(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048735
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】眼底撮影装置
(51)【国際特許分類】
A61B 3/15 20060101AFI20240402BHJP
A61B 3/12 20060101ALI20240402BHJP
A61B 3/10 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
A61B3/15
A61B3/12
A61B3/10 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154810
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 光
(72)【発明者】
【氏名】玉耒 純二
(72)【発明者】
【氏名】藤生 賢士朗
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA09
4C316AB02
4C316AB11
4C316AB16
4C316FA06
4C316FA08
4C316FA09
4C316FA18
4C316FZ01
(57)【要約】
【課題】 より良好な被検眼の眼底組織の撮影を行う。
【解決手段】 眼底撮影装置は、被検眼の眼底組織を撮影する撮影光学系を有する撮影部と、被検眼に対する撮影部の偏位を検出する検出手段と、被検眼と撮影部との相対的な位置関係を変更する変更手段と、操作入力を受け付ける受付手段と、制御手段と、を備え、制御手段は、撮影光学系による撮影、及び撮影光学系の所定の調整、のいずれかの動作の開始トリガとなる操作入力に基づいて、検出手段により検出された撮影部の偏位が減少するように変更手段を駆動させると共に、その後に操作入力に対応する動作を実行する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼の眼底組織を撮影する撮影光学系を有する撮影部と、
被検眼に対する前記撮影部の偏位を検出する検出手段と、
被検眼と前記撮影部との相対的な位置関係を変更する変更手段と、
操作入力を受け付ける受付手段と、
制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記撮影光学系による撮影、及び前記撮影光学系の所定の調整、のいずれかの動作の開始トリガとなる前記操作入力に基づいて、前記検出手段により検出された前記撮影部の前記偏位が減少するように前記変更手段を駆動させると共に、その後に前記動作を実行することを特徴とする眼底撮影装置。
【請求項2】
請求項1の眼底撮影装置において、
前記制御手段は、前記偏位が所定の第1許容範囲に入るように前記変更手段を駆動させる自動アライメントを行い、前記操作入力の受付時の制御においては、前記偏位が前記第1許容範囲に入っている場合であっても、前記偏位が減少するように前記変更手段を駆動させることを特徴とする眼底撮影装置。
【請求項3】
請求項2の眼底撮影装置において、
前記制御手段は、前記動作の実行中に前記偏位が前記第1許容範囲より広く設定された第2許容範囲を外れた場合、前記偏位が前記第2許容範囲に入るように前記変更手段を駆動させることを特徴とする眼底撮影装置。
【請求項4】
請求項1~3の何れかの眼底撮影装置において、
前記制御手段は、前記調整動作の前記操作入力の受付に基づいて前記偏位が減少するように前記変更手段を駆動させた後に前記調整動作を実行し、その後に前記撮影動作の前記操作入力を受け付けたときにも、前記検出手段により検出された前記偏位が減少するように前記変更手段を駆動させることを特徴とする眼底撮影装置。
【請求項5】
請求項1~3の何れかの眼底撮影装置において、
前記撮影光学系は、参照光と被検眼眼底からの測定光との干渉状態の検出により被検眼眼底の断層画像を取得するためのOCT光学系を有し、
前記撮影光学系の所定の調整は、前記測定光と前記参照光の光路長差を調整する光路長調整と、前記OCT光学系の前記測定光の焦点を被検眼眼底に対する合焦位置に合わるフォーカス調整と、の少なくともいずれかを行う調整であり、
前記制御手段は、前記調整動作の前記操作入力の受付に基づいて前記偏位が減少するように前記変更手段を駆動させた後に前記調整動作を実行し、その後に前記撮影動作の前記操作入力を受け付けたときにも、前記検出手段により検出された前記偏位が減少するように前記変更手段を駆動させることを特徴とする眼底撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被検眼の眼底組織を撮影する眼底撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
眼底撮影装置として、例えば、眼底組織の断層像を撮影するために、低コヒーレント光を用いた光断層干渉計(Optical Coherence Tomography:OCT)が知られている。この種の眼底撮影装置においては、撮影の動作の実行に当たり、被検眼に投影された指標や前眼部像を基に被検眼に対する撮影部のアライメント偏位を検出し、その検出結果に基づいて撮影部のアライメント偏位が所定の許容範囲に入るように自動的にアライメント(自動追尾を含む)する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、光断層干渉計のように連続的に複数枚の眼底組織画像を撮影することで撮影動作に時間が掛る装置や撮影光学系の調整に時間が掛る装置においては、上記の自動アライメントを適用する上で、改善が望まれる。例えば、撮影が上手くいかないケースとして、撮影の動作開始時に、撮影部のアライメント偏位が所定の許容範囲の閾値付近に存在している場合があることが分かった。この場合、撮影中に撮影部のアライメント偏位が許容範囲から外れやすいために、良好な撮影が行えないことがある。また、撮影前の撮影光学系の調整時においても、同種の理由により、良好な調整が行われず、結果的に良好な撮影が行えないことがある。
【0005】
本開示は、上記従来技術に鑑み、より良好な被検眼の眼底組織の撮影が行える眼底撮影装置を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の態様に係る眼底撮影装置は、被検眼の眼底組織を撮影する撮影光学系を有する撮影部と、被検眼に対する前記撮影部の偏位を検出する検出手段と、被検眼と前記撮影部との相対的な位置関係を変更する変更手段と、操作入力を受け付ける受付手段と、制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記撮影光学系による撮影、及び前記撮影光学系の所定の調整、のいずれかの動作の開始トリガとなる前記操作入力に基づいて、前記検出手段により検出された前記撮影部の前記偏位が減少するように前記変更手段を駆動させると共に、その後に前記動作を実行することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】眼底組織のOCTデータを得る眼底撮影装置の構成を説明する図である。
【
図2】アライメント指標投影光学系の配置を被検眼側から見た図である。
【
図4】眼底撮影装置のアライメントの動作を説明するフローチャートである。
【
図5】XY方向及びZ方向における自動アライメントの許容範囲を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、典型的な実施形態の1つについて、図面を参照して説明する。なお、以下の<>にて分類された項目は、独立又は関連して利用されうる。
【0009】
[概要]
例えば、眼底撮影装置(例えば、眼底撮影装置1)は、撮影部(例えば、撮影ユニット2)と、検出手段(例えば、アライメント指標投影光学系50、前眼部観察光学系40、制御部70)と、変更手段(例えば、駆動部5)と、受付手段(例えば、制御部70)と、制御手段(例えば、制御部70)と、を備える。
【0010】
<撮影部>
例えば、撮影部は、被検眼の眼底組織を撮影する撮影光学系(例えば、OCT光学系10)を有する。例えば、撮影光学系は、連続的に複数枚の眼底組織の画像を取得可能であればよい。例えば、撮影光学系は、参照光と被検眼眼底からの測定光との干渉状態の検出により被検眼眼底の断層画像を取得するためのOCT光学系(例えば、OCT光学系10)を有していてもよい。例えば、OCT光学系は、測定光を被検眼の眼底上で走査するための走査手段(例えば、走査部15)を備えていてもよい。例えば、撮影部は、さらに眼底観察光学系(例えば、眼底観察光学系30)を備えていてもよい。例えば、撮影部は、前眼部観察光学系(例えば、前眼部観察光学系40)を備えていてもよい。
【0011】
例えば、撮影光学系がOCT光学系を有する場合、眼底撮影装置は、撮影光学系の所定の調整として、測定光と参照光の光路長差を調整する光路長調整と、OCT光学系の測定光の焦点を被検眼眼底に対する合焦位置に合わるフォーカス調整と、の少なくともいずれかを調整する調整手段(例えば、制御部70)を含んでいてもよい。例えば、光路長調整は、OCT光学系に配置された光学部材(例えば、参照ミラー21)を眼底断層像が取得されるように駆動させることを含んでいてもよい。例えば、フォーカス調整は、OCT光学系に配置されたフォーカス用光学部材(例えば、フォーカシングレンズ14)を被検眼眼底に対する合焦位置に駆動させることを含んでいてもよい。
【0012】
<検出手段>
例えば、検出手段は被検眼に対する撮影部のアライメント偏位を検出する。例えば、検出手段は、被検眼にアライメント用の指標を投影するアライメント指標投影光学系(例えば、アライメント指標投影光学系50)と、被検眼に投影された指標を検出する検出光学系(例えば、前眼部観察光学系40)と、を備える。検出光学系は、被検眼に投影された指標を撮像する撮像手段(例えば、撮像素子45)を備えていてもよい。例えば、撮像手段により撮像された指標像に基づいて被検眼に対する撮影部のX方向(被検眼の水平方向)、Y方向(被検眼の鉛直方向)及びZ方向(被検眼の軸方向:作動距離方向)のアライメント偏位が検出される。あるいは、例えば、検出手段は被検眼の前眼部像を撮像する撮像手段(例えば、撮像素子45)を備え、撮像手段により撮像された前眼部像の瞳孔位置に基づいて被検眼に対する撮影部のXYZ方向のアライメント偏位が検出されてもよい。
【0013】
<変更手段>
例えば、変更手段は、被検眼と撮影部との相対的な位置関係を変更する。例えば、変更手段は、被検眼に対して撮影部をXYZ方向に移動することで、被検眼と撮影部との相対的な位置関係を変更することでもよい。
【0014】
<受付手段>
例えば、受付手段は、検者による操作入力を受け付ける。例えば、受付手段は、撮影光学系による撮影、及び撮影光学系の所定の調整、のいずれかの動作の開始トリガとなる操作入力(例えば、ボタン223、ボタン227)を受け付ける。なお、例えば、受付手段は、制御手段が操作入力の信号を自動的に発し、これを受け付けることでもよい。
【0015】
<制御手段>
例えば、制御手段は、眼底撮影装置の動作を制御する。例えば、制御手段は、変更手段の駆動を制御する。例えば、制御手段は、撮影光学系による撮影、及び撮影光学系の所定の調整(自動アライメントの動作とは異なる調整)、のいずれかの動作の開始トリガとなる操作入力に基づいて、被検眼に対して、検出手段により検出された撮影部のアライメント偏位が減少するように変更手段を駆動させると共に、その後に操作入力に対応する動作を実行する。これにより、より良好な、より精度のよい眼底組織の撮影画像を得ることができる。また、操作入力に対応する撮影又は調整の動作中に被検眼が自動アライメントの許容範囲から外れる可能性及び頻度を低減でき、良好な撮影が行える。なお、操作入力に対応する動作の実行は、アライメント偏位が減少するように変更手段を駆動させることと同時であってもよい。
【0016】
例えば、制御手段は、アライメント偏位がゼロに近づくように変更手段を駆動させることで、アライメント偏位が減少するようにしてもよい。また、例えば、制御手段は、アライメント偏位量分だけ変更手段を駆動させることで、アライメント偏位が減少するようにしてもよい。あるいは、例えば、制御手段は、操作入力の受付前に、アライメント偏位が所定の第1許容範囲に入るように変更手段を駆動させる自動アライメントを行う場合、自動アライメントで適用される第1許容範囲(例えば、許容範囲A)よりも狭く設定された許容範囲に入るように変更手段の駆動を制御することで、アライメント偏位が減少するようにしてもよい。
【0017】
例えば、制御手段は、アライメント偏位が所定の第1許容範囲に入るように変更手段を駆動させる自動アライメントを行ってもよい。そして、例えば、制御手段は、操作入力の受付時(撮影又は調整の開始時)には、アライメント偏位が自動アライメントで適用される第1許容範囲に入っている場合であっても、アライメント偏位が減少するように変更手段を駆動させてもよい。さらに付言すれば、制御手段は、アライメント偏位が第1許容範囲に入り、撮影部が停止されている状態であっても、操作入力の受付時にはアライメント偏位が減少するように変更手段を駆動させてもよい。これにより、操作入力の受付時にアライメント偏位が第1許容範囲の閾値付近に存在していた場合であっても、より適切な状態で操作入力に対応する動作(撮影又は調整)を実行できる。また、撮影中にアライメント偏位が許容範囲から外れる可能性及び頻度を低減でき、良好な調整又は撮影が行える。
【0018】
なお、例えば、自動アライメントは、アライメント偏位が第1許容範囲に入ったときに撮影部の移動が停止されてもよいし、アライメント偏位がゼロになるまで撮影部が移動された後に停止されてもよい。
【0019】
例えば、制御手段は、操作入力に基づく動作(撮影又は調整)の実行中にアライメント偏位が自動アライメントで適用される許容範囲を外れた場合、アライメント偏位がその許容範囲に入るように変更手段を駆動させる自動アライメントを行ってもよい。これにより、撮影等の動作中にアライメントが大きくずれた場合は、所定状態にアライメントすることで、良好な撮影が行える。
【0020】
また、例えば、制御手段は、操作入力に基づく動作(撮影又は調整)の実行中にアライメント偏位が、最初の位置合わせ段階で行われる自動アライメントの第1許容範囲(例えば、許容範囲A)より広く設定された第2許容範囲(例えば、許容範囲B)を外れた場合、アライメント偏位が第2許容範囲に入るように変更手段を駆動させてもよい。この場合、撮影等の動作実行中の自動アライメントが拡大された第2許容範囲を基に行われることで、撮影の実行に適した許容範囲による自動アライメントが作動でき、良好な撮影が行える。また、撮影等の動作中にアライメントが大きくずれた場合は、所定状態にアライメントすることで、良好な撮影が行える。
【0021】
なお、アライメント偏位が第2許容範囲を外れた場合に作動される自動アライメントは、アライメント偏位が第2許容範囲より狭く設定された第3許容範囲(例えば、第1許容範囲と同じであってもよいし、第1許容範囲とは異なる許容範囲であってもよい)に入るように変更手段が駆動されてもよい。この場合、アライメント偏位が第2許容範囲(例えば、許容範囲B)から直ぐに外れてしまうことを軽減でき、自動アライメントの制御がより安定できる。
【0022】
例えば、撮影光学系がOCT光学系を有する場合、制御手段は、眼底観察光学系により得られた眼底画像上で設定された眼底上のスキャン位置が自動追尾されるように走査手段の駆動を制御してもよい。この場合、撮影中に撮影部が移動される自動アライメントの許容範囲が広く設定されていても、取得される断層画像には実用的に大きな影響がなく、良好な断層画像が得られる。なお、眼底上のスキャン位置の自動追尾のみではZ方向のアライメント偏位は十分に補正されないことがある。このため、本開示では、撮影中にアライメント偏位が第2許容範囲に入るようにXYZ方向の自動アライメントが作動されることで、特にZ方向におけるアライメント偏位が良好に補正される。
【0023】
例えば、制御手段は、撮影光学系の調整動作の操作入力の受付に基づいてアライメント偏位が減少するように変更手段を駆動させた後に調整の動作を実行し、その後に撮影動作の操作入力を受け付けたときにも、検出手段により検出されたアライメント偏位が減少するように変更手段を駆動させてもよい。これにより、例えば、撮影光学系がOCT光学系を有する場合、OCT光学系の最適化の調整においても、被検眼が許容範囲から外れる可能性及び頻度を低減でき、良好な最適化が行える。
【0024】
[実施例]
図面を参照して、本開示の一実施例を示す。実施例に係る眼底撮影装置1は、低コヒーレント光を用いた光断層干渉計であるOCT装置を例にして説明する。なお、眼底撮影装置1は、OCT装置に限られず、被検眼の眼底組織を撮影し、連続して複数の眼底組織画像を得る撮影光学系を備える装置であればよい。
【0025】
図1は、眼底組織のOCTデータを得る眼底撮影装置1の構成を説明する図である。実施例の説明においては、被検眼Eの軸方向をZ方向、水平方向をX方向、鉛直方向をY方向として説明する。
図1に示すように、実施例に係る眼底撮影装置1は、撮影ユニット2、駆動部5、顔支持ユニット7、及び制御部70を有している。
【0026】
<撮影ユニット>
撮影ユニット2は、眼底撮影装置1における主要な光学系を有する。本実施例において、撮影ユニット2は、撮影光学系の例であるOCT光学系(干渉光学系)10と、導光光学系10aと、眼底観察光学系(SLO光学系)30と、前眼部観察光学系40と、を有する。OCT光学系10、眼底観察光学系30、前眼部観察光学系40の光路は、ビームスプリッタ/コンバイナ16,17によって分岐/結合される。
【0027】
<OCT光学系>
OCT光学系10は、被検眼Eの眼底に照射される測定光と参照光とのスペクトル干渉信号を検出する。OCT光学系10は、例えば、SD-OCTであってもよいし、SS-OCTであってもよいし、その他の撮影原理によるOCTであってもよい。
【0028】
OCT光学系10は、OCT光源11、光分割器12、参照光学系20、及び、検出器25を少なくとも有する。なお、本実施例における参照光学系20は、反射型の光学系であるものとして説明するが、透過型の光学系であってもよい。
【0029】
OCT光源11は、低コヒーレント光を発する。OCT光源11から出射された光は、光分割器12によって、測定光と参照光とに分割される。本実施例において、光分割器12は、カップラ(スプリッタ)が利用される。測定光は、導光光学系10aを介して被検眼Eへ導かれ、参照光は、参照光学系20へ導かれる。
図1において、ポラライザ13は、参照光路上に配置されている。参照光は、参照光路上に配置された参照ミラー21によって折り返され、光分割器12によって、測定光の戻り光と合波された状態で、検出器25へ入射する。これにより、戻り光と、参照光とのスペクトル干渉信号が検出される。例えば、SD-OCTにおいては、スペクトロメータが検出器25として利用される。
【0030】
なお、本実施例において、参照光学系20に配置される参照ミラー21は、光軸に沿って移動可能であって、参照ミラー21の位置に応じて測定光と参照光との光路長(OPL)の差が調整される。また、ポラライザ13によって、測定光と参照光との偏光が調整される。
【0031】
その他、光分割器12と被検眼Eとの間の光路上には、フォーカシングレンズ14、走査部(光スキャナ)15、及び、対物レンズ60、が配置されている。フォーカシングレンズ14、走査部(光スキャナ)15、及び、対物レンズ60、を含む、光分割器12と被検眼Eとの間の光学系によって、本実施例における導光光学系10aが形成されている。本実施例では、フォーカシングレンズ14が光軸方向へ変位されることによって、OCT光学系10におけるフォーカス位置が変更される。
【0032】
走査部15は、OCT画像の取得位置を変更するために利用される。走査部15は、測定光を、被検眼Eの眼底において二次元的に走査させるために利用されてもよい。走査部15は、例えば、走査方向が互いに異なる2つの光スキャナを含んでいてもよい。各々の光スキャナは、ガルバノミラーであってもよいし、その他の光スキャナであってもよい。
【0033】
対物レンズ60は、測定光を被検眼における眼底へ導く。対物レンズ60を介して走査部15と共役な位置を旋回点として、測定光は旋回される。
図1に示すように、旋回点に被検眼の前眼部が位置する場合、測定光は虹彩でケラレることなく眼底に到達し、走査部15の駆動に基づいて眼底上で測定光が走査される。この場合、測定光の集光面は眼底上に形成される。
【0034】
<眼底観察光学系>
眼底観察光学系30は、観察画像として、眼底の正面画像を取得するために利用される。眼底観察光学系30を介して、眼底の正面画像が、観察画像として取得される。
【0035】
図1では、眼底観察光学系30の一例として、SLO光学系が示されている。眼底観察光学系30は、照射光学系と、受光光学系と、を少なくとも有していてもよい。照射光学系は、被検眼の撮影部位に対して観察光を照射する。受光光学系は、観察光による眼底反射光を受光素子39によって受光する。受光素子39からの出力信号に基づいて観察画像が逐次取得される。
【0036】
眼底観察光学系30は、更に、フォーカス調整部を有する。フォーカス調整部は、フォーカシングレンズ34を含む。
【0037】
観察光源31には、例えば、レーザダイオード光源が用いられる。観察光路には、フォーカシングレンズ34の他に、走査部35、及び、対物レンズ60が配置されている。走査部35は、被検眼の撮影部位において二次元的に光を走査する。走査部35は、例えば、ポリゴンミラーと、ガルバノスキャナとの組み合わせを含んでいてもよい。
【0038】
また、観察光源31とフォーカシングレンズ34との間には、ビームスプリッタ33が配置されている。そして、ビームスプリッタ33の透過方向には、共焦点開口37と、受光素子39と、が配置されている。
【0039】
観察光は、ビームスプリッタ33によって反射された後、フォーカシングレンズ34を介して、走査部35に達する。走査部35を経た光は、ビームスプリッタ17を透過した後、対物レンズ60を介して、被検眼の眼底に照射される。
【0040】
眼底からの反射光は、投光経路を遡って、ビームスプリッタ33まで導かれる。眼底からの反射光は、ビームスプリッタ33を透過し、更に、共焦点開口37を介して、受光素子39によって受光される。受光素子39からの受光信号に基づいて、眼底の正面画像が形成される。形成された正面画像は、メモリ72に記憶されてもよい。
【0041】
<アライメント指標投影光学系>
アライメント指標投影光学系50は、第1指標投影光学系50aと、第2指標投影光学系50bと、を備える。第1指標投影光学系50aは、光源51,コリメータレンズ52を備え、被検眼角膜の無限遠の指標を投影する。なお、
図1においては、説明の便宜上、アライメント指標投影光学系50の一部のみを図示している。例えば、
図2(アライメント指標投影光学系50の配置を被検眼側から見た図)に示すように、第1指標投影光学系50aは対物レンズ60の光軸L1を基準に0度、180度の方向に対称に配置され、第2指標投影光学系50bは、光軸Lを中心に45度、90度、135度、225度、270度及び315度の方向で同心円上に配置されている。
【0042】
第2指標投影光学系50bにより投影される指標は平行光であるため、被検眼Eに対する検査ユニット2の作動距離(Z方向の距離)が変化しても無限遠の指標像の位置はほとんど変化しない。一方、第1指標投影光学系50aにより投影される指標は発散光であるので、作動距離が変化すると有限遠の指標像の位置が変化する。これらの無限遠の指標像の位置と有限遠の指標像の位置とに基づきZ方向のアライメント状態(被検眼に対する検査ユニット2の偏位)が検出される(詳しくは、特開平6-46999号を参照)。また、第2指標投影光学系50bによる指標像の中心位置に基づき、XY方向のアライメント状態が検出される。
【0043】
<前眼部観察光学系>
前眼部観察光学系40は、被検眼Eの前眼部の正面画像(観察画像という)を観察するために利用される。前眼部観察光学系40は、少なくとも撮像素子45を有する。本実施例では、アライメント指標投影光学系50によって被検眼角膜に投影された指標像を含む、被検眼の前眼部像がレンズ46によって撮像素子45に結像される。撮像素子45によって取得される前眼部の観察画像に基づき、アライメント指標投影光学系50による各指標像が検出されることで、XYZ方向のアライメント状態が検出される。また、撮像素子45によって取得される前眼部の観察画像は、モニタ80に表示される。
【0044】
<固視投影光学系>
眼底撮影装置1は、固視標投影光学系55を更に有する。固視標投影光学系55は、内部固視灯であってもよい。固視標投影光学系55は、被検眼Eに対して固視標(固視光束)を投影することによって、被検眼Eの視線方向を誘導する。本実施例において、固視標投影光学系55は、固視標の呈示位置を2次元的に変更でき、被検眼Eを複数の方向に誘導できる。結果的に撮像部位が変更される。本実施例において、固視投影光学系55は、SLO光学系である眼底観察光学系30の一部の投光光学系が兼用される。観察光源31とは異なる可視光源(図示を略す)を設け、可視光の投影タイミングを制御することによって、被検眼Eに対して固視標が投影される。
【0045】
<駆動部>
駆動部5は、撮影ユニット2を被検眼Eに対してXYZの各方向に移動させることで、被検眼Eと撮影ユニット2と相対的な位置関係を変更する。駆動部5は、各方向に撮影ユニット2を移動させるためのアクチュエータを有しており、制御部70からの制御信号に基づいて駆動される。
【0046】
<顔支持ユニット>
顔支持ユニット7は、撮影ユニット2に対して被検眼Eが向き合うように、被検者の顔を支持する。顔支持ユニット7は、例えば、顎台7aを備えてもよい。顎台7aには、被検者の顔が載置される。本実施例において、顔支持ユニット7は、顎台7aの位置を上下方向に移動させるアクチュエータ7cを有する。また、顎台7aには、被検者の顔が載置されたことを検出するセンサを有していてもよい。
【0047】
<制御系>
次に、眼底撮影装置1の制御系について説明する。眼底撮影装置1の制御部70は、眼底撮影装置1における各種動作を司る。また、本実施例では、制御部70によって、各種の画像処理が行われる。つまり、制御部70によって、画像処理器が兼用される。制御部70は、例えば、CPU、RAM、及び、ROM等によって構成されてもよい。また、本実施例において、制御部70は、モニタ80に接続されており、モニタ80の表示制御を行う。更に、制御部70は、メモリ72、操作部85、ジョイスティック86、アクチュエータ7c等と接続されている。ジョイスティック86は、撮影ユニット2をXYZの各方向の移動するための信号を入力可能とされている。制御部70は操作部85等からの操作入力を受け付ける受付手段としても機能する。
【0048】
操作部85として、本実施例では、マウス等のポインティングデバイスを有していてもよい。また、モニタ80が、タッチパネルディスプレイであってもよく、この場合は、モニタ80が操作部85を兼用してもよい。モニタ80及び操作部85は、ネットワーク等を介して、眼底撮影装置1とは遠隔地に配置されていてもよい。
【0049】
<操作画面>
図3は、モニタ80に表示される操作画面の例である。画面100の第1領域110には、前眼部観察光学系40により取得された被検眼前眼部の観察画像が表示される。第2領域120には、眼底観察光学系30によって取得される眼底の観察画像が表示される。第2領域120において、眼底観察画像上には、固視標の呈示位置と対応するグラフィック121、及び眼底上で走査される測定光のスキャン位置を示すグラフィック122が表示される。検者は、眼底観察画像を介してスキャン位置を把握しながら、操作部85のドラッグ操作等によってグラフィック121及び122を移動することで、眼底上のスキャン位置を手動で調整できる。第3領域130は、眼底のOCT画像を表示するために利用される。例えば、Bスキャン画像が第3領域130に表示されてもよい。
【0050】
また、画面100におけるUI群240には、アライメント方式選択ボタン241と、顎台高さ調整ボタン242と、前後調整ボタン243と、が配置されている。アライメント方式選択ボタン241は、自動アライメントと、手動アライメントと、の間でいずれかを選択するために操作される。操作に応じて、自動アライメント機能のon/offが切換わる。本実施例では、デフォルトで、自動アライメント機能が有効化されている。例えば、白内障患者を撮影する場合は、光軸の位置を混濁の影響を受けない位置にずらしたほうが良好に眼底を撮影できる場合がある。そのような場合に、アライメント方式選択ボタン241を操作して、自動アライメント機能を無効化することができる。
【0051】
顎台高さ調整ボタン242は、顔支持ユニット7における顎台7aの位置を上下に変更するために操作される。前後調整ボタン243は、撮影ユニット2の位置を、前後方向に変更するために操作される。前後調整ボタン243は、前後に対応する一対のボタンを含み、移動させたい方向と対応するボタンに対して選択操作が行われている間、対応する方向へ撮影ユニット2が移動される。
【0052】
画面100の左側欄下には、動作の開始トリガの信号を入力するためのボタン223、ボタン227が設けられている。ボタン223は、OCT光学系10の調整処理の例である最適化(オプチマイズ)を開始するために使用される。ボタン227は、OCT光学系10による断層像の撮影を開始するために使用される。
【0053】
また、画面10の左側欄には、フォーカスコントローラ224、OPLコントローラー225、及び感度設定ボタン226が配置されている。フォーカスコントローラ224及びOPLコントローラー225は、それぞれ、検出条件(OCT光学系10の最適化)を手動で調整するために操作される。本実施例において、フォーカスコントローラ224及びOPLコントローラー225は、スライダーであって“つまみ”の位置が、ドラッグ操作等に基づいて移動される。つまみの位置に応じて、それぞれの検出条件が設定される。例えば、より高感度に撮影したい層領域の深さ位置に応じて、フォーカスコントローラ224及び/またはOPLコントローラー225のスライダーが操作される。
【0054】
<動作>
以上のような装置構成を備える眼底撮影装置1の動作を説明する。ここでは、
図4のフローチャートを使用してアライメントの動作を中心に説明する。
【0055】
まず、検者は、被検者の顎を顔支持ユニット7の顎台7aに載置させる。次に、検者は、顎台高さ調整ボタン242、ジィスティック86等を操作し、第1領域110上に被検眼の前眼部、及びアライメント指標投影光学系50によって被検眼に投影された指標像(Ma、Mb、Mc、Md、Me、Mf、Mg、Mh)が現れるように、被検眼に対する撮影ユニット2のXY方向の位置を粗くアライメントする。なお、粗いアライメントは、8つの指標像の全てが撮像素子45に撮像されているのではなく、一部の指標像が撮像されている場合であっても、指標像の位置関係を基に、撮影ユニット2を移動すべきXY方向が判別できれば、後述の自動アライメントが作動される。また、検者は、前後調整ボタン243又はジィスティック86を操作し、後方の退避位置に置かれていた撮影ユニット2を被検者側に前進させ、Z方向における位置を粗くアライメントする。なお、被検眼には、固視標投影光学系55によって呈示される固視標を固視させる。
【0056】
前眼部観察光学系40の撮像素子45によって取得される前眼部像に、アライメント指標投影光学系50による各指標像が検出されるようになると、自動アライメントが作動される(S1)。自動アライメントは、次のように行われる。
【0057】
制御部70は、第2指標投影光学系50bによる指標像Mc、Md、Me、Mf、Mg、及びMhに基づき、これらの指標像の中心位置C1を求める。そして、制御部70は、
図5(a)に示すように、XY方向における所定の基準位置XYCo(例えば、対物レンズ60の光軸L1の位置)に対する中心位置C1の偏位Δxyを求める。また、制御部70は、第1指標投影光学系50aによる無限遠の指標像Maと指標像Mbとの間隔Waを求めると共に、第2指標投影光学系50bにおける有限遠の指標像の内、同一高さに設定された光源53の指標像Mfと指標像Mgとの間隔Wbを求める。そして、制御部70は、間隔Waと間隔Wbとに基づき、
図5(b)に示すように、Z方向における所定の基準位置ZCo(例えば、被検眼からの所定の作動距離の位置)に対する撮影ユニット2の所定位置ZB1(例えば、対物レンズ60の位置)の偏位Δzを求める。
【0058】
次に、制御部70は、XYZ方向におけるアライメント偏位Δ(偏位Δxy、偏位Δz)が所定の許容範囲Aに入っているか否かによりアライメントの適否を判定し(S2)、アライメント偏位Δが許容範囲Aに入っていない場合は、駆動部5の駆動を制御し、アライメント偏位Δが許容範囲Aに入るように撮影ユニット2を移動する。すなわち、制御部70は、XY方向における偏位Δxyが
図5(a)の所定の許容範囲Axyに入るように駆動部5の駆動を制御し、撮影ユニット2をXY方向に移動させる。また、制御部70は、Z方向における偏位Δzが
図5(b)の所定の許容範囲Azに入るように駆動部5の駆動を制御し、撮影ユニット2をZ方向に移動させる。
【0059】
なお、本開示における自動アライメントの完了は、アライメント偏位Δが所定の許容範囲(前述の許容範囲A、後述の許容範囲B)に入ったときに撮影ユニット2の移動が停止されてもよいし、アライメント偏位Δがゼロになるまで撮影ユニット2が移動された後に停止されてもよい。
【0060】
また、自動アライメントにおいては、まず、XY方向の偏位Δxyが適正になるまではZ方向における撮影ユニット2の移動が抑制され、XY方向の偏位Δxyが適正になった後に、Z方向における偏位Δzが適正になるように撮影ユニット2が移動されてもよい。あるいは、XY方向の偏位Δxyが所定量以上では、XY方向のみに撮影ユニット2が移動され、偏位Δxyが所定量を下回った場合にXYZ方向における撮影ユニット2の移動が行われてもよい。こうすることで、Z方向における撮影ユニット2の移動が安定し、Z方向における撮影ユニット2のアライメントをより適切に行える。
【0061】
撮影ユニット2のアライメント偏位Δが所定の許容範囲A(許容範囲Axy、許容範囲Az)に入り、アライメントが適正になったと判断されると、OCT光学系10の最適化開始の操作入力が要求される(S3)。例えば、アライメントが完了した旨、最適化の開始のためのトリガとなるボタン223を操作する必要がある旨、等のメッセージがモニタ80の画面に表示される。その後、制御部70は、ボタン223の操作信号が入力されるのを待つ。もちろん、アライメント偏位Δが許容範囲Aを外れれば、自動アライメントが作動される。すなわち、被検眼の動きに対して撮影ユニット2を追尾させる自動追尾(トラッキング)が行われる。アライメント偏位Δが許容範囲を外れたか否かは、アライメントが安定しているか否かに基づいて行われてもよい。例えば、アライメント偏位Δは一定期間(例えば、10フレーム分又は0.3秒間)の平均値で求められ、このアライメント偏位Δの平均値が一定時間(例えば、1秒)以上連続して続いた場合に、アライメントが安定していると判定され、自動アライメントが開始される。
【0062】
撮影ユニット2のアライメントが適正状態にあり、検者によってボタン223が操作されることで最適化の開始信号が受付されると(S4)、制御部70は、OCT光学系10の最適化の動作の実行に先立ち、被検眼に対する撮影ユニット2のアライメント偏位Δ(偏位Δxy、偏位Δz)がさらに減少するように、駆動部5を駆動させ、撮影ユニット2を移動させる(S5)。これは、撮影ユニット2のアライメント偏位Δが許容範囲Aに収まっている場合にも行われる。
【0063】
例えば、制御部70は、アライメント偏位Δがゼロに近づくように、駆動部5を駆動させる。具体的には、例えば、制御部70は、ボタン223のトリガ信号を受け付けたときに、アライメント偏位ΔであるXY方向の偏位Δxy及びZ方向の偏位Δzをそれぞれ求め、その偏位量分だけ、駆動部5を制御して撮影ユニット2を移動させる。この場合、制御部70は、トリガ信号を受け付けたタイミングでの撮像素子45による取得画像のみならず、それ以前の所定期間(例えば、画像処理の10フレーム分、又は0.3秒間)のアライメント偏位Δの平均を求め、これを基に撮影ユニット2の移動量を求めてもよい。さらに、制御部70は、トリガ信号を受け付けたタイミングに近い方からアライメント偏位Δが安定(例えば、ここでの安定は、撮像素子45により撮像される8つの指標像の内、検出アルゴリズムで重要視される4つの指標像Ma、Mb、Mf、Mgが検出されている状態)した画像処理のフレーム分の取得画像に基づいて撮影ユニット2の移動量を求めてもよい。あるいは、制御部70は、トリガ信号を受け付けたタイミング以前の所定期間のアライメント偏位量が安定(例えば、ここでの安定は、前述のアライメント偏位Δの指標像の検出条件の安定条件に加え、アライメント偏位Δが許容範囲Aに収まり、且つその状態が1秒等の所定時間継続した状態)しているか否かを評価し、安定していない場合は、トリガ信号を受け付けたタイミング以降での所定数のフレーム分で安定していると評価された場合に、その安定したフレーム分に基づいて撮影ユニット2の移動量を求めてもよい。
【0064】
制御部70は、上記のようにボタン223のトリガ信号の受付に基づいて撮影ユニット2を移動させた後、OCT光学系10の調整の例である最適化の動作を実行する(S6)。最適化が行われることにより、眼底観察光学系30による眼底像、及びOCT光学系10による断層画像が高感度・高解像度で取得される。本実施例においては、最適化の制御は、光路長調整(OPL調整)、フォーカス調整、偏光状態の調整(ポラライザ調整)、の制御が行われる。
【0065】
最適化制御において、制御部70は、初期化の制御として、参照ミラー21とフォーカシングレンズ24の位置を初期位置に設定する。初期化完了後、制御部70は、設定した初期位置から参照ミラー21を一方向に所定ステップで移動させ、第1光路長調整を行う。また、第1光路長調整と並行するように、制御部70は、受光素子39によって取得されるSLO眼底像に基づいて被検眼眼底に対する合焦位置情報を取得する。合焦位置情報が取得されると、制御部70は、フォーカスシングレンズ14を合焦位置に移動させ、フォーカス調整を行う。そして、フォーカス調整完了後、制御部70は、再度、参照ミラー21を光軸方向に移動させ、光路長の再調整(光路長の微調整)をする第2光路長調整を行う。第2光路長調整完了後、制御部70は、参照光の偏光状態を調節するためのポラライザ13を駆動させ、測定光の偏光状態を調整する(詳しくは、特願2012-56292号参照)。
【0066】
なお、最適化の制御においては、眼底に対する一定の許容条件を満たすことができればよく、最も適切な状態に調整する必要は必ずしもない。また、OCT光学系10の構成によっては、光路長調整及びフォーカス調整の少なくともいずれかの調整が行われることでもよい場合もある。また、この最適化の制御の間、自動アライメント(自動追尾)の動作が停止されてもよい。
【0067】
最適化の調整結果は、第3領域130におけるOCT観察画像に反映される。例えば、最適化の調整結果は、第3領域130におけるZ方向に関する眼底の像位置に反映される。また、眼底においてゼロディレイに近い側の層領域の輝度が相対的に高くなる。また、合焦位置における組織の解像度が相対的に高くなる。検者は、第3領域130におけるOCT観察画像を確認し、最適化の自動調整に失敗していた場合、または、所望の層領域を詳細に撮影したい場合、等に、フォーカスコントローラ224及び/またはOPLコントローラー225を操作する。例えば、網膜表層側よりも脈絡膜側が高感度に撮影したい場合に、ゼロディレイ位置及びフォーカス位置が手動で変更されてもよい。
【0068】
OCT光学系10の最適化の調整が完了すると、撮影の開始トリガとなる操作入力が要求される(S7)。例えば、最適化の調整が完了した旨、撮影開始のためのボタン227を操作する必要がある旨、等のメッセージがモニタ80の画面に表示される。その後、制御部70は、ボタン227の操作信号が入力されるのを待つ。
【0069】
ここで、自動アライメントの適用時の所定の許容範囲は、S2における許容範囲Aに対して広げられた許容範囲Bに変更される。具体的には、
図5に示すように、許容範囲Bとして、XY方向おける許容範囲Axyに対して広げられた許容範囲Bxyに変更され、Z方向における許容範囲Azに対して広げられた許容範囲Bzに変更される。これは、後述のS11にて、撮影の動作開始に当たっては、S5と同じく、撮影ユニット2のアライメント偏位Δ(偏位Δxy、偏位Δz)が減少するように、撮影ユニット2を移動されるためである。自動アライメントが作動する許容範囲が広げられたことにより、被検眼の僅かな動きに対して撮影ユニット2が頻繁に移動されることを軽減し、被検者に不快感を与える影響を低減することができる。
【0070】
制御部70は、撮影ユニット2のアライメント偏位Δが広げられた許容範囲Bに収まっているか否か(すなわち、アライメントが適正か否か)を判定し(S8)、撮影ユニット2のアライメント偏位Δが許容範囲Bから外れた場合は、そのアライメント偏位Δが許容範囲Bに入るように撮影ユニット2を移動する自動アライメントを行う(S9)。
【0071】
なお、撮影の開始に当たり、検者は、モニタ80の第2領域120に表示される眼底観察画像を確認してスキャン位置を所望の部位に設定できる。例えば、操作部85のドラッグ操作によってスキャン位置を示すグラフィック121を移動すると、第2領域120に表示される眼底観察画像が動画から静止画像に切換えられる。検者は、この静止画像上でスキャン位置を示すグラフィック122をドラッグ操作によって移動することで、所望する眼底部位にスキャン位置を容易に設定できる。ドラッグされたグラフィック122の位置がドロップされると、スキャン位置が確定される。そして、被検眼の固視微動に合わせて眼底画像上で設定された眼底上のスキャン位置が自動追尾されるように、制御部70によって走査部15の駆動が制御される(詳細は、特開2013-180127号公報を参照)。
【0072】
また、測定光のスキャンパターンとしては、ライン、クロス、マルチ、マップ、ラジアル、サークル、等の種々のものがコンビネーション設定部210で設定できる。コンビネーション設定部210がクリックされると、設定用の別画面が表示される。さらに、コンビネーション設定部210では、複数のスキャン設定の組み合わせを選択可能にされている。このスキャンパターンやスキャン設定の組み合わせは、予め設定されていてもよい。
【0073】
眼底部位にスキャン位置が設定され、検者によってボタン227が操作されることで、制御部70によって撮影開始信号が受付されると(S10)、制御部70は、OCT光学系10による撮影動作の実行に先立ち、S5と同じく、被検眼に対する撮影ユニット2のアライメント偏位Δ(偏位Δxy、偏位Δz)が減少するように、駆動部5を駆動させ、撮影ユニット2を移動させる(S11)。これにより、OCTの撮影のように、連続的に複数枚の撮影画像を得るために撮影時間が長くかかる場合であっても、撮影中にアライメント偏位Δが許容範囲から外れる可能性や頻度を軽減でき、より良好に撮影が行われやすくなる。
【0074】
なお、S11での撮影ユニット2の移動は、アライメント偏位Δが許容範囲Bに収まっている場合にも行われる。S11の位置合わせ動作は、S5における最適化の実行前の動作と基本的に同じであるため、その説明は省略する。
【0075】
制御部70は、撮影ユニット2のアライメント偏位Δに基づく撮影ユニット2の移動が完了すると、OCT光学系10による撮影の動作を実行する(S12)。制御部70は、断層画像及び正面画像の取り込み動作を開始する。断層画像は、予めスキャン設定されたスキャンパターンで行われる。例えば、実施例では、1枚の断層画像(例えば、Bスキャン画像)を得るために、制御部70は、所定のスキャン領域にて測定光を複数回スキャンさせ、連続的に複数枚の断層画像を得て、取得された複数の断層画像を加算処理して平均化する。この場合、制御部70は、各断層画像を測定光のスキャン方向に関して同じ複数の領域に分割し、各断層画像間の位置ずれを分割された領域毎に検出して位置ずれ情報を得る。そして、制御部70は、得られた位置ずれ情報に基づき、各撮影画像間の位置ずれを分割された領域毎に補正する。そして、制御部70は、補正された各撮影画像を加算し、平均化する。さらに、制御部70は、同一のスキャン位置での複数の断層画像を取得する。このため、眼底上の略同一位置でのスキャンを繰り返す。このような複数のスキャンによって、制御部70は、略同一位置における複数枚の断層画像を取得する。
【0076】
この断層画像の取得中も被検眼のアライメント偏位Δが許容範囲Aよりも広く設定された所定の許容範囲Bに収まっているか否かが監視され(S13)、被検眼が大きく動き、アライメント偏位Δが許容範囲Bから外れた場合、自動アライメントが作動される(S14)。
【0077】
なお、被検眼が固視微動等で多少動いたとしても、第2領域120での眼底観察画像上で設定されたスキャン位置が被検眼の移動に合わせて自動追尾される。このため、撮影ユニット2が移動される自動アライメントの許容範囲が広く設定されていても、取得される断層画像には実用的に大きな影響がなく、良好な断層画像が得られる。一方、アライメント偏位Δが許容範囲Bから外れ、S14にて自動アライメントが作動されたときに得られる撮影画像は、加算処理する断層画像の生成に採用しないようにしてもよい。
【0078】
設定された所定のスキャン位置での断層画像が得られると、撮影動作は終了される(S15)。取得された断層画像は、第3領域130に表示される。
【0079】
<変容例>
以上、本開示の典型的な実施例を説明したが、本開示はここに示した実施例に限られず、種々の変容が可能である。
【0080】
例えば、上記実施例では、自動アライメントの作動時において、許容範囲Aよりも拡大された許容範囲Bの適用は、OCT光学系10の最適化の調整終了後(S7)に行われるものとしたが、初めの許容範囲Aが適用されたアライメントの完了後、一定時間(例えば、2秒)を置いた後に行われるようにしてもよい。この場合であっても、最適化の実行前には、S5にてアライメント偏位Δが減少するように、被検眼に対する撮影ユニット2のアライメントが行われるため、大きな支障はない。これにより、初めのアライメント完了が許容範囲Aの閾値付近であり、その後に被検眼が多少動いても、自動アライメントが直ぐに作動することなく、撮影ユニット2が移動することによって被検者に与える影響を軽減できる。
【0081】
また、上記実施例では、S8及びS13にてアライメント偏位Δが許容範囲Bを外れた場合、アライメント偏位Δが許容範囲Bに入るように自動アライメントが作動されるものとしたが(S9及びS14)、これに限られない。例えば、アライメント偏位Δが許容範囲Bを外れた場合に実行される自動アライメントは、許容範囲Bより狭く設定された許容範囲(例えば、許容範囲Aと同じであってもよいし、許容範囲Aとは異なる許容範囲であってもよい)に入るように作動されてもよい。この場合、アライメント偏位Δが許容範囲Bから直ぐに外れてしまうことを軽減でき、自動アライメントの制御がより安定できる。
【0082】
また、上記実施例では最適化の実行中には自動アライメントが作動されないものとして説明したが、最適化の実行中であっても、アライメント偏位Δが許容範囲Bから外れた場合には、自動アライメントが作動されるようにしてよい。
【0083】
また、上記実施例におけるS12の撮影の実行は、アライメント偏位Δに基づく撮影ユニット2の移動と同時に行われてもよい。この場合、例えば、撮影ユニット2の移動中に得られた撮影画像データは破棄する等、撮影結果を得るためのデータとして採用しなければよい。また、S6における最適化(撮影の準備)の実行においても、同様に、アライメント偏位Δに基づく撮影ユニット2の移動と同時に行われてもよい。
【0084】
また、上記実施例では、S5及びS11にて撮影ユニット2のアライメント偏位Δが減少するように撮影ユニット2を移動させる例として、アライメントの偏位量分だけ撮影ユニット2を移動させるものとしたが、これに限られない。例えば、アライメント偏位Δが、操作入力の受付前の自動アライメントで適用される許容範囲Aよりも狭く設定された許容範囲に入るように、撮影ユニット2が移動されてもよい。この場合であっても、撮影中又は撮影光学系(OCT光学系10)の調整中に、被検眼が多少動いても自動アライメントが作動する可能性や頻度が軽減され、良好な撮影が行える。
【0085】
また、上記実施例において、OCT光学系10の調整動作のための操作入力の受付に基づいてアライメント偏位Δが減少するように撮影ユニット2が移動されるが、これに加えて、検者が意図的にOCT光学系10の光路長調整(OPL調整)状態を変えた場合には、その状態が維持されるように、OCT光学系10に配置された光学部材の参照ミラー21の移動が制御されてもよい。例えば、光路長調整状態が維持される制御は、検者によるOPLコントローラー225の操作により、あるいは、所定のスイッチ操作により、検者が意図的に光路長調整状態を変えた場合に実行される。これにより、検者が意図したOCT像位置で、より良好な撮影が行われる。なお、光路長調整状態が維持されるように参照ミラー21を移動する制御については、検者が意図的に光路長調整状態を変えた場合に限らず、OCT光学系10の最適化の調整完了のタイミング、あるいは、所定のスイッチ(例えば、撮影開始のボタン22)が検者により操作されたタイミングで適用されてもよい。
【0086】
また、上記の実施例では、被検眼に対する撮影ユニット2のアライメント偏位Δを検出する構成として、アライメント指標投影光学系50によって被検眼に投影された指標像を前眼部観察光学系40の撮像素子45で撮像するものとしたが、これに限られない。例えば、前眼部観察光学系40の撮像素子45により撮像された前眼部像の瞳孔位置に基づいて被検眼に対する撮影ユニット2のアライメント偏位Δが検出されてもよい。例えば、XY方向の偏位Δxyは瞳孔中心が検出されることで求められ、Z方向の偏位Δzは、瞳孔輪郭のボケ状態が検出されることで求められる。
【0087】
また、上記実施例では、S10の撮影開始信号の受付は、検者によってボタン227が操作されことにより行われるものとしたが、これは撮影の開始トリガとなる操作入力の一例に過ぎない。例えば、検者によって眼底観察画像上でスキャン位置が設定されことに基づき、制御部70が操作入力の信号を自動的に発し、これを受け付けることでもよい。
【符号の説明】
【0088】
1 眼底撮影装置
2 撮影ユニット
5 駆動部
10 OCT光学系
14 フォーカシングレンズ
15 走査部
20 参照光学系
21 参照ミラー
30 眼底観察光学系
40 前眼部観察光学系
50 アライメント指標投影光学系
70 制御部
80 モニタ
223,227 ボタン