(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048821
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】リニアガイド
(51)【国際特許分類】
F16C 29/06 20060101AFI20240402BHJP
F16C 33/66 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
F16C29/06
F16C33/66 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154941
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】森山 瞬
(72)【発明者】
【氏名】深瀬 幸介
【テーマコード(参考)】
3J104
3J701
【Fターム(参考)】
3J104AA03
3J104AA24
3J104AA36
3J104AA65
3J104AA69
3J104AA74
3J104AA76
3J104BA33
3J104CA23
3J104CA24
3J104DA05
3J104EA01
3J701AA12
3J701AA44
3J701AA64
3J701CA08
3J701CA14
3J701CA15
3J701EA63
3J701EA66
3J701FA32
3J701GA31
(57)【要約】
【課題】案内レール及び転動体の接触部に長期間に亘って安定して潤滑剤を供給することができるリニアガイドを提供する。
【解決手段】スライダ本体21に対向するエンドキャップ30の当接面32aに配設された油路ユニット50は、スライダ本体21との間に画成された潤滑油供給路71と、エンドキャップ30との間に画成されたグリース供給路81と、を有する。潤滑油供給路71は、潤滑油供給路71の連通経路に沿うようにスライダ本体21との対向面50aに突設されてスライダ本体21に当接する凸条部51と、凸条部51に隣接して形成されて潤滑油77のメニスカスを形成するための給油溝75をスライダ本体21の端面21a及び凸条部51とともに画成する段部53と、を有する。グリース供給路81は、エンドキャップ30との当接面50bに凹設された給脂溝55とエンドキャップ30との間に画成される。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
案内レールと、前記案内レールを跨ぐようにスライド自在に係合するスライダと、前記スライダにおけるスライダ本体の軸方向の端部に取り付けられるエンドキャップと、を備えるリニアガイドであって、
前記スライダ本体に対向する前記エンドキャップの対向面に配設された油路ユニットは、前記スライダ本体との間に画成されて前記エンドキャップにおける方向転換路と給油口とを連通するための潤滑油供給路と、前記エンドキャップとの間に画成されて前記方向転換路と給脂口とを連通するためのグリース供給路と、を有し、
前記潤滑油供給路は、前記潤滑油供給路の連通経路に沿うように前記スライダ本体との対向面に突設されて前記スライダ本体に当接する凸条部と、前記凸条部に隣接して形成されて潤滑油のメニスカスを形成するための給油溝を前記スライダ本体の対向面及び前記凸条部とともに画成する段部と、を有し、
前記グリース供給路は、前記エンドキャップとの対向面に凹設された給脂溝と前記エンドキャップとの間に画成される、
ことを特徴とするリニアガイド。
【請求項2】
前記潤滑油供給路は、
前記エンドキャップに凹設された油路ユニット嵌合部に収容される前記油路ユニットの前記凸条部が前記スライダ本体に当接して位置決めされることにより、前記スライダ本体と前記油路ユニットとの間に画成される、
ことを特徴とする請求項1に記載のリニアガイド。
【請求項3】
前記段部は、前記凸条部の幅方向両側に隣接して形成される、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のリニアガイド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニアガイドに関し、より詳細には、長期間に亘って潤滑剤を案内レール、スライダ、及び転動体の接触部に供給することができるリニアガイドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リニアガイド(直動案内)は、軸方向に延びる案内レールと、案内レールに相対移動可能に跨架されたスライダと、を備え、案内レール及びスライダに形成された転動体転動溝(転動体循環路)間を循環する複数の転動体(ボール又はころ)を介して、スライダが案内レール上を軸方向に相対移動する。このようなリニアガイドは、各種生産設備の直線移動機構に多用されている。このリニアガイドを、長期間に亘って安定して使用するためには、案内レール及び転動体に十分な量の潤滑剤(潤滑油やグリース)を供給して、潤滑状態を良好に維持することが重要である。
【0003】
また、このリニアガイドは、様々な給油位置(正面、上面、側面)や給油姿勢(壁掛け、垂直)の条件で使用されており、条件によらず安定した潤滑油の供給が求められている。しかし、潤滑油はグリースのちょう度に比べて粘度が非常に低いことから漏れが発生しやすい。特に、重力の影響を受ける条件で、供給側と反供給側や鉛直上方と鉛直下方で潤滑油の供給量にアンバランスが発生し、一部の転動体循環路に十分量を供給することができない問題点が存在する。
【0004】
特許文献1には、潤滑油を含んだフェルト材(潤滑剤保持体)とケースから構成され、フェルト材が軌道軸(案内レール)と接触することで、毛細管現象によりフェルト材内の潤滑油が軌道軸へ供給されるシール装置(潤滑ユニット)を有する案内装置(リニアガイド)が提案されている。これにより、給油姿勢によらず、潤滑油の供給が可能となった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1のシール装置では、フェルト材が軌道軸と直接接触するため、使用中のフェルト摩耗、及び異物などの堆積による目詰まりが懸念される。また、フェルト材に染み込まないグリース等の潤滑剤を供給することができないため、グリース供給のために別機構が必要となる。
【0007】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、案内レール及び転動体の接触部に長期間に亘って安定して潤滑剤を供給することができるリニアガイドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) 案内レールと、前記案内レールを跨ぐようにスライド自在に係合するスライダと、前記スライダにおけるスライダ本体の軸方向の端部に取り付けられるエンドキャップと、を備えるリニアガイドであって、
前記スライダ本体に対向する前記エンドキャップの対向面に配設された油路ユニットは、前記スライダ本体との間に画成されて前記エンドキャップにおける方向転換路と給油口とを連通するための潤滑油供給路と、前記エンドキャップとの間に画成されて前記方向転換路と給脂口とを連通するためのグリース供給路と、を有し、
前記潤滑油供給路は、前記潤滑油供給路の連通経路に沿うように前記スライダ本体との前記対向面に突設されて前記スライダ本体に当接する凸条部と、前記凸条部に隣接して形成されて潤滑油のメニスカスを形成するための給油溝を前記スライダ本体の対向面及び前記凸条部とともに画成する段部と、を有し、
前記グリース供給路は、前記エンドキャップとの対向面に凹設された給脂溝と前記エンドキャップとの間に画成される、
ことを特徴とするリニアガイド。
【発明の効果】
【0009】
本発明のリニアガイドによれば、案内レール及び転動体の接触部に長期間に亘って安定して潤滑剤を供給することができるリニアガイドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明に係るリニアガイドの斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すエンドキャップを対向するスライダ本体側から視た斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2に示すエンドキャップ及び油路ユニットの分解斜視図である。
【
図4】
図4の(a)及び(b)は、
図3に示すエンドキャップの正面図及び側面図である。
【
図5】
図5の(a)は、
図3に示す油路ユニットの正面図であり、
図5の(b)は、
図5の(a)のA-A断面矢視図である。
【
図6】
図6の(a)は、
図3に示す油路ユニットの背面図であり、
図6の(b)は、
図6の(a)のB-B断面矢視図である。
【
図7】
図7は、
図1に示すスライダ本体及びエンドキャップの要部拡大断面図である。
【
図8】
図8の(a)及び(b)は、
図7におけるC部及びD部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の各実施形態に係るリニアガイドを図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の説明において、スライダの上下方向、幅方向とは、長手方向を水平にして配置された案内レールに組み付けられたスライダの状態における方向をそれぞれ表しており、スライダの幅方向は、案内レールの長手方向及びスライダの上下方向に垂直な方向であり、左右方向とも言う(
図1参照)。また、長手方向は、軸方向とも言う。
【0012】
図1に示すように、本発明に係るリニアガイド1は、直線状の案内レール3と、案内レール3を跨ぐように組み付けられ、不図示の複数の転動体(円筒ころ)を介してスライド自在に係合する横断面C字状のスライダ20と、を備えている。
【0013】
案内レール3は金属製で、その幅方向の両側面には、それぞれ軸方向に延びるレール側軌道面5が片側二列ずつ、合計四列形成されている。案内レール3は案内レール3の高さ方向に貫通する複数のレール取付穴4を有しており、これらのレール取付穴4には、案内レール3を不図示の被取付面に固定するレール固定用ボルト(図示せず)が挿入される。
【0014】
スライダ20は、案内レール3の左右両側に袖部を有するスライダ本体21と、スライダ本体21の前後方向(軸方向)の両端部に装着された一対のエンドキャップ30,30と、これらのエンドキャップ30,30内に一組ずつ組み込まれたリターンガイド40,40と、エンドキャップ30内にそれぞれ組み込まれた油路ユニット50と、案内レール3とエンドキャップ30,30との間の隙間をシールする一対のサイドシール60,60と、を備える。
【0015】
スライダ本体21は、左右両側に、不図示のスライダ側軌道面及び転動体戻し路をそれぞれ有している。スライダ側軌道面は、スライダ本体21の両袖部の内側面に形成され、案内レール3のレール側軌道面5と対向しており、レール側軌道面5とスライダ側軌道面により負荷転道路が構成されている。転動体戻し路は、両袖部の肉厚部分を案内レール3の軸方向に貫通する孔によって形成されている。また、スライダ本体21の上面には、スライダ20にテーブル等の被駆動体を固定するボルトを挿通させる被駆動体固定用ねじ挿通孔25が設けられている。
【0016】
エンドキャップ30は、
図3及び
図4に示すように、例えば、合成樹脂材の射出成形品であって、スライダ本体21と同様に横断面C字状に形成されている。エンドキャップ30には、複数の取付ねじ挿通孔34が設けられ、取付ねじ挿通孔34に挿通された取付ねじ35により、エンドキャップ30がサイドシール60とともにスライダ本体21の前後方向の端面(対向面)21a(
図7、参照)に締結される。
【0017】
また、エンドキャップ30の左右の袖部31には、スライダ本体21の前後方向の端面21aに対向する当接面31a側に、リターンガイド40がそれぞれ組み込まれている。リターンガイド40は、エンドキャップ30の当接面31aに形成された凹部に嵌合することで、エンドキャップ30との間に互いに立体交差する方向転換路26a,26bを画成する。方向転換路26a,26bは、スライダ本体21の負荷転動路と転動体戻し路を斜めにそれぞれ連結する。
【0018】
そして、これら負荷転動路、転動体戻し路及び方向転換路26a,26bで、転動体循環路を形成している。転動体循環路内には多数の転動体(円筒ころ)が転動自在に装填され、転動体循環路内を転動しながら無限循環するこれらの転動体を介して、スライダ20が案内レール3上を軸方向に沿って相対移動できるようになっている。
スライダ本体21の前後方向の端面21aに対向するリターンガイド40の対向面には、方向転換路26a,26bに連通する溝42が形成されている。
【0019】
エンドキャップ30の水平部32には、スライダ本体21の前後方向の端面21aに対向する当接面(対向面)32a側に、油路ユニット50を組み込むための油路ユニット嵌合部33が凹設されている。
油路ユニット嵌合部33は、嵌合される油路ユニット50の外周部を覆う内周壁35と、油路ユニット50の軸方向の端面を覆う底壁36とによって形成されている。
【0020】
内周壁35の左右両側には、油路ユニット嵌合部33に潤滑油を導入する給油口37と油路ユニット嵌合部33にグリース87を導入する給脂口39とが貫通形成されている。
また、エンドキャップ30の左右の袖部31の当接面31aには、油路ユニット嵌合部33からリターンガイド40の溝42に至る給油溝38が形成されている。
【0021】
油路ユニット50は、
図3に示すように、例えば、合成樹脂材の射出成形品であって、油路ユニット嵌合部33に対応した略直方体状に形成されている。油路ユニット50は、油路ユニット嵌合部33の軸方向の深さD1よりも小さい軸方向の厚み寸法W1とされている。なお、油路ユニット50の軸方向の厚み寸法W1とは、スライダ本体21に対向する対向面50aと、エンドキャップ30の底壁36に当接する当接面(対向面)50bとの間隔である。
【0022】
油路ユニット50の対向面50aには、
図3及び
図5に示すように、凸条部51が突設されている。凸条部51は、油路ユニット50の幅方向に延びる水平凸条部51aと、水平凸条部51aの両端近傍から下方へ分岐して油路ユニット50の下側面に至る一対の垂直凸条部51b,51bと、を有する。油路ユニット50の当接面50bと凸条部51の先端面との間隔は、油路ユニット嵌合部33の軸方向の深さと同じ長さ寸法とされている。
【0023】
また、油路ユニット50の当接面50bには、
図3及び
図6に示すように、給脂溝55が凹設されている。給脂溝55は、油路ユニット50の幅方向に延びる水平給脂溝55aと、水平給脂溝55aの両端近傍から分岐して油路ユニット50の下側面に至る一対の垂直給脂溝55b,55bと、を有する。
【0024】
そこで、
図7に示すように、油路ユニット嵌合部33に嵌合された油路ユニット50は、エンドキャップ30がスライダ本体21の前後方向の端部に装着されることで、凸条部51がスライダ本体21の前後方向の端面21aに当接して位置決めされる。
これにより、スライダ本体21の前後方向の端面21aと油路ユニット50の対向面50aとの間には、潤滑油供給路71が画成される。また、油路ユニット50の当接面50bに凹設された給脂溝55とエンドキャップ30の底壁36との間には、グリース供給路81が画成される。
【0025】
更に、凸条部51の幅方向両側には、凸条部51よりも低い段部53が隣接して突設されている。段部53は、水平凸条部51aの幅方向両側に隣接して油路ユニット50の幅方向に延びる水平段部53a,53aと、垂直凸条部51bの幅方向両側に隣接して油路ユニット50の下方向に延びる垂直段部53b,53bと、を有する。
【0026】
即ち、油路ユニット嵌合部33に嵌合された油路ユニット50は、
図7に示すように、エンドキャップ30がスライダ本体21の前後方向の端部に装着されることで、潤滑油供給路71をスライダ本体21との間に画成し、グリース供給路81をエンドキャップ30との間に画成する。
【0027】
潤滑油供給路71は、リターンガイド40の溝42に至る給油溝38を介して、エンドキャップ30における方向転換路26a,26bと給油口37とを連通することができる。
更に、潤滑油供給路71は、
図7に示すように、潤滑油供給路71の連通経路に沿うように油路ユニット50の対向面50aに突設されてスライダ本体21の軸方向の端面21aに当接する凸条部51と、凸条部51に隣接して形成された段部53とで画成された給油溝75を有する。給油溝75は、潤滑油77のメニスカス(表面張力により物体間の極小隙間にできる液体架橋)を形成することができるように、潤滑油供給路71の軸方向間隔よりも小さな溝幅とされている。
【0028】
そこで、エンドキャップ30の給油口37から供給された潤滑油77は、潤滑油供給路71からエンドキャップ30の給油溝38及びリターンガイド40の溝42を経て、方向転換路26a,26bに達する。従って、方向転換路26a,26bに達した潤滑油77は、方向転換路26a,26bとともに転動体循環路を形成しているスライダ本体21の負荷転動路及び転動体戻し路に確実に供給され、レール側軌道面5及び転動体にも供給される。
【0029】
そして、潤滑油供給路71には、表面張力によりメニスカスを形成して潤滑油77を保持する給油溝75が、潤滑油供給路71の連通経路に沿って形成されている。そこで、本実施形態のリニアガイド1によれば、経時変化による潤滑油77の漏れを抑制でき、給油位置や給油姿勢によらず潤滑油77を転動体循環路及び転動体に安定して供給することができる。
【0030】
また、グリース供給路81は、リターンガイド40の溝42に至る給油溝38を介して、方向転換路26a,26bと給脂口39とを連通することができる。
そこで、エンドキャップ30の給脂口39から供給されたグリース87は、グリース供給路81からエンドキャップ30の給油溝38及びリターンガイド40の溝42を経て、方向転換路26a,26bに達する。従って、方向転換路26a,26bに達したグリース87は、方向転換路26a,26bとともに転動体循環路を形成しているスライダ本体21の負荷転動路及び転動体戻し路に確実に供給され、レール側軌道面5及び転動体にも供給される。本実施形態のリニアガイド1によれば、1つの油路ユニット50で潤滑油77又はグリース87を転動体循環路及び転動体に供給することが可能となる。
【0031】
従って、本実施形態のリニアガイド1によれば、案内レール3及び転動体の接触部に長期間に亘って安定して潤滑剤(潤滑油77又はグリース87)を供給することができる。
【0032】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
例えば、上記実施形態の油路ユニット50は、
エンドキャップ30に凹設された油路ユニット嵌合部33に収容される油路ユニット50)の凸条部51がスライダ本体21に当接して位置決めされることにより、スライダ本体21と油路ユニット50との間に潤滑油供給路71を画成する構成であるが、本発明の潤滑油供給路は、これに限らず、スライダ本体との対向面に凹設された凹部により、スライダ本体と油路ユニットとの間に画成される構成であってもよい。
また、上記実施形態の油路ユニット50は、段部53が凸条部51の幅方向両側に隣接して形成される構成であるが、本発明の油路ユニットは、これに限らず、段部が凸条部の幅方向片側に隣接して形成される構成であってもよい。
また、リニアガイドの転動体としては、円筒ころの代わりにボールを使用してもよい。
【0033】
ここで、上述した本発明に係るリニアガイドの実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[3]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 案内レール(3)と、前記案内レール(3)を跨ぐようにスライド自在に係合するスライダ(20)と、前記スライダ(20)におけるスライダ本体(21)の軸方向の端部に取り付けられるエンドキャップ(30)と、を備えるリニアガイド(1)であって、
前記スライダ本体(21)に対向する前記エンドキャップ(30)の対向面(当接面32a)に配設された油路ユニット(50)は、前記スライダ本体(21)との間に画成されて前記エンドキャップ(30)における方向転換路(26a,26b)と給油口(37)とを連通するための潤滑油供給路(71)と、前記エンドキャップ(30)との間に画成されて前記方向転換路(26a,26b)と給脂口(39)とを連通するためのグリース供給路(81)と、を有し、
前記潤滑油供給路(71)は、前記潤滑油供給路(71)の連通経路に沿うように前記スライダ本体(21)との対向面(50a)に突設されて前記スライダ本体(21)に当接する凸条部(51)と、前記凸条部(51)に隣接して形成されて潤滑油(77)のメニスカスを形成するための給油溝(75)を前記スライダ本体(21)の対向面(端面21a)及び前記凸条部(51)とともに画成する段部(53)と、を有し、
前記グリース供給路(81)は、前記エンドキャップ(30)との対向面(当接面50b)に凹設された給脂溝(55)と前記エンドキャップ(30)との間に画成される、
ことを特徴とするリニアガイド(1)。
【0034】
上記[1]の構成によれば、潤滑油供給路(71)は、潤滑油供給路(71)の連通経路に沿うように油路ユニット(50)の対向面(50a)に突設されてスライダ本体(21)の軸方向の対向面(端面21a)に当接する凸条部(51)と、凸条部(51)に隣接して形成された段部(53)とで画成された給油溝(75)を有する。
従って、本構成のリニアガイド(1)では、表面張力によりメニスカスを形成して潤滑油77を保持する給油溝(75)を有することで、経時変化による潤滑油(77)の漏れを抑制でき、給油位置や給油姿勢によらず潤滑油(77)を転動体循環路及び転動体に安定して供給することができる。また、本実施形態のリニアガイド(1)では、1つの油路ユニット(50)で潤滑油(77)又はグリース(87)を転動体循環路及び転動体に供給することが可能となる。
【0035】
[2] 前記潤滑油供給路(71)は、
前記エンドキャップ(30)に凹設された油路ユニット嵌合部(33)に収容される前記油路ユニット(50)の前記凸条部(51)が前記スライダ本体(21)に当接して位置決めされることにより、前記スライダ本体(21)と前記油路ユニット(50)との間に画成される、
ことを特徴とする上記[1]に記載のリニアガイド(1)。
【0036】
上記[2]の構成によれば、潤滑油供給路(71)の設計自由度が高くなり、油路ユニット(50)の組立作業も容易となる。
【0037】
[3] 前記段部(53)は、前記凸条部(51)の幅方向両側に隣接して形成される、
ことを特徴とする上記[1]または[2]に記載のリニアガイド(1)。
【0038】
上記[3]の構成によれば、表面張力によりメニスカスを形成して潤滑油(77)を保持する給油溝(75)を凸条部(51)の幅方向両側に画成することができ、保持できる潤滑油(77)の保持量を増やすことができる。
【符号の説明】
【0039】
1 リニアガイド
3 案内レール
20 スライダ
21 スライダ本体
21a 端面(対向面)
26a,26b 方向転換路
30 エンドキャップ
32a 当接面(対向面)
37 給油口
39 給脂口
50 油路ユニット
50a 対向面
50b 当接面(対向面)
51 凸条部
53 段部
55 給脂溝
71 潤滑油供給路
75 給油溝
77 潤滑油
81 グリース供給路
87 グリース