(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048777
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
B60T 17/22 20060101AFI20240402BHJP
B60K 20/02 20060101ALI20240402BHJP
B60T 7/02 20060101ALI20240402BHJP
B60T 7/04 20060101ALI20240402BHJP
B60T 8/17 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
B60T17/22 C
B60K20/02 Z
B60T7/02 A
B60T7/04 C
B60T7/04 A
B60T8/17 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154866
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】萬治 寧大
【テーマコード(参考)】
3D040
3D049
3D124
3D246
【Fターム(参考)】
3D040AA01
3D040AA23
3D040AA35
3D040AB04
3D040AB08
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3D040AC65
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3D040AD06
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3D049AA03
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3D049RR08
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3D124AA12
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3D124DD62
3D246AA15
3D246BA08
3D246DA02
3D246GA04
3D246HA06A
(57)【要約】
【課題】変速操作を行う操作具の操作変位により、パーキングブレーキの作動及び解除を行う作業車において、パーキングブレーキの解除タイミングが精度よく得られること。
【解決手段】作業車は、第1経路に沿った変位によって左後輪の速度を調節する左操作具12aと、第2経路に沿った変位によって右後輪の速度を調節する右操作具12bと、左操作具12aの第1経路から分岐した第3経路の変位及び右操作具12bの第2経路から分岐した第4経路の変位に応答してパーキングブレーキ16を作動させるパーキングブレーキ作動部71と、左操作具12aの中立位置から第1経路に沿った解除用変位または右操作具12bの中立位置から第2経路に沿った解除用変位に応答して、パーキングブレーキ16の作動を解除するパーキングブレーキ解除部72と、解除用変位を算出する解除変位算出部73と、解除変位算出部73をリアルタイムで較正する較正部74を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪ユニットと、
左後輪と右後輪とを有する後輪ユニットと、
前記左後輪と前記右後輪とに独立して回転動力を供給する可変走行動力供給ユニットと、
変速経路である第1経路に沿った変位によって前記可変走行動力供給ユニットから前記左後輪に供給される回転動力の速度を調節する左操作具と、
変速経路である第2経路に沿った変位によって前記可変走行動力供給ユニットから前記右後輪に供給される回転動力の速度を調節する右操作具と、
前記可変走行動力供給ユニットに設けられたパーキングブレーキと、
前記左操作具の前記第1経路から分岐した第3経路の退避位置への変位及び前記右操作具の前記第2経路から分岐した第4経路の退避位置への変位に応答して前記パーキングブレーキを作動させるパーキングブレーキ作動部と、
前記パーキングブレーキの作動状態において、前記左操作具の中立位置から前記第1経路に沿った解除用変位または前記右操作具の中立位置から前記第2経路に沿った解除用変位のいずれかあるいはその両方に応答して、前記パーキングブレーキの作動を解除するパーキングブレーキ解除部と、
前記解除用変位を算出する解除変位算出部と、
前記解除変位算出部をリアルタイムで較正する較正部と、
を備える作業車。
【請求項2】
前記解除変位算出部は、前記左操作具及び前記右操作具の前記中立位置から前記変速経路に沿った変位を検出する変位検出センサの検出値から前記解除用変位を算出し、前記較正部は、前記左操作具及び前記右操作具の前記退避位置からの離脱の際に取得される前記変位検出センサの検出値を離脱検出値とし、前記離脱検出値をゼロ点とする較正を行う請求項1に記載の作業車。
【請求項3】
前記左操作具及び前記右操作具の前記退避位置への到達及び前記退避位置からの離脱はリミットスイッチによって検出され、前記較正部は、前記リミットスイッチによる離脱検出時または離脱検出後の所定変位時の前記変位検出センサの検出値を前記ゼロ点として前記解除変位算出部を較正する請求項2に記載の作業車。
【請求項4】
前記左操作具の前記第3経路に沿った変位と前記右操作具の前記第4経路に沿った変位とによって、運転者が降車するための降車通路が拡張される請求項1に記載の作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左後輪の速度を調節する左操作具と、右後輪の速度を調節する右操作具と、パーキングブレーキとを備えた作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、左後輪の速度を調整する左走行レバーと、右後輪の速度を調整する右走行レバーと、ブレーキ装置とを備えた乗用型草刈機が作業車として開示されている。ブレーキ装置は、ブレーキレバーまたはブレーキペダルの操作によってブレーキ装置を入り状態に保持するロック状態とロック解除状態とに切り換え自在なブレーキロック機構と連係している。
【0003】
特許文献2には、それぞれ独立して前進速度位置と中立位置と後進速度位置と駐車位置とに操作可能な左右一対の操縦レバーを備えたゼロターンモーアが作業車として開示されている。操縦レバーの前後方向の変位経路に前進速度位置と中立位置と後進速度位置とが設定されている。操縦レバーは、さらに、中間位置から前後方向に直交する横方向の変位可能であり、この横方向変位の終端位置が駐車位置として設定されている。操縦レバーが駐車位置に達するとともに、駆動輪が所定状態であれば、駐車ブレーキが動作する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許6708805号公報
【特許文献2】米国特許10974597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の作業車では、パーキングブレーキの作動と解除のためには、ブレーキレバーまたはブレーキペダルを直接操作する必要がある。別な操作具の操作を通じて、パーキングブレーキを作動または解除するようなパーキングブレーキの自動操作は考えられていない。特許文献2の作業車では、変速変位経路の中立位置から分岐した分岐経路に設定されたパーキング位置に操縦レバーを変位させることで、自動的にパーキングブレーキが動作する。パーキングブレーキの解除に関しては、詳しく記載されていないが、操縦レバーを駐車位置から離脱させることになる。この駐車位置から操縦レバーが離脱することでパーキングブレーキが解除されると、車体が不安定となる場所で駐車している場合、その時点で車体が動き出すといった不都合が生じる可能性がある。また、検出センサの固有の問題として、縦レバーの駐車位置からの離脱検出に大きなばらつきがある場合、離脱検出の許容範囲を大きくしなければならないが、このことは、パーキングブレーキの解除タイミングが精度よく得られないという問題を生じる。
【0006】
本発明の目的は、変速操作を行う操作具の操作変位により、パーキングブレーキの作動及び解除を行う作業車において、パーキングブレーキの解除タイミングが精度よく得られることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による作業車は、前輪ユニットと、左後輪と右後輪とを有する後輪ユニットと、前記左後輪と前記右後輪とに独立して回転動力を供給する可変走行動力供給ユニットと、変速経路である第1経路に沿った変位によって前記可変走行動力供給ユニットから前記左後輪に供給される回転動力の速度を調節する左操作具と、変速経路である第2経路に沿った変位によって前記可変走行動力供給ユニットから前記右後輪に供給される回転動力の速度を調節する右操作具と、前記可変走行動力供給ユニットに設けられたパーキングブレーキと、前記左操作具の前記第1経路から分岐した第3経路の退避位置への変位及び前記右操作具の前記第2経路から分岐した第4経路の退避位置への変位に応答して前記パーキングブレーキを作動させるパーキングブレーキ作動部と、前記パーキングブレーキの作動状態において、前記左操作具の中立位置(分岐点JP)から前記第1経路に沿った解除用変位または前記右操作具の中立位置(分岐点JP)から前記第2経路に沿った解除用変位のいずれかあるいはその両方に応答して、前記パーキングブレーキの作動を解除するパーキングブレーキ解除部と、前記解除用変位を算出する解除変位算出部と、前記解除変位算出部をリアルタイムで較正する較正部を備える。
【0008】
この構成によれば、左操作具の中立位置から第1経路に沿った解除用変位または右操作具の中立位置から第2経路に沿った解除用変位のいずれかあるいはその両方に応答して、解除用変位を算出する解除変位算出部は、較正部によって、リアルタイムで較正される。つまり、パーキングブレーキ解除の基本値となる解除用変位の算出が、その都度、較正される。操縦者が駐車状態の作業車を再び走行させる際、常に新しい較正結果(例えばゼロ点調整)に基づいて、解除用変位が算出されるので、パーキングブレーキの解除タイミングが精度よく得られることである。
【0009】
本発明では、前記解除変位算出部は、前記左操作具及び前記右操作具の前記中立位置から前記変速経路に沿った変位を検出する変位検出センサの検出値から前記解除用変位を算出し、前記較正部は、前記左操作具及び前記右操作具の前記退避位置からの離脱の際に取得される前記変位検出センサの検出値を離脱検出値とし、前記離脱検出値をゼロ点とする較正を行う。この構成では、第1経路または第2経路における中立位置からの所定距離の変位である解除用変位は、第1経路または第2経路における操作具の変位を検出する変位検出センサからの検出値を用いて、算出される。正確な解除用変位の検出のためには、操作具の中立位置(基準位置)における変位検出センサの検出値がゼロであることが好ましいが、検出センサの固有誤差や温度等な環境条件によって、検出値はゼロからずれる。このずれを吸収するためには、なる解除用変位を決定する値に所定の許容幅を持たせる必要がある。このような許容幅は、解除用変位の検出精度を低下させることになる。しかしながら、この構成では、変位検出センサの離脱検出値をゼロ点とするゼロ点調整が行われるので、解除用変位を決定する値に許容幅を持たせる必要がなく、毎回のパーキングブレーキの解除処理において、高い検出精度が得られる。
【0010】
さらに本発明では、前記左操作具及び前記右操作具の前記退避位置への到達及び前記退避位置からの離脱はリミットスイッチによって検出され、前記較正部は、前記リミットスイッチによる離脱検出時または離脱検出後の所定変位時の前記変位検出センサの検出値を前記ゼロ点として前記解除変位算出部を較正する。この構成では、操作具退避位置への到達及び退避位置からの離脱はリミットスイッチによって検出される。さらに、操作具の退避位置からの離脱検出時、または離脱検出後の所定変位時に取得される変位検出センサの検出値が、解除変位算出部において離脱検出値として用いられるので、較正部によるゼロ点調整が安定したタイミングで行われる。
【0011】
本発明では、前記左操作具の前記第3経路に沿った変位と前記右操作具の前記第4経路に沿った変位とによって、運転者が降車するための降車通路が拡張されるように構成されている。この構成では、左操作具の第3経路に沿った変位と右操作具の第4経路に沿った変位とによって、運転者が降車するための降車通路が拡張され、運転者はスムーズに降車することができる。運転者が降車するために必然的に行う、左操作具の第3経路に沿った変位と右操作具の第4経路に沿った変位とによって、パーキングブレーキが作動するので、運転者の降車時におけるパーキングブレーキのかけ忘れが回避される。また、運転者が降車した状態で、パーキングブレーキの解除が行われることも回避される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】操作レバーユニットに関する制御系の機能ブロック図である。
【
図4】操作レバーを案内するガイドユニットの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一例である実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、乗用型草刈機(「作業車」の一例)の走行車体に関し、
図1と
図2に示される矢印Fの方向を「車体前方」、矢印Bの方向を「車体後方」、
図1に示される矢印Uの方向を「車体上方」、矢印Dの方向を「車体下方」、
図2に示される矢印Lの方向を「車体左方」、矢印Rの方向を「車体右方」とする。
【0014】
この乗用型草刈機はゼロターンモーアとも称せられ、
図1と
図2とに示されるように、その走行車体には、左右一対の前輪を有する前輪ユニット1が遊転可能に装備され、左後輪と右後輪とを有する後輪ユニット2が駆動可能に装備されている。走行車体は車体フレーム8を有する。前輪は、キャスタ輪型に構成されている。走行車体の前部に、運転座席3を有する運転部4が形成されている。運転部4の下方に、左後輪と右後輪とに対して独立して回転動力を供給する左モータと右モータとからなる走行用モータユニット5が設けられている。走行車体の後部に、走行用モータユニット5に電力を供給するバッテリパック6が備えられている。前輪ユニット1と後輪ユニット2との間に、草刈装置7が設けられている。草刈装置7は、草刈装置7を走行車体に対して昇降操作するリンク機構9を介して車体フレーム8に支持されている。草刈装置7には、刈刃ハウジング10、刈刃ハウジング10の内部に、車体上下方向に沿う方向の支軸(図示せず)を回転中心にして回転駆動可能に設けられた刈刃11が備えられている。
【0015】
図1と
図2とに示されるように、運転部4には走行車体の車速調整および向き調整を行う操縦装置としての操作レバーユニット12が備えられている。操作レバーユニット12を構成する左操作レバー12a(左操作具の一例)と右操作レバー12b(右操作具の一例)は、運転座席3の両横側方に振り分けられている。運転者は、左操作レバー12aと右操作レバー12bとの間を通り抜け、運転座席3の前方に形成されたフロアープレートを踏んで、乗車または降車する。
【0016】
図3に示されるように、左操作レバー12aと右操作レバー12bとは、それぞれ第1揺動軸芯P1周りで揺動変位する。この揺動変位は、車体前後方向の変位であり、縦変位と称する。さらに、左操作レバー12aと右操作レバー12bとは、それぞれ第2揺動軸芯P2周りでも揺動変位する。この揺動変位は、車体横断方向の変位であり、横変位と称する。
【0017】
図3と
図4とに示されるように、操作レバーユニット12の安定した変位(揺動)のために、左操作レバー12aと右操作レバー12bとの各基端部をガイドするガイドユニット40が備えられている。ガイドユニット40はプレート構造体であり、左操作レバー12aまたは右操作レバー12bの縦変位を案内する縦案内スロット41と、左操作レバー12aまたは右操作レバー12bの横変位を案内する横案内スロット42とが、上面に形成されている。縦案内スロット41は、縦案内スロット41の中央部において横案内スロット42とつながっている。
【0018】
図4に示されているように、縦案内スロット41に案内されて縦変位する左操作レバー12aの変速経路(変位経路)は第1経路L1と称し、縦案内スロット41に案内されて縦変位する右操作レバー12bの変速経路(変位経路)は第2経路L2と称する。横案内スロット42に案内されて横変位する左操作レバー12aの変位経路は第3経路L3と称し、横案内スロット42に案内されて横変位する右操作レバー12bの変位経路は第4経路L4と称する。第1経路L1と第3経路L3とは、分岐点JPで接続しており、第2経路L2と第4経路L4とは、分岐点JPで接続している。第1経路L1と第3経路L3とは、分岐点JPで、ほぼ直交しており、第2経路L2と第4経路L4とは、分岐点JPで、ほぼ直交している。
【0019】
図3に示されるように、左操作レバー12aの基端付近には、左操作レバー12aの第1経路L1に沿った縦変位を検出する縦変位検出センサとしてのポテンショメータ13が設けられている。同様に、右操作レバー12bの基端付近には、右操作レバー12bの第2経路L2に沿った縦変位を検出する縦変位検出センサとしてのポテンショメータ13が設けられている。各ポテンショメータ13は制御装置50に接続されている。なお、パーキングブレーキ16の作動状態における、左操作レバー12a及び右操作レバー12bの分岐点JPからの縦変位の一部が、パーキングブレーキ16の作動を解除する解除用変位として用いられる。
【0020】
さらに、左操作レバー12aの基端付近には、左操作レバー12aが第3経路L3に設定された特定位置(第1検出位置)に位置することを検出するリミットスイッチ14が設けられている。同様に、右操作レバー12bの基端付近には、右操作レバー12bが第4経路L4に設定された特定位置(第2検出位置)に位置することを検出するリミットスイッチ14が設けられている。各リミットスイッチ14は制御装置50に接続されている。
【0021】
制御装置50には、後輪ユニット2に回転動力を供給する走行用モータユニット5がモータドライバユニット15を介して接続されている。走行用モータユニット5には、左後輪に回転動力を供給する左モータと、右後輪に回転動力を供給する右モータとが含まれている。モータドライバユニット15には、左モータのための左モータドライバ15aと、右モータのための右モータドライバ15bとが含まれている。制御装置50からモータドライバユニット15への制御信号は、制御装置50に構築された車輪制御部60によって生成される。
【0022】
制御装置50は、操作レバーユニット12の縦変位に基づいて、走行用モータユニット5の回転制御を行う。具体的には、左操作レバー12aが第1経路L1において分岐点JPから前方に変位するほど、左後輪の前進回転速度が高くなり、左操作レバー12aが第1経路L1において分岐点JPから後方に変位するほど、左後輪の後進回転速度が高くなる。同様に、右操作レバー12bが第2経路L2において分岐点JPから前方に変位するほど、右後輪の前進回転速度が高くなり、右操作レバー12bが第2経路L2において分岐点JPから後方に変位するほど、左後輪の後進回転速度が高くなる。左操作レバー12aの分岐点JPの位置、及び右操作レバー12bの分岐点JPの位置が中立位置であり、動力供給が行われない中立状態となる。
【0023】
分岐点JPは、後輪ユニット2への回転動力の伝達をゼロにする中立位置として機能するので、左操作レバー12aが第3経路L3に位置する状態では、左後輪への回転動力の伝達はゼロとなり、中立状態が維持される。同様に、右操作レバー12bが第4経路L4に位置する状態では、左後輪への回転動力の伝達はゼロとなり、中立状態が維持される。
【0024】
図3に示されているように、走行用モータユニット5と後輪ユニット2との間にパーキングブレーキ16が介装されている。パーキングブレーキ16には、左モータと左後輪との間に介装された左ブレーキと、右モータと右後輪との間に介装された右ブレーキとを含んでいる。パーキングブレーキ16と制御装置50とはブレーキドライバ17を介して接続されている。制御装置50からブレーキドライバ17への制御信号は、制御装置50に構築されたパーキングブレーキ制御部70によって生成される。この実施形態では、パーキングブレーキ16は、電磁ブレーキで構成されている。
【0025】
この実施形態では、操作レバーユニット12の変位位置に基づいて、後輪ユニット2に回転動力を供給する回転動力可変走行動力供給ユニットPSUは、走行用モータユニット5とパーキングブレーキ16と非図示のトランスミッション機構とからなる。トランスミッション機構には、伝動軸や伝動ギヤが含まれる。
【0026】
パーキングブレーキ制御部70には、パーキングブレーキ作動部71、パーキングブレーキ解除部72、解除変位算出部73、較正部74が含まれている。
【0027】
操作レバーユニット12の左操作レバー12aが退避位置である第1検出位置(パーキングブレーキ作動位置)に到達して左側のリミットスイッチ14がONし、かつ右操作レバー12bが退避位置である第2検出位置(パーキングブレーキ作動位置)に到達して右側のリミットスイッチ14がONした場合、パーキングブレーキ制御部70はパーキングブレーキ16の左ブレーキ及び右ブレーキを作動させる(ブレーキON)。これにより、走行車体は、パーキングブレーキ16が作動している駐車状態(パーキングブレーキ作動状態)となる。
【0028】
図2に示されているように、操作レバーユニット12の左操作レバー12aは、運転座席3の左側から立ち上がって、車体横断方向で車体中心線に向かうように屈折しており、この屈折部分の先端領域にグリップが形成されている。同様に、操作レバーユニット12の右操作レバー12bは、運転座席3の左側から立ち上がって、車体横断方向で車体中心線に向かうように屈折しており、この屈折部分の先端領域にグリップが形成されている。つまり、左操作レバー12aのグリップと右操作レバー12bのグリップとが向き合っており、運転座席3から運転者が降車する際の降車通路を邪魔している。左操作レバー12aが第3経路L3に沿って変位するとともに、右操作レバー12bが第4経路L4に沿って変位することで、左操作レバー12aのグリップと右操作レバー12bのグリップとの間隔が拡張される。特に、左操作レバー12a及び右操作レバー12bがそれぞれのリミットスイッチ14をONする位置まで変位すると、運転者が降車するための降車通路が開放される。運転者の降車時には、左操作レバー12aが第3経路L3に沿って変位するとともに、右操作レバー12bが第4経路L4に沿って変位することになり、その時点で、パーキングブレーキ16が作動することになる。
【0029】
パーキングブレーキ解除部72は、左操作レバー12aまたは右操作レバー12bがパーキングブレーキ作動位置を離脱して、分岐点JPに達し、さらに、左操作レバー12aの中立位置から第1経路L1に沿った解除用変位または右操作レバー12bの中立位置から第2経路L2に沿った解除用変位のいずれかあるいはその両方に応答して、パーキングブレーキ16の作動を解除する。解除変位算出部73は、ポテンショメータ13の検出値に基づいて、左操作レバー12a及び右操作レバー12bの分岐点JPからの変位である解除用変位を算出する。較正部74は、操作レバーユニット12がパーキングブレーキ作動位置を離脱した際のポテンショメータ13の検出値(離脱検出値)を用いて、解除変位算出部73をリアルタイムで較正する。
【0030】
パーキングブレーキ制御部70による、パーキングブレーキ16の作動を解除する制御手順の一例は、以下の通りである。
(#1)操作レバーユニット12の左操作レバー12aが第3経路L3の第1検出位置(パーキングブレーキ作動位置)から離脱したこと、あるいは、右操作レバー12bが第4経路L4の第2検出位置(パーキングブレーキ作動位置)から離脱したことを示す、リミットスイッチ14からの離脱検出信号が、パーキングブレーキ制御部70に与えられる。
(#2)較正部74は、離脱検出信号の受信に応答して、操作レバーユニット12(左操作レバー12aと右操作レバー12b)の縦変位を検出する各ポテンショメータ13の検出値を、離脱検出値として記録する。
(#3)さらに、較正部74は、離脱検出値を基準値(ゼロ点)とみなすべく、解除変位算出部73の解除変位算出プログラムを較正する(ゼロ点較正)。
(#4)解除変位算出部73は、較正された解除変位算出プログラム(つまり、離脱検出値である基準値と各ポテンショメータ13の検出値との差分値を解除変位とするプログラム)を用いて、解除変位を算出する。
(#5)算出された解除変位が、予め設定された解除変位値に達すると、パーキングブレーキ解除部72がブレーキドライバ17に解除指令を送って、パーキングブレーキ16の作動を解除する。解除変位値は、調整可能であってもよいし、固定であってもよい。その際、解除変位値は、パーキングブレーキ16の作動解除により、走行車体が微動することを回避するために、走行用モータユニット5が後輪ユニット2に僅かな回転動力を供給する与える値が好ましい。
【0031】
〔別実施形態〕
(1)上記のパーキングブレーキ16の作動を解除する制御手順では、操作レバーユニット12がパーキングブレーキ作動位置から離脱した時点の、各ポテンショメータ13の検出値が、離脱検出値として記録された。これに代えて、操作レバーユニット12がパーキングブレーキ作動位置から所定距離(分岐点JPまでの距離を最大値とする)だけ横変位した時点の、各ポテンショメータ13の検出値が、離脱検出値として記録されてもよい。この別実施形態を実現するためには、
図5に示すように、操作レバーユニット12の左操作レバー12a及び右操作レバー12bの第2揺動軸芯P2周りの揺動変位である横変位(第3経路L3と第4経路L4とに沿った変位)を検出するための横ポテンショメータ140が、設けられている。この横ポテンショメータ140は、制御装置50に接続されており、パーキングブレーキ制御部70は、左操作レバー12a及び右操作レバー12bの横変位を逐次検知することができる。したがって、パーキングブレーキ制御部70は、操作レバーの中立位置(分岐点JP)からの所定角度の横変位の検知により、パーキングブレーキ16を解除することができる。
【0032】
(2)(1)の別実施形態の変形例であり、操作レバーユニット12のパーキングブレーキ作動位置からの所定変位率を超えた横変位の検出した時点の、各ポテンショメータ13の検出値が離脱検出値として記録される。変位率は、横ポテンショメータ140からの信号が入力されるパーキングブレーキ制御部70の微分演算器によって算出され、所定変位率は、通常、運転者が駐車状態から走行を開始しようとする際の操作レバーユニット12に対する操作挙動に基づいて設定される。
【0033】
(3)上記のパーキングブレーキ16の作動を解除する制御手順では、算出された解除変位が、予め設定された解除変位値に達すると、パーキングブレーキ16の作動が解除された。これに代えて、左操作レバー12aの中立位置(分岐点JP)から第1経路L1に沿った所定変位率を超えた変位、または右操作具の中立位置から第2経路L2に沿った所定変位率を超えた変位のいずれか、あるいはその両方に応答してパーキングブレーキ16の作動が解除されてもよい。この変位率は、ポテンショメータ13からの信号が入力されるパーキングブレーキ制御部70の微分演算器によって算出され、所定変位率は、通常、運転者が駐車状態から走行を開始しようとする際の操作レバーユニット12に対する操作挙動に基づいて設定される。
【0034】
(4)上述した実施形態では、走行装置として前輪ユニット1及び後輪ユニット2が備えられ、走行装置を駆動する駆動装置として走行用モータユニット5が備えられた例を示したが、これに限らない。たとえば、クローラ式の走行装置、ミニクローラと車輪とが組み合わされた走行装置が備えられたものであってもよい。また、エンジンの動力が入力され、入力された動力を変速して走行装置に伝達することによって走行装置を駆動する無段変速装置が備えられたものであってもよい。
(5)上述した実施形態では、パーキングブレーキ16は、電磁ブレーキで構成されていたが、これに代えて、電動アクチュエータで動作する機械式ブレーキなど、他のブレーキ構造が採用されてもよい。
(6)上述した実施形態では、操作具として、揺動支点周りで揺動する操作レバーが取り上げられたが、摺動タイプの操作具など他のタイプの操作具が用いられてもよい。
(7)上述した実施形態では、操作レバーユニット12の各経路での挙動の検出に、リミットスイッチタイプやポテンショメータタイプの検出デバイスが用いられたが、磁気的検出デバイスや光学的検出デバイスなどの検出デバイスが用いられてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、草刈機の他、運搬車など各種の作業車に適用できる。
【符号の説明】
【0036】
1 :前輪ユニット
2 :後輪ユニット
5 :走行用モータユニット
12 :操作レバーユニット
12a :左操作レバー
12b :右操作レバー
13 :ポテンショメータ
14 :リミットスイッチ
16 :パーキングブレーキ
17 :ブレーキドライバ
50 :制御装置
60 :車輪制御部
70 :パーキングブレーキ制御部
71 :パーキングブレーキ作動部
72 :パーキングブレーキ解除部
73 :解除変位算出部
74 :較正部
L1 :第1経路
L2 :第2経路
L3 :第3経路
L4 :第4経路