(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048812
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
B60L 3/04 20060101AFI20240402BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20240402BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20240402BHJP
B60L 1/00 20060101ALI20240402BHJP
B60W 20/50 20160101ALI20240402BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20240402BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
B60L3/04 E
B60L50/60 ZHV
B60L50/16
B60L1/00 L
B60W20/50
B60W10/08 900
H02J7/00 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154927
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高木 靖
(72)【発明者】
【氏名】三松 隼太
【テーマコード(参考)】
3D202
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
3D202BB00
3D202BB16
3D202BB24
3D202CC14
3D202DD00
3D202DD24
3D202DD44
3D202DD47
3D202DD48
5G503BA04
5G503BB02
5G503CA01
5G503CA11
5G503FA06
5G503GB03
5G503GD06
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125BA00
5H125BB00
5H125BC25
5H125BD17
5H125CA02
5H125CA09
5H125CD04
5H125EE55
5H125EE65
(57)【要約】
【課題】放電の発生を抑制する。
【解決手段】車両は、高電圧バッテリと、モータジェネレータと、前記高電圧バッテリと前記モータジェネレータとを電気的に接続可能な高電圧系配線と、前記高電圧系配線における前記高電圧バッテリと前記モータジェネレータとの間の電気的な接続をオンオフするシステムメインリレーと、自車両の位置における気圧を検出する気圧センサと、制御装置と、を備え、前記制御装置は、1つまたは複数のプロセッサと、前記プロセッサに接続される1つまたは複数のメモリと、を有し、前記プロセッサは、前記システムメインリレーがオン状態において、前記気圧センサにより検出された気圧が第1気圧閾値未満となると、前記システムメインリレーをオフ状態にするSMRオフ制御を行うこと、を含む処理を実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電圧バッテリと、
モータジェネレータと、
前記高電圧バッテリと前記モータジェネレータとを電気的に接続可能な高電圧系配線と、
前記高電圧系配線における前記高電圧バッテリと前記モータジェネレータとの間の電気的な接続をオンオフするシステムメインリレーと、
自車両の位置における気圧を検出する気圧センサと、
制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
1つまたは複数のプロセッサと、
前記プロセッサに接続される1つまたは複数のメモリと、
を有し、
前記プロセッサは、
前記システムメインリレーがオン状態において、前記気圧センサにより検出された気圧が第1気圧閾値未満となると、前記システムメインリレーをオフ状態にするSMRオフ制御を行うこと、
を含む処理を実行する、車両。
【請求項2】
入力端が、前記高電圧系配線における前記システムメインリレーと前記モータジェネレータとの間に電気的に接続され、出力端が、低電圧系配線に接続され、前記高電圧系配線の電力を変換して前記低電圧系配線に供給可能なDCDCコンバータを備え、
前記プロセッサは、
前記SMRオフ制御において、
前記モータジェネレータによる発電電力を、前記低電圧系配線に供給する必要があるかを判定することと、
前記モータジェネレータによる発電電力の供給が必要と判定した場合、前記システムメインリレーを流れる電流をゼロに制御するSMR電流ゼロ制御を行って前記システムメインリレーをオフ状態にすることと、
前記モータジェネレータによる発電電力の供給が必要ではないと判定した場合、前記モータジェネレータをゼロトルクで回転させるMGアシストゼロ制御を行って前記システムメインリレーをオフ状態にすることと、
を含む処理を実行する、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
エンジンを備え、
前記プロセッサは、
前記SMRオフ制御が行われたことにより前記システムメインリレーがオフ状態となっているとき、自車両の状態を、前記エンジンにより自車両の走行が可能であるとともに前記モータジェネレータによる発電が可能なバッテリレス走行状態とすること、
を含む処理を実行する、請求項1に記載の車両。
【請求項4】
前記プロセッサは、
自車両の状態が前記バッテリレス走行状態であるときにおいて、前記気圧センサにより検出された気圧が、前記第1気圧閾値より高い第2気圧閾値以上となると、自車両の状態を、前記モータジェネレータにより自車両の走行が可能な通常走行状態に復帰させる通常復帰制御を行うこと、
を含む処理を実行する、請求項3に記載の車両。
【請求項5】
入力端が、前記高電圧系配線における前記システムメインリレーと前記モータジェネレータとの間に電気的に接続され、出力端が、低電圧系配線に接続され、前記高電圧系配線の電力を変換して前記低電圧系配線に供給可能なDCDCコンバータを備え、
前記プロセッサは、
前記通常復帰制御において、
前記モータジェネレータによる発電電力を、前記低電圧系配線に供給する必要があるかを判定することと、
前記モータジェネレータによる発電電力の供給が必要と判定した場合、前記モータジェネレータによる発電電力と前記DCDCコンバータの出力とを等しい状態に制御するバランス制御を行って前記システムメインリレーをオン状態にすることと、
前記モータジェネレータによる発電電力の供給が必要ではないと判定した場合、前記モータジェネレータをゼロトルクで回転させるMGアシストゼロ制御を行って前記システムメインリレーをオン状態にすることと、
を含む処理を実行する、請求項4に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、高電圧バッテリを備えるハイブリッド電気自動車の走行制御について開示されている。かかる特許文献1では、バッテリパックに過電圧が発生した場合、システムメインリレーがオフ状態とされ、車両の状態を、エンジンの出力により走行可能なバッテリレス走行状態とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、標高の高い場所に向かって車両を走行させるような状況が起こり得る。標高の高い場所は、標高の低い場所と比べ、気圧が低い。車両の位置での気圧が低くなると、高電圧バッテリが収容されたバッテリパックの出力端子などにおいて、空気中に放電を生じることがある。その放電が生じると、バッテリパックや出力端子の周囲の機器などが損傷するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、放電の発生を抑制することが可能な車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一実施形態に係る車両は、
高電圧バッテリと、
モータジェネレータと、
前記高電圧バッテリと前記モータジェネレータとを電気的に接続可能な高電圧系配線と、
前記高電圧系配線における前記高電圧バッテリと前記モータジェネレータとの間の電気的な接続をオンオフするシステムメインリレーと、
自車両の位置における気圧を検出する気圧センサと、
制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
1つまたは複数のプロセッサと、
前記プロセッサに接続される1つまたは複数のメモリと、
を有し、
前記プロセッサは、
前記システムメインリレーがオン状態において、前記気圧センサにより検出された気圧が第1気圧閾値未満となると、前記システムメインリレーをオフ状態にするSMRオフ制御を行うこと、
を含む処理を実行する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、放電の発生を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態にかかる車両の構成を示す概略図である。
【
図3】
図3は、車両制御部の動作の流れを説明するフローチャートである。
【
図4】
図4は、SMRオフ制御の流れを説明するフローチャートである。
【
図5】
図5は、通常復帰制御の流れを説明するフローチャートである。
【
図6】
図6は、SMRオン制御の流れを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す具体的な寸法、材料、数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0010】
図1は、本実施形態にかかる車両1の構成を示す概略図である。車両1は、走行用の駆動源としてエンジン10およびモータジェネレータ12を備えるハイブリッド電気自動車である。以後、車両1を自車両という場合がある。また、説明の便宜のため、モータジェネレータ12をMGと表記する場合がある。
【0011】
エンジン10のクランク軸およびモータジェネレータ12の回転軸は、互いに連結されるとともに、車輪に連結される。車両1は、エンジン10の出力により走行することができるとともに、エンジン10の回転に応じてモータジェネレータ12に発電させることができる。また、車両1は、モータジェネレータ12の出力により走行することができる。
【0012】
車両1は、高電圧バッテリ20、高電圧系配線22、バッテリパック24、電力変換装置26、システムメインリレー28、プリチャージリレー30、プリチャージ抵抗器32、電動過給機34を備える。
【0013】
高電圧バッテリ20は、例えば、リチウムイオンバッテリなどの充放電が可能な2次バッテリである。高電圧バッテリ20の電圧は、例えば、100V以上の所定の電圧であり、後述の低電圧バッテリの電圧よりも高い。
【0014】
高電圧系配線22は、高電圧バッテリ20とモータジェネレータ12とを電気的に接続可能な配線である。
【0015】
バッテリパック24は、中空の容器である。高電圧バッテリ20は、バッテリパック24の内部に収容されている。バッテリパック24には、出力端子40が設けられる。バッテリパック24の出力端子40は、高電圧系配線22と電気的に接続される。バッテリパック24は、例えば、車両1の底部に設けられる。バッテリパック24の出力端子40は、車両1の位置における車両1の外部の気圧と大凡同じ気圧の環境に晒される。
【0016】
電力変換装置26は、例えば、インバータである。電力変換装置26の直流側端は、高電圧系配線22を通じてバッテリパック24の出力端子40に電気的に接続されている。電力変換装置26の交流側端は、モータジェネレータ12に電気的に接続されている。電力変換装置26は、直流側端の直流電力を交流電力に変換して交流側端のモータジェネレータ12に供給することができる。また、電力変換装置26は、モータジェネレータ12が発電した交流電力を直流電力に変換して直流側端に供給することができる。
【0017】
システムメインリレー28は、バッテリパック24の内部に収容されている。システムメインリレー28は、高電圧系配線22における高電圧バッテリ20とモータジェネレータ12との間の電気的な接続をオンオフする。以後、説明の便宜のため、システムメインリレー28を、SMRと表記する場合がある。システムメインリレー28は、正極側メインリレー28aおよび負極側メインリレー28bを含む。
【0018】
正極側メインリレー28aの2つの接点のうち第1接点は、高電圧バッテリ20の正極に接続されている。正極側メインリレー28aの2つの接点のうち第2接点は、バッテリパック24の出力端子40のうち正極の出力端子40に接続されている。
【0019】
負極側メインリレー28bの2つの接点のうち第1接点は、高電圧バッテリ20の負極に接続されている。負極側メインリレー28bの2つの接点のうち第2接点は、バッテリパック24の出力端子40のうち正極の出力端子40に接続されている。
【0020】
プリチャージリレー30およびプリチャージ抵抗器32は、バッテリパック24の内部に収容されている。プリチャージリレー30の2つの接点のうち第1接点は、高電圧バッテリ20の正極に接続されている。プリチャージリレー30の2つの接点のうち第2接点は、プリチャージ抵抗器32の2つの端部のうち第1端部に接続されている。プリチャージ抵抗器32の2つの端部のうち第2端部は、正極側メインリレー28aの第2接点、および、バッテリパック24の正極の出力端子40に接続されている。つまり、プリチャージリレー30およびプリチャージ抵抗器32は、直列接続されている。直列接続されたプリチャージリレー30およびプリチャージ抵抗器32は、正極側メインリレー28aに並列接続されている。
【0021】
電動過給機34は、高電圧系配線22におけるバッテリパック24の出力端子40と電力変換装置26の直流側端との間に電気的に接続されている。電動過給機34は、エンジン10の吸気流路に設けられる。電動過給機34は、高電圧系配線22を通じて供給された電力を消費して、吸気流路に送入された空気を圧縮してエンジン10に供給する。なお、高電圧系配線22に電気的に接続される電気機器は、電動過給機34に限らない。高電圧で動作する任意の電気機器が、高電圧系配線22に電気的に接続されてもよい。
【0022】
車両1は、低電圧バッテリ50、低電圧系配線52およびDCDCコンバータ54を備える。低電圧バッテリ50は、例えば、鉛バッテリ、リチウムイオンバッテリなどの充放電が可能な2次バッテリである。低電圧バッテリ50の電圧は、例えば、12Vまたは24Vなどであり、高電圧バッテリ20の電圧よりも低い。
【0023】
低電圧系配線52は、低電圧バッテリ50と電気的に接続可能な配線である。例えば、補機などの低電圧で動作する任意の電気機器が、低電圧系配線52に電気的に接続されてもよい。
【0024】
DCDCコンバータ54の入力端は、高電圧系配線22におけるシステムメインリレー28とモータジェネレータ12との間に電気的に接続されている。より詳細には、DCDCコンバータ54の入力端は、高電圧系配線22におけるバッテリパック24の出力端子40と電力変換装置26の直流側端との間に電気的に接続されている。また、DCDCコンバータ54の出力端は、低電圧系配線52に電気的に接続されている。
【0025】
DCDCコンバータ54は、高電圧系配線22の電力を変換して低電圧系配線52に供給可能な構成となっている。DCDCコンバータ54がオン状態のとき、高電圧系配線22の電力が低電圧系配線52に供給される。DCDCコンバータ54を通じて低電圧系配線52に供給された電力は、例えば、低電圧バッテリ50に供給される。一方、DCDCコンバータ54がオフ状態のとき、DCDCコンバータ54による電力変換が行われず、高電圧系配線22から低電圧系配線52への電力の供給は行われない。
【0026】
車両1は、気圧センサ60、電圧センサ62および電流センサ64を備える。気圧センサ60は、自車両の位置における気圧を検出する。例えば、気圧センサ60は、エンジンルームの内部に設けられている。エンジンルームの内部は、車両1の位置における車両1の外部の気圧と同じ気圧の環境に晒される。このため、気圧センサ60は、車室内ではなく、車両1の位置における外気の気圧、すなわち、大気圧を検出する。以後、説明の便宜のため、自車両の位置における気圧を、車両1の気圧という場合がある。電圧センサ62は、バッテリパック24の出力端子40の電圧を検出する。電流センサ64は、システムメインリレー28を流れる電流を検出する。
【0027】
車両1は、制御装置70を備える。制御装置70は、1つまたは複数のプロセッサ72と、プロセッサ72に接続される1つまたは複数のメモリ74とを有する。メモリ74は、プログラム等が格納されたROMおよびワークエリアとしてのRAMを含む。制御装置70のプロセッサ72は、メモリ74に含まれるプログラムと協働して、車両制御部80として機能する。車両制御部80は、車両1全体を制御する。例えば、車両制御部80は、システムメインリレー28のオンオフに係る制御や、自車両の走行状態の制御を行う。
【0028】
ここで、例えば、標高の高い場所に向かって車両1を走行させるような状況が起こり得る。標高の高い場所は、標高の低い場所と比べ、気圧が低い。車両1の位置での気圧が低くなると、高電圧バッテリ20が収容されたバッテリパック24の出力端子40などにおいて、空気中に放電を生じることがある。その放電が生じると、バッテリパック24や出力端子40の周囲の機器などが損傷するおそれがある。
【0029】
そこで、本実施形態の車両1の車両制御部80は、システムメインリレー28がオン状態において、気圧センサ60により検出された気圧が第1気圧閾値未満となると、システムメインリレー28をオフ状態にするSMRオフ制御を行う。
【0030】
システムメインリレー28がオフ状態になると、高電圧バッテリ20が高電圧系配線22から電気的に切り離される。そうすると、バッテリパック24の出力端子40の電圧が、高電圧バッテリ20の高電圧に依存しなくなる。これにより、バッテリパック24の出力端子40における放電の発生を抑制することができる。以下、車両制御部80による制御について詳細に説明する。
【0031】
図2は、気圧と電圧の関係を示す図である。
図2の横軸は、気圧センサ60により検出される気圧を示す。
図2では、横軸を右側に進むに従って気圧が低くなっている。例えば、車両1の位置の標高が高くなるほど、気圧センサ60で検出される気圧が低くなる。
図2の縦軸は、電圧センサ62により検出されるバッテリパック24の出力端子40の電圧を示す。
図2では、縦軸を下側に進むに従って電圧が低くなっている。
【0032】
図2の実線A10は、バッテリパック24の出力端子40において放電が発生しないと想定される絶縁領域と、放電の発生が生じると想定される放電領域とを区分する境界を示す放電境界線である。
図2中、放電境界線より電圧が低い領域が、絶縁領域であり、放電境界線より電圧が高い領域が、放電領域である。
図2で示すように、気圧が低くなるほど、低い電圧でも放電が生じる可能性が高くなる。
【0033】
これを踏まえ、車両1では、車両1の気圧に関して、第1気圧閾値Pth1、第2気圧閾値Pth2、第3気圧閾値Pth3の3つの閾値が予め設定されている。第1気圧閾値Pth1は、第2気圧閾値Pth2よりも低い。換言すると、第2気圧閾値Pth2は、第1気圧閾値Pth1よりも高い。第3気圧閾値Pth3は、第1気圧閾値Pth1よりも低い。
【0034】
第1気圧領域は、車両1の気圧が、第2気圧閾値Pth2以上の領域である。第2気圧領域は、車両1の気圧が、第2気圧閾値Pth2未満、第1気圧閾値Pth1以上の領域である。第3気圧領域は、車両1の気圧が、第1気圧閾値Pth1未満、第3気圧閾値Pth3以上の領域である。
【0035】
第2気圧閾値Pth2は、例えば、標高4300mの標準的な大気圧に相当する気圧に設定される。第3気圧閾値Pth3は、例えば、標高6000mの標準的な大気圧に相当する気圧に設定される。第1気圧閾値Pth1は、標高4300mから標高6000mまでの間の所定の標高での標準的な大気圧に相当する気圧に設定される。第1気圧閾値Pth1に関する所定の標高は、各種の高電圧部品の絶縁抵抗や高電圧バッテリ20の定格電圧などを考慮して決定される。
【0036】
第1電圧閾値Vth1は、第1気圧閾値Pth1と放電境界線との交点の電圧である。第2電圧閾値Vth2は、第2気圧閾値Pth2と放電境界線との交点の電圧である。第3電圧閾値Vth3は、第3気圧閾値Pth3と放電境界線との交点の電圧である。第1電圧閾値Vth1は、第2電圧閾値Vth2より低い。第3電圧閾値Vth3は、第1電圧閾値Vth1より低い。
【0037】
例えば、第2電圧閾値Vth2は、高電圧バッテリ20の上限電圧と大凡同じに設定される。第3電圧閾値Vth3は、高電圧バッテリ20の下限電圧に近い電圧であり、高電圧バッテリ20の下限電圧よりも所定値だけ高い電圧に設定される。ここでの所定値は、例えば、20Vなどであるが、任意の値に設定されてもよい。
【0038】
例えば、高電圧バッテリ20の上限電圧が第2電圧閾値Vth2と同じ電圧であるとする。そうすると、バッテリパック24の出力端子40の上限電圧も第2電圧閾値Vth2となる。この場合、第1気圧領域では、バッテリパック24の出力端子40の上限電圧が放電境界線より低いため、放電が生じる可能性は低い。このため、第1気圧領域では、車両1の性能が保障されている。
【0039】
車両1の気圧が第2気圧閾値Pth2未満となると、バッテリパック24の出力端子40の上限電圧が、第2電圧閾値Vth2より高くなって放電領域に属することになる。この状況では、バッテリパック24の出力端子40が上限電圧になっていると、バッテリパック24の出力端子40において放電が生じる可能性がある。
【0040】
そこで、車両制御部80は、車両1の気圧が第2気圧閾値Pth2未満の領域のとき、すなわち、第2気圧領域および第3気圧領域のとき、バッテリパック24の出力端子40の電圧を制限する。
【0041】
ここで、車両1の気圧が、第1気圧領域から第2気圧領域に変化した後、第2気圧領域から第3気圧領域に変化していく気圧低下過程と、車両1の気圧が、一旦、第3領域に属してから、第3気圧領域から第2気圧領域に変化し、第2気圧領域から第1気圧領域に変化していく気圧上昇過程とが想定される。
【0042】
車両1では、気圧低下過程と気圧上昇過程とで、自車両の状態、システムメインリレー28の状態、および、電圧制限態様が異なる。
【0043】
自車両の状態には、通常走行状態、制限走行状態およびバッテリレス走行状態がある。通常走行状態は、モータジェネレータ12により自車両の走行が可能であり、バッテリパック24の出力端子40の電圧が制限されていない状態である。
【0044】
制限走行状態は、モータジェネレータ12により自車両の走行が可能であるが、バッテリパック24の出力端子40の電圧が制限されている状態である。制限走行状態では、モータジェネレータ12による走行において、例えば、加速制限などの所定の機能制限が行われてもよい。
【0045】
バッテリレス走行状態は、モータジェネレータ12による自車両の走行ができないが、エンジン10により自車両の走行が可能であるとともにモータジェネレータ12による発電が可能な状態である。バッテリレス走行状態では、後述するが、システムメインリレー28がオフ状態となっているため、モータジェネレータ12が高電圧バッテリ20から電気的に切り離されている。このため、バッテリレス走行状態では、高電圧バッテリ20からモータジェネレータ12に電力を供給することができず、モータジェネレータ12による自車両の走行ができない。しかし、バッテリレス走行状態では、モータジェネレータ12の代わりにエンジン10により自車両の走行が可能である。このことから、バッテリレス走行状態は、高電圧バッテリ20の電力を消費せずに、エンジン10により自車両の走行が可能な状態である。これを踏まえると、バッテリレス走行状態のバッテリレスは、低電圧バッテリを意味しておらず、高電圧バッテリを意味している。
【0046】
バッテリレス走行状態では、モータジェネレータ12により発電された電力が、電力変換装置26、高電圧系配線22、DCDCコンバータ54および低電圧系配線52を通じて低電圧バッテリ50に供給されるようにしてもよい。また、バッテリレス走行状態では、エンジン10の出力が制限される。これにより、モータジェネレータ12による発電電力が制限され、その結果、バッテリパック24の出力端子40の電圧が制限される。
【0047】
システムメインリレー28は、通常走行状態および制限走行状態において、オン状態となっている。システムメインリレー28は、バッテリレス走行状態において、オフ状態となっている。
【0048】
第1気圧領域では、気圧低下過程および気圧上昇過程に依らず、自車両の状態が、通常走行状態となっており、システムメインリレー28が、オン状態となっている。
【0049】
気圧低下過程において、車両1の気圧が第1気圧領域から第2気圧領域に変わると、車両制御部80は、自車両の状態を通常走行状態から制限走行状態に切り替える。このとき、システムメインリレー28は、オン状態が維持される。
【0050】
制限走行状態では、車両制御部80は、車両1の気圧が低くなるに従って、放電境界線と大凡平行となるように、バッテリパック24の出力端子40の電圧を比例的に低くする。例えば、車両制御部80は、車両1の気圧の低下量に応じて、電力変換装置26の交流側端の出力電圧を上昇させるように電力変換装置26を制御する。そうすると、モータジェネレータ12で消費される電力が増加し、モータジェネレータ12の消費電力の増加分を補うために、高電圧バッテリ20から高電圧系配線22に持ち出される電力が増加する。その結果、高電圧バッテリ20から高電圧系配線22に持ち出される電力量に応じて、バッテリパック24の出力端子40の電圧が低下する。
【0051】
気圧低下過程において、車両1の気圧が第2気圧領域から第3気圧領域に変わると、車両制御部80は、システムメインリレー28をオン状態からオフ状態に切り替える。そして、車両制御部80は、自車両の状態を制限走行状態からバッテリレス走行状態に切り替える。
【0052】
バッテリレス走行状態では、車両制御部80は、バッテリパック24の出力端子40の電圧が、第3電圧閾値Vth3と同じ電圧で一定に維持されるように、当該出力端子40の電圧を制限する。
【0053】
ここで、バッテリレス走行状態では、システムメインリレー28がオフ状態であるため、バッテリパック24の出力端子は高電圧バッテリ20から電気的に切り離されている。また、バッテリレス走行状態では、モータジェネレータ12により発電された電力がDCDCコンバータ54を通じて低電圧系配線52に供給される。これにより、バッテリレス走行状態におけるバッテリパック24の出力端子40の電圧は、モータジェネレータ12の発電電力とDCDCコンバータ54の出力端の電力との差分の電力に大凡従った電圧となる。モータジェネレータ12の発電電力は、エンジン10の出力により制御することができる。そこで、バッテリレス走行状態では、車両制御部80は、バッテリパック24の出力端子40の電圧が、第3電圧閾値Vth3と同じ電圧で一定に維持されるように、エンジン10の出力を抑えて制御する。
【0054】
なお、車両1の気圧が第3気圧閾値Pth3未満となった場合、車両制御部80は、モータジェネレータ12による自車両の走行の停止に加え、エンジン10による自車両の走行を停止してもよい。ただし、この場合、エンジン10によりモータジェネレータ12を回転させてモータジェネレータ12による発電が維持可能であるようにしてもよい。
【0055】
気圧上昇過程において、バッテリレス走行状態である車両1の気圧が、第3気圧領域から第2気圧領域に変わったとする。しかし、気圧上昇過程では、第2気圧領域においても、第3気圧領域と同様に、システムメインリレー28がオフ状態で維持されるとともに、バッテリレス走行状態が維持される。
【0056】
気圧上昇過程において、バッテリレス走行状態である車両1の気圧が、第2気圧領域から第1気圧領域に変わると、車両制御部80は、システムメインリレーをオフ状態からオン状態に切り替える。そして、車両制御部80は、自車両の状態をバッテリレス走行状態から通常走行状態に復帰させる。
【0057】
このように、車両制御部80は、自車両の状態がバッテリレス走行状態にあるときにおいて、気圧センサ60により検出された気圧が第2気圧閾値Pth2以上となると、自車両の状態を通常走行状態に復帰させる通常復帰制御を行う。
【0058】
なお、
図2の説明では、第1気圧領域から第2気圧領域に変化した後、第2気圧領域から第3気圧領域に変化する態様と、第3気圧領域から第2気圧領域に変化した後、第2気圧領域から第1気圧領域に変化する態様とについて説明していた。しかし、例えば、第1気圧領域から第2気圧領域に変化した後、第3気圧領域に到達せずに、第2気圧領域から第1気圧領域に戻ることもある。この場合、自車両の状態は、通常走行状態から制限走行状態に変化した後、制限走行状態から通常走行状態に変化する。また、例えば、第3気圧領域から第2気圧領域に変化した後、第1気圧領域に到達せずに、第2気圧領域から第3気圧領域に戻ることもある。この場合、自車両の状態は、バッテリレス走行状態が維持される。
【0059】
図3は、車両制御部80の動作の流れを説明するフローチャートである。車両制御部80は、車両1がReady-on状態にされると、システムメインリレー28をオン状態にした後、車両1がReady-off状態にされるまで、
図3の一連の処理を繰り返し実行する。車両制御部80は、所定時間が経過するごとに訪れる所定の割込みタイミングが到来するごとに、
図3の一連の処理を繰り返し実行する。
【0060】
所定の割込みタイミングが到来すると、車両制御部80は、気圧センサ60により検出された現在の気圧を取得する(S10)。車両制御部80は、電圧センサ62により検出されたバッテリパック24の出力端子40の現在の電圧を取得する(S11)。
【0061】
次に、車両制御部80は、自車両の現在の状態がバッテリレス走行状態であるかを判定する(S12)。
【0062】
自車両の現在の状態がバッテリレス走行状態ではない場合(S12におけるNO)、車両制御部80は、取得した気圧が第1気圧閾値Pth1未満であるか否かを判定する(S20)。
【0063】
取得した気圧が第1気圧閾値Pth1未満である場合(S20におけるYES)、車両制御部80は、取得した電圧が第1電圧閾値Vth1より大きいか否かを判定する(S21)。
【0064】
取得した電圧が第1電圧閾値Vth1より大きい場合(S21)、取得した気圧が第3気圧領域に属しており、バッテリパック24の出力端子40における放電が生じる可能性があると想定される。そのため、この場合、車両制御部80は、システムメインリレー28をオフ状態にするSMRオフ制御(S22)を行う。SMRオフ制御(S22)については、後に詳述する。
【0065】
SMRオフ制御(S22)によりシステムメインリレーがオフ状態にされると、車両制御部80は、自車両の状態をバッテリレス走行状態とし、一連の処理を終了する。
【0066】
図4は、SMRオフ制御(S22)の流れを説明するフローチャートである。SMRオフ制御が開始されると、車両制御部80は、まず、モータジェネレータ12による発電電力を、低電圧系配線52に供給する必要があるか否かを判定する(S30)。このステップは、モータジェネレータ12による発電電力を、低電圧系配線52を通じて低電圧バッテリ50に回生することが必要な状況であるかを判定することに相当する。
【0067】
モータジェネレータ12の発電電力の供給が必要であると判定した場合(S30におけるYES)、車両制御部80は、システムメインリレー28を流れる電流をゼロに制御するSMR電流ゼロ制御(S31)を行う。ここで、システムメインリレー28に電流が流れている状態で、システムメインリレー28のオンオフの制御を行うと、システムメインリレー28の接点間にアークが発生して接点が損傷するおそれがある。このため、車両制御部80は、システムメインリレー28をオフ状態に切り替えるための事前処理として、SMR電流ゼロ制御(S31)を行う。
【0068】
SMR電流ゼロ制御(S31)が行われているとき、モータジェネレータ12は発電を行っており、電力変換装置26は、モータジェネレータ12の発電電力を変換して高電圧系配線22に供給している。また、SMR電流ゼロ制御(S31)が行われているとき、DCDCコンバータ54が動作しており、DCDCコンバータ54は、高電圧系配線22の電力を変換して低電圧系配線52に供給している。このような状況では、電力変換装置26を通じてモータジェネレータ12から供給される電力と、DCDCコンバータ54の出力端から出力される電力とのバランスをとることで、システムメインリレー28の電流を制御することができる。
【0069】
そこで、SMR電流ゼロ制御(S31)において、車両制御部80は、電流センサ64によりシステムメインリレー28を流れる電流をモニタしながら、システムメインリレー28の電流が実質的にゼロになるように、電力変換装置26およびDCDCコンバータ54を制御する。
【0070】
車両制御部80は、電流センサ64により検出されたシステムメインリレー28の電流が、ゼロを含む所定範囲内に収まっているかを判定する(S32)。ここでのゼロを含む所定範囲は、測定誤差や制御誤差などを考慮し、システムメインリレー28の電流が実質的にゼロであるとみなせる程度の電流範囲に設定される。車両制御部80は、システムメインリレー28の電流が所定範囲内に収まるまでSMR電流ゼロ制御(S31)を継続する(S32におけるNO)。
【0071】
システムメインリレー28の電流が所定範囲内に収まった場合(S32におけるYES)、車両制御部80は、システムメインリレー28をオン状態からオフ状態に切り替え(S33)、SMRオフ制御(S22)を終了する。
【0072】
ステップS30において、モータジェネレータ12の発電電力の供給が必要ではないと判定した場合(S30におけるNO)、車両制御部80は、DCDCコンバータ54および電動過給機34を、一旦、オフ状態にする(S34)。これにより、高電圧系配線22を通じた電力消費がほとんどなくなる。
【0073】
そして、車両制御部80は、モータジェネレータ12をゼロトルクで回転させるMGアシストゼロ制御(S35)を行う。モータジェネレータ12がゼロトルクで回転すると、モータジェネレータ12は、力行ではなく、回生でもない、中立の状態となる。ゼロトルクの状態では、高電圧系配線22からモータジェネレータ12に移動する電力がなく、モータジェネレータ12から高電圧系配線22に移動する電力もないため、システムメインリレー28の電流を実質的にゼロにすることができる。
【0074】
そこで、MGアシストゼロ制御(S35)において、車両制御部80は、モータジェネレータ12のトルクが実質的にゼロになるように、電力変換装置26を制御する。
【0075】
車両制御部80は、モータジェネレータ12のトルクが、ゼロを含む所定範囲内に収まっているかを判定する(S37)。ここでのゼロを含む所定範囲は、制御誤差などを考慮し、モータジェネレータ12のトルクが実質的にゼロであるとみなせる程度のトルク範囲に設定される。車両制御部80は、モータジェネレータ12のトルクが所定範囲内に収まるまでMGアシストゼロ制御(S35)を継続する(S37におけるNO)。
【0076】
モータジェネレータ12のトルクが所定範囲内に収まった場合(S37におけるYES)、車両制御部80は、システムメインリレー28をオン状態からオフ状態に切り替える(S38)。
【0077】
その後、車両制御部80は、ステップS34でオフ状態にさせたDCDCコンバータ54および電動過給機34を、オン状態に戻し(S39)、SMRオフ制御(S22)を終了する。
【0078】
図3に戻って、ステップS20において、取得した気圧が第1気圧閾値Pth1以上である場合(S20におけるNO)、あるいは、取得した電圧が第1電圧閾値Vth1以下である場合(S21におけるNO)、車両制御部80は、ステップS50の処理に進む。なお、取得した気圧が第3気圧領域に属しているとしても、取得した電圧が第1電圧閾値Vth1以下であれば、取得した電圧が絶縁領域に属し、放電が生じる可能性が低いと想定されるため、ステップS50の処理に進むようにしている。
【0079】
ステップS50において、車両制御部80は、取得した気圧が第2気圧閾値Pth2未満であるか否かを判定する(S50)。
【0080】
取得した気圧が第2気圧閾値Pth2未満である場合(S50におけるYES)、車両制御部80は、取得した電圧が第2電圧閾値Vth2より大きいか否かを判定する(S51)。
【0081】
取得した電圧が第2電圧閾値Vth2より大きい場合(S51におけるYES)、取得した気圧が第2気圧領域に属しており、バッテリパック24の出力端子40における放電が生じる可能性があると想定される。そのため、この場合、車両制御部80は、自車両の状態を制限走行状態とし(S52)、取得した気圧に応じてバッテリパック24の出力端子40の電圧を低下させる電圧低下制御(S53)を行い、一連の処理を終了する。
【0082】
ステップS50において、取得した気圧が第2気圧閾値Pth2以上である場合(S50におけるNO)、あるいは、取得した電圧が第2電圧閾値Vth2以下である場合(S51におけるNO)、車両制御部80は、自車両の状態を通常走行状態とし(S54)、一連の処理を終了する。なお、取得した気圧が第2気圧領域に属しているとしても、取得した電圧が第2電圧閾値Vth2以下であれば、取得した電圧が絶縁領域に属し、放電が生じる可能性が低いと想定されるため、ステップS54の処理に進むようにしている。
【0083】
また、ステップS12において、自車両の現在の状態がバッテリレス走行状態である場合(S12におけるYES)、車両制御部80は、所定の警告を実行する(S60)。所定の警告は、例えば、「気圧が低い」または「標高が高い」ことを示す所定の表示をインスツルメントパネルなどに表示させる態様であってもよい。また、所定の警告は、「低い標高に移動してください」などのように、気圧の高い場所への車両1の移動を促す表示を表示させる態様であってもよい。なお、所定の警告は、この例に限らず、自車両の状態がバッテリレス走行となっていることを車両1の搭乗者が把握できる程度の任意の態様で行われてもよい。
【0084】
次に、車両制御部80は、取得した気圧が第2気圧閾値Pth2以上であるか否かを判定する(S61)。
【0085】
取得した気圧が第2気圧閾値Pth2未満である場合(S61におけるNO)、バッテリレス走行状態が維持される。この場合、車両制御部80は、エンジン10の出力を制御することでバッテリパック24の出力端子40の電圧を第3電圧閾値Vth3と同じ電圧に制御する低電圧制御を行い(S62)、一連の処理を終了する。
【0086】
取得した気圧が第2気圧閾値Pth2以上である場合(S61におけるNO)、車両制御部80は、自車両の状態を通常走行状態に復帰させる通常復帰制御(S63)を行い、一連の処理を終了する。通常復帰制御(S63)については、後に詳述する。
【0087】
図5は、通常復帰制御(S63)の流れを説明するフローチャートである。通常復帰制御(S63)が開始されると、車両制御部80は、電圧センサ62により検出されたバッテリパック24の出力端子40の現在の電圧を取得する(S70)。
【0088】
車両制御部80は、取得した電圧が復帰電圧閾値以上であるか否かを判定する(S71)。復帰電圧閾値は、例えば、第3電圧閾値Vth3の電圧に対して所定電圧分だけ高い電圧に設定される。ここでの所定電圧分は、例えば、通常走行状態での高電圧バッテリ20の通常の電圧を考慮して、復帰電圧閾値が第2電圧閾値Vth2を超えない範囲で任意に設定されてもよい。
【0089】
取得した電圧が復帰電圧閾値未満である場合(S71におけるNO)、車両制御部80は、バッテリパック24の出力端子40の電圧を上昇させる電圧上昇制御(S72)を行う。そして、車両制御部80は、再度、電圧を取得し(S70)、取得した電圧が復帰電圧閾値以上であるかの判定を行う(S71)。
【0090】
電圧上昇制御(S72)において、例えば、車両制御部80は、エンジン10の出力を上昇させるように制御することで、モータジェネレータ12の発電電力を大きくさせる。発電電力が大きくなると、高電圧系配線に供給される電力量が多くなり、その結果、バッテリパック24の出力端子40の電圧が上昇する。電圧上昇制御(S72)は、バッテリレス走行において制限されていた電圧の制限が解除されることに相当する。
【0091】
取得した電圧が復帰電圧閾値以上である場合(S71におけるYES)、車両制御部80は、システムメインリレー28をオン状態にするSMRオン制御(S73)を行う。SMRオン制御(S73)については、後に詳述する。
【0092】
SMRオン制御(S73)の後、車両制御部80は、バッテリレス走行状態のときに行われていた警告を終了する(S74)。そして、車両制御部80は、自車両の状態を通常走行状態とし(S75)、通常復帰制御(S63)を終了する。
【0093】
図6は、SMRオン制御(S73)の流れを説明するフローチャートである。SMRオン制御(S73)が開始されると、車両制御部80は、まず、モータジェネレータ12による発電電力を、低電圧系配線52に供給する必要があるか否かを判定する(S80)。このステップは、モータジェネレータ12による発電電力を、低電圧系配線52を通じて低電圧バッテリ50に回生することが必要な状況であるかを判定することに相当する。
【0094】
モータジェネレータ12の発電電力の供給が必要であると判定した場合(S80におけるYES)、車両制御部80は、モータジェネレータ12による発電電力とDCDCコンバータ54の出力とを等しい状態に制御するバランス制御(S81)を行う。
【0095】
ここで、バランス制御が行われるとき、システムメインリレー28はオフ状態になっているものの、システムメインリレー28よりもモータジェネレータ12側の高電圧系配線22には、モータジェネレータ12の発電により電流が流れている。オフ状態のシステムメインリレー28をオン状態としたときに大電流が流れると、システムメインリレー28の接点にアークが発生して接点が損傷するおそれがある。このため、車両制御部80は、システムメインリレー28をオン状態に切り替えるための事前処理としてバランス制御(S81)を行う。
【0096】
バランス制御において、例えば、車両制御部80は、DCDCコンバータ54のスイッチング動作に基づいてDCDCコンバータ54の出力端の電力を導出する。車両制御部80は、モータジェネレータ12の発電電力がDCDCコンバータ54の出力端の電力と実質的に同じになるように、エンジン10の出力を制御する。モータジェネレータ12の発電電力とDCDCコンバータ54の出力端の電力とが実質的に同じになると、モータジェネレータ12の発電電力のほとんどが低電圧系配線に送られることになる。そうなると、システムメインリレー28をオン状態に切り替えた場合にシステムメインリレー28に流れる電流を小さくすることができる。
【0097】
車両制御部80は、モータジェネレータ12の発電電力とDCDCコンバータ54の出力端の電力との電力バランスがとれるまで、バランス制御(S81)を継続する(S82におけるNO)。
【0098】
電力バランスがとれた場合(S82におけるYES)、車両制御部80は、プリチャージリレー30をオン状態にさせる(S83)。車両制御部80は、バッテリパック24の出力端子40の電流が安定するまで待機する(S84)。
【0099】
バッテリパック24の出力端子40の電流が安定した場合(S84におけるYES)、車両制御部80は、システムメインリレー28をオン状態にする(S85)。車両制御部80は、プリチャージリレー30をオフ状態にし(S86)、SMRオン制御(S73)を終了する。
【0100】
なお、プリチャージリレー30をオンしてからシステムメインリレー28をオン状態とすることで、システムメインリレー28をオン状態としたとき突入電流を抑制することができる。
【0101】
ステップS80において、モータジェネレータの発電電力の供給が必要ではないと判定した場合(S80におけるNO)、車両制御部80は、DCDCコンバータ54および電動過給機34を、一旦、オフ状態にする(S34)。これにより、高電圧系配線22を通じた電力消費がほとんどなくなる。
【0102】
そして、車両制御部80は、モータジェネレータ12をゼロトルクで回転させるMGアシストゼロ制御(S91)を行う。ここでのMGアシストゼロ制御(S91)は、SMRオフ制御(S22)におけるMGアシストゼロ制御(S35)と同じ内容の制御である。ゼロトルクの状態では、高電圧系配線22からモータジェネレータ12に移動する電力がなく、モータジェネレータ12から高電圧系配線22に移動する電力もないため、システムメインリレー28の電流を実質的にゼロにすることができる。
【0103】
車両制御部は、モータジェネレータのトルクが、ゼロを含む所定範囲に収まっているかを判定する(S92)。車両制御部80は、モータジェネレータ12のトルクが所定範囲内に収まるまでMGアシストゼロ制御(S91)を継続する(S92におけるNO)。
【0104】
モータジェネレータ12のトルクが所定範囲内に収まった場合(S92におけるYES)、車両制御部80は、プリチャージリレー30をオン状態にさせる(S93)。車両制御部80は、バッテリパック24の出力端子40の電流が安定するまで待機する(S94)。
【0105】
バッテリパック24の出力端子40の電流が安定した場合(S94におけるYES)、車両制御部80は、システムメインリレー28をオン状態にする(S95)。車両制御部80は、プリチャージリレー30をオフ状態にする(S96)。車両制御部80は、ステップS90でオフ状態にさせたDCDCコンバータ54および電動過給機34を、オン状態に戻し(S97)、SMRオン制御(S73)を終了する。
【0106】
以上のように、本実施形態の車両1では、自車両の位置における気圧を検出する気圧センサ60を備える。本実施形態の車両1の車両制御部80は、システムメインリレー28がオン状態において、気圧センサ60により検出された気圧が第1気圧閾値Pth1未満となると、システムメインリレー28をオフ状態にするSMRオフ制御(S22)を行う。
【0107】
このように、本実施形態の車両1では、気圧が低くなるとシステムメインリレー28がオフ状態とされて高電圧バッテリ20が高電圧系配線22から電気的に切り離される。このため、本実施形態の車両1では、気圧が低くても、バッテリパック24の出力端子40などにおける放電の発生を抑制することが可能となる。
【0108】
また、本実施形態の車両1では、SMRオフ制御において、モータジェネレータ12による発電電力を、低電圧系配線に供給する必要があるかが判定される。本実施形態の車両1では、モータジェネレータ12による発電電力の供給が必要と判定した場合、システムメインリレー28を流れる電流をゼロに制御するSMR電流ゼロ制御が行われてシステムメインリレー28がオフ状態にされる。本実施形態の車両1では、モータジェネレータ12による発電電力の供給が必要ではないと判定した場合、モータジェネレータ12をゼロトルクで回転させるMGアシストゼロ制御が行われてシステムメインリレー28がオフ状態にされる。このため、本実施形態の車両1では、システムメインリレー28をオフ状態にするとき、システムメインリレー28の接点間のアークの発生を抑制することができ、システムメインリレー28の損傷を防止することができる。
【0109】
また、本実施形態の車両1では、SMRオフ制御が行われたことによりシステムメインリレー28がオフ状態となっているとき、自車両の状態がバッテリレス走行状態とされる。このため、本実施形態の車両1では、システムメインリレー28をオフ状態としても車両1を走行させることができ、利便性の低下を抑制することができる。
【0110】
また、本実施形態の車両1では、自車両の状態がバッテリレス走行状態であるときにおいて、気圧センサ60により検出された気圧が、第1気圧閾値Pth1より高い第2気圧閾値Pth2以上となると、自車両の状態を通常走行状態に復帰させる通常復帰制御が行われる。このため、本実施形態の車両1では、気圧が低い場所から標準的な気圧の場所に戻ったとき、通常走行状態に適切に戻ることができる。また、本実施形態の車両1では、通常復帰制御を行う判断基準となる第2気圧閾値Pth2が、バッテリレス走行状態に移行する判断基準となる第1気圧閾値Pth1より高い。このため、気圧が低下してバッテリレス走行状態に移行する制御と、気圧が上昇してバッテリレス走行状態が解除される制御との間で、制御が頻繁に切り替わるチャタリングが生じることを防止することができる。
【0111】
また、本実施形態の車両1では、通常復帰制御において、モータジェネレータ12による発電電力を、低電圧系配線52に供給する必要があるかが判定される。本実施形態の車両1では、モータジェネレータ12による発電電力の供給が必要と判定した場合、モータジェネレータ12による発電電力とDCDCコンバータ54の出力とを等しい状態に制御するバランス制御が行われてシステムメインリレー28がオン状態にされる。本実施形態の車両1では、モータジェネレータ12による発電電力の供給が必要ではないと判定した場合、モータジェネレータ12をゼロトルクで回転させるMGアシストゼロ制御が行われてシステムメインリレー28がオン状態にされる。このため、本実施形態の車両1では、システムメインリレー28をオン状態にするとき、システムメインリレー28の接点間のアークの発生を抑制することができ、システムメインリレー28の損傷を防止することができる。
【0112】
また、本実施形態の車両1では、システムメインリレー28がオン状態において、気圧センサ60により検出された気圧が、第2気圧閾値Pth2未満、第1気圧閾値Pth1以上の範囲となると、バッテリパック24の出力端子40の電圧が、気圧に応じて低下される。このため、本実施形態の車両1では、モータジェネレータ12による車両1の走行を維持させることと、気圧の低下に起因した放電の発生を抑制することとを両立させることができる。
【0113】
以上、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0114】
1 車両
10 エンジン
12 モータジェネレータ
20 高電圧バッテリ
22 高電圧系配線
28 システムメインリレー
52 低電圧系配線
54 DCDCコンバータ
60 気圧センサ
70 制御装置
72 プロセッサ
74 メモリ