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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048794
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】免震構造及び免震装置の固定方法
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/02 20060101AFI20240402BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
E04H9/02 331A
F16F15/02 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154899
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】薛 学禎
(72)【発明者】
【氏名】和田 純一
(72)【発明者】
【氏名】三橋 幸作
(72)【発明者】
【氏名】田井 暢
(72)【発明者】
【氏名】里内 建夫
(72)【発明者】
【氏名】川島 幸哲
【テーマコード(参考)】
2E139
3J048
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139AB03
2E139AC19
2E139CA02
3J048AA01
3J048BA08
3J048DA01
3J048EA38
(57)【要約】
【課題】免震装置を固定するボルトを取り付け易い免震構造及び免震装置の固定方法を提供する。
【解決手段】下部構造体(柱20)と、下部構造体の上端面に固定され、下部構造体の外側へ跳ね出した跳ね出し部26Aに第一貫通孔が形成されたアンカープレート26と、アンカープレート26に載置され、第一貫通孔と連通可能な第二貫通孔が形成された、免震装置40のベースプレート42と、第二貫通孔及び第一貫通孔に上方から挿通された、第一貫通孔より小径のボルト50と、第一貫通孔の下方に、アンカープレート26に非溶接で配置された状態でボルト50が捩じ込まれる袋ナット60と、跳ね出し部26Aの下方に打設されて袋ナット60が埋設されるコンクリートCと、を備えた免震構造。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部構造体と、
前記下部構造体の上端面に固定され、前記下部構造体の外側へ跳ね出した跳ね出し部に第一貫通孔が形成されたアンカープレートと、
前記アンカープレートに載置され、前記第一貫通孔と連通可能な第二貫通孔が形成された、免震装置のベースプレートと、
前記第二貫通孔及び前記第一貫通孔に上方から挿通された、前記第一貫通孔より小径のボルトと、
前記第一貫通孔の下方に、前記アンカープレートに非溶接で配置された状態で前記ボルトが捩じ込まれる袋ナットと、
前記跳ね出し部の下方に打設されて前記袋ナットが埋設されるコンクリートと、
を備えた免震構造。
【請求項2】
袋ナットの外周面には回り止めが形成されている、請求項1に記載の免震構造。
【請求項3】
第一貫通孔が形成されたアンカープレートが上端面に固定された下部構造体を形成する工程と、
免震装置のベースプレートに形成された第二貫通孔が、前記第一貫通孔と連通するように、前記ベースプレートを前記アンカープレートに載置する工程と、
前記第一貫通孔より小径のボルトを、上方から前記第二貫通孔及び前記第一貫通孔へ挿通して、前記アンカープレートに非溶接の状態で前記第一貫通孔の下方に保持された袋ナットに仮締めする工程と、
前記袋ナットの周囲にコンクリートを打設する工程と、
前記コンクリートの硬化後に、前記ボルトを本締めして前記アンカープレートと前記ベースプレートとを固定する工程と、
を備えた免震装置の固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免震構造及び免震装置の固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、免震装置の下フランジプレートを、ベースプレートを介して構造物に取付ける免震装置の取付方法が記載されている。このベースプレートの下面には袋ナットが溶接され、この袋ナットに取付ボルトを上方から螺合することで、免震装置がベースプレートに固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-199766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された免震装置の取付方法では、ベースプレートの下面に溶接された袋ナットの位置と、免震装置の下フランジプレートを挿通させる取付ボルトの位置と、を平面上で一致させる必要がある。
【0005】
しかしながら、複数の袋ナット及び取付ボルトの位置を一致させるためには、免震装置の下フランジプレート、構造物のベースプレート及び袋ナットの平面位置を一致させる必要がある。一般的に、このような加工精度を確保することは難しい。また、これらの位置が一致しない箇所においては、取付ボルトを取り付けることが難しい。取付ボルトを取り付けることができないと、設計上期待される免震装置の引き抜き耐力を確保し難い場合がある。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮し、免震装置を固定するボルトを取り付け易い免震構造及び免震装置の固定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の免震構造は、下部構造体と、前記下部構造体の上端面に固定され、前記下部構造体の外側へ跳ね出した跳ね出し部に第一貫通孔が形成されたアンカープレートと、前記アンカープレートに載置され、前記第一貫通孔と連通可能な第二貫通孔が形成された、免震装置のベースプレートと、前記第二貫通孔及び前記第一貫通孔に上方から挿通された、前記第一貫通孔より小径のボルトと、前記第一貫通孔の下方に、前記アンカープレートに非溶接で配置された状態で前記ボルトが捩じ込まれる袋ナットと、前記跳ね出し部の下方に打設されて前記袋ナットが埋設されるコンクリートと、を備える。
【0008】
請求項1の免震構造では、下部構造体に固定されたアンカープレートに、下部構造体の外側へ跳ね出した跳ね出し部が形成されている。また、アンカープレートには免震装置のベースプレートが載置されている。ベースプレートには、アンカープレートの跳ね出し部に形成された第一貫通孔と連通可能な第二貫通孔が形成されている。これにより、下部構造体の外側において、ベースプレート及びアンカープレートを貫通するボルトを、上方から挿通できる。
【0009】
ここで、ボルトはアンカープレートの第一貫通孔より小径である。換言すると、アンカープレートの第一貫通孔はボルトより大径である。このため、仮に第一貫通孔と第二貫通孔とが位置ずれして、ベースプレートの第二貫通孔に上方から挿通させたボルトと第一貫通孔とが芯ずれしても、ボルトを第一貫通孔へ挿通させやすい。
【0010】
また、ボルトは、第一貫通孔の下方に配置された状態の袋ナットへ捩じ込まれる。袋ナットは下部構造体の外側に配置されるため、コンクリートの打設前にボルトを袋ナットへ捩じ込めば、ベースプレートとアンカープレートとを固定することができる。袋ナットは、アンカープレートに非溶接であるため、ボルトと第一貫通孔とが芯ずれしていても、袋ナットの位置を調整すればボルトを捩じ込むことができる。
【0011】
このように、この免震構造では、免震装置を固定するボルトを取り付け易い。
【0012】
請求項2の免震構造は、請求項1に記載の免震構造において、袋ナットの外周面には回り止めが形成されている。
【0013】
請求項2の免震構造では、袋ナットの外周面に回り止めが形成されている。すなわち、下部構造体に対して袋ナットが回転することが抑制されている。
【0014】
このため、袋ナットが埋設されたコンクリートが硬化した際にボルトを本締めすれば、このボルトに、アンカープレートとベースプレートとを固定するためのトルクを作用させることができる。
【0015】
すなわち、袋ナットをアンカープレートに溶接しなくても、トルクをかけてボルトを捩じ込み易い。また、免震装置を交換する際にも、ボルトを緩め易い。
【0016】
請求項3の免震装置の固定方法は、第一貫通孔が形成されたアンカープレートが上端面に固定された下部構造体を形成する工程と、免震装置のベースプレートに形成された第二貫通孔が、前記第一貫通孔と連通するように、前記ベースプレートを前記アンカープレートに載置する工程と、前記第一貫通孔より小径のボルトを、上方から前記第二貫通孔及び前記第一貫通孔へ挿通して、前記アンカープレートに非溶接の状態で前記第一貫通孔の下方に保持された袋ナットに仮締めする工程と、前記袋ナットの周囲にコンクリートを打設する工程と、前記コンクリートの硬化後に、前記ボルトを本締めして前記アンカープレートと前記ベースプレートとを固定する工程と、を備える。
【0017】
請求項3の免震装置の固定方法では、免震装置のベースプレートと、下部構造体に固定されたアンカープレートとが、ボルト接合される。このボルトは、アンカープレートの下方に配置された袋ナットに捩じ込まれることによって、ベースプレートとアンカープレートとを固定する。
【0018】
ここで、ボルトはアンカープレートの第一貫通孔より小径である。換言すると、アンカープレートの第一貫通孔はボルトより大径である。このため、仮に第一貫通孔と第二貫通孔とが位置ずれして、ベースプレートの第二貫通孔に上方から挿通させたボルトと第一貫通孔とが芯ずれしても、ボルトを第一貫通孔へ挿通させやすい。
【0019】
また、袋ナットの周囲のコンクリートを打設する前に、袋ナットがアンカープレートの下方に保持された状態で、ボルトが捩じ込まれて仮締めされる。袋ナットは、アンカープレートに非溶接であるため、ボルトと第一貫通孔とが芯ずれしていても、袋ナットの位置を調整すればボルトを捩じ込むことができる。
【0020】
このように、この免震装置の固定方法では、免震装置を固定するボルトを取り付け易い。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、免震装置を固定するボルトを取り付け易い。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態に係る免震構造を示す立面図である。
図2】(A)は本発明の実施形態に係る免震構造の袋ナット及びボルトの構成を示す部分拡大立面図であり、(B)はアンカープレート及びすべり板の平面形状を示す部分拡大平面図である。
図3】本発明の実施形態に係る免震構造の袋ナットを示す斜視図である。
図4】本発明の実施形態に係る免震構造のボルト径、アンカープレート及びすべり板に形成された貫通孔の直径を示す立面図である。
図5】(A)は本発明の実施形態に係る免震装置の固定方法において、下部構造体を構築した状態を示す立面図であり、(B)は下部構造体の柱にコンクリートを充填した状態を示す立面図であり、(C)は下部構造体の上に免震装置を載置した状態を示す立面図である。
図6】(A)は本発明の実施形態に係る免震装置の固定方法において、袋ナット及びボルトを仮締めした状態を示す立面図であり、(B)は袋ナットの周囲にコンクリートを打設した状態を示す立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態に係る免震構造及び免震装置の固定方法について、図面を参照しながら説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。但し、明細書中に特段の断りが無い限り、各構成要素は一つに限定されず、複数存在してもよい。
【0024】
また、各図面において重複する構成及び符号については、説明を省略する場合がある。なお、本開示は以下の実施形態に限定されるものではなく、本開示の目的の範囲内において構成を省略する、異なる構成と入れ替える、一実施形態及び各種の変形例を組み合わせて用いる等、適宜変更を加えて実施することができる。
【0025】
<免震構造>
図1には、本発明の実施形態に係る免震構造12が示されている。免震構造12は、建物10に適用される柱頭免震構造であり、下階の柱20の柱頭部と、上階の柱30の柱脚部と、の間に免震装置40が設置されて形成されている。
【0026】
なお、図1においては、免震構造12の構造を説明するために、便宜上、柱20の柱頭部及び柱30の柱脚部を被覆するコンクリートCは破線で示されている。コンクリートCは、後述するコンクリートC1、C2及びC3を含む。
【0027】
(下部構造体)
柱20は、本発明における下部構造体の一例である。柱20は、鋼管の内側にコンクリートが充填されて形成されたコンクリート充填鋼管柱である。柱20を形成する鋼管の柱頭部には、ダイヤフラム20Aを介して、H形鋼の梁22が接合されている。そして、柱20と梁22との仕口部の上方に、ベース部24が形成されている。ベース部24は、柱20の一部である。
【0028】
ベース部24は鋼管であり、内側にコンクリートが充填されている。また、ベース部24の上端面には、アンカープレート26が溶接によって固定されている。なお、アンカープレート26には、柱20及びベース部24の内側に充填するコンクリートを注入するための注入口(不図示)が形成されている。
【0029】
アンカープレート26は、跳ね出し部26Aを有している。跳ね出し部26Aは、上面視においてベース部24の外側に跳ね出した部分である。図2(A)に示すように、跳ね出し部26Aには、ボルト50を貫通させるための貫通孔26Hが複数形成されている。貫通孔26Hは、本発明における第一貫通孔の一例である。また、図1に示すように、跳ね出し部26Aの下面及びベース部24の側面には、複数のリブ28が溶接されている。
【0030】
(免震装置)
免震装置40は、建物10における上部構造体を支持するすべり免震装置である。免震装置40は、本発明におけるベースプレートの一例としてのすべり板42と、すべり板42に載置された支承44と、支承44の上端に固定されたトッププレート46と、を含んで構成されている。
【0031】
図2(A)に示すように、すべり板42には、複数の貫通孔42Hが形成されている。この貫通孔42Hは、すべり板42がアンカープレート26に載置された状態で、アンカープレート26の貫通孔26Hと連通可能な貫通孔であり、本発明における第二貫通孔の一例である。図2(B)に一部を示すように、アンカープレート26及び上述したすべり板42は、平面視で矩形状である。
【0032】
図1に示す支承44はすべり支承であり、支承44の下端面には、支承44がすべり板42の上を滑動するためのすべり材が配置されている。なお、本実施形態においては免震装置40をすべり免震装置としているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば支承44を積層ゴム支承として、すべり板42に代えて支承44に固定したベースプレートを用いてもよい。
【0033】
(袋ナット及びボルト)
アンカープレート26における跳ね出し部26Aの下方には、袋ナット60が配置されている。図2に示すように、袋ナット60は、アンカープレート26における貫通孔26Hの下方に配置され、アンカープレート26に非溶接で配置された状態でボルト50が捩じ込まれる袋ナットである。
【0034】
なお、袋ナット60は、跳ね出し部26Aの下方、かつ、ベース部24の周囲に打設されたコンクリートCに埋設して配置されている。
【0035】
図3に示すように、袋ナット60は、上端面に開口する雌ねじが形成された円柱状の本体部62と、本体部62の下端部において本体部62の径方向外側へ突出した円柱状のフランジ部64と、本体部62の中央部(上端面とフランジ部64との間)に形成された回り止め66と、を備えている。
【0036】
回り止め66は板状部材であり、本体部62の外周面に、本体部62の軸方向に沿って溶接されている。また、回り止め66は、面内方向が本体部62の径方向に沿うように配置されている。さらに、回り止め66は、2枚設けられており、上面視で同一線上に配置される。換言すると、回り止め66は、本体部62の周方向に180°毎に設けられている。
【0037】
ここで、図4に示すようにボルト50の直径W1は、貫通孔42Hの直径W2より小さい。また、貫通孔42Hの直径W2は、貫通孔26Hの直径W3より小さい。さらに、貫通孔26Hの直径W3は、袋ナット60の外周面の直径W4より小さい。
【0038】
具体的な寸法は特に限定されるものではないが、本実施形態においてはボルト50の直径W1は36mm、貫通孔42Hの直径W2は39mm、貫通孔26Hの直径W3は50mm、袋ナット60の外周面の直径W4は55mmである。
【0039】
(上部構造体)
上部構造体は、上述した柱30に梁32が接合された柱梁架構の構造体である。柱30鋼管の内側にコンクリートが充填されて形成されたコンクリート充填鋼管柱である。柱20を形成する鋼管の柱脚部には、ダイヤフラム30Aを介して、H形鋼の梁32が接合されている。そして、柱20と梁22との仕口部の下方に、突出部34が形成されている。なお、突出部34は柱30の一部である。
【0040】
突出部34は鋼管であり、内側にコンクリートが充填されている。また、突出部34の下端面には、ベースプレート36が溶接によって固定されている。ベースプレート36の上面と突出部34の側面には、複数のリブ38が溶接されている。
【0041】
ベースプレート36と、免震装置40のトッププレート46とは、ボルト52及び袋ナット70によって固定されている。袋ナット70は、ベースプレート36の上方、かつ、突出部34の周囲に打設されたコンクリートCに埋設して配置されている。袋ナット70の構成は袋ナット60と同様であり説明を省略する。
【0042】
<免震装置の固定方法>
免震装置40の固定方法を説明する。まず、図5(A)に示すように、アンカープレート26が上端面に固定された下部構造体としての柱20を形成する。
【0043】
次に、図5(B)に示すように、梁22の上方にスラブを形成するコンクリートC1を打設する。また、柱20及びベース部24の内側に、コンクリートC2を打設する。
【0044】
次に、図5(C)に示すように、免震装置40のすべり板42をアンカープレート26に載置する。このとき、図2(A)に示すように、すべり板42に形成された貫通孔42Hが、アンカープレート26の貫通孔26Hと連通するように、すべり板42を配置する。
【0045】
次に、図2(A)に示すように、すべり板42の貫通孔42Hより小径のボルト50を、上方から貫通孔42H及び貫通孔42Hと連通したアンカープレート26の貫通孔26Hへ挿通する。
【0046】
このとき、ボルト50は、アンカープレート26に非溶接の状態で貫通孔26Hの下方に保持された袋ナット60に仮締めする。この仮締め工程においては、袋ナット60は、例えば作業員の手作業により保持される。これにより、図6(A)に示すように、複数のボルト50及び袋ナット60によって、すべり板42とアンカープレート26とが仮固定される。
【0047】
次に、図6(B)に示すように、袋ナット60の周囲にコンクリートC3を打設する。「袋ナット60の周囲」とは、跳ね出し部26Aの下方、かつ、ベース部24の周囲である。そして、コンクリートC3が硬化した後、ボルト50を本締めしてアンカープレート26とすべり板42とを固定する。
【0048】
次に、図1に示すように、免震装置40のトッププレート46の上方に、上部構造体としての柱30及び梁32を構築して、柱30のベースプレート36と、免震装置40のトッププレート46とを、ボルト52及び袋ナット70によって仮固定する。また、柱30及び梁32を被覆するコンクリートを打設する。その後、ボルト52及び袋ナット70を本締めして、柱30のベースプレート36と、免震装置40のトッププレート46とを固定する。
【0049】
<作用及び効果>
本発明の実施形態に係る免震構造12及び免震装置40の固定方法では、図1に示すように、下部構造体である柱20のベース部24に固定されたアンカープレート26に、ベース部24の外側へ跳ね出した跳ね出し部26Aが形成されている。また、アンカープレート26には免震装置40のすべり板42が載置されている。
【0050】
図2に示すように、すべり板42には、アンカープレート26の跳ね出し部26Aに形成された貫通孔26Hと連通可能な貫通孔42Hが形成されている。これにより、ベース部24の外側において、すべり板42及びアンカープレート26を貫通するボルト50を、上方から挿通できる。
【0051】
ここで、図4に示すように、ボルト50はアンカープレート26の貫通孔26Hより小径である。換言すると、アンカープレート26の貫通孔26Hはボルト50より大径である。また、ベースプレート42の貫通孔42Hはアンカープレート26の貫通孔26Hより小径である。換言すると、アンカープレート26の貫通孔26Hはベースプレート42の貫通孔42Hより大径である。
【0052】
このため、仮に貫通孔26Hと貫通孔42Hとが位置ずれして、すべり板42の貫通孔42Hに上方から挿通させたボルト50と貫通孔26Hとが芯ずれしても、ボルト50を貫通孔26Hへ挿通させやすい。
【0053】
具体的には、ボルト50の直径W1が36mmであり、貫通孔26Hの直径W3が50mmである。このため、ボルト50と貫通孔26Hの孔壁との間には、14mmのクリアランスがある。このため、ボルト50と貫通孔26Hとは、最大7mm程度芯ずれして配置できる。
【0054】
また、図2に示すように、ボルト50は、貫通孔26Hの下方に配置された状態の袋ナット60へ捩じ込まれる。袋ナット60はベース部24の外側に配置されるため、コンクリートC3(図6(B)参照)の打設前にボルト50を袋ナット60へ捩じ込めば、すべり板42とアンカープレート26とを固定することができる。
【0055】
袋ナット60は、アンカープレート26に非溶接であるため、ボルト50と貫通孔26Hとが芯ずれしていても、袋ナット60の位置をボルト50に合わせて調整すればボルト50を捩じ込むことができる。
【0056】
このように、この免震構造12では、免震装置40を固定するボルトを取り付け易い。また、袋ナット60は、アンカープレート26に非溶接であるため、溶接時の熱によるアンカープレート26の歪みの発生を抑制できる。また、袋ナット60のように円柱状の物体は全周溶接するためには高度な技術を必要とするが、このような施工を省略できる。
【0057】
また、本発明の実施形態に係る免震構造12では、図3に示すように、袋ナット60の外周面に回り止め66が形成されている。すなわち、ベース部24に対して袋ナット60が回転することが抑制されている。
【0058】
このため、図2に示す袋ナット60が埋設されたコンクリートC3が硬化した際にボルト50を本締めすれば、このボルト50に、アンカープレート26とすべり板42とを固定するためのトルクを作用させることができる。
【0059】
すなわち、袋ナット60をアンカープレート26に溶接しなくても、トルクをかけてボルト50を捩じ込み易い。また、免震装置40を交換する際にも、ボルト50を緩め易い。
【0060】
<その他の実施形態>
上記実施形態においては、袋ナット60の外周面に、板状の回り止めが2枚設けられているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば回り止め66は3枚以上設けてもよい。この場合、複数の回り止め66は、本体部62の周方向に均等な間隔で割り付けて配置することが好ましい。
【0061】
また、回り止め66は1枚としてもよいし、省略してもよい。回り止め66を省略する場合は、例えば袋ナット60を多角形状に形成することが好ましい。
【0062】
但し、円柱状の袋ナット60において回り止め66を省略することもできる。この場合は、図6(B)に示すコンクリートC3を袋ナット60の周囲に打設する前に、袋ナット60にボルト50を本締めすることが好ましい。この場合、例えば万力等の治具を用いて、袋ナット60を固定した状態でボルト50を捩じ込むことが好ましい。
【0063】
また、回り止め66を設ける場合において、その形状は板状に限定されるものではなく、コンクリートC3に対する袋ナット60の付着力(上面視で回転する方向の付着力)を高められるものであればよい。例えば袋ナット60の外周面に設けた突起や凹部であればよい。
【0064】
また、袋ナット60のフランジ部64を省略してもよい。但し、免震装置40の支承44を積層ゴム支承として、すべり板42に代えて支承44に固定したベースプレートを用いる場合は、フランジ部64は省略しないことが好ましい。フランジ部64を設けることにより、支承44から袋ナット60に作用する上方向の引き抜き力に抵抗し易い。
【0065】
また、上記実施形態において、柱20はコンクリート充填鋼管とされているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば柱20は鉄筋コンクリート柱でもよい。同様に、柱30もコンクリート充填鋼管ではなく鉄筋コンクリート柱としてもよい。
【0066】
また、上記実施形態において、柱30及び梁32がコンクリートCで被覆されているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば柱30及び梁32を被覆するコンクリートCは省略することもできる。このコンクリートCを省略すれば、袋ナット70に代えて、通常のナットを用いて、柱30のベースプレート36と免震装置40のトッププレート46とを固定することができる。
【0067】
また、上記実施形態においては、免震装置40が固定される下部構造体が柱20とされ、免震構造12が柱頭免震構造とされているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば下部構造体を基礎スラブに設けた免震装置40設置用の基板等として、基礎免震構造としてもよい。
【符号の説明】
【0068】
12 免震構造
20 柱(下部構造体)
24 ベース部(下部構造体)
26 アンカープレート
26A 跳ね出し部
26H 貫通孔(第一貫通孔)
40 免震装置
42 すべり板(ベースプレート)
42H 貫通孔(第二貫通孔)
50 ボルト
60 袋ナット
66 回り止め
C3 コンクリート
図1
図2
図3
図4
図5
図6