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特開2024-48817樹脂成型用金型、樹脂成型品の製造方法、及び樹脂成型品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048817
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】樹脂成型用金型、樹脂成型品の製造方法、及び樹脂成型品
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/28 20060101AFI20240402BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
B29C45/28
B29C45/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154932
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】岡坂 周
(72)【発明者】
【氏名】小林 慎一郎
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202AA36
4F202AB11
4F202AD19
4F202AH37
4F202AR12
4F202CA11
4F202CB01
4F202CB17
4F202CK07
4F206AA36
4F206AB11
4F206AD19
4F206AH37
4F206AR12
4F206JA07
4F206JB12
4F206JB17
4F206JL02
4F206JM04
4F206JN15
4F206JQ81
(57)【要約】
【課題】樹脂成型品を簡易に離型できる金型を提供する。
【解決手段】本発明の樹脂成型用の金型1は、成型空間15が形成される本体部10を備え、成型空間15に配置されたインサート部材110を、熱硬化性樹脂を含む成形材料を用いて封止するための金型である。成形材料を注入する注入口13と成型空間15を繋ぐ流路14が、本体部10に形成される。樹脂成型用金型1は、スライド部20をさらに備える。スライド部20は、流路14内に位置している状態である第1状態と、流路14から退避している状態である第2状態とを、本体部10内をスライドすることにより切り替え可能である。スライド部20が第1状態にある場合において、流路14の一部は、スライド部20を挟んで互いに並んでいる第1流路14a及び第2流路14bになる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成型空間が形成される本体部を備え、前記成型空間に配置されたインサート部材を、熱硬化性樹脂を含む成形材料を用いて封止するための樹脂成型用金型であって、
前記成形材料を注入する注入口と前記成型空間を繋ぐ流路が、前記本体部に形成され、
前記流路内に位置している状態である第1状態と、前記流路から退避している状態である第2状態とを、前記本体部内をスライドすることにより切り替え可能なスライド部をさらに備え、
前記スライド部が前記第1状態にある場合において、前記流路の一部は、前記スライド部を挟んで互いに並んでいる第1流路及び第2流路になる、樹脂成型用金型。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂成型用金型において、
前記第1流路は、前記成形材料が前記インサート部材の第1領域側に流れ出るように形成されており、
前記第2流路は、前記成形材料が前記第1領域の反対にある前記インサート部材の第2領域側に流れ出るように形成されている、樹脂成型用金型。
【請求項3】
請求項2に記載の樹脂成型用金型において、
前記第1領域は、少なくとも一部が板状である前記インサート部材の一面であり、
前記第2領域は、前記一面の反対にある前記インサート部材の他面である、樹脂成型用金型。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の樹脂成型用金型において、
前記第1流路及び前記第2流路が並ぶ配列方向において、前記第1流路は、前記第1領域の外側に形成されており、
前記配列方向において、前記第2流路は、前記第2領域の外側に形成されている、樹脂成型用金型。
【請求項5】
請求項4に記載の樹脂成型用金型において、
前記第1領域は、少なくとも一部が板状である前記インサート部材の一面であり、
前記第2領域は、前記一面の反対にある前記インサート部材の他面である、樹脂成型用金型。
【請求項6】
請求項2又は3に記載の樹脂成型用金型において、
前記第1領域は、少なくとも一部が板状である前記インサート部材の上面であり、
前記第1流路は、前記上面よりも上側に形成されている、樹脂成型用金型。
【請求項7】
請求項6に記載の樹脂成型用金型において、
前記第2領域は、前記インサート部材の下面であり、
前記第2流路は、前記下面よりも下側に形成されている、樹脂成型用金型。
【請求項8】
請求項1から3のいずれか一項に記載の樹脂成型用金型において、
前記第1流路及び前記第2流路の少なくとも一方の断面積は、前記成型空間に近づくにつれて小さくなる、樹脂成型用金型。
【請求項9】
請求項1から3のいずれか一項に記載の樹脂成型用金型において、
前記第1流路及び前記第2流路が並ぶ配列方向における、前記第1流路のうち前記成型空間に最も近い部分の長さと、前記配列方向における、前記第2流路のうち前記成型空間に最も近い部分の長さとの合計は、0.5mm以上8.0mm以下である、樹脂成型用金型。
【請求項10】
請求項1から3のいずれか一項に記載の樹脂成型用金型において、
前記スライド部は、前記スライド部が前記第1状態にある場合において前記成形材料が流れる部分に、板状のゲート部を有し、
前記第1流路及び前記第2流路は、前記ゲート部を挟んで、並んで形成され、
前記ゲート部の厚みは、前記インサート部材の厚みよりも大きい、樹脂成型用金型。
【請求項11】
請求項10に記載の樹脂成型用金型において、
前記ゲート部の厚みは、2mm以上である、樹脂成型用金型。
【請求項12】
請求項1から3のいずれか一項に記載の樹脂成型用金型において、
前記スライド部は、一対のスライド部材から構成されており、
前記スライド部が前記第1状態から前記第2状態に切り替わる場合、前記一対のスライド部材は、互いに離れるようにスライドする、樹脂成型用金型。
【請求項13】
請求項12に記載の樹脂成型用金型において、
一対の前記スライド部材は、前記スライド部が前記第1状態にある場合において前記成形材料が流れる部分に、板状の板状部を各々有し、
前記板状部は、前記一対のスライド部材が互いに離れてスライドする方向に対して0.5°以上1.0°以下の傾斜形状を有している、樹脂成型用金型。
【請求項14】
請求項1から3のいずれか一項に記載の樹脂成型用金型において、
前記スライド部は、前記第1流路と前記第2流路が並ぶ配列方向にも移動可能であるように構成されている、樹脂成型用金型。
【請求項15】
請求項1から3のいずれか一項に記載の樹脂成型用金型において、
前記スライド部が前記第1状態にある場合において、前記スライド部を固定するスライド固定部をさらに備える、樹脂成型用金型。
【請求項16】
請求項1から3のいずれか一項に記載の樹脂成型用金型において、
前記スライド部が前記第1状態にある場合において、前記インサート部材を固定するインサート固定部をさらに備える、樹脂成型用金型。
【請求項17】
請求項1から3のいずれか一項に記載の樹脂成型用金型において、
前記インサート部材は、少なくとも1つ以上の電子部品が搭載された電子制御基板である、樹脂成型用金型。
【請求項18】
成型空間が形成される本体部を備え、前記成型空間に配置されたインサート部材を、熱硬化性樹脂を含む成形材料を用いて封止するための樹脂成型用金型が使用される樹脂成型品の製造方法であって、
前記成形材料を注入する注入口と前記成型空間を繋ぐ流路が、前記本体部に形成され、
前記樹脂成型用金型は、前記流路内に位置している状態である第1状態と、前記流路から退避している状態である第2状態とを、前記本体部内をスライドすることにより切り替え可能なスライド部をさらに備え、
前記スライド部が前記第1状態にある場合において、前記流路の一部は、前記スライド部を挟んで互いに並んでいる第1流路及び第2流路になり、
前記スライド部をスライドさせ、前記第1状態とするスライド部配置工程と、
前記成形材料を前記注入口から前記第1流路及び前記第2流路を介して前記成型空間に注入し、前記成形材料を前記成型空間に充填する充填工程と、
前記成型空間内に充填された前記成形材料を加熱加圧して、前記成形材料により前記インサート部材を封止する封止工程と、
前記スライド部をスライドさせ、前記第2状態とする型開き工程と、を含む樹脂成型品の製造方法。
【請求項19】
インサート部材と、
熱硬化性樹脂を含み前記インサート部材を封止している樹脂部と、を備え、
前記樹脂部は、前記インサート部材の一端側に並んでいる第1流路痕及び第2流路痕を含み、
前記第1流路痕及び前記第2流路痕が並んでいる配列方向において、前記第1流路痕は、前記インサート部材の第1領域の外側に設けられており、
前記配列方向において、前記第2流路痕は、前記第1領域の反対にある前記インサート部材の第2領域の外側に設けられている、樹脂成型品。
【請求項20】
請求項19に記載の樹脂成型品において、
前記配列方向における前記第1流路痕と前記第2流路痕との間の長さは、前記配列方向における前記インサート部材の長さよりも大きい、樹脂成型品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成型用金型、樹脂成型品の製造方法、及び樹脂成型品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電子部品が実装される制御基板と、制御基板を封止樹脂で封止した筐体と、を備える電子制御装置に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2020/059349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された金型について、第1ゲート部及び第2ゲート部より、金型内に樹脂を注入し制御基板を樹脂封止することが記載されているが、樹脂成型品をどのように金型から離型するかについては言及されていない。
【0005】
本発明が解決しようとする課題としては、樹脂成型品を簡易に離型できる金型、この金型を用いた樹脂成型品の製造方法、及び樹脂成型品を提供することが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、
成型空間が形成される本体部を備え、前記成型空間に配置されたインサート部材を、熱硬化性樹脂を含む成形材料を用いて封止するための樹脂成型用金型であって、
前記成形材料を注入する注入口と前記成型空間を繋ぐ流路が、前記本体部に形成され、
前記流路内に位置している状態である第1状態と、前記流路から退避している状態である第2状態とを、前記本体部内をスライドすることにより切り替え可能なスライド部をさらに備え、
前記スライド部が前記第1状態にある場合において、前記流路の一部は、前記スライド部を挟んで互いに並んでいる第1流路及び第2流路になる、樹脂成型用金型が提供される。
【0007】
また本発明によれば、
成型空間が形成される本体部を備え、前記成型空間に配置されたインサート部材を、熱硬化性樹脂を含む成形材料を用いて封止するための樹脂成型用金型が使用される樹脂成型品の製造方法であって、
前記成形材料を注入する注入口と前記成型空間を繋ぐ流路が、前記本体部に形成され、
前記樹脂成型用金型は、前記流路内に位置している状態である第1状態と、前記流路から退避している状態である第2状態とを、前記本体部内をスライドすることにより切り替え可能なスライド部をさらに備え、
前記スライド部が前記第1状態にある場合において、前記流路の一部は、前記スライド部を挟んで互いに並んでいる第1流路及び第2流路になり、
前記スライド部をスライドさせ、前記第1状態とするスライド部配置工程と、
前記成形材料を前記注入口から前記第1流路及び前記第2流路を介して前記成型空間に注入し、前記成形材料を前記成型空間に充填する充填工程と、
前記成型空間内に充填された前記成形材料を加熱加圧して、前記成形材料により前記インサート部材を封止する封止工程と、
前記スライド部をスライドさせ、前記第2状態とする型開き工程と、を含む樹脂成型品の製造方法が提供される。
【0008】
また本発明によれば、
インサート部材と、
熱硬化性樹脂を含み前記インサート部材を封止している樹脂部と、を備え、
前記樹脂部は、前記インサート部材の一端側に並んでいる第1流路痕及び第2流路痕を含み、
前記第1流路痕及び前記第2流路痕が並んでいる配列方向において、前記第1流路痕は、前記インサート部材の第1領域の外側に設けられており、
前記配列方向において、前記第2流路痕は、前記第1領域の反対にある前記インサート部材の第2領域の外側に設けられている、樹脂成型品が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、樹脂成型品を簡易に離型できる金型、この金型を用いた樹脂成型品の製造方法、及び樹脂成型品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態の金型の概略斜視図である。
図2図1に示すI-I線に沿う金型の概略断面図である。
図3】第1状態におけるスライド部の斜視図である。
図4】第2状態におけるスライド部の斜視図である。
図5】第1実施形態のスライド部材の平面図の一部を示す概略図である。
図6図2のZ部分の拡大図である。
図7図6に示すII―II線に沿う金型の概略断面図である。
図8】樹脂成型品の製造方法の工程を示すフロー図である。
図9】溶融状態の成形材料を成型空間に注入する際における金型の概略断面図である。
図10】ピンを引き抜くタイミングを説明するための概略断面図である。
図11】型開き工程の詳細を示すフロー図である。
図12】ピン分離工程を説明するための概略図である。
図13】スライド部退避工程を説明するための概略図である。
図14】離型工程を説明するための概略図である。
図15】樹脂成型品の概略正面図である。
図16】第1状態における第2実施形態の金型の一部を示す概略断面図である。
図17】第1状態における第3実施形態の金型の一部を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。
【0012】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の金型1の概略斜視図である。図2は、図1に示すI-I線に沿う金型1の概略断面図である。図1及び図2を用いて、金型1について説明する。図1は、説明しやすくするため、上型11(後述する)などが記載されていない。図2は、成形材料が注入される前の状態である。DR1は、鉛直方向であり、上下方向でもある。DR3は、スライド部20(後述する)がスライドする方向である。このスライド方向は、成形材料の流れに対して交わる方向、例えば直交する方向である。DR2は、鉛直方向DR1及びスライド方向DR3が直交する方向であり、金型1の奥行方向である。奥行方向DR2の一方向は、溶融状態の成形材料が流れる方向でもある。
【0013】
金型1は、樹脂成型に用いられる。金型1は、エアーベントなどの、公知の各種の構造(不図示)を有し得る。第1実施形態において、金型1は、インジェクション成形に用いられる。金型1は、本体部10と、スライド部20と、インサート固定部30と、スライド固定部40とを備えている。本体部10は、上型11と下型12を含んでいる。第1実施形態において、上型11と下型12との一方が可動側で、他方が固定側である。
【0014】
本体部10には、注入口13と、流路14と、成型空間15が形成される。第1実施形態において、上型11には注入口13が形成されている。第1実施形態において、上型11と下型12とが合わさることにより、流路14と、成型空間15が形成される。流路14は、注入口13と成型空間15とを繋ぐ。注入口13から、溶融状態の成形材料が注入される。溶融状態の成形材料は、注入口13と、流路14と、成型空間15とをこの順に流れる。図2に示す破線矢印Mは、溶融状態の成形材料が流れる方向を示している。
【0015】
(成形材料)
成形材料は、熱硬化性樹脂を含んでいる。熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、オキセタン樹脂、マレイミド樹脂、ユリア(尿素)樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ベンゾオキサジン環を有する樹脂、シアネートエステル樹脂などが用いられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
上記熱硬化性樹脂の含有量の下限値は、成形材料全体(100質量%)に対して、例えば、20質量%、好ましくは30質量%、より好ましくは50質量%である。成形材料中の熱硬化性樹脂の含有比率を高めることで、As成形体(=成形材料を用いて、175℃、3分の成形条件で成形した成形品)の線膨張係数の変動の増大を抑制できる。一方、上記熱硬化性樹脂の含有量の上限値は、成形材料全体(100質量%)に対して、例えば、100質量%でもよい。
【0017】
第1実施形態の成形材料は、無機充填材を含むものである。
上記無機充填材としては、例えば、ガラス繊維、タルク、焼成クレー、未焼成クレー、マイカ、酸化チタン、アルミナ、シリカ、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素等が用いられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
本明細書中、数字の間に記載されている記号の「~」は、特に明示しない限り、上限値と下限値を含むことを表す。例えば、ある物質の含有量の範囲が「50質量%~85質量%」の場合、当該範囲は、上限値である85質量%を含み、下限値である50質量%を含むものとする。
【0019】
上記無機充填材の含有量は、成形材料の固形分全体に対して、例えば、50質量%~85質量%、好ましくは60質量%~83質量%、より好ましくは63質量%~72質量%である。無機充填材の含有量を上記下限値以上とすることで、As成形体の線膨張係数の変動を抑制できる。
【0020】
上記成形材料は、必要に応じて、硬化剤を含むことができる。
上記硬化剤としては、熱硬化性樹脂がフェノール樹脂の場合には、例えば、アミン系硬化剤、酸無水物硬化剤、イミダゾール化合部などが挙げられ、その中でアミン系硬化剤としてヘキサメチレンテトラミンを用いることが好ましい。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよく、含有量は、成形材料の固形分全体に対して、例えば、1質量%~15質量%、好ましくは2質量%~12質量%、より好ましくは3質量%~10質量%である。
熱硬化性樹脂がジアリルフタレート樹脂や不飽和ポリエステル樹脂の場合には、例えば、ジアルキルパーオキサイドやハイドロパーオキサイド、パーオキシエステルなどの有機過酸化物などが挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよく、含有量は、成形材料の固形分全体に対して、例えば、0.1質量%~5質量%、好ましくは0.3質量%~3質量%、より好ましくは0.5質量%~2質量%である。
【0021】
上記成形材料は、硬化助剤を含むことができる。
上記硬化助剤としては、熱硬化性樹脂がフェノール樹脂の場合には、例えば、酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、などが挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよく、含有量は、成形材料の固形分全体に対して、例えば、0.01質量%~3質量%、好ましくは0.05質量%~2質量%、より好ましくは0.1質量%~1質量%である。
【0022】
上記成形材料は、離型剤を含むことができる。
上記離型剤としては、例えば、カルナバワックス等の天然ワックス、モンタン酸エステルワックス等の合成ワックス、ステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸およびその金属塩類、ならびにパラフィン等を用いることができる。
【0023】
上記離型剤の含有量は、成形材料の固形分全体に対して、例えば、0.1質量%~3質量%、好ましくは0.3質量%~2質量%である。
【0024】
上記成形材料は、シランカップリング剤を含むことができる。
上記シランカップリング剤としては、例えば、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有アルコキシシラン化合物;γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシランなどのメルカプト基含有アルコキシシラン化合物;γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-ウレイドエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのウレイド基含有アルコキシシラン化合物;γ-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ-イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、γイソシアナトプロピルメチルジメトキシシラン、γ-イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン、γ-イソシアナトプロピルエチルジメトキシシラン、γ-イソシアナトプロピルエチルジエトキシシラン、γ-イソシアナトプロピルトリクロロシランなどのイソシアナト基含有アルコキシシラン化合物;γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有アルコキシシラン化合物;γ-ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-ヒドロキシプロピルトリエトキシシランなどの水酸基含有アルコキシシラン化合物;3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシランなどのアクリロイル基含有アルコキシシラン化合物などが挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
上記シランカップリング剤の含有量は、成形材料の固形分全体に対して、例えば、0.05質量%~2質量%、好ましくは0.1質量%~1質量%である。
【0026】
上記成形材料は、顔料を含むことができる。
上記顔料としては、例えば、カーボンブラック、ニグロシンなどの黒色顔料、弁柄、ピグメントレッドなどの赤色顔料、ピグメントイエローなどの黄色顔料、ピグメントブルーなどの青色顔料、酸化チタン、硫酸バリウムなどの白色顔料などを用いることができる。
【0027】
上記顔料の含有量は、成形材料の固形分全体に対して、例えば、0.05質量%~2質量%、好ましくは0.1質量%~1.5質量%である。
【0028】
第1実施形態の成形材料は、上述した成分以外の他の成分を含むことができる。
【0029】
この他の成分としては、例えば、有機充填材、難燃剤、耐候剤、酸化防止剤、可塑剤、滑剤、摺動剤、発泡剤が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
第1実施形態の成形材料の調製方法としては、たとえば各成分を混合した後、得られた混合物を回転ボールミルによって一定の条件下により微粉砕すること方法が挙げられる。回転ボールミルによる微粉砕の後における溶融混練工程の条件を制御することや、各成分の混合から溶融混練までのプロセスを連続的に行うこと等を行ってもよい。なお、成形材料の調製方法は、上記のものに限定されるものではない。
【0031】
(インサート部材110)
金型1は、インサート部材110を、成形材料を用いて封止するための金型である。図2に示すように、インサート部材110は、少なくとも一部が板状である。インサート部材110は、例えば、板状の基板部111と電子部品112とを含む。基板部111上には、少なくとも1つ以上の電子部品112が搭載されている。インサート部材110は、例えば、少なくとも1つ以上の電子部品112が搭載された電子制御基板である。第1実施形態において、インサート部材110は、電子部品を搭載したプリント基板、バスバー、厚銅基板、及び板金等の補強板を含む。
【0032】
成型空間15に注入された成形材料により、インサート部材110の表面全体が覆われてインサート部材110が封止される。このようにして、樹脂成型品100が成型されるが、樹脂成型品100については後述する。
【0033】
インサート部材110は、第1領域113及び第2領域114を含んでいる。第1領域113は、ある方向(例えば図2中のA方向)からインサート部材110を見たときにみえるインサート部材110の表面の領域である。第1実施形態において、第1領域113は、少なくとも一部が板状であるインサート部材110の一面である。第1実施形態において、第1領域113は、インサート部材110の上面113aである。上面113aは、鉛直方向DR1におけるインサート部材110の上側の面である。
【0034】
第2領域114は、鉛直方向DR1において、第1領域113の反対に設けられている。第2領域114は、上記A方向と反対の方向(図2中のB方向)からインサート部材110を見たときにみえるインサート部材110の表面の領域である。第1実施形態において、第2領域114は、上記一面の反対にあるインサート部材110の他面である。第1実施形態において、第2領域114は、インサート部材110の下面114aである。下面114aは、鉛直方向DR1におけるインサート部材110の下側の面である。
【0035】
インサート部材110は、樹脂成型工程において、成型空間15に配置される。インサート部材110は、インサート固定部30により、成型空間15に固定される。第1実施形態において、インサート固定部30は、複数のピン31により構成される。ピン31は、奥行方向DR2に並んで配置されている。複数のピン31は、インサート部材110を上下方向(鉛直方向DR1)から挟む。複数のピン31は、上下方向(鉛直方向DR1)から上面113aと下面114aとを押さえつける。これにより、インサート部材110は、成型空間15中を浮いたような状態になる。図2の状態において、インサート部材110は、成型空間15の周壁15aに接していない。
【0036】
(スライド部20)
図3は、第1状態におけるスライド部20の斜視図である。図4は、第2状態におけるスライド部20の斜視図である。図1から図4を用いて、スライド部20について説明する。DR3は、スライド部20が移動可能なスライド方向を示している。
【0037】
スライド部20は、スライド方向DR3に沿って移動できるように構成されている。スライド部20は、一対のスライド部材22(スライド部材22a、スライド部材22bとする)から構成されている。図3に示すように、第1実施形態において、スライド部材22a及びスライド部材22bは、中心線C1に対して左右対称に配置されている。スライド部20は、本体部10内をスライドすることにより、第1状態と第2状態とを切り替えることが可能である。
【0038】
第1状態は、スライド部20が流路14内に位置している状態である。第1状態は、スライド部20が閉じている状態である。第1状態は、一対のスライド部材22(スライド部材22a、及びスライド部材22b)が接触している状態である。図1から図3では、第1状態を示している。
【0039】
図3に示すように、スライド部20は、スライド部20が第1状態にある場合において、板状のゲート部21を有する。ゲート部21は、スライド部20のうち溶融状態の成形材料が流れる部分である。
【0040】
一対のスライド部材22(スライド部材22a、及びスライド部材22b)は、スライド部20が第1状態にある場合において成形材料が流れる部分に、板状の板状部を各々有している。第1実施形態において、スライド部材22aは、板状部22cを有しており、スライド部材22bは、板状部22dを有している。第1状態では、板状部22c、及び板状部22dが連結することにより、ゲート部21が形成される。スライド方向DR3における板状部22c(又は板状部22d)の長さをX、奥行方向DR2における板状部22c(又は板状部22d)の長さをYとすると、X/Y≦2.5であることが好ましい。
【0041】
スライド固定部40は、スライド部20が第1状態にある場合において、スライド部20を固定する。第1実施形態において、スライド固定部40は、複数のピン41により構成されている。複数のピン41は、第1状態において、スライド部20(スライド部材22a、及びスライド部材22b)を鉛直方向DR1から挟む。第1実施形態において、第1状態において、2つのピン41は、鉛直方向DR1において板状部22cを介して互いに対向しており、この鉛直方向DR1から板状部22cを挟んでいる。また、他の2つのピン41は、鉛直方向DR1において板状部22dを介して互いに対向しており、この鉛直方向DR1から板状部22dを挟む。
【0042】
スライド部20が第1状態から第2状態に切り替わるとき、図4に示すように、一対のスライド部材22は、スライド方向DR3に沿って、互いに離れるようにスライドする。第2状態は、スライド部20(スライド部材22a、及びスライド部材22b)が流路14から退避している状態である。第2状態は、スライド部20が流路14内に存在しない状態である。第2状態は、スライド部20が開いている状態である。第2状態では、一対のスライド部材22(スライド部材22a、及びスライド部材22b)が互いに離れている状態である。
【0043】
スライド部材22a、及びスライド部材22bは、スライド方向DR3に沿って移動可能なように構成されている。スライド部20が流路14から退避するとき(第1状態から第2状態に切り替わるとき)、スライド部材22aは、図4中のC方向に移動し、スライド部材22bは、図4中のD方向に移動する。
【0044】
図5は、第1実施形態のスライド部材22aの平面図の一部を示す概略図である。中心線C2は、スライド方向DR3(C方向)と平行であって、奥行方向DR2における板状部22cの中心を通る線である。第1実施形態において、板状部22cは、中心線C2(C方向)に対してαの角度で傾斜している形状を有している。傾斜角αは、0.5°以上1.0°以下が好ましい。板状部(板状部22c、板状部22d)は、一対のスライド部材22(スライド部材22a、スライド部材22b)が互いに離れてスライドする方向(図4のC方向、D方向)に対して0.5°以上1.0°以下の傾斜形状を有している。
【0045】
(第1流路14a、第2流路14b)
図6は、図2のZ部分の拡大図である。図7は、図6に示すII―II線に沿う金型1の概略断面図である。図6及び図7を用いて、第1流路14a、及び第2流路14bについて説明する。
【0046】
スライド部20が第1状態にある場合において、流路14の一部は、第1流路14a及び第2流路14bになる。流路14は、スライド部20(ゲート部21)を境に二股形状に分かれて、第1流路14a及び第2流路14bになる。
【0047】
第1流路14a及び第2流路14bは、スライド部20(板状部22c、板状部22d)を挟んで並んでいる。第1流路14a及び第2流路14bは、ゲート部21を挟んで、並んで形成されている。第1実施形態において、第1流路14a及び第2流路14bは、鉛直方向DR1に並んでいる。第1実施形態において、第1流路14a及び第2流路14bは、ゲート部21に対して、上下対称に形成される。第1流路14aは、鉛直方向DR1において、ゲート部21に対して上側に形成される。第2流路14bは、鉛直方向DR1において、ゲート部21に対して下側に形成される。
【0048】
スライド部20(ゲート部21)は、鉛直方向DR1における上側の面に上面23、及び上面23と反対側の面に設けられている下面24を有している。上面23は、鉛直方向DR1において、第1領域113(上面113a)よりも上側に設けられている。下面24は、鉛直方向DR1において、第2領域114(下面114a)よりも下側に設けられている。第1流路14aは、上面23の上側に設けられている。第2流路14bは、下面24の下側に設けられている。
【0049】
ゲート部21(板状部22c、板状部22d)の厚みTは、インサート部材110の厚みよりも大きい。鉛直方向DR1におけるゲート部21の長さは、鉛直方向DR1におけるインサート部材110(基板部111)の長さよりも大きい。鉛直方向DR1は、ゲート部21(インサート部材110)の厚み方向である。ゲート部21の厚みは、2mm以上であることが好ましい。
【0050】
図6に示すように、第1流路14aは、成形材料がインサート部材110の第1領域113(上面113a)側に流れ出るように形成される(図6中の矢印E参照)。第1流路14aは、第1流路14a及び第2流路14bが並ぶ配列方向(=鉛直方向DR1)において、第1領域113(インサート部材110の一面)の外側に形成されている。第1流路14aは、配列方向(=鉛直方向DR1)において、第1領域113(上面113a)よりも上側に形成される。
【0051】
第1実施形態において、溶融状態の成形材料は、第1流路14aにおいて、ゲート部21(上面23)に沿って流れ、第1流路14aから成型空間15に流れ出ようとする際、重力の影響により下方向に流れようとする。そして、上記成形材料の少なくとも一部は、第1流路14aよりも下に設けられた上面113aに着地することになる(図6中の矢印E参照)。このようにして、第1流路14aから成型空間15に流れ出た上記成形材料の少なくとも一部は、上面113a側を流れることになる。
【0052】
第2流路14bは、成形材料がインサート部材110の第2領域114(下面114a)側に流れ出るように形成される(図6中の矢印F参照)。第2流路14bは、配列方向(=鉛直方向DR1)において、第2領域114の外側に形成されている。第2流路14bは、配列方向(=鉛直方向DR1)において、下面114aよりも下側に形成される。
【0053】
第1実施形態において、溶融状態の成形材料は、第2流路14bにおいて、ゲート部21(下面24)に沿って流れ、第2流路14bから成型空間15に流れ出ようとする際、重力の影響により下方向に流れようとする。そして、上記成形材料の少なくとも一部は、第2流路14bよりも下にある成型空間15の周壁15a上に着地することになる(図6中の矢印F参照)。このようにして、第2流路14bから成型空間15に流れ出た上記成形材料の少なくとも一部は、下面114a側を流れることになる。第2流路14bは下面114aよりも下側に設けられているため、第2流路14bから成型空間15に流れ出る成形材料は、上面113a側に流れにくい。
【0054】
第1流路14a及び第2流路14bの開口形状は、スライド部20の厚みやインサート部材110の厚みに応じて適切に設計される。奥行方向DR2と直行する平面における、第1流路14a(第2流路14b)の開口形状(断面形状)は、略矩形状でも、略円形状でもよい。
【0055】
図7に示すように、略矩形状の第1流路14a(第2流路14b)の開口は、インサート部材110の厚みよりも薄く形成されていてもよい。なお、第1流路14a(第2流路14b)の開口は、インサート部材110の厚みと同程度に形成されていてもよい。
【0056】
また、スライド方向DR3における第1流路14a(第2流路14b)の長さは、スライド方向DR3におけるインサート部材110の長さより小さく形成されていてもよい。なお、スライド方向DR3における第1流路14a(第2流路14b)の長さは、スライド方向DR3におけるインサート部材110の長さと同程度あるいは、それよりもやや広く形成されてもよい。
【0057】
また、第1流路14a(第2流路14b)の奥行方向DR2に対する傾きは、インサート部材110の上面113aまたは下面114aに対して、略平行でもよく、やや傾斜してもよい。
【0058】
図6に示すように、第1流路14a及び第2流路14bの少なくとも一方の(奥行方向DR2に直交する平面における)断面積は、成型空間15に近づくにつれて小さくなる。第1実施形態において、第1流路14a及び第2流路14bの断面積は、成型空間15に近づくにつれて小さくなっている。第1流路14aにおいて、第1流路14aの先端部14cが、最も断面積が小さい。第2流路14bにおいて、第2流路14bの先端部14dが、最も断面積が小さい。
【0059】
鉛直方向DR1における第1流路14a(又は第2流路14b)の長さは、成型空間15に近づくにつれて小さくなっている(図6中のa2の長さは、a1の長さよりも小さい)。鉛直方向DR1における第1流路14a(又は第2流路14b)の先端部14c(先端部14d)の長さは、第1流路14a(第2流路14b)の中で最も小さい。
【0060】
図7に示すように、第1流路14a及び第2流路14bが並ぶ配列方向(=鉛直方向DR1)における、第1流路14aのうち成型空間15に最も近い部分(先端部14c)の長さd1と、配列方向における、第2流路14bのうち成型空間15に最も近い部分(先端部14d)の長さd2との合計は、0.5mm以上8.0mm以下であることが好ましい。スライド方向DR3における第1流路14a(又は第2流路14b)の長さは、例えば、50mmである。
【0061】
(樹脂成型品100の製造方法)
図8は、樹脂成型品100の製造方法の工程を示すフロー図である。図8を用いて、第1実施形態の樹脂成型品100の製造方法について説明する。
【0062】
第1実施形態の樹脂成型品100の製造方法は、成型空間15に配置されたインサート部材110を、成形材料を用いて封止するものであり、樹脂成型用の金型1が使用される。第1実施形態の樹脂成型品100の製造方法は、インサート部材110を配置するインサート部材配置工程S100と、スライド部20をスライドさせ第1状態とするスライド部配置工程S110と、注入口13から流路14(第1流路14a及び第2流路14b)を介して成型空間15に成形材料を注入し、成形材料を成型空間15に充填する充填工程S120と、成型空間15内に充填された成形材料を加熱加圧して、成形材料によりインサート部材110を封止する封止工程S130と、スライド部20をスライドさせ、第2状態とする型開き工程S140とを含む。第1実施形態において、樹脂成型品100の製造方法は、上記工程をこの順で実施する。これらを連続的に実施してもよく、公知の他の工程を、これらの工程の前後に行ってもよい。
【0063】
(インサート部材配置工程S100)
図2を用いて、インサート部材配置工程S100、及びスライド部配置工程S110について説明する。
【0064】
インサート部材配置工程S100では、インサート部材110を成型空間15中に配置するとともに、インサート部材110の上面113aおよび下面114aの少なくとも一方をインサート固定部30(=ピン31)で固定する。第1実施形態においては、上面113aおよび下面114aの両方をインサート固定部30(=ピン31)で固定している。インサート固定部30は、スライド部20が第1状態にある場合において、インサート部材110を固定する。
【0065】
インサート部材110の両側の面(上面113aおよび下面114a)を複数のピン31で固定することで、溶融状態の成形材料を充填したときに、インサート部材110の厚み方向(鉛直方向DR1)におけるインサート部材110に反りが生じることを抑制できる。ピン31として、例えば、通常の突出しピン(エジェクタピン)以外の専用ピンを配置してもよいが、インサート部材110を固定する用に突出しピンを用いてもよい。
【0066】
ピン31は、インサート部材110の一面(上面113a)および他面(下面114a)のそれぞれを、単独で固定してもよいが、複数で固定してもよい。例えば、奥行方向DR2及びスライド方向DR3において、上面113a(下面114a)の複数位置にピン31を配置することにより、上面113a(下面114a)を効果的に支えることができる。これにより、面内方向における上面113a(下面114a)の反りの発生を抑制することができる。
【0067】
なお、インサート部材110の両側に配置されたピン31の固定位置は、奥行方向DR2及びスライド方向DR3において、上面113aおよび下面114aのそれぞれで同じでもよく、異なっていてもよい。固定位置が同じ、すなわち、上面113aおよび下面114aの両側のピン31が対称に配置されることで、より効果的にインサート部材110の反りを抑制できる。
【0068】
ピン31による固定は、ピン31の先端部をインサート部材110の表面に接触させる方法が用いられる。これにより、インサート部材110の表面が厚み方向(鉛直方向DR1)に移動することを抑制できる。ピン31の先端部の形状は、適切に選択してよく、例えば、平面状でも、球面状でもよい。すなわち、ピン31の先端部は、略柱状でも、略球状または略半球状でもよい。複数のピン31において、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、局所応力によるダメージをより低減する観点から、ピン31の先端部とインサート部材110の表面との接触面積は比較的大きい方がよい。
【0069】
インサート部材配置工程S100において、複数のピン31を、インサート部材110の下面114aに配置した後、その上面113aを固定してもよく、または、下面114aおよび上面113aを同時に固定してもよい。
【0070】
(スライド部配置工程S110)
スライド部配置工程S110では、スライド部20(スライド部材22a、スライド部材22b)を、スライド方向DR3に沿って、流路14に向けて可動させ、スライド部20を流路14中に配置し、ゲート部21を形成させる。そして、ピン41で鉛直方向DR1からスライド部20(スライド部材22a、スライド部材22b)を挟んで、スライド部20を固定する。
【0071】
鉛直方向DR1において、スライド部20の両側の面を複数のピン41で固定することで、溶融状態の成形材料をゲート部21から流したときに、スライド部20の厚み方向(鉛直方向DR1)におけるスライド部20に反りが生じることを抑制できる。ピン41として、例えば、通常の突出しピン(エジェクタピン)以外の専用ピンを配置することが好ましい。
【0072】
ピン41は、スライド部20の一面(上面23)および他面(下面24)のそれぞれを、単独で固定してもよいが、複数で固定してもよい。例えば、スライド方向DR3において、上面23(下面24)の複数位置にピン41を配置することにより、上面23(下面24)を効果的に支えることができる。これにより、スライド部20の面内方向における上面23(下面24)の反りの発生を抑制することができる。
【0073】
なお、スライド部20の両側に配置されたピン41の固定位置は、スライド方向DR3において、上面23および下面24のそれぞれで同じでもよく、異なっていてもよい。固定位置が同じ、すなわち、上面23および下面24の両側のピン41が対称に配置されることで、より効果的にスライド部20の反りを抑制できる。
【0074】
ピン41による固定は、ピン41の先端部をスライド部20の表面に接触させる方法が用いられる。これにより、スライド部20の表面が厚み方向(鉛直方向DR1)に移動することを抑制できる。ピン41の先端部の形状は、適切に選択してよいが、例えば、平面状でも、球面状でもよい。すなわち、ピン41の先端部は、略柱状でも、略球状または略半球状でもよい。複数のピン41において、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、局所応力によるダメージをより低減する観点から、ピン41の先端部とスライド部20の表面との接触面積は比較的大きい方がよい。
【0075】
スライド部配置工程S110において、複数のピン41を、スライド部20の下面24に配置した後、その上面23を固定してもよく、または、下面24および上面23を同時に固定してもよい。
【0076】
(充填工程S120)
図9は、溶融状態の成形材料を成型空間15に注入する際における金型1の概略断面図である。図9では、溶融状態の成形材料をハッチングで図示している。図9を用いて、充填工程S120、及び封止工程S130について説明する。
【0077】
充填工程S120では、溶融状態の成形材料を上型11の注入口13から注入して、成型空間15を充填する。溶融状態の成形材料は、流路14(第1流路14a及び第2流路14b)を通って、成型空間15中に注入される。
【0078】
(封止工程S130)
続いて、封止工程S130において、成型空間15内に充填された成形材料を加熱加圧して、成形材料によりインサート部材110を封止する。成型空間15にかかる内圧(金型1に加えられた成形圧)を適切に調整することで、インサート部材110の反りを適切に制御できる。
【0079】
封止工程S130における成型空間15にかかる内圧の上限値は、成形方法に応じて適切に選択できる。第1実施形態における成形方法としては、公知のものが用いられるが、例えば、トランスファー成形、インジェクション成形またはコンプレッション成形などが使用できる。
【0080】
トランスファー成形の場合、成型空間15にかかる内圧の上限値は、例えば、6MPa、好ましくは5MPa、より好ましくは4MPaである。成形圧を比較的低圧とすることで、インサート部材110の反りを抑制できる。
【0081】
インジェクション成形の場合、成型空間15にかかる内圧の上限値は、例えば、50MPa、好ましくは10MPa、より好ましくは6MPaである。成形圧を比較的低圧とすることで、インサート部材110の反りを抑制できる。
【0082】
一方、成型空間15にかかる内圧の下限値は、特に限定されないが、例えば、0.5MPa、好ましくは1.0MPa、より好ましくは2.0MPaでもよい。これにより、成形材料の成形性を向上できる。
【0083】
図10は、ピン31を引き抜くタイミングを説明するための概略断面図である。封止工程S130において、インサート部材110を固定したピン31は、成形材料が固まる前に、インサート部材110から分離してもよい(ピン31の引き抜きを行ってもよい)。この場合、成型空間15に充填された樹脂部分にピン穴16が形成されることになる。ピン穴16は、上記樹脂部分のうちピン31が挿入されていた部分である。ピン穴16は、ピン31の下部と略同じ形状である。
【0084】
ピン31をインサート部材110から分離させた後、封止工程S130のうちの任意のタイミングで成型空間15(上記樹脂部分)に背圧をかけることで、固まる前の成形材料をピン穴16に充填させ、ピン穴16をふさいでもよい。なお、背圧の範囲は1MPa~10MPaが好ましい。
【0085】
なお、封止工程S130ではなく、充填工程S120において、ピン31をインサート部材110から分離させる構成でもよい。この場合、溶融状態の成形材料を成型空間15に充填しつつ、適切なタイミングで、徐々にピン31をインサート部材110から分離してもよい。
【0086】
(型開き工程S140)
図11は、型開き工程S140の詳細を示すフロー図である。型開き工程S140は、樹脂成型品100を取り出す前に、実施する工程である。型開き工程S140は、ピン分離工程S141、スライド部退避工程S142、及び離型工程S143を有する。
【0087】
図12は、ピン分離工程S141を説明するための概略図である。ピン分離工程S141では、複数のピン41を本体部10(上型11及び下型12)から分離させる。複数のピン41をスライド部20(ゲート部21)から分離させることにより、スライド部20がスライド方向DR3に移動可能になる。
【0088】
封止工程S130の後、本体部10には、成型体90が成型される。成型体90は、樹脂成型品100と余剰部101とを含む。第1実施形態において、樹脂成型品100は、インサート部材110を成形材料により封止したものであり、実際の製品になる部分である。余剰部101は製品とは関係のない、余剰の部分である。余剰部101は、流路14の一部が樹脂成型されたものである。
【0089】
図13は、スライド部退避工程S142を説明するための概略図である。ピン分離工程S141において複数のピン41を本体部10(上型11)から分離させた後、スライド部退避工程S142において、スライド部20をスライド方向DR3に退避(移動)させる。スライド部20が退避した後、成型体90には空洞部102が形成されることになる。空洞部102は、ゲート部21の形状と略同じ形状を有している。
【0090】
図14は、離型工程S143を説明するための概略図である。離型工程S143では、上型11から下型12を離す(図14中の矢印G参照)。第1実施形態において、上型11は固定されており、下型12は可動できるように構成されている。上型11から下型12を離すことにより、余剰部101の一部が分離して、スプルー部104が上型11に残る。スプルー部104は、離型工程S143の後に上型11から上方向に取り外される。上型11から下型12を離し、さらにスプルー部104を余剰部101から分離させることにより、成型体90を金型1(本体部10)から取り出せるようになる。成型体90は、切断部103で、樹脂成型品100と余剰部101とを分離することができる。成型体90から余剰部101を切り離すことにより、樹脂成型品100が成型される。
【0091】
(樹脂成型品100)
図15は、樹脂成型品100の概略正面図である。第1実施形態において、樹脂成型品100は、エンジンや各種車載機器等を制御するために用いられる。樹脂成型品100の具体例は、例えば、エンジンルームに搭載されるECU(エンジンコントロールユニット)やATCU(オートマチックトランスミッションコントロールユニット)である。
【0092】
樹脂成型品100は、インサート部材110と、樹脂部120とを含んでいる。樹脂部120は、熱硬化性樹脂を含んでいる。樹脂部120は、インサート部材110を封止している。溶融状態の成形材料は、加熱加圧されることで硬化し、樹脂部120となる。
【0093】
樹脂部120は、第1流路痕121及び第2流路痕122を含んでいる。第1流路痕121及び第2流路痕122は、インサート部材110の奥行方向DR2における一端123側に並んでいる。第1実施形態において、インサート部材110の奥行方向DR2における他端124側は、平面状の形状を有している。
【0094】
第1流路痕121及び第2流路痕122が並んでいる配列方向(鉛直方向DR1)において、第1流路痕121は、インサート部材110の第1領域113の外側に設けられている。第1流路痕121は、鉛直方向DR1において、インサート部材110(上面113a)よりも上側に設けられている。
【0095】
上記配列方向(鉛直方向DR1)において、第2流路痕122は、第2領域114の外側に設けられている。第2流路痕122は、鉛直方向DR1において、インサート部材110(下面114a)よりも下側に設けられている。
【0096】
配列方向(鉛直方向DR1)における第1流路痕121と第2流路痕122との間の長さe(図15参照)は、配列方向(鉛直方向DR1)におけるインサート部材110の長さ(インサート部材110(基板部111)の厚み)よりも大きい。
【0097】
図6に示すように、第1実施形態における金型1では、スライド方向DR3にスライド可能なスライド部20を備え、スライド部20が第1状態にある場合において、流路14の一部は、スライド部20を挟んで互いに並んでいる第1流路14a及び第2流路14bになる。封止工程S130の後、スライド部20をスライド方向DR3にスライドさせ、スライド部20を、流路14が形成される空間から退避させることで、成型体90を金型1から簡易に離型することができるようになる。
【0098】
また仮に、成型空間に繋がる流路が1つの場合、溶融状態の成形材料に押されてインサート部材が動いてしまい、成形材料がインサート部材の片側の面に偏った状態で樹脂成型されてしまう場合がある(例えば、インサート部材の上面側は樹脂部分が薄く、インサート部材の下面側は樹脂部分が厚く成型される)。また、樹脂圧でインサート部材が押さえつけられることによりインサート部材に反りが発生し、インサート部材を損傷させる場合もある。
【0099】
しかし、第1実施形態における金型1では、成型空間15に配置されたインサート部材110に対して、2つの流路(第1流路14a及び第2流路14b)から成形材料を流す構成となっている。これにより、溶融状態の成形材料がインサート部材110をかわしながら、成型空間15中のインサート部材110の両面に対してバランスよく、成形材料を充填させることができる。そのため、成形材料がインサート部材110の片側の面に偏った状態で樹脂成型されてしまう事態を抑制することができる。さらに、樹脂圧がインサート部材110の両面側からバランスよく作用しやすくなるため、インサート部材110の反りの発生も抑制することができる。そのため、基板を傷めずに樹脂成型品100を成型することができる。
【0100】
また、第1流路14aは、成形材料がインサート部材110の第1領域113側に流れ出るように形成されており、第2流路14bは、成形材料が第2領域114側に流れ出るように形成されている。インサート部材110の両面に成形材料が流れ出るように構成することにより、より効果的に、成型空間15に成形材料をバランスよく充填させることができる。そのため、成形材料がインサート部材110の片側の面に偏った状態で樹脂成型されてしまう事態をより効果的に抑制することができる。さらに、インサート部材110の反りの発生もより効果的に抑制することができる。
【0101】
第1領域113は、少なくとも一部が板状であるインサート部材110の一面であり、第2領域114は、一面の反対にあるインサート部材110の他面である。これにより、インサート部材110の両面に、溶融状態の成形材料を流しやすくなる。
【0102】
第1流路14a及び第2流路14bが並ぶ配列方向において、第1流路14aは、第1領域113の外側に形成されている。上記配列方向において、第2流路14bは、第2領域114の外側に形成されている。これにより、成型空間15中のインサート部材110の両面に対してよりバランスよく、成形材料を充填させることができる。
【0103】
第1領域113は、少なくとも一部が板状であるインサート部材110の上面113aであり、第1流路14aは、上面113aよりも上側に形成されている。これにより、溶融状態の成形材料をインサート部材110の上面113aに確実に流すことができる。そのため、成型空間15中のインサート部材110の両面に対してよりバランスよく、成形材料を充填させることができる。
【0104】
第2領域114は、インサート部材110の下面114aであり、第2流路14bは、下面114aよりも下側に形成されている。これにより、溶融状態の成形材料をインサート部材110の下面114aに確実に流すことができる。
【0105】
第1流路14a及び第2流路14bの少なくとも一方の断面積は、成型空間15に近づくにつれて小さくなる。成型空間15に近い部分における第1流路14a及び第2流路14bの断面積を小さくすることにより、特別な処理をすることなく、簡易に成型体90から樹脂成型品100を切り離しやすくなる(図14及び図15参照)。そのため、樹脂成型品100の成型工数を抑制することができる。
【0106】
図7に示すように、配列方向(鉛直方向DR1)における、第1流路14aのうち成型空間15に最も近い部分の長さd1と、配列方向(鉛直方向DR1)における、第2流路14bのうち成型空間15に最も近い部分の長さd2との合計は、0.5mm以上8.0mm以下である。第1流路14a及び第2流路14bのうち成型空間15に繋がる部分の断面積を一定値以上確保することにより、成形材料の充填性が向上するため、成形圧を下げる事ができる。したがって、d1とd2との合計を、0.5mm以上8.0mm以下とすることにより、樹脂成型品100の、成型体90からの切り離しやすさを確保しつつ、成形圧を下げる事ができる。
【0107】
図6に示すように、ゲート部21の厚みをインサート部材110の厚みよりも大きくすることにより、より効果的に、溶融状態の成形材料をインサート部材110の両面側に流すことができる。
【0108】
また、ゲート部21の厚みTを、2mm以上とすることにより、スライド部20(ゲート部21)の強度を確保することができる。
【0109】
図3に示すように、スライド部20が一対のスライド部材22から構成されることにより、成型体90を金型1からより簡易に離型することができるようになる。
【0110】
図5に示すように、板状部22cは、スライド方向DR3(C方向)に対して0.5°以上1.0°以下の傾斜形状を有している。スライド部20に抜き勾配を設けることにより、成型体90からスライド部20を簡易に抜くことができる。これにより、成型体90を金型1からより簡易に離型することができるようになる。
【0111】
図2に示すように、スライド部20を固定するスライド固定部40(ピン41)を備えることにより、樹脂圧によって、ゲート部21が鉛直方向DR1に撓む事を抑制することができる。これにより、溶融状態の成形材料を安定的に成型空間15に流すことが可能になる。
【0112】
インサート部材110を固定するインサート固定部30(ピン31)を備えることにより、樹脂圧の影響により、インサート部材110が成型空間15中で動くことを抑制することができる。これにより、充填工程S120及び封止工程S130において、インサート部材110を成型空間15中に安定的に保持することができる。
【0113】
インサート部材110は、少なくとも1つ以上の電子部品112が搭載された電子制御基板である。本発明を適用することにより、電子制御基板を樹脂封止する際に、電子制御基板を傷めることを抑制することができる。
【0114】
第1実施形態の樹脂成型品100の製造方法は、インサート部材110を配置するインサート部材配置工程S100と、スライド部20をスライドさせ第1状態とするスライド部配置工程S110と、注入口13から第1流路14a及び第2流路14bを介して成型空間15に成形材料を注入し、成形材料を成型空間15に充填する充填工程S120と、成型空間15内に充填された成形材料を加熱加圧して、成形材料によりインサート部材110を封止する封止工程S130と、スライド部20をスライドさせ、第2状態とする型開き工程S140とを含む。本発明における製造方法を適用することにより、成型体90を金型1から簡易に離型することができるようになる。
【0115】
図15に示すように、第1実施形態における樹脂成型品100は、インサート部材110と、第1流路痕121及び第2流路痕122を含む樹脂部120とを備えている。樹脂成型品100を上記のような構成とすることにより、インサート部材110を樹脂封止する際に、インサート部材110を傷めることを抑制することができる。
【0116】
鉛直方向DR1において、第1流路痕121と第2流路痕122との間の長さは、インサート部材110の長さよりも大きい。これにより、インサート部材110の両面に対してバランスよく樹脂部120を設けることができる。
【0117】
[第2実施形態]
図16は、第1状態における第2実施形態の金型1の一部を示す概略断面図である。第1実施形態と異なり、第2実施形態のスライド部20は、スライド方向DR3だけでなく、第1流路14aと第2流路14bが並ぶ配列方向(鉛直方向DR1)にも移動可能であるように構成されている。
【0118】
図16では、第1状態において、スライド部20は、鉛直方向DR1において、図6で示す第1実施形態1のスライド部20よりも、上側に配置されている。鉛直方向DR1において、第2実施形態の先端部14cの長さf1は、第2実施形態の先端部14dの長さf2よりも小さい。
【0119】
第1状態において、上面23は、鉛直方向DR1において、上面113a(第1領域113)よりも上側に設けられている。第2実施形態において、下面24は、鉛直方向DR1において、下面114a(第2領域114)よりも下側に設けられているが、下面24は、鉛直方向DR1において、下面114a(第2領域114)よりも上側に設けられていてもよい。
【0120】
スライド部20が、スライド方向DR3だけでなく鉛直方向DR1にも移動可能であることにより、第1流路14a及び第2流路14bの成型空間15に繋がる部分の断面積の大きさ(=f1、f2の長さ)を調整することができる。これにより、上面113a側に流す成形材料の量及び下面114a側に流す成形材料の量を調整することができる。そのため、樹脂成型品100の製造条件を簡易に微調整することができる。したがって、効果的に樹脂成型品100を成形することができる。
【0121】
[第3実施形態]
図17は、第1状態における第3実施形態の金型1の一部を示す概略断面図である。第1実施形態と異なり、第3実施形態のインサート部材110は、第1領域113及び第2領域114が楕円状の形状である。
【0122】
第3実施形態においても、第1流路14aは、成形材料がインサート部材110の第1領域113(上面113a)側に流れ出るように形成される(図17中の矢印E参照)。第2流路14bは、成形材料がインサート部材110の第2領域114(下面114a)側に流れ出るように形成される(図17中の矢印F参照)。このように、インサート部材110の形状は、平板状に限られない。
【0123】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0124】
実施形態において、スライド部20は、一対のスライド部材22により構成されていたが、スライド部20は一部品で構成されていてもよい。
【0125】
実施形態において、インサート部材110をピン31により成型空間15に保持していたが、本体部10(上型11、下型12)によって、インサート部材110を成型空間15に保持する構成であってもよい。
【0126】
実施形態において、いわゆる縦型インジェクション成形に本発明を適用するものとして記載したが、本発明は、いわゆる横型インジェクション成形にも適用可能である。横型インジェクション成形の場合、第1流路14a及び第2流路14bは、鉛直方向DR1及びスライド方向DR3に直交する奥行方向DR2に並んで形成されていてもよい。
【0127】
実施形態において、板状部22c,22dは、スライド方向DR3に対して傾斜形状を有していたが、傾斜形状を有していなくてもよい(抜き勾配が0°でもよい)。
【符号の説明】
【0128】
1 金型
10 本体部
11 上型
12 下型
13 注入口
14 流路
14a 第1流路
14b 第2流路
15 成型空間
20 スライド部
21 ゲート部
22 スライド部材
30 インサート固定部
31 ピン
40 スライド固定部
41 ピン
90 成型体
100 樹脂成型品
110 インサート部材
113 第1領域
113a 上面
114 第2領域
114a 下面
120 樹脂部
121 第1流路痕
122 第2流路痕
DR1 鉛直方向
DR2 奥行方向
DR3 スライド方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
図13
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図15
図16
図17