(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048803
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】電子写真機器用帯電ロール
(51)【国際特許分類】
G03G 15/02 20060101AFI20240402BHJP
C08L 15/02 20060101ALI20240402BHJP
C08K 5/19 20060101ALI20240402BHJP
C08K 5/42 20060101ALI20240402BHJP
C08K 5/49 20060101ALI20240402BHJP
C08K 5/3442 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
G03G15/02 101
C08L15/02
C08K5/19
C08K5/42
C08K5/49
C08K5/3442
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154914
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154483
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 和寛
(72)【発明者】
【氏名】末永 淳一郎
(72)【発明者】
【氏名】柏原 伸吉
(72)【発明者】
【氏名】森田 晃年
(72)【発明者】
【氏名】堀内 健
【テーマコード(参考)】
2H200
4J002
【Fターム(参考)】
2H200FA02
2H200HA04
2H200HB12
2H200HB45
2H200HB46
2H200MA03
2H200MA13
2H200MA17
2H200MA20
2H200MB04
4J002AC121
4J002EN136
4J002EU097
4J002EV256
4J002EW176
4J002FD116
4J002FD207
4J002GQ02
(57)【要約】
【課題】通電耐久時の抵抗上昇およびイオン導電剤のブリードが抑えられる電子写真機器用帯電ロールを提供する。
【解決手段】軸体12と、軸体12の外周面上に形成された弾性体層14と、を備え、弾性体層14が、下記の(a)から(c)を含有する電子写真機器用帯電ロール10とする。下記(c)の含有量は、下記(a)100質量部に対し、0.1質量部以上5.0質量部以下が好ましい。下記(b)の含有量は、下記(a)100質量部に対し、0.5質量部以上3.0質量部以下が好ましい。
(a)塩素含有量が14%以上19%以下のヒドリンゴム
(b)イオン導電剤
(c)環状アミジン化合物の塩
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体と、前記軸体の外周面上に形成された弾性体層と、を備え、
前記弾性体層が、下記の(a)から(c)を含有する、電子写真機器用帯電ロール。
(a)塩素含有量が14%以上19%以下のヒドリンゴム
(b)イオン導電剤
(c)環状アミジン化合物の塩
【請求項2】
前記(c)が、環状アミジン化合物のナフトエ酸塩である、請求項1に記載の電子写真機器用帯電ロール。
【請求項3】
前記(c)の含有量が、前記(a)100質量部に対し、0.1質量部以上5.0質量部以下である、請求項1または請求項2に記載の電子写真機器用帯電ロール。
【請求項4】
前記(b)の含有量が、前記(a)100質量部に対し、0.5質量部以上3.0質量部以下である、請求項1または請求項2に記載の電子写真機器用帯電ロール。
【請求項5】
前記(b)が、アンモニウム系、ホスホニウム系、または、イミダゾリウム系のイオン導電剤である、請求項1または請求項2に記載の電子写真機器用帯電ロール。
【請求項6】
前記(b)が、フッ素原子を有するスルホネートアニオン、フッ素原子を有するビス(スルホニル)イミドアニオン、または、過塩素酸アニオンを含むイオン導電剤である、請求項1または請求項2に記載の電子写真機器用帯電ロール。
【請求項7】
前記(b)が、フッ素原子を有するスルホネートアニオン、フッ素原子を有するビス(スルホニル)イミドアニオン、または、過塩素酸アニオンを含む、アンモニウム系、ホスホニウム系、または、イミダゾリウム系のイオン導電剤であり、
前記(c)が、環状アミジン化合物のナフトエ酸塩であり、
前記(b)の含有量が、前記(a)100質量部に対し、0.5質量部以上3.0質量部以下であり、
前記(c)の含有量が、前記(a)100質量部に対し、0.1質量部以上5.0質量部以下である、請求項1に記載の電子写真機器用帯電ロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を採用する複写機、プリンター、ファクシミリなどの電子写真機器において好適に用いられる電子写真機器用帯電ロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真機器の帯電ロールには、電気的均一性などのために、イオン導電機構が求められることがある。例えば特許文献1には、帯電ロールの基層に、イオン導電剤を配合することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
帯電ロールに通電による電気負荷がかかり続けると、帯電ロールの電気抵抗が上昇し、帯電能力の低下によって画像弊害が起きるおそれがある。これは、帯電ロールに電気負荷がかかると、帯電ロールの基層ゴム中のイオン導電剤が分極し、イオン導電剤の分極が速過ぎることで分極したアニオンおよびカチオンがそれぞれ+電極側および-電極側に過度に偏り、基層ゴムの中心部にイオン導電剤が少なくなって電気抵抗の高い部分ができるためである。基層ゴム中の過度な分極を抑える目的でイオン導電剤を過度に増量すると、イオン導電剤のブリードにつながり、画像弊害が起きるおそれがある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、通電耐久時の抵抗上昇およびイオン導電剤のブリードが抑えられる電子写真機器用帯電ロールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電子写真機器用帯電ロールは、軸体と、前記軸体の外周面上に形成された弾性体層と、を備え、前記弾性体層が、下記の(a)から(c)を含有する。
(a)塩素含有量が14%以上19%以下のヒドリンゴム
(b)イオン導電剤
(c)環状アミジン化合物の塩
【0007】
前記(c)は、環状アミジン化合物のナフトエ酸塩であるとよい。前記(c)の含有量は、前記(a)100質量部に対し、0.1質量部以上5.0質量部以下であるとよい。前記(b)の含有量は、前記(a)100質量部に対し、0.5質量部以上3.0質量部以下であるとよい。前記(b)は、アンモニウム系、ホスホニウム系、または、イミダゾリウム系のイオン導電剤であるとよい。前記(b)は、フッ素原子を有するスルホネートアニオン、フッ素原子を有するビス(スルホニル)イミドアニオン、または、過塩素酸アニオンを含むイオン導電剤であるとよい。
【0008】
(1)本発明に係る電子写真機器用帯電ロールは、軸体と、前記軸体の外周面上に形成された弾性体層と、を備え、前記弾性体層が、下記の(a)から(c)を含有する。
(a)塩素含有量が14%以上19%以下のヒドリンゴム
(b)イオン導電剤
(c)環状アミジン化合物の塩
【0009】
(2)上記(1)において、前記(c)は、環状アミジン化合物のナフトエ酸塩であるとよい。
【0010】
(3)上記(1)または上記(2)において、前記(c)の含有量は、前記(a)100質量部に対し、0.1質量部以上5.0質量部以下であるとよい。
【0011】
(4)上記(1)から上記(3)のいずれかにおいて、前記(b)の含有量は、前記(a)100質量部に対し、0.5質量部以上3.0質量部以下であるとよい。
【0012】
(5)上記(1)から上記(4)のいずれかにおいて、前記(b)は、アンモニウム系、ホスホニウム系、または、イミダゾリウム系のイオン導電剤であるとよい。
【0013】
(6)上記(1)から上記(5)のいずれかにおいて、前記(b)は、フッ素原子を有するスルホネートアニオン、フッ素原子を有するビス(スルホニル)イミドアニオン、または、過塩素酸アニオンを含むイオン導電剤であるとよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る電子写真機器用帯電ロールによれば、軸体と、前記軸体の外周面上に形成された弾性体層と、を備え、前記弾性体層が、上記の(a)から(c)を含有することから、通電耐久時の抵抗上昇およびイオン導電剤のブリードが抑えられる。
【0015】
前記(c)が環状アミジン化合物のナフトエ酸塩であると、通電耐久時の抵抗上昇を抑える効果に特に優れる。
【0016】
前記(c)の含有量が、前記(a)100質量部に対し、0.1質量部以上5.0質量部以下であると、通電による電気負荷がかかってもイオン導電剤の過度な分極が抑えられる効果に優れる。また、(c)のブリードが抑えられる。
【0017】
前記(b)の含有量が、前記(a)100質量部に対し、0.5質量部以上3.0質量部以下であると、低抵抗にすることができる。また、(b)のブリードが抑えられる。
【0018】
そして、前記(b)がアンモニウム系、ホスホニウム系、または、イミダゾリウム系のイオン導電剤であると、(a)のゴム成分の極性基がイオン導電剤のカチオンに配位しやすく、通電耐久時にもイオン導電剤の過度な分極が抑えられやすいため、通電耐久時の抵抗上昇を抑える効果に特に優れる。また、(c)の環状アミジン化合物の塩がイオン導電剤のカチオンに配位しやすく、通電耐久時にもイオン導電剤の過度な分極が抑えられやすいため、通電耐久時の抵抗上昇を抑える効果に特に優れる。また、低抵抗としやすい。
【0019】
そして、フッ素原子を有するスルホネートアニオンまたはフッ素原子を有するビス(スルホニル)イミドアニオンを含むイオン導電剤は、構造中にフッ素基を多く含んでいるため、アニオン自体の塩基性が小さく、カチオンと比較的弱いイオン結合を形成する。そのため、これらのイオン導電剤は、(a)のゴム中でイオンに解離しやすく、低抵抗としやすい。また、これらのアニオンはいずれも疎水性であり、高湿度環境下においても吸湿性が低い。このため、環境変化による電気抵抗の変動を抑える効果に優れる。そして、過塩素酸アニオンを含むイオン導電剤は、低抵抗としやすい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電子写真機器用帯電ロールの外観模式図(a)と、そのA-A線断面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る電子写真機器用帯電ロール(以下、単に帯電ロールということがある。)について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る電子写真機器用帯電ロールの外観模式図(a)と、そのA-A線断面図(b)である。
【0022】
帯電ロール10は、軸体12と、軸体12の外周面上に形成された弾性体層14と、弾性体層14の外周面上に形成された表層16と、を備える。弾性体層14は、帯電ロール10のベースとなる層(基層)である。表層16は帯電ロール10の表面に現れる層となっている。なお、本発明の帯電ロールにおいては、表層のない構成であってもよい。すなわち、帯電ロールは、軸体12と、軸体12の外周面上に形成された弾性体層14と、を備え、弾性体層14の外周面上に表層16を有していないものであってもよい。
【0023】
軸体12は、導電性を有するものであれば特に限定されない。具体的には、鉄、ステンレス、アルミニウムなどの金属製の中実体、中空体からなる芯金などを例示することができる。軸体12の表面には、必要に応じて、接着剤、プライマーなどを塗布しても良い。つまり、弾性体層14は、接着剤層(プライマー層)を介して軸体12に接着されていてもよい。接着剤、プライマーなどには、必要に応じて導電化を行っても良い。
【0024】
弾性体層14は、下記の(a)から(c)を含有する。
(a)塩素含有量が14%以上19%以下のヒドリンゴム
(b)イオン導電剤
(c)環状アミジン化合物の塩
【0025】
ヒドリンゴムとしては、エピクロルヒドリンの単独重合体(CO)、エピクロルヒドリン-エチレンオキサイド二元共重合体(ECO)、エピクロルヒドリン-アリルグリシジルエーテル二元共重合体(GCO)、エピクロルヒドリン-エチレンオキサイド-アリルグリシジルエーテル三元共重合体(GECO)などが挙げられる。これらのうちでは、イオン導電剤の配位に適度な極性を有する、ヒドリンゴムの塩素ユニットと環状アミジン化合物の塩のアニオン部分との反応性に優れるなどの観点から、三元系のECOが好ましい。また、これらのうちでは、エチレンオキサイドを共重合成分として含むECO、GECOは、エチレンオキサイドを共重合成分として含まないものと比べて低抵抗体が得られやすい点でより好ましい。また、アリルグリシジルエーテルを共重合成分として含むGCO、GECOは、二重結合を有するため、アリルグリシジルエーテルを共重合成分として含まないものと比べてへたりにくい点でより好ましい。
【0026】
ヒドリンゴムの塩素含有量は、14%以上19%以下とする。ヒドリンゴムの塩素含有量が14%未満であると、環状アミジン化合物の塩におけるアニオン部分とヒドリンゴムの塩素ユニットが反応しづらく、イオン導電剤のイオンの分極を効果的に抑制する反応部の量が足りなくなる。このため、イオン導電剤の過度な分極による抵抗上昇が抑えられない。また、この観点から、ヒドリンゴムの塩素含有量は、好ましくは15%以上、より好ましくは16%以上である。一方、ヒドリンゴムの塩素含有量が19%超であると、ヒドリンゴムから脱離するアニオンの塩素イオンがイオン導電剤のカチオンと過度に反応してしまい、イオン導電剤の失活が進むことになる。これにより、抵抗上昇が抑えられない。また、この観点から、ヒドリンゴムの塩素含有量は、好ましくは18%以下、より好ましくは17%以下である。
【0027】
ヒドリンゴムは、架橋剤により架橋することができる。架橋剤は、特に限定されるものではない。架橋剤としては、硫黄架橋剤、過酸化物架橋剤、脱塩素架橋剤を挙げることができる。これらの架橋剤は、単独で用いても良いし、2種以上組み合わせて用いても良い。
【0028】
硫黄架橋剤としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄、塩化硫黄、チウラム系加硫促進剤、高分子多硫化物などの硫黄架橋剤を挙げることができる。
【0029】
過酸化物架橋剤としては、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ケトンパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、ジアシルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイドなどが挙げられる。
【0030】
過酸化物架橋剤としては、分解温度が比較的高く、より高温で成形しやすくできるなどの観点から、蓄熱貯蔵試験(BAM式:SADT)における分解温度が60℃以上で、1分間半減期温度が150℃以上であることが好ましい。より好ましくは1分間半減期温度が160℃以上、さらに好ましくは1分間半減期温度が170℃以上である。一方、架橋速度に優れるなどの観点から、1分間半減期温度が200℃以下であることが好ましい。より好ましくは1分間半減期温度が190℃以下、さらに好ましくは1分間半減期温度が180℃以下である。
【0031】
好ましい過酸化物架橋剤としては、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステルなどが挙げられる。パーオキシケタールとしては、1,1-ジ(tert-ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、n-ブチル4,4-ジ(tert-ブチルペルオキシ)バレレートなどが挙げられる。ジアルキルパーオキサイドとしては、ジ(2-tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3などが挙げられる。パーオキシエステルとしては、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、tert-ヘキシルペルオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、tert-ブチルペルオキシラウレート、tert-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、tert-ヘキシルペルオキシイソプロピルモノカーボネートなどが挙げられる。これらのうちでは、未反応成分が残りにくく、分解物の沸点が比較的低くて分解物を除去しやすいなどの観点から、ジ(2-tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,1-ジ(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサンなどが好ましい。
【0032】
脱塩素架橋剤としては、ジチオカーボネート化合物を挙げることができる。より具体的には、キノキサリン-2,3-ジチオカーボネート、6-メチルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネート、6-イソプロピルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネート、5,8-ジメチルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネートなどを挙げることができる。
【0033】
架橋剤の配合量としては、ブリードしにくいなどの観点から、ヒドリンゴム100質量部に対して、好ましくは0.1~2質量部の範囲内、より好ましくは0.3~1.8質量部の範囲内、さらに好ましくは0.5~1.5質量部の範囲内である。
【0034】
過酸化物架橋剤の含有量は、弾性体層14を低硬度にしやすいなどの観点から、過酸化物原体量換算で、ヒドリンゴム100質量部に対し、6質量部以下であることが好ましい。より好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは4質量部以下である。また、ゴムの架橋度に優れ、へたりにくくなるなどの観点から、過酸化物原体量換算で、ヒドリンゴム100質量部に対し、0.2質量部以上であることが好ましい。より好ましくは0.4質量部以上、さらに好ましくは0.6質量部以上である。
【0035】
イオン導電剤は、特に限定されるものではない。電子写真機器分野で用いられるものであればよい。イオン導電剤としては、第四級アンモニウム塩、第四級ホスホニウム塩、イミダゾリウム塩、ホウ酸塩、界面活性剤などを挙げることができる。これらのうちでは、第四級アンモニウム塩、第四級ホスホニウム塩、イミダゾリウム塩が特に好ましい。
【0036】
第四級アンモニウム塩のカチオンとしては、炭素数1~18程度のアルキル基またはアリール基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、フェニル基、キシリル基など)を1種または2種以上有するものを挙げることができる。第四級アンモニウム塩のカチオンのアルキル基またはアリール基は、炭素数1~10が特に好ましい。第四級アンモニウム塩のアニオンとしては、F-,Cl-,Br-,I-などのハロゲンイオン、ClO4
-、BF4
-、PF6
-、SO4
2-、HSO4
-、C2H5SO4
-、CF3COO-、CF3SO3
-、(CF3SO2)2N-、(CF3CF2SO2)2N-、CF3(CF2)3SO3
-、(CF3SO2)3C-、CF3(CF2)2COO-などを挙げることができる。第四級アンモニウム塩のアニオンとしては、ClO4
-、(CF3SO2)2N-、CF3SO3
-などがより好ましい。
【0037】
第四級ホスホニウム塩のカチオンとしては、炭素数1~18程度のアルキル基またはアリール基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、フェニル基、キシリル基など)を1種または2種以上有するものを挙げることができる。第四級ホスホニウム塩のカチオンのアルキル基またはアリール基は、炭素数1~10が特に好ましい。第四級ホスホニウム塩のアニオンとしては、F-,Cl-,Br-,I-などのハロゲンイオン、ClO4
-、BF4
-、PF6
-、SO4
2-、HSO4
-、C2H5SO4
-、CF3COO-、CF3SO3
-、(CF3SO2)2N-、(CF3CF2SO2)2N-、CF3(CF2)3SO3
-、(CF3SO2)3C-、CF3(CF2)2COO-などを挙げることができる。第四級ホスホニウム塩のアニオンとしては、ClO4
-、(CF3SO2)2N-、CF3SO3
-などがより好ましい。
【0038】
イミダゾリウム塩としては、非置換のイミダゾリウム塩、1-アルキルイミダゾリウム塩、3-アルキルイミダゾリウム塩、1,3-ジアルキルイミダゾリウム塩、1,2,3-トリアルキルイミダゾリウム塩などを挙げることができる。より具体的には、例えば、1-メチルイミダゾリウム塩、1,3-ジメチルイミダゾリウム塩、1,3-ジエチルイミダゾリウム塩、1,3-ジプロピルイミダゾリウム塩、1,3-ジブチルイミダゾリウム塩、1,3-ジシクロヘキシルイミダゾリウム塩、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム塩、1-プロピル-3-メチルイミダゾリウム塩、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム塩、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウム塩、1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリウム塩、1-プロピル-2,3-ジメチルイミダゾリウム塩、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウム塩などを挙げることができる。イミダゾリウム塩のアニオンとしては、F-,Cl-,Br-,I-などのハロゲンイオン、ClO4
-、BF4
-、PF6
-、SO4
2-、HSO4
-、C2H5SO4
-、CF3COO-、CF3SO3
-、(CF3SO2)2N-、(CF3CF2SO2)2N-、CF3(CF2)3SO3
-、(CF3SO2)3C-、CF3(CF2)2COO-などを挙げることができる。イミダゾリウム塩のアニオンとしては、ClO4
-、(CF3SO2)2N-、CF3SO3
-などがより好ましい。
【0039】
ホウ酸塩としては、例えば、炭素数1~18程度のアルキル基またはアリール基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、フェニル基、キシリル基など)を1種または2種以上有するものであって、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオンなどのアルカリ金属イオンもしくはアルカリ土類金属イオンを含むものを示すことができる。
【0040】
イオン導電剤の含有量は、低抵抗としやすい、通電耐久時の抵抗上昇が抑えられやすいなどの観点から、ヒドリンゴム100質量部に対し、0.5質量部以上であることが好ましい。より好ましくは0.7質量部以上、さらに好ましくは1.0質量部以上である。また、イオン導電剤のブリードが抑えられやすいなどの観点から、ヒドリンゴム100質量部に対し、3.0質量部以下であることが好ましい。より好ましくは2.5質量部以下、さらに好ましくは2.0質量部以下である。
【0041】
環状アミジン化合物は、アミジン構造をその構造中に含む環状化合物である。環状アミジン化合物の塩は、アニオン側がヒドリンゴムの塩素ユニットと反応する。この反応部は、イオン導電剤のイオン(カチオン)が配位しやすい適度な極性を持つため、イオン導電剤の過度な分極を抑えて、通電耐久時における抵抗上昇を抑えることができる。環状アミジン化合物の塩のアニオン側は、ヒドリンゴムの塩素ユニットとの反応性に優れるなどの観点から、ヒドロキシ基やカルボキシル基を有することが好ましい。環状アミジン化合物の塩において、環状アミジン化合物の部分(塩基性部)は、環状アミジン化合物の塩のアニオン側と塩素ユニットの反応性を上げる触媒として機能する。このため、ヒドリンゴムに対しては、ナフトエ酸などを単体で配合するのではなく、環状アミジン化合物のナフトエ酸塩などとして配合するのが効果的である。
【0042】
環状アミジン化合物としては、入手性などの観点から、2環性のアミジン化合物が好ましい。環状アミジン化合物としては、ジアザビシクロウンデセン(1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン-7)、ジアザビシクロノネン(1,5-ジアザビシクロ(4.3.0)ノネン-5)などが挙げられる。環状アミジン化合物としては、触媒能、保管安定性などの観点から、ジアザビシクロウンデセンがより好ましい。
【0043】
環状アミジン化合物の塩としては、ヒドリンゴムの塩素ユニットとの反応性に優れるなどの観点から、環状アミジン化合物のナフトエ酸塩、環状アミジン化合物のフェノール樹脂塩、脂肪族カルボン酸塩、フェノール塩、ボレート塩などが好ましい。これらのうちでは、通電耐久時の抵抗上昇を抑える効果に特に優れるなどの観点から、通環状アミジン化合物のナフトエ酸塩が特に好ましい。
【0044】
環状アミジン化合物の塩の含有量は、通電による電気負荷がかかってもイオン導電剤の過度な分極が抑えられる効果に優れるなどの観点から、ヒドリンゴム100質量部に対し、0.1質量部以上であることが好ましい。より好ましくは0.3質量部以上、さらに好ましくは0.5質量部以上である。また、環状アミジン化合物の塩のブリードが抑えられるなどの観点から、ヒドリンゴム100質量部に対し、5.0質量部以下であることが好ましい。より好ましくは4.0質量部以下、さらに好ましくは3.0質量部以下である。
【0045】
ゴム組成物は、必要に応じて、他の添加剤等を含有していてもよい。他の添加剤等としては、電子導電剤、滑剤、老化防止剤、光安定剤、粘度調整剤、加工助剤、難燃剤、可塑剤、充填剤、分散剤、顔料、離型剤などが挙げられる。
【0046】
電子導電剤としては、カーボンブラック、グラファイト、導電性酸化チタン、導電性酸化亜鉛、導電性酸化スズなどが挙げられる。
【0047】
弾性体層14の厚さは、特に限定されるものではないが、好ましくは0.1~10mmの範囲内、より好ましくは0.5~5mmの範囲内、さらに好ましくは1~3mmの範囲内である。
【0048】
弾性体層14の体積抵抗率としては、特に限定されるものではないが、好ましくは102~1010Ω・cm、より好ましくは103~109Ω・cm、さらに好ましくは104~108Ω・cmの範囲内である。
【0049】
表層16は、ロール表面の保護層などとして機能し得る。表層16は、主材料として、ポリアミド、ポリウレタン、アクリル樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、これらの変性体などのポリマー成分が含まれることが好ましい。変性体における変性基としては、例えば、N-メトキシメチル基、シリコーン基、フッ素基などを挙げることができる。これらのポリマー成分は、表層材料として1種単独で含まれていてもよいし、2種以上組み合わされて含まれていてもよい。表層16のポリマー成分は、架橋されていてもよい。
【0050】
表層16には、導電性付与のため、カーボンブラック、グラファイト、導電性酸化チタン、導電性酸化亜鉛、導電性酸化スズ、イオン導電剤(4級アンモニウム塩、ホウ酸塩、界面活性剤など)などの導電剤を適宜添加することができる。また、必要に応じて、各種添加剤を適宜添加しても良い。また、表面粗さを確保するため、粗さ形成用粒子を添加してもよい。
【0051】
粗さ形成用粒子は、表層16に表面凹凸を形成する。粗さ形成用粒子としては、樹脂粒子、シリカ粒子などを挙げることができる。樹脂粒子としては、ウレタン粒子、シリコーン粒子、アクリル粒子などを挙げることができる。粗さ形成用粒子の平均粒子径は、3~50μmの範囲内であることが好ましい。粗さ形成用粒子の平均粒子径は、レーザ回折式粒度分布測定装置を用い、メジアン径により算出することができる。
【0052】
表層16の厚さは、特に限定されるものではないが、好ましくは0.01~100μmの範囲内、より好ましくは0.1~20μmの範囲内、さらに好ましくは0.3~10μmの範囲内である。表層16の体積抵抗率は、好ましくは、107~1012Ω・cm、より好ましくは、108~1011Ω・cm、さらに好ましくは、109~1010Ω・cmの範囲内である。
【0053】
帯電ロール10は、例えば、次のようにして製造することができる。まず、軸体12をロール成形金型の中空部に同軸的に設置し、ゴム組成物を注入して、加熱・硬化させた後、脱型するか、あるいは、軸体12の表面にゴム組成物を押出成形するなどにより、軸体12の外周に弾性体層14を形成する。次いで、形成した弾性体層14の外周に表層形成用組成物を塗工し、必要に応じて紫外線照射や熱処理を行うことにより、表層16を形成する。これにより、帯電ロール10を製造することができる。
【0054】
表層形成用組成物は、上記主材料、導電剤、必要に応じて含有されるその他の添加剤を含有するものからなる。その他の添加剤としては、ポリマー成分の架橋剤、レベリング剤、表面改質剤などを挙げることができる。表層形成用組成物は、粘度を調整するなどの観点から、メチルエチルケトン、トルエン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトン(MIBK)、THF、DMFなどの有機溶剤や、メタノール、エタノールなどの水溶性溶剤などの溶剤を適宜含んでいても良い。塗工方法としては、ロールコーティング法や、ディッピング法、スプレーコート法などの各種コーティング法を適用することができる。
【0055】
以上の構成の帯電ロール10によれば、弾性体層14が、(a)塩素含有量が14%以上19%以下のヒドリンゴム、(b)イオン導電剤、(c)環状アミジン化合物の塩、を含有することから、通電耐久時の抵抗上昇およびイオン導電剤のブリードが抑えられる。これは、以下の機構によるものと推察される。すなわち、環状アミジン化合物の塩のアニオン側がヒドリンゴムの塩素ユニットと反応し、その反応部にイオン導電剤のイオン(カチオン)が配位することで、通電による電気負荷がかかってもイオン導電剤の過度な分極が抑えられる。これにより、通電耐久時の抵抗上昇が抑えられる。また、イオン導電剤の増量によってイオン導電剤の過度な分極を抑えるものではないため、イオン導電剤のブリードも抑えられる。
【0056】
ヒドリンゴムの塩素含有量が14%未満であると、環状アミジン化合物の塩におけるアニオン部分とヒドリンゴムの塩素ユニットが反応しづらく、イオン導電剤のイオンの分極を効果的に抑制する反応部の量が足りなくなる。このため、イオン導電剤の過度な分極による抵抗上昇が抑えられない。一方、ヒドリンゴムの塩素含有量が19%超であると、ヒドリンゴムから脱離するアニオンの塩素イオンがイオン導電剤のカチオンと過度に反応してしまい、イオン導電剤の失活が進むことになる。これにより、抵抗上昇が抑えられない。したがって、ヒドリンゴムの塩素含有量は、14%以上19%下とする。
【0057】
そして、イオン導電剤がアンモニウム系、ホスホニウム系、または、イミダゾリウム系であると、ヒドリンゴムの極性基がイオン導電剤のカチオンに配位しやすく、通電耐久時にもイオン導電剤の過度な分極が抑えられやすいため、通電耐久時の抵抗上昇を抑える効果に特に優れる。また、環状アミジン化合物の塩がイオン導電剤のカチオンに配位しやすく、通電耐久時にもイオン導電剤の過度な分極が抑えられやすいため、通電耐久時の抵抗上昇を抑える効果に特に優れる。また、低抵抗としやすい。
【0058】
そして、イオン導電剤がフッ素原子を有するスルホネートアニオンまたはフッ素原子を有するビス(スルホニル)イミドアニオンを含むイオン導電剤であると、構造中にフッ素基を多く含んでいるため、アニオン自体の塩基性が小さく、カチオンと比較的弱いイオン結合を形成する。そのため、これらのイオン導電剤は、ヒドリンゴムのゴム中でイオンに解離しやすく、低抵抗としやすい。また、これらのアニオンはいずれも疎水性であり、高湿度環境下においても吸湿性が低い。このため、環境変化による電気抵抗の変動を抑える効果に優れる。そして、過塩素酸アニオンを含むイオン導電剤は、低抵抗としやすい。
【実施例0059】
以下、実施例および比較例を用いて本発明を詳細に説明する。
【0060】
(実施例1)
<ゴム組成物の調製>
ヒドリンゴム<1>100質量部、過酸化物架橋剤(ペロキシモンF40)3質量部(原体量換算では1.2重量部)、受酸剤5質量部、イオン導電剤1.0質量部、環状アミジン化合物の塩(ジアザビシクロウンデセンのナフトエ酸塩)2質量部を攪拌機により撹拌、混合して、ゴム組成物を調製した。
【0061】
<弾性体層の形成>
成形金型に芯金(直径6mm)をセットし、120℃で上記ゴム組成物を注入し、175℃で30分加熱することにより、ゴム組成物を架橋させた。その後、冷却、脱型して、芯金の外周に、厚み2mmの弾性体層を形成した。
【0062】
<表層の形成>
N-メトキシメチル化ナイロン(ナガセケムテックス製「EF30T」)100質量部と、導電性酸化スズ(三菱マテリアル製「S-2000」)60質量部と、クエン酸1質量部と、メタノール300質量部とを混合して、表層形成用組成物を調製した。次いで、弾性体層の表面に表層形成用組成物をロールコートし、120℃で50分加熱して、弾性体層の外周に、厚み10μmの表層を形成した。これにより、帯電ロールを作製した。
【0063】
(実施例2)
ゴム組成物の調製において、ヒドリンゴムの種類を変更した以外は実施例1と同様にして、帯電ロールを作製した。
【0064】
(実施例3~4)
ゴム組成物の調製において、環状アミジン化合物の塩の種類を変更した以外は実施例1と同様にして、帯電ロールを作製した。
【0065】
(実施例5~7)
ゴム組成物の調製において、環状アミジン化合物の塩の配合量を変更した以外は実施例1と同様にして、帯電ロールを作製した。
【0066】
(実施例8~9)
ゴム組成物の調製において、イオン導電剤の配合量を変更した以外は実施例1と同様にして、帯電ロールを作製した。
【0067】
(比較例1)
ゴム組成物の調製において、環状アミジン化合物の塩を配合しなかった以外は実施例1と同様にして、帯電ロールを作製した。
【0068】
(比較例2)
ゴム組成物の調製において、環状アミジン化合物の塩を配合せず、イオン導電剤の配合量を変更した以外は実施例2と同様にして、帯電ロールを作製した。
【0069】
(比較例3)
ゴム組成物の調製において、ヒドリンゴムの種類を変更した以外は実施例1と同様にして、帯電ロールを作製した。
【0070】
(比較例4)
ゴム組成物の調製において、環状アミジン化合物の塩を配合しないで環状アミジン化合物を配合した以外は実施例1と同様にして、帯電ロールを作製した。
【0071】
(比較例5)
ゴム組成物の調製において、環状アミジン化合物の塩を配合しないでナフトエ酸を配合した以外は実施例1と同様にして、帯電ロールを作製した。
【0072】
ゴム組成物の材料として、以下の材料を準備した。
・ヒドリンゴム<1>(塩素含有量14%):大阪ソーダ製「エピオン301」
・ヒドリンゴム<2>(塩素含有量19%):日本ゼオン製「HydrinT3108」
・ヒドリンゴム<3>(塩素含有量28%):日本ゼオン製「HydrinT3105」
・架橋剤:日油製「ペロキシモンF40」
・ジアザビシクロウンデセン塩<1>:1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン-7の3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩
・ジアザビシクロウンデセン塩<2>:1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン-7のフェノール樹脂塩
・ジアザビシクロノネン塩:1,5-ジアザビシクロ(4.3.0)ノネン-5のフェノール樹脂塩
・ジアザビシクロウンデセン:1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン-7
・ナフトエ酸:3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸
・受酸剤:協和化学工業製「DHT-4A」
・イオン導電剤:東京化成工業製「テトラブチルアンモニウムトリフラート」
【0073】
作製した帯電ロールについて、通電耐久時の抵抗変化とイオン導電剤のブリードについて評価した。
【0074】
<通電抵抗変化評価方法>
φ30mmの金属ドラム上で帯電ロールに片端あたり700gの荷重を掛け、金属ドラムを90rpmで回転させ、積算電流量120Cになるように通電試験を実施した(通電条件:1000Hz、0.19kVpp、1500μA定電流制御)。試験前後の抵抗値を求め、抵抗変化を桁数で計算した。抵抗変化が0.3桁未満の場合を「A」、抵抗変化が0.3桁以上0.5桁未満の場合を「B」、抵抗変化が0.5桁以上1.0桁未満の場合を「C」、抵抗変化が1.0桁以上の場合を「D」とした。
【0075】
<ブリード評価方法>
帯電ロールを40℃の湿熱環境に30日間放置後、帯電ロールの表面上にブリード物があるかを観察した。ブリード物が観察されなかった場合を「○」、ブリード物が観察された場合を「×」とした。
【0076】
【0077】
実施例は、塩素含有量が14%以上19%以下のヒドリンゴムと、イオン導電剤と、環状アミジン化合物の塩と、を含有するゴム組成物により、弾性体層が形成されている。実施例によれば、通電耐久時においてイオン導電剤の分極による抵抗上昇が小さい。また、イオン導電剤のブリードも見られない。
【0078】
一方、比較例1は、ヒドリンゴムおよびイオン導電剤を含有する弾性体層のゴム組成物に環状アミジン化合物の塩が含まれていない。比較例1によれば、通電耐久時の抵抗上昇が大きい。比較例2は、ヒドリンゴムおよびイオン導電剤を含有する弾性体層のゴム組成物に環状アミジン化合物の塩が含まれていない。また、比較例1よりもイオン導電剤の量が多くなっている。比較例2によれば、比較例1よりも通電耐久時の抵抗上昇は小さく抑えられているが、イオン導電剤のブリードが抑えられていない。比較例3は、弾性体層のゴム組成物において、ヒドリンゴムの塩素含有量が多い。比較例3によれば、通電耐久時の抵抗上昇が大きい。比較例4は、ヒドリンゴムおよびイオン導電剤を含有する弾性体層のゴム組成物に環状アミジン化合物の塩ではなく、環状アミジン化合物が含まれている。比較例4によれば、通電耐久時の抵抗上昇が大きい。比較例5は、ヒドリンゴムおよびイオン導電剤を含有する弾性体層のゴム組成物に環状アミジン化合物の塩ではなく、ナフトエ酸が含まれている。比較例5によれば、通電耐久時の抵抗上昇が大きい。
【0079】
したがって、実施例と比較例から、塩素含有量が14%以上19%以下のヒドリンゴムと、イオン導電剤と、環状アミジン化合物の塩と、を含有するゴム組成物により帯電ロールの弾性体層が形成されることで、通電耐久時の抵抗上昇およびイオン導電剤のブリードが抑えられることがわかる。
【0080】
そして、実施例どうしの比較では、実施例1,3,4から、環状アミジン化合物の塩のうちでは、環状アミジン化合物のナフトエ酸塩が、通電耐久時の抵抗上昇を抑える効果により優れることがわかる。また、実施例1,5,6,7から、環状アミジン化合物の塩の配合量が、ヒドリンゴム100質量部に対し0.5質量部以上5質量部以下であると、通電耐久時の抵抗上昇を抑える効果により優れることがわかる。また、実施例1、8,9から、イオン導電剤の配合量が、ヒドリンゴム100質量部に対し1.0質量部以上3.0質量部以下であると、通電耐久時の抵抗上昇を抑える効果により優れることがわかる。
【0081】
以上、本発明の実施形態・実施例について説明したが、本発明は上記実施形態・実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。