(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048852
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】車両の外部構造
(51)【国際特許分類】
B60Q 5/00 20060101AFI20240402BHJP
B60R 19/48 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
B60Q5/00 680A
B60Q5/00 620A
B60Q5/00 630B
B60Q5/00 650Z
B60Q5/00 680D
B60R19/48 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154984
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一久
(72)【発明者】
【氏名】田中 義治
(72)【発明者】
【氏名】奥村 晃司
(72)【発明者】
【氏名】大豊 公志
(72)【発明者】
【氏名】石井 琢己
(57)【要約】
【課題】音波を車外に伝播させつつ、センサの検知精度を抑制できる。
【解決手段】車両の外部構造は、車両の外殻部分の一部を構成する外装部材10と、外装部材10の内方に設けられ、外装部材10に向けて音波を発する発音部30とを備える。外装部材10は、電磁波を用いたセンサ50の外方に設けられ、外装部材10は、発音部30が発する音波の透過領域である第1領域11と、センサ50から送信される電磁波の透過領域である第2領域12とを有する本体部20を備え、本体部20は、第1領域11と第2領域12との間に位置するスリットを含み、第1領域11から第2領域12への振動の伝播を抑制する抑制部22を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の外殻部分の一部を構成する外装部材と、
前記外装部材の内方に設けられ、前記外装部材に向けて音波を発する発音部と、を備え、
前記外装部材は、電磁波を用いたセンサの外方に設けられ、
前記外装部材は、前記発音部が発する前記音波の透過領域である第1領域と、前記センサから送信される前記電磁波の透過領域である第2領域と、を有する本体部を備え、
前記本体部は、前記第1領域と前記第2領域との間に位置するスリットを含み、前記第1領域から前記第2領域への振動の伝播を抑制する抑制部を有する、
車両の外部構造。
【請求項2】
音波及び電磁波の少なくとも一方を用いたセンサを有し、車両の外殻部分の一部を構成する外装部材と、
前記外装部材の内方に設けられ、前記外装部材に向けて音波を発する発音部と、を備え、
前記外装部材は、前記発音部が発する前記音波の透過領域である第1領域と、前記センサが設けられている領域である第2領域と、を有する本体部を備え、
前記本体部は、前記第1領域と前記第2領域との間に位置するスリットを含み、前記第1領域から前記第2領域への振動の伝播を抑制する抑制部を有する、
車両の外部構造。
【請求項3】
前記本体部は、前記スリットが設けられた基材を有し、
前記抑制部は、前記スリットの内部に充填され、前記基材よりも軟質な充填部を含む、
請求項1または請求項2に記載の車両の外部構造。
【請求項4】
前記外装部材は、前記充填部と同一の材料により形成され、前記充填部に連なるとともに前記基材の外面または内面の少なくとも一方を被覆する被覆部を有する、
請求項3に記載の車両の外部構造。
【請求項5】
前記スリットは、溝状であり、前記第1領域の全周を囲んでいる、
請求項1または請求項2に記載の車両の外部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の外部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の車両においては、フロントバンパカバーの後方であり、同フロントバンパカバーに設けられた開口部に臨む位置にホーンが設けられている。ホーンは、運転者が他の車両あるいは歩行者に対して注意を喚起する警報音を発する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、車両の電動化や空気抵抗の低減化などの要請の高まりに伴い、フロントバンパカバーなどの外装部材の開口部が縮小あるいは省略される傾向にある。
そこで、外装部材の後方に発音部を設け、発音部から外装部材に向けて発せられる音波を、外装部材を透過させることで車外へ伝播させることが考えられる。
【0005】
しかしながら、上記発音部と共に、例えばミリ波レーダ装置などのセンサが外装部材の後方に配置されている場合には、以下の不都合が生じるおそれがある。
すなわち、
図10に示すように、ミリ波レーダ装置90から送信される電波の一部は、外装部材10の後面において反射される。そして、ミリ波レーダ装置90は、反射された電波をノイズ成分として受信する。ここで、図示しない発音部から発せられる音波によって外装部材10が振動すると、車両の前後方向における電波の反射位置が変動する。このため、ミリ波レーダ装置90が受信するノイズ成分の位相が車両の前後方向における外装部材10の位置によって変動する。その結果、ノイズ成分の位相が変動することで、ミリ波レーダ装置90による検出精度の低下を招くおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための車両の外部構造の各態様を記載する。
[態様1]
車両の外殻部分の一部を構成する外装部材と、前記外装部材の内方に設けられ、前記外装部材に向けて音波を発する発音部と、を備え、前記外装部材は、電磁波を用いたセンサの外方に設けられ、前記外装部材は、前記発音部が発する前記音波の透過領域である第1領域と、前記センサから送信される前記電磁波の透過領域である第2領域と、を有する本体部を備え、前記本体部は、前記第1領域と前記第2領域との間に位置するスリットを含み、前記第1領域から前記第2領域への振動の伝播を抑制する抑制部を有する、車両の外部構造。
【0007】
同構成によれば、外装部材の本体部のうち発音部から発せられる音波によって第1領域が振動する。ここで、第1領域から第2領域に向かう振動が、スリットにおいて減衰される。これにより、第1領域から第2領域への振動の伝播が抑制されるようになる。したがって、音波を車外に伝播させつつ、センサの検知精度を抑制できる。
【0008】
[態様2]
音波及び電磁波の少なくとも一方を用いたセンサを有し、車両の外殻部分の一部を構成する外装部材と、前記外装部材の内方に設けられ、前記外装部材に向けて音波を発する発音部と、を備え、前記外装部材は、前記発音部が発する前記音波の透過領域である第1領域と、前記センサが設けられている領域である第2領域と、を有する本体部を備え、前記本体部は、前記第1領域と前記第2領域との間に位置するスリットを含み、前記第1領域から前記第2領域への振動の伝播を抑制する抑制部を有する、車両の外部構造。
【0009】
同構成によれば、外装部材の本体部のうち発音部から発せられる音波によって第1領域が振動する。ここで、第1領域から第2領域に向かう振動が、スリットにおいて減衰される。これにより、第1領域から第2領域への振動の伝播が抑制されるようになる。したがって、音波を車外に伝播させつつ、センサの検知精度の低下を抑制できる。
【0010】
[態様3]
前記本体部は、前記スリットが設けられた基材を有し、前記抑制部は、前記スリットの内部に充填され、前記基材よりも軟質な充填部を含む、態様1または態様2に記載の車両の外部構造。
【0011】
同構成によれば、スリットの内部に基材よりも軟質な充填部が充填されるので、例えばスリットが基材の外面に開口する場合には、スリットを設けることに起因して外装部材の意匠性が損なわれることを抑制できる。また、車両の空気抵抗が増大することを抑制できる。また、スリットが基材の外面に開口する場合であれ、基材の内面に開口する場合であれ、外装部材の剛性が低下することを抑制できる。
【0012】
[態様4]
前記外装部材は、前記充填部と同一の材料により形成され、前記充填部に連なるとともに前記基材の外面または内面の少なくとも一方を被覆する被覆部を有する、態様3に記載の車両の外部構造。
【0013】
同構成によれば、例えば被覆部が基材の外面を被覆する構成においては、スリット及び充填部が視認されにくくなる。したがって、外装部材の意匠性が損なわれることを抑制できる。
【0014】
また、スリットが基材の外面に開口する場合であれ、基材の内面に開口する場合であれ、充填部及び被覆部を一体に形成することができる。したがって、充填部及び被覆部を容易に形成することができる。
【0015】
[態様5]
前記スリットは、溝状であり、前記第1領域の全周を囲んでいる、態様1から態様4のいずれか一項に記載の車両の外部構造。
【0016】
同構成によれば、第1領域の全周が溝状のスリットにより囲まれているので、第1領域の振動が第1領域の外側に伝播されることを第1領域の全周にわたって抑制できる。このため、第1領域から第2領域への振動の伝播が一層抑制されるようになる。したがって、音波を車外に伝播させつつ、センサの検知精度の低下を一層抑制できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、音波を車外に伝播させつつ、センサの検知精度を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、車両の外部構造の一実施形態における車両の正面図である。
【
図4】
図4は、第1変更例の外装部材の断面図である。
【
図5】
図5は、第2変更例の外装部材の断面図である。
【
図6】
図6は、
図2に対応する図であって第3変更例の外装部材の正面図である。
【
図8】
図8は、第4変更例の外装部材の断面図である。
【
図9】
図9は、
図2に対応する図であって第5変更例の外装部材の正面図である。
【
図10】
図10は、外装部材の後面の位置によって、ミリ波レーダ装置から送信される電波の反射位置が変動することを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、
図1~
図3を参照して、一実施形態について説明する。
なお、以降において、車両の前後方向を単に前後方向Lとし、前後方向Lの前方及び後方をそれぞれ単に前方及び後方として説明する。また、車両の幅方向を単に車幅方向Wとし、車両の上下方向を単に上下方向Zとして説明する。本実施形態では、車両の外部構造を、車両の前部構造として具体化している。
【0020】
図1に示すように、車両の前部には、車両の外殻部分の一部を構成する外装部材10が設けられている。外装部材10は、例えばフロントグリルである。
図2及び
図3に示すように、外装部材10の後方、すなわち内方には、外装部材10に向けて音波を発する発音部30と、電磁波を用いたセンサ50とが設けられている。
【0021】
<発音部30>
図2及び
図3に示すように、発音部30は、例えば外装部材10を加振する加振器である。発音部30が加振器である場合、発音部30は、外装部材10に接触した状態で配置されていることが好ましい。
【0022】
発音部30には、発音部30の作動を制御する制御部40が電気的に接続されている。
本実施形態の車両の外部構造は、加振器である発音部30により外装部材10が加振されることに伴い発生する音波が車外に伝播するように構成されている。
【0023】
音波は、自車両に接近した人に対し、自車両が接近していることを通報するために発せられる接近通報音などである。
音波は、例えば20Hz~20000Hzの範囲内の所定の周波数である。なお、上記所定の周波数には、基本周波数に加えて、基本周波数の2以上の整数倍の周波数が含まれていてもよい。
【0024】
接近通報音の基本周波数は、20Hz~5000Hzの範囲内であることが好ましい。
<センサ50>
図2に示すように、センサ50は、例えば周知のミリ波レーダ装置である。ミリ波レーダ装置は、ミリメートルオーダーの波長の電波であるミリ波の送信及び受信を行う。
【0025】
<外装部材10>
図2に示すように、外装部材10は、発音部30が発する音波の透過領域である第1領域11と、センサ50から送信される電磁波の透過領域である第2領域12とを有する本体部20を備えている。第1領域11と第2領域12とは、車幅方向Wにおいて並んで設けられている。
【0026】
図2及び
図3に示すように、本体部20は、第1領域11と第2領域12との間に位置するスリット23を含み、第1領域11から第2領域12への振動の伝播を抑制する抑制部22を有している。
【0027】
本体部20は、硬質樹脂材料により形成された基材21を有している。こうした硬質樹脂材料としては、例えばABS、PC、PP、PEなどが好ましい。
スリット23は、基材21に設けられている。スリット23は、例えば基材21の後面、すなわち内面に開口する溝状である。スリット23は、第1領域11の全周を囲んでいる。
【0028】
スリット23の内部には、基材21よりも軟質な充填部24が充填されている。充填部24を形成する軟質の材料としては、例えばポリウレタンなどの軟質樹脂材料、ゴム、エラストマーなどの弾性材料が好ましい。
【0029】
本実施形態では、スリット23及び充填部24により抑制部22が構成されている。
外装部材10は、充填部24に連なるとともに基材21の内面を被覆する被覆部25を有している。被覆部25は、充填部24と同一の材料により形成されている。
【0030】
次に、本実施形態の作用について説明する。
外装部材10の本体部20のうち発音部30から発せられる音波によって第1領域11が振動する。ここで、第1領域11から第2領域12に向かう振動が、スリット23において減衰される。これにより、第1領域11から第2領域12への振動の伝播が抑制されるようになる。
【0031】
以上説明した本実施形態に係る車両の外部構造によれば、以下に示す作用効果が得られるようになる。
(1)外装部材10の本体部20は、第1領域11と第2領域12との間に位置するスリット23を含み、第1領域11から第2領域12への振動の伝播を抑制する抑制部22を有している。
【0032】
こうした構成によれば、上記作用を奏することから、音波を車外に伝播させつつ、センサ50の検知精度を抑制できる。
(2)スリット23の内部に基材21よりも軟質な充填部24が充填されるので、外装部材10の剛性が低下することを抑制できる。
【0033】
(3)充填部24及び被覆部25を一体に形成することができる。したがって、充填部24及び被覆部25を容易に形成することができる。
(4)第1領域11の全周が溝状のスリット23により囲まれているので、第1領域11の振動が第1領域11の外側に伝播されることを第1領域11の全周にわたって抑制できる。このため、第1領域11から第2領域12への振動の伝播が一層抑制されるようになる。したがって、音波を車外に伝播させつつ、センサ50の検知精度の低下を一層抑制できる。
【0034】
<変形例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0035】
・
図4に示す第1変更例のように、上記実施形態において被覆部25を省略することもできる。
・
図5に示す第2変更例のように、スリット23は、基材21の前面、すなわち外面に開口する溝状であってもよい。この場合、被覆部25が基材21の外面を覆うようにすればよい。この場合、スリット23及び充填部24が視認されにくくなるので、スリット23を設けることに起因して外装部材10の意匠性が損なわれることを抑制できる。また、第2変更例において被覆部25を省略することもできる。
【0036】
・
図6及び
図7に示す第3変更例のように、スリット23は、基材21を貫通する孔であってもよい。この場合、
図6に示すように、上下方向Zに延在するとともに第1領域11と第2領域12との間に位置するスリット23を設けるようにすればよい。また、第1領域11の周囲をスリット23に加えて、複数のスリット23A,23B,23Cによって囲むようにしてもよい。スリット23Aは、第1領域11の上方に位置し、車幅方向Wに延在している。スリット23Bは、第1領域11の下方に位置し、車幅方向Wに延在している。スリット23Cは、車幅方向Wにおいて第1領域11を挟んでスリット23とは反対側に位置し、上下方向Zに延在している。この場合、例えばスリット23,23A,23B,23Cの内部には、充填部24,24A,24B,24Cが充填されている。
【0037】
・
図8に示す第4変更例のように、第3変更例から充填部24,24A,24B,24Cを省略することもできる。
・上記実施形態及び各変更例において、センサ50をLiDARとして具体化することもできる。
【0038】
・上記実施形態及び各変更例では、電磁波を用いたセンサ50の前方、すなわち外方に設けられる外装部材10について例示したが、外装部材10が音波及び電磁波の少なくとも一方を用いたセンサを有するものであってもよい。
【0039】
例えば
図9に示す第5変更例のように、外装部材110には、超音波を用いて対象物との距離を検知するセンサ150、所謂クリアランスソナーが設けられている。外装部材110は、例えばフロントバンパカバーである。外装部材110の本体部120は、発音部30が発する音波の透過領域である第1領域111と、センサ150が設けられている領域である第2領域112とを有する。この場合においても、本体部120に、第1領域111と前記第2領域112との間に位置するスリット123を含み、第1領域111から第2領域112への振動の伝播を抑制する抑制部122を設けることで、上記実施形態の作用及び効果(1)に準じた作用効果を奏することができる。
【0040】
・外装部材10は、上記実施形態において例示したフロントグリル及び第5変更例において例示したフロントバンパカバーに限定されない。フォグランプカバー、ボンネットフード、あるいはカウルルーバーとして本開示の外装部材を具体化することもできる。また、フェンダー、フェンダーアーチ、ロッカーモール、ルーフサイドモール、あるいはピラーとして本開示の外装部材を具体化することもできる。また、リヤガーニッシュ、リヤスポイラー、リヤバンパカバーとして本開示の外装部材を具体化することもできる。
【符号の説明】
【0041】
10,110…外装部材
11,111…第1領域
12,112…第2領域
20,120…本体部
21…基材
22,122…抑制部
23,123…スリット
24…充填部
25…被覆部
30…発音部
40…制御部
50,150…センサ
90…センサ