(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048851
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】車両の外部構造及び車両の融氷システム
(51)【国際特許分類】
B60Q 5/00 20060101AFI20240402BHJP
H01Q 1/42 20060101ALI20240402BHJP
B60S 1/62 20060101ALI20240402BHJP
B60R 13/00 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
B60Q5/00 630B
B60Q5/00 620C
B60Q5/00 620A
B60Q5/00 680A
B60Q5/00 640Z
H01Q1/42
B60S1/62 110C
B60S1/62 120Z
B60R13/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154983
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】石井 琢己
(72)【発明者】
【氏名】大豊 公志
(72)【発明者】
【氏名】田中 義治
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一久
(72)【発明者】
【氏名】奥村 晃司
【テーマコード(参考)】
3D024
3D225
5J046
【Fターム(参考)】
3D024BA07
3D225AA11
3D225AC10
3D225AD22
5J046AA02
5J046RA14
(57)【要約】
【課題】着氷に起因して音波の透過性能が変化することを抑制できる。
【解決手段】車両の外部構造は、本体部20、及び本体部20に設けられ、本体部20を加熱するヒータ部60を有し、車両の外殻部分の一部を構成する外装部材10と、外装部材10の内方に設けられ、外装部材10に向けて音波を発する発音部40とを備える。ヒータ部60は、外装部材10のうち音波が透過する第1領域11に設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部、及び前記本体部に設けられ、前記本体部を加熱するヒータ部を有し、車両の外殻部分の一部を構成する外装部材と、
前記外装部材の内方に設けられ、前記外装部材に向けて音波を発する発音部と、を備え、
前記ヒータ部は、前記外装部材のうち前記音波が透過する領域に設けられている、
車両の外部構造。
【請求項2】
本体部、及び前記本体部に設けられ、前記本体部を加熱するヒータ部を有し、車両の外殻部分の一部を構成する外装部材を備え、
前記外装部材は、前記外装部材に向けて音波を発する発音部の外方に設けられ、
前記ヒータ部は、前記本体部のうち前記音波が透過する領域に設けられている、
車両の外部構造。
【請求項3】
前記発音部の外方には、前記発音部が発する所定の周波数の前記音波を共鳴させる共鳴部が設けられている、
請求項1または請求項2に記載の車両の外部構造。
【請求項4】
前記ヒータ部は、前記外装部材のうち前記共鳴部を構成する部分に設けられている、
請求項3に記載の車両の外部構造。
【請求項5】
前記領域を第1領域とするとき、
前記外装部材は、電波レーダ装置の電波の経路内に位置し、前記電波が透過する第2領域を有し、
前記ヒータ部は、前記外装部材のうち前記第1領域と前記第2領域との双方にわたって設けられている、
請求項1または請求項2に記載の車両の外部構造。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の車両の外部構造と、
前記外装部材の外面における着氷の有無を判定するとともに、前記着氷が有ると判定した場合に、前記ヒータ部に通電するように構成された制御部と、を備える、
車両の融氷システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の外部構造及び車両の融氷システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車両の前部には、内燃機関の冷却液との熱交換を行うラジエータと、ラジエータの前方に位置し、開口部を有するグリルとが設けられている(例えば特許文献1参照)。こうした車両においては、グリルの開口部を通じて導入される走行風によってラジエータが冷却される。
【0003】
特許文献1に記載の車両においては、車両の前後方向におけるグリルとラジエータとの間であり、グリルの開口部に臨む位置にホーンが設けられている。ホーンは、運転者が他の車両あるいは歩行者に対して注意を喚起する警報音を発する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、車両の電動化や空気抵抗の低減化などの要請の高まりに伴い、グリルなどの外装部材の開口部が縮小あるいは省略される傾向にある。
そこで、外装部材の後方に発音部を設け、発音部から外装部材に向けて発せられる音波を、外装部材を透過させることで車両の前方へ伝播させることが考えられる。
【0006】
ところで、外装部材の外面に雪氷が付着すると、外装部材の厚み、重さ、及び固有振動数が変化する。この場合、外装部材の内面で音波が反射しやすくなる結果、外装部材を音波が透過しにくくなるので、車両の前方へ伝播する音波の音圧が低下するという問題が生じる。
【0007】
なお、こうした問題は、ホーンだけでなく自車両に接近する歩行者などに対して注意を喚起する接近通報音を発する発音部においても同様にして生じる。また、こうした問題は、車両の前部を構成する外装部材及び同外装部材の後方に設けられる発音部に限定されるものではなく、車両の後部を構成する外装部材及び同外装部材の前方に設けられる発音部などにおいても同様にして生じる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための車両の外部構造及び車両の融氷システムの各態様を記載する。
[態様1]
本体部、及び前記本体部に設けられ、前記本体部を加熱するヒータ部を有し、車両の外殻部分の一部を構成する外装部材と、前記外装部材の内方に設けられ、前記外装部材に向けて音波を発する発音部と、を備え、前記ヒータ部は、前記外装部材のうち前記音波が透過する領域に設けられている、車両の外部構造。
【0009】
同構成によれば、外装部材のうち音波が透過する領域に着氷した場合には、ヒータ部に通電して本体部を加熱することで、外装部材の外面に付着した氷を融かすことができる。これにより、着氷に起因して音波の透過性能が変化することを抑制できる。
【0010】
[態様2]
本体部、及び前記本体部に設けられ、前記本体部を加熱するヒータ部を有し、車両の外殻部分の一部を構成する外装部材を備え、前記外装部材は、前記外装部材に向けて音波を発する発音部の外方に設けられ、前記ヒータ部は、前記本体部のうち前記音波が透過する領域に設けられている、車両の外部構造。
【0011】
同構成によれば、上記態様1と同様の作用効果を奏することができる。
[態様3]
前記発音部の外方には、前記発音部が発する所定の周波数の前記音波を共鳴させる共鳴部が設けられている、態様1または態様2に記載の車両の外部構造。
【0012】
同構成によれば、発音部から発せられる所定の周波数の音波が共鳴部によって共鳴される。これにより、所定の周波数の音波の音圧を高めることができる。
ところで、外装部材のうち音波が透過する領域に着氷した場合には、着氷に起因して外装部材の厚み、重さ、及び固有振動数などが変化することで、共鳴部の共鳴周波数が変化する。その結果、外装部材を透過して車外に伝播する音波の音圧が低下するおそれがある。
【0013】
この点、上記構成によれば、外装部材の外面に付着した氷を融かすことで、共鳴部の共鳴周波数を外装部材の外面に着氷していない状態(以下、初期状態)の共鳴周波数に戻すことができる。したがって、外装部材を透過して車外に伝播する音波の音圧の低下を抑制することができる。
【0014】
[態様4]
前記ヒータ部は、前記外装部材のうち前記共鳴部を構成する部分に設けられている、態様3に記載の車両の外部構造。
【0015】
同構成によれば、外装部材のうち共鳴部を構成する部分に着氷した氷を融かすことができるので、共鳴部の共鳴周波数を初期状態の共鳴周波数に戻すことが、より確実にできる。したがって、外装部材を透過して車外に伝播する音波の音圧の低下を的確に抑制することができる。
【0016】
[態様5]
前記領域を第1領域とするとき、前記外装部材は、電波レーダ装置の電波の経路内に位置し、前記電波が透過する第2領域を有し、前記ヒータ部は、前記外装部材のうち前記第1領域と前記第2領域との双方にわたって設けられている、態様1から態様4のいずれか一項に記載の車両の外部構造。
【0017】
同構成によれば、第1領域と第2領域とでヒータ部を各別に設ける場合に比べて、ヒータ部及びヒータ部に通電するための構成が少なくて済む。
[態様6]
態様1または態様2に記載の車両の外部構造と、前記外装部材の外面における着氷の有無を判定するとともに、前記着氷が有ると判定した場合に、前記ヒータ部に通電するように構成された制御部と、を備える、車両の融氷システム。
【0018】
同構成によれば、外装部材の外面に着氷が有ると判定された場合に、制御部の制御を通じてヒータ部に通電される。このため、外装部材の外面に氷が付着していない場合にヒータ部に無駄に通電されることを抑制できる。したがって、電力消費量を節減することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、着氷に起因して音波の透過性能が変化することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、車両の外部構造の一実施形態における車両の正面図である。
【
図6】
図6は、音波の周波数と透過損失との関係を示すグラフである。
【
図7】
図7は、制御部を中心とした電気的構成を示すブロック図である。
【
図8】
図8は、変更例における外装部材及び発音部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、
図1~
図7を参照して、一実施形態について説明する。
なお、以降において、車両の前後方向を単に前後方向Lとし、前後方向Lの前方及び後方をそれぞれ単に前方及び後方として説明する。また、車両の幅方向を単に車幅方向Wとし、車両の上下方向を単に上下方向Zとして説明する。本実施形態では、車両の外部構造を、車両の前部構造として具体化している。
【0022】
図1に示すように、車両の前部には、車両の外殻部分の一部を構成する外装部材10が設けられている。外装部材10は、例えばフロントグリルである。
図1及び
図2に示すように、外装部材10は、外装部材10の本体を構成する本体部20と、本体部20に対して取り付けられるカバー30と、ヒータ部60とを備えている。
【0023】
カバー30は、例えば車両のエンブレムである。カバー30は、本体部20に設けられた孔21を塞ぐように本体部20に対して取り付けられている。なお、カバー30を本体部20と一体に形成することもできる。
【0024】
<本体部20>
図3に示すように、本体部20の後面には、後方に向かって突出する周壁部52が一体に形成されている。周壁部52は、後方に向かって開口する開口部を有している。周壁部52には、後方に向かって開口する複数の雌ねじ52aが設けられている。複数の雌ねじ52aは、周壁部52の周方向において互いに間隔をあけて設けられている。
【0025】
本体部20は、硬質樹脂材料により形成されていることが好ましい。
<発音部40>
図3に示すように、外装部材10の後方、すなわち内方には、外装部材10に向けて音波を発する発音部40が設けられている。
【0026】
音波は、自車両の周囲の人に向けて警告するために発せられるホーン音、自車両に接近した人に対し、自車両が接近していることを通報するために発せられる接近通報音などである。
【0027】
発音部40が発生する音波は、例えば20Hz~20000Hzの範囲内の所定の周波数である。なお、上記所定の周波数には、基本周波数に加えて、基本周波数の2以上の整数倍の周波数が含まれていてもよい。
【0028】
ホーン音の基本周波数は、270Hz~600Hzの範囲内であることが好ましく、例えば370Hz、400Hz、480Hz、500Hzなどである。
接近通報音の基本周波数は、20Hz~5000Hzの範囲内であることが好ましい。
【0029】
発音部40が設けられた筐体の外周面には、フランジ41が設けられている。
フランジ41には、前後方向Lに貫通する複数の孔41aが設けられている。複数の孔41aは、フランジ41の周方向において互いに間隔をあけて設けられている。
【0030】
<共鳴部50>
図3に示すように、発音部40の前方、すなわち外方には、発音部40が発する所定の周波数の音波を共鳴させる共鳴部50が設けられている。
【0031】
共鳴部50は、外壁部51と、外壁部51の後方に位置し、前後方向Lにおいて外壁部51に対向して設けられる内壁部53と、外壁部51と内壁部53との間に設けられる周壁部52とを備えている。
【0032】
外壁部51、内壁部53、及び周壁部52により囲まれた空間S1は、密閉されている。空間S1には、ガスが充填されている。ガスは、例えば空気である。
ここで、発音部40の前方に、共鳴部50ではなく、外壁部51のみが存在する場合において、発音部40から発せられる音波の周波数[Hz]と、外壁部51を透過する際の音波の透過損失[dB]との関係は、
図6に破線にて示すようになる。
【0033】
一方、発音部40の前方に共鳴部50が存在する場合において、発音部40から発せられる音波の周波数[Hz]と、共鳴部50、すなわち内壁部53、空間S1及び外壁部51を透過する際の音波の透過損失[dB]との関係は、
図6に実線にて示すようになる。
【0034】
図6に一点鎖線にて示す周波数の範囲においては、共鳴部50を透過する際の音波の透過損失が、外壁部51のみを透過する際の音波の透過損失よりも小さくなる。すなわち、上記周波数の範囲においては、共鳴部50による共鳴透過現象が生じる。
【0035】
ここで、発音部40から発せられる音波の周波数frmd[Hz]と、空間S1の厚みd[m]と、空間S1に充填されるガスの密度ρ[kg/m3]と、空間S1における音速c[m/s]と、内壁部53の面密度m1[kg/m2]と、外壁部51の面密度m2[kg/m2]との間には、式(1)の関係が成立する。
【0036】
【0037】
次に、共鳴部50の構成について詳細に説明する。
外壁部51は、本体部20及び後述するヒータ部60により構成されている。
内壁部53は、周壁部52の後方に設けられ、周壁部52の開口部を塞いでいる。内壁部53の周縁部には、複数の雌ねじ52aに対応して複数の孔53aが設けられている。
【0038】
ねじ48を後方から孔53aに挿通するとともに雌ねじ52aに螺入することにより、内壁部53が周壁部52に対して取り付けられている。
内壁部53には、後方に向かって突出する取付部54が一体に形成されている。取付部54は、後方に向かって開口する開口部を有している。取付部54は、周壁部52の内周側に位置し、周壁部52の周方向の全体にわたって設けられている。
【0039】
取付部54は、外周部54aと、外周部54aの内周側に位置する内周部54bとを有している。外周部54aと内周部54bとの間には、後方に向かって開口する溝部54cが設けられている。外周部54aの突出長さは、内周部54bの突出長さよりも大きい。外周部54aには、複数の係合孔54dが設けられている。複数の係合孔54dは、外周部54aの周方向において互いに間隔をあけて設けられている。
【0040】
取付部54の後方には、取付部54の開口部を塞ぐハウジング55が設けられている。
ハウジング55は、前後方向Lにおいて内壁部53に対向する底壁56と、底壁56の周縁から前方に向かって突出する周壁57とを有している。
【0041】
底壁56の前面には、前方に向かって突出する複数の固定部58が一体に形成されている。固定部58には、前方に向かって開口する雌ねじ58aが設けられている。
ねじ49を前方から孔41aに挿通するとともに固定部58の雌ねじ58aに螺入することにより、発音部40がハウジング55に対して取り付けられている。
【0042】
周壁57の外周面には、係合爪59が設けられている。周壁57の前端を溝部54cに挿入するとともに係合孔54dに係合爪59を係合することで、ハウジング55が取付部54に着脱自在に取り付けられる。
【0043】
内壁部53及びハウジング55によって囲まれた空間S2は、密閉されている。
なお、内壁部53及びハウジング55は、硬質樹脂材料により形成されていることが好ましい。
【0044】
<カバー30>
図5に示すように、カバー30は、車両に搭載される電波レーダ装置90の前方に位置している。すなわち、カバー30は、電波レーダ装置90の電波の経路内に位置している。本実施形態の電波レーダ装置90は、ミリメートルオーダーの波長の電波であるミリ波の送信及び受信を行うミリ波レーダ装置である。
【0045】
カバー30は、電波レーダ装置90の電波の高い透過性能を有する周知の構成を備えている。すなわち、カバー30を構成する材料及びカバー30の板厚は、電波の高い透過性能を有するように設定されている。
【0046】
<第1領域11及び第2領域12>
図1及び
図2に示すように、外装部材10のうち発音部40から発せられる音波が透過する領域を第1領域11とし、電波レーダ装置90の電波の経路内に位置し、電波が透過する領域を第2領域12とする。
【0047】
本実施形態では、第1領域11及び第2領域12が車幅方向Wにおいて互いに隣り合っている。なお、第1領域11及び第2領域12は、上下方向Zにおいて互いに隣り合っていてもよい。
【0048】
第1領域11は、外装部材10のうち共鳴部50を構成する部分である外壁部51に設けられている。
<ヒータ部60>
図2~
図5に示すように、ヒータ部60は、本体部20及びカバー30の前面に貼り付けられるフィルム61と、フィルム61の前面に貼り付けられるフィルム62と、フィルム61,62同士の間に設けられるヒータ線63とを有している。なお、ヒータ部60を本体部20及びカバー30の後面に設けることもできる。
【0049】
フィルム61,62は、例えば透明な樹脂材料により形成されていることが好ましい。
ヒータ部60は、外装部材10のうち第1領域11と第2領域12との双方にわたって設けられている。詳しくは、フィルム61,62及びヒータ線63は、外装部材10の前面のうち第1領域11及び第2領域12の双方を含む部分に設けられている。
【0050】
<各種センサ70及び制御部80>
図7に示すように、車両には、外装部材10の外面における着氷の有無を判定するための各種センサ70が設けられている。
【0051】
各種センサ70は、外気温センサ、及び車両のウィンドシールドの雨水を拭き取るワイパー装置の作動を制御するワイパー制御部を含む。
各種センサ70は、制御部80に電気的に接続されている。
【0052】
制御部80は、例えば外気温センサにより検知される外気温が所定温度以下であることと、ワイパー装置が作動していることとの双方が成立している場合に、外装部材10の外面に着氷が有ると判定する。制御部80は、上記着氷が有ると判定した場合、バッテリ81からヒータ線63に通電する。
【0053】
本実施形態では、車両の外部構造と制御部80とにより車両の融氷システムを構成している。
以上説明した本実施形態に係る車両の外部構造及び車両の融氷システムによれば、以下に示す作用効果が得られるようになる。
【0054】
(1)ヒータ部60は、外装部材10のうち音波が透過する第1領域11に設けられている。
こうした構成によれば、外装部材10のうち音波が透過する第1領域11に着氷した場合には、ヒータ部60に通電して本体部20を加熱することで、外装部材10の外面に付着した氷を融かすことができる。これにより、着氷に起因して音波の透過性能が変化することを抑制できる。
【0055】
(2)発音部40の前方には、発音部40が発する所定の周波数の音波を共鳴させる共鳴部50が設けられている。
こうした構成によれば、発音部40から発せられる所定の周波数の音波が共鳴部50によって共鳴される。これにより、所定の周波数の音波の音圧を高めることができる。
【0056】
ところで、外装部材10のうち音波が透過する第1領域11に着氷した場合には、着氷に起因して外装部材10の厚み、重さ、及び固有振動数などが変化することで、共鳴部50の共鳴周波数が変化する。その結果、外装部材10を透過して車外に伝播する音波の音圧が低下するおそれがある。
【0057】
この点、上記構成によれば、外装部材の外面に付着した氷を融かすことで、共鳴部50の共鳴周波数を外装部材10の外面に着氷していない状態(以下、初期状態)の共鳴周波数に戻すことができる。したがって、外装部材10を透過して車外に伝播する音波の音圧の低下を抑制することができる。
【0058】
(3)ヒータ部60は、外装部材10のうち共鳴部50を構成する部分である外壁部51に設けられている。
こうした構成によれば、外装部材10のうち共鳴部50を構成する部分である外壁部51に着氷した氷を融かすことができるので、共鳴部50の共鳴周波数を初期状態の共鳴周波数に戻すことが、より確実にできる。したがって、外装部材10を透過して車外に伝播する音波における上記所定の周波数の音圧の低下を的確に抑制することができる。
【0059】
(4)外装部材10の外面における着氷の有無を判定するとともに、着氷が有ると判定した場合に、ヒータ部60に通電するように構成された制御部80を備える。
こうした構成によれば、外装部材10の外面に着氷が有ると判定された場合に、制御部80の制御を通じてヒータ部60に通電される。このため、外装部材10の外面に氷が付着していない場合にヒータ部60に無駄に通電されることを抑制できる。したがって、電力消費量を節減することができる。
【0060】
(5)ヒータ部60は、外装部材10のうち第1領域11と第2領域12との双方にわたって設けられている。
こうした構成によれば、第1領域11と第2領域12とでヒータ部60を各別に設ける場合に比べて、ヒータ部60及びヒータ部60に通電するための構成が少なくて済む。
【0061】
<変形例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0062】
・第1領域11と第2領域12とは、互いに隣り合っているものに限定されず、第1領域11と第2領域12との間に、別の領域が設けられていてもよい。
・制御部80は、外装部材10の外面における着氷の有無を判定するものに限定されない。乗員の操作によりヒータ部60に対する通電が行われるように構成されていてもよい。
【0063】
・ヒータ部60は、少なくとも第1領域11に設けられていればよく、第2領域12に設けられていなくてもよい。また、電波レーダ装置90を備えていない車両に対して、本開示の車両の外部構造を適用することもできる。
【0064】
・共鳴部50は、上記実施形態において例示した構成、すなわち外壁部51、内壁部53、及び周壁部52を有するものに限定されない。他に例えば、
図8に示すように、ヘルムホルツ共鳴を利用した共鳴部150であってもよい。この場合、共鳴部150は、胴体151と、胴体151の後端から後方に突出するネック部152とを有している。
【0065】
なお、ヘルムホルツ共鳴の共鳴周波数fH[Hz]と、音速c[m/s]と、ネック部152の断面積S[m2]と、胴体151の容積V[m3]と、ネック部152の長さl[m]との間には、式(2)の関係が成立する。
【0066】
【0067】
・共鳴部50を省略することもできる。
・外装部材10は、フロントグリルに限定されない。例えば、フロントバンパカバー、フォグランプカバー、ボンネットフード、あるいはカウルルーバーとして本開示の外装部材を具体化することもできる。また、フェンダー、フェンダーアーチ、ロッカーモール、ルーフサイドモール、あるいはピラーとして本開示の外装部材を具体化することもできる。また、リヤガーニッシュ、リヤスポイラー、リヤバンパカバーとして本開示の外装部材を具体化することもできる。すなわち、本開示の車両の外部構造は、車両の前部構造に限定されず、車両の後部構造や車両の側部構造として具体化することもできる。
【符号の説明】
【0068】
10…外装部材
11…第1領域
12…第2領域
20…本体部
21…孔
30…カバー
40…発音部
41…フランジ
41a…孔
48,49…ねじ
50…共鳴部
51…外壁部
52…周壁部
52a…雌ねじ
53…内壁部
53a…孔
54…取付部
54a…外周部
54b…内周部
54c…溝部
54d…係合孔
55…ハウジング
56…底壁
57…周壁
58…固定部
58a…雌ねじ
59…係合爪
60…ヒータ部
61,62…フィルム
63…ヒータ線
70…各種センサ
80…制御部
81…バッテリ
90…電波レーダ装置