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  • 特開-プレートコンパクタ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048820
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】プレートコンパクタ
(51)【国際特許分類】
   E01C 19/34 20060101AFI20240402BHJP
【FI】
E01C19/34 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154936
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000182384
【氏名又は名称】酒井重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】古跡 哲也
(72)【発明者】
【氏名】扇谷 雅人
【テーマコード(参考)】
2D052
【Fターム(参考)】
2D052AA03
2D052AD15
2D052BC06
2D052BC11
2D052CA07
2D052CA21
(57)【要約】
【課題】輾圧部の輾圧面におけるアスファルト付着防止剤の保持力を向上させたプレートコンパクタを提供する。
【解決手段】プレートコンパクタは、輾圧部11を備えている。輾圧部11の輾圧対象物に接触する輾圧面111Aには、複数の溝114が設けられている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
輾圧部を備えるプレートコンパクタであって、
前記輾圧部の輾圧対象物に接触する輾圧面には、複数の溝が設けられている、プレートコンパクタ。
【請求項2】
前記輾圧面は、前記プレートコンパクタの進行方向に延びており、
前記複数の溝は、前記輾圧面の長手方向における中央よりも後方に設けられている、請求項1に記載のプレートコンパクタ。
【請求項3】
原動機と
前記原動機の動力により前記輾圧部を振動させる起振部と、
を有し、
前記輾圧部は、
前記起振部を支持する前部と、
前記原動機を支持する後部と、を有し、
前記溝は、前記輾圧面のうち前記後部の下面を形成する領域に設けられている、請求項1に記載のプレートコンパクタ。
【請求項4】
前記溝は、前記プレートコンパクタの進行方向に沿って延びている、請求項1に記載のプレートコンパクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、輾圧部を備えるプレートコンパクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、起振部によって輾圧部を振動させながら走行することにより、アスファルト合材で形成された舗装体を締め固めるプレートコンパクタを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平07-113209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、アスファルト合材は、砕石や砂などと共にアスファルトを混ぜ合わせたものである。アスファルトは粘着性が高いため、アスファルト合材が輾圧部の下面にある輾圧面に付着するという問題がある。
【0005】
そこで、従来から、輾圧面に液体のアスファルト付着防止剤を塗布することにより、輾圧面とアスファルト合材との間に皮膜を形成し、アスファルト合材の付着を防いでいる。しかしながら、アスファルト付着防止剤は液体であり輾圧面から落下しやすく、輾圧面に頻繁にアスファルト付着防止剤を塗布する必要がある。
【0006】
本開示の目的は、輾圧部の輾圧面におけるアスファルト付着防止剤の保持力が向上されたプレートコンパクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための一態様は、輾圧部を備えるプレートコンパクタであって、
前記輾圧部の輾圧対象物に接触する輾圧面には、複数の溝が設けられている。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、輾圧部の輾圧面におけるアスファルト付着防止剤の保持力が向上されたプレートコンパクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係るプレートコンパクタの構成を例示する側面図である。
図2図1の輾圧部の構成を例示する斜視図である。
図3図2における線III-IIIに沿う断面を矢印方向から見た構成を示す断面図である。
図4図2の輾圧部の底面図である。
図5図2の輾圧面を含む輾圧部の部分断面図である。
図6】輾圧部の変形例を示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
添付の図面を参照しつつ、実施形態例について以下詳細に説明する。以下の説明に用いられる各図面においては、各要素を認識可能な大きさとするために縮尺が適宜変更されている。図面において、矢印Uは、図示された構造の上方向を示している。矢印Dは、図示された構造の下方向を示している。矢印Fは、図示された構造の前方向を示している。矢印Bは、図示された構造の後方向を示している。矢印Rは、図示された構造の右方向を示している。矢印Lは、図示された構造の左方向を示している。これらの方向は、図1に示されたプレートコンパクタ10について設定された相対的な方向であり、プレートコンパクタ10の進行方向を前方向とする。
【0011】
図1は、本実施形態に係るプレートコンパクタ10の構成を例示している。プレートコンパクタ10は、輾圧対象物の上を振動しながら走行し、輾圧対象物を締め固める装置である。輾圧対象物は、例えば、砂、砕石、石粉、およびアスファルトを混合したアスファルト合材で形成された舗装体である。
【0012】
図1に例示されるように、プレートコンパクタ10は、輾圧部11、原動機12、ベース部13、起振部14、連結部15、およびハンドル16を有している。
【0013】
輾圧部11は、輾圧対象物に接触する金属製の部材である。例えば、輾圧部11は、鉄板を加工することにより、あるいは、鋳造により、形成される。輾圧部11は、起振部14を支持する前部11Aと、原動機12を支持する後部11Bとを有している。
【0014】
原動機12は、動力を生じさせる駆動源であり、例えばエンジンである。図1に例示されるように、原動機12の出力軸121には駆動プーリ122が取り付けられている。
【0015】
ベース部13は、原動機12を輾圧部11に固定する部位である。ベース部13は、輾圧部11の後部11Bの上に接続されている。ベース部13は、配置部131と、側板部132とを備えている。配置部131の上面には、原動機12が固定される。側板部132は、配置部131の左右端から下方に延び、且つ、前後方向に沿って延びている。側板部132は、輾圧部11の補強リブ113と緩衝部材(図示せず)を介してボルト133により締結されている。
【0016】
起振部14は、原動機12の動力により輾圧部11を振動させるように構成されている。起振部14は、起振軸141を有している。起振軸141の端部には従動プーリ142が取り付けられている。起振部14はさらに、図2に例示されるように、起振ケース143を有している。本例においては、起振ケース143は、輾圧部11と一体的に形成されている。
【0017】
図1に例示されるように、連結部15は、駆動プーリ122と従動プーリ142とを回転可能に連結する部材である。例えば、連結部15は、駆動プーリ122と従動プーリ142との間に巻回されている無端ベルトである。連結部15により、原動機12の出力軸121の回転駆動力が起振部14の起振軸141に伝達され、起振部14が振動する。起振部14の振動が輾圧部11に伝わり、振動する輾圧部11の輾圧面111Aにより輾圧対象物が締め固められる。
【0018】
ハンドル16は、プレートコンパクタ10の進行方向を操作するために作業者により把持される。ハンドル16の基端部は、ベース部13の後部に接続されている。ハンドル16は、図1の二点鎖線で示すように、前後方向に傾倒可能に構成されている。
【0019】
図2図3に例示されるように、輾圧部11は、基板部111、縁部112、および補強リブ113を有している。基板部111は、プレートコンパクタ10の進行方向(本例においては、前後方向)に延びる略矩形状の板状の部材である。基板部111の下面は、輾圧対象物に接触する。換言すれば、基板部111の下面は、輾圧対象物に接触する輾圧面111Aを形成している。輾圧面111Aは、プレートコンパクタ10の進行方向に延びている。
【0020】
縁部112は、基板部111の外周縁から上方に向けて延びている。縁部112は、輾圧部11の上面にアスファルト合材などが入り込むことを抑制する。補強リブ113は、前後方向に板状に延設されるとともに、基板部111から立ち上がるように形成されている。補強リブ113を設けることにより、進行方向に延びる基板部111が撓みにくくされている。
【0021】
図3図4に例示されるように、輾圧面111Aには、複数の溝114が設けられている。複数の溝114は、例えば、溝が形成された鋳型を用いて輾圧部11を鋳造することにより形成される。あるいは、複数の溝114は、鉄板加工または鋳造により形成された輾圧部11の輾圧面111Aに、平面ホーニングなどの加工方法を施す、あるいは、グラインダー、ベルトサンダーやヤスリを用いて研削することにより、形成されうる。
【0022】
各溝114は、プレートコンパクタ10の進行方向に沿って延びるように形成される。本明細書において用いられる「進行方向に沿って延びている」という表現は、プレートコンパクタ10の進行方向に対して90度以外の角度で交差する方向に延びることを言う。本例においては、各溝114は、プレートコンパクタ10の進行方向に平行に伸びている。
【0023】
複数の溝114は、輾圧面111Aのうち、輾圧部11の後部11Bの下面を形成する領域に設けられている。本例においては、複数の溝114は、輾圧面111Aの長手方向における中央よりも後方に設けられている。換言すれば、輾圧面111Aの長手方向における長さをLとすると、輾圧面111Aの前端から長手方向における長さL/2の位置よりも後方に設けられている。
【0024】
複数の溝114は、長手方向に直交する方向(本例においては、左右方向)に間隔Pずつ離れて形成されている。間隔Pは、例えば1~0.25mmである。例えば5mm幅当たり5本から20本の溝114が形成され、輾圧面111Aには合計300~1200本程度の溝114が形成される。なお、図4においては、作図の都合上、実際の本数よりも少ない数で溝114を示している。
【0025】
各溝114は、例えば図5に示されるように、長手方向に直交する断面形状が略半円を有するように形成されうる。半円断面形状の半径R1は、例えば100μm~200μmである。なお、溝114の形状、間隔、本数、およびサイズは、これらの例に限定されない。たとえば、ヤスリなどの研削で溝114を形成した場合には、図5に示したようなきれいな半円形状とならない場合がある。
【0026】
本実施形態に係るプレートコンパクタ10によれば、輾圧面111Aにアスファルト付着防止剤を塗布する際、輾圧面111Aに形成された溝114にアスファルト付着防止剤が入り込み、この溝114内にアスファルト付着防止剤が一時的に貯留される。輾圧対象物を締め固める過程で、溝114内に貯留されたアスファルト付着防止剤を少しずつ輾圧対象物に供給することができる。このため、輾圧面111Aにおけるアスファルト付着防止剤の保持力が向上し、輾圧面111Aにアスファルト付着防止剤を塗布する回数を減らすことができる。
【0027】
本実施形態においては、溝114は、輾圧面111Aの長手方向における中央よりも後方に形成されている。ここで、プレートコンパクタ10は、輾圧面111Aの長手方向における中央よりも前方の領域を輾圧対象物から浮かせると共に、輾圧面111Aの長手方向における中央よりも後方の領域を輾圧対象物に接触させて施工する場合がある。例えば、重点的に締め固める場合や、進行方向を変更する場合などは、操作性の観点から、輾圧面111Aの前方の領域を輾圧対象物から浮かせる回数も多くなる。したがって、輾圧面111Aの後方の領域はアスファルト合材が特に付着しやすくなる。しかしながら、本実施形態に係るプレートコンパクタ10によれば、輾圧面111Aの長手方向における中央よりも後方に溝114が設けられているので、アスファルト合材が特に付着しやすい輾圧面111Aの後方の領域においてアスファルト付着防止剤の保持量が増加し、輾圧面111Aへのアスファルト合材の付着を抑制できる。
【0028】
また、本実施形態においては、溝114は、輾圧面111Aのうち、輾圧部11の原動機12を支持する後部11Bの下面を形成する領域に設けられている。ここで、原動機12は他の部位に比べて重いため、輾圧面111Aのうち、原動機12を支持する後部11Bの下面が締固めに効率的に寄与する。このため、輾圧面111Aのうち、後部11Bの下面が締固めに使用されることが多い。そこで輾圧面111Aにおける輾圧部11の後部11Bの下面を形成する領域に溝114を設けることにより、効率的に輾圧面111Aへのアスファルト合材の付着を防止できる。
【0029】
なお、本例においては、溝114は、輾圧面111Aのうち後部11Bの下面を形成する領域に形成されている。上述した例では、輾圧面111Aのうち後部11Bの下面を形成する領域が、輾圧部11における原動機12を支持する後部11Bの下面を形成する領域であるとして説明した。すなわち、本例においては、原動機12を支持する部位の前端が長手方向の中央付近に位置しているので、輾圧面111Aの後部11Bを、輾圧面111Aの長手方向について原動機12を支持する部位の前端よりも後方の部位として定義した。
しかしながら、原動機12を支持する部位の前端が、輾圧面111Aの長手方向の中央よりも前方に位置する場合(この場合、後部11Bは、輾圧面111Aの長手方向の中央よりも前方の位置から後方の部位として定義される)には、溝114は、輾圧面111Aの下面のうち、長手方向の後方から長手方向の中央よりも前方まで延びていてもよい。あるいは、原動機12を支持する部位の前端が輾圧面111Aの長手方向の中央よりも後方に位置する場合(この場合、後部11Bは、輾圧面111Aの長手方向の中央よりも後方の位置から後方の部位として定義される)には、溝114は、輾圧面111Aの下面のうち、長手方向の後方から延びて長手方向の中央よりも後方で途切れていてもよい。
【0030】
また、本実施形態においては、溝114は、プレートコンパクタ10の進行方向に沿って延びているので、溝114内に貯留されたアスファルト付着防止剤が輾圧対象物に過剰に供給されにくい。また、溝114内に細かい砂利が入り込んだ場合でも、砂利はプレートコンパクタ10の進行に伴い溝114の後方から排出され、溝114が細かい砂利で詰まりにくい。
【0031】
上記の各実施形態は、本発明の理解を容易にするための例示にすぎない。上記の各実施形態に係る構成は、本発明の趣旨を逸脱しなければ、適宜に変更・改良されうる。
【0032】
プレートコンパクタ10の構成は、図1に例示されている構成に限定されない。例えば、原動機12や起振部14は、図1の構成とは異なる構成を備えうる。
【0033】
輾圧部11は、図4に示すように輾圧面111Aに複数の溝114が形成されていれば、図2の構成とは異なる構成を備えうる。例えば、輾圧部11に起振部14の起振ケース143が一体化されていない構成も採用されうる。
【0034】
上記の実施形態において、複数の溝114は、図4に示すように輾圧部11の長手方向に平行に形成されている。すなわち、複数の溝114は、プレートコンパクタ10の進行方向に平行に形成されている。しかしながら、複数の溝114は、輾圧部11の長手方向に対して傾斜するように形成されうる。複数の溝114は、同じ方向に形成されてもよく、異なる方向に形成されてもよい。あるいは、複数の溝114は、図6に例示されるように、輾圧部11の幅方向の中心を通り長手方向に平行な中心線CLを挟んで対称的に傾斜するように形成されてもよい。
【0035】
上記の実施形態において、複数の溝114は、一定の間隔Pずつ離れて形成されている。しかしながら、複数の溝114は、配列間隔が一定とはならないように形成されてもよい。
【0036】
上記の実施形態において、複数の溝114は、輾圧面111Aのうち、輾圧部11の後部11Bの下面を形成する領域であり、且つ、輾圧面111Aの長手方向における中央よりも後方に形成されている。しかしながら、複数の溝114は、例えば図6に示すように、輾圧面111Aの長手方向の全長に渡って形成されてもよい。
【0037】
上記の実施形態において、基板部111の下面の全領域は、輾圧対象物に接触する輾圧面111Aを形成している。しかしながら、基板部111の下面の一部の領域が、輾圧対象物に接触する輾圧面111Aを形成するように構成されてもよい。あるいは、縁部112の下面も、基板部111の下面と共に輾圧面111Aを形成するように構成されてもよい。
【符号の説明】
【0038】
10:プレートコンパクタ
11:輾圧部
11A:前部
11B:後部
111:基板部
111A:輾圧面
112:縁部
113:補強リブ
114:溝
12:原動機
121:出力軸
122:駆動プーリ
13:ベース部
131:配置部
132:側板部
133:ボルト
14:起振部
141:起振軸
142:従動プーリ
143:起振ケース
15:連結部
16:ハンドル
図1
図2
図3
図4
図5
図6