(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048790
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】コンクリートスラブの施工管理システムおよび施工管理方法
(51)【国際特許分類】
E04G 21/10 20060101AFI20240402BHJP
E04F 21/24 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
E04G21/10 Z
E04G21/10 A
E04F21/24 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154890
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹本 喜昭
(72)【発明者】
【氏名】深瀬 勇太郎
【テーマコード(参考)】
2E172
【Fターム(参考)】
2E172GA09
2E172GB05
(57)【要約】
【課題】均し装置の高さを簡便に管理することができるコンクリートスラブの施工管理システムおよび施工管理方法を提供する。
【解決手段】均し装置16の上方に立設される電子レベル用標尺18と、前記電子レベル用標尺18を視準可能な場所に配置される電子レベル20と、前記電子レベル20で前記電子レベル用標尺18を視準する測定者Mの手元に設けられ、視準位置の高さを求めることによって計測した前記均し装置16の高さの値を入力するための入力用端末22と、高さ調整者Pが目視可能な位置に設けられ、前記入力用端末22に入力された値を表示出力するための出力用端末24と、前記出力用端末24に表示出力された値に基づいて高さ調整者Pによって操作可能に設けられ、前記電子レベル用標尺18の下方の前記均し装置16の高さを調整する調整手段とを有するようにする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートスラブの表面に沿って均し装置を一方向に移動させることにより前記表面を均す均し作業において、前記均し装置の高さを管理するシステムであって、
前記均し装置の上方に立設される電子レベル用標尺と、前記電子レベル用標尺を視準可能な場所に配置される電子レベルと、前記電子レベルで前記電子レベル用標尺を視準する測定者の手元に設けられ、視準位置の高さを求めることによって計測した前記均し装置の高さの値を入力するための入力用端末と、高さ調整者が目視可能な位置に設けられ、前記入力用端末に入力された値を表示出力するための出力用端末と、前記出力用端末に表示出力された値に基づいて高さ調整者によって操作可能に設けられ、前記電子レベル用標尺の下方の前記均し装置の高さを調整する調整手段とを有することを特徴とするコンクリートスラブの施工管理システム。
【請求項2】
前記均し装置は、複数のトラス状の梁パーツをジョイント部を介して前記一方向に直交する左右方向に連結したトラススクリードの下端に備わる左右方向に長尺のブレードであり、前記電子レベル用標尺は、前記ジョイント部の近傍に設けられることを特徴とする請求項1に記載のコンクリートスラブの施工管理システム。
【請求項3】
コンクリートスラブの表面に沿って均し装置を一方向に移動させることにより前記表面を均す均し作業において、前記均し装置の高さを管理する方法であって、
前記均し装置の上方に電子レベル用標尺を立設するとともに、前記電子レベル用標尺を視準可能な場所に電子レベルを配置した後、
測定者が前記電子レベルで前記電子レベル用標尺を視準して視準位置の高さを求めることによって前記均し装置の高さを計測し、計測した値を手元の入力用端末に入力するステップと、前記入力用端末に入力した値を離れた位置の出力用端末において出力可能にするステップと、高さ調整者が前記出力用端末に表示出力された値に基づいて、前記電子レベル用標尺の下方の前記均し装置の高さを調整するステップとを有することを特徴とするコンクリートスラブの施工管理方法。
【請求項4】
前記均し装置は、複数のトラス状の梁パーツをジョイント部を介して前記一方向に直交する左右方向に連結したトラススクリードの下端に備わる左右方向に長尺のブレードであり、前記電子レベル用標尺は、前記ジョイント部の近傍に設けられることを特徴とする請求項3に記載のコンクリートスラブの施工管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば高精度なレベル管理が求められるコンクリートスラブの施工管理システムおよび施工管理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリートスラブの施工においては、ポンプ車から排出されたコンクリートを型枠内に均してゆく作業を行っている。高い平滑性が求められる競技施設用スラブなどの施工では、この均し作業においてコンクリート表面の高さを確実に管理する必要がある。コンクリート表面を平滑に均すための装置として、
図6に示すような装置が知られている(例えば、特許文献1、非特許文献1を参照)。この装置はトラススクリードと呼ばれ、トラス状梁の下端に均し用のブレード(鏝)を備えた装置本体と、装置本体を振動させる振動発生部と、装置本体の左右両側において前後方向に配置したガイドレールとを有しており、装置本体がガイドレール上をスライドしながら前後方向に移動することで、ガイドレール間のコンクリート表面を広い幅で均すことができる。
【0003】
装置本体は、左右方向の長さ3.5m程度を1パーツとし、
図6のように、各パーツ間を上弦材1の長ナット2で左右方向に接続することで、任意の長さに組み立てることができる。また、作業員が長ナット2を回すことで、トラススクリードのブレード3の高さを調節できるようになっている。
【0004】
トラススクリードは、装置本体が激しく振動しながらコンクリートスラブ表面を均してゆくので、装置本体のジョイント部のゆるみなどで形が歪むおそれがある。より平滑性の高いコンクリートスラブ表面を実現するためには、トラススクリードのブレードの高さを施工中に管理し、狂いが生じた場合は修正する必要がある。一方、コンクリート施工は慌ただしいため、できるだけ容易な管理方法が望ましい。
【0005】
ブレードの高さを容易に調整する技術として、例えば特許文献2に示すような管理システムが知られている。このような管理システムは、レベル較正装置、レベル管理装置、データ算定・表示装置、レベル調整装置などで構成される。レベル較正装置は、施工前にブレードの基準高さを較正するための装置であり、デジタルレベルとバーコードスタッフで構成される。レベル較正装置は、作業前等の較正時に使用するもので、コンクリートスラブの均し作業時には使用しない。
【0006】
レベル管理装置は、各ブレードの高さを逐次測定するための装置であり、回転レーザーとレーザー受光器で構成される。回転レーザーはトラススクリードの前方に配置され、水平面に沿ってレーザー光を回転しながら照射する。レーザー受光器は、トラススクリードのブレード上方において左右方向に等間隔に複数設置され、回転レーザーから照射されるレーザ光を受光し、レーザ光のレベル(高さ)を検知する。レベル管理装置は、レベル較正装置で較正された基準高さをもとに、検知したレーザー光のレベルから直下のブレードの相対的な高さを計測する。
【0007】
データ算定・表示装置は、PC(パソコン)およびモニター画面で構成され、レベル管理装置で計測された複数箇所のブレードの相対的な高さを絶対的な高さに換算し、モニター画面にその結果をまとめて表示する。レベル調整装置は、ブレードの高さを調整するための装置であり、トラス状梁のジョイント部に仕組まれた高さ調整用の長ナットがこれに相当する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2019-157542号公報
【特許文献2】特開2021-70920号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】「超高平滑性コンクリートスラブの機械化施工」、竹本喜昭、深瀬勇太郎、齊藤亮介、村松慶紀、藤田敏郎、西尾淳、石川俊英、清水建設研究報告第97号、2019年12月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、上記の従来の管理システムで使用するレベル管理装置は精密機械であり、振動や高温・多湿の環境下では故障や誤作動の発生率が高くなる。実際に過去の工事でもレベル管理装置の故障が多発し、都度、工事を中断した事例もある。
【0011】
また、ブレード高さの較正作業は、レベル較正装置とレベル管理装置を用いることから、専門の知識をもった専門技術者でないと対応が難しい。そのため、通常では工事に立ち会う必要のない専門技術者が工事現場に立ち合う必要があった。また、工事中断後に再開する際も、専門技術者が立ち会う必要があった。さらに、専門技術者による較正作業には、長時間(例えば、30分程度)を要しており、時間に追われるコンクリート施工においては避けたい時間のロスであった。このため、専門技術者の立ち会いを不要とし、かつ、装置の故障発生率を低減することができる、より簡便な施工管理方法が求められていた。
【0012】
これに関し、本発明者は、レベル較正装置を活用し、レベル管理装置をなくすことを目的に鋭意検討を行った。この結果、均し作業時におけるブレードの高さをレベル較正装置(デジタルレベルとバーコードスタッフ)で行う以下の本発明に至った。
【0013】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、均し装置の高さを簡便に管理することができるコンクリートスラブの施工管理システムおよび施工管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るコンクリートスラブの施工管理システムは、コンクリートスラブの表面に沿って均し装置を一方向に移動させることにより前記表面を均す均し作業において、前記均し装置の高さを管理するシステムであって、前記均し装置の上方に立設される電子レベル用標尺と、前記電子レベル用標尺を視準可能な場所に配置される電子レベルと、前記電子レベルで前記電子レベル用標尺を視準する測定者の手元に設けられ、視準位置の高さを求めることによって計測した前記均し装置の高さの値を入力するための入力用端末と、高さ調整者が目視可能な位置に設けられ、前記入力用端末に入力された値を表示出力するための出力用端末と、前記出力用端末に表示出力された値に基づいて高さ調整者によって操作可能に設けられ、前記電子レベル用標尺の下方の前記均し装置の高さを調整する調整手段とを有することを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る他のコンクリートスラブの施工管理システムは、上述した発明において、前記均し装置は、複数のトラス状の梁パーツをジョイント部を介して前記一方向に直交する左右方向に連結したトラススクリードの下端に備わる左右方向に長尺のブレードであり、前記電子レベル用標尺は、前記ジョイント部の近傍に設けられることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係るコンクリートスラブの施工管理方法は、コンクリートスラブの表面に沿って均し装置を一方向に移動させることにより前記表面を均す均し作業において、前記均し装置の高さを管理する方法であって、前記均し装置の上方に電子レベル用標尺を立設するとともに、前記電子レベル用標尺を視準可能な場所に電子レベルを配置した後、測定者が前記電子レベルで前記電子レベル用標尺を視準して視準位置の高さを求めることによって前記均し装置の高さを計測し、計測した値を手元の入力用端末に入力するステップと、前記入力用端末に入力した値を離れた位置の出力用端末において出力可能にするステップと、高さ調整者が前記出力用端末に表示出力された値に基づいて、前記電子レベル用標尺の下方の前記均し装置の高さを調整するステップとを有することを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る他のコンクリートスラブの施工管理方法は、上述した発明において、前記均し装置は、複数のトラス状の梁パーツをジョイント部を介して前記一方向に直交する左右方向に連結したトラススクリードの下端に備わる左右方向に長尺のブレードであり、前記電子レベル用標尺は、前記ジョイント部の近傍に設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るコンクリートスラブの施工管理システムによれば、コンクリートスラブの表面に沿って均し装置を一方向に移動させることにより前記表面を均す均し作業において、前記均し装置の高さを管理するシステムであって、前記均し装置の上方に立設される電子レベル用標尺と、前記電子レベル用標尺を視準可能な場所に配置される電子レベルと、前記電子レベルで前記電子レベル用標尺を視準する測定者の手元に設けられ、視準位置の高さを求めることによって計測した前記均し装置の高さの値を入力するための入力用端末と、高さ調整者が目視可能な位置に設けられ、前記入力用端末に入力された値を表示出力するための出力用端末と、前記出力用端末に表示出力された値に基づいて高さ調整者によって操作可能に設けられ、前記電子レベル用標尺の下方の前記均し装置の高さを調整する調整手段とを有するので、電子レベル用標尺、電子レベル、入力用端末、出力用端末を用いて均し装置の高さを簡便に管理することができるという効果を奏する。
【0019】
また、本発明に係る他のコンクリートスラブの施工管理システムによれば、前記均し装置は、複数のトラス状の梁パーツをジョイント部を介して前記一方向に直交する左右方向に連結したトラススクリードの下端に備わる左右方向に長尺のブレードであり、前記電子レベル用標尺は、前記ジョイント部の近傍に設けられるので、トラススクリードのブレードの高さを複数箇所において適切に管理することができるという効果を奏する。
【0020】
また、本発明に係るコンクリートスラブの施工管理方法によれば、コンクリートスラブの表面に沿って均し装置を一方向に移動させることにより前記表面を均す均し作業において、前記均し装置の高さを管理する方法であって、前記均し装置の上方に電子レベル用標尺を立設するとともに、前記電子レベル用標尺を視準可能な場所に電子レベルを配置した後、測定者が前記電子レベルで前記電子レベル用標尺を視準して視準位置の高さを求めることによって前記均し装置の高さを計測し、計測した値を手元の入力用端末に入力するステップと、前記入力用端末に入力した値を離れた位置の出力用端末において出力可能にするステップと、高さ調整者が前記出力用端末に表示出力された値に基づいて、前記電子レベル用標尺の下方の前記均し装置の高さを調整するステップとを有するので、電子レベル用標尺、電子レベル、入力用端末、出力用端末を用いて均し装置の高さを簡便に管理することができるという効果を奏する。
【0021】
また、本発明に係る他のコンクリートスラブの施工管理方法によれば、前記均し装置は、複数のトラス状の梁パーツをジョイント部を介して前記一方向に直交する左右方向に連結したトラススクリードの下端に備わる左右方向に長尺のブレードであり、前記電子レベル用標尺は、前記ジョイント部の近傍に設けられるので、トラススクリードのブレードの高さを複数箇所において適切に管理することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明に係るコンクリートスラブの施工管理システムの実施の形態を示す概念図である。
【
図2】
図2(1)はトラススクリードの正面図、(2)はバーコードスタッフの部分拡大図、(3)はガイドレールの部分拡大図である。
【
図3】
図3は、トラススクリードとデジタルレベルの配置例を示す平面図である。
【
図4】
図4は、チャットツール内のシート例を示す図であり、(1)は測定者側、(2)は高さ調整者側である。
【
図5】
図5は、本発明に係るコンクリートスラブの施工管理方法の実施の形態を示す概略フロー図である。
【
図6】
図6は、従来のトラススクリードによるコンクリートスラブの施工状況図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明に係るコンクリートスラブの施工管理システムおよび施工管理方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0024】
図1に示すように、本実施の形態に係るコンクリートスラブの施工管理システム10は、コンクリートスラブの表面12に沿ってトラススクリード14(均し装置)を一方向に移動させることにより表面12を均す均し作業において、トラススクリード14のブレード16の高さを測定し、ブレード16の高さを修正する簡易なシステムである。
【0025】
この施工管理システム10は、ブレード16の上方に立設されるバーコードスタッフ18(電子レベル用標尺)と、バーコードスタッフ18を視準可能な場所に配置されるデジタルレベル20(電子レベル)と、デジタルレベル20の測定者Mが計測値を入力するための入力用端末22と、ブレード16の高さ調整者Pが計測値を目視確認するための出力用端末24とを備える。
【0026】
図2(1)に示すように、トラススクリード14は、複数のトラス状梁のパーツ14Aをジョイント部26を介して左右方向に連結したものである。ブレード16は、トラススクリード14の下端において左右方向に設けられる長尺の鏝である。トラススクリード14の両端は、
図2(1)、(3)に示すように、コンクリート施工領域の外側に設置した左右一対のガイドレール28に載置される。なお、
図2(3)の例では、左右のうち片方のガイドレール28のみを示している。符号30はスラブ内に配置される鉄筋である。ガイドレール28の高さは、コンクリートスラブの施工高さに調整されている。
【0027】
図2(1)、(2)に示すように、バーコードスタッフ18は、トラススクリード14のジョイント部26の近傍に専用のフレーム32で固定される。例えば、
図2(1)に示すようにトラススクリード14を5つのパーツ14Aで組むのであれば、バーコードスタッフ18はジョイント部26の近傍の4箇所でよい。これにより、ブレード16の高さを複数箇所において適切に管理することができる。バーコードスタッフ18は、下端をコンクリート表面に接するブレード16に当てて鉛直上方に向けて立てるように配置する。なお、バーコードスタッフ18の配置箇所はこれに限るものではなく、高さを把握したい任意のブレード16の近傍に配置してもよい。また、バーコードスタッフ18の下端は、ブレード16に当てて配置するものに限らず、ブレード16の高さを計測可能であればいかなる位置でもよい。
【0028】
トラススクリード14およびバーコードスタッフ18と、デジタルレベル20の配置は、
図3に示すように、トラススクリード14がデジタルレベル20を据えた位置から遠ざかる側に配置するのが望ましい。これは、均した後のコンクリートには、硬化がある程度進むまで作業員が立ち入らないので、デジタルレベル測定の邪魔にならないからである。
【0029】
デジタルレベル20は、バーコードスタッフ18に描かれたバーコードパターンを望遠鏡で視準することによって視準位置の高さを求め、この高さに基づいて計測したブレード16の高さを数値として表示可能な電子レベルで構成することができる。デジタルレベル20の配置台数は、最小で1台、最大でバーコードスタッフ18の数と同じ台数とすることができる。測定者Mは、デジタルレベル20の配置台数ごとに割り当てることが望ましい。1台のデジタルレベル20で複数のバーコードスタッフ18を読み取る場合は、デジタルレベル20の向きを左右に回して視準方向を調整すればよい。バーコードスタッフ18の数と同じ台数のデジタルレベル20を配置する場合は、デジタルレベル20の向きを左右に動かす必要がなく、デジタルレベル20に備わる望遠鏡のピントをバーコードスタッフ18に合わせるだけでよいため、迅速でより正確な測定が可能となる。
【0030】
測定者Mがデジタルレベル20で読み取ったブレード16の高さは、ブレード16の高さを調整する高さ調整者Pに伝える必要がある。高さ調整者Pは、トラススクリード14の近くで常時待機しており、ジョイント部26に設けられた長ナット(調整手段)を手で回すことで、近傍のブレード16の高さを調整可能である。高さ調整者Pは、少なくとも一人以上配置するものとし、各ジョイント部26に担当者を割り当ててもよい。また、長ナットを回すとブレード16の高さは徐々に変化するので、測定で読み取った高さはリアルタイムで伝える必要がある。ただし、コンクリートの施工現場は騒音が大きく、均し作業の進捗に伴ってトラススクリード14はデジタルレベル20の位置(測定者Mの位置)から離れてゆくので、音声での情報伝達は難しい。したがって、ブレード16の高さの読み取り値を伝達するには、目視可能な手段を用いることが望ましい。
【0031】
この手段としては、例えばマイクロソフト社のTeams(登録商標)などのチャットツールを利用することができる。チャットツールは、共有画面上でのデータの入力作業をリアルタイムで入力用端末22および出力用端末24の画面上に反映させることができるものであれば何でもよい。このチャットツールには、例えばマイクロソフト社のExcel(登録商標)のような表計算ソフトを利用して、予め以下の2種類のシート(測定者側シート、高さ調整者側シート)を準備しておく。
図4に、各シートの一例を示す。
【0032】
図4(1)に示すように、測定者側シートは、ブレード16の高さの読み取り値を入力できるテーブルを有する。
図4(1)のテーブルの上欄のNo.1~No.4は、バーコードスタッフ18に付与した番号を表しており、左欄の測定No.は、測定番号を表している。
【0033】
図4(2)に示すように、高さ調整者側シートは、測定者側が入力したブレード16の高さを表示するテーブルを有する。マイナスの値については、自動的に赤字などで表示されるように工夫すると、分かりやすくなるため好ましい。
【0034】
入力用端末22は、測定者Mの手元に設けられ、デジタルレベル20で読み取ったブレード16の高さの値を入力するためのものである。入力用端末22でチャットツールを稼働すると、測定者側シートを表示可能である。入力用端末22は、タブレット端末やノート型パソコン端末などの持ち運びしやすい端末で構成することが望ましい。入力用端末22は、図示しない通信インターフェースおよび無線ネットワーク回線を介してサーバーに接続しており、サーバーとの間でデータの送受信が可能である。
【0035】
出力用端末24は、高さ調整者Pが目視可能な位置に設けられ、入力用端末22に入力された値を表示出力するためのものである。出力用端末24は、高さ調整者Pが出力値を目視可能であればいかなる端末でもよく、例えば、手元に配置したタブレット端末やノート型パソコン端末、大画面モニターを備えた端末でもよい。出力用端末24でチャットツールを稼働すると、高さ調整者側シートを表示可能である。出力用端末24は、図示しない通信インターフェースおよび無線ネットワーク回線を介してサーバーに接続しており、サーバーとの間でデータの送受信が可能である。出力用端末24は、複数の作業員が所持してもよい。このようにすれば、複数の作業員が同時にブレード高さを共有することができる。
【0036】
次に、ブレード16の高さの伝達手順例について説明する。
図5に示すように、まず、測定者Mは、デジタルレベル20でバーコードスタッフ18を視準して、ブレード16の高さを計測する(ステップS1)。計測は、デジタルレベル20の機能を利用して、一定の時間間隔で連続して行うことが好ましい。測定者Mは、デジタルレベル20に表示された計測値を読み取り、入力用端末22のチャットツール上のシート上のテーブルに手入力する(ステップS2)。
【0037】
次に、トラススクリード14の近くで待機する高さ調整者Pは、出力用端末24のチャットツール上のシートにリアルタイムに表示される計測値を目視で把握し、調整が必要な箇所のジョイント部26の長ナットを回してブレード16の高さを調整する(ステップS3)。例えば、計測値がプラスの値ならばブレード16の高さを下げるように調整し、計測値がマイナスの値ならばブレード16の高さを上げるように調整する。このようにして、測定者Mの計測および入力に応じて徐々に変化する計測値に基づいて、バーコードスタッフ18の番号ごとにブレード16の高さを調整し、全ての高さが予め設定した規定の高さになるようにする(ステップS4)。なお、トラススクリード14の構造上、全てのブレード16の高さを±0mmとすることは困難であるため、スラブ平滑性の要求レベルに合わせて、例えば±1.5mm以内となるように調整するなど、要求レベルに応じた閾値を予め決めておくとよい。
【0038】
測定の頻度は、施工するスラブに要求される精度によるが、高い精度を求めるならばトラススクリード14が例えば2~3m進むごとに測定してもよい。また、これよりも低い精度でよければ、例えば5mごとの測定でもよい。
【0039】
なお、本実施の形態でも、コンクリートスラブの均し作業前には施工管理システム10の準備作業が必要となる。ただし、その準備作業にかかる時間は短時間(例えば30分ないし1時間程度)であり、3時間程度を要していた従来技術と比較して大幅に短縮される。
【0040】
本実施の形態によれば、バーコードスタッフ18、デジタルレベル20、入力用端末22、出力用端末24を用いてトラススクリード14のブレード16の高さを的確かつ簡便に管理することができる。これにより、高い平滑性のコンクリートスラブを実現することができる。デジタルレベル20を利用した高さ測定方法であるため、利用者は高い技術を習得する必要がない。
【0041】
また、本実施の形態によれば、従来要していたブレード高さの較正作業が不要となる。さらに、精密機械であるレーザー受光器を使用しないため、その故障を気にする必要がなくなる。廉価なバーコードスタッフ18やデジタルレベル20、汎用性の高い廉価版のチャットツールソフトを利用することができるため、扱いやすく低コストのシステムを構築することができる。
【0042】
以上説明したように、本発明に係るコンクリートスラブの施工管理システムによれば、コンクリートスラブの表面に沿って均し装置を一方向に移動させることにより前記表面を均す均し作業において、前記均し装置の高さを管理するシステムであって、前記均し装置の上方に立設される電子レベル用標尺と、前記電子レベル用標尺を視準可能な場所に配置される電子レベルと、前記電子レベルで前記電子レベル用標尺を視準する測定者の手元に設けられ、視準位置の高さを求めることによって計測した前記均し装置の高さの値を入力するための入力用端末と、高さ調整者が目視可能な位置に設けられ、前記入力用端末に入力された値を表示出力するための出力用端末と、前記出力用端末に表示出力された値に基づいて高さ調整者によって操作可能に設けられ、前記電子レベル用標尺の下方の前記均し装置の高さを調整する調整手段とを有するので、電子レベル用標尺、電子レベル、入力用端末、出力用端末を用いて均し装置の高さを簡便に管理することができる。
【0043】
また、本発明に係る他のコンクリートスラブの施工管理システムによれば、前記均し装置は、複数のトラス状の梁パーツをジョイント部を介して前記一方向に直交する左右方向に連結したトラススクリードの下端に備わる左右方向に長尺のブレードであり、前記電子レベル用標尺は、前記ジョイント部の近傍に設けられるので、トラススクリードのブレードの高さを複数箇所において適切に管理することができる。
【0044】
また、本発明に係るコンクリートスラブの施工管理方法によれば、コンクリートスラブの表面に沿って均し装置を一方向に移動させることにより前記表面を均す均し作業において、前記均し装置の高さを管理する方法であって、前記均し装置の上方に電子レベル用標尺を立設するとともに、前記電子レベル用標尺を視準可能な場所に電子レベルを配置した後、測定者が前記電子レベルで前記電子レベル用標尺を視準して視準位置の高さを求めることによって前記均し装置の高さを計測し、計測した値を手元の入力用端末に入力するステップと、前記入力用端末に入力した値を離れた位置の出力用端末において出力可能にするステップと、高さ調整者が前記出力用端末に表示出力された値に基づいて、前記電子レベル用標尺の下方の前記均し装置の高さを調整するステップとを有するので、電子レベル用標尺、電子レベル、入力用端末、出力用端末を用いて均し装置の高さを簡便に管理することができる。
【0045】
また、本発明に係る他のコンクリートスラブの施工管理方法によれば、前記均し装置は、複数のトラス状の梁パーツをジョイント部を介して前記一方向に直交する左右方向に連結したトラススクリードの下端に備わる左右方向に長尺のブレードであり、前記電子レベル用標尺は、前記ジョイント部の近傍に設けられるので、トラススクリードのブレードの高さを複数箇所において適切に管理することができる。
【0046】
なお、2015年9月の国連サミットにおいて採択された17の国際目標として「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」がある。本実施の形態に係るコンクリートスラブの施工管理システムおよび施工管理方法は、このSDGsの17の目標のうち、例えば「12.つくる責任 つかう責任」の目標などの達成に貢献し得る。
【産業上の利用可能性】
【0047】
以上のように、本発明に係るコンクリートスラブの施工管理システムおよび施工管理方法は、コンクリートスラブの均し作業に有用であり、特に、均し装置の高さを簡便に管理するのに適している。
【符号の説明】
【0048】
10 コンクリートスラブの施工管理システム
12 表面
14 トラススクリード
14A パーツ
16 ブレード(均し装置)
18 バーコードスタッフ(電子レベル用標尺)
20 デジタルレベル(電子レベル)
22 入力用端末
24 出力用端末
26 ジョイント部(調整手段)
28 ガイドレール
30 鉄筋
32 フレーム
M 測定者
P 高さ調整者