプルに含まれる粒子の推定燃焼時間の分布(中央値および四分位範囲)が示されている。基準として設定した燃焼時間と比較すると、数値An=ρ×Vn/Snが大きい(0.51×10-3以上)の粒子を多く含むCやEでは燃焼時間が長く、焼成面への落下可能性が高いと考えられた。ρ×Vn/Sn>0.50×10-3の粒子が概ね20%以下となるサンプルDは基準値内となった。
【符号の説明】
【0079】
100 処理システム
200 処理設備
201 粗破砕機
202 機械式選別機
211 2次破砕機
215、225 測定部
216、226 重量測定部
217 画像データ取得部
218、228 切替部
221 風力選別機
227 画像データ取得部
300 評価装置
310 送受信部
320 画像処理部
330 データ取得部
340 数値算出部
350 指標算出部
360 判定部
370 制御部
380 入力装置
390 出力装置
400 セメント製造プラント
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
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図10
図11
図12